これからのこと…(前編)

ーー水木家ーー

少し時間が経ってから、みらいは調理を終え、リビングのテーブルへ炒飯を運んだ。

「いただきます。」と手を合わせて言ってから昼御飯を食べ始めた。

みんなはその声が聞こえたので、リビングへ移動した。

「…ほんとに作れるんだな…お前…」呟く大介

「だから言ったじゃん、何度も作った事があるって。」

「未来のなつみが飯作ってるんじゃねぇのかよ?」

「ん?そりゃあもちろん作ってるよ。」

「んじゃあなんでお前が自分で昼飯作ってんだよ?」

「ああ、それは平日の昼間だからだよ。私の居た世界では、今日は学校が終業式の日だったから、
午前中だけで終わって、家に帰ってきてたんだ。」
大介のもっともな疑問にすぐに答えたみらい

「平日の日と…どう関係があるの?」首を傾げるなつみ

「ママは、平日の日はお仕事で夜までいないんだ。まあ時々、休日の日にも仕事に行かなきゃいけない日もあるけど。パパも同じ。」

「そうなのか。けど…お前1人で飯食うのか?そういう時。」

「うん、だいたいそうだよ。あっ、でもたまに2人の時もあるけど。」

「みらいちゃん、お料理は誰に教わったの?」気になって尋ねるえり子

「う〜ん…ママに教わった時もあるけど…ほとんど料理の本を見ながら料理してて、自然と作れるようになった。」

「うっそ〜っ!凄いね、みらいちゃん」褒めるタマエ

「そ、そんな事ないよ。それよりこれからお兄ちゃん達の名前を…」

「ああ、俺は…」

「お兄ちゃんの名前は山口大介さんでしょ?」

「えっ…なんで解ったんだよ?」

「お兄ちゃんが左耳につけているピアスで解るよ。」
解って当たり前だとでもいうように言うみらい

「大介ってば未来の世界でもまだ左耳にピアスをつけてるの?」少し驚いたように言うタマエ

「うん。だからお兄ちゃんの事はすぐに解ったよ。あとお兄ちゃんの傍でくっついてる男の子…弟の大平さんだよね?」

「あ、ああ。」

「他の皆さんの名前は…右から島村いづみさん、森タマエさん、立花えり子さん、それから…」

1人ずつ当てながら言っていると、いづみがみらいに質問してきた。

「…未来の世界でも変わってない?」

「う〜ん…そんな事はないと思うけど。えっと、そこにいる犬って…ボビーだよね?」

「ああ、そうだぜ。けど…さすがにお前の居た未来の世界にはボビーはもう居ねぇだろ?」

「うん、居ないよ。写真があるから知ってるだけ。」

「未来のなつみから聞いたのか?ボビーの事。」

「ちょっとだけね。」

「ちょっとだけ??」

「うん。さっきから気になってたんだけど…その子…もしかして「夢」って名前?」

「…よく解ったな。」

「だってママの妹だもん。」

「ママの妹だもんって……みらいちゃん、なつみの事が解るの!?」
当のなつみを指しながら言ったタマエ

「うん、解るよ。声とか雰囲気で。」

「…普通解らねぇと思うんだけど。」

タマエだけでなく、大介も驚いたようだ。

「…そうかもしれないね。でも私には例え姿が違っててもなんとなく解るんだ。」

「最初から気づいてたのか?お前の母親である過去のなつみがここに居るのが。」

「ううん、最初からじゃないよ、途中から気がついた。」

「ねえ、みらいちゃん」
なつみがみらいに尋ねる。

「何?」

「未来の世界と…交信は出来ないの?」

「未来の世界と?」

「うん。」

「う〜ん…出来ないと思う。」

「このブローチで通信出来ねぇのかよ?」

「このブローチで?」
身につけてるブローチに触れるみらい

「ああ、そのブローチには発信機とかが搭載されているみたいから通信機能があってもおかしくねぇと思うだけど。」

「やっぱそういう機能ついてたんだ、このブローチ。」

「みらいちゃん、知らなかったの?このブローチの性能…」

「うん。何か機能がついてるって事はなんとなく解ってたけど、どんな性能なのかは興味がなかったから、
調べたり、聞いたりもしてなかったんだ。」

「そっか。それより…みらい、お前…どうやって未来の世界へ帰る気だ?」

「まだ決めてない。」

その言葉にみんなドテッとズッコケそうになった。

「まだ決めてねぇってお前それで大丈夫なのかよ!?」

「大丈夫っ!なんとかなるでしょ。」
特に焦る様子もなく、マイペースに答えたみらい

「…マイペースだな、お前。」

「み、みらいちゃん…マイペースなんだね。」

「本当に大丈夫なのかしら?」

それぞれみらいを心配するなつみ達。

「あんた、少しは焦りなさいよ!」

「だって焦ったってどうにもならないもん。」
いづみの少し怒鳴るような声にもマイペースを崩さないみらい

「お前ほんとになつみの子供か〜?なつみと全っ然性格が違うな。」

「ちょっと大介〜?あんた喧嘩売ってんの!?」

「別にそんな事言ってねぇだろ!?」

「じゃあさっきの嫌味そうな言い方は何!?」

「別に嫌味そうになんて言ってねぇよっ!」

大介となつみが些細な事で喧嘩を始めてしまった。

「ちょっ、ちょっと2人ともやめなよ!」

「山口君、なつみちゃん、2人とも落ち着いてっ!」

そんな2人を見て慌てて止めに掛かったタマエとえり子

「(…パパとママ、子供の頃から一緒だったって話は聞いてたけど…喧嘩って昔からこうだったんだね…。
何がどうなったら二人が結婚したのかが気になるよ…。)」
そう思いながら、ちょうど食べていた炒飯が食べ終わった。

