ーー西暦1995年4月ーー城田国際空港ーー
「ふぅ…やっぱ久しぶりの日本は気持ちがいいな〜!」
中学生になったなつみがそう言った。
「そうね。そういえばなつみ、誰か出迎えが来るとか言っていなかったかしら?」
「あっ、そういえば忘れてた。来てるはずなんだけど…」
母のるり子にそう言われて思い出す。
その時なつみを呼ぶ声が聞こえてきた。
「なつみーっ!」
「なつみちゃーんっ!」
「その声は…タマエ!えり子ちゃん!」
「なつみ、久しぶり!元気だった?」
「なつみちゃん、久しぶりね!お帰りなさい!」
「ただいまっ!タマエ、えり子ちゃん」
「久しぶりね、タマエちゃん、えり子ちゃん」
迎えに来てくれた2人に声を掛けるるり子
「あっ、お久しぶりです。なつみのお母さん」
「お久しぶりです。あら…ねぇ、この子…以前お手紙で書いてあったなつみちゃんの妹?」
えり子がなつみの母のるり子に抱かれている子に気づく。
「そっ、この子の名前は水木 夢よ。」
「へ〜、かわいい。」
「ホント、かわいいわ〜。」
夢はタマエやえり子に満面の笑顔を見せていた。
「ところでいづみおばさんは?」
「あっ、来てるよ。」
「私達が先に急いで来たから、あとの3人はゆっくりこっちに向かってるわ。」
「3人?」
「そっ、いづみおばさんとあと2人は大介と大平ちゃんよ。」
「えっ?大介と大平ちゃんも迎えに来てくれてるの?」
少し驚きの声を出すなつみ
「そうよ〜。大介、背が伸びてるわよ〜。」
「大平ちゃんもね。」
ちょうどその時……
「なつみ、るり子姉ちゃん、義兄さん、久しぶり。」
「よっ、なつみ。」
叔母のいづみと大介の声が聞こえてきた。
「いづみおばさん!大介っ!久しぶり!それに大平ちゃんも久しぶりね。」
「大平、なつみに挨拶しろ。」
「なつみお姉ちゃん、こんにちは。」
そう言いながら頭をペコリと下げて挨拶する大平
「こんにちは。大平ちゃんも2年前より言葉が話せるようになってるね。」
「ったりめーだろーが。あれから2年だぜ?2年。2年前より言葉が話せてあたりめーだよ。」
「そうだよね。」
「いづみ、元気そうね。」
「るり子姉ちゃんもね。ん?この子は確か……」
「なつみの妹の夢よ。」
「へー、なつみが赤ん坊の時と似てない?」
なつみが赤ん坊の時の事を思い出しながら呟くいづみ
「そう言われれば、確かにどことなくなつみに似てるかも。」
「ほんとね。なつみちゃんによく似ているわ。」
いづみに同意するように、タマエやえり子もそう言う。
「義兄さん、お久しぶりです。」
なつみの父である浩三郎に挨拶するいづみ
「久しぶりだね、いづみ君。それになつみのお友達のみんなもわざわざ出迎えありがとう。」
「ところでいづみおばさん、どうやって来たの?1台で来たんじゃないよね?」
気になっていた事をいづみに聞くなつみ
「ああ、タマエちゃん、えり子ちゃんはあたしの車で来たんだけど、大介君と大平君は徳さんが運転してる車で来たのよ。」
「なつみの家の車、小型の車しかなかったから、徳さんに頼んでなつみ達をうちの車に乗せられるようにお願いしたんだ。」
「そうだったんだ。ありがとう、大介!」
「れ…礼なら徳さんに言えよ。」
「そうね、徳さんにもお礼を言わないと…」
「それより…なつみの妹だっつーたよな?そいつ。」
「うん、私の妹の夢よ。」
「…確かに似てるよな、お前とお前の妹。」
「そうかな?」
「くっくっくっ…今度はどうなんのかな。」
「何が?」
「ほら、みらいが来た時は大平をすっごく気に入ってたみたいだけど、こいつはどうなんだろうなと思ってさ。」
「ああ、そういえばそうだったわね。」
「さて、これ以上徳さんを待たせるわけには行かねえから移動するぞ。」
「それもそうね。」
「じゃあ移動しましょうか。」
移動を始め、その途中、ボビーを引き取り、車が置いてある駐車場へと移動した。
「徳さん、お待たせ。」
「これはこれは大介坊ちゃんに大平坊ちゃん、お帰りなさいませ。」
「徳さん、お久しぶりです。」
「おぉっ…なつみちゃんですか。お久しぶりです、お元気そうで何よりです。」
「初めまして、なつみの母です。今日は家まで送ってってくれるそうですね、ありがとうございます。」
「こちらこそ初めまして。良いんですよ、大介坊ちゃんの頼みですから。」
「早く移動しようぜ。」
「そうでございますね。さ、乗ってください。」
「なつみ、ママ達はいづみが乗ってきた車に乗るから、タマエちゃんとえり子ちゃんと一緒に徳さんの車に乗りなさい。」
「ありがとう。でも…いづみおばさんの運転…気をつけてね?最初は怖いから。」
