あのパーティーの次の日から気持ちを新たにしてそれぞれ修行に取り組んでいた。
ソラは白蘭との通信の後の話し合いで宣言した通り、ツナ達の修行のサポートを全面的にしていた。
ディーノからツナの修行を丸ごとポイ投げされてしまったので、ツナを中心にしながら合間に他の守護者達の修行のサポートをしていた。
もちろん、自分自身の修行も欠かす事はなく、軽くではあるが送られてきた書類もきちんと片付けながらの日々を過ごしていた。
そして、あっという間にチョイス戦前日を迎えたのであった。
ーー地下8階ーー個人トレーニングルームーー
明日がいよいよチョイス決戦の日だという事もあり、修行は午前中だけとみんなで決め、各自で最終調整を行っていた。
今、この部屋では超化したツナとソラが最終調整の為に実践形式で戦っていた。
空中もありの格闘戦で、当然の事ながらソラの方が優勢にあった。
「もっと素早く考えて動いて下さい!敵は待ってはくれないのですから!!」
「敵に隙を見せてはいけません!隙を突かれてしまいますよ!?」
「超直感にばかり頼っちゃダメだと何度も言いましたよね!?」
注意しながらも攻撃の手を緩めることなく、ツナを追い詰める。
自分の父親相手でも容赦がなく、以前格闘技の指導をしていた時とは違い、
超化している事もあってなのか、修行中はとても厳しいソラであった。
ツナはソラの言葉をしっかり聞きながら、攻撃を受け止めて反撃を繰り出したりしていた。
ソラはツナの攻撃を難無く受け止め、反撃を繰り出しながらも、常に冷静であったが、
ツナは冷静を保ちながらも、少しずつ冷静さを欠いていき、ついに焦りを見せていく。
そんなツナの焦りを見て、隙がやってくるのを見抜いたソラはその時を待っていた。
そして、ソラは隙を見つけると容赦なく攻撃を連続で仕掛け、ツナを床に叩きつけた。
「ぐぁっ!?」
床に叩きつけられたツナが呻き声を上げる。
ダメージが大きかったのか、そのまま超化が解けてしまった。
超化が解けたツナを見て、ソラは戦闘態勢を解き、下に降りてきた。
「いたたっ…」
「大丈夫?パパ」
超化を解いたソラがツナに駆け寄って心配そうに顔を覗き込んできた。
「だ、大丈夫!平気だよ!(ソラちゃんも俺と同じで超化すると性格(?)が
変わってしまうのはもう知ってるけど、やっぱ慣れないなぁ…)」
普段のソラと超化した時のソラとのギャップに慣れないツナであった。
父親であるツナが心の中でそんな事を思っているとはまったく気付かずに、
未だに心配そうな顔をしながらも、晴匣を取り出して開匣するソラ
【うわぁ~…ツナパパ、ボロボロだね~。待ってて、今すぐ治してあげる!!】
晴モモンガのモモはツナの怪我を完全治癒する。
【2人とも、ちょ~っと派手にやったね~!】
「確かに…ちょっとやり過ぎたかな…?」
ソラは部屋を見回してボロボロになっているのを見てそう思った。
今日の修行を始める前から既に少しボロになっていたが、
今の戦いでそれが倍になり、修復に時間が掛かりそうな状態だった。
「うわっ!?結構ボロボロになっちゃってるーっ!?」
モモに怪我を治して貰って復活したツナも驚きの声を上げる。
「ん~…しばらく使えそうにないかなぁ?ここの所、この部屋ほとんど使っちゃってたし。」
「何をしてたの!?…っていうか、なんで俺とやる前からこの部屋ボロだったの!?」
「太陽と戦ってたらこうなった。」
「どんな戦いをしてたらこうなるのぉーー!?」
絶叫するツナの声が部屋中に響き渡った。
ーー地下7階ーー通路ーー
あれから時間が経ち、昼ご飯を食べた後は自分の部屋へ戻り、送られてきた書類を片付け、
今はジャンニーニからツナ達が大食堂に集まっていると聞き、そこへ向かっていたソラ
「今日はもうお昼から修行無しで自由に過ごしていいのに、なんで大食堂に集まってるんだろう?」
ソラは移動している間、ずっとその疑問が頭の中から離れなかった。
大食堂前に着き、中に入ってみると……
そこには、ツナ、リボーン、獄寺、了平、京子、ハル、クロームの7人が揃っていた。
みんな椅子に座ってテーブルの上にそれぞれ置かれた紙と睨めっこしていた。
(……これ、いったいどういう状況なの?勉強?)
