大介の乾杯の挨拶が終わって、同窓会が始まり、みんなはそれぞれ芸をしたり、
4年生当時の出来事を話したりとかなり賑やかにパーティーをしていたのだった。
だが、誰かが窓の外を見たのをきっかけに静まり返っていた。
窓の外を見てみると、さっきまで晴れていた空が一気に曇り、これから嵐が来るかのような勢いだった。
「なんだ、なんだ!?」
「うぞっ!?さっきまで晴れてたのに!?」
「…っていうか、今日はお天気悪くなるなんて言ってなかったのに!?」
同窓会をしていたみんながそれそれパニック状態だった。
その中でも落ち着いていたのはやはり、未来からみらいと勇平が来ている事を知る大介達であった。
「ねぇ、大介…」
「ああ…もしかしたらこれって…」
大介となつみはこの突然の天気の変化にもしやと思っていた。
そしていよいよ天気が悪くなり、雷が鳴り始めた。
『きゃーっ!雷ーっ!!』
女子の何人かが雷に驚いて騒ぎ始める。
その間に停電も起こり、真っ暗になった。
外では、雷がだんだん激しくなり、どこかに雷が落ちてきた。
そう、それは…
「きゃー!?タマエ、テレビが光ってるわよ!?」
「雷が落ちたんじゃない!?」
そう、ここはタマエの家の中華料理店。
来店したお客さんの為にテレビが置かれているのだ。
「ちょっと、これってっ…!?」
タマエもこの光り方を見てもしやと思い始める。
それはえり子も同じだった。
テレビの光が一層激しく光り出して目を開けていられなくなったみんなは目を閉じた。
少ししてテレビの光が収まり、その後停電が直ったのか電気もついた。
みんなが収まったのを感じて目を開けてみると……
テレビの前に2人の少年が立っているのが見えた。
「ここは…」
今周りを見回しているのは、茶色の髪を逆立て、鋭い瞳をした少年で、ここに居る大介となつみはまだ知らないが、
未来の世界で未来の大介となつみと親しそうに話していた大地だった。
「出る所…間違えたみたいだな。」
もう1人の方は大地よりも少し背が高く、左に流した明るい色合いの金の短髪は、今この場が太陽の下で風が吹いていたなら
サラリと陽の光でキラキラ輝いていただろう。そして優しい光を宿した瞳は冷めた表情をしている為、
感情が表に出る事はなく、とても大人びて見える少年だった。
「ああ…悪い、矢熊山の方に出るつもりだったんだが…」
「気にするな。ここに来るだけでも大変なんだ、このくらいどうって事ないだろ。」
「お…おいっ!お前らもしかしてっ…!?」
2人の少年の出現で驚き固まっていた大介だったが、硬直状態を解いて2人に向かって話しかけた。
「大介、君の知り合いなのかい?」
2人に話しかける大介を見てそう思ったマリオ
「い…いや、知り合いじゃねぇけど…(やべっ…マリオ達も居るのを忘れてたぜ…どうする!?みらい達の事、話すべきか!?)」
「大介…(どうしよう…みんなにみらいちゃん達の事…話した方が良いのかな?)」
大介となつみは今の状況を含め、みんなに隠しいている事を話した方が良いのか悩んでいた。
「おい、山口大介」
「な…なんだ?」
「あいつは…みらいは今どこに居る?」
「あ、あいつは今江地のおっさんとこに…」
「矢熊山か?」
「あ、ああ…」
今、大介にみらいの事を聞いてきたのは大地の方だった。
「ねぇ水木さん、それに大介も。もしかして…今の雷はただの雷じゃなくて、タイムスリップが起きたの?」
深沢龍一は、今の雷で現れた2人とその事で様子が可笑しくなった大介達、
そして今話してた「みらい」の事を聞いて思った事を言う。
「えっ!?タイムスリップ!?」
「それって2年前にみらいちゃんを未来に返した時のあの雷の事!?」
「でも、タイムスリップってそんな簡単に起きねぇもんなんじゃ?」
深沢龍一の一言で元4年2組のクラスメイト達は2年前のクリスマスの日に起きたタイムスリップの事を思い出す。
