ーー水木家ーー
なつみは学校から家に帰った後、制服から洋服に着替えた。
その後、もうお昼だったので昼御飯を食べた。
そして1時頃…ピーンポーンとインターホンが鳴った。
なつみは玄関に行き、ドアを開けると、そこにはタマエとえり子が居た。
「いらっしゃい、2人とも。来るの早いね、入ってよ。」
「「おじゃましまーす。」」と言いながら2人とも中へ入った。
その後3人はなつみの部屋へ移動した。
ーーなつみの部屋ーー
「なつみの部屋、久しぶりだね。」
「星祭りの時以来ね。」
「うん、そうだね!」
「夢ちゃんはお母さん達と同じ部屋で寝てるの?」
「うん。ロンドンに居た時は、たまに私と一緒に寝たりもしてたけどね。」
えり子の問いにすぐに答えるなつみ
「それじゃあまた一緒に寝る時があるわよね。」
「たぶんね。」タマエの言葉に同意するなつみ
「あれから2年か…あのマスコミ騒ぎが嘘のように静かだよね〜。」
2年前の事を懐かしむように呟くタマエ
「ほんとね。」同意するえり子
3人は、2年前にあんなに騒がしかったマスコミ騒動の時の事をそれぞれ思い出していた。
「あっそういえばなつみ、星祭りのために一時帰国した時、結局誰から星の髪飾り貰ったの?」
星祭りの時の事を思い出してなつみに問い詰めだしたタマエ
「えっ……」
「そういえばなつみちゃん…あの時、宙君と二人っきりになった後、そのまま家に帰っちゃったのよね。」
タマエに続くように、えり子も髪飾りがどうなったのか気になっていた様子。
「そうそう。そういえば宙君は元気にしてる?」
「うん、元気にしてるよ。」
タマエがいう「宙君」とは、なつみがロンドンで初めて出来た友達で、星祭りの一時帰国の時になつみと一緒にやってきた男の子の事だ。
「そっか。で?結局星の髪飾りは一体だ〜れに貰ったのかな〜?」
「えっと…それは…」言い淀むなつみ
「この〜、白状しなさいよー!」
「…大介…」
タマエの押しに負けて小さく呟いた。
「へっ?」呆気に取られるタマエ
「だから、大介から貰ったんだってばっ!」
「…ええっー!?」
「や、山口君から?」
驚くタマエとえり子
「…そうよ。」
「大介がなつみに星の髪飾りを?似合わな〜いっ!ホントに大介から貰ったの?」
素直な感想を言うも、未だに信じられないタマエ
「そうよ、ちょっと待ってて。」
なつみはある物を取りに行き、そして戻ってきた。
「それって…前に大介から貰ったっていうオルゴールだよね?」
「うん。」頷きながらオルゴールの蓋を開けた。
「あれ?このオルゴール…音が出なくなっているわね。」
「それで山口君に修理できるかをお願いしていたのね。」
「うん。で、この中に大切な物を閉まってあるの。」
オルゴールの箱の中から星の髪飾りを取り出したなつみ
「これが…大介から貰った星の髪飾り?」
「うん、そうだよ。」
タマエの質問にすぐ答えた。
「へ〜、大介にしては良いデザインね。」
そう言いながら、髪飾りをじっと見つめるタマエ
「これ…大介の本当のお母さんが身につけていた物で、家に残っていたたった一つの品物なんだって。」
髪飾りを見つめながら2人に教えるなつみ
「えっ?大介の本当のお母さんって…どういう事?」
「今のお母さん…山口君の本当のお母さんじゃないの?」
どうやらタマエとえり子は今の母親が大介の本当の母親じゃないという事を知らなかったようだ。
「うん、大介の本当のお母さんは大介が2歳の時に家を出ていったって言ってたから。」
「大平ちゃんとの血の繋がりは?」
「大平ちゃんは大介と父親が同じで、母親が違う腹違いの兄弟なんだって。」
「そうだったんだ…っていうかなんでなつみがそんな事知ってるの?」
疑問に思った事をスパっと聞くタマエ
「2年前…大介のお父さんが帰ってきてた時、大介ったら、お父さんと喧嘩してね、それでなんでお父さんと喧嘩したのかを聞いたら教えてくれたわ。
大平ちゃんとの関係にもいろいろ悩んでたみたい。実は大平ちゃんが大介の事を初めて「にいちゃん」って言ったの、この時なんだよね。」
