それぞれが思うこと…

水木家へ戻ったなつみとみらいは…

「「ただいま〜」」

「あっ!帰ってきた!ちょっとなつみ〜、どこ行ってたのよ〜!心配しちゃったじゃな〜い。」
2人が帰ってきた事に1番に反応し、なつみに文句を言うタマエ

「ごめん、ごめん。夢が丘公園まで行ってたんだよ。」

「良かったわ〜。なつみちゃんもみらいちゃんも無事で。」
えり子も2人が無事な事が解って安心する。

「んじゃ、なつみもみらいも戻ってきた事だし、俺、もう帰るぜ?」
2人が無事帰ってきたので、そろそろ帰るという大介

「あっ、うん。」

「んじゃ、帰るぞ。大平、勇平。」

「うん!」元気な返事をする大平

「ん?どした勇平?」
返事をしなかった勇平に声を掛けた大介

「…みらいちゃん、さっきはごめんなさい。」


「何の事かな?」
勇平から目を逸らしながら言うみらい

その言葉に勇平とみらいとなつみ以外のそこに居るみんながドテッとつっこけた。

「えっ…」

「お、おい、お前な…」

そこでなつみが大介に黙っての合図を送った。

「勇平君、なんか私に謝らないといけない事なんてしたっけ?」

「み、みらいちゃん?」

「勇平君が私に謝らなければならない事は何もしていないよ。」

「みらいちゃん…」

大介はなつみに言われて黙ってその様子を見ていたが、なんとなく状況が掴めたので、納得し…

「勇平、帰るぞ。」

「あっ、うん!じゃあ…みらいちゃん、またね。」

「うん、またね。」

「それじゃあおじゃましました。」

「大介、また明日学校でね。」

「お、おう。」

その後何事もなかったかのように勇平は笑顔になり、そのまま大介と大平と一緒に帰っていった。

「それじゃ、私達もそろそろ帰るね。ね?えり子ちゃん」

「ええ、そうね。タマエちゃん」

なつみに声を掛けるタマエとえり子

「あっ、タマエとえり子ちゃんも帰るの?」

「うん。なつみのお母さん、お邪魔しました。」

「お邪魔しました。」

「またいつでも来てね。タマエちゃん、えり子ちゃん」

「はい、また来ます。それじゃあなつみ、また明日学校で。」

「それじゃあね、なつみちゃん。また明日学校でね。」

「うん、二人とも、また明日。」

「なつみ、晩御飯のお買い物に行ってくるから、夢の事をお願いね?いづみはまた部屋で漫画を描き始めたから。」

「うん、解った。いってらっしゃい、ママ」

「いってきます。」
るり子は夢をなつみに任せて、買い物に出かけていった。

その後なつみとみらいは居間へ行き、二人で夢の面倒を見ながら買い物へ出かけていったるり子と、なつみの父浩三郎の帰りを待っていた。


水木家を出て、家へ帰る途中のタマエとえり子はというと……

「ねぇ、えり子ちゃん」

「何?タマエちゃん」

「えり子ちゃんはどう思う?」

「何を?」

「何をって、みらいちゃんのお父さんの事だよ。」

「そうねぇ…う〜ん…解らないわ。それにマリオ君か山口君かなんてまだ確定じゃないかも知れないじゃない。」

「そうかなぁ〜?でも気にならない?」

「う〜ん…全然気にならないといえば嘘になるけれど…確かに少しだけ気になるわ。」

「でしょ?」

「でも別に良いじゃない、今は解らなくても。私達にとって、本来は未来の世界の事は知ってはいけない事なんだもの。」

「確かにそれもそうだね。」

「気になる事は他にもいろいろあるわ。でもそれは過去の私達が解決させる事じゃなくて、
未来の世界の私達がやるべき事だと思うの。だから私達に出来る事はただ1つだけ。」
みらいの父親の事だけではなく、他にもいろいろ気になる事はあるが、
今自分達に出来る事はただ1つだけだと言うえり子

