その頃、西暦2013年の未来の世界の方では……
現在の時刻は午後6時を指しており、
ここ、水木家にちょうどなつみが仕事場から帰ってきていた。
車から降りて、家の中に入ろうとした時になって異変に気がついた。
「あら?鍵が掛かってる。変ね…」
なつみは仕方なくバックの中から鍵を取り出して、鍵を開けた。
「ただいまー、みらい?居ないの?」
なつみは自分の娘を呼びながら家の中へ入っていった。
居間へ移動した後…
「電気が付いていないわね。ベロ?どこにいるの?」
娘のみらいを呼んでも返事がない為、ベロを呼ぶなつみ
「ワンッ!」
「あっ、そんな所にいたのね。ベロ、ただいま。」
「ワンッ、ワンッ!」
「ベロ、みらいは?」
「クゥ〜ン…」
唸りながらベロは窓の方へ移動して、鼻の先を空の方に向け、必死になつみに何かを伝えようとしていた。
「ベロ?みらいはまだ帰ってきていないの?」
「ワンッ、ワンッ」
ベロはいまだになつみに何かを伝えるかのように吠えていた。
だが、なつみにはベロが何か伝えようとしている事は解るが、何が言いたいのかまではまったく解らなかった。
「…ごめんね、ベロ。何を言おうとしているのか解らないわ。やっぱりみらいにしかあなたの気持ちが解らないのかしらね。」
なつみはそんなベロの行動を理解出来なかったので、とりあえずみらいの部屋の様子を見てくる事にした。
なつみは2階へ行き、現在は自分の娘であるみらいが使っており、昔は自分が使っていた部屋へと向かった。
みらいの部屋のドアの前まで行き、なつみはみらいの部屋のドアをノックした。
コンッコンッ…
「みらい?居ないの?」
コンッコンッ…
もう一度ノックしても中の方から返事はなかった。
「みらい、入るわよ?」
なつみはドアをそっと開けた。
「みらい?」
部屋の中を見回したが、電気が付いておらず、どこにも居なかった。
なつみは見回している途中でみらいの机の上を見て、リュックが置いていない事が解り、
まだ一度も家に帰ってきていない事が解った。
「…まだ一度も家に帰ってきていないみたいね…みらいったら一体どこにいっちゃったのかしら?」
みらいはどこかへ行く時は必ずといっていい程、一度家へ帰ってリュックを置いてから出かけていくので、
なつみは不思議に思い、考え込み始めた。
「…まさか、何か事件か、事故に巻き込まれたんじゃっ…」なつみは急に不安になった。
その時、玄関の方から、ガチャッっという音がした。
なつみははっとして、急いで下に降りて、玄関の方へ向かった。
「ただいまー。」
今帰ってきたのは娘のみらいではなく、夫の大介であった。
「大介…」
「ん?どうしたんだ?なつみ、みらいは?」
「それが…居ないのよ。」
「なんだって!?良く探したのか?」
「みらいの部屋以外はまだ…でも、たぶんどこにも居ないと思うわ。みらいの部屋に行ってきたんだけど、
みらい、まだ一度も家に帰ってきていないみたい。リュックが無かったのよ。」
「そんなっ!なつみ、とにかく心当たりのある所に電話してみようっ!」
「え、ええ…」
大介はなつみを元気付けながら、心当たりのある所へ電話を掛け始めた。
まず大介の実家である山口太郎左衛門商店へ電話してみた。
プルルルル……プルルルル……ガチャッ
『はい、山口太郎左衛門商店ですが。』
「その声は大平か!?」
『兄さん!?そうだ、勇平がそちらにお邪魔していませんか!?』
「勇平?来てねぇよ、帰ってきてねぇのか?」
『はい、まだ一度も家に帰ってきていないらしいんです。』
「そうなのか、実はこっちもみらいがまだ一度も家に帰ってきていねぇんだ。」
『えっ!?みらいも帰ってきていないんですか!?』
「ああ、それで…勇平は探してみたのか?」
『はい、でも勇平は仲の良いお友達なんていなかったはずですから、他に心当たりのある所がないんです。
念のため、夢が丘公園の方を探してみましたけど…どこにも居なかったんです。それで今から約1時間前あたり…
5時ぐらいの時に兄さんの家に電話を入れたんですけど、誰も出なくて…それでさっきまで勇平を探していたんです。』
「そ、そうなのか。」
『兄さん、もしかして…今、仕事から帰ってきたんですか?』
「あ、ああ…残業が久しぶりになくて、早く帰って来れたんだけど…帰ってきた時にはなつみが居て、
なつみも帰ってきたばかりで、みらいの行方が解らないんだ。」
『と、とにかく兄さん、コンパクトでみらいの居場所を探してみたらどうですか?
