タマエとえり子はみらいの父親が大介だということに驚いていた。
『ちょ、ちょっとっ…』
正体バラしてどうするの!?っと言いたげな未来のなつみ
『なつみ、隠してても無駄だ。それに、みらいはこの事を承知の上で大平を通して、
俺達に「Zポイント」の事を伝えてくれたんだ。そうだろ?みらい』
「うん、そうだよ。初めから解ってて、大平さんの所へ行ってもらったんだから。」
『だってさ。』
『でも…』
『もう知られちまったんだ。言い逃れはできねぇだろ。』
「やっぱり大介だったんだ…大介が…みらいちゃんのパパだったんだ!!
だから2年前にこっちへ来た時、みらいちゃん、大介にすっごく懐いていたんだっ!!」
「や、山口君が…みらいちゃんのお父さん?」
「…すごい言われようだね、パパ」
『…否定できんな。』
「…なにが…なにがどうなったら俺となつみが結婚しちまうだよ!?どーして俺は味噌屋を継いでいねぇんだよっ!?」
未来の自分だと解って戸惑いを隠せない大介
「ちょ、ちょっと大介、何怒ってるのよ!?」
「うっせーっ!認めないからな!俺は…ぜってー認めねぇっ!!」
1人で居間を飛び出して玄関の方へ行き、靴を履いて外へ飛び出していった大介
「「大介っ!!」」
「山口君っ!!」
「に、兄ちゃん!」
大平はすぐに大介の後を追いかけようとしたが、みらいに腕を掴まれ、止められた。
「みらいちゃん、離してよっ!」
みらいは黙って顔を横にゆっくりと振った後、大平に言った。
「今は…1人にしといてあげて。今は1人になりたいんだと思うから。」
「みらいちゃん…」
「ねっ?」
「…うん。」
『悪いな、みらい』
申し訳無さそうにする未来の大介
「別に。こっちに来てから、ずっと見てて解ってたし。こういう展開になるって。」
『…察しがいいな、みらい』
「まあ…ね。」
「へぇ〜、これが大介の18年後の姿か〜。あれ?髪、切ってるんだね、18年後は。」
『ん?あ、ああ。』
「ふ〜ん。結構雰囲気が良いじゃない、大介」
『結構は余計だっ!』
「あはははっ…やっぱ大介だ。」
未来の大介をからかうタマエ
「みらいちゃんって、山口君となつみちゃんの子供だったのね。」
「でも、大介となつみの子供ね〜…みらいちゃん、大介に似てる所がないわ。」
『おいっ!』
「まあまま。外見では確かに私とパパは似てないんだから仕方ないじゃん。」
『し、しかしだな、こうも言われると…』
「はい、はい、パパの言いたい事は解ったから。心配しなくていいよ。」
『みらい…』
『まさか、まだ何かを隠していたりしていないでしょうね?みらい』
「まさかっ!隠してないよ。」
未来のなつみにもう何も隠してないと言うみらい
『ほんとに?。』
「うん、ほんとだよ。大平さんが話してくれた事だけだよ。」
『そう、ならいいわ。』
「でも…大介、ヤバイんじゃない?」呟くタマエ
『何がだ?』
「何がって…過去の大介の事よ。こんな形で自分の将来を知って、味噌屋も継いでいない事を知っちゃったのよっ!?」
『まあ、確かにそうだな。だが、そっちの世界はもうすでに2年前から歴史が変わっているんだろ?』
「えっ?」
『そっちの世界はすでに2年前に2007年から来た、赤ん坊のみらいと会っているんだろ?』
「うん、そうだけど…」
『だから、そっちの世界は、2年前からすでに歴史が変わっているはずだ。』
「言われてみれば、確かにそうね。」
『大介…』
過去の大介の事を心配するなつみ
『大丈夫さ。過去の俺は、今は混乱状態に至っているだけだ。
少しずつ自分なりに整理して、その事実を受け入れてくれるさ。』
『そうかしら?』
『あっ…お前、俺を信用しないのか?』
『そうは言っていないけど・・・』
『なら、信じろ。過去の俺を。』
『……無理ね。』
『なんでだよ?』
『だって大介は小学生の時、ケンカ友達で、大介の良い所見ていなかったんだもの。
それにまだ日本に帰国したばかりのこの頃はまだ大介の良い所を見ていない時だったし。』
『…まあ確かにな。』
「えっ?ケンカ友達以上はなかったの?」
思わぬ事を聞いて、聞き返すタマエ
『ああ、ないな。』