「うん、そうだね。勇平君とみらいちゃんが無事に未来へ帰れるように祈る事…だよね!」

「ええ。それに、今のみらいちゃんの事も受けとめなきゃね。」

「うん。みらいちゃんが赤ちゃんの時とは違うのは、もしかしたら勇平君が言っていた通り、
一年前の交通事故が原因の元なのかもしれないしね。」

「そうね。私達がまだ経験していない事をみらいちゃんは経験している。
大切な人を目の前で失う悲しみを…」

「勇平君の話を聞く限りじゃあ、みらいちゃんはその『命ちゃん』って子と仲が凄く良かったみたいだしね。」

自分達はまだ大切な友達を亡くした事がないので、みらいの気持ちを理解する事が出来ず、みらいの力になる事が出来なくて悔しい2人であった。

「みらいちゃん、いったいこの6年間の間にどんな人生を送ってきたのかしらね。」

「そうだね、きっと…私達じゃあ想像の出来ない人生を送ってきたように思うよ?少なくとも、みらいちゃんには
なつみの事が解るみたいだしね。未来のなつみに凄く愛されて育っているのがよく解るよ。」

「そうね。家族愛って素敵よね!」

「えり子ちゃん、昨日、あれからいろいろと考えていたんだけどさ、確かに今私達の時代に来ているみらいちゃんは
2年前にここに来ていた赤ちゃんのみらいちゃんとは全く違う。」

「タマエちゃん…」

「でも、考えてみたんだ。確かに今ここに居るみらいちゃんは2年前にやってきたみらいちゃんとは違うけど、
それでもやっぱりみらいちゃんはみらいちゃんで、私達はみらいちゃんがどんな風に成長していったかを知らないから、
昨日みたいに戸惑ったりしちゃうんじゃないかって。」

「タマエちゃん…私もそう思う。私達はみらいちゃんがこれまで歩んできた人生を知らないから、戸惑っちゃうんだって。」

「えり子ちゃん…」

「タマエちゃん、また一緒になつみちゃんの為に、勇平君とみらいちゃんの助けになってあげましょ?」

「そうねっ!私達も協力しないとねっ!ここに居るなつみと未来のなつみの為にも。えり子ちゃん、また一緒に頑張ろっ!」

「ええ、もちろんよ!あっ、ここで分かれ道だわ。それじゃあタマエちゃん、また明日学校でね。」

「うん。バイバイ、また明日学校でね!」

2人は別れ、それぞれ家へと帰っていった。

タマエとえり子は気持ちを新たにし、親友のなつみの為にも
勇平とみらいの助けになろうと決意していた。


その頃、ちょうど「山口太郎左衛門商店」へと着いた、大介と大平と勇平はというと……

「あら、お帰りなさい。」

「これはこれは、お帰りなさいませ。」

大介達が帰ってきた事に気付き、佐和子と徳さんが声を掛けてきた。

「ああ、だだいま。」

「ただいま。」

「あら?大介さん、勇平君がここへ居るということは…」

「ああ、わりぃ、勇平を家で預かる事になっちまったんだ。」

「そうですか。それで…どうだったんですか?」

「ああ、中に入ってから話す。」

「解りました。それじゃあ中に入りましょう。徳さん、ここをお願いしてもよろしいでしょうか?」

「ええ、構いませんよ。」

「それじゃあお願いします。さっ、行きましょう。」

店を徳さんに任せ、佐和子と大介と大平と勇平は家の中の奥の方へと行った。


和室へと移動し、そこでみんなが座った。

「それではお話頂けますか?大介さん」

「ああ。実は…」
先程まで居た水木家での出来事をなつみの旦那が誰かの話を伏せて、話し始めた。


しばらく時間が経ち…

「…っというわけなんだ。」

「まあ、みらいちゃんのいとこだったんですか?」
まさかみらいのいとこだとはさすがに思っていなかったので驚く佐和子

「ああ。そして大平の未来の息子だから、つまり…義母さんにとっては孫にあたるな。」

「あらま、そうなの。でも、こんな形で将来生まれてくる孫に巡り会えるなんて…素敵ですわね。」
勇平が自分の孫だと解り、驚くどころかその事実をすんなりと受け入れ、嬉しそうにしている佐和子

