夢が丘公園へ行く途中…なつみは歩いていた足を止めた。
「ん?なつみ、どうしたんだ?急に止まりやがって…」
大介と大平は後ろへと振り返って、なつみの前まで行った。
なつみは目の前に立った大介を見た後、話しかけた。
「ねぇ、大介」
「なんだ?」
「買い物に出かける前にタマエとえり子ちゃんが言っていた事だけど…」
「タマエやえり子が言ってた事?」
「ほら、みらいちゃんと大介の雰囲気がどことなく似てないかって言ってたじゃない。」
「ああ、それか。それがどうかしたのかよ?」
「あのね、私もさっきの大介を見てて思ったんだ。」
「な、何をだよ?」
「…みらいちゃんと大介が…どことなく似ているような気がしたんだ。」
「なっ!?…な、何バカ言ってんだよっ!みらいが俺に似てるわけねぇだろ!?」
「だって…」
「だってじゃねぇよ!」
「だって私にはそういう風に見えちゃったんだもん!何でかは…自分でも良く解んないんだけどね。それに…」
「そ、それになんだよ?」
「2年前のクリスマスの時…大介、真夜中に眠れない私を外へ連れ出してくれた事…覚えてる?」
「あ、ああ…お、覚えてるぜ。」
「あの時、大介、みらいちゃんの遊び相手をしてくれたでしょ?」
「ああ、そういやそうだったな。」
「あの時、みらいちゃんはなんで大介にあんなに凄く懐いているんだろう?なんで初めてサッカー場でみらいちゃんの事が
見つかっちゃった時、初対面のはずの大介にすぐに懐いたんだろう?って、いろいろな疑問が次から次へと…
それでね、その時の大介とみらいちゃんを見てて、本当の親子のように見えちゃたんだよね。」
「お、俺とみらいが親子のように見えただって!?」
なつみから思わぬ言葉を貰い、動揺する大介
「うん。それとね、私…ロンドンへ行った後のバレンタインの日の帰りにもね、みらいちゃんのパパはいったい誰なのかな?って
考えてた時にね、改めて大介にみらいちゃんの事がばれてから、みらいちゃんが未来の世界へ帰っていくまでの出来事を
全部思い出していたら、その時、ちょっぴり思っちゃったんだよね。」
「な、何をだよ?」
「み、みらいちゃんのパパが…大介だったらいいなって……」
「えっ…」
「な、なんであの時、そう思っちゃったんだろうな…大介がみらいちゃんの面倒見が良かったからかな?
それとも…それ以外の事を考えていてふと思っちゃったのかな〜って、い、いろいろ考えちゃった。」
「……」固まったままの大介
「ご、ごめんね、急にこんな話をしちゃって。」
「あっ、いや、別に…」
「どしたの?大介、なんか変だよ?」
「べ、別に変じゃねぇよ!」
「あはははっ…」
大介の様子が面白かったのか、突然笑い出すなつみ
「い、いきなり笑うなよっ!」
「ごめん、ごめん。」
「たくっ…」
「…ねぇ、大介」
「ん?」
「ちょっと…聞いても良い?」
「な、なんだよ?」
「あのね、大介は…小さい時、本当のお母さんが目の前から居なくなったばかりの頃、お母さんがいなくなって…寂しかった?」
「な、なんだよ?急にそんな事聞きやがって…」
「お母さんが恋しくて、夢の中にまで出てきた事があった?楽しい夢の中に…」
「……」
「ごめん、いきなりこんな事聞いちゃって。い、今聞いた事、忘れて。」
なつみが止めていた足を動かそうとした時…
「…今では…全然思わねぇけど…確かにお袋が出ていったばかりの頃は…寂しかったな。」
昔の事を語りだした大介
「えっ…?」
「あん時は……何度も何度も、呼んでも帰って来ねぇお袋の事を呼んでて、徳さんを困らせていたっけな。」
なつみは黙って大介の話を聞いていた。
「夢の中でも……お袋が出てきた。時には、楽しい夢の中で…時には悲しい夢の中で…時には……」
そこで少しの間沈黙したが、再び大介が口を開いた。
「時には、お袋が俺の目の前から居なくなった日の夢を見てた。」
「大介…」
「あん時は…ただ、ただ、お袋が恋しくて、恋しくて、はっきり言って寂しかった……会いたかったんだ、お袋に。
親父は大阪支店の方へよく行ってて、あんまし家にはいなかったしよ。」
「そっか…」
「それとさ、今思い出したんだけどよ、2年前…お前、俺にみらいを預けた時があっただろ?」
