通信手段『Zポイント』

西暦2013年の未来の世界の方では……

水木家の2階の大介の仕事部屋で、大介が西暦1995年の過去の世界に居るみらいと交信していた。

『うん。パパ、一つだけ約束して?』

「なんだ?」

『みらいがそっちへ帰って来れるまでの間、ママをちゃんと支えてあげて。みらいがいない今、ママに必要なのはパパだから。』

「ああ…解った、約束するよ。」

『うん、ありがとう。パパ』

そこで通信が切れた。

「大平の所へ…っか。さて、今日は仕方ねぇから俺が昼飯を作るか。」

大介は仕事部屋を出て下へ降りていった。。


それから少し時間が経ち、居間のソファーで寝ていたなつみが起き出した。

「う、う〜ん……あれ?私ったら眠っちゃったのね…」
なつみはそう言いながら、体を起こした。

そして台所の方から音が聞こえてきて、なつみが台所の方へ行くと…

「大介?」

台所で大介が料理を作っていた。

「ん?よっ、なつみ、起きたか。待ってろ、今昼飯作ってっから。」

「ええ…」

「…なつみ」

「何?大介」

「みらいと…通信が出来た。」

「えっ…それ……ほんとっ!?」

「ああ。今みらいはどうやら西暦1995年の過去の世界に居るみたいだ。」
料理をする手を止めずに、先ほどの通信の事を教える。

「西暦1995年の…過去に?」

「ああ。みらいは過去のお前の家で、今泊まらせてもらっているらしい。そして…勇平もみらいと同じように
西暦1995年の過去の世界へ飛ばされてしまっていたみたいなんだ。」

「勇平君も!?」

「ああ。勇平は俺んち…『山口太郎左衛門商店』で雷が落ちてきて出現したらしい。」

「それで…勇平君は『山口太郎左衛門商店』で預かってもらってるの?」

「ああ。正確にはこれから預かってもらう、だけどな。」

「そう…」

「みらいには影響がなかったみたいだが…勇平はタイムトラベル副作用を受けてしまったらしいんだ。」

「えっ…タイムトラベル副作用を?」

「ああ。それで勇平は今だけ現在の精神年齢である4歳より下の精神年齢になってしまっているらしいんだ。」

「勇平君…大丈夫かしら?」
大介から今の勇平の状態を聞いて心配するなつみ

「大丈夫さ、勇平にはみらいがついているんだからな。」

「そういえば…なんで通信が出来た時に起こしてくれなかったのよっ!?」
今気付いたように、料理中の大介へ詰め寄った。

「うわっ!?な、なつみ、そんなに怒るなよっ!?」

「怒るわよっ!」

「だってお前…昨日からずっと寝てなくて…疲れを取っていなかっただろ?だから…起こそうに起こせなかったんだ。」
なつみが怒るのも無理ないが、それよりもなつみの体の方が心配で起こそうに起こせなかったと申し訳なさそうに言う大介

