大介となつみは、同窓会の時間に間に合うよう、10時前には着くように早めに家を出ていた。
なつみは夢を連れて家を出て、大介の方は大平はもちろん留守番だが、佐和子と大平に勇平の事を任せて家を出た。
午前9時30分――中華料理店前――
「あっ」
「おっ」
約束したわけでもないのに、タイミング良く鉢合わせた大介となつみ
「大介っ!」
「よっ、なつみ。お前、来るの早いじゃねぇか。」
「そっちこそ。」
「まあ、俺は一応お前を迎える側だからな、早めに来てて当たり前だ。」
「なによ、その“一応”って…」
大介の言葉にカチンとくるなつみ
「おいおい、そんなに根に持つなよ…」
「誰が持たせてんのよっ!!」
「まあ、落ち着けよ、夢が怯えちまうぞ?」
「もう…」
「ほら、中に入ろうぜ? まだタマエ以外で集まっている奴はいねぇだろうけどな。」
大介に上手くかわされてしまったのは悔しいが、そのまま大介に言われた通り、中華料理店の中へ入っていった。
「あれ?なつみと大介じゃない。」
「よっ、タマエ」
「おはよ、タマエ」
「おはよう、2人とも早いね、みんなまだ来てないよ。えり子ちゃんはもうそろそろ来ると思うけど…」
「みんなに会うのが待ち遠しくて、早く来ちゃった。」
「俺はたまたま早く来ただけだ。」
「そっか。それにしても…」
「な、なんだよ?」
「な、なによ?」
「あんた達をよく見てみると、結構夫婦も似合ってるじゃない。」
「「なっ!?」」
「あり? 反応あり!?」
冗談のつもりだったが、思いの外2人が反応したので食いつくタマエ
「ちょっとタマエっ! からかわないでよっ!」
「だって仕方ないじゃない、本当の事だし。それに2人の反応、面白いしねっ」
「タ〜マ〜エ〜」
「タマエ、俺たちで遊ぶなよ…」
「あははははっ…」
「タマエちゃん、そんなに意地悪したら、2人が可哀想よ。」
えり子の声が聞こえ、なつみ達は声を掛ける。
「あっ、えり子ちゃん、いらっしゃい。」
「えり子ちゃん!おはようっ!」
「おはよう、なつみちゃん、タマエちゃん。山口君もおはよう。」
「お、おうっ」
「みんな、10時から次から次へとやって来ると思うからそれまで話をして待とうよ。」
「うん、そうしよう。」
タマエの提案に賛成するなつみ達。
「んじゃ…大介」
大介に話し掛けるタマエ
「な、なんだ?」
「勇平君の様子はどう?」
「ど、どうって言われても…」
「何も変わりないの?」
「いや、そうじゃねぇけど…」
「何かあったのね!?何、何があったの!?」
「タ、タマエ、落ち着けっ!」
「私は落ち着いているわっ!さっ、話して!」
「実は昨日の夜中の事なんだけどよ…」
大介は昨日の夜中に起きた事をタマエ達に話した。
「…っという事があったんだ。」
「へぇ〜…そんな事があったんだ。」
「そうなんだ、大変だったみたいだね。」
「まあな。なつみ、お前の方はどうだ?」
今度は大介がなつみに話し掛けた。
「えっ?」
「みらいだよ。あいつは何も変わりねぇのか?」
「うん、何も変わりないよ。あっでも…」
「ん?何かあったのか?」
「うん。今日、朝食を取っていた時の事なんだけどね…」
なつみは朝食の時にるり子から聞かされた事を話した。
「…って言ってたんだって。」
「良かったじゃねぇか、なつみ」
「良かったわね、なつみちゃん」
「でもみらいちゃん、ほんっとうに強いねっ!」
