タマエ達と分かれて、自分の家へと帰っていたなつみは…
「何よっ!大介ってば!私の事をこいつ呼ばわりしちゃって!
ほんっとそういう所だけは小学生の時から変わらないんだから〜!」
歩きながら1人で愚痴っていた。
(まぁ…私もちょっと悪かったかな…反省しないと…)
思いっきり怒った後、冷静になって自分も悪かったと思い、反省するなつみであった。
そうしている間に家に着いた。
「ただいま〜」
玄関を開けて、それから閉めた。
靴を脱いで、居間の方へ行くと…
「おかえり、なつみ」
「ただいま、ママ」
「それじゃ、今からお昼御飯を作るわね。」
「あれ?みらいちゃんは?」
みらいが居ない事に気がつき、るり子に聞く。
「みらいちゃんなら、2階のなつみの部屋に居るわよ。」
「そうなんだ。…ねぇ、ママ」
「何かしら?」
「あのさ、今朝…私、夢を居間へ連れて降りる前に、みらいちゃんの様子を見に行ったんだ。
それでね、みらいちゃん、寝言を言ってたんだけど…」
「あら、なつみの時も寝言を言っていたの?」
「えっ?」
「実はママも一度みらいちゃんを起こそうと思って、なつみの部屋に行ったのよ。」
「そうなの?」
今朝の事を話そうと思ったら、自分だけではなく、るり子の時にも寝言を言っていたと聞き、少し驚くなつみ
「ええ。でもみらいちゃんの寝言を聞いたら、なんだか起こしづらくなっちゃってね、起こすのをやめたのよ。」
「そうなんだ。ねぇ、ママの時…みらいちゃん、どんな寝言を呟いていたの?」
「クスっ」
「ママ、笑ってないで教えてよ。」
自分の質問に答えずに笑ってるるり子に不満を言うなつみ
「ごめんなさい。みらいちゃんはね、『パパ、ママ』って呟いていたのよ。」
「えっ…」
「きっとあの時、未来のなつみと…なつみの未来の旦那さんとの楽しい夢を見ていたんだと思うわ。」
「…やっぱりみらいちゃんも勇平君と同じで、未来の世界に居るパパとママに逢えなくて寂しいのかな…」
「そうね…みらいちゃんって、あまり感情を表には出さないから良く解らないけれど…
きっと心のどこかに寂しい気持ちも入っているのかもしれないわね。」
「うん、きっとそうだと思う。でも…私の時は『パパ、ママ』じゃなくて、『おにいちゃん』って呟いていたんだ。」
「おにいちゃん?…誰の事かしら?もしかして…みらいちゃんのお兄ちゃんの事かしら?」
なつみが聞いた寝言を聞いて、誰の事か考え出したるり子
「さあ?それは私も良く解らないんだ。」
「でも、寝言で言うくらいだから、みらいちゃんにとっては大切な人よね、きっと。」
「うん、私もそう思うな。じゃあ私、服を着替えてくるね。」
「ええ。ついでだから、そのまま夢と2階で遊んでて頂戴。出来たら呼ぶから。」
「うん、解った。」
なつみはるり子から夢を預かり、そのまま居間を出て、2階へと上がっていった。
るり子はその後台所へと移動をし、お昼御飯を作り始めた。
2階のなつみの部屋の方では…
『この音色は?』
「ダメ。」
『こっちは?』
「これもダメ。」
ノートパソコンの中に居る未来とみらいのやり取りがされていた。
その時になつみが入ってきた。
『それじゃあこの音色は?』
「それもダメ。」
「みらいちゃん?」
「あっ、なつみお姉ちゃん…おかえりなさい。」
「ただいま。さっきから何をしてるの?」
『オルゴールの曲作りだよ。』
みらいの代わりに未来が答えた。
「オルゴールの曲作り!?」
「うん。」
「本当なの?みらいちゃん」
「…ほんとだよ。」
『なかなか良い音色が見つからなくて、ずっとこの繰り返しなんだ。』
「へぇ〜。」
「なつみお姉ちゃんが帰ってきたって事は、今るり子さんがお昼御飯を作っているんですか?」
「うん、そうだよ。」
「そっか。じゃあ上書き保存してくれる?未来」
『了解っ!』
上書き保存中……上書き保存完了。
『上書き保存完了したよっ!』
「それじゃあ電源落とすね。しばらく休んでて。」
『うん、またあとでね。みらい』
その後みらいは電源を落とした。
「みらいちゃん、お昼御飯が出来るまで、3人で遊ぼっか?」
「うん。」
なつみとみらいは、夢の面倒を見ながら、3人で遊んで待っていた。
少したった後、下に居る、るり子からお昼御飯が出来たという声が掛かり、
なつみ達は下へ降りて、リビングへ行き、食べ始めた。
一方、大介の方はというと、なつみ達と分かれた後、大平と手を繋ぎながら自分の家へと帰っていた。
(何だよっ!なつみのやつ!俺の事をこんな奴呼ばわりしやがってよ!)
