勇平とみらいの関係

西暦1995年の過去の世界の方へ戻して……

みらいが通信している父親と二人っきりになりたいと言って移動した後の大介達はというと……

(なんで…なんであいつの親父が…俺の過去の事を知ってんだよ…)
みらいの父親が自分の過去を知っていた事に動揺を隠しきれない大介

「しっかし驚いたわ〜、さっきの声がみらいちゃんのお父さんだったなんてね〜。」

「ほんと。2年前は未来のなつみちゃんの声しか聞いた事がなかったから。」

今回初めてみらいの父親の声を聞いたタマエとえり子

「あたしとなつみは2年前に一度だけ聞いた事があるけどね。」

「そうなんですか!?」いづみの言葉に驚くタマエ

「ああ、みらいが来たばかりの最初の通信の時になつみの未来の旦那の声が聞こえたよ。なっ?なつみ」

「えっ…あっ、うん、そう。」

「ねぇ、今思ったんだけどさ、みらいちゃんのお父さんって…もしかしてマリオ君か大介なんじゃない?」

『えっ!?』タマエの言葉に一同は声を揃えた。

「だってさ、みらいちゃんと勇平君、いとこ同士なんでしょ?そして勇平君のお父さんは大平ちゃんで、
お母さんはマリオ君の妹のジュリエッタだって言ってたでしょ?」

「う、うん。確かにそう言っていたわ。」

「という事は勇平君にとってマリオ君と大介は叔父さんにあたるわけじゃん?」

「う、うん。そうだね。」

「それじゃあみらいちゃんにとってマリオ君と大介の関係はって聞かれたらどう思う?」

「確かに言われてみればそうね。」

「そういえばそうね。勇平君とみらいちゃんっていとこ同士なんだから、
当然みらいちゃんから見た大平ちゃんって叔父さんにあたるんだよね。」

「そうよ。だからジュリエッタもみらいちゃんにとっては叔母さんにあたるのよ。という事は残るはマリオ君と大介だけよね。」

「確かに…ってことはだ、みらいの旦那はマリオ君か大介しかありえないという事だな。」

タマエの一言がきっかけでみらいの父親についてあれこれと話していた。

「なっ!?な、なんてそうなんだよ!?俺やマリオ以外だってありえるじゃねぇかよ!」
自分が父親かもしれないという可能性を否定する大介

「だってさ〜、マリオ君の子供か大介の子供でなきゃみらいちゃんが勇平君といとこ同士になるはずがないじゃん。」

「うっ…」

「そう言われればそうね。じゃあマリオ君と山口君…いったいどっちがみらいちゃんのお父さんなのかしら?」

「けっ、勝手に想像してろっ!けどな、俺がなつみと結婚だなんてぜってーにありえねぇ話だよっ!!」

「ちょっと大介、それどういう意味よっ!?」
大介の言葉にカチンときたなつみ

「どーもこーもねぇよ、俺がなつみの亭主になるなんて一生ゴメンだぜ。」

「なによっ!あたしだって大介が亭主だなんてゴメンよっ!」

「ああ、ゴメンで結構だっ!」

「ちょっと大介!なつみ!落ち着いてよっ!」

「あらあら、なつみと大介君、仲が良いのか悪いのかよく解らないわね。」

「るり子姉ちゃんもそう思う?」

「ええ。」

「な、なつみちゃん、山口君。とりあえず落ち着いてっ!」

えり子とタマエが口喧嘩し始めた大介となつみを止めに掛かっていた。

みらいはしばらくの間ブローチを握ってじっとしていたが、そろそろ戻ろうと思い、居間へと戻り始めた。
その時、居間の方から妙に騒がしい声が聞こえてきた。

(あれ?なんか妙に居間の方が騒がしいような…)
そう思いながらも、みらいは居間へと向かっていた。


「誰がお前なんかと結婚なんかするかっ!ぜってーにありえねぇ話だぜっ!」

「なによっ!あたしだって頼まれたって大介なんかと結婚なんかしないわよっ!」

騒がしい声の元は、大介となつみの口喧嘩だった。

(…また喧嘩…はぁ…パパとママ、全然素直じゃないよね…特にパパは意地を張り過ぎ…さっきの通信が原因の元かもね。)
口喧嘩の原因は先程の通信のせいだろうと思ったみらいであった。