「ごちそう様でした。」

大介となつみが喧嘩を始めても気にならないみらいであった。

「…あんた、ほんとにマイペースね。」

「慌ててもしょうがないもん。それに2人ならほっといても大丈夫だよ。」
さらっといづみに答えた後、空の皿を持って台所に運んで皿を洗い始めた。

「…今のどういう意味だ??」

「…みらいちゃん、全然動じてないね。」

「うん、うん。お父さんからの遺伝かしら?」

みらいの言葉を聞いて不思議に思ういづみ、タマエ、えり子であった。

「あんた達っ!喧嘩やめっ!!今は喧嘩してる場合じゃないでしょ!!」

「あっ…わりぃ…」

「あっ…ごめんなさい。」

いづみの一喝が効いたのか、大介となつみは喧嘩を止めた。

「治まったみたいね。タマエちゃん」

「うん、そうだね。えり子ちゃん」

「喧嘩治まった?」
そう言いながら戻ってきたみらい

「私が止めたから治まった。」

「…わざわざ止めに入らなくても…すぐに治まるんだけど…。」

「どうして?」

「だって…ほら。」
いづみの疑問に答えるように、なつみに抱かれている夢を指す。

「あっ…そっか。」

「それとこの性格はみらいだけの個性だから、パパやママは全然関係ないよ。」

「「あっ…そう。」」

「さて、本題に戻して…あんたはこれからどうするの?」
いづみが切り直して、みらいに問う。

「う〜ん…とりあえず江地さんを探す。んで、江地さんもこの時代にいたら、すぐに江地さんの所に行く。」

「ふ〜ん…で?どうやって探すわけ?」

「それなら大丈夫。ツバメ君に発信機を搭載してあって、それを頼りに探るから。」

「どうやって探るの?」

「それは…」と言いながら居間へ移動した。

なつみ達もみらいに続いて、居間へ移動した。

「これで探るんだよ。」
そう言いながらみらいのリュックからノートパソコンを出した。

「ノートパソコン!?」

「お前、まだ小学校に上がったばっかだよな!?」

「う、うん。」

「なんでノートパソコンなんか持ってんだよ!?その歳で!?それだけじゃねぇ、学校に行った帰りだったんだろ!?
学校にノートパソコンなんか持ってきて良いのかよ!?」

「あっそっか。ここは西暦1995年だから、パソコンはまだ一部のマニアしか持っていない時代なんだったっけ。」
大介が驚く理由が解り、1人納得していたみらい

「そうだけど…未来の世界じゃあ違うのか?」

「うん、2013年の未来の世界じゃあ学校にノートパソコンを持ってくるのが規則になってるんだ。」

『ええっ!?規則っ!?』なつみ達が一斉に揃えて言った。

「う、うん。私の居た未来の世界じゃあほとんどがデジタル化してて、だいたいの授業の時間にもパソコンを使うようになってるの。
もちろん、筆記を使った授業もちゃんとあるけど。」