「龍一君…」
「話してよ、水木さん。みらいちゃんの事でまた何かが起こっているなら教えて欲しい!」
「そうだよ、なつみ!私達、2年前の時みたいに力を貸すわよ!」
「なつみ、僕達も力になるよ!」
「私達の間で隠し事は無しだよ!?」
元クラスメイトのみんなが次々となつみに言う。
「みんな……わかった、話すよ。」
なつみが確認するように、大介、タマエ、えり子を見たが、みんな頷いてくれた。
なつみは話した、今起きてる事を…
ロンドンから帰国し、入学式のあった日にタイムスリップが再び起きた事。
今、なつみの家と大介の家それぞれ1人ずつ未来の世界から来た子が居る事。
その内の1人は成長したみらいであるという事。
そして、みらいの父親が大介だったという事を…
「そっか、またみらいちゃんがこっちに…」
「タマエ達だけずるーいっ!」
「私達も成長したみらいちゃんに会ってみたい!」
「こらこら、今はそんな場合じゃないでしょ。」
「ねぇ、なつみ」
「何?マリオ」
「今現れたあの2人も未来から来た人なんだよね?」
「あっ…」
マリオに言われて、なつみ達は2人の少年の事を思い出した。
その2人の少年はどこへも行かずに、今まで黙ってなつみ達の話を聞いていたようだった。
「この2人の事は私達も知らないの。今初めて会うわ。」
「お前ら…みらいと同じ時代から来たんだよな?」
「ああ、そうだ。」
「俺達はみらいの両親に頼まれてここへ来たんだ。」
大地の後に付け加えるように、もう1人の金髪の少年が言う。
「みらいの両親って事は……」
「未来の私と大介に?」
「ああ。」
「じゃあみらいちゃんと勇平君を迎えに!?」
「いや、違う。」
「えっ!?違うって…」
大介となつみの質問に短い言葉で返していく大地
「俺達がここへ来たのは、修理中のタイムマシンを直すのに手を貸し、この時代へ飛ばされてしまった2人を無事に未来へ送り帰す為だ。」
大地が短い言葉しか返さないので、もう1人の金髪の少年が付け加えるように、自分達がこの時代へ来た理由を教える。
「タイムマシンを修理って……それは今江地のおっさんが…」
「それは聞いて知っているよ。けど、俺達が手伝えば、それだけ修理が早く終わるだろ?」
「た…確かに…」
金髪の少年の言う通り、確かに人手が増えれば修理が早く終える事が出来、未来の世界に帰れる日が早くなると納得する大介
「残念ながら、今の俺達ではここまで遠い過去へ来るのに自分1人だけでも手一杯なんだ。だから俺達が連れて帰る事は出来ない。」
「ん?自分1人で手一杯?どういう事だ?」
「俺達はタイムマシンではなく、自分達の力を使ってこの時代へ来たんだ。」
「タイムマシンを使わず、自分達の力でって…そりゃどういう事だよ!?」
「俺達2人は時間移動が出来る。」
「時間移動だって!?」
「ああ。その力を使って俺達はここへ来たんだ。だから今、俺達に出来る事はただ一つ…
1日も早く、みらいと勇平を両親の居る未来へ無事に送り帰す事だ。」
「そ…そうなのか。」
物凄く衝撃的な事を聞かされ、ある者は唖然とし、ある者はそういう力を嘘だろ!?っと騒いだりと…人それぞれだった。
「そういえば、まだ名前を言ってなかったな。俺は夢時 聖(ゆめとき しょう)、中学2年だ。」
金髪の少年はまだ名前を名乗っていなかった事を思い出し、大介達に名乗った。
「中2!?(結構大人びて見えたから、てっきり高校生ぐらいだと思ってたぜ…背も高いし。)」
中2と聞いて驚きを隠せない大介
それは大介に限った事ではない。
なつみや他のみんなもそう思っていたようだった。
「んで。こっちが…」
「大地」
説明を全て自分に任せて、ずっと黙っていた大地の事を教えようとしたが、本人が自分で名乗った。
「こら、簡単に終わらせ過ぎだ。大介さん達に失礼だろう?」