心の中で愚痴る大介
(……俺も、ちょっと悪かったかな……反省しねぇと…)反省する大介
そうしている間に、家へと着いた。
「「ただいまー。」」
「おかえりなさい、大介さん、大平。」
大介と大平に声を掛ける佐和子
「ああ、ただいま。勇平は?」
「勇平君なら、今和室で寝ていますよ。起こさないようにお願い致しますね。」
「ああ、解った。」
「今からお昼御飯の用意をしますね。大平、御飯はもうちょっと待っててね。」
「うん。」
「じゃあ俺と大平は部屋に居るから、出来たら呼んでくれ。」
「はい、わかりました。」
「いくぞ、大平」
「うん!」
大介と大平は大介の部屋へと向かっていった。
時間が経ち、佐和子が大介と大平を呼んだので、大介と大平は和室へ移動した。
そこには、佐和子と勇平がすでに座って待っていた。
大介と大平も座ると…
『いただきます!』一斉に言って食べ始めた。
「大介さん、今日もなつみちゃんの所へ行かれるのですか?」
「ん?いや、別にそんな約束してねぇけど。」
「あら、なつみちゃんと喧嘩でもなさったんですか?」
「……」
佐和子に図星を指されて黙ってしまう大介
「にぃちゃん…」
大介に話しかける大平
「ん?」
「仲直り…した方が…」
「誰が仲直りなんかするかっ!たとえ明日が地球最後の日でも俺は絶対に謝らねぇ!」
「…喧嘩…したの?喧嘩は…良くないよ…仲直りした方が良い。」
怒ってる大介にビクビクしながらも、喧嘩は良くないと言う勇平
「うっせー!どーしようと俺の勝手だろっ!?」
大介は食事を食べるスピードを上げて食べ始めた。
「でも…喧嘩が長引くと、後で後悔するよ?」
「……」
勇平のその言葉で食べる手が止まる大介
「一生仲が元通りにならなくなるかもしれないよ?みらいちゃんが前にそう言ってた。だから…」
「そんな事、俺が知るかっ!だいたい、なんでお前、みらい、みらいって、自分の意見はねぇのかよっ!?みらいに頼ってばかりじゃ、
いつまで経っても前には進めねぇんだよっ!!自分から行動を起こそうとしろよっ!みらいに頼らずに前に進んでみろよっ!ごちそう様!」
イライラしているせいか、勇平に八つ当たりしてしまう大介
大介は食べ終えて、1人で自分の部屋へと戻っていった。
佐和子と大平は大介のその様子を見て、心配していた。
勇平は大介の言葉が頭から離れなくなって、心の中で少しずつ苦しみ始めた。
部屋へと戻った大介はと言うと…
「なんだよ…勇平のやつ…みらい、みらいって…でも、ちょっと言い過ぎちまったな…あとで謝るか。」
冷静になって少し言い過ぎた事を反省する大介であった。
それから1時間後、水木家では…
なつみとみらいはなつみの部屋に居た。
「みらいちゃん、今日は江地さんの所へは行かないの?」
「うん。すぐに来てほしいってメールは来ていないし、今日は行かない事にした。」
なつみの問いかけに応えながら、先程のように、パソコンでオルゴールの曲作りをしていたみらい
「そっか。」
「…なつみお姉ちゃん」
「何?」
「誰かと…喧嘩でもした?」
「えっ…」
「なんか…ちょっとイライラしているように見えるよ?顔に出てる。」
「そ、そうかな?」
「うん。もしかして…大介お兄ちゃんと喧嘩でもした?」
「(ぎくっ)…みらいちゃん、どうして解ったの?」
「なんとなく。」
「…大介とまたいつものように喧嘩しちゃって、そのまま帰ってきちゃった。」
「…仲直り、しないの?」
「えっ…」
