みらいからのメッセージ

――2階――みらいの部屋の前――

みらいの部屋の前に着き、大地は一度ノックをしてからドアを開けて中へと入っていった。

大地は中へ入ってすぐにみらいのパソコンがある机の方へ行き、そこの椅子に座ってパソコンの電源を入れた。

「そういえば大地、みらいのパソコンの起動パスワード…知ってるのか?」

「ああ、知ってる。」

大地がパスワードを入力すると、パソコンが起動し始めた。

「おっ、起動し始めたぞ。」

しばらくして画面が変わり、声が聞こえ始めた。

『…主のパソコンに何の用だ?』
みらいと同じ髪色で無愛想な少年が画面上に現れた。

「来(らい)、お前に頼みがある。」

『…どのような用件だ?場合による。』

「来、今から事情を話す。だから俺の頼みを聞いてくれないか?」

『…大地さんが俺に頼みごとをする時は、非常事態などの時だと、主から聞いている。何か事情があるみたいだな。』
大地の様子から、非常事態なのだろうと察する来

「ああ。」

『…主がここにいないのも…今回の事態に、主も関わっているからか?』

「ああ、そうだ。」

『……わかった、簡単な事情だけを先に話してくれ。その後すぐに、大地さんの要求を受ける。』

「わかった。」

『じゃあまず簡単に事情を話してくれないか?』

「ああ。お前の主…みらいは現在この時代にはいない。」

『……』黙って聞く来

「みらいが現在居る場所は、西暦1995年の春だ。」

『そこまででいい…説明の続きは後で聞く。どうやら大変な事になっているみたいだしな、要求を言え。』
自身の主であるみらいが現在この時代に居ないと聞いただけで、大地が自分に頼みごとをしてきた理由が解り、要求を聞く。