当時の事を思い出しながら話すなつみ
「そうなんだ。」
「それじゃあ悩んでる山口君を救ったのは大平ちゃんのその言葉のおかげ?」
「たぶんそうだと思う。大介、大平ちゃんのその言葉が嬉しかったみたいだし。」
えり子の言葉に曖昧な返事を返したなつみ
「へ〜、あの大介がね〜。」
話を聞いて感心するタマエ
ちょうどその時、下から母のるり子がなつみを呼ぶ声が聞こえてきた。
「なつみー、大介君が来たわよー!」
「はーい!ちょっと待っててね。あっ今話した事…大介には言わないでね?」
オルゴールを置いて、星の髪飾りは自分の机の引き出しにでも仕舞い、
その後自分の部屋を出て下に降りていった。
「よっ、なつみ。」片手を挙げて挨拶する大介
「大介、いらっしゃい。大平ちゃんも一緒なんだね、大平ちゃんもいらっしゃい。」
「こ、こんにちは…おじゃまします。」丁寧な挨拶をする大平
「どうぞ、上がって。」
「おう。」
その後なつみは2人を連れて2階へ上がり、なつみの部屋へ行った。
「よっ、大介っ!それに大平ちゃんも。」
「た、タマエにえり子。お前らも来てたのか。」少し驚く大介
「そうよ〜、久しぶりになつみの部屋に来たかったし。」
「山口君、大平ちゃんに相変わらず懐かれているのね。」
「あ、ああ…まぁな。」
「はい、大介。オルゴール…直せるかどうかちょっと見てくれる?」
そう言いながら、オルゴールを渡すなつみ
「お、おう。」
大介はなつみからオルゴールを受け取って中身とかを調べ始めた。
「どう?」
「なつみの言う通り、このオルゴール…音が出なくなってんな。
まぁ、これくらいの故障なら、少し時間は掛かるけど修理すれば直るぜ。」
オルゴールの状態を確認した大介がそう呟く。
「ホントっ!?」
それを聞いて嬉しそうな声を出すなつみ
[ああ。」
「良かった〜…直らないなんて言われたらどうしようかと思っちゃった。」
直ると解ってホッとしたなつみ
「けど、このオルゴールだっていつかは必ず音が出なくなるぜ?」
そんななつみに今は直っても本当にいつかは壊れると言う大介
「解ってるわよ。でもまだ貰ってから2年しか経ってないのに、音が出なくなってたら悲しいもん。」
「…そんなに気に入ったのかよ?このオルゴールのメロディー…」
なつみの言葉が何げに嬉しかったが、照れ隠しする大介
「う、うん、だって素敵なメロディーなんだもん。なんか…このオルゴールのメロディーを聴いてると心が癒されるし。」
素直な気持ちをさらっと言うなつみ
「…そ、そっか。」
「それで…そのオルゴール…今日持って帰って修理しないと直らないの?」
「いや、オルゴールの音が出なくなったって言ってたから、ある程度の部品や道具は一応持ってきてるし、ここでも修理は出来るぜ。」
持ってきた道具を見せながら言う大介
「ホントっ?じゃあお願いしても良い?」
「ああ、いいぜ。」
なつみのお願いを了承する。
「ありがとう、大介!」
「大介ってほんっと昔から手先が器用だよね〜。」感心するタマエ
「ねぇ、山口君って、オルゴール以外に何か作った事はないの?」
「えっ…そ、それは…」
えり子の言葉に少し大介は顔を赤くした。
「あっやしいんだー、何?誰に何を作ったの?大介、白状なさいっ!」
そんな大介の様子を見逃さなかったタマエがさっそく詰め寄った。
「……えっと…な、なつみに…」
「なつみに?」
「その…ロケット…ペンダントを…作って…なつみに…やった…。」
「「いつ!?」」
「…に、2年前のなつみの誕生日に…」
タマエとえり子の押しにダジダジになる大介
「ロケットペンダントをなつみちゃんに?なつみちゃん、それホント?」
「う、うん。」
そう言いながら、首に掛けてあるロケットペンダントを外して、2人に見せた。
「これがその時に貰った大介の手作りのロケットペンダント。」
「へ〜。これがその時貰ったロケットペンダントか〜。」
「山口君が作ったこのロケットペンダント…凄く良いデザインね。」