「あはははっ…そういう問題じゃねぇ気がするんだけど……とにかく、そういう事で未来の大平に頼まれちまったんだ。」
勇平の事をあっさり受け入れてくれた事に少し驚きつつもホッとした大介

「そう。でも…残念だわ。未来の大平の姿が見れなかった事。」

「いや、だからそういう問題じゃねぇって…」

「ところでみらいちゃんの事ですけれど、みらいちゃんがお友達が亡くなるのを目の前で見てしまったっておっしゃっていましたよね?」

「あ、ああ。」

「みらいちゃんとその亡くなったっていう命ちゃん、そんなに仲が良かったのですか?」

「みたいだな。なぁ、勇平」

「えっ?な、何?」
突然話しかけられて驚くも、呼びかけに応じる勇平

「みらいと命ちゃんって子…凄く仲が良かったって言ってたよな?」

「う、うん。」

「命ちゃんって…どんな子だったんだ?」

「どんな子だったって言われても……」

「お前から見て、どんな雰囲気の子だったかを言えば良いんだよ。」

「僕から見て?」

「ああ。」

「…う〜ん…命ちゃんは、おとなしくて、本を読むのが大好きで、でも運動は苦手な方で、とっても優しかった。
みらいちゃんと似たような優しい雰囲気があった。」
生前の命の事を思い出しながら話す勇平

「みらいとその命ちゃんはどんな風に仲が良かったんだ?」

「う〜んと、みらいちゃんと命ちゃんは、初めて会った時からすぐに仲良しになってた。まるで…前から知っていたお友達のような感じ。
命ちゃんは、自分が想像した物語を必ずみらいちゃんに聞いてもらって、みらいちゃんからの感想を貰ってた。
みらいちゃんが感想を述べると、命ちゃんは凄く喜んでた。」