「どちらかが謝らないと、仲直りできないよ?それに、喧嘩が長引くとあとで後悔するよ?」
作業を続けながらも、なつみにそのままだと後悔すると言うみらい
「だ、誰が謝るもんですかっ!たとえ明日が地球最後の日でも私は絶対に謝らないわ!」
(…意地張ってる……)
「だって大介が悪いんだから!私の事、こいつ呼ばわりするのよっ!?ひどいと思わない!?」
「……」返答に困るみらい
「絶対謝るもんですかっ!たとえ喧嘩が長引こうとも、あとで後悔なんかしないわ!」
「…ほんとにそう思ってる?ほんとに後悔しない?」
作業をする手を止め、なつみの方に顔を向け、なつみの目を見て言うみらい
「……」
「時間を掛けて、ゆっくり考えてみると良いよ。そうすれば、ほんとうに後悔しないかどうかが解るから。
口では嘘はつけても…心は嘘をつかないから。なつみお姉ちゃん自身の心が…答えを教えてくれる。」
「…誰かの受け売り?その言葉…」
「さあ?どうかな。」
「んも〜、みらいちゃんってば、そればっかりね。ちょっとは教えてくれても良いじゃない。」
「ご想像にお任せします。」
「クスっ…でも、良いアドバイスありがとう。」
「どういたしまして。」
なつみはみらいの言葉を聞いて、自分が本当はどうしたいのかに気づけたようだ。
その時、下に居るるり子がなつみを呼んだ。
なつみはその呼びかけに応えて、自分の部屋を出て、下へと降りていった。
「どうしたの?ママ」
「ママ、これから急用でこれから出かけなければならなくなっちゃたのよ。」
「えっ?急用?」
「ええ。それでね、晩御飯の事なのだけれど…ママ、7時くらいまで帰って来れないのよ。
なつみさえ良ければ、今夜は代わりに作って欲しいのよ。お願いできるかしら?」
「うん、別に構わないよ。」
「それでじゃあ悪いけどお願いね。はい、材料代。」
「うん、わかった。」
「それと…夢の事もお願いね。」
「うん、解ってるよ。」
なつみはるり子から夢を引き渡された。
「それじゃ、お願いね。行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
その後るり子は家を出て出かけていった。
なつみはそのまま夢を抱きかかえながら、2階の自分の部屋へと戻っていった。
なつみと夢が部屋に入ると……
「るり子さん、お出かけ?」
「うん。急用で出かけなくちゃならなくなったんだって。夜の7時まで帰って来れないみたい。」
「そうなんだ。」
「だからね、今日は私が晩御飯を作るんだ。それでね、あとで一緒にスーパーにお買物へ行かない?」
「えっ?一緒に?」
「うん。」
「いいよ、別に。私、留守番してるから。」
「え〜?なんで!?一緒に行こうよ!」
みらいが一緒に行かないと言った事にショックを受けるなつみ
その時、下からインターホンが鳴った。
「あっ…誰だろう?みらいちゃん、ちょっとの間、夢の面倒を見ててくれない?」
「いいよ。」
「じゃあお願いね。」
なつみは部屋を出て、下へ行き、玄関を開けた。
「あっ…タマエ、えり子ちゃん」
「なつみ、まだ…大介の事で苛立ってる?」
まだ怒ってるか聞くタマエ
「ううん。もうあんまり苛立ってないよ。」
「そっか。」
「心配してくれてありがとう。」
「なつみちゃん、今日もお邪魔して良いかしら?」
「うん、良いよ。上がって。」
「「おじゃましまーす。」」
「今、ママもいづみおばさんもいないんだ。」
「じゃあ今家に居るのは…」
「なつみちゃんと夢ちゃんとみらいちゃんだけ?」