「あっ…ママが…ロンドンから一時帰国した時の事だよね?」
「ああ。あの時のみらいは…お前がロンドンに行っちゃうって、第六感で感じていたんだろうな。」
「確かみらいちゃん、その時は何をやっても泣き止まなくて、大変だったんだよね?」
「ああ。なつみが行っちまうって感じて寂しかったんだろ。行かないでって…」
「あの時は…大介や大平ちゃんには…凄く迷惑を掛けたと思ってる。」
「べ、別に迷惑だなんて思ってなんかいねぇよ!なっ?大平」
謝るなつみに慌てて迷惑じゃなかったと言う大介
「うん。」
「ありがとう、大介、大平ちゃん。」
「それで…話に戻っけどよ、みらいのその寂しい気持ちが俺に移っちまったのか…
久しぶりにお袋が俺の目の前から居なくなった日の夢を見ちまったんだよな。
そん時は…まだ吹っ切れていなかったからだと思う。今はその時の夢、全然見てねぇけどよ、
もし見たとしても…以前のように、寂しい気持ちにはもうならねぇと思う。
そう、懐かしい夢へと変わっているような気がするんだ。」
「そっか。」
「けど、今は違う。今は…新しい母親が居る。たとえ血の繋がらない親子でも…
俺は今の義母さんの事…最高のお袋だと思ってっからな。」
「大介…」
「…ってこの言葉は2年前にも言わなかったっけ?」
「うん、言ってたね。今のお母さんも…大平ちゃんも大介にとっては大切な家族だって。」
「ああ。みらいが俺達の目の前に現われていなかったら、起こりえなかった出来事がたくさん起きたんだよな。
たとえば…赤ん坊にとって、母親がどれだけ大切な存在なのか…っとかな。
赤ん坊の頃は、誰だって最初は存在が薄い。だから赤ん坊は自分の存在を母親と一緒に居る事で、
初めて自分がここに居るっていう存在感を持つ事が出来るんだと思うんだ。
母親が自分の傍についていてくれるからこそ、自分が存在している事を認識出来るんじゃねぇかって…」
2年前の数々の出来事を思い出しながら呟く大介
「母親と居る事で…初めて自分がここに居るって存在感を…持つ?」
「ああ。だってよ、あん時のみらい、お前が傍にいなかっただけで、体も心も乱れてたんだぜ?
泣き止ませようとしても全然泣き止まねぇし、ミルクも全然飲まねぇしで、
全身ボロボロのはずなのによ、自力でお前ん家に向かってたんだぜ?
普通、赤ん坊はそんなに体力なんて持っていねぇよ。それだけ、お前の存在が強くて、
自分が一番安心出来る場所で、その頃のみらいが最も失いたくないものだったんだろうからな。
だから、俺…思ったんだ。赤ん坊にとって、母親は自分が唯一存在感を感じさせてくれる場所。
自分が必要な存在である事、生きている事を教えてくれる場所なんじゃねぇかって。」
「そう…かな?」
「ああ、きっとそうだぜ。赤ん坊は、誰かから愛情を毎日貰っていねぇと生きていけない小さな命で…
まだまだこれからって感じで…小さな体な上に弱いからな。だから、誰かが傍で愛情を分け与えながら、
守っていかねぇと、その赤ん坊は、生きていけねぇような気がすんだよな。」
「愛情…か。」
「なつみ、お前はいつもみらいにたくさんの愛情を分け与えていた。自分もまだまた親に甘えたい年頃なのに、
いつも、いつも我慢して、みらいにたくさんの愛情を注いでいた。だからみらいはあの時、必死になつみに呼びかけていたんだ、
自分を置いて遠くへ行かないでって。傍にいて、またいつものように愛情を注いで欲しいって。そう、必死に呼びかけようとしていたんだと思う。
俺はあの時のなつみとみらいをいつも見てて、母親がどれだけ大切な存在なのか、そして人に愛情を与える事の大変さを知った。」
なつみとみらいに大切な事を教えられたと言う大介
「大介…」
「まあ、と、とにかく…みらいにとっては、なつみが一番失くしてはならない存在だって事だ。」
「あの時は…みらいちゃんには、たくさん寂しい思いさせちゃったんだよね。」
「みらいがあの時、なつみに行かないでって必死になっていたから、お前はロンドン行きを止めたんだろ?」
「うん。あの時、みらいちゃんが必死に行かないでって言っているように思えて…
みらいちゃんが泣いて悲しんでいるのを見て、自分は何をやっているんだろう?
