午後12時頃…山口太郎左衛門商店では、大介と大平と佐和子の他に例の少年も一緒に昼食を取っていた。
「い、いただきます。」
勇平は手を合わせながら言ってから食べ始めた。
『いただきます。』
大介達も食べ始めた。
大介は自分の食事を食べながら、「山口勇平」という少年の様子を見ていた。そして…
「なあ、お前…『山口勇平』って名前なんだってな?」
「えっ、あっ、うん…山口勇平…です。」
「ちょっと…質問して良いか?」
「えっ、うん…僕で…答えられる質問なら…」
「お前は、今、西暦何年だと思ってるんだ?」
「えっと…わかんない…」
「はぁ?わかんない?」
「うん…」
「おいおい…「うん」ってお前…ほんとに何年なのかわかんねぇのかよ?」
「うん…わかんない。」
冗談とかではなく、本当に解らない様子だった。
「じゃあ二つ目の質問。お前が持っているリュック、あれは何のリュックだ?」
「えっと、学校に背負っていくリュック。」
「その中身は?」
「えっと、確か…筆記用具、通知表、ノートパソコン、USBメモリー。」
リュックの中身を思い出しながら呟く勇平
「んじゃあ…ここへ来る前のお前の世界では、終業式だったのか?」
「うん。」
「お前、今いくつだ?」
「えっと…6歳。」
「そっか。じゃあまだ1年生になったばっかりなんだな。」
「うん。」
「…なあ。」
「な、なに?」
「お前、この後ちょっと俺について来てくれねぇか?」
「えっ…」
「お前は、今の状況…把握してねぇんだろ?」
「う、うん…」
「だから、ちょっとついて来てくれてねぇか?俺がこれから連れて行く所にいけば、
お前の今の状況を把握出来るかもしれねぇから。」
「……」
「ん?どうした?」
勇平の様子が可笑しい事に気づく大介
「…外…出たくないっ!!」
今まで持っていた箸をテーブルの上に置き、そこから少し離れて、体を丸めた。
「なっ!?お前…何言ってんだよ?」
大介も箸を置き、その少年…勇平の方へ行く。
大平と佐和子も箸を置き、大介と同じように勇平の方へ行った。
「外に出るの…怖いっ!」外に出るのを嫌がる勇平
「なんでだよ?」
「外に出ると、必ず…嫌な事が…あるからっ…」
「けど、お前…今学校行ってんだろ?」
「行ってるけど…学校へ行く時以外は外に出たくないっ!」
「…1人じゃないと言ってもか?」
「えっ…」
「俺が一緒にいるから…1人じゃねぇよ。1人だと怖い事も、2人になれば怖くねぇだろ?」
「……」
勇平は黙って少し迷いながらも、首をゆっくり縦に動かした。
「よし。とりあえず…残りの飯、食おうぜ?」
「うん…」
なんとか勇平を説得する事が出来た大介であった。
一方その頃の矢熊山の地下の研究所では…
江地とツバメ君、そしてみらいがタイムマシンの改良・修理に励んでいた。
「こっちのデータプログラムは完了。」
「こっちもじゃ。いや〜、みらいちゃんが来てくれたお陰で、大助かりじゃ。」
「いいえ、どういたしまして。」
「うむ。しかし…やはりもったいないの〜、その天才的な技術力は…」
「…江地さん、それは言わない約束でしょ。」
「いや、すまん、すまん。」
「それじゃあここらで少し一休みしませんか?」
「そうじゃの。ツバメ君、少し休憩するぞ。」
「キプッ」
みらいの一言で休憩を取る事にした江地
「今のだけでも、まだまだ改良・修理の時間は足りませんね。」
「そうじゃの。しかし、ほんとにすまんの。こんなに早くに呼び出してしまって。」
予定より早くみらいを呼び出してしまった事を詫びる江地