「大介……ねぇ、みらいは…大丈夫だった?」
自分を心配して起こさなかったと聞いて怒りを鎮め、みらいの安否を尋ねる。

「ああ。あいつ、俺らが寝ていねぇ事を知ってやがった。」

「えっ?」

「あいつ、『普段からのパパ達の行動を見てれば解る。』って言ってたんだぜ?」

「みらいが?」

「ああ。こういう鋭い所はなつみじゃなくて、俺に似ちまったみたいだな。」

「うふふっ…それはそうよ。だってみらいは…私と大介の子供じゃない。みらいが大介に似てる所があって当たり前よ。」

「ま、まぁな。」照れる大介

「みらい、不安とか…抱いていなかった?」

「いや、全然。過去の俺達や過去のタマエ達が居るから全然寂しくないって言ってたんだ。」

「そう…みらいらしいわね。」

「そうだな。」

「それで、どうやってこっちへ戻すつもりなの?大介」

「それがさ、今江地さんがタイムマシンに改良・修理を行っているらしくてさ、
その作業が終われば、こっちへ帰って来れるって言ってたんだ。」

「江地さんが?」

「ああ。みらいは江地さんのタイムマシンの実験…タイムスリップが起きる時にちょうど近くにいたせいか、
一緒にタイムスリップに巻き込まれてしまったみたいなんだ。」

「ええっ!?じゃあ勇平君も?」

「いや、勇平は違うらしい。出現した時の時間はみらいとは違うみたいだし、
たぶんそれとは別のタイムスリップに巻き込まれてしまったんだろう。」

「別のタイムスリップに?」

「ああ。」

「それでな、みらいがさ、飯食ったら大平の所へ行って、話を聞けだとさ。」

「大平ちゃんの所に?」

「ああ。なんでかは知らねぇけど、とりあえず飯食ったら『山口太郎左衛門商店』へ行くか?」

「…ええ、そうしましょう。それから先の事は大平ちゃんの所で話し合いましょう。」

「ああ、そうだな。さっ、冷めないうちに飯を食おうぜ。」

「ええ。」

その後大介となつみは御飯を食べ始めた。

少し時間が経ち、昼御飯を食べ終えた大介となつみは
すぐに出かける支度をして出かけていった。

ーー山口太郎左衛門商店ーー

「あら、大介さん」

大介と大平の母の佐和子が大介となつみに気付いて声を掛けてきた。

「よう、おふくろ。」

「こんにちは、お義母さん」

「こんにちは、なつみさん」

「なぁ、大平居るか?」

「ええ、居ますよ。今は自分の仕事部屋に居るのではないかと…」

「そっか、サンキュ。行こうぜ、なつみ」

「え、ええ。それじゃ、お邪魔します。」

「あとでお茶を持っていきますね。」

それを聞いた後、大介となつみは家の中へ入り、大平が居ると思われる仕事部屋へと向かった。


ーー大平の仕事部屋前ーー

大平の仕事部屋前に着くと大介はドアを軽くノックした。

「はい、誰ですか?」

「俺だ。」

「兄さん?どうぞ、入ってください。」

大平から了承を得てからドアを開けた大介

「よっ、大平。今大丈夫なのか?」

「ええ、大丈夫です。」

「こんにちは。」

「こんにちは、義姉さん。ところで僕に何か御用ですか?兄さん」

「ああ。さっきみらいと通信が出来たんだ。」

「ホントですか?」

「ああ。それでよ、みらいが大平の所に話を聞きに行けって言ってたんだ。」

「えっ?みらいが?」

「ああ。」

(みらいが僕の所に行くように言ったという事は……そうか、そういう事ですか。)

みらいがここに来るように誘導した理由に心当たりがあるようだ。


「大平、お前…何か知ってるのか?」

「兄さん」

「なんだ?」

「兄さんが作ったブローチの事ですけど、あのブローチは電波状況がかなり良い時ではないと通信が繋がりにくいんでしたよね?」

「あ、ああ。」

「実は、兄さんが作ったブローチとコンパクトの間での通信手段以外にも、みらいと連絡が取れる方法が一つだけあるんです。」

大平は大介となつみに通信手段がもう一つある事を教える。

「えっ!?」

「兄さんと義姉さんがここへ来る前に僕はみらいと連絡が取れました。」

「なにぃっ!?どういう事だよ!?大平!」

「大平ちゃん、それ…本当なの?」

「はい、本当です。勇平もどうやらみらいと同じく、西暦1995年の過去の世界へ飛ばされてしまっていたみたいですね。」

「…大平、お前が使った通信手段って何なんだよ?」

大平が過去に居るみらいと連絡を取れた事に驚くも、すぐに冷静になって自分が知らない通信手段の事を尋ねる大介

「『Zポイント』です。」

「『Zポイント』?なんだよ、それ。」

「『Zポイント』は僕のパソコンの中にあります。『Zポイント』は時間を越えた時の通信手段として現在開発中で
作られている通信手段らしいんです。今はまだ、未完成なのですが、ほぼ完成に近い状態にあるみたいです。」