「うん、2階へ行こう。夢とみらいちゃん、私の部屋に居るから。」
「うん。」
「ええ。」
なつみ達は二階のなつみの部屋へと向かい、中へ入ってきた。
そこでなつみ達は、みらいが夢を遊ばせている所を目撃した。
その光景を見て唖然としてしまうなつみ達。
「あっ、タマエお姉ちゃん、えり子お姉ちゃん、こんにちは。」
なつみ達に気づくみらい
「あっ、こんにちは。みらいちゃん」
「こんにちは。みらいちゃん」
「みらいちゃん、小さい子の面倒を見てあげた事…あるの?」
「ん?あるよ。時々。」
「へぇ〜。みらいちゃん、こんな小さい子の面倒も見れるんだ。」
「一応ね。」
一方、山口太郎左衛門商店の方では…
和室に居る大平と勇平の所へ大介がやってきた。
大介は勇平の前に座ると…
「勇平、さっきは言い過ぎた。ゴメン!」
「…ぼ、僕の方こそ、何も知らないで、仲直りした方が良いとか、あとで後悔するとか言って…ごめんなさい…」
入ってきた大介がいきなり謝罪してきた事に驚くも、自分も悪かったと謝る勇平
「いや、お前の言う事は間違ってねぇんだ。だから謝るな。」
「うん…」
「にぃちゃん」
「ん?なんだ?大平」
「なつみお姉ちゃんの所へ行こう?」
「…そうだな、謝らないとな。あとで後悔しちまう前に…そうだろ?勇平」
「…う、うん。」
「おっし!行くかっ!大平!勇平!」
「「うん!」」
大介は大平と勇平を連れて、水木家へと向かった。
水木家の方へ戻り、なつみ達はなつみの部屋でお話をしていた。
みらいはパソコンでオルゴールの曲作りの続きをしていた。
「あっ、そうだ。なつみ」
「ん?何?タマエ」
「明日は大丈夫なんでしょうね!?」
「もちろんっ!」
「良かったわ〜。」
「でも、夢も連れて行かなきゃならなくなちゃったから、そこは許してね?」
「えっ?」
「実は、明日面倒を見れる人が居ないのよ。だから…」
「ちょっと待って!それじゃみらいちゃんはどうするの?」
みらいはどうするのか聞くタマエ
「みらいちゃんは、明日は朝から江地さんの所へ行くって言ってるんだ。だから大丈夫…だと思う。」
「お、思うってなつみ…」不安を抱くタマエ
「ねぇ、みらいちゃん」
みらいに声を掛けるえり子
「ん?何?えり子お姉ちゃん」
パソコンから目を離して、えり子へと視線を向けるみらい
「明日、朝から江地さんの所へ行くって本当?」
「うん、本当だよ。」
「みらいちゃん、大丈夫なの?江地さん、よく実験で爆発を起こしちゃうんだけど…」
「知ってる。」
「知ってるって…危ないわっ!」
しれっと言うみらいに危険だと言うタマエ
「大丈夫だよ。確かに江地さんってよく実験で爆発を起こしちゃうんだよね。
でも私が江地さんの所へ行っている時は爆発は絶対に起きない、それはなぜか?」
「う〜ん。江地さんが爆発を起こすような実験を行っていないから?」
「違います。江地さんの場合、後の事を考えないで、先に行動に出ちゃっているので、いつもそれらの実験の危険性を
あまり深く考えずに行っているから、それが原因でよく、破壊的な爆発を起こすんです。ですから、あらかじめ事前に
それらの実験の危険性を察知し、それを参考に対策を練り、危険性を低め、爆発を防ぐ事が可能なんです。」
「つまり…みらいちゃんが居る時は、必ずそのチェックを行っているから大丈夫だという事?」
「はい、そうです。」
「凄いわ!本当にそんな事なんて出来るの?」
「はい、可能です。」