「じゃあ、そっちの2人が小学生の時は、みらいちゃんがタイムスリップして現れなかったって事?」
『そういうことになるわね。』
「じゃあいつ、大介の良い所を見つけ始めたの?」
『中学に上がる頃に日本へ帰国した後から少しずつ。』
「そうなんだ。それじゃあ確かにこっちの歴史が変わってるよね。なつみはどう思う?」
「えっ?」
「今の話よ。」
「別になんとも…」
「なつみ?」
「どうかしたの?なつみちゃん」
「…無理もないよ。いきなり大介お兄ちゃんが、自分の未来の旦那さんになる人だって解っちゃったんだから。
動揺しないはずがないよ。」
未来の旦那が大介だと知って動揺しているのだろうと思ったみらい
「えっ、あっ、その…」
「無理に隠そうとしなくていいよ。演技バレバレです。」
『…なつみ、みらいのやつ、あんな事言ってるぞ?』
過去のなつみとみらいのやり取りを見ながら言う未来の大介
『…前にみらいに見抜かれちゃったのよ…情けない事に…』
『そうだったのか?いつ?』
『そうね…4歳の頃。』
『…それは…ちょっと早過ぎないか?なつみ』
『そう思う?づくづく自分の演技力の無さに涙が出ちゃうわ。』
「ママは隠し事をする事が大嫌いだからね。特に身内には。」
『そうなのよね〜。だから気づかれちゃうのかしらね。』
『おいおい、それで納得するか?普通…』
『…しないわね。』
『こらこらっ、そこをさらっと流すなよ。』
「いいじゃん、別に。ママは、家族には隠し事の出来ない性格をしているんだから。」
『…それも…そう、だな。』
みらいの言葉になぜか納得してしまう未来の大介
「でしょ?」
『主…』
ノートパソコンの画面上の左上に、その声の主の姿が現れた。
「…この男の子、誰?」
『お兄ちゃん!』
ノートパソコンの画面上の右下に未来が現れた。
『なんだ、未来』
『なんだはないよ〜、お兄ちゃん!冷たいっ!!』
無愛想な来に不機嫌になる未来
「「お兄ちゃん!?」」
「あっ、紹介するね。この子は、私のもう一人の専属ネットナビゲーター「来」だよ。
来と未来は、私達人間と同じように、血が繋がっているというわけではないんだけど、
双子のような存在で、2人はいわば兄妹関係にあたるんだ。」
突然現れた「来」という少年の説明をするみらい
「へぇ〜、そうなんだ。」
「来、『Zポイント』を使用した、通信の使い方はもう理解出来た?」
来に話しかけるみらい
『ああ、もちろんだ。大地さんが解りやすく説明してくれたおかげで、
今後は、俺がいつでも『Zポイント』通信をする事が可能になった。』
「そっか。じゃあ、私が帰って来れるまでの間は、パパ達がお願いした時には、『Zポイント』通信をしてあげてくれる?」
『承知した。』
「なんか、無口ね。その『来』って子。」
『来は、あまり親しくない奴とは、絶対に話をしないほど、無口なやつなんだ。』
タマエに来の事を教える未来の大介
「ええっ!?どうして!?」
『それは俺に聞かれても解らないな。少なくとも、来は、みらいに一番心を許し、信頼しているようだ。』
「あら、そうなの。来君って、山口君以上の一匹狼タイブね。」
『おい、えり子。そりゃどういう意味だ。』
「まあまあ、大介、落ち着いてよ。」
『俺は落ち着いている。』
『…主、先程のは良かったのか?』
「何が?」
『過去の大介さんを、1人にさせた事だ。』
「大丈夫だよ。」
『けど…』
「来は、そこまで心配しなくていいよ。」
『そういうわけにはっ!』
「来、あの事を言うなら、言わないで。言わない…約束のはずだよ。」
来にしか聞こえないように、小声で言うみらい
『くっ…』悔しそうにする来
『お兄ちゃん、落ち着いて。その事は未来も良く解ってるから。それにみらいも、
それが解っていて、お兄ちゃんに『Zポイント』を使ってもらったんだと思うから。』
『…・主は、本当にそれで良いのか?』
「うん、それでいいよ。」
『…わかった。主がそうお望みなら、もう言わない。』
まだみらいの事が心配だが、主であるみらいの望む通りにする来
「ありがとう、来」
『お礼なんていらない。』
『お兄ちゃん、冷たすぎ。』
『冷たくても構わん。』
「クスっ…来、たまには未来に優しく接してあげれば?」