本当にこのままロンドンへ行ってしまってもいいのかな?って…頭の中で凄く迷ってた。」
「けど、後悔はしてねぇんだろ?あの時の選択。」
「うん。今にして思えば、あの時、日本に残る事にして良かったって思ってる。」
「ほんとだせ。あの時、お前があのまま日本を発って、ロンドンに行っちまってたら、
みらいはしばらくの間は泣き続けていただろうからな。
それに、最悪の場合、あのまま体が弱っていくかもしれなかったしな。」
「うん…みらいちゃんには本当につらい思いをさせちゃったよね。」
「そう思うなら、もう2度とすんなよな!けど…なんで急にそんな事を聞くんだよ?」
なつみに問いかけられたから、大介は答えたが、
なぜ急にそんな事を聞いてきたのかと疑問を抱く大介
「…今日、家に帰ったときにね、ママから聞いたんだ。」
「何をだ?」
「実は、みらいちゃんがまだ寝てる時、ママがみらいちゃんをそろそろ起こそうと思って2階へ上がって、
みらいちゃんの所へ行った時…みらいちゃん、私が聞いた寝言とは違う事を呟いていたんだって。」
「……何て言ってたんだ?」
「…『パパ、ママ』って……呟いていたんだって。」
「……」
「やっぱり、みらいちゃんも…勇平君と同じで、未来の世界に居るパパとママに早く会いたいのかな…
寂しいのかなって…おかしいよね、こんなの。だってみらいちゃんは元々この時代の子供じゃない。
未来の…未来の私の子供であって、今の時間の子供じゃない…」
「なつみ…」
なつみが突然母親の話をしてきた理由が解った大介
「みらいちゃん、なんで勇平君みたいに、寂しいとか、早く未来の世界へ帰りたいとか言わないのかな?
どうして…言わないのかな…?みらいちゃん、私達にそこを気づかれないように強がってるのかな?」
「……そんな事…俺に聞かれてもわかんねぇよ。」
「大介…」
「けど、みらいは強がってなんかいねぇと俺は思う。」
「どうして?」
「だってよ、江地のおっさんとこに行った時、あいつ、否定しなかったじゃねぇか。」
「何を?」
「…“ここにいるなつみも、未来の世界にいるなつみも…お前にとってはどちらも母親なんだろ?”って…」
矢熊山に行った時の事を思い出しながら言う大介
「あっ…」
「あの時…みらい、否定してなかったろ?」
「うん、してなかった。」
「だから、俺…思うんだ。確かに少しは寂しい気持ちがあるのかもしれねぇけど、ここに居るお前の事も…
みらいにとっては母親だ。確かにみらいは今、お前の事を『ママ』とは呼んではいねぇけど、
お前が傍に居てくれてるから…だから、寂しくねぇんじゃねぇか?子供にとっては…
両親が一番に安心出来る人なんだろ?特に母親の方が。」
「…うん、そうだね。」
「もちろん、父親も、子供にとっては大切な存在だ。みらいは未来の世界で、両親からたくさんの愛情を貰ってる…
だから母親だけではなく、父親も一番安心出来る存在だ。だから寝言で『パパ、ママ』って…呟いていたんじゃねぇか?」
「うん、きっとそうだね。」
「みらいは…あまり俺達の前では感情を表には出さねぇけど…お前が傍に居るからこそ安心できているんだと思うぜ?