「いえ。それに…ここでは隠さなくていいですからね…」
「…いつでも来なさい。わしはいつでも歓迎するぞ。」
「キプッ!」
「ツバメ君も、いつでも呼んでも構わないと言っとる。」
「ありがとう!ツバメ君」
「キプッ!」
「さて、一休みしたし、作業を再開するかの。みらいちゃん、また手伝ってくれるか?」
「いいですよ。」
「うむ。じゃあ始めよう。行くぞツバメ君っ!」
「キプッ!」
それから時間が経ち、1時30分になった水木家では…
「そろそろタマエ達が来る頃かな?」
ピーンポーン…っとタイミング良く玄関の呼び鈴が鳴った。
「あっ、タマエ達かな?」
なつみは玄関の方へ行き、ドアを開けた。
「よっ、なつみ」
「なつみちゃん、ちょっと早かったかしら?」
「ううん。全然そんな事ないよ。さっ、上がって。」
「「おじゃましま〜す。」」
タマエとえり子は中へ入ってきた。
なつみは2人を入れた後、玄関を閉めた。
「いらっしゃい、タマエちゃん、えり子ちゃん」
「「こんにちは。」」
声を掛けてきたるり子に挨拶するタマエとえり子
「はい、こんにちは。」
「ねぇなつみちゃん、みらいちゃんは?」
「それがね、今出かけちゃってるらしいのよ。私が帰ってきた時にはもう出かけちゃった後でさ。」
「そうなんだ。大介はまだ来てないみたいね。」
「うん。たぶんもうすぐ来るんじゃないかな。」
その時、再び呼び鈴が鳴った。
「あっ、きっと大介じゃない?」
その後なつみはまたドアを開けた。
そこには大介が立っていた。
「よう、なつみ」
「大介、いらっしゃい。」
「大介、例の男の子は?」
学校で聞いた少年の事が気になる様子のタマエ
「ちゃんと連れて来てるぜ。連れて来るの、大変だったんだぜ。大平!勇平を連れてこっちへ来いっ!」
勇平をこちらに連れてくるように大平に呼びかけた大介
「大平ちゃんも一緒なの?」
「ああ。面倒を見れる奴がいなくてよ、仕方ねぇから、大平も連れて来たんだ。」
「にいちゃ〜ん!」
「ん?」
「動かない〜!」
「解った、今行く!悪い、ちょっと待っててくれ。」
大介は大平の所へ駆けつけていった。
少し経ってから大介が例の男の子を抱え、その横で歩く大平がやってきた。
「大介、ちょっと時間掛かり過ぎよ。」不満を漏らすタマエ
「しょうがねーだろ。こいつ、ちっとも動かなかったんだからよ。文句言うなよ、タマエ」
「で?その子が大介が言っていた男の子?」
「ああ。とりあえず中に入ろうぜ。」
「そうだね。」
居間へ移動した後、大介はとりあえず、勇平に居間のソファーに座るように言い、勇平はそれに従った。
「へぇ〜、この子が大介の言っていた勇平君か〜。確かにどことなくマリオ君にそっくりね、この子。」
タマエが勇平の顔を見て驚く。
「だろ?」
「ほんとにそっくりね。」
「まぁ…お隣のマリオ君にそっくりじゃない。」
「ここまでそっくりとは…」
この場に居る他のみんなもマリオそっくりなのを見て驚いていた。
「こいつにさ、さっき昼飯を食ってる時にちょっと質問したんだけどよ、西暦何年から来たかが解んねぇんだよな。」
『えっ!?』
「自分で今西暦何年なのかが解らねぇみてーなんだ。」
「そうなんだ…じゃあどうするのさ?」
どうするのか大介に聞くタマエ
「さぁな。それより…あいつはどうした?」
みらいが居ないのを見て聞く大介
「あっ、それがね、今出かけちゃってるみたいなのよ。」
「はあ?どこへ?」
「江地さんの所。」
「江地のおっさんとこに?」
「うん。」
「…とりあえず聞いてみるか。」
「何を?」首を傾げるなつみ