『…それは出来ない注文だな。元がこういう性格だしな。』
「あらら…」
『お兄ちゃんのバカっ!』
怒って未来が画面上から消えた。
「…来、ほんとにマジで、優しく接してあげた方が良くない?」
『…それが出来たら苦労しない…俺は主達みたいには真似出来ない。』
「何も真似をしろとは言ってないでしょ。」
『…少し自分なりに考えてみたい。』
「どうぞ、ご自由に。あっ、そうだ。しばらくの間は、スケジュール管理はお休みね。」
『承知した。あとは親子の対談の時間にする。』
未来に続いて、来も画面上から消えた。
『相変わらずだな、あの2人。仲が悪いのか?』
「ううん、そんな事ないよ。ただ、単に来が未来に対して、素直に優しく接せれないだけ。」
『そうか。』
『来君と未来ちゃん、大丈夫かしら?』
2人の心配をするなつみ
「大丈夫だよ、あの2人なら。本当はとっても仲の良い兄妹だもん。」
『それもそうね。』
「とっても仲が良い?そうは見えなかったんだけど…」
2人のやり取りを見たが、とてもそうは思えなかったタマエ
それはなつみやえり子も同じだった。
「う〜ん…なんていうか、周りからみれば、確かに誤解されやすいかな。
でも、よくよく見ていれば、2人の仲が解ってくるよ。」
「ふ〜ん、そんなもんかねぇ〜。」
「そういうものなのかしら?」
「あの2人は、本当は仲の良い兄妹だけど、その来君って子が、素直に優しい言葉を掛けてやれないから、
未来ちゃんは、来君の事を怒っちゃったのね。」
「うん。未来も本当は知ってるんだよ。来は、ただ単に素直になれないだけなのを。だからこそ必死になってるんだよ。
未来は来の事を本当に兄のように慕っているから、兄に構ってもらいたいって思っているんだよ。」
未来のあの行動は来に構って欲しいからこそなのだと言うみらい
「へぇ〜、そうなんだ。」
「パパ。過去のパパの事は、任せといて。私がなんとかしておくから。」
『な、なんとかするっていったって…』
「要は、正しい道を見つけ出せるように、導けば良いんでしょ?きっと見つけられるよ、自分の正しい道が。
パパなら、解るんでしょ?少々の手助けさえすれば。」
『あ、ああ。そりゃあ解らなくもねぇけど。』
「だったら大丈夫だよ。ママ、心配しなくていいよ。ねっ?」
『みらい…』
『…過去の俺は、お前の知っているパパとは違って、そう簡単には行かないと思うぞ?』
「そりゃもちろん、解ってるよ。」
『解ってて、導くための手助けをするのか?』
「うん。」
『…解ったわ。過去の大介の手助けをお願いね、みらい!なんだったら、過去の大介を一発ぶん殴ってもいいわよ!』
本人の了承も無しに、殴る許可を出す未来のなつみ
『お、おい、なつみ!勝手に俺を殴る許可を出すなっ!!』
そんななつみに慌てる未来の大介
『あら、良いじゃない。一発殴ってもらえれば、迷いなんか吹っ飛ぶかもしれないでしょ。』
『なつみ、お前な…』
「まあ、まあ。怒らない、怒らない。大丈夫だよ、殴らないから。安心して。」
『まあ、とにかく…本当に必要だと思ったときには、過去の俺を殴れよ。』
「任せといて。あっ、そうだ。ねぇ、ママ」
『何かしら?』
「あのさ、ジュリエッタさんが今どうしてるか知ってる?」
ジュリエッタの事を聞くみらい
『えっ?ジュリエッタ?』
『そういやあ、昨日大平に電話をした時に、ジュリエッタの事を言っていたな。勇平がいなくなって、
なつみと同じように、心配性になって、髪を乱したり、食事をあまり食べなかったりっと放心状態で、
過去へ飛ばされてしまった勇平の事を凄く心配しているらしい。』
『ええっ!?あのジュリエッタが!?』
『ああ。』
『まあ…ジュリエッタも一応一児の母だからね…そりゃあ心配するわよね。』
「やっぱりね。」
予想的中と言わんばかりに呟くみらい
『どうして急にそんな事を?』
「勇平が、ジュリエッタさんが自分の事をどう思っているか気になっていたからだよ。」
『そうだったのか。』
「パパ、大平さんに伝えて。すぐには無理だけれど、次の通信の時に、ジュリエッタさんを連れて、
通信に立ち会って欲しいって。勇平が二人に会いたがってるって伝えて。」
