その頃の未来の世界では…
「まあ…ジュリエッタも一児の母だからね…そりゃあ心配するわよね。」
『やっぱりね。』
予想的中と言わんばかりに呟くみらい
「どうして急にそんな事を?」
『勇平が、ジュリエッタさんが自分の事をどう思っているか気になっていたからだよ。』
「そうだったのか。」
『パパ、大平さんに伝えて。すぐには無理だけれど、次の通信の時に、ジュリエッタさんを連れて、
通信に立ち会って欲しいって。勇平が2人に会いたがってるって伝えて。』
「わかった。大平に伝えておくよ。」
『そろそろ通信の電波が悪くなってきたぞ。』
ノートパソコンの画面上の左上に来が現れた。
『そうみたいだね。』
「それじゃあ、みらい。またの通信でな。」
「みらい、体には気をつけてね。」
『うん、解ってるよ。』
『それじゃ、通信回線を切断するぞ。主、またの通信で。…未来、聞いているんだろ?一度しか言わないから、よく聞け。
いつも冷たい態度を取っていて悪かったな。俺は、お前みたいに素直じゃないから、
優しい言葉を掛けてやる事が出来ない。けど、努力するから。だから、許してくれ。』
妹である未来に自分の想いを伝える来
『それじゃ、来。またの通信の時もお願いね。』
『承知した。』
そこで過去との通信が切れた。
「サンキュ、来」
『大した事はしていない。』
「いや、してるさ。」
「そうよ。でも…来君、通信を切る前に、直接未来ちゃんと会って、謝らなくて良かったの?」
『ああ…直接は…素直に言えないからな。』
「そう…」
その時、ドアのノックの音がした。
なつみ達はそれに気づき、ドアの方を見つめた。
ノックをした後、ガチャッっという音を立ててドアが開いた。
「通信、終わったのか?」
「大地、お前今までどこに行っていたんだ?通信を繋いでくれたと思ったら、後の事を来に任せて、出かけていって…」
「元々、今日は別に用事があったんだよ。」
「用事?」
「ああ。」
「そっか、ならいいが。」
「来、次の通信の時は、もう俺無しでも出来るか?」
『ああ、もちろんだ。大地さんが解りやすく説明してくれたおかげで、一度で覚えられた。』
「そうか、それは良かった。」
「なんだよ?大地、お前…まさか、次の通信の時にも立ち会わないつもりなのか?みらいと。」
「ああ。」
「ああってお前…」
「大地、またどこかへ行くの?」
「ああ、ちょっと過去へな…」
なつみの問いかけにぼそっと呟く大地
「「えっ!?」」
「か、過去へって…お前、もしかしてみらいが現在居る、西暦1995年の過去へ行く気なのか!?」
「ああ、そうだ。」
他にどこへ行けと?っとでもいうように言う大地
「お前、昨日無理だって言ったじゃないか!」
「ああ、確かに言った。だが、それは連れて帰る事が不可能だと言っただけだ。」
「それって…どういう意味なの?」
「例え、連れて帰るのが不可能でも、江地が今やっているタイムマシンの改良・修理の手助けをする事は可能だろう?