自分の両親がこうして目の前で喧嘩をしているというのにとても落ち着いていた。

「大介、なつみ、二人とも落ち着きなよ〜。」

「いづみおばさん、なつみちゃんと山口君を止めて下さい!」

「よし、解ったっ!」
えり子の助けに応じ、いづみが大介となつみを止めようと二人の元へ向かっていたが…
「喧嘩ストップ!!」
突然大きな声が聞こえてきた。

その言葉が聞こえ、大介となつみは黙り、他のみんなも唖然としていた。

その大きな声を発したのはみらいであった。

「あっ、みらいちゃん」

「みらいちゃん、お父さんとの通信は終わったの?」

えり子とタマエがみらいに気づく。

「はい、終わりました。」

「…な、長かったな。」

「まあね。それより喧嘩するなら別の場所でしてくれない?」
声を掛けてきた大介に対してそう言い放つみらい

「…あんた、どーしてそうなんの。」

「だって騒がしかったら勇平が起きちゃうでしょ?」
いづみの質問に答える。

「あっ…そういえば勇平君って今寝てるんだったわね。」
その事を失念していたとばかりに呟くタマエ

「そういうこと。でも…なんで喧嘩してたの?」
喧嘩の原因はなんとなく察してはいたが、敢えて知らない振りをして聞く。

「な、なんでって…」

「ねぇ、みらい」

「ん?何ですか?いづみさん」

「あんたの父親って誰?」

『えっ…』

「ちょっと…」

「なつみは黙ってて。んで?誰?」
抗議しようとしていたなつみを黙らせたいづみ

「パパが誰かって?」

「そう。」

「う〜ん…教えない。」

その言葉にいづみはがくっと肩を落とす。

「なんでよ?」

「教えるわけないでしょ、そんな事。」

「そんな事ってあんた…」

「まあいずれ知る事になるんですから別に良いじゃないですか。」

「良くない、あたしはすぐに知りたいね。」

「ダ〜メ、秘密です。」
知りたがっているいづみに対して極秘を貫くみらい

「うぅ…気になる。」

「お、おばさん、そのぐらいにしときなよ。」
がっかりしているいづみに声をかけるなつみ

「なつみ、あんただって気になってるんでしょ?未来の旦那様。」

「そりゃあ少しは…でも無理に聞かなくても…」

「そうよ、いづみ。」

「るり子姉ちゃんまで…」

「まあそういう事だからその話はおしまい。」

(…なつみの亭主、一体誰なんだろうな…けっ、俺には関係ねー事だな。)
関係ないと思いつつも、なつみの旦那が誰なのか気になる大介

(ママ達には悪いけど、パパの事はやっぱり今は秘密にしておこっと、どうせすぐにバレるし。
『Zポイント』を使った通信でね。その後はどうやって場を治めようかな〜?)
どうせすぐにバレるだろうと見当付け、どうやって場を治めようかと呑気に考えるみらいであった。

その時、勇平が起きた。

「ふわぁ〜…良く寝た…」

みらいは勇平が起きた事に気づき…

「おはよう、勇平君」

「うん、おはよう。みらいちゃん」

(あれ?今気づいたけど、なんでみらいちゃん、勇平君と話す時だけは君付けで話すんだろう?)
タマエはみらいが勇平と話をする時だけ君付けで呼んでいる事に気付く。

「良く眠れたみたいだね?」

「うんっ!」

「勇平君、大平さんからのメッセージ…聞く?」

「えっ!?パパからのメッセージ!?」

「うん、そう。さっきね、大平さんと通信が出来たんだ。それでその時勇平君は寝てたから、
大平さんのメッセージを録音しておいたんだよ。」

「そうなんだ。」

「それで…聞く?」

「う、うん。聞くっ!」

「解った。未来、録音再生をお願い。」

『了解っ!すでにこうなるだろうなと思って準備をしておいたからすぐに録音を再生するよ!!』

ノートパソコンの画面上に録音再生として大平の顔が映り、声が流れ始めた。


――録音再生開始――

『勇平、パパがわかるか?今、勇平は過去の世界にいるから、直接会う事は出来ない。でも、パパはいつでもお前の事を見守ってる。
みらいの話によれば、江地さんが今、タイムマシンに改良・修理…つまり、パパ達が居る元の世界に戻るための準備をしてくれているそうだ。
心細いだろうが、みらいとしばらくの間頑張ってくれ。みらいの言う事をちゃんと聞くんだぞ?勇平』