「ああ。みらいが毎日記入している日記を開いて欲しいんだ。」

『主の日記を?』

「ああ。来、みらいの日記には、現在『Zポイント』が繋げられているんだろ?」

『ああ。実験のために「Zポイント」を繋げると言い、この間「Zポイント」を繋げた。』

「みらいなら、もしかしたら日記に何かを書いて、こちらの日記にも送信されているかもしれないだろ?」

『…承知した。しばらく待ってくれ、主の日記を呼び出す。』
みらいの日記を呼び出す理由を大地に聞いた来はその要求を飲んだ。

「ああ、頼む。」


〈日記の読み込み中〉


「いつも思っていたのだけれど…性格、なんか大地に少し似てない?」
画面に映る来と大地を交互に見ながら呟くなつみ

「そうかもな。」否定しない大地

「ネットナビゲーターの性格は、こちらが決めるのではなく、コンピューターが自動的にランダムして決めていたからな。」

「それでここに居る来君は、偶然にもそのランダムで大地に似た性格になっちゃったのね。」

大介の説明に納得するなつみ

「ああ。大地の性格などのデータもコンピューターのプログラムに組み込んでおいてあったからな。」

「それじゃあみらいの性格も?」

「ああ。みらいの性格などのデータもコンピューターのプログラムに組み込んだ。」

「へぇ〜、知らなかったわ。そういえば未来ちゃんは誰の性格のデータを貰ったのかしら?」

「さぁな。このデータを集めていたのは俺だけじゃないからな。」

「そうなの?」

「ああ、大地にも手伝ってもらってたんだ。」

「あら、そうなの。」


〈日記の読み込み完了〉


『日記の読み込み完了したぞ。』

「サンキュ」

読み込みが完了した日記を開くと…

『どうだ?』

「……あった。」呟く大地

「ほんとか!?」

「ああ。日付けはどうやら今日みたいだな。」

「どういう事だ?」
更新されていると解って喜んでいたが、日付を聞きて首を傾げた大介

「確かに今みらいは過去の世界に居るが、『Zポイント』を使用しているため、日記の日付は惑わされない。」

「つまり…こちらの日付のままということか?」

「ああ。」

「それで大地、何て書いてあるの!?」

「……交代だ。」
書いている内容は自分の目で見ろと言わんばかりに、大地は椅子から立って、席を空ける。

「なつみ、お前が座れ。」

「え、ええ。」
大介に言われた通り、椅子に座るなつみ

パソコンの画面上を大介、なつみ、大地が覗いてみると……


――日記――

××年○月○日△曜日
大地お兄ちゃんに聞いて、これから書くメッセージの事を読まれている事と思います。
今から、それぞれにメッセージを書きます。

まずはママから…
ママ、昨日家へ帰ってきて、私が居ない事に気づいた時、心配しちゃったよね?
今日、大平さんと通信した時、ママもパパも一晩中寝ないで起きていたと聞きました。
ママ、あまり体に無理をさせちゃダメだよ。
ママが無理していると、私、心配しちゃうから。
ママ、私が心配なのは良く解ってるよ。
でも安心して?必ず未来の世界へ……ママ達の所へちゃんと帰ってくるから。
今、江地さんがタイムマシンに修理・改良を行ってくれてるから。
だから心配しないで、待ってて。
大平さんから話を聞いたと思うけど…ママ、今まで隠し事をしててごめんなさい。
この事を本当に話して良いのか、良くないのか、正直言って悩みました。
この秘密を知られた時のママ達の反応を考えてみると、どうしても怖くて言えなかった。
だけど、今回のような事件が起きてしまったため、もう隠し事をする事が出来なくなってしまいました。
なぜなら、『Zポイント』の存在を伝える事になるからです。
ママの事だから、きっと心配してるだろうなと思い、よく考えた結果、
大平さんに今まで隠してきた秘密をママ達に明かしてもらう事にしました。
ママ、今まで本当にこんな大事な事を黙っててごめんなさい。


次はパパへ…
パパ、私やママののために必死に通信を繋ごうとしてくれてありがとう。
今日の通信で、だいたいの状況は掴めたよね?
江地さんがタイムマシンに修理・改良を行ってくれているから、ちゃんと未来の世界へ帰って来れるよ。
そういえば通信の時、どうして、過去のパパと口論をしちゃったの?
もしかして…自分が選んだ道に、何か未練でもあったの?本当にこの道に進んで良かったのか?って…
答えられないなら、答えられなくても良い。
でも、過去のパパと口論をするのはもうやめて。
これ以上、口論を起こすと、過去のパパが混乱しちゃうよ。
本来なら、パパ自身しか知らないような事なのに、それを切り出したりしたら、何かが狂っちゃいそうだから。
それと、パパにも今まで隠し事しててごめんなさい。
この事を本当に話して良いのか、良くないのか、正直言って悩みました。
この秘密を知られた時のパパ達の反応を考えてみると、どうしても怖くて言えなかった。
だけど、今回のような事件が起きてしまったため、もう隠し事をする事が出来なくなってしまいました。
なぜなら、『Zポイント』の存在を伝える事になるからです。
パパ、今まで本当にこんな大事な事を黙っててごめんなさい。
パパ、ママの事、ちゃんと見ててよ?
ママをほったらかしにしたら、絶対許さないからね!?約束だよ!?


次に大地お兄ちゃんへ…
お兄ちゃん、お帰りなさい。直接、この言葉が言えなくてごめんね。
お兄ちゃんが居ない間に江地さんが起こしたタイムスリップに巻き込まれて、過去の世界へ飛ばされちゃった。
そっちへ帰ってきた時、江地さんを怒らないであげてね?私も不注意だったから…
お兄ちゃんはきっと、「お前のせいじゃない。」って言うかもね。
でもほんとに私も不注意だったから。
お兄ちゃん、パパとママの事、お願いね。


最後に、大平さんへの伝言をお願いします。
大平さん、勇平の事は心配しないでください。
私が責任を持って、勇平の体調管理などをしておきますから。
それと、大平さんが残してくれた伝言…勇平が聞いたら、大平さんとの約束を守るって言いました。
大平さんから、頑張る力をもらったみたいですね。
だから、安心して、勇平が無事に未来の世界へ帰れるように祈っていてください。