「でもロケットって事は…中に写真が入ってるんだよね?」
「うん、ほら。」
タマエに言われて、なつみはロケットペンダントの蓋を開けた。
「あっ…この写真…みらいちゃんじゃないっ!」
「うん、2年前…大介のプレゼントを開けた時に同封していた手紙に、
このロケットペンダントにみらいちゃんの写真でも入れとけって。」
当時貰った手紙の事を思い出しながら言うなつみ
「やるわね、大介っ!」
「べ、別に大した事なんてしてねーよっ!」
「でも…なんで手紙?直接渡されたんじゃなかったの?」
「う〜ん…まあ、直接だったには直接だったんだけど…大介が隠し持ってたプレゼントをみらいちゃんが見つけて、
そのまま私が持って、大介が私へのプレゼントだって言った後、そのまま逃げるように帰っちゃったんだよね。」
タマエのもっともな指摘に苦笑いしながらも答えたなつみ
「あははははっ…なにそれ、想像してみたけど、信じられな〜い!」
思いっきり笑うタマエ
「う、うるせーっ!」
「タマエ、その辺しといてよ。オルゴールの修理が始められないじゃない。」
「あっごめん。つい…」
「大介、どのくらい掛かる?」
「う〜ん…だいたい1時間くらいかな。」
「そっか、じゃあその間、大平ちゃんは私達が預かってるね。」
「サンキュー!大平、兄ちゃんがオルゴールの修理をしている間、大人しくしてろよ。」
「うん。」大介の言いつけに素直に頷いた大平
「んじゃ、修理に取り掛かるか。」
「私達は邪魔にならないように、下の居間に居るから、修理が終わったら降りてきてね。」
「おう。」
その後なつみ達は、なつみの部屋に大介を残し、下へ降りていった。
それから時間が経過し…
「ふぅ…修理完了っ!一応確認すっか。」
そう言いながら、オルゴールの蓋を開けると、メロディーが流れ始めた。
雑音はなく、素敵な音を出していた。
「…なつみのやつ…このオルゴールのメロディーを聴きながら、みらいの事を思い出していたのかもしれねぇな。」
その後少しの間大介は難しい顔で考えていたが…
「さて、修理が終わった事だし、下に持って降りるか。」
今まで難しい顔をして考えていた事が嘘のようにふっとんで、オルゴールを持ってなつみの部屋を出て、下へ降りていった。
下の居間でなつみ達は楽しくお喋りをしながら大介の修理が終わるのを待っていた。
その時、大介が居間へ入ってきて…
「なつみ、オルゴール直ったぜ。」
「ホントっ!?」
「ああ。大平、大人しくくしてたか?」
「うん、大平ちゃん、ずっと大人しくしてたよ。」
「そっか。あれ?なつみ、お前の親父さんとお袋さんは?」
キョロキョロしながら聞く大介
「ああ、ママ達なら夢を私に預けて、買い物へ行ったわ。」
「そっか。オルゴール…聴くか?」
「うん、お願い。」
なつみに言われ、大介はオルゴールの蓋を開けた。
すると、綺麗な音でメロディーが流れ始めた。
少しの間そのメロディーが流れ、時間が経つと音が切れた。
「ありがとう、大介」
「別に。大した事ねぇよ、またオルゴールの調子が悪くなった時はいつでも俺に言いな。修理出来るかどうかは…その時によるけどな。」
「うん、ありがとう!大介!」
その時居間にいづみが現れた。
「あれ?大介君達来てたのね。」
「あっ、おじゃましてまーすっ!」
「ん?そのオルゴール……音が出なくなったって昨日の夜言ってなかったっけ?」
「ああ、それなら大介に頼んで直してもらった。」
いづみの疑問になつみが答えた。
「そうなんだ、じゃあ完全に壊れてたわけではなかったのか。良かったじゃん、なつみ」
「うん。」
「ん?外の天気…急に悪くなってんな、雷も鳴り出したし…今日天気悪いなんて言ってたっけか?」
ふと外に視線を移して、天気が良くないのに気づいた大介
「あれ?気づかなかった…」
大介に言われてなつみも外に視線を向けた。
「嵐になりそうな気がする…雨にならなきゃ良いけど。」外を見ながら呟くタマエ
「雷、怖いわ〜。」えり子は雷があまり平気ではないようだ。
「嵐……か。」
「なつみ?」