「まぁ、お話を想像するのが好きだったんですか?その子は。」

どうやら命は物語を創作する事が大好きだったようだ。

「うん。あっ…」

「ん?どうした?」

「そういえばみらいちゃんもたまに、命ちゃんに物語を話していた事があったっけ。僕も良くみらいちゃんの話す物語を聞いてたから。」

「へぇ〜。みらいが物語をね…」

「みらいちゃんがお話しする物語はいつも面白いよっ!」

「そうなのか?」

「うん。あっ、でもみらいちゃん、僕と命ちゃんと秋生ちゃんにしか自分が想像した物語を語っていなかったみたいなんだ。」

「そうなのか。」

「あら?勇平君、秋生ちゃんって?」
自分の知らない名前が出てきて聞く佐和子

「秋生ちゃんもみらいちゃんのお友達で、命ちゃんとも仲の良かった子だよ。」

「命ちゃんとも?」

「うん。みらいちゃんと命ちゃんと秋生ちゃんの3人はと〜っても仲が良かったんだ。」

「その子は今もみらいちゃんと?」

「うん。みらいちゃんと同じクラスに居るよ。仲が良いのは今でも変わらないよ。」

「ふ〜ん、そうなのか。お前は?」

「えっ?」

「お前はお友達は居ないのか?」

「僕には…居ないよ、お友達なんて……みらいちゃんのお友達で僕とお友達になってくれてる人以外はね…」
悲しそうな顔で友達は居ないと言う勇平

「えっ……」

そこで沈黙が流れ始めた。

(友達がいねぇ?ん?そういや……)
勇平から友達は居ないと聞いて、大介はある事を思い出した。


ーー回想ーー

『そっか。…なぁ、なんであいつ…学校へ行く以外は、外へ出たがらないんだ?
外に出ると嫌な事があるからとか、外に出るのが怖いとか言ってたんだけどさ。』

『……外に行けば、必ずつらい思い出を無意識に思い出しちゃう…
誰かがそばにいないとすぐ不安になって、精神が不安定になるからです。』

『つらい…思い出?』

『差別だよ。』

『『差別!?』』

『そう、幼稚園時代から、同年代の男の子達にね、勇平が「ハーフ」ということだけでよく言葉の暴力があったんです。
誰も勇平を仲間に入れようとしなくてね。だからどうして「ハーフはダメなのかな?「どうして僕はみんなと違うの?」って
よく私に言っていました。だから私は、その度にきちんと教えていたんですけど…同年代の男の子からの差別が
一向に止まなかったのが原因で、いつの間にか勇平の心の負担になっちゃたんです。
それからだんだん精神が弱ってきてね、その「ハーフ」という言葉に大きな精神的ダメージを受けちゃって…
それ以来勇平の精神年齢はストップしたままなんです。現在、外見は6歳…でも、精神年齢は未だに止まったままなんです。」

『それで精神障害ってのを持ってんのか。』

『はい。』

ーー回想終了ーー


(…ってなこと言ってたっけ?つまり…今もいじめられっ子って事か…)
勇平とみらいから聞いた情報を結合させると、今もいじめられっ子だから
友達が居ないのだろうと大介は推測していた。

「あら、もうこんな時間。そろそろ夕食の支度をしますね。」
夕食の準備に取り掛からないといけない時間になったので席を立つ佐和子

「あ、ああ。大平と勇平の事は俺が面倒見とく。」

「お願いします。」

佐和子は和室を出ていった。

「…なぁ、勇平」

「な、何?」

「自分から…お友達を作ろうと努力しねぇと…いつまで経ってもお友達ができねぇぞ?」

「でも…僕、みんなと違うから…きっと仲間に入れてくれないよ…」

「…じゃあさ、あいつはなんて言ってたんだ?」

「えっ?」

「みらいの事だよ。」

「みらいちゃん?みらいちゃんは……」
大介に言われて、ずっと前にみらいに言われた言葉を思い出す。


ーー回想ーー

今から2年前、2人がまだ幼稚園に通っていた頃…

ある日の幼稚園からの帰り道で、勇平とみらいがお互い手を繋いで帰っていた時…

『ねぇ、みらいちゃん』

『何?勇平君』
歩んでいた足を止め、繋いでいた手を離し、勇平の方へと振り返った。

『どうして…みんな僕の事を変な目で見るのかな…』

『…それはね、勇平君。みんながまだ幼いからだよ。』

『みんなが…幼いから?』

『そう。だから知識だって幼い。みんなまだ解らないんだよ。世界中には日本以外にもたくさんあって、
そして国によって外見や使う言葉も違う事を…』

『国によって、外見や使う言葉が違うの?』

『うん。例えば外見でいえば、勇平君は瞳の色や髪の毛の色が私や幼稚園に居るみんなとは違うでしょ?それは、勇平君が
日本人とイタリア人の間に生まれたハーフだからだよ。どうして日本人の血も受け継ぎながら、外見がイタリア人と同じ髪や
瞳なのか、それは誰も解らない。でも、勇平君がここにいるのは、勇平君のお父さんとお母さんがお互いの違いを認め合って、
そして愛し合っているから、勇平君はこの世に生まれる事が出来た。勇平君のお父さんとお母さんにとって、勇平君は2人が
愛し合っている証に授かった生命。』