「…それ、大平ちゃんが開発しているの?」

「いいえ、僕ではありません。」

「じゃあ一体誰が開発してんだよ?その…『Zポイント』ってやつは。」

「それは…みらいです。」
大平は意を決して開発者の名を告げた。

「「えっ!?」」

「大平、お前…今、何つった?」

「『Zポイント』は…みらいが開発しているんです。」

「なっ!?」

「えっ!?みらいが!?」

「じょ、冗談だろ?」

「いえ、冗談なんかじゃありません、本当です。」

「なんでみらいがそんなもん作れるんだよ!?」

「そうよ、大平ちゃん。みらいはまだ小学校に上がったばかりなのよ!?」

みらいが「Zポイント」を開発しているという事が信じられず困惑する大介となつみ

「それについては…お二人に話さなくてはならない事があるんです。」

「話さなければ…ならない事?」

「はい。」

「……話せ。」
少し間を置いてから大平に話すように言う大介

「はい。今までみらいに頼まれて、お二人にはずっと隠していた秘密があるんです。」

「俺達に…隠していた秘密?」

「はい。この秘密は…みらいに関する事です。」

「みらいに…関する事?」

「それって何なの?大平ちゃん」

みらいの事で自分達が知らない事なんてあるのか?っという風に首を傾げる2人

「その前にお二人にご質問させて頂けませんでしょうか?」

「ああ、構わねぇ。」

「今までのみらいを見てて、何か疑問に思っている事、または不思議に思った事ってありませんか?」

「みらいを見ててか?」

「はい。」

「そういやぁみらいって幼稚園に入った頃あたりから妙に凄いしっかり者になったよな。同い年の勇平の面倒見も良くなったし。」

「そういえばそうね。私達が残業で遅くなった時に家に帰った時にはもう先にお風呂から上がってて、下の居間で待っていたり、
先に寝ていたり、お出掛けがキャンセルになった時も文句の一つも言わなかったわね。」

「そういえばそうだな〜、普通文句の一つくらいあってもおかしくねぇよな。」

「なんていうか…今思ったけれど、みらいって周りの同い年の子より、何かといろいろな面で凄くしっかりしているのよね。」

「それは俺もいつも少々思ってた。」

2人は大平に言われて、みらいが生まれてからこれまでの事を振り返ってみると、確かに疑問に思う所や不思議に思う所がいくつかある事に気づいた。

「そうですか。お二人が思われている通り、みらいはその辺にいる普通の小学生とは違います。」

「どういう事だよ?」

「みらいに言われて黙っていたこの秘密をこれからお話しましょう。僕がその秘密を知ったのは今から1年前です。」

「1年前?」

「はい。1年前に兄さんと義姉さんが仕事の関係でどちらもどうしても外せない出張が出来た時がありましたよね?」

「あ、ああ。あの時は確か…3日間だけお前んとこ預けていたんだったよな。」

「ええ。僕はその預かっていた3日間の間にある秘密を知ったんです。」

「それが…みらいに関する秘密だったのね?」

大平は1年前に起きたある出来事を2人に話し始めた。

「ええ。あの時、僕は仕事で出掛けていた帰りで、勇平とみらいは幼稚園帰りでした。夢が丘公園の入り口の方から
勇平が出て行くのが見えて、勇平を呼んだ時、勇平は僕の声に気づき、僕の方へ走って向かっていました。
ちょうどその時、勇平の後ろ横から車が走ってきて、その時は何の異変もなかったんですけど、すぐに異変が起こりました。
その車のタイヤが突然パンクを起こしてふらつき始め、歩道の方にはみ出してしまい、勇平が轢かれる状態に至ってしまいました。
そして、その車の方は危険という事を勇平に教えて、そこから離れるようにしようとしたのですが…勇平はそれに気づいた後、
恐怖に脅えてかその場所から動かなくなってしまってしまいました。」

「うそっ!?でもあの時病院で入院したりしていなかったわよね?」

「ええ。あの時は怪我なんてしていませんでしたから。」

「どういう事だ?」

「あの時、僕はすぐに勇平の方へ駆けつけて助けようとしたんですが、少々距離があった為、間に合いそうになかったんです。
その後、もうすぐ轢かれそうになったその時…みらいがもの凄いダッシュとスピードで勇平を助けたんです。」

「えっ!?みらいが勇平君を助けたの!?」

「はい、そうです。あの時のみらいのダッシュとスピードには本当に驚きました。普通はあんなに早く反応して、速く走れるわけがないと思うくらいに。」

大介となつみは自分達が知らない事を知って衝撃を受けていた。

「それが…みらいが今まで隠していた秘密か?」

「いいえ、みらいに隠された秘密はそんな小さな事だけではありません。今明かした秘密はほんの一部に過ぎません。」

「まだ…あるのか?」

「はい。あの後、僕にある程度の秘密を教えてくれました。その秘密は、自分にはすば抜けた頭脳と
並外れた運動神経を持っているとみらい自身が言っていました。」

「みらいが?」

「はい。みらいは物心がついた3歳の頃にその能力が目覚めた事に気づいたと言っていました。」

「うそ…」

「本当の事です。今、現在みらいのこの秘密を知っているのは、僕と勇平と江地さん、それとあと他に7人いて、合わせて10人です。」

「10人?」

「はい。僕と勇平と江地さんは偶然目撃して知りましたが、他の7人は違います。他の7人は最初からみらいにすば抜けた頭脳と
並外れた運動神経を持っている事に気づいていたらしいんです。」

