少年の謎

過去の世界の方に戻って、西暦1995年の過去の世界では朝を迎えていた。

現在の時刻は午前6時…ここはなつみの部屋である。
なつみの部屋のベットでは、なつみとみらいが一緒に眠っていた。

「う、う〜ん……朝か…」
みらいは目が覚め、体を起こすと横で寝ているなつみの方を見た。

(…そういえば昨日過去の世界に飛ばされてきちゃったんだったっけ。
ここに居てもしょうがないし、せっかくだから朝の散歩に行って来ようかな。)

みらいはベットからそ〜っと出て静かに歩き、そ〜っとドアを開けて部屋を出て、静かに閉めた。

その後、みらいは下に静かに降りて、玄関へ行き、靴を履いて外へ出て行こうとした時…

「ワンッ!」

今吠えたのは、この時代の水木家の愛犬のボビーである。

「シーッ!みんなが起きちゃうでしょ。」小声でボビーに言った。

「クゥ〜ン…」

「…ボビーも一緒に朝のお散歩に行く?」

「ワンッ!」
元気よく吠えて返事するボビー

「じゃあおいで。」

みらいはボビーを連れて、外へ出ていき、散歩へと出かけていった。

おっと、ここで説明しておこう。みらいは元々パジャマを持っていなかったので、昨日の服のままなのである。

それから約30分後…午前6時30分頃の水木家…

浩三郎とるり子が起きて、下に降りていき、居間へ行った。

「あら?ボビー?」
ボビーの姿が見当たらず周りをキョロキョロ探するり子

「どうしたんだい?」
そんな妻の様子が気になって聞く浩三郎

「ボビーがどこにも居ないのよ。」

「ボビーが?」

「ええ。変ね…どこへ行ったのかしら?」

その時玄関のドアがガチャッという音を立てた。
浩三郎とるり子はその音に気づき、玄関の方へ行く。

「ボビー、中に入って。」

「ワンッ!」

「「ボビー!」」2人は口を揃えて言った。

「ワンッ!」ボビーは2人に吠えて返事を返す。

「あれ?浩三郎さん、るり子さん。おはようございます。」

「おはよう、みらいちゃん」

「おはよう、みらいちゃん。起きるのが早いな。」

2人はみらいが早起きな事に感心していた。

「目が覚めちゃったから、ボビーと一緒に散歩に行ってきたんです。あっ!こら、ボビー!
まだ上がっちゃダメだよっ!足をまだ拭いてないでしょっ!」

「クゥ〜ン…」

「わかった、わかった。すぐに拭いてあげるからここで待ってて、お座り!」

「ワンッ!」
みらいの言う事が解ったのか、ボビーは返事をし、そのお座りする。

「足を拭くためのタオルあります?」

「ええ、洗面所に置いてあるわよ。」
タオルの場所を教えるるり子

「解りました、お借りします。」
みらいは靴を脱ぎ、洗面所の方へ行く。

みらいが洗面所から戻ってくると、ボビーの足を拭いてやり、
その後にみらい達は居間へ移動した。

「みらいちゃん、紅茶飲む?」

「えっ…まだ朝食の時間じゃありませんけど…」

「遠慮しなくて良いのよ。朝食前のお茶の時間とでも思ってくれて良いから。」

「じゃあ…紅茶…お願いします。」

「はい。あなたもコーヒーを飲みますか?」

「ああ、お願いするよ。」

るり子は台所の方へ行き、コーヒーと紅茶を作り始めた。

少し時間が経って、るり子がコーヒーと紅茶を持って、居間へ戻ってきた。

「はい、みらいちゃん」

ソファーのみらいが座っている所の目の前のテーブルに紅茶を置いた。

「ありがとうございます。」

「砂糖とミルクはここにあるから、必要だったら遠慮なく使ってね。」

「はい。」
みらいは紅茶に砂糖とミルクを入れて、かき混ぜてから、紅茶を飲み始めた。

るり子は浩三郎にもコーヒーを渡した後、自分達も飲み始めた。

それから時間が経ち、午前7時の二階のなつみの部屋では……

ジリリリリッ、ジリリリリッ…

なつみはその音に気づき、目覚まし時計のスイッチを切った。

「う、う〜ん…よく寝た。あれ?みらいちゃん?もう起きちゃったの?早い…」

なつみはベットから降りて、制服に着替え始めた。
制服に着替え終わった後、自分の部屋にある鏡の前に行って、髪を整える。

「よし、これでOK!」

身仕度が終わると、自分の部屋を出て下へ降りた。


居間へ行くと…

「あら、なつみ。おはよう。」
「おはよう、なつみ」
「なつみお姉ちゃん、おはよう。」
「ワンッ!」

居間に居たるり子、浩三郎、みらい、ボビーがそれぞれなつみに挨拶する。

「おはようっ!みらいちゃん、起きるの早いね。」

「早く目が覚めちゃったから…」

「みらいちゃん、私達よりも先に起きてて、ボビーと朝のお散歩まで行ってたのよ。」

「そうなんだ。良かったね、ボビー!」

「ワンッ!」

「それじゃあなつみが起きた事だし、朝ご飯の用意をしてくるわね。」
そう言うと、るり子はまた台所へ行った。

「それにしても…いくらボビーが利口な犬だからとはいえ、みらいちゃんの言う事を良く聞いてたね。」

「えっ…」

「えっ?そうなの?」

「ああ。なつみと同じくらい言う事聞いてたよ。まるで…前から知っているかのようにね。」

「そっか。じゃあボビーには解るんだね。今ここにいるみらいちゃんが2年前に来た赤ちゃんのみらいちゃんだって。」