『パパとママが…お互いを認め合って、愛し合っている証?』

『そう。勇平君、お父さんとお母さんの事…大好きでしょ?』

『うんっ!大好きだよっ!』

『勇平君がそう思うように、勇平君のお父さんとお母さんも勇平君の事が大好きで、2人にとって勇平君は


一番の宝物なんだと私は思うよ。』

『僕が…パパとママにとって、1番の宝物?』

『そう。勇平君がみんなとは違う姿でも、それは2人が愛し合った証。だから別に恥じる事でもいけない事でもない。
誇りに思って良い事なんだよ?』

『誇り?』 

『うん。だって勇平君は勇平君のお父さんとお母さんが愛し合っていなければ、ここには居ないんだよ?だから2人の間に
生まれた子供で本当に良かったって、そう誇りに思う事が大事なんだよ。感謝の気持ちも含めて…』

『感謝の気持ちも…含めて?』

『そう。この先、勇平君自身が本当に2人の間に生まれた子供で良かったなって思える時がきっと来るから。』

『本当?』

『うん、本当だよ。今はまだ理解されにくい年頃だけど、この先、みんながゆっくり大人になっていくうちに、自分との違いがあっても、
それを理解して受け入れられるようになる時が来る。でも、だからといってお友達を少しずつ作っていこうとする努力は必要な事。
自分から努力してお友達を作って、少しずつゆっくりとお友達との距離を縮めて、相手に勇平君の事を理解して貰うんだよ。
その方が、絆が深くなるし、滅多な事が起きない限りは、大人まで結びつく友情に繋がるはずだよ。』

『自分から努力して、お友達を?』

『うん。大丈夫、勇平君ならきっとできる!勇気を出して、自分からお友達を作ろうよ。
私も…出来る限りの範囲で協力するから。ねっ?』

『うん…』

ーー回想終了ーー


「…って言われた。」

「そんで?作れたのか?」

「ううん。当時のいじめっ子達に邪魔されてて作れなかった。その時のいじめっ子達の言葉で、
お友達を作るのが怖くなっちゃって…それで、『トラウマ』ってやつになっちゃって…」

「そうなのか…(未来の大平からこいつの面倒を見るのはみらい以上に大変だとは聞いていたが、
まさかここまでとはな。みらいが勇平の事を放っておけねぇ気持ちも解らなくもねぇな。
こりゃー責任重大だぜ…とりあえず今は、出来る限りの事をするしかねぇな。)」
大介は改めて勇平の事を、責任を持って預かる事を決心したのであった。

「さてと、そんじゃ飯が出来るまで遊ぶか?大平!勇平!」

「うん!」

「ほら、勇平もこっち来い!俺の部屋でゲームでもして遊ぼうぜ。」

「あっ…う、うん!」勇平も大介の方へと向かっていった。


一方、水木家の方に戻って、なつみ達はというと……

カタカタカタカタッ……っとパソコンのキーボードを打つ音が聞こえていた。

そう、みらいがパソコンをしているのだ。

「ねぇ、みらいちゃん」

「何?なつみお姉ちゃん」
パソコンのキーボードを打ちながらなつみの呼びかけに応じるみらい

「さっきからパソコンで何をしているの?」

「秘密。」

「…みらいちゃん、見てる限り、凄く難しそうな事をしているような気がするんだけど……」
みらいのノートパソコンの画面を覗き込みながら言うなつみ

「そう?別にそんな事ないと思うけど。」

なつみには難しく感じるようだが、みらいにはあまり難しく感じられないようだった。

(みらいちゃんのパパの影響かしら…確か『技師』だって言ってたし…機械系に強いのかも。)

「……出来た。未来、このデータを上書き保存。」

『上書き保存だね?了解っ!』

データの上書き保存中………上書き保存完了

『上書き保存完了したよ!』

「ありがとう。じゃあ次はすでに保存されているファイルを呼び出すから、保存ファイルボックスを開いてくれる?」

『了解っ!』

保存ファイルボックス呼び出し中……呼び出し完了。

『保存ファイルボックスを呼び出したよ。どのデータのファイルを引き出す?』

「えっと……『オルゴール2』って書いてある保存ファイルを。」

『保存ファイル「オルゴール2」だね?了解っ!』

保存ファイル「オルゴール2」読み込み……読み込み完了。

「読み込み完了したよ!」

「ありがとう。」

「みらいちゃん、『オルゴール2』って…もしかして昼間勇平君と話していたオルゴールの?」
みらいと未来の話から、今からやろうとしているのは、昼間言っていたオルゴールの事だと解ったなつみ