いづみに聞こえないようにこっそりるり子に言うなつみ
「あら、そんなに怖いの?いづみの運転。」
「うん。はじめて乗った時、最初は怖かったもん。」
「そう、わかったわ。」
「なつみ、早く乗れよ。タマエとえり子、先に乗ったぜ。」
「うん、今行く!」
大介に呼ばれ、車に乗り込もうとするなつみ
「あっ、待って。」
「何?」
「夢も一緒に連れて行ってあげて。」
「えっ?夢も?」
「ええ、ちょうど夢がなつみの所に行きたがっているし。」
「うん、わかった。おいで、夢。」
るり子は今まで抱っこしていた夢を降ろし、夢は姉のなつみの所へゆっくりと歩いていった。
「じゃあまた後でね。」
そう言った後、夢を抱き上げて車に乗った。
車の移動中、なつみのロンドンでの出来事が話題になったり、夢の話題になったりしていた。
水木家に着き、みんな車から降りた。
「うわー、久しぶりの我が家だ。」
懐かしい自分の家を見てそう呟くなつみ
「大介坊ちゃん、これからどうなさいますか?」
「俺はまだここにいるよ。大平、お前はどうする?徳さんと一緒に先に帰るか?」
「兄ちゃんとまだここにいる。」
「というわけだ。徳さん、悪いけど…先に帰っててくれねぇか?」
「わかりました。大介坊ちゃんも大平坊ちゃんも帰る時はぐれぐれもお気をつけて下さいませ。」
「ああ、わかってる。」
「それではお先に失礼致します。」
「徳さん、今日はありがとうございました。」
なつみが徳さんにお礼を言う。
「いえいえ。それじゃあ。」
車に乗って「山口太郎左衛門商店」へと帰っていった。
その後みんな家の中に入っていった。
なつみは夢が眠ってしまったので、とりあえず2年前まで使ってた
なつみの部屋で寝かせるために連れて上がった。
その後、みんなでわいわいといろんな話をし、時間が経って夕方には外でバーベキューをして楽しんだ。
バーベキューを終えた後、みんな家に帰っていった。
そしてあとはお風呂に入ったり、家族でお話をしたりしているうちに時間が経ち、10時にはみんな寝た。
そして翌日…
午前7時、なつみの部屋では…
ジリリリリッ、ジリリリリッ…
なつみはその音に気づき、目覚まし時計のスイッチを切った。
「う、う〜ん…よく寝た。」
そう言った後、ベットから降りて、服を着替え始めた。
少し経って、なつみは制服に着替え終わった。
そう、今日は中学校の入学式の日で、なつみ達は今日から中学生に進級するのだった。
制服に着替え終わった後、自分の部屋にある鏡の前に行って、髪を整えた。
「よし、これでOK!」
そう言って自分の部屋を出て下へ降りた。
ーー1階ーー居間ーー
ボビーが伏せて大人しくしていた。
「ボビー、おはようっ!」
「ワンッ!」
ボビーと挨拶を交わした後、リビングへ行った。
「おはよう、なつみ」
なつみに気付いて声を掛けるるり子
「おはよう、ママ」
挨拶を返しながら、テーブルの自分の椅子に座った。
「今日から中学生ね。はい、今日の朝食。」
そう言って、なつみの朝食を運んできたるり子
「ありがとう、パパは?」
「まだ寝てるわ。そろそろ起きるんじゃないかしら?」
「あっそう。それじゃいただきまーすっ!」
そう言ってなつみは朝食を食べ始めた。
るり子も椅子に座って、朝食を食べ始めた。
そして少し時間が経った後、リビングに誰かが現れた。
「ふわぁ〜……」
なつみの父、浩三郎がリビングに現れた。
「おはよう、パパ」
「ああ、おはよう、なつみ」
その後、るり子は浩三郎にも朝食を用意し、浩三郎は朝食を食べ始めた。
3人とも食べ終わった後、るり子は食器洗い、浩三郎は居間に行って新聞を読み始め、
なつみは母親のるり子に夢を起こして連れて降りてきて欲しいと頼まれたので、また2階へ上がった。
妹である夢が寝ているのは、両親の寝室なのでそこに向かった。
部屋に入り、なつみは夢が寝ている所へ向かった後…
「夢、朝だよ。」
「う、う〜ん…」夢はまだ眠い目をこすりながら唸っている。
「ほら、朝だから起きよう?」
なつみは夢を抱き上げて、そのまま両親の寝室を出て下へ降りた。
居間へ行くと、そこには父親の浩三郎と母親のるり子とボビーが居た。
「あっ、なつみ、ありがとう。」
「夢、まだ眠そうにしてるよ?」
そう言いながら、夢を居間のソファーに降ろした。
「あら、そうなの?でもそろそろお腹空いてる頃よ?朝御飯食べようね〜。」
母親のるり子は夢にご飯を食べさせ始めた。
その後は浩三郎が服を着替えたり、いづみが起きて来たりとかして、入学式に行く準備をしていて、
時間が経過し、出かける時間になった。
「あっ、そろそろ行かないと。」