自分自身だけなら、18年前の過去へ行く事は、決して不可能な事ではない。」
「ほんとかっ!?」
「ああ。もちろん、行くのは俺だけじゃない。聖兄も一緒だ。」
「聖も行くのか?」
「ああ。聖兄も賛成してくれた。最初は反対してたけど……もちろん、本部からの許可も下りている。
だからあとは、2人が俺が過去へ行く事を許可してくれさえすればいい。」
「許可するも何も、こっちからお願いしたいと思っていたんだ。許可するさ。」
「そうか、解った。じゃあ明日、みらいが居る過去へ行く。」
「ちょっと待ってっ!」
「なんだよ、なつみ?いきなりどうしたんだ?」
「ねぇ、大地。どうして過去へ行くのに、私達の許可がいるの?」
「……本部からの命令だ。2人の許可が下りない限りは、絶対に行くなってな。」
「本部からの命令だって?」
「ああ、そうだ。」
「本部からの許可…それってもしかして…今回のは…危険な事なの?」
自分達の許可が要る理由を考えて、ある答えに辿りつくなつみ
「……」
「ねぇ、そうなの!?大地っ!!」
「大地…どういうことなんだ?自分自身だけを18年前の過去に飛ばすだけでも…危険だっていうのか?」
「ああ、そうだ。決して100パーセントとは言えないな。」
これ以上は隠せないと悟った大地ははっきりと断言する。
「なっ!?どういうことだ!?」
「…副作用が起きやすいんだ。それに、遠く離れた過去へ行くにも、時空トンネルはいくつか存在し、
正確に進んでいくにも困難な事だ。今の俺では、正確な道に行けるという自信ずらない。
まだまだ修行が足りないんだ。一歩間違えれば、時空トンネルをさ迷う羽目になる事も例外ではない。」
時間を越える事の危険性を話す大地
「なんだって!?危険じゃないかっ!!」
「もちろん、危険は覚悟の上だ。」
危険は承知の上で行くと決めたと言う大地
「お願い、大地!そんな危険な事はしないで頂戴!!私は反対よ!!」
「俺もそれだけ危険なら反対だ!!」
「もう、決めた事なんだ。」
決意が揺るがない大地
「やめるんだっ!大地っ!!そんな危険を冒してまで、みらいの所へ行こうとしても、みらいは悲しむだけだぞ!!」
時間を越える事の危険性を知ると、なつみだけではなく、大介も血相を変えて、大地を止める。
「そんな事は解ってる。けど、時間がないんだ。」
「時間?…どういうことだよ?」
「過去へ干渉する事がどれだけ影響を及ぼすか、知ってるだろ?」
「それは…もちろん知っているが…」
「過去への干渉によって及ぼす影響は様々だが、一歩間違えれば、歴史の崩壊だ。」
「れ、歴史の崩壊って、そんな大げさな…」
「大げさなんかじゃないっ!人それぞれ歩む運命は一つじゃないんだ、いくつか存在する中で人は一つの道を選ぶんだ。
歴史が変われば、新しい運命の道を切り開き、その先の新しい歴史が生まれる事だってあるんだ。
みらいが今居る過去の世界は、もうすでに歴史が変わり、新しい歴史を刻んでいるんだ!
みらいが6年前に過去に現れた事によってな…」
大げさだと言った大介に、怒鳴り散らすように一気に捲し立てる大地
「みらいが過去の世界に行ってしまった事によって…なのか?」
滅多に聞かない大地の怒鳴るような声に驚くも、すぐに聞き返す大介
「ああ、本当は知る事の出来ない事を知ってしまったんだ。そりゃ少しは変わるだろ。あまり大きな影響は無かったから、そのままにする事にしたんだ。
だが、今回はそういうわけにはいかない。みらいだけならまだしも、勇平まで飛ばされてしまっているんだからな。」
6年前は大きく影響を及ぼしていなかったからそのままにしていたが、今回はそういう訳にはいかないと言う大地
「どうして?」
「…コントロール制御だ。」
言おうか一瞬迷ったが、すぐに迷いを消して応える。
「コントロール…制御?」
「ああ、そうだ。みらいはコントロール制御が出来るが、勇平には出来ない。」
「何なんだ?その…コントロール制御って…」
「歴史の崩壊に至らないようにするためのコントロール制御さ。」
「歴史の崩壊に至らないためのコントロール制御?」
「ああ。過去への干渉を防ぐために、自身でコントロール制御をするんだ。」
「過去への干渉を防ぐ?」
大地の言っている事がよく解らない2人
「ああ。簡単に例えると、身に纏っているオーラを放出させないように、自身がコントロールして制御する事だ。」