――録音再生終了――


「以上が大平さんから勇平君へのメッセージだよ。」

「パパ…」

「勇平君、また通信が来るから、そう落ち込まないの。」

「みらいちゃん…」

「ねっ?」

「・・・うんっ!僕、頑張るっ!」

「うん、その意気だよ。」

みらいの言葉を聞いて元気を取り戻す勇平

「あっ…でもみらいちゃんは…」

「ん?何?」

「えっと…その…」

「私もさっきパパから通信があってお話したから大丈夫だよ。」
勇平の言いたい事を察するみらい

「そうなの?」

「うん。大平さんとは違う通信でだけどね。」

「パパとは違う通信?」

「そう。大平さんが使ったのは『Zポイント』を使った通信だけど、
うちのパパは、私が今身につけているブローチに通信してきたんだ。」
説明しながら、自身が身に着けているブローチを指す。

「えっ?みらいちゃんのブローチに?」

「そう。パパが使っているのはたぶんコンパクトを使ってこっちへ通信しているんだと思う。
私が今身につけているブローチとコンパクトの間で通信が出来るようになっているみたい。」

「へぇ〜…そうだったんだ。やっぱりみらいちゃんのパパって凄いねっ!いつもパパから叔父さんの話を聞いてたから
凄い人なんだっていうのは解っていたけど、実際に役立っている所を知るとやっぱり凄いよっ!!」

「あはははっ…それ、うちのパパが聞いたら喜ぶよ。それにしても大平さん、そんなにうちのパパのお話してたの?」

「うん!いっぱいしてくれたよっ!みらいちゃんがいつも身につけているブローチは叔父さんが個人で開発した物なんだって言ってた。」

「そっか。」

「えっ?みらいちゃんが身につけているブローチってみらいちゃんのパパが作った発明品なの?」
みらいのブローチを作った人に驚くタマエ

「う、うん、そうだよ!みらいちゃんがまだ赤ちゃんの時に作った物なんだってうちのパパが言ってた!」

「そ、そうなんだ。」

「それだけじゃないよ!パパが言ってたんだけど、叔父さんが個人で開発する物は
どれも家庭に役立つ物ばかりで、家族のためだけに作っている発明品なんだってっ!」
勇平は興奮しながら説明する。