「すっご〜いっ!でも、それならなんで2年前のあの時も爆発を起こさないように危険性を低めなかったのかしら?」
もっともな疑問を抱くえり子
「その頃は、まだその方法を見つけていなかったからじゃないですか?」
「えっ?」
「だって、その危険性を低める方法が出来たのは、私の世界では、6年前なんだもん。」
「「「6年前っ!?」」」
「う、うん。8年前に起きた実験による爆発の後に、これ以上大きな爆発などが起きてしまっていては
危険だっという事から、危険性を低める対策法を練り始めたんだよ。2年掛かったけど、
やっとの事で危険性を低めれる対策法が見つかり、すぐに各研究所の責任者を全員集め、
そこで、その対策法を発表したんだよ。以来、滅多な事がない限りは、爆発が起きなくなったんだ。」
「へぇ〜、そんな対策法を考えてくれる人がこの先現われるんだね。」
「うん。」
「でも、確かに爆発の危険性は高いけど、どうして2年掛けてまで、そんなに必死に対策法を練ったのかな?」
「それはたぶん…第1の原因は地震…かな?」
「地震が?」
「うん。地震が起きて一番困るのは病院。8年前の当時、どこかの病院である手術の成功率が低い難病の患者さんの手術が
行われていたんだけど、その時、ある研究所が実験を行っててね、それで実験が失敗し、爆発を起こしたんだ。」
「その時に地震が起きたのね!?」
「そう。病院側はその振動が原因で、手術中だった患者さんの身体の中の一部をあやうく傷つけてしまいそうになってしまったみたいなんだ。
おかげで予定より手術の時間が掛かったけど、なんとか無事に手術が成功に終わったけど、このような状況がまた次に起こってしまっては困るっと
医者達は不安を持ち始めていたんだ。その時、ある有名な病院の院長にその事を伝えたのがきっかけで、その爆発に対する対策法を練り始めたんだよ。」
「その病院の人が、練った対策法?」
「ちょっと違うかな。」
「どういう事?」
「確かにその有名な病院の院長も関わっているけど、1人で練ったわけじゃないんだ。」
「何人かでその対策法を練ったのね?」
「うん、そう。」
「でも、なんでみらいちゃん、そんなに当時の事に詳しいの?」
「教えてくれた人が居たから。」
「ふ〜ん、そうなんだ。」
「それじゃあ安心ねっ!」
「そうだね。」
みらいの説明を聞いて江地の所へ行かせても大丈夫だとやっと安心出来たなつみ達
「そういえば大介も一応同窓会には出席する予定なんだよね?」
「うん、そうだけど。」
「勇平君はどうするつもりなんだろう?」
「さあ?」
「そういえばそうね。」
「まっ、大介の事だからなんとかするでしょ。」
その時ちょうど下からインターホンが鳴った。
「ん?誰だろう?ちょっと見てくるね。」
自分の部屋を出て、下へと降りていったなつみ
そして玄関を開けると、そこには……
「だ、大介っ!!」
「よ、よう…」
「な、何の用?」
「…なつみ、さっきは…ゴメン!」
なつみに頭を下げる大介
「えっ…」
「えっと……その…「こいつ」呼ばわりしちまって…悪かった。」
「…私も、私も大介の事、「こんな奴」呼ばわりしちゃって…ごめんなさいっ!」
謝った後、2人はふと目が合った。
「仲直り…だな?」
「…うんっ!」
「あの…」
「ん?何かな?勇平君」
なつみはしゃがんで、視線を勇平に合わせた。
「みらいちゃん…居る?」
「うん、居るよ。今日は江地さんの所へは行かないんだって。」
「ほんと!?」居ると聞いて嬉しそうにする勇平