「最初から?」

「はい。他の7人もみらいと同じように特別な能力を持っているんです。どんなものを持っているかまではさすがに知りませんが。」

「けどよ、俺達…なんで今まで気がつかなかったんだろう?」
気づこうと思えば気づけたはずだと今までの事を振り返りながら見つけようとしていた大介

「それは、みらいが兄さんと義姉さんだけには絶対気づかれないようにしていたからですよ。」
必死になってる兄を見て、みらいが2人にだけは絶対に気づかれないように必死になっていたからだと教える。

「なんでそんな事する必要があるんだよ?」

「たぶんみらいは、兄さんと義姉さんにこの事を話した時の反応の事を考えると怖くて言えなかったんだと思います。
誰だって…一番大切な人には嫌われたくないって思うでしょ?だからみらいはずっと隠し続けていたんです。」

「そうだったのか。けど、情けねぇな…そんな事にも気づいてやれねぇなんてよ。」

「みらい…凄く悩んでた?」

「たぶん凄く悩んでいたと思いますよ?少なくとも僕はみらいがその事に悩んでいる所を見た事がないのですが。」

「…相当の強がりだな、みらいは。俺らが思っている以上に。」

「はい、僕もそう思います。みらいだって、まだ勇平と同じ子供なんですから、もう少し兄さん達に甘えてても良いと思います。
まぁ、みらいが兄さん達にその秘密を話したくないという気持ちは…解らなくもありませんけどね。」

「ちょっとショックね。みらいにそんな秘密があって、そんな大事な事を今まで私達に隠していたなんて。」

「たくっ…みらいのやつ、俺達の事をもっと信用してほしーぜ。」

「まぁ…そう言われても、みらいはみらいでいろいろと悩んでいたんですから。話すべきなのか、話さないべきなのかをね。
僕は兄さん達の事をもっと信用しても大丈夫だとみらいに言ったんですけど、それでもおそらく迷いは消えなかったんでしょう。」

「ちぇ、大平の事…すんげぇ信用してんな、みらいのやつ。」

「僕にはみらいの秘密を知ってしまった責任がありますからね。まぁ、結果的にそのおかげで、
僕がみらいのサポートに回り、今までアリバイ工作などに協力してきたんですけどね。」

「んで?さっき言っていた『Zポイント』って一体どんな通信なんだよ?」

「そうですね…兄さんが6年前に開発されたコンパクトとブローチの間での通信の場合、電波状況によって通信状態が違います。
兄さんが使っているその通信手段は、過去の世界との電波状況がかなり良い時でないと通信が成功しませんが、
みらいが作ったこの『Zポイント』は、兄さんが今使っている通信手段よりもかなり良い通信手段なんです。
ここにある僕のパソコンの中にある『Zポイント』から、みらいが持っているノートパソコンの中にある『Zポイント』へと通信回線を繋ぐんです。」

みらいから聞いた「Zポイント」に関する事を全て話す大平

「みらいのノートパソコンの中にある『Zポイント』にか?」

「はい。」

「その『Zポイント』は、大介が作ったコンパクトとブローチの間での通信の時と通信出来る確率はどのくらい違うの?」

「そうですね…僕はそこまで詳しくは知りませんが、江地さんから聞いた話によると、兄さんが開発した
通信手段での通信確率は、まぁだいたい10%〜20%あたりらしいです。
しかし、みらいが開発しているこの『Zポイント』の場合での通信確率はだいたい70%〜80%の高確率ですね。」
前に江地に聞いた事を思い出しながら呟く。

「そんなに高確率なのか!?」

「ええ。『Zポイント』は、まだ完璧に完成したわけではないので、今のところはこれくらいの確率じゃないか?っと江地さんが言っていました。」

「ま、まだ完成してねぇのに、こんなに高確率なのかよ!?」

「はい。それともう一つ…兄さんが使っていた通信手段では声だけのみの通信でしたが、みらいが現在開発中の
この『Zポイント』ならば、声だけでなく、お互いの姿を見る事が可能なんです。」