「決まってんだろ、あいつの事を知ってるかをこいつに聞くんだよ。」
「知ってるのかな?」
「解らねぇ…けど、こいつもここへ来る前は、終業式の後だったみたいだし、
もしかしたら同じ時代からって可能性の方が高いだろ?」
「確かに…」
大介にそう言われると、確かにその可能性は高いと思ったなつみ
「なあ、勇平」
「えっ…なに?」
「お前、『みらい』っていう名前の女の子を知ってるか?」
「えっ…お兄ちゃん、みらいちゃんの事を知ってるの?」
「みらい」という名前に反応を示し、驚きの表情を見せる勇平
「ああ、お前と同い年だろ?」
「うん、そうだよ。」
「そっか。どうやらお前は西暦2013年から来たみたいだな。」
みらいの事を知っていると解り、いつの時代から来たのか解った大介
「えっ?」
「あのな、勇平。今お前が居るここは、お前にとっては過去の世界なんだ。」
「かこ?」
「ああ、俺達にしてみれば、お前は未来の世界から来た人間と見てるんだ。
ここは西暦1995年で、お前からすれば、18年前の過去の世界なんだ。」
「18年前の世界?」
「そう。」
「…僕、もう帰れないの?」
「いや、帰れるさ。」
「もしかして…みらいちゃんも…ここに来てるの?」
大介の話からみらいもここに来てるのかと思った勇平
「ああ、今は出かけてるみたいだけどな。」
「そうなんだ。」
「ねぇ、勇平君。」
今まで黙っていたいづみが勇平に話しかける。
「な、なに?」
「勇平君とみらい…どういう関係なの?」
「ちょっといづみおばさんっ!」
いづみがなんでそんな質問をしたのかすぐに解ったなつみが怒る。
「良いじゃない、ちょっとくらい。んで?どうなの?もしかして許婚だったりする?」
「??…「いいなずけ」って…なに?」
「許嫁」の意味を知らず、首を傾げた勇平
「許婚っていうのはだな、小さい時から、両方の親が決めた婚約者同士の事よ。」
「??…よくわかんないけど…僕とみらいちゃんは「いいなずけ」じゃないよ。」
なんとなく解った勇平がいづみも質問に素直に答えた。
「(がくっ)なんだ、違うのか…」
許嫁じゃないと聞き、がっかりするいづみ
「違うに決まってんじゃないっ!」
「んで?じゃあどういう関係なんだ?」
「僕と…みらいちゃんは…いとこ同士なんだ。」
『えっ!?』
「ゆ、勇平君、い、今…みらいとはいとこ同士だと言った?」
今の言葉が衝撃的過ぎて思わず聞き返してしまういづみ
「う、うん…」
「うっそ〜!マジ!?」
「みらいちゃんのいとこ!?」
「マジかよ…」
「信じらんない…みらいちゃんのいとこだなんて…」
みんなは勇平がみらいがいとこだという衝撃の発言に驚き、それぞれ頭を混乱させていた。
なんと、「山口勇平」はみらいちゃんのいとこなのであった。
驚いても不思議ではない。
しかし、勇平は一体誰の息子なのか?
もう、みんなは誰が勇平の父親なのかをうずうず気づいているのだろうか?
そして、みらいちゃんは勇平が来ている事を知っているのであろうか?
いや、おそらく知らないであろう…一体どうやって帰るのであろうか?
それはまだ謎である。
果たして、これからどうなるのであろうか…
とうとう少年の謎が明らかになり始めましたっ!
もう設定の方の登場人物で、どういう人物かをもうだいたい把握していらっしゃる方の方が多いでしょう。
しかし、この物語の中の者達はまだ知らない!
というわけで、これから少年の秘密が少しずつ明らかになります。
「山口勇平」は、完全なオリキャラです。
それでは第10話へお進み下さい。