『わかった。大平に伝えておくよ。』
『そろそろ通信の電波が悪くなってきたぞ。』
ノートパソコンの画面上の左上に来が現れた。
「そうみたいだね。」
『それじゃあ、みらい。またの通信でな。』
『みらい、体には気をつけてね。』
「うん、解ってるよ。」
『それじゃ、通信回線を切断するぞ。主、またの通信で。…未来、聞いているんだろ?一度しか言わないから、よく聞け。
いつも冷たい態度を取っていて悪かったな。俺は、お前みたいに素直じゃないから、
優しい言葉を掛けてやる事が出来ない。けど、努力するから。だから、許してくれ。』
妹である未来に自分の想いを伝える来
「それじゃ、来。またの通信の時もお願いね。」
『承知した。』
そこで未来との通信が切れた。
「未来、聞いてたんでしょ?今の来の言葉…」
『うん、聞いてたよ。』
ノートパソコンの画面上に現れた未来
「来君って、やっぱり本当は優しいのね。」
「来はああ見えても妹思いなんだよ。だから余計に素直になれない自分に
八つ当たりしてしまう時がたまにあるんだ。未来の居ない所で。」
「そっか。あっ、そういえば大介の事、どうしよっか?」
「あいつ、絶対すぐには帰って来そうにないわね。」
「どうしましょうか?」
なつみ達はさっき飛び出していった大介の事をどうするか話し合う。
「未来、しばらく電源落とすね。」
『了解。』
みらいはノートパソコンの電源を落とした。
「私が行って来るよ。」
話し合ってるなつみ達に声を掛けるみらい
『えっ?』
「行ってくるって…大介の所に?」
「うん。」
「みらいちゃんが?」
「うん。大介お兄ちゃんが居そうな場所は心当たりがあるから。それじゃ、行ってくるね。」
なつみ達にそう言った後、みらいは玄関へ行き、靴を履いて外に出て、大介の元へと向かっていった。
残されたなつみ達はというと…
「…行っちゃった……」
「みらいちゃん、大丈夫かしら?」
「う〜ん、どうだろう?相手があの大介だし。」
「たぶん大丈夫だと思うな。私」
心配するタマエやえり子とは違い、なつみは大丈夫だと言う。
「どうして?」
「なんとなく。」
「なんとなくって…」
「だってみらいちゃんだったら、今の大介を絶対なんとかしそうなんだもん。」
「確かに…言われてみればそんな気もするわね。」
「それじゃあ、山口君とみらいちゃんが帰ってくるのを待ってみましょうか?」
「そうだねっ!大介の事はみらいちゃんに任せようっ!」
「タマエ、切替早っ…」
「兄ちゃん…」
飛び出していった兄の心配をする大平
「大平ちゃん、大丈夫だよ。お兄ちゃんの事は、きっとみらいちゃんがなんとかして連れて帰ってきてくれるわ。」
「うん…」
(そう、みらいちゃんなら、きっと大介を連れて帰ってきてくれる。だって、2人は血の繋がった親子なんだから。)
なつみはみらいが大介を連れ戻してきてくれると信じていた。
未来の世界から、再び『Zポイント』通信が来た。
今度は、みらいの両親からの通信だった。
女性の方は未来のなつみだという事は、皆知っていたので、あまり驚かなかったが、
男性の方が未来の大介だという事は知らなかったため、皆、驚いてた。
大介は、目の前に映っている男性が、未来の自分だと知り、動揺していた。
そして、動揺してしまった大介は、目の前に居る男性が未来の自分だという事を認めず、
そのまま、なつみの家を飛び出して、どこかへ行ってしまった。
通信を終えたあと、みらいが大介の所へ行ってくると言い、大介の元へ向かった。
果たして、みらいは、今の大介に…自分の父親である、過去の大介に
いったいどうやって迷いを吹っ切らせるつもりなのだろうか!?
今回は、大介がなつみと結婚していて、みらいが自分の未来の子供だという事に動揺を隠せず、
そして、未来の自分の事を認めずに、なつみの家から外へ飛び出していってしまったんですよね。
確かに大介は、密かになつみに特別な思いを秘めているはずなのですが、いざ、こう未来の世界の現実を
知ってしまうと、平常心を保てずに、動揺して、混乱状態になってしまうんじゃないかな〜っと、思いました。
それでは第24話へお進み下さい。