「なに!?声だけじゃなくて、お互いの姿も見れるのかよ!?」
自分達が使っていた通信では声のみなのに対し、「Zポイント」では声だけはなく、お互いの姿を見る事が可能だと聞き、驚く大介

「はい。『Zポイント』はパソコン同士で繋がっていて、どちらのパソコンにもカメラが付いていますしね。」

「そうなんだ。」
機械の難しい事は解らないが、自分達が使っていた通信よりもかなり性能が良い事は理解したなつみ

「……なぁ、その『Zポイント』…全部みらい1人で作っているのか?」

「いいえ。江地さんやその他のみらいの秘密を知る人達も協力して開発を進めているみたいですよ。」

「そうなのか。けどよ、なんでみらいがその『Zポイント』なんかを作ってんだよ?」

「さあ?僕はそこまで詳しくは知りませんから。」

「聞かなかったのかよ?みらいに…」

「はい、聞きませんでした。無理に聞く必要もありませんでしたしね。」

「まあ…それもそうだな。」

「ねぇ、大平ちゃん」

「何ですか?義姉さん」

「今、すぐにみらいと通信出来るの?」

「それが…」
申し訳なさそうな顔をする大平

「出来ねぇのか?」

「はい、残念ながら。先ほどみらいと通信が取れたのは、向こうからの通信信号が鳴っていたから繋がったんです。
しかし、こちらからの通信の仕方は解らないんです。」

「通信の仕方が解らない?なんでだよ?」

「『Zポイント』での通信は、これまで数えるほどでしか通信をした事がないんです。それにいつもみらいの方から
通信をしていたので、『Zポイント』を作動させての通信の仕方は応答のみしか知らないんです。」

「みらいのやつ、教えなかったのか?こっちからの通信方法。」

「はい。」

「それじゃあこっちからの通信が出来ねぇじゃねぇか。」

「みらい…」
過去に居るみらいを心配するなつみ

「なつみ……なぁ、大平」

「何ですか?」

「何か…方法はねぇのか?その『Zポイント』を使って過去に居るみらいと通信が取れる方法。」
なんとか「Zポイント」を使う方法が無いか聞く大介

「う〜ん…大地君にご相談してみてはいかがですか?」

「えっ?大地にか?」

「ええ。大地君なら、その『Zポイント』の事を詳しく知っているんじゃないでしょうか。」

「大地が?」

「はい。大地君もみらいと同じように、自分専用のパソコンに『Zポイント』を組み込んであるんじゃないんでしょうか?」

「ありえなくも…ねぇな。」

「でも…今、大地は一体どこにいるのかしら?」

「ああ、それが問題だな。」

「それならたぶん心配は要らないと思いますよ。」

「「えっ?」」

「この間、みらいが家へ来ていた時に言っていたんですよ、大地君が帰ってくる日。」

「いつだ!?」

「今日です。」

「今日?」

「はい。確か…夕方あたりに帰ってくるんじゃないかって言っていました。」

「そ、そうか。」

「じゃあ、大地に会って、この事を説明して、『Zポイント』の事を知っているかを聞かないとね。」

「ああ。」

「…大丈夫でしょうか?」

「ん?」

「大地君が素直に聞いてくれるかって事です。」

「それなら…たぶん心配はいらねぇと思うぜ?」

「そうでしょうか?」

「ああ、大丈夫さ…あいつならな。」

「そうね、大地ならきっと大丈夫よ。」

「まぁ…お二人がそうおっしゃるのでしたら心配は要らないでしょう。あとは無事にまた通信が繋がるかどうかの問題ですね。」

「ああ、そうだな。」

今の3人には「大地」が「Zポイント」の通信方法を知っている事をただ祈るしかなかった。

「ところで今思い出したのですが…御二人共、お仕事の方はよろしいのですか?確かどちらもかなり重役な立場に居たような気がするのですが…」
自分の記憶が正しければ、大介となつみはあまり急な休みを簡単に取れるような立場ではなかったはずだと思う大平