「うん、そうだよ。」

「…ほんとに作れるんだね…」

「まぁ…ね。いろんな人からたくさんの事を教えてもらってるから。」

「機械の技術と医学以外にも何か教わってるの?」

「…うん、教わってるよ。」

「どんな事を教わってるの?」

「どんな事って言われても…いろいろあるんだけど。例えば、法律に関する知識とか地球環境についての事とかね。」

「へぇ〜…なんかそんなにたくさん教わってたら、頭痛くなっちゃいそう。」

「そうかな?私はそうでもないんだけど…」

「…みらいちゃん、頭良いんだね。」

「…まぁ確かに、普通頭痛くなっちゃうよね。でも私の場合、いろんな事を知りたいから、頭が痛くなるより、いろんな事を
知ることができる事への楽しみがあって…だから知りたい事があると、次から次へとワクワクしちゃって。」

「へぇ〜、そうなんだ。やっぱりみらいちゃん、今でも好奇心を持ってるんだね。」

「え?」
みらいはそこで一旦パソコンの画面から目を離し、なつみの方を向く。

「みらいちゃん、赤ちゃんの時はすっごく好奇心が旺盛で、珍しい物をみたりするとすぐにそっちの方へいっちゃってたんだもん。」

「…そういえばそんな事言っていたような…確か私がまだ赤ちゃんだった時、
面倒を見るのがすっごく大変だったって言ってたっけ?誰かさんが。」

「誰かさんって?」

「誰だと思う?あっ、先に言っておくけど、パパやママは違うよ。」

「へっ?そうなの?」

「うん。私の面倒を見ていたのは、パパやママだけじゃなくて、大平さん以外にも居たんだよ。」

「そうなの?」

「うん。あっ、でもまだこの時代の時は居ないから、解らないかもね。」

「え〜!?ヒントなしで当てるって事?」

「そう。」

「みらいちゃ〜ん」

「そんな顔してもダーメ。絶対に教えない。」

「あ〜ん、みらいちゃんのいじわる〜」
意地悪なみらいに涙目になってしまうなつみ

「意地悪で結構。」
みらいはまたパソコンの画面の方へと目を向け、作業を再開していた。

なつみ達は話をしながら、なつみの父・浩三郎と母・るり子の帰りを待っていた。


時間が経って、浩三郎とるり子が帰ってきた。

るり子は帰ってくるとすぐに夕食の準備を始め、
浩三郎は居間に居るなつみ達の所で
なつみから今日の出来事を聞いていた。

「へぇ、みらいちゃんのいとこもこっちに来ているのかい?」

「うん、そうなの。それも未来の『山口太郎左衛門商店』の跡取り息子なんだって。」

「そうなのか、凄いな。」

晩御飯が出来るのを待ちながら、2人は山口勇平の事について話していた。

みらいはというと、今もパソコンで何かをしていた。

その後、晩御飯が出来たので、みらいは開いていたファイルデータを上書き保存し、パソコンの電源を切った。

なつみはいづみを呼びに行き、浩三郎は夢を抱いて、そしてみらいの3人は先にリビングへ移動した。

なつみといづみが降りてきて、全員が揃うと…

『いただきます。』

「あっ、そうだ。ママ」

「なあに?なつみ」

「あのさ、ママって明後日の日曜日、どこかへ行く予定ある?」

「明後日?」

「うん。実は明後日の日曜日に元4年2組の同窓会があるらしいんだ。だからそれに行きたいんだけど…」
なつみは同窓会のがある事を伝える

「あら…困ったわね。明後日はちょっと出かけなくちゃいけないのよ。あなた、明後日のご都合はどうですか?」

「すまない、私も、会社に出勤しなければならないんだ。」

「いづみは?」

「あははは…ごめん、私も明後日はちょっと…明日から明後日にかけて、サイン会があるんだ。」

「まぁ…困ったわね。」