「ゆ、勇平君、凄く尊敬しているみたいだね?うちのパパの事。」

「??…『そんけい』って何?」

「えっと、『そんけい』っていうのはね、勇平君から見て、その人を心から
立派な人だな〜って思える人の事を『尊敬』っていうんだよ。」

「へぇ〜…そうなんだ。じゃあ僕、みらいちゃんのパパの事を『そんけい』しているんだね!」

「まぁ…そうなるのかな。」

「ねぇ、みらいちゃんは「そんけい」している人って居る?」

「えっ?私?」

「うん。」

「尊敬している人…っか。うん、居るよ。尊敬している人。」
みらいは呟きながら頭の中である人の顔が思い浮かんだ。

「ほんと?誰!?」

「教えない、秘密だよ。」

「え〜!?みらいちゃんのいじわる〜!」

「意地悪で結構。」

「む〜」
両頬を膨らませ不満そうにする勇平

「怒らない、怒らない。」

「だって〜」

「だってじゃないの。あっそうだ、勇平君」

「何?」

「勇平君がこれからしばらくの間泊まる所だけど、『山口太郎左衛門商店』で預かって貰う事にしたから。」

「えっ…」

「時代は違うけど…住み慣れた家の方が良いでしょ?」

「う、うん…でも…」

「大平さんとの約束…守れるよね?」

「う、うん…」

「大丈夫、勇平君なら頑張れるはずだよ。」

「うん。」

「それに…独りじゃないから。」

「うん。」

「この時代では勇平君より年下だけど、大平さんも居るから。」

「えっ?」

「大平さん、この時代ではまだ幼稚園児なんだよ。」

「そ、そうなんだ。」

「まあそういう事だから、ある意味自分の父親は傍に居るって事。」

「うん、解った。僕、頑張るっ!パパとの約束守る。」

「うん、勇平君ならやれるよ。」

「うんっ!ありがとう!!みらいちゃん」
みらいの励ましで不安な気持ちが薄れていく。

「どういたしまして。」

「あっ、そういえばみらいちゃんはどこに泊まるの?」

「ん?私?」

「うん。」

「ここ。」

「えっ?ここ?」

「うん。今ここに泊まらせてもらってるんだ。」

「そう
「安心した?」

「うん、安心した。」

「じゃあそういう事だから勇平の事、よろしくお願いします。」
勇平から大介へ視線を移してそう言ったみらい

「あ、ああ。任せとけ。」

「はい、頼りにしてます。」

「あっ」
勇平が何かを思い出したかのように声を上げる。

「どうしたの?」

「ねぇ、みらいちゃん」

「何?」

「僕達、タイムマシンで未来の世界に帰るんだよね?」

「うん。そうだけど…どうかした?」

「爆発…しないかな?」

みらいはその言葉にドテッとつっこけた。

「み、みらいちゃん」

「あ、あんた、妙なところでまともな事言うね。」

「そ、そうかな?」

「そうよ。そんな事は心配しなくても大丈夫だよ。爆発なんか起きやしないわよ。」

「そうかな?」

「そうなの。余計な心配はしなくていいから、勇平君は自分の心配を一番にしなさい。」

「は〜い。」

「良い?自分の事は自分で解ってるだろうけど、勇平君はその辺の普通に健康な子と
体の丈夫さが違うから、当然体力にも限度がある…その辺を注意しておいてね?」

「うん。」

「それと2つ目、これは日常的になっているはずだから大丈夫だろうけど、あまり夜遅くまで起きていないで、早めに寝る事。
次の日、体に影響が出てしまう可能性が高いから。」

「うん。」

「この2つの事には充分に気をつけてね。」

「うん、解った!気をつけるよ。みらいちゃん」

みらいは勇平に2つの大事な事をゆっくりと、けれどしっかりと伝え、
勇平は言われた事に対して素直に聞き入れていた。

「…なぁ、みらい」

「何?」

「俺も…その2つの事、覚えておいた方が良いか?」

「う〜ん…一応そうしておいた方が良いかも。」

「解った、覚えておく。」

「ありがとう。」

「…ねぇ、みらいちゃん」

「ん?」

「オルゴール…今持ってる?」

「えっ?オルゴール?」

「うん。」

「一応持ってるけど…もしかして貸して欲しいの?」

「う、うん。」

「ごめん、悪いけど…今持ってるオルゴールは新しく作っているやつで、
今はまだ音が出るようにはなっていないんだ。」
申し訳なさそうな顔をするみらい

「えっ…そうなの?いつものオルゴールは?」

「未来の世界の自分の部屋にある。」

「そう…なんだ。」落ち込む勇平

「でも、2日くらい待ってくれれば、今持っているオルゴールが聴けるようになるよ。それまで我慢出来る?」

「わぁっ…うんっ、我慢するっ!ありがとう、みらいちゃん!」
みらいから2日待てば聴けるようになると聞き、嬉しそうにする。

「ちょ、ちょっと待って!」

「何?タマエお姉ちゃん」
タマエの呼びかけに応じるみらい

「オ、オルゴールを新しく作ってるってどういう事よ!?」

「もしかしてみらいちゃん、オルゴールを自分で作れるの?」

「うん、作れるよ。」
なつみの問いかけに即答する。

「なんであんたがそんなもん作れんのよ!?」

「なんでって言われても…」
タマエのその質問に答える事を渋る。

「みらいちゃんのパパが技師だからだよ。」

「えっ?みらいちゃんのパパって技師なの?」

「うん、そうだよ。きっと叔父さんに作り方を教わったからオルゴールが作れるんだよ。そうだよね?みらいちゃん」

「えっ、あっ、うん、そう。」

「でもそれにしたって出来過ぎない?」

「そうかな?」いづみの言葉に首を傾げる勇平

「あんたはずっとみらいと一緒にいるから、当たり前のように感じるんだろうけど、あたし達から見たら不思議な事よ。」

「そんな事はないと思うけど…」

「…まぁ思う、思わないは勝手に決めて。そこはちょっと否定出来ないから。」
いづみの言ってる事を否定しないみらい

「ほら、みらいだってそう言ってんじゃん。」

「でも…みらいちゃんはみらいちゃんなんでしょ!?他の誰でもない、みらいちゃん自身なんでしょ!?
だったら僕は別に何とも思わないよ!!」
勇平は涙をボロボロと流し始めた。

「ちょっと勇平君、何も泣かなくても…」
突然泣き出し勇平に少し驚くみらい

「勇平君…」

「勇平…」

「みらいちゃんは…みらいちゃんは…世界中どこを探したってたった1人しかいない・…たった1人の人間だもん!
人はそれぞれ違った才能が眠っている…人にはそれぞれ無限の可能性が秘められている…そうパパから聞いた。
だから別になんとも思わないよ!だって、みらいちゃんはみらいちゃんだもん!!」