「こんな時に仕事なんてやってられっかよ。」

「みらいがこんな状況なのに、仕事になんて行けないわ。」

「それによ、俺もなつみもたぶんこのまま仕事に行っても、みらいの事が気がかりで集中出来ねぇと思うんだ。」

仮にそのまま仕事に出勤したとしても、集中出来ないという大介となつみ

「それは…確かにそうですが…みらいがその事を気にしてしまいますよ?」

「たく、子供が余計な事に気を回すんじゃねぇよ…」

「その言葉、みらいが帰ってきたら、言ってあげてくださいよ、兄さんの口から。」

「ああ、そうする。言わねぇと伝わらねぇ気がするし、これだけはな。」

「義姉さんも、みらいが帰ってきたら…何かみらいに言葉を言ってあげて下さい。みらいの秘密を知った上での親としての言葉をね。」

「親としての…言葉を?」

「はい、親としての言葉です。みらいは3年前からずっと御二人にこの秘密を隠すという事はたぶんとても苦しかったはずです。
親には出来れば隠し事をしたくないっていう子供も居ますからね。みらいは御二人の事が凄く大好きだから…その後の反応が
気になって今まで話せなかったんですから。だからみらいを責めずに、みらいの心を…みらい自身を救ってあげて下さい。
みらいの事を本当に救う事が出来るのは…みらいの親であるお二人だけなんですから。」

自分では無理だ、みらいの両親である大介となつみでなければ、本当の意味でみらいを救えないと言う大平

「…そうだな、みらいの親としての言葉…っか。確かに…少し与える言葉が少な過ぎたのかもしれねぇな。」

「そうね。みらいが幼稚園に上がってから、大介はそれまで通り仕事をしてて、私は仕事をまた始めて、
みらいは幼稚園に通って…私達みんな別々の時間を過ごしてた。」

「ああ、そうだ。休日も時々、俺やなつみが揃って急に仕事が入っちまった時はだいたい大平んとこに預けていたっけな。
俺達は構ってあげなきゃいけねぇ時期を…なかなか構ってやれていなかったんだよな。」

「みらいがその秘密を隠す事で苦しんでいる事にも気づいてあげられなかった…母親失格かもね。」

「それは俺だって同じだ。俺も気づいてやれなかったんだからな。だから俺だって父親失格だぜ。」

「大介…」

「兄さん、義姉さん。」

「ん?」

「何?大平ちゃん」

「御二人共…全然親失格なんかじゃありませんよ。」

「えっ?」

「大平…」

「兄さん、義姉さん、もしみらいが今この場に居て、兄さん達のその言葉を聞いたら、きっと怒りますよ?」

「けどよ…」

「みらいが以前言っていたんです、御二人の事を…」

「みらいが?なんて…言っていたの?」

「僕がみらいにある質問をしたんです。」

「ある質問?」

「兄さん達が休日の時に、急に仕事が入って家に預けていた時に僕がみらいに兄さん達に
構って貰えなくて寂しくないのかを聞いたんです。みらい、何て言ったと思います?」

「…寂しいって言ったんじゃねぇのか?」

「はい、違います。確かに少し寂しいとは言っていましたが、お仕事なんだから仕方がないって、2人は家庭を支えるために
お互い協力しあって、お仕事をしているんだって、それに…お仕事で頑張っている2人の事も大好きだからって言っていました。
だから…親失格なんかじゃありませんよ。少なくとも…みらいにとっては、御二人は素敵な親なんですから。」
以前みらいから聞いた事を2人に伝える大平

みらいは2人の事がとても大好きなんだという事を…

「みらい…」なつみが涙もろい声で呟く。

「みらいがそんな事を言っていたのか…」
大介もみらいの想いを知って嬉しそうだ。

「兄さんと義姉さんの子供…凄くしっかりしていて、とても優しい子ですね。」

「ああ…ほんとに…優しすぎるぐらいだぜ。な?なつみ」
「ええ、ほんとに…優しすぎるわ…」


未来の世界ではこのような会話が流れていた。
大平は大介となつみの2人にみらいの秘密を…自分が知っている事をすべて話した。
大介となつみはみらいが今まで隠していた秘密を知って、最初は驚いていたがすぐにそれを受け止めた。
大平はその様子を見て安心していた。
そして、大平が言っていた「大地(だいち)」とは一体誰なのだろうか!?
果たして、大介達は無事にその「大地」という人の協力を得て、再び過去の世界に居るみらいと通信する事が出来るのであろうか!?


第13話へ進む。


この第12話ではまたまた未来の世界の様子を書いてしまいました。
最後のあたりになってから出てきた「大地」という名前のオリキャラはみらいと関係のある人物ですが、
これについてはすぐには明らかにはされません。
それでは第13話へお進み下さい。

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