なつみの呟きが聞こえた大介
「みらいちゃんが来たのはこんな嵐の時だった…。」
「みらいちゃんか…元気にしてるよね?きっと…。いづみおばさんもえり子ちゃんも大介もそう思うでしょ?」
「ええ、きっと元気にしてるわよ。」
「ああ、みらいは…きっと元気にしてるさ。」
当時の事をそれぞれ懐かしむなつみ達。
「あ、ああ…。」
「どうしたのさ?大介」
大介の様子が可笑しい事に気づき、声を掛けるなつみ
「いや、なんか…嫌な予感がしてな…」
「嫌な予感?」
「ああ、これから何かが起きそうな…予感がな。」
「こんな時に冗談言わないでよ!」
大介のその不吉な言葉に言い返すタマエ
「いや、冗談なんかじゃねぇよ…さっきから胸騒ぎがしてるんだ…。」
その時、急に外で鳴る雷がひどく鳴り出した。
その音にビックリしたのか、今まで眠っていた夢が起きて泣き出した。
なつみはそれに気づき、すぐに夢を泣きやませ始めた。
「な、なんだ、なんだ!?」
「きゅ、急に雷が激しくなりやがった……」
そして外ではまた雷が一層激しくなり、停電を起こした。
「や、やだ、停電しちゃった!」
「停電…みらいちゃんが来た時と同じだ…」
「…そういえばあの時も停電してたわね。」
そしてまた外では、今度は雷が水木家のアンテナに落ちてきた。
そしてその雷を通してテレビが光りだした。
「な、なんだ!?テレビが光ったぞ!?」
「もしかして…タイムスリップが起きてるんじゃ…」
「ええっ!?一体どうして…」
なつみの呟きが聞こえ、聞き返そうとしたタマエ
「あっ、見て!姿が見え始めたわ!!」
みんなはえり子の声を聞き、光ってる方に注目した。
最初は影としてショートカットの髪の小さい体が移った。
「…大平と同じくらいだな。」呟く大介
その後だんだん姿が見え出し、姿がはっきりしてきた。
その幼女は目を瞑っていた。
「…小さな女の子?」呟くなつみ
少しずつ光が弱くなりだし、やがて光が消え、墜落しようとしていた。
「あ、あぶねぇ!」叫ぶ大介
その時テレビから出てきた幼女が目を開き、急いで靴を脱いで、着陸体勢に入り、
そのまま居間のテーブルの上へ綺麗に着陸した。
時刻は午後3時を指していた…
「…ふぅ…危なかった……」
そう言いながら今着陸した幼女はそのままペタンと座り込む。
「……あんな体勢から着陸しやがった…なんて奴だっ…」
助けようと動き出していた大介が自力で着地した幼女を見て驚いていた。
「…ここは……」呟きながら幼女は周りを見回した。
(……誰なんだ?…こいつ…)そんな幼女をじっと観察する大介
「……はぁ…やっぱり…ここ知ってるようで知らないところみたい……あの…今西暦何年ですか?」
幼女はため息をつきながらも、1番近くに居た大介に質問してきた。
「えっ…西暦1995年だけど。」
「…やっぱり。巻き込まれちゃった…江地さんのバカーっ!!」
「江地さんのバカって…おい、お前…もしかして…未来の世界から飛ばされてきたのか!?」
「江地」という名を叫んだのを聞き、大介は未来から来たと思った。
「…なんでそう思うの?」
「いや、こういう状況…前にも…んっ!?」
大介はある事に気づき、幼女を見直した。
「あの…何か?」
そんな大介に困惑した表情をする。
「お、お前……名前は?」
「…もし本当に未来の世界から飛ばされてきたなら、簡単に過去の世界の人達に自分の名前を簡単に名乗ると思う?」
大介の質問には答えず、逆に質問してきた。
「…んじゃあ、俺が今からいう名前が合ってるかどうか答えてくれ。」
「…わかった。」少し考えた後頷く。
「お前の名前…もしかして…「みらい」って名前か?」
「!?っ」幼女は驚く。
『えっ!?』
なつみ達も大介の言葉を聞いて驚く。
「合ってるか?」
「えっ、あっ…うん…合ってます。」
『ええっー!?』
またまた驚くなつみ達。
「どうして…解ったんですか?」
落ち着いたみらいが大介に聞く。
「…今から約2年前にお前がまだ赤ん坊だった頃の2007年から1992年のこの水木家に飛ばされてきた事があるからだよ。」