「そうかもしれないね。だとしたら凄いな、ボビーは。」

「ボビーとみらいちゃん、すっごく仲良しだったから。」

「しかし…みらいちゃん、君は犬の扱いが随分と慣れているんだね。」

「そ、そんな事ないですよっ!ぜ、全然普通ですよっ!」

「そうかな?なんかボビーの言葉が解るかのような会話をしていた気がするのだけれど。」

「き、気のせいですよ!浩三郎さん」

「う〜ん、だと良いんだがね。」

その時ちょうどるり子が朝食が出来たと言ったので、リビングの方へ移動した。

全員席に座った後…

「「いただきますっ」」
一斉に言って食べ始めた。

それから少し経ち、なつみが御飯を食べ終えた。

「ごちそうさまっ!」

「はい。じゃあなつみ、そろそろ夢を起こしてきてくれるかしら?」

「うん、解ったよ。」
なつみはまた2階へ上がっていった。

「ごちそうさまでした!」
みらいは手を合わせながら言う。

「はい。お口には合ったかしら?」

「あっ、はい。大丈夫です。それにこのブロッコリー…体に良いですよね。」
「あら、みらいちゃん、良く知ってるわね。」

「お料理を作ってたら、いつの間にか解るようになっちゃったので。」

ちょうどその時、なつみが2階から夢を抱っこして降りてきて、居間へいった。

「ママー、夢、居間のソファーの所に降ろしとくよ〜?」

「ええ。」

その後なつみは夢を居間のソファーに降ろした。

「それじゃあ、そろそろ私学校へ行く時間だから行ってくるねっ!」

「ええ、いってらっしゃい!」

「行ってきますっ!」
なつみは鞄を持って玄関へ行き、靴を履いて、学校へ出かけていった。

時間を7時に戻して、その頃の山口太郎左衛門商店では大介たちが丁度朝ご飯を食べるところであった。

「いただきますっ!」大介は朝ご飯を食べ始めた。

「「いただきますっ」」大平と佐和子も言い、こちらも朝ご飯を食べ始めた。

「そういやぁ、あれからあいつの様子はどうなんだ?」
昨日の少年の事を聞く大介

「あの子ですか?昨日大介さん達がもう寝てしまった後に一度だけ起きました、魘されていましたが。」

「魘されてた??」

「ええ。何に魘されていたかは解りませんが…よっぽど怖い夢だったんだと思います。」

「そ、そうなのか。」

「それでですね、その子のお名前が解ったんです。」

「えっ!?マジ!?」

「ええ。」

「何て名前なんだ?あいつ」

「それが…『山口勇平』という名前だそうです。」

「えっ…山口…勇平?」

「ええ。」

「マジかよ…もしあいつが本当に未来の世界から来たとして、
『山口太郎左衛門商店』の息子ならば、俺らとは親族じゃねぇか…」

「おそらくそうなんでしょうね…『山口』という苗字からして、その可能性はなくはありませんよね…」

「と、とにかく…そいつ、学校から帰ったら、なつみん家に連れて行くからそれまで頼むな。」

「ええ、解っています。でも…素直に聞いてくれるでしょうか?」

「わかんねぇ…けど、なんとかする。他に聞いてねぇのか?」

「ええ。残念ながら…」

「もし、この後話が出来そうだったら、聞いてみてくれねぇか?」

「ええ、解りました。」

その時午前7時40分を指した。

「おっと、いけねぇ!そろそろ行かねぇと…大平、行くぞ。」

「うんっ!」

その後大介は大平を連れて家を出て、大平を幼稚園まで送った後、大介は中学校へ向かった。

夢が丘中学校1年3組の教室では…

「あっ!なつみ、おはようっ!」

「なつみちゃん、おはようっ!」

「おはよう!タマエ、えり子ちゃん」

タマエ、えり子、なつみの3人は挨拶を交わす。

「昨日はほんとにビックリな事ばかり起きたよね〜。」

「ほんと。まだ夢見てるみたいで、夢なんじゃないか?って思ってしまうわ。」

「そうだね。でも、まぎれもなく現実で起こった事だよ。」

その時ちょうど大介が教室へ入ってきた。

「あっ…おはようっ!大介っ!」
大介が来た事に気づき、挨拶するなつみ

「ようっ!」

「今日はぎりぎりじゃなかったわね。」

「そう毎日ぎりぎりに来るわけがねぇだろっ!?」
タマエに言い返す大介

[それもそうね。」

「たくっ…あっそうだ、なつみ」

「何?」

「今日またお前ん家に行っていいか?」

「えっ…別に構わないけど…どうかしたの?」

「実は…」

大介は、昨日家に帰ってから起きた出来事をを説明し始めた。

それから少し経って説明し終わると…

「ええっ!?うそっ!?」

「タ、タマエっ!声がでけぇっ!」

「あっ、ごめん。でもそれほんとなの?マリオ君そっくりな男の子だって…」

「ああ、マジだよ。俺も最初は目を疑ったさ…けど、何度見てもマリオそっくりなんだよな。」

「そうなんだ。」

「おまけによ、今日の朝解ったばっかりなんだけどよ、そいつ…『山口勇平』っていうらしいんだ。」

『山口勇平!?』
なつみ・タマエ・えり子の3人が一斉に声を揃えていった。

「ああ。」

「ちょ、ちょっと『山口』ってまさかっ…」

「あ、ああ…可能性はなくはねぇ。実際、俺ん家には今までずっと日本人だけの家系だ。イタリア人なんていねぇよ。」
なつみのそのまさかの通り、自分の血縁者かもしれないと言う大介