「勇平君、解ったから…ちょっと落ち着こう?」
涙を流しながら興奮している勇平を宥めにかかったみらい

「でもっ!」

「でもじゃないっ!」

「みらいちゃん…」

「良いんだよ、人それぞれ思う事は違うんだからだから勇平君、落ち着こう?」

「うん。ごめんなさい」

「なんで謝るの?」

「だって…」

「だってじゃない、今のは…謝らなくて良い事なんだよ。勇平君」

「なぁ、今思ったんだけどよ、おまえ、なんで勇平と話す時だけ『君』付けなんだ?」
大介が突然、ずっと疑問に思っていた事をぶつけてきた。

「えっ…」

「そうよ、それ!あたし、さっきからずっと気になってたのよ!」
大介の言葉を聞いてタマエは思い出し、自分も疑問に思っていたと言う。

「?…みらいちゃんはいつも僕の名前を言う時は『君』付けだよ?」
何を言ってるの?とでもいうような表情をする勇平

「何言ってんだよ。おまえと話す時以外は…むぐっ」

突然みらいは大介が言葉を言っている途中で大介に飛びつき、そのまま口を両手で塞いだ。

「みらいちゃん?」

「あっ、ゆ、勇平君は何も気にしなくていいから。」
少し焦りながらも勇平に応える。

「?うん、解った。ねぇ、おトイレどこ?」
不思議に思いながらも、深く追及しなかった勇平

「トイレは未来の世界の方と同じだよ。」

「そっか、解った。じゃあ行って来る!」
勇平はソファーから降りてトイレに行った。

「むぐっ…みりゃい、はりゃくはにゃせっ、ぐるじいっ!」(むぐっ…みらい、早く離せっ、苦しいっ!)

「あっ、ごめん。」
まだ口を塞いでしまったままだった事を思い出し、
謝りながら大介の口を塞いでいた両手を離し、大介から降りた。

「はぁっ…はぁっ…みらいっ!おまえ、いきなり何すんだよ!!」
いきなり口を塞いできたみらいに怒る大介

「ごめん、ごめん。でもさっきの質問は勇平に聞かれちゃ困るから。」
再度謝りながら、口を塞いだ理由を話す。

「なんでだよ?」

「勇平の頭の中が混乱状態を起こしちゃう。」

「??…だーっ!解りやすく説明しろっ!!」
少しの間考えてみたが、いい答えが見つからず、逆キレする大介

「解りやすくって言われても…つまりね、今勇平が精神年齢が低い事は話したよね?」

「ああ。」

「それで、今の勇平の精神年齢はだいたい2歳あたりから3歳あたりだということは話したよね?」

「ああ、確かにそう言ってたな。」

「それで私、その時は勇平の事、『勇平君』って呼んでたんだよ。だから今の勇平に対して、
呼び捨てにする事は混乱状態を起こしかねないってわけ。」

「なるほどな…」
みいらの説明に納得する大介

「ねぇ、みらいちゃん」

「何?」

「今の話でだいたい解ったけど…そんなに精神状態が複雑な勇平君を山口君の所へ預けても大丈夫なの?」
勇平の心配をするえり子

「大丈夫、その心配は要らないよ。」

「そう、良かった。」

「確かにえり子お姉ちゃんの言う通り、今の勇平を本当に大介お兄ちゃんの所に預けて大丈夫なのかってのには少し不安はある。
ここは勇平にとって、知っている場所であり、知らない場所…見慣れない土地とも言っても良い。
そんな所に見慣れない人達と一緒にやっていけるのかって事。」

「確かに言えてるな。」みらいの言うことに同感する大介

「勇平の傍には確かに過去の大平さんが居るけど…この時代の大平さんは私達より年下、だから構って貰えない。」

「確かに…」

「大平ちゃんはまだ幼稚園児だものね。」

「今の勇平は誰かが傍で構っていてあげていないと、必ず精神…心が不安定になっちゃう。
だから、全く大丈夫というわけじゃないんだ。」

「だったら…なんでお前の傍に置いとかないんだよ?」
大介はみらいの傍に居るのが一番良いのではないか?っと言う。

「それは…」

「それは?」

「一言でいうなら勇平へ与えられた試練…かな?」

「試練?」

「そう。私を頼らないで、どこまでやれるかって事。誰でもいつかは自立しなきゃいけない時が必ず来る。」

「でも勇平君、まだ小学一年生に上がったばかりだよ?」

「うん、それは解ってる。でも、勇平は…今精神が強くならないと、あとで取り返しのつかない状況になっちゃう。」

「どういう事なの?みらいちゃん」

「勇平は山口家の跡取り息子。だから大人になったら山口家の跡を継ぐ…でも人とのコミュニケーション力、リーダーシップ、
団結力、行動力、判断力など、今のうちに少しずつ身につけていかないとダメなんだ。」