「私が?…なんか…信じられない…。」
「…その証拠が3つある。1つ目はお前の頭に着けてる髪留め…未来のなつみから貰ったんだろ?」
「えっ…なんでお兄ちゃんが…そんな事を…」
「その髪留め…いつから着けてんだ?」
「…知らない。でも、物心ついた時にはもう当たり前のように身につけてたから、たぶん赤ちゃんの時からだと思う。」
「2つ目、お前が服に着けてるブローチ、それも赤ん坊の頃から身につけてるんだろ?」
「たぶんそうだと思う。これも物心ついた時には当たり前のように身につけていたから。このブローチは…
お守りだからいつも持っていなさいってパパに言われていつも身につけている物なんだ。」
「3つ目、お前は水木なつみの娘だろ?」
大介はなつみの娘だという事をはっきり確信してそう言った。
「…当たってる…信じられないけど…私が過去に来た事があることは…ホントの事みたいだね。」
未だに受け止めきれてはいないが、自分が過去に来た事がある事だけは受け入れたみらい
「ええっ!?あ、あんた…あの時のみらいなの!?」驚き叫ぶいづみ
「ね、ねぇ、みらいちゃん、どこの時代から来たの?」
「えっと…ここが西暦1995年だから…今から18年後、西暦2013年から。」
なつみの質問に素直に答えたみらい
「に、2013年っ!?」
「じゅ、18年後の未来から!?」
「信じられないわ…そんな先の未来から来たなんて…」
なつみ達はみんな驚きを隠せない。
「…私もはっきり言って信じられない…ここが過去だって事も、前にも過去にやってきた事がある事も…。」
「未来のなつみから何も聞いてないのかよ?」
「全然。でも、これでやっとある疑問が解けたからいっか。」
大介にそう言われるが、本当に何も知らない様子。
「ある疑問?」
「あっ、こっちの話だから気にしないで。」
「んで?どうしてお前はここに飛ばされたんだ?さっき巻き込まれたとか江地さんのバカーっとか言ってたけど。」
みらいがここに飛ばされてきた理由を聞く大介
「…江地さんをご存知なんですか?」
「ああ、よく知ってるぜ。」
「私は江地さんが起こしたタイムスリップに巻き込まれて、ここへ飛ばされてきちゃったみたいなんです。」
「江地のおっさんのタイムスリップに?」
「何がどうなったら巻き込まれるわけ?」
「…だって…江地さんが悪いんだもん。」
いづみの呟きを聞いてムッした表情をするみらい
「江地さんが悪い??」首を傾げる大介
「うん。江地さんが私の家でタイムスリップを起こしてたんだもん。私が学校から帰ってきた時でちょうどタイミング良く、
タイムスリップが起きて、そのまま気がついたらここへ飛ばされてたんだもん。」
「ありゃりゃ…言わんこっちゃない…」呆れるタマエ
「じゃあその江地のおっさんもここに飛ばれてきてるんじゃねぇのか?」
みらいがここに飛ばされてきたなら、江地もこの時代に飛ばされてきてるのでは?っと思った大介
「その可能性はなくはないけど…別の時代に飛ばされてる場合もあるよ。」
「なんでだよ?」
「だって今ここに現れたのは私だけなんでしょ?だったら江地さんは別の場所に出現するわけで、
同じ時代に飛ばされたとは限らない…って前に江地さんがそういう事言ってた。」
「けど探してみないと解んないだろ?」
「それはそうなんだけど…江地さんの事だから、たぶんタイムマシンに往復分の補給はされていないと思うよ?」
「んじゃあ、すぐには帰れねぇって事か?」
「それもあるけど…江地さんのタイムマシン…乗れないと思う。」
「はっ?」
「どうして?そのタイムマシンに乗らないと帰れないんでしょ?」
「…江地さんのタイムマシン…たぶん2人乗りだと思うんだよね。」
なつみの疑問に答えるみらい
「2人乗りのどこかいけないの?」タマエも疑問をぶつける。
「…江地さんと一緒にツバメ君も居るはずだから…3人乗りじゃないと…帰れない。」
「あっ…そういえば2年前の時は2人乗りだったな。」
そう言いながら2年前の事を思い出す大介