だから…あんまり余計な心配はすんな!!なっ?」
落ち込んでるなつみを元気付ける大介
「うん、そうだね。ありがとう、大介」
「べ、別にっ…俺は何もしてねぇよ。」照れる大介
「ううん、してるよ。ありがとう。」
「…大平、行くぞ。」
照れているのを隠すためか、逃げるように、大平と先にまた歩き出した。
「あっ!待ってよっ、大介!置いてかないでよ〜!」
大介と大平の所へまた急いで追いかけるなつみであった。
一方、大介達がこちらへ向かっている途中の夢が丘公園の方では……
タマエは勇平と砂場で遊び相手になっており、えり子はその2人の様子をベンチに座って見ていた。
みらいは、ツバメ君とそこから少し離れた、人目につかない木と木の間に居た。
「これでよし。ツバメ君、今呼び覚ましたデータを基に実行すれば、爆発が起きるのを防げるよ。」
「ギプッ!」
「江地さんへの伝言の方もよろしくね。」
「ギプッ!」
「それと、明日の迎えの方、よろしくね。」
「ギプッ!」
「…朝、早いから、家が近づいてきたら、あまり音を立てないように動いてね。その時間には外に出て待ってるから。」
「ギプッ!」
「それじゃ、長居は無用、江地さんの所へ戻ってあげて。」
言うべき事を全て言い終えたみらいはツバメ君に江地の所へ戻るように言う。
「ギプッ!」
返事をした後、一瞬風を切ったかのように、猛スピードを出してあっという間にいなくなった。
みらいはツバメ君を見送った後、勇平達が居る所へ戻ってきた。
「あら?みらいちゃん。ツバメ君は?」
みらいが戻ってきた事に気づくえり子
「ツバメ君なら、江地さんの元へ帰ったよ。」
「そう。」
「ん?勇平、タマエお姉ちゃんに遊んで貰ってるんだ。」
「ええ。勇平君、とっても楽しそう。」
「…そりゃあ…楽しいでしょ。」
「えっ…?」
「勇平にとっては、新鮮な出来事なんだから。お友達と遊ぶ事があまりないからね。」
「そう…」
そこで勇平はみらいが戻ってきた事に気づき、みらいに声を掛けた。
「あっ!みらいちゃん!一緒にお砂場で遊ぼうよ!」
「勇平に呼ばれてるから行くね?えり子お姉ちゃん、なつみお姉ちゃん達が来たら教えて。」
えり子に伝えた後、みらいは勇平とタマエの方へ駆けて行った。
「みらいちゃん、いい所に戻ってきたわ!交代ね。私もう疲れちゃったわ。」
「はい、解りました。えり子お姉ちゃんと一緒になつみお姉ちゃん達が帰ってくるのを待ってて。」
「ええ、そうさせて貰うわ。」
勇平の遊び相手を交代して、タマエはえり子のいるベンチの方へ行った。
「…ねぇ、勇平君」
「何?みらいちゃん」
「疲れたりしてない?」
勇平の体調を心配するみらい
「ううん、全然。今日はなぜかまだ疲れがあまり出ていないんだ。」
「そっか。でも無理はしちゃダメだからね?」
「うん、わかってるよ!」
そして2人は砂場で遊び始めたが、突然みらいが勇平に問いかけた。
「勇平君、何かあった?」
「えっ…」
「大介お兄ちゃんと…何かあった?」
「…今日ね、言われちゃった。」
「何を?」
「僕、いつもみらいちゃんに頼ってばかりで…自分の意見がないって。僕、ほんとみらいちゃんにばかり頼ってるよね…
みらいちゃんにいつも甘えてるよね。」
(パパ、勇平に何て事言っちゃってんの!?たぶんママと喧嘩しちゃってイライラしていた時に
思わず八つ当たりしちゃって言ってしまったんだろうけど。)
今ここには居ない、中学生の大介に心の中で怒るみらい
「僕、いつもみらいちゃんに甘えてて、自分から行動をしたりする事がなくて…
僕って、弱いよね。強くならなきゃいけないのに、それが出来ない…」
自分が情けないと落ち込む勇平
「…勇平君は弱くなんかないよ。確かに大人とかから見たら、勇平君は弱いけど…今から急いで強くならなきゃいけないって事はないよ。
誰だって…最初は弱いよ。みんな、少しずつ、少しずつ強くなっていくんだよ。だから焦らないで、勇平君のペースで強くなればいい。
それに…今は、私に甘えたり、頼ったりしてもいいんだよ。もしそれで勇平君自身が納得いかないというなら…
これからは、私に甘えたり、頼ったりする回数を少しずつ、少しずつ減らしていけばいい。
時間をたくさん掛けて、初めて人は壁を乗り越えて強くなる事が出来るんだから。だから、頑張って。
勇平君が強くなってあまり私を必要としなくなるまでは…ずっと傍で応援してるから。ねっ?」
優しい笑みで、優しい声で勇平に語りかけるみらい
「みらいちゃん…ありがとう。僕、頑張ってみる!僕、今よりもっと、もっと強くなりたい!」
「うん、その意気、その意気。」
「うん!」