「でも山口君は特にってほど厳しくもされていないけれど…」

「それはそうだよ。でも勇平は精神障害を持った事で、周りの子より人とのコミュニケーション力や
団結力や行動力や判断力を身につけるのが確実に遅れている。
さらに今も精神年齢が幼いせいもあるけど、このまま甘やかしっぱなしになっていたら
いつまで経っても自分から行動を起こそうとしないと思う。だから…」
勇平の将来を案じて、試練を与える事にしたと話すみらい

「敢えて今厳しくするしかないってことか。」呟く大介

「そう。私以外の人も頼れるように、人を信じる事が出来るように…」

「なんであんたがそこまでするのよ?」

「さぁ…なんでだろ?別に深い意味はないよ。強いて言うなら、従姉弟として放っておけない…かな?」
いづみの問いかけに少し考え込みながらも、思った事をそのまま言った。

「いとこを超えてるわよ!」

「超えてない」

「超えてる」

「超えてない」

「超えてる」

「超えてないったら超えてない」

「いいや、超えてるったら超えてるわよっ!」

「ちょっとおばさん…それにみらいちゃんも…」オロオロするなつみ

「なつみ、あんたは黙ってて。あたしはど〜も納得出来ないのよね。」

「何を?」

「みらいが妙に勇平君を気遣ったりする所。」

「…もしかしていづみさん、私と勇平の事、少女漫画のネタにしようとしてます?」
いづみの狙いに気付くみらい

「(ギクッ)…あんた、なかなか鋭いわね。」

「まあ…一応。でも悪いけど、私と勇平はいとこ関係なだけで、それ以外は全くないから。」
少女漫画のネタを狙っていたいづみに対して、綺麗にバッサリと言い放ったみらいであった。

「そ、そうなのか…それにしても…ますます混乱するわね。」

「あたしも〜」

「私もちょっと…」

いづみに続くようにタマエとえり子も未だに混乱していると言う。

「タマエ…えり子ちゃん…」

ちょうどその時、勇平がトイレから出てきて居間へ戻り始めていた。

「そう、それが普通…普通はこんな出来事…人は信じない。」

(えっ…)
居間へ戻り始めていた勇平の耳にみらいの声が聞こえてきた。

「未来の世界から来たとか、自分の未来の子供、孫だとか、どれも普通、人は信じない。
世の中、信じる事が出来る人と出来ない人といるからね。」とみらいが言った。
みらいのその言葉を聞き、沈黙した。



タマエ達がみらいの父親はマリオか大介じゃないか?っと言うが、大介はそれを否定した。
みらいの父親の事で、なつみと大介がまたいつもの喧嘩を起こした。
いづみがみらいにみらいの父親が誰なのかを質問したところ、当のみらいは答えなかった。
みらいは答えなかった事に対し、どうせすぐにバレるという事を確信しているようであった。
さらにやはりここで疑問に思ってしまうのは、勇平とみらいの関係である。
みらいは従姉弟として放っておけないというが、本当にそれだけなのだろうか?
他にも何か隠された理由があるのだろうか?
そして…みらいが突然不思議な事を呟いた。
これはいったい!?


第14話へ進む。


今回は、大介がタマエが言っていた事を否定したり、みらいが父親の存在を隠していたり、
大介となつみがなつみの未来の亭主の事でいつもの喧嘩を起こしたりと。
大介ってはっきり言って素直じゃありませんからね、ここは意地を張るでしょう。
なんかタマエが鋭過ぎ?っと思う方も居るかもしれませんが、その辺は気にしないで下さい。
次にみらいが父親の存在を隠していた事ですが、まあ賢いみらいがあってこその判断という事で。
次に大介となつみがなつみの未来の亭主の事でいつもの喧嘩を起こした事ですが、この二人なら大介がいつものように
意地を張って、大介のある一言で喧嘩が始まってしまいそうだな〜っと思いまして。
それでは第14話へお進み下さい。。

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