江地のタイムマシンは2人乗りで助手のツバメも居るから、3人乗りに改良でもしない限り、すぐに未来へ帰る事は出来ないようだ。
「それじゃあどうやって帰るの?」
「まっ、その辺はなんとかするとして、それより…」
今の話を区切り、なつみへと視線を向けたみらい
「それより?」
「…台所…貸してくれない?」
「台所を?」
「お昼御飯…まだ食べてないからお腹空いちゃって…台所がないと調理出来ないんだよね。」
「御飯なら作ってあげるよ?」
「いや、もう食べる物は決まってて、家の中に入る前にタイムスリップに巻き込まれちゃったから、材料はそのまま今持ってるの。」
そう言いながら、持っていた買い物袋を見せるみらい
「げっ!これ…未来の世界の物なのかよ!?」
「何を作るの?みらいちゃん」
「ただの炒飯だよ。」
「作れるのかよ?お前…」
「うん、何度も作った事があるから慣れてる。それで…台所貸してほしいんだけど。」
「あっ、いいよ。」
「ありがとう!」
「靴、玄関に置いてきてやるよ。」
「ありがとう。じゃ台所使わせてもらいますっ!」
みらいは背負っていたリュックを降ろし、材料を持って台所へと行ってしまった。
大介はみらいの靴を玄関に置いてきて、戻ってくると…
「んで…これからどうするんだ?なつみ」
これからどうするかなつみに聞く大介
「どうするって?」
「あの子…2013年から来たって言ってたわよね?ってことはあのみらいは6歳だ。
前みたいに苦労はしないからその辺は安心みたいだけど。」
いづみもみらいの事をどうするか考え出した。
「でも…何か未来と交信する方法はないかな?このままだと…未来の私が心配しちゃう。」
「そうだよね。2年前の時も凄く心配してたもんね。」
なつみに同意するタマエ
「なつみちゃん、今は私達に出来る事をしましょう?」
えり子は心配そうにしているなつみを労わる。
「うん。」
「しっかし…みらいのやつ…どうやって帰る気なんだろう?」
「確かに…みらいに聞く必要があるな。」
いづみだけでなく、大介も気になっているようだ。
「大介、あんまり乱暴に言わないでよ?」
大介に釘を刺すなつみ
「言わねぇよ。ん?大平、どうした?」
大平の様子が可笑しいのに気付いて声を掛ける大介
「……。」黙ったまま怯える大平
「は、はーん、お前…みらいが居ると解ったから怯えてんのか?」
「あららら……」苦笑いするなつみ
会話をしながらみんなは居間にみらいが戻ってくるのを待っていた。
その頃台所では…みらいが調理をしていた。
(はぁ…18年前の時代か…それにしても…前にも過去に来たことがあるなんて…なんで教えてくれなかったんだろう?パパとママ…)
少しの間難しい顔で考えながら包丁で野菜などを切っていたが…
(…まぁ…自分の過去にあまり興味なかったから聞かなかったんだし、まっ、いっか。)
1人納得して、今の事はとりあえず忘れて調理に集中したみらいであった。
一方その同時刻、矢熊山の頂上の方にも同じような雷が落ちた。
そこには1台のタイムマシンが現れ、そのタイムマシンの中には自称天才科学者の江地とその助手のツバメが乗っていた。
「むっ!?…どうやらここは1995年のようじゃ。タイムスリップは失敗じゃの、ツバメ君。」
目的の時代に行けなくてガッカリする江地
「キプッ」
「さて…これからどうするかの?ツバメ君」
どうやら江地はまだこの時代に自分が起こしたタイムスリップに巻き込まれて
飛ばされてきてしまったみらいの事を知らないようだった。
一体これからどうなるのだろうか……?
みらいは無事に未来に帰ることが出来るのだろうか?
やっぱここでみらいちゃんのイメージを崩してしまったような気がします…
ごめんなさい!お許し下さいっ!!
みらいちゃんは一体どうやって未来に帰るのか?それはこれからのお楽しみに取っといて下さい。
(あまり楽しみにされても期待に添えられる自信はございませんので、小さい楽しみとして取っといてください。)
それでは第4話へお進み下さい。