――日記終了――


「みらい…」

「みらいのやつ…」

「江地を怒るなだと?たくっ、お前というやつは…」

なつみ、大介、大地はそれぞれみらいからのメッセージを受け取った。

『もう日記を閉じていいか?』

「ええ。」

「ああ。」

「来、閉じていいぞ。」
なつみと大介の様子を見て判断した大地が来に日記を閉じるように言う。

『承知した。』

了承を得ると、すぐに日記を閉じた。

『さて、今の日記で俺もだいたいの状況は把握した。説明は必要なくなった。』

「そうか。」

『また何かあれば、大地さんの要求を聞く。今だけな…』
非常事態の為、今回の件が片付くまでは大地の命令を聞く事にした来

「ああ、解った。」

『もう用がないなら、電源を落としておいてくれ。』

「ああ。また何か解ったら報告する。」

『了解。』

大地は来に言われた通り、パソコンの電源を落とした。

そして、大地達は、みらいの部屋を出て、下へ降りていった。


――1階――

下に降りて居間へ入り、3人はそれぞれソファーに座った。

「さっきの日記で、みらいの無事が確認出来たな。」

「ええ。勇平君の事も。」

「ああ。2人とも大丈夫だという確認は取れた。」

「ありがとう…大地」

大介となつみは日記を見た事で、改めてみらいの無事を確認出来て安心していた。

「俺は別に何もしていない。」

「いや、お前が日記の事を教えてくれていなかったら、今もあの日記を読んでいなかった。」

「…俺は可能性で言っただけだ。だから感謝するなら、みらいにするんだな。あいつが日記で向こうの様子を
知らせるという手段を思いついたんだからな。それに…『Zポイント』の開発をしているのもみらいだ。」
お礼の言葉を素直に受け取らず、日記の事は全てみらいのおかげだと言う大地

「ああ、そうだな…」

「ええ…」

大地はソファーから立ち上がり、居間を出て行こうとした。

「大地?」

「もう寝る。」

「お風呂は?」

「入らない。今日はもう疲れたしな…おやすみ。」
居間を出て行き、2階へ上がっていった大地であった。

「…なつみ、先に風呂入れ。俺は後で入るから…」
大地が2階へ上がっていった後、なつみに声を掛けた大介
「えっ?」

「食器の後片付けは俺がやっとくから。なっ?」

「…わかったわ。じゃあ、入ってくるわね。」
大介のお言葉に甘えて、風呂に入る事にするなつみ

「ああ。」

なつみは風呂へ、大介は台所へとそれぞれ移動していった。


その頃、二階の自分の部屋に居る大地はというと……

(18年前の過去の世界……っか。確かに俺はこれまで、約10年前までの過去の世界にしか行った事がない。
だが、それ以上の過去の世界へ行く事は決して不可能な事じゃない…けど、18年も前となると、
いくら副作用発動防止機能が付いているタイムウオッチを身につけているとはいえ、あいつと一緒に居なければ、
俺に副作用が発動する可能性は極めて高いだろう。…相当の覚悟が必要だな…)

大地は自分の部屋に戻ってからずっと時間移動の事についていろいろと考えていた。

しばらく考え込んでいた大地だったが、結論が出たのか、考えるのをやめた。

大地は、自分が出す答えは初めから1つだけだと解ってはいたが、本当にこの選択で良いのかを考えていたのだった。

「俺が出す答えはやっぱ1つだけみたいだな。…過去の世界へ行く許可をもらうか。」

大地は自分のパソコンを起動させ、ある所へ通信回線を繋いでいた。



なんと、みらい専属ネットナビゲーターがもう1人いたのであった。
そして、大地に言われた通り、日記にはみらいからのメッセージがっ!
なつみ、大介、大地、大平とそれぞれにメッセージが送られてきていたのだった。
その日記を見て、ひとます安心するなつみと大介であったが、まだ心配は残っていた。
本当に未来の世界へ帰って来れるのかという、小さな不安と心配……
そして、大地が自分の部屋で、最後に呟いた一言はいったいどういう事なのか!?


第18話へ進む。


このお話も未来の世界でのお話です。
このお話では、もう1人のみらい専属ネットナビゲーター「来(らい)」が登場!
「未来」という漢字から、「来」だけを取って、「らい」と読みます。
それでは第18話へお進み下さい。。

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