「もし、放出させてしまったらどうなるの?」
「放出してしまったら、そうだな…実際に起きた例を挙げると、時間の流れが速くなるか、遅くなるかだな。」
「時間の流れが?」
「ああ。みらいが6年前、過去へ飛ばされてしまった時にみらいが居た水木家だけ、時間の流れが早くなり、植物が一気に成長してしまったりしていたそうだ。
それに、あのまま放っておけば、植物だけでなく、人間にまで影響が及び、歳を早くとっていってしまうという状況になりかけていたらしいからな。
つまり、俺がいう、オーラとはすなわち時間だ。違う時間に生きている者が長いこと居ると、コントロール制御していなければ、いずれは干渉してしまう。
当時はみらいは赤ん坊だったから、当然コントロール制御は不可能だった。だから、時間が狂ってしまったんだ。」
実際起きた例を述べて、どのように危険なのか説明する大地
「その…コントロール制御は、みらいには出来て、勇平には出来ないのか?」
「ああ。これは自身の精神状態から始まる。つまり、今の勇平には、精神のコントロールが出来ていないからだ。
それに、例えコントロールが出来たとしても、自身が未来の世界の事を話したりしてしまうと、それこそ危険な事だ。」
「それって…まさかっ!?」
ようやく大地が危険を冒してでも過去へ行こうとしている理由が解った大介
「本当は防がなければならない所を、防がなかったんだよ…あいつは。2人がまだ付き合ってもいない時代だしな。」
「それじゃあ…」
「初めはみらいも迷っただろうな、『Zポイント』通信を使わせるべきか、使わせないべきかを……
大平さん達ならまだしも、2人はその頃はまだお互い心が通じ合っていない時代だし、
それに2人とも意地っ張りだからな。すぐには現実を受け入れないだろ?」
「あ、ああ…確かにそうだな。」
「俺だって…初めは迷った。教えるべきか、教えないべきかをな。あいつ…『Zポイント』通信を使う事が
どれだけ危険かを解ってて、2人に『Zポイント』通信の事を大平さんを通して伝えたんだぜ?
自分に関わる危険を冒してまで、自分の事より、まず2人の事を考える…みらいはそういう奴だ。」
自分の事を犠牲にしてでも、他の人にとって最善な方法を取るのがみらいだと言う大地
「それって…一歩間違えれば、みらいが生まれてこなくなるって事?」
ある可能性を導き出した大介
「ああ、そうだ。ふたりが例えその通りに結婚しても、2人の心がお互い通じ合っていなければ、本当の結婚とは言えない。
ましてや夫婦でもない。だから本来居るべきみらいが生まれなくなってしまうんだ。」
「そんな…」真っ青になるなつみ
「あいつは…みらいは特殊なんだよ…」
「特殊?どういうことなんだ?大地」
「他の子は、一組の親に縛られるわけじゃない。例えば、ある子供が母親似なら、
本来なるべき夫が違っても、生まれてこれる道がいくつか存在するんだ。
けど、みらいは違う。あいつは…他の子と違って、生まれてこれる道が一つしかないんだ。
そう、2人の子供としてでしか、この世に誕生する事は…出来ないんだ。」
「なっ!?嘘だろっ!?」
「う、嘘でしょっ!?」
衝撃的な事を聞かされて驚く大介となつみ
「嘘なんかじゃないっ!嘘なんかじゃ…ねぇよ。あいつは…2人の間でしか、生まれてくる事ができねぇんだよ。
本部からそう聞いたんだ。6年前の…あのタイムスリップ事故が起きた時に…」
自分でもそれは信じがたい事だが、事実だと言う大地
「そんな…」
「なぜ、みらいは他の子とは違うんだ?」
「…悪いが、それについては答えられない。」
大介のその質問には答えられない大地
「どうしてだ?」
「本部からの命令だ。それに…みらいもおそらく、そう言うだろうな。」
「みらいは、知っているのか?その事を…」
「ああ、みらい自身もそれを知っている。だから迷うんだ。2人が結ばれなかったら、自分が生まれてこれない事を…」
「みらいが…俺達の間でしか、生まれてくる事が…出来ないだと?」
「ああ。場合によっては、みらい自身そのものが消滅してしまう可能性だってある。
すでにみらいと関わっている時代であれば、みらいと過ごした記憶は消えないけどな。」
みらいの存在そのものが消えてしまう可能性もあるが、すでにみらいと関わっている世界であれば、記憶は消えずにそのままだと言う大地
「み、みらい自身が…消えてしまう可能性もあるの!?」