「ま、マジかよ…」

「じゃあみらいちゃんの居た世界じゃあみんなノートパソコンを持ってるの?」

「うん。パソコンもこの時代の時より、値段が安くなってて、簡単に手に入るようになってるの。」

「へぇ…。」

「さてと、江地さんを探しますか。」
そう言いながらノートパソコンの蓋を開き、電源をオンにした。

電源が入り、ノートパソコンの画面には、「パスワードを入力してください。」と表示された。

「パスワード入力?そんなもんが付いてんのかよ?起動する時に……」

「パソコンをむやみに起動されないように作られた防犯防止対策機能だからね。」
大介の呟きに応えながらも、みらいはすぐに自分専用のパスワードを打つ。

すると、パスワードでロックが解除された。

「おっ、パスワードでロックが解除された。」

次の画面になったその時…

『みらい、お帰りっ!』

女の子の声がノートパソコンから聞こえてきた。

「な、なんだ!?ノートパソコンが喋ったぞ!?」

「ただいま。」

『みらいが留守中に届いたメールは2通だよ。どうする?開封する?』

画面にはみらいにそっくりな子が映し出されていて、喋っていた。

「それは後。今からツバメ君を追跡開始。」

『了解っ!ちょっと待っててねっ!』
そう言った後、ノートパソコンの画面は「準備中」という画面に切り替わった。

「な、なあ、みらい、なんなんだ?これ……」

「ん?ああ、これ?みらい専属コンピューターのネットナビゲーターだよ。」

『ネットナビゲーター!?』となつみ達一同は一斉に言った。

「ネットナビゲーター…ユーザーの分身で私がパソコンを起動していない留守中の間にも働いてて、
スケジュール管理とかを代わりに行ってくれるんだよ。」

「へ〜…やっぱ未来の世界で作られる技術は凄いわね〜。」

「ついでにいうと、ナビゲーターの性格はそれぞれユーザーによって違うんだ。
まぁ…簡単にいえば、持ち主の性格を反映して成長する仕組みになっているんだ。」

「ふ〜ん…そのコンピューター…お前にそっくりだな。」

「うん、ネットナビゲーターは持ち主の体をデータスキャンして、姿を貰うんだよ。」

「へぇ…すげぇな。」

ちょうどその時玄関の方から…

「「ただいま〜。」」という声が聞こえてきた。

「げっ!に、義兄さんとるり子姉ちゃんが帰ってきちゃった…」

みらい以外の者が慌てているうちに、居間へ浩三郎とるり子が現れた。

「何を慌てているの?あら…なつみ、その子は誰なの?」

「えっ…えっと…その…」言い淀むなつみ

『…準備完了!!ツバメ君の居場所をキャッチしたよ!』

「地図を画面上に表示。」

『了解っ!』

少し経ってからノートパソコンの画面に表示された。

『地図上で光っている場所が現在居る場所だよ。』

「えっと…ここは確か…」

「な、なんだ?このノートパソコンは…」

「誰なの?この子は?いづみ」

状況が解らず、混乱している浩三郎とるり子

「あ、いや、えっと…その…」なつみと同じように言い淀んでしまういづみ

「…ここって…矢熊山じゃん。」現在地が解り、呟いたみらい

『えっ!?矢熊山っ!?』
浩三郎とるり子と夢とみらい以外のみんなが叫んだ。

「おいっ!江地のおっさんが今、矢熊山に居るってのは本当か!?」
大介が代表してみらいに聞く。

「う、うん。たぶんここで間違いないと思うよ。」

「なら話が早い!すぐにでも行くぞっ!」

「私も行くっ!」

「「私たちもっ!」」

大介に続くように、なつみ達も次々に言う。

『ツバメ君の事は置いといて…メールはどうする?開封する?』

「あっ、じゃあお願い。」

『了解っ!』

「おいっ、すぐに行かなくてもいいのかよ?」
のんびりしているみらいに聞く大介

「その前にそこで混乱しているお2人に説明しなくて良いの?」
今1番すべき事をなつみ達に告げたみらい

「うっ…」

みらいは届いていたメールに目を通した後…

「…そんなに大したメールは届いていないね。」

『これからのスケジュール管理はどうする?…修正した方が良いよね?』

「しばらくはスケジュール管理はしなくていいよ、スケジュール管理は一時停止。」

『了解っ!それで…これからどうするの?みらい』

「「えっ!?」」
浩三郎とるり子が同時に驚いた声を出す。

「とりあえず江地さんの所へ行って、それから考える事にする。」

『…Zポイント…捕まえてみる?』

「う〜ん…とりあえず捕まえてみて?難しいと思うけど…」

『了解っ!』

「なつみ、この子…「みらい」って…」

「…ママ、パパ、よく聞いて。今ここにいる子は…2年前のクリスマスの時に未来へ帰っていったみらいちゃんなのっ!
今回は2007年じゃなくて、2013年の未来の世界からだけど…。」
ここまで来たら話すしかないと思ったなつみは両親にみらいの事を明かす。

「おいっ!なつみ!」

「黙っててもしょうがないもん…あんまり嘘とか、隠し事したくないし。今言った事は本当の事だから信じてっ!」

「あ…ああ…。」

「本当なのね?なつみ」

「うん、本当だよ。私達はこれから矢熊山に行かないといけないから、詳しい説明は帰ってきてからするから!」

「…ええ、わかったわ。」

なつみの言葉をしっかり受け入れた浩三郎とるり子

「……お話終わった?」

「お前…全然動じねぇな…歴史に関わる事なんだせ?」
呆れたように言う大介

「う〜ん、確かにそうだけど…間違った道に進まなければ大丈夫。」

「み、みらいちゃん…こういう時にまでマイペースなのね…。」
みらいのマイペースぶりにさすがに呆れてしまうえり子

「さてと…私はこれから江地さんの所へ行くけど…どうする?」

みんなに行くかどうか聞くみらい

「俺達はついて行くぜ。」

「車の運転は私に任せな。」

「それじゃ行こう。」
みらいはノートパソコンの電源を切った後、リュックにしまって背負った。

そしてみんな外に出て車に乗り込み始めた。

「じゃあママ、私達は矢熊山に行って来るから。」
そう言いながら、抱いていた夢をるり子に渡した。

「ええ、いってらっしゃい。」

「行って来ます!」

「なつみ、早く乗りなさいよ。」

「は〜い!今行きま〜す!」

その後なつみも乗り込んで矢熊山へ向かったのであった。


第5話へ続く。


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