ソラは声を掛けず、中の状況を把握しようとしていた。
「10代目!ここは…」
「え…あ…う~ん…」
獄寺がツナの役に立とうと問題の解き方を説明していたが、獄寺の理論的指導はツナには理解出来ず、
結局は自分で頑張って解こうと奮闘していた。
了平も問題を解こうとしていたがなかなか解けず、ツナ同様、獄寺の理論的指導を理解出来ず悲鳴を上げていた。
それに対し、女性陣の3人は協力し合いながらも、順調に勉強を進めていた。
「なんでみんな勉強してるの?リボ兄」
ツナ達の様子を少し離れた所から静観していたリボーンに聞くソラ
「ん?なんだ、来てたのか。見ての通りだぞ。向こうじゃ時間がそれ程経たねぇみたいだが、こっちじゃ結構時間が経っちまってる。
いざ向こうに戻った時に授業についていけなかったら困るだろ?だからこうして勉強会を開いたんだぞ。」
「なるほどね、確かにそれは困るかも。でも…」
「本当は山本もここに呼ぼうと思っていたんだが、スクアーロの奴がまだ修行中だと言ってな、呼べなかったぞ。」
「えっ…まだ修行を続けてるの!?もう明日が決戦の日だよ?」
「決戦までには間に合わせるって言ってたぞ。」
「……大丈夫なのかな~?1人でも欠けたら失格なんだけど…」
ソラはここには居ない山本の心配をしながらも、ツナ達の方へ視線を向けると……
獄寺、京子、ハル、クロームはともかく、ツナ、了平の2人だけなかなか勉強が進めれていない様子だった。
「パパと了兄だけ全然進めれてないみたいだけど…」
「あの2人は獄寺が教えてるぞ。」
「いや、隼人兄の理論的指導についていけてないみたいだけど。」
ソラの言う通り、獄寺は問題の解き方を教えているが、理論的過ぎてついていけてない様子だった。
「アレ、永遠に終わらない気がするよ。」
「芝生頭!何度説明すれば理解すんだよ!?つーか、なんで俺が中3であるてめーの勉強を見なきゃいけねーんだ!!」
獄寺は了平がなかなか理解しないので、元々短気なのも手伝って怒りMAX状態だった。
「この間、了兄に理論的指導は難し過ぎるって言ったのに……」
この間指導の仕方に問題があると指摘したのに、獄寺がまだ理論的指導で
教えているのを見てため息をついてしまうソラ
僅かではあるが、獄寺が以前と説明の仕方を少しだけ変えている事には気づいていたが、それでもまだまだ理論的指導になっていて
了平が理解出来るレベルになっていなかったのである。もちろん、ツナにも合っていない。
ソラは問題と睨めっこしながら叫んでる了平に近づく。
「了兄、どこが解らないの?」
「ん?おぉ、ソラ!来てたのか!」
ソラは了平の隣に座り、プリントを覗き込んだ。
「どこの問題?」
「ここだ。」
解けない問題を指す了平
「ああ、これはね…」
ソラは解らないと言った問題の解き方を了平に解るようにゆっくりと教える。
「……してこうなるから、答えはこうだよ。」
「おぉっ…なるほど!極限理解出来たぞ!!」
どうやらソラの説明を1回で理解してくれたようだった。
了平とソラのやり取りに気づいて見ていたツナ達がその様子を見て呆然としていた。
静観していたリボーンもボーカーフェイスを忘れてしまう程、衝撃的な場面だったようだ。
「ん?みんなどうしたの?」
ツナ達の視線に気づくソラ
「ど、どうしたのじゃないよ!ソラちゃん!!」
「あの芝生頭がたった1回説明しただけで理解しただとっ…!?」
自分が何度説明しても理解しなかったのに、ソラが1回説明しただけで理解した了平に驚く獄寺
「お…お兄さん!1回で理解出来ちゃったんですか!?」
「うむ!タコ頭よりも極限に解りやすかったぞ!!」
「そ…そうなんですか……って、お兄さん!何とも思わなかったんですか!?」
「何がだ?」
「今、ソラちゃんが問題を解いたんですよ!?中3の問題を!」
「あっ…言われてみれば確かにそうだな。全然気付かなかったぞ。」
ツナに言われて初めて気づいたらしい了平
「気付けよ!?これだから脳みそまで筋肉のやつはっ…」
「ソラ、極限なぜ解けるのだ!?」
「ソラちゃん、凄いです!!ハル、ビックリですよ~!」
「ソラ、凄い…」
「ソラちゃん、頭良いんだね!!」
「え?あっ…(了兄が困ってたから普通に教えちゃったけど、今居るみんなは知らないんだった…私が勉強出来る事。)」
みんなが驚いている理由が自分の学力レベルの事だと気づいたソラ
「俺もお前が問題を解いた事には驚いたが、やっぱ中学までの勉強はしてたんだな?
書類整理だけじゃなく資金の管理とかもやってるみたいだからもしやとは思っていたが…」
リボーンは中学レベルの勉強はおそらく出来るのだろうとは思ってはいたが、
実際に見るのは初めてだったので驚いてしまったようだ。
「う、うん…この時代のリボ兄が勉強教えてくれてたから。」
「すごっ……べ、勉強も出来るんだね…ソラちゃんって。」
自分の娘だというソラの凄い所を新たに発見して驚きが隠せないツナ
「おぉっ!そうなのか!!ではこの問題も解けるのか!?」
了平が今のとは違う別の問題をソラに見せる。
「ちょっとお兄ちゃん!?」
「えっと…この問題は……」
ソラは了平が指した問題を見て、また先程と同じようにゆっくりと解き方を教えた。
「……それで、こうなるから……こうなるの。」
「おぉ!そうなるのか!」
「嘘だろっ!?あの芝生頭がまた1回でっ…」
また