「うん、ほんとだよ。さっ、みんな上がって。タマエ達も来てるんだ。」
立ち上がって大介達を家へと招き入れるなつみ
「タマエ達も来てるのか。」
「うん。」
その後、なつみは大介達を連れて、自分の部屋へと戻ってきた。
「あれ?山口君?」
「何?もう仲直り?」
「うん。」
「意外と早いわね。私はてっきりしばらくの間は長引くと思ってたわよ〜。
あーでもこれで明日は安心ね。楽しく過ごせそう。ねっ、えり子ちゃん」
「ええ、そうね。タマエちゃん」
2人の仲直りが思ったより早かった事にはビックリだが、
これで明日は楽しく過ごせると喜ぶタマエとえり子であった。
「「あは、あははははっ……」」
なんとなく2人から目を逸らしてしまうなつみと大介
「勇平君、こっちにおいで。」
勇平に声を掛けたみらい
「あっ、みらいちゃん!」
呼びかけられて、嬉しそうにみらいの方へ向かう勇平
「勇平君、パソコンのワードソフトで、ローマ字打ちの練習…する?」
「うんっ!するっ!」
「じゃあ始めようか。」
「うんっ!」
「ちょっと待っててね。未来、ワードソフトを開いてくれる?」
『了解っ!』
ワードソフト読み込み中……読み込み完了。
『読み込み完了したよっ!』
「ありがとう。じゃあ勇平君、ローマ字打ちの練習始めるよ。」
「うん。」
「それじゃ、今日は、一応すべて練習打ちが終わったから、始めの「あ行」から、最後の「わ行」まで全て。」
「わかった。えっと……「あ」の打ち方は…」
打ち方を思い出しながらキーボードを打つ勇平
「…なあ、なつみ」
「何?大介」
「俺、ずっと思ってたんだけどさ、みらいって・・・なんであんなにパソコンに詳しいんだろ?まだ小学校に上がったばかりだしさ。
いくらなんでも…小学校1年生でそこまでのパソコンの技術を学んでいるとは思えねぇんだけど。」
ずっと思っていた疑問を言う大介
「大介もそう思う?私達もそう思ってたんだ。ねっ?えり子ちゃん」
「ええ。」
タマエやえり子も大介に同意する。
「確かにそうだね。でも、もしかしたらみらいちゃんは、小学校へ上がる前から、
みらいちゃんのお父さんにパソコンの使い方や技術を教えて貰っていたからじゃない?」
「そういえば勇平君がみらいちゃんのお父さんは技師だって言っていたわね。」
「でも、だからってそこまでの事を早く仕込ませる?まだ6歳児だよ?」
「んなこと知るかよ。けど、俺はそれだけじゃねぇ気がするけどな…」
大介は父親から教えられた以外にも何かあるのでは?っと思っていた。
「えっ?」
「大介もそう思う?」
「なつみもか?」
「うん。私もなんとなくだけど、それ以外にもあるような気がする。」
「ええー!?ちょ、ちょっと二人とも何があるっていうのさ!?じゃあなに?みらいちゃん自身が
自分で技術を学んで使いこなしているとでも思ってるの?」
「んー、その可能性もありえなくもねぇな。」
「私も…そう思う…っかな?」
タマエの言った通り、みらいが自分で学んで使いこなしているという可能性を肯定する大介となつみ
「ん?どうした?大平」
大平の様子が可笑しい事に気づいて声を掛ける大介
「えっ…な、なんでもないよ!」
今まで見ていた方向から視線をずらした大平
大介は大平が今まで見ていた方へと視線を向けると、みらいと勇平が居た。
「なんだ、お前…みらい達がやっているパソコンをやってみてぇのか?」
「ち、違うよっ!」
「こらっ、兄ちゃんに隠し事すんな!」軽く叱る大介
「……」
「正直に答えろよ。」