「他にも…あるでしょ?」
「えっ…」
「強がっているつもりかもしれないけれど…我慢しなくてもいいんだよ?」
勇平が何かを我慢している事を見抜くみらい
「な、なにを?」
「…寂しいんでしょ?お父さんとお母さんに会えなくて…早く会いたいのに、早く会えない。」
「…うん。僕、早くパパとママの所へ早く帰りたい!でも…パパは解るけど…
ママは…どうなのかな?僕の事、心配…してるかな?」
隠している事まで見抜かれていると解ると、隠していた事を素直に話し出した勇平
「きっと心配してるよ、勇平君の事。」
「そうかな…」
「確かに勇平君のお母さん、ジュリエッタさんは今、大平さんと一緒によく大阪支店の方へ行っちゃってるけど、
それはね、大平さんを独り占めにしたかったからなんだよ。きっと。」
「えっ?パパを独り占め?」
「うん。大平さん、大阪支店から帰ってきた時には、よく勇平君に構ってくれてるでしょ?普段、一緒に居られない分…」
「うん。」
「ジュリエッタさんはたぶん…そんな大平さんと勇平君にヤキモチを焼いているんじゃないかな?」
「ママが?」
「うん。だから、普段の様子を見てると、勇平君よりも、大平さんが一番な風に見えちゃうんだよ。でもね、それは違うんだよ。」
「えっ?」
「ジュリエッタさんにとって一番は大平さんだけじゃない…勇平君の事も一番だと思っているはずだよ。
家族が一番大切な宝物だって…」
「そう…かな?」
「きっとそうだと思うな。だって勇平君は、大平さんとジュリエッタさんの子供だもん。
子供の事を思わない親なんて…居るわけないよ。だって私達がまだお腹の中にいる時から、
お母さんは私達が自分のお腹の中で生きているんだって事を感じてる。お父さんよりも長く、
子供と一緒に居る。だから、私達子供はお母さんを一番に必要とする、安心する事ができるんだよ。
それと同じように、お母さんは、子供の事をいつも心配してくれてる。中には普通よりも心配性な人も居る。
だから、ジュリエッタさんもきっと今頃、勇平君の事を心配しているはずだよ。」
母親であるジュリエッタもきっと勇平の心配をしているはずだと言うみらい
「…そうだと…いいな。僕…パパとママとお話がしたい!早く…早くパパとママの元に…帰りたいよ!」
体をぶるぶる震わしながら、ボロボロと次から次へと涙を流し始めた勇平
タマエとえり子はそれに気がついて、勇平とみらいの元へやってきた。
「ゆ、勇平君!どうしたの!?」
「どこか…痛いの?」
「ううん、違うよ。」
「じゃあなんで…」
そこでみらいは勇平に安心できる優しい声で話しかけた。
「勇平君、思いっきり泣いていいよ?我慢、しなくていいよ?弱音…吐いてもいいよ?1人で頑張る事なんて…ないから。」
「みらいちゃん…」
「早く…早くお父さんとお母さんに会いたいんだよね?」
「うんっ!早く…会いたいっ!早く会いたいよっ!」
「我慢しなくていいから。泣きたかったら、思いっきり泣いていいから。ねっ?」
「うっ…うぅっ…うわぁ〜ん!」
我慢の限界が来て、思いっきり泣き出した勇平はみらいに飛びついて泣いていた。
みらいは黙ってそのまま勇平を優しく包んだ。
(みらいちゃん…優しいのね。)
(みらいちゃん、強いんだね。みらいちゃんも…未来のなつみに…早く会いたいのかな?)
えり子とタマエはそこで見守るように2人を見つめていた。
みらいは確かになつみ達にあまり感情を表には出さない。
でも、みらいは本当に寂しくないのかなって、なつみ達はそれぞれ思っていた。
果たしてみらいは、本当に未来の世界で待っているパパとママに会えなくて寂しくないのであろうか!?
そして、みらいは大介が言うように、みらいはこの世界のなつみの事は、決して「ママ」とは呼ばないが、
この世界のなつみがみらいの傍に居るからこそ寂しくないんじゃないかという事。
それはどうなのだろうか?
それは、みらい自身しか知らない事。
いったい、みらいはここに居るなつみの事をどう思っているのだろうか!?
そして、みらいが未来の世界へ帰れる日までに、なつみ達はみらいが本心を語る時が訪れるのであろうか!?
今回のお話では、なつみがみらいの事について大介にいろいろと話していた。
大介はそれを親身になって聞き、それに対して答えていますよね。
夢が丘公園では、みらいが勇平が今悩んでいる事、寂しい事を見抜き、
さらには、勇平を思いっきり泣かせてあげていますね。
みらいは本当に強がっていないのか?親と離れてて寂しくないのか?
みらいの本心をなつみ達に語る時が来るかどうかは…わかりませんね。
それでは第22話へお進み下さい。