どうやら明後日の日曜日はなつみだけではなく、るり子、浩三郎、いづみの3人もそれぞれ予定が入っているようだ。

「どうしよっか?夢はそのまま連れて行っても大丈夫だけど…」
みらいの方へ視線を移すなつみ

るり子達もなつみの視線を追って、みらいの方に視線を移した。

当のみらいは何事もないかのように、ただ普通に御飯を食べていた。

「ぱくっ…っ…っ…ごっくん。ご心配なく。」

「えっ?」

「ぱくっ…っ…っ…ごっくん。明後日は朝から江地さんの所へ行きますから。」

みらいは食べる手を止めず、けれどしっかりと口の中の物を飲み込んでからなつみ達に日曜日の予定を伝えていた。

「江地さんのところへ?」

「そう。だから夕方まで江地さんの所に居ます。夕方までなんでしょ?」

「え、ええ。私は夕方には帰って来る予定よ。」

「私もたぶんそう。」

「私は…月曜日の朝に帰ってくるから、明後日は帰ってこれない。」

「私は夜に家に帰る。残業になる可能性もあるが……」

るり子となつみは夕方頃、浩三郎は夜、いづみは月曜日の朝…っとバラバラだった。

「んじゃそれで良いじゃないですか。それ以外に方法はないでしょう。」

「じゃあ…悪いけれど…なつみ、夢の事をお願いね?」

「うん、解ったよ、ママ。」

「ごちそう様でした。」
手を合わせてみらいが言う。

「あら。もう食べちゃったの?」

「はい、皆さんがお話をしている間に。」

居間へと戻っていき、再びパソコンを起動させ、先ほどのファイルを呼び寄せて作業を再開していた。

なつみ達はというと……

「…みらいちゃん、凄くしっかりしているわね。」

「ほんと、やっぱあんたの子だってのが信じがたいくらいだわ。」

「ちょっとおばさん、それどーゆー意味?」

「言ったまんまよ。」


時間が経ち、順番にお風呂に入っていく。
今日はみらいは1人でお風呂に入っていた。
そして、寝る時間になり、皆、寝静まった。



タマエやえり子は水木家を後にした帰り道の時にみらいの事について話をした後に、
勇平とみらいが無事に未来へ帰れるように祈り、そして二人の力になってあげる事を決心し、
そして大介も、改めて勇平の事を、責任を持って預かる決心をしていたのであった。
なつみとみらいはというと、なつみがみらいが何をやっているのかが解らない様子。
なつみは、みらいがこんなに機械に強いのは、技師である父親譲りなのかな?っと思っていた。
その後少しだけみらいとお話をして、なつみはやっぱりみらいちゃんは今でも
好奇心があるんだって事を知ると、嬉しくなるのであった。
なつみの父・浩三郎とるり子が、家に帰ってきて、時間が過ぎて、晩御飯の時になつみが明後日の日曜日の予定の事を聞いた。
すると、タイミング悪く、浩三郎とるり子といづみの三人とも予定が入っていた。
夢の事はともかく、みらいの事はどうしようかと思っていると、みらいは明後日は朝から江地さんの所へ行くと言った。
他にどうする事も出来ないので、そうする事にした水木家一同であった。
明後日は4年2組の同窓会……なつみは明後日を凄く楽しみにしているのであった。
またここで一つ、勇平の謎が増えた。
そして、その謎はこの先、明らかになるのであろうか!?


第16話へ進む。


今回のお話は、大介、なつみ、タマエ、えり子の4人がそれぞれ勇平やみらいの事をどう思っているかというお話です。
このお話の中で、勇平とみらいの過去が少しだけ語られています。
それでは第16話へお進み下さい。

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