「…ちょっと…やってみたい。でも、今は勇平君がしてるから…」
大介は大平のその言葉を聞いた後、再び視線をみらい達に移した。
「…できたっ!」
「はい、合格。」
「やったー!」
みらいに合格を貰って嬉しそうにする勇平
「でも、未来の世界へ帰ったら、最終段階として、テストを行うからね、ローマ字打ちの。」
「えー!?」
「当たり前の事でしょ。」
「む〜、みらいちゃんのおにーっ!」
「鬼で結構。ワードソフト終了。」
勇平に「鬼」と言われても怒らないみらい
『了解っ!』
ワードソフト終了中……終了完了。
「ねぇ、ゲーム…使える?」
「一応使えるけど……何?やりたいの?」
「うんっ!やりたいっ!」
「自分のノートパソコンは?」
「えへへ…置いてきちゃった。」
「解った、良いよ。未来、ゲームソフトファイルを開いてくれる?」
『了解っ!』
ゲームソフトファイル読み込み中……読み込み完了。
『読み込み完了したよっ!』
「やったっ!」
勇平はノートパソコンのゲームをやり始めた。
「ん?」
みらいは視線を感じたので、その方へ視線を向けると、そこには大平が居た。
「…大平君も…やる?ゲーム」
「えっ…」
「ほらっ、大平。行って来い!」
「う、うん。」
大平もみらいや勇平の方へ行った。
「なんか不思議な感じだね。」呟くなつみ
「ん?」
「だって2年前は、大平ちゃんがみらいちゃんの遊び相手として面倒を見ていたけど、今度は逆なんだもん。」
「そういえばそうだな。今度はみらいの方が年上だからな…」
なつみに言われてそういえばと思い出す大介
「そういえばさっきね、タマエ達が来る前、みらいちゃんとお話してたんだけど、
なぜかね、私が大介と喧嘩した事、解ってたみたいなんだ。」
「えっ?みらいのやつが?」
「うん。『どうして解ったの?』って聞いたら、『なんとなく。』っだって。」
「なんとなくで解ったのかよ?みらいのやつ。」
「うん。それでね、みらいちゃんに大介と仲直りしないの?喧嘩が長引くと
あとで後悔するよ?…って言われちゃった。誰の受け売りなんだろうね?」
「…実は俺も…ここへ来る前、家で昼飯食ってる時、お前に言われた事と同じ事…言われた。」
「えっ?誰に?」
「勇平だよ。」
「勇平君が?」
「ああ。みらいからの受け売りみたいぜ?」
「えっ?そうなの?」
「ああ。たぶん…みらい自身が言った言葉…他の人からの受け売りじゃなくて、自分の意思で言ってるんじゃねぇか?」
「自分の意思で?」
「ああ。」
「そうかな…?」
喧嘩した大介となつみをそれぞれ勇平とみらいの言葉のおかげで、無事仲直りする事が出来た2人。
仲直りしなくていいのか?本当に後悔しないのか?っという言葉を聞かされた2人。
今も頭の中で、その言葉について考えている2人。
その答えを2人は無事に見つける事が出来るのだろうか?
ここでも大介達はまたみらいの謎について疑問が浮き始めていた。
みらいの謎は多く、大介達一同は驚く事ばかり。
さて、次回はどんな出来事が起こるのであろうか!?
今回のお話では、それぞれ勇平やみらいが言った言葉から、お互い無事に仲直りする事が出来た2人。
勇平やみらいが言った言葉で、お互いは本当に後悔しないのかを考え始めるんですよね。
お互いの大切さ…っというやつですね。気づくでしょうか?
う〜ん、大介は気づきそうですが、なつみはどうでしょう?
きっと大介よりもなつみの方が、この答えを見つけるのに苦労しそうな気がします。
それでは第20話へお進み下さい。