「ええ、そうね。親に直接会う事ができないのに頑張っているんですもの。」
「そーだな。」
未来の世界に居る両親とは通信で話が出来るとは言え、直接触れ合う事が出来ない状況下で
めげずに頑張っているみらいに感心するなつみ達であった。
「あっ、そろそろ時間だ。」
「ほんとだ〜」
「じゃあなつみ、もし夢ちゃんの面倒を見てて欲しくなった時は言ってね。私が代わるからさ。」
「私に手伝える事があったら、遠慮なく言ってね。」
「ありがとう。タマエ、えり子ちゃん」
午前10時になり、次から次へとやって来た。
「チャオ、なつみ! 元気にしてたかい?」
「マ、マリオっ!あんた、どうしてここにっ!?」
イタリアに居るはずのマリオに驚くなつみ
「あのね、マリオ君は1年前にこっちへ戻ってきたのよ。」
マリオは1年前に日本に帰ってきたと教えるえり子
「ええっ!?」
「1年前、パパとママから戻って来いって言われてさ、すぐにはその気にはなれなかったから、始めは断っていたんだけど…
タマエからの手紙で、なつみが予定通り一年後に帰ってくる事が解ったから、ひと足先に戻ってきたんだよ。」
「そうだったんだ。それにしても…」
「ん?」
「マリオ、あんた見ない内に凄く背が伸びてるじゃないっ」
「うん、まあね。ところでなつみ、その子誰だい?」
なつみが抱いている子に気づくマリオ
「えっ?」
「みらいちゃんではないよね?」
「あっ、うん。この子は私の妹の夢よ。」
「へぇ…夢ちゃんか。可愛い名前だね。」
「水木さん」
マリオに続いて、深沢龍一がなつみに話し掛けてきた。
「龍一君っ!久しぶりっ!」
「久しぶり。その子が水木さんの妹の夢ちゃんだね。森さんや立花さんから聞いて知っていたよ。」
「うわ〜っ、かっわいいっ〜!」
「ほんとだ〜、なつみにそっくりね!」
「紗利衣! 清子! 久しぶりだねっ!」
「久しぶり、なつみ」
「相変わらずその活発さは健在みたいだね。」
「まあね。」
「それにしても…夢ちゃんを見てると、2年前に未来からきたみらいちゃんの事を思い出しちゃうよね!」
「ちょっ、ちょっと紗利衣っ!」
「あっ…ごめん。」
「ううん、全然平気だから。気を遣わせちゃってごめんね。」
「なつみ…」
なつみは次々と現れる元クラスメイト達と久しぶりの会話を交わしながらわいわい過ごしていた。
午前10時30分頃になり、花田英夫以外のメンバーはすでに揃っていた。
「おっせーな…英夫のやつ。」愚痴る大介
「何かあったのかな?」
「花田君の事だから、もしかしたらお母さんに呼び止められているのかも。」
「あははっ、ありえるかも!」
みんなでまだ来ていない英夫の事で噂をしていると、ドアが少し乱暴に開いた。
「はぁ…はぁ…み、皆さん!お、遅れてすみませんっ!!」
走ってきたのか、息を切らせながらやって来た英夫
「おせーよ、英夫! 何してたんだよ?」
「すみません。本当は遅くなるはずではなかったのですが、家を出ようとした時になって、タイミング悪く、母に捕まってしまいまして…」
「おいおい…またお前んとこの母さんが絡むのかよ…変わってねぇな〜」
「す、すみません…」
「まあいいや。よし、みんな揃ったし、始めるかっ!」
全員揃ったので、同窓会を始めようと言う大介
「待ってましたっ!じゃあまずは乾杯からね。今からえり子ちゃんと私が配る紙コップを一人ずつ受け取ってね!