「それで私の家にその子を連れてくるの?」

「ああ、あいつはみらいみたいに状況が把握出来ていねぇみてぇだし、
もしかしたらみらいと同じ西暦2013年から来たのかもしれねぇだろ?」

「それも確かにそうね…でももし知らなかったら?」

「その場合は解らねぇ…けど、とりあえずなつみの家にそいつを連れていく。」

「解ったわ。帰ったらみらいちゃんに聞いてみるね。」

「ああ、頼むぜ。」

ちょうどその時チャイムが鳴り、みんな自分の席へと戻っていった。


そして時間が過ぎていき、あっという間に放課後になった。

「じゃあまたあとでなっ!」
授業が全て終わると大介はすぐに家へと帰っていった。

なつみ達もその後帰路につく。

「それにしても、まさかみらいちゃん以外にも、タイムスリップして現われてる子が居たなんてね〜。しかも『山口』だし。」

「確か山口君の話では、その子は、外見から見ればイタリア人だけど、もしかしたら日本人と
イタリア人の間に生まれたハーフかもしれないって言っていたわよね。」

「うん、確かそう言ってたよ。」

「でも…みらいちゃん、知ってるのかな?その子の事…」

「どうして?」

「なんとなく。現になつみはマリオ君の事、初めて会った時はすっごく嫌いだったんでしょ?」

「う、うん。今はそこまではないけど。」

「マリオ君と同じような所があってもおかしくないんじゃない?イタリア人の血が流れている事は確かなんだし。」

「でも、マリオと同じとは限らないでしょ。」

「いやいや、ありえるかもよ?というわけでその子がどういう子かも知りたいし、
今日もお邪魔させてもらうよっ!えり子ちゃんもどう?」

「ええ。私も少しだけ気になるわ。なつみちゃん、行っても良いかな?」

「うん、別に構わないよ。」

3人は大介が連れてくる山口勇平という少年の事についていろいろと話しながら歩いていた。

「あっ、ここで分かれ道だね。それじゃあまた後でねっ!」

「なつみちゃん、また後でね。」

「うん。二人とも、また後でねっ!」

なつみが水木家に着くと…

「ただいま〜!」

「おかえり〜、なつみ」

「あっ、いづみおばさん。なんか…眠そうだね?」
目の下にクマが出来ているいづみを見てそう言うなつみ

「ああ、徹夜で原稿書いてたからね。今ちょうどコーヒー飲もうと思って降りてきたとこ。」

「そうなんだ。」

居間へ2人が移動した後…

「あら、おかえり。なつみ」

「ただいま。」

「まあ、いづみ、また徹夜でもしてたの?」

「まあね。るり子姉ちゃん、コーヒーお願いできる?」

「いいわよ。今から作るわ。」

「あれ?ねぇママ、みらいちゃんは?」
みらいの姿が見えない事に気づいたなつみがるり子に聞く。

「みらいちゃんなら出かけたわよ。」

「どこへ?」

「確か…」

みらいと交わした会話をなつみに話ぢ始めた。


<回想>

ピロリンッ、ピロピロリンッ

「あら?何の音かしら?」

るり子は何の音が気になり、音の発生源である居間の方へ行くと…

みらいが居間のテーブルにノートパソコンを出してノートパソコンの方を睨んでいた。

「みらいちゃん、今の音は何か知らないかしら?」

「あっ、その音でしたら、メールが来たのを知らせた音です。」
ノートパソコンから顔を上げ、るり子の疑問に答える。

「メール?でもみらいちゃん、メールっていったって、一体どこから?」

「江地さんからです。昨日江地さんの研究所に行った時に、連絡先を教えたから…」

「そうなの。」

その後みらいはすぐにまたノートパソコンの画面を睨んだ。

そして少し経った後…

「…このメールへの返信。」

『メールを返信するんだね、ちょっと待っててね!』

そして少々待ってからメール返信画面に変わり、みらいはキーボードで返信メールを打ち始める。

少し打った後…

「メール送信。」

『了解っ!』
ネットナビゲーターがメール送信作業を行った。

『メール送信完了したよっ!』

「ありがとう、電源を落とすよ?」

「うん、解ったよ。また後でね。」

ノートパソコンの電源が切れた。

みらいはノートパソコンをリュックに仕舞い、そのままリュックを背負った。

「あら、みらいちゃん、これからお出かけ?」

「はい。江地さんからのメールで呼ばれてますので、出かけてきます。しばらく戻れませんので、
お昼御飯は要りません。それじゃ行ってきます。」

みらいは江地の居る矢熊山へと出かけていった。

<回想終了>

「…って言って、その『江地さん』って人の所に出かけていっちゃったのよ。
今頃その『江地さん』って人と一緒に居るんじゃないかしら。」

「そうなんだ。何時くらいに帰るとか言ってた?」

「いいえ、言っていなかったわ。ただ、お昼御飯は要らないとは言っていたけれど…」

「そう…」

「それじゃあ私はコーヒーを作ってくるわね。なつみも紅茶飲む?」

「うん、飲む。」

るり子はその後台所へまたコーヒーと紅茶を作りに行った。

「何?みらいが居ないとなんかまずい事でもあんの?」
気になったいづみがなつみ聞く。

「それがね…」
なつみは今日学校で大介が言っていた事をいづみに話し始めた。

それから少し時間が経ち、話し終えると…

「…っというわけなのよ。」

「なるほど…その少年はマリオ君にそっくりで、名前が『山口勇平』ね?」

「うん。」

「こりゃあハーフの可能性が圧倒的に高いわね。」

「うん。大介がね、これまでに大介の家系にはイタリア人なんていないって言ってたから、
ますます未来の世界から来たとしか考えられないって言うのよ。」

「私もそう思うわ。でも…みらいに続いて、他にも居たとはね…もし…ほんとにみらいの知ってる子だったら、
その子とはどういう関係なんだろうな。」

「さあ?」

「もしかしたら、許婚って事もありうるかもよ?」

「ちょっといづみおばさんっ!なんでそうなるのよっ!?」
話がいきなり飛び過ぎて思わずツッコんでしまうなつみ

「いっしっしっ…」

「んもぅ…」

その時、ちょうどるり子が二人のコーヒーと紅茶を持ってきた。

「あっ、ありがとう。ママ」

「ありがとう、るり子姉ちゃん」

「今の話を聞いてたのだけれど、その子、英語で喋ったりしないのかしら?」

「ううん。聞いた話じゃ、全然日本語らしいよ。」

「そう。今からお昼御飯作るわね。」

「うん。」


「山口勇平」という少年は一体どこの時代からやってきたのだろうか?
そしてみらいちゃんと関係のある人物なのだろうか?
その謎はついに明らかにっ!?


第9話へ続く。


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