確かみらいは、今もブローチを身につけているんでしょ?』
「あ、ああ。けど…コンパクトは今、会社の研究所にあるんだ。」
『じゃあ取りに行ってきて下さい!みらいの分まで僕が探してみますからっ!』
「解った。頼んだぞ、大平」
『はいっ!』と言って電話が切れた。
「どうだったの?」
「それが…勇平も行方不明らしい。」
「えっ…勇平君も!?」
「ああ。とりあえず…みらいがいつ頃下校したか、大川先生に電話してみる。
その後で俺は、研究所にコンパクトを取りに行ってくる。」
そう言いながら、夢が丘小学校へ電話をする大介
『はい、夢が丘小学校ですが。』
「もしもし、夢が丘小学校1年2組の水木と申しますが、大川先生はまだいらっしゃいますでしょうか?」
『はい、大川先生ですね?まだいらっしゃいますよ、少々お待ち下さい。』
少し待つと……
『はい、お電話代わりました、大川です。』
「大川先生!俺だっ!」
『そ、その声は大介か!久しぶりだなー、んで?どうしたんだ?』
「みらいは今日いつ下校したんですか!?」
『みらいちゃん?みらいちゃんなら、帰りの会が終わった後、すぐに他の女子生徒達と一緒に下校しましたけど…
みらいちゃんに何かあったのかっ!?』
「はい、みらいがまだ家に一度も帰ってきていないみたいなんです。あと隣のクラスの山口勇平もだ。」
『なんだってっ!?心当たりは探したのか!?』
「俺じゃねぇけど、俺の弟の大平がほとんどの所を探したらしいけど、どこにも居なかったらしいんです。」
『大介達は今帰ってきたのか!?』
「はい、俺は今から会社の研究所にコンパクトを取りに行ってきます!
もし、何か解ったら俺んちに連絡をくれっ!なつみが家に残ってるからっ!」
『わ、解ったっ!今日みらいちゃんと一緒に帰った生徒の家に電話して聞いてみる!』と言って電話が切れた。
「なつみ、お前はここで待っててくれ。大川先生からの電話があるといけねぇからな。」
「大介…」
「心配すんなっ!すぐ戻ってくる!それに…みらいだってきっと大丈夫さ!」
「…うん…」
「んじゃ、ちょっとの間、留守番よろしくなっ!」
大介は玄関の方へ行って靴を履き、玄関を飛び出して車の方へ行き、
車に乗り込むとすぐに会社の研究所へと急いで出かけていった。
家に残っていたなつみはというと……
「みらいちゃん……」
不安な気持ちを抱きながら、自分の娘であるみらいの無事を祈りながら、電話を待っていた。
それから30分後…大介が水木家に帰ってきた。
「ただいま!」
玄関を開けて中へ入り、靴を脱いで居間へ行く大介
「なつみっ!大川先生か、大平から連絡は来たか!?」
なつみは黙って、「掛かって来ていない」というふうに首を横に振った。
「そうか…」
「大介、コンパクトは?」
「ここにあるよ。」
ズボンのポケットの中に手を突っ込んでコンパクトを取り出した。
その時、急に電話が鳴り出し、大介となつみはその電話の音にはっとした。
「俺が出る。」大介が電話に出る。
「もしもし、水木ですが。」
『もしもし?大介だな?』
「その声は、大川先生!」
『あの後な、みらいちゃんと一緒に帰った女子生徒の家にすべて電話して聞いたんだが、途中までは一緒に帰っていたらしいが、
その途中から、みらいちゃんだけ別の道だったから、その後の行方は誰も知らないそうだ。』
「じゃあみらいはその途中からの下校中からの行方が解らないって事か…」
『そういうことになるな。しかし…一体どこにいるんだろう?』
「解りません。これからコンパクトで調べてみます。」
『そうか、私も一応周辺を探してみるよ。』
「ありがとうございますっ。それでは…」大介は電話を切った。
「どうだった?」
「下校中の途中から、行方が解らないみたいだ。だからたぶんその後に何かあったんだろうけど…
とにかく、コンパクトでみらいの居場所を探そう!」
「ええ。」
大介はコンパクトの蓋を開けた。そして…
「みらいの居場所を教えてくれっ!」
すると、コンパクトの星の所で光がグルグル点滴し始めた。
しばらくして、点滴が止まったが…
「こ、これはっ!?」
そう、なぜ大介が驚いているのか?