「そうね、それじゃあ出発する前に記念写真を取りましょう。いづみ、お願いね?」
「うん、わかったよ。るり子姉ちゃん」
その後外に出て、庭でいづみがカメラを持ってなつみ達家族の記念写真を撮った。
「それじゃあいづみおばさん、行ってきますっ!」
「ああ、行ってらっしゃい。」
「それじゃあいづみ、悪いけど…夢の事お願いね?」
「ああ、わかってるよ。るり子姉ちゃん達も行ってらっしゃい。」
その後なつみ達は、夢をいづみに預け、なつみの中学の入学式へと出かけて行った。
「今日からなつみは中学生か〜、時間の流れは早いな…」
独り言呟いた後、家の中へ入っていったいづみだった。
ーー夢が丘中学校前ーー
「じゃあパパ、ママ、行ってくるね。」
「ええ。」
なつみは教室へ向かい、るり子と浩三郎は体育館へと向かった。
なつみが向かった教室、1年3組では……
「あっ、なつみちゃんおはようっ!」
「おはよう、えり子ちゃん!タマエは?」
「まだ来てないわ。」
「そうなんだ。大介も?」
「ええ、山口君もまだよ。」
ちょうどその時…
「なつみ、えり子ちゃん、おはようっ!」
「おはよう、タマエ。遅かったじゃん!」
「ちょっといろいろあってね。大介は?」
「大介ならまだ来てないよ。」
「そうなの?あっそうそう、今週の日曜日、忘れないでよ?同窓会。」
「うん、忘れてないよ。ちゃんと時間空けてあるから。」
「みんな絶対に集まるって言ってたから。」
「ホントっ!?」
タマエの言葉を聞いて嬉しそうにするなつみ
「うん!みんな久しぶりになつみに会えるのを楽しみにしてるよ〜。」
その時にちょうど良いタイミングで大介が現れた。
「あっ大介、おはようっ!」
大介に気付いて声を掛けたなつみ
「よ、よう。」
「大介遅かったじゃん!って言っても私もさっき来たばっかなんだけどね。」
「大平を幼稚園に送ってたら遅くなっちまったんだ。」
その時……
「新入生諸君、全員自分の席に着けっ!」と号令がかかり、なつみ達もそれぞれの席に着いた。
その後、その先生はこのクラスを受け持つ事になった担任の先生だという事を知った後、先生の指示で、みんな体育館へ移動した。
その後、入学式が始まり、校長先生の話やら、在校生の話やら、PTA会長の話やらで事が進み、
最後には学校校歌を歌い、その後退場した。
再び1年3組の教室に戻った後、担任の先生が明日の授業の連絡や、教科書類などを配ったりして時間が経過した。
そして時間が経ち、すべての事を終えた後、新学期初の号令であいさつをして、終了した。
「なつみ、一緒に帰ろう。」
「なつみちゃん、一緒に帰りましょう。」
「そうだね。タマエ、えり子ちゃん」
「山口君もどう?」
「俺は別にいいよ、じゃあな。」
「あっ、待って大介!」
「なんだよ?」
「昨日忘れてて、言わなかったんだけど、実は…2年前に大介から貰ったオルゴールの音が出なくなっちゃって…
直せるかどうか見てもらいたいから、今日またうちに来てほしいんだけど…ダメかな?」
「…別にダメじゃねぇよ。けど飯食ってからな。」
「ありがとう、大介!」
「別に。じゃ、また後でな!」
そう言って大介は逃げるように帰って行った。
その後なつみ達も帰り始めた。
中学校を出た帰り道…
「今日の入学式の話…長かったよね〜。」
うんざりしたように呟くタマエ
「そうだね。でも入学式なんだからしょうがないんじゃない?」
「それはそうなんだけどね〜。」
なつみの言う事はもっともだが、やっぱり長い話は嫌だと思うタマエ
「でもタマエちゃん、こうしてまた3人で学校生活を送れるんだから良いじゃない。」
「それもそうだね!」
えり子の言葉にすぐに元気に戻ったタマエ
「2年前に言ったでしょ、2年経ったら帰ってくるって。」
「うん、そうね。」
「なつみはロンドン帰りだから、英語はバッチリだよね!」
「う〜ん、そうかもね。でも解らない所があったら、いつでも教えてあげるよ。」
「サンキュー、なつみ」
「困ったときはお互い様じゃない。」
「そうだね。」
「「「あははははっ……」」」
「あっ、じゃあ二人ともまた明日ね。」
「あっ待って。なつみ、私達も昼御飯を食べた後、なつみの家に行っても良い?」
「いいよ、じゃあまた後でね!タマエ、えり子ちゃん」
「うん、また後でね!」
「ええ、また後でね。」
なつみはタマエとえり子と別れ、家に帰っていった。
「夢」という名前は、私が考えて付けた名前です。
ちょ〜とここは悩みましたね〜。
なつみの弟にするか、妹にするかとか、どんな名前にするかとか。
あっ、夢が丘中学校って名前にしたのは、なつみ達が住んでる町が夢が丘だからです。
それでは第3話へお進み下さい。