悲痛な声を上げるなつみ
「ああ、そうだ。」
「そんな…」
「なぁ、大地。その場合の例はあるか?」
「例か…例えば、今みらいが居る過去の世界の2人のどちらかが、みらいの存在を拒否した場合だな。それ以外は解らない。
だが、みらいの存在を拒否する者が1人でも現れれば、消えてしまう可能性が出てきてしまう事は確かだ。」
難しい顔をして考え込みながらも、ありえるかもしれない例を挙げる。
「みらいを…拒否する者?」
「そう、みらいを拒否する者だ。みらいが未来の世界から来た者だと知っている者だけに、その可能性が出てくる。」
「つまり…過去の俺達の誰かが、1人でも拒否する者が出れば、その可能性が出てきてしまう…っということか?」
「ああ。」
「みらい…」
大地から聞いて、今のみらいの状況を理解し、心配するなつみ
「なつみ、今の俺達には信じて待つ事しか出来ない。だから、みらいが無事に帰ってきてくれる事をここで一緒に祈ろう。」
みらいの心配をするなつみを気にかける大介
「大地、必ず、みらいと…そして勇平君を未来の世界へ戻して。」
大介のおかげで少し不安が和らいだなつみは大地に必ず連れて帰ってくれるようお願いする。
「ああ、解ってるさ。必ず、みらいと勇平を無事に未来の世界へ着くように援護するさ。約束する。」
「ええ、お願いね。大地、あなたも聖君も必ず無事にここへ帰ってきてね。」
みらいや勇平だけではなく、大地や聖も無事に帰ってくるように言うなつみ
「……ああ。」
「大地、明日出発なんだよな?どこでタイムスリップが起きるんだ?」
「タイムスリップは起きるんじゃない、起こすんだ。自分達の力でな。場所は…矢熊山だ。矢熊山でタイムスリップを起こす。」
「矢熊山で?」
「ああ。矢熊山以外に、この水木家にもタイムスリップのゲートポイントがあるが、矢熊山の方がみらいが居る過去への正確な道に進みやすいんだ。」
ゲートポイントは2つあるが、矢熊山の方がみらいの居る過去へ行きやすいと言う大地
「出発に立ち会っても…いいか?」
「もちろん、構わない。」
立ち会う事には何も問題はないと言う。
「何時頃くらいに出発するんだ?」
「特に決めていない。それに俺も聖兄も、出発する前にやっておかなきゃいけない事が山ほどある。
だからそれをある程度片付けてから出発する。」
「そうか、解った。」
「さて、俺はこれから本部に用事があるから、また出かけてくる。」
「また出かけるのか?」
「ああ。聖兄とも打ち合わせをしないといけないし。」
行くと決まったらやる事は山程ある、立ち止まっている余裕はないという風な雰囲気を放す大地
「そうか。」
「お昼ご飯はどうするの?」
「昼飯までには終わるから、帰ってきてから食べる。」
「そう、解ったわ。」
「そんじゃ、出かけてくる。いってきます。」
大介となつみを残して部屋を出て、そのまま出かけていった。
「さて、俺達はどうするかな?」
自分達も何かした方が良いかとなつみと相談する大介
「せっかくだからみらいの着替えとかを用意しようかと思うんだけれど…」
「そうだな…よし、俺も手伝うぜ。」
「ありがとう、大介」
「別に大した事じゃねぇよ。」
「あっ」
「ん?どうした?」
「大平ちゃんとジュリエッタに、みらいが言っていた事を知らせてあげなくちゃ。」
「そうだな。ついでだから、勇平の着替えとかの用意もしてもらうか?」
「それ、賛成。大地や聖君には悪いけれど、一緒に持って行ってもらいましょ。」
2人には悪いが、みらいと勇平の着替えを持って行って貰おうと言うなつみ
「じゃあ、大平には俺から連絡しておくぜ。」
「お願いね、大介」
なんと、大地が大介となつみに過去へ行ってくると告げた。
18年前の過去の世界へ行くのは、まだ今の力だけでは危険らしい。
だが、大地はその事を覚悟の上で、過去の世界へ行く事を2人に告げるのだった。
危険だと知った2人は、初めは反対していたものの、大地の決意を見てか、しぶしぶ承諾する事にするのであった。
果たして、大地と聖という2人の少年は、無事にみらいの居る過去の世界へ行く事ができるのであろうかっ!?
今回は未来編です。
大地が大介となつみに、みらいの元へ、危険を承知の上で行く事を告げる話です。
新しいオリキャラの名前は「聖(しょう)」っと読みます。
大地より、2つ年上の中学2年生という設定です。
それでは第25話へお進み下さい。