その後はそこの置いてある、7種類の飲み物の中から選んで、紙コップに注いでねっ! それじゃ、えり子ちゃん、お願いね。」
「ええ、わかったわ。」
タマエが言った通り、2人から配られる紙コップを受け取って、それぞれ自分の好みの飲み物を紙コップに注いでいた。
飲み物の種類は…コカ・コーラ、サイダー、オレンジ、ぶどう、アップル、お茶、紅茶の7種類あった。
「おい、なつみ」
「ん?」
「お前はどれを飲みたいんだ?」
「えっ?」
「その…夢を抱いてるから、注ぎにいけねーだろ。だ、だから俺がかわりに入れてきてやるよ。」
「ありがとうっ!」
大介のさり気ない優しさが嬉しかったなつみ
「べ、別に。そ、それより、どれを注いできて欲しいか選んでくれ。」
「あっ、うん。じゃあ…アップルジュースをお願い。」
「アップルジュースだな?OK」
「あっ、それと…」
「ん?」
なつみは自分が持ってきた荷物の中に手を突っ込み、ゴゾゴゾと何かを探していた。
「あっ、あった、あった。」
「何があったんだ?」
「大介、ついでに悪いけど、これにもアップルジュースを注いできてくれる?」
そう言いながらなつみが取り出したのは、ストロー付きのコップだった。
「ああ…夢の分か。わかった、いいぜ。」
「ありがとう。」
「んじゃ、注いでくる。」
アップルジュースを注ぎに行った大介
少しして、大介がなつみと夢の分のアッブルジュースを注いで戻ってきた。
「ほらよ、入れてきたぜ。」
「ありがとう、大介」
「じゅーちゅ」
「ん?欲しいのか?ちょっと待ってろよ。」
大介はコップに外しておいたストロー付きの蓋をはめた。
「ほらよ。」
夢は大介からアップルジュースを嬉しそうに受け取り、ストローを口に咥えて飲み始めた。
「夢、嬉しそうに飲んでる。」
「それにしても…やっぱお前が居るのと居ないとでは、全然この場の雰囲気が違うぜ。」
「えっ?」
「実はさ、去年もこうやって、マリオとお前を除いたメンバーで同窓会をしてたんだよ。」
「そうだったんだ…」
「みんな、それぞれコップに好みの飲み物を注いだわね?」
タマエが周りを見回して確認していた。
「全員注ぎ終わっているみたいだね。じゃあ…大介!」
確認し終えた後、大介に声を掛けるタマエ
「なんだ?」
「今年はあんたがやってよ、乾杯の合図。」
「なんでだよ?去年と同様にお前がやりゃあいいじゃねぇか。」
「ダ〜メ。もう決めちゃったんだもん。」
「き、決めたって…」
「大介、やりなよ。」
「そーだ、そーだ。僕だってしたいのにさっ」
「んじゃ、マリオ。お前に譲るからやれ。」
やたがってるマリオに譲ろうとする大介
「えっ?いいの!?」
「マリオ君、ダメよっ!今年は大介ってもう決めてあるんだから。」
喜んで替わろうとしていたマリオを制するタマエ
「ええ〜!?そりゃないよ、タマエ」
「マリオ君は来年お願いね。さっ、大介、乾杯の合図よろしく!」
「たくっ…わかったよ、やりゃあいいんだろっ」
諦めてタマエの言った通りにする大介
「それじゃお願いね!」
「はぁ…それじゃみんな、これからなつみの帰国を祝って…乾杯っ!!」
「かんぱ〜いっ!!」
早くにタマエの家の中華料理店へと着いた大介となつみと夢。
中に入ると、タマエがさっそく2人をからかいだし、それに焦る(?)大介となつみ。
そうしている内にえり子もやって来て、いつものメンバーとなった。
なつみ達はみんなが集まる10時までの間、勇平の様子、みらいの様子を話していた。
そうしているうちに10時になり、次から次へと元4年2組のメンバーがやって来た。
遅れてきた英夫も加えたところで、全員、乾杯の準備をし、
大介の一声でなつみの帰国祝いのパーティーが始まった。
今回のお話は待ちに待った同窓会っ!!
なつみや元4年2組のメンバー全員が楽しく盛り上げていますね。
この同窓会、無事に終わるかな?それとも、何かトラブル起きちゃうかな? とか思っちゃったり。(笑)
それでは第29話へお進み下さい。