聖が軽く注意するのも無視してそっぽ向く大地
「まったく…すまない、君達にはおそらく大地が中学生に見えるかもしれないが…これでもまだ小学6年なんだ。」
大地に代わって謝罪し、大地が大介達より年下だという事を教える。
「なにぃっ!?まだ小6なのかよ!?」
またまた驚いて思わず叫んでしまう大介であった。
「聖兄…」
勝手に情報を与えるなとでも言うように聖を睨む大地
「このくらいなら別に構わないだろ。」
睨んでくる大地を宥める聖
「たくっ…」
「えっと…夢時さん…」
聖が自分達より年上だと聞いて、「さん」付けで呼ぶなつみ
「『聖』でいい、未来のなつみさんからは名前で呼ばれてるから。敬語も要らない。」
「そ…そう?じゃあ…聖君…で良いかな?」
「構わない。それで?」
「あ、うん…あなた達2人は未来の私と大介に頼まれてここへ来たんだよね?」
「そうだけど…」
「未来の私達のお願い…どうして聞き入れてくれたの?ここへ来るの、とても大変なんだよね?」
「それは……」
「あんた達からの願いだったからだ。」
なつみの問いにどう答えて良いか困っている聖を見兼ねて大地が答えた。
「え?私達だったから?」
「ああ。」
それ以外に理由など無いとでもいうように、はっきりと肯定する大地
「大地君…」
「けどよ、そうすると…お前ら、未来の俺らとは今回の事になる前からの知り合いなんだよな?」
「ああ、俺は父さんを通して知り合った。」
「俺はって事は…」
「大地は俺とはまた違った経緯で知り合っている。悪いけど、詳しい事は話せない。」
自分の事はあっさり明かしたのに、大地の方は詳しく教えず隠す聖
「話せないって…(そう言われると、めっちゃ気になるんだけどっ!?)」気になる大介
「(大介さん、めちゃくちゃ気にしてるみたいだな…)あ、そうだ。大介さん、勇平は今どこに?」
「俺ん家だよ。義母さんや大平と一緒さ。」
「そうか…みらいと一緒じゃないのか。」
「お前ら…今から矢熊山に行くのか?」
「ああ、みらいが矢熊山に居るなら行くさ。な?大地」
「ああ。」
「なら、俺達も…」
突然、乱暴にドアを開けた音がし、大介達は驚く。
大介達が音の聞こえた入口のドアへ視線を向けると…
「なっ…みらい!?」驚きの声を上げる大介
そう、今乱暴にドアを開けて入ってきたのはみらいだった。
傍には江地の助手ロボットのツバメも一緒だった。
「あれがあの時のみらいちゃん?」
「え!?あれがなつみ達の言ってた、成長したみらいちゃんなの!?」
「ワォ…なつみにそっくりだ…」
なつみの元クラスメイトのみんなが突然現れたみらいに驚き騒ぐ。
みらいは自分が注目の的になっているのに、まるでその事に気づかないかのように
口を閉ざしたまま、2人の少年の前までゆっくりと歩んだ。
「良くここに俺らが居る事が解ったな?」
自分達の前まで来たみらいに話しかけた大地
「装置でタイムスリップの発生を観測したから。」
「装置?だが、あれは自然に起きるタイムスリップしか観測出来なかったはず…」
「そんなの改造したに決まってるでしょ。」
「……そうか。」
「どうして…」
「ん?」
「どうして2人がここに居るの!?」
みらいは険しい表情で2人に向かって怒鳴るような声で問いかけた。
タマエの家が経営している中華料理店に突然現れた2人の少年…彼らは「聖」と「大地」と名乗っていた。
その後、今度は矢熊山に行っているはずのみらいが助手ロボットのツバメと共に姿を現した。
果たして、みらいと2人の少年の関係は…!?
やっとオリキャラを過去の世界へ登場させる事が出来ました!!
大地の方は未来の世界の方で既に登場していましたが、
もう1人の方は今回が初登場です。
さて、次回はみらいと2人の少年の間でどんな会話が繰り広げられるでしょうね?
それでは第30話へお進み下さい。