それはコンパクトの星の所がすべて光っており、
正確に一つの方角に示されていなかったからだ。
「…星の所が…すべて光ってる…どういうことなの!?大介!?」
「これは…そんな…まさか…」
大介の中である予感が浮かび上がる。
「大介?」
「……なつみ、これは俺の推測に過ぎないが…もしかしたらみらいは…
今、俺たちが居るこの時代には居ないのかもしれない。」
「えっ……」
「このコンパクトの光の止まり方…みらいがここに居ないから、現在の居場所が示されなかったのかもしれない。」
「どういうことっ!?ねぇっ、じゃあみらいは…一体どこにいるの!?」
「…わからない…だが、もしかすると、この時代とは別の時代の世界に居るのかもしれない。」
「そんな…じゃあみらいはどうなるのっ!?ねぇっ!」
「落ち着けっ、なつみっ!何もまだみらいが帰って来ねぇと決まったわけじゃないんだっ!」
取り乱し始めたなつみをなんとか落ち着かせようとする大介
「でもっ!」
「大丈夫だっ!だって、みらいは…みらいは、俺達の娘だろっ!?だったらみらいの無事を祈って、
必ずみらいがここへ帰ってくるって信じてろよっ!それが…今、俺達親が…出来る事なんだ。」
「大介…」
「少しは落ち着いたか?」
「え、ええ…」大介の言葉で少し落ち着きを取り戻したなつみ
「…もしかしたら…勇平も…みらいと一緒にどこか別の時代の世界に飛ばされたのかもしれねぇな…」
「そんな…」
「ありえなくもない。現に勇平もみらいと同じように昼間からの行方が解らないんだ。
同じような状況に置かれていてもおかしくはない。」
先ほど弟である大平と話した事を思い出しながら言う大介
「………」
「とりあえず…大平にこの事を連絡しよう。」
「ええ…」
その後すぐに大介は大平に連絡を入れるため、山口太郎左衛門商店に再び電話をした。
プルルルル…プルルルル…ガチャッ
『はい、山口太郎左衛門商店ですが。』
「大平、俺だ。」
『兄さん!』
「大平、あの後も少し探したんだよな?どうだったんだ?」
『どこにも居ませんでした…』
「そうか…」
『兄さんの方こそ、どうだったんですか?コンパクト…』
「それなんだけどな、実はさっきコンパクトを使って、みらいがいる方角を示そうとしたんだが、方角が示されなかったんだ。」
『えっ!?どういうことですがっ!?」
「今は俺の推測に過ぎないが、もしかしたら、今みらいはこの時代には居なくて、別の時代の世界に居るんじゃないかって思っているんだ。
あともう一つ、勇平もみらいと同じように別の時代の世界へと飛ばされてしまっている可能性が高い。」
『えっ…どうしてですか?』
「実はこれも先ほどの電話で解ったんだけどな、どうやらみらいの行方もちょうど勇平と同じように、下校後からの行方が解らないんだ。
みらいは同じクラスの女子生徒何人かと途中までは一緒に帰っていたらしく、その後の行方は誰も知らないそうだ。」
『そうなんですか…じゃあ一体…勇平とみらいは一体どこにいるんでしょうね…』
「それは解らない。とりあえず今やれる事をする。」
『今やれる事…ですか?』
「ああ、なんとかしてみらいと交信するんだ。幸いみらいはまだブローチを身につけていたからな。」
『そうですか…解りました。明日そちらにお伺いして良いですか?』
「ああ、構わない。」
『解りました。とりあえずもう一度探してみます。それじゃ…」
そこで電話が切れた。
「大介…」
「心配すんな。なにがなんでも絶対にみらいと通信出来るようにしてみせるっ!」
「でも…」
「…6年前だって、通信出来たろ?」
「え、ええ…」
「今回もきっと繋がるさ。」
「そうね…」
未来の世界では、このような出来事が起きていた……
果たして大介はどこか別の時代の世界にいるであろうみらいと通信する事が出来るのであろうか?
そして、みらいはその通信にちゃんと応答出来るのだろうか?
今回は、みらいちゃんが過去の世界へ飛ばされた後の未来の世界を舞台に創作致しました。
えっと、今回気になる所といえば、やっぱり大平でしょうか。
大平は誰に対しても礼儀が正しい感じがしますよね、大介に対しても。
大平のイメージが違うっと思われた方も中にいるかと思われますが、お許し下さい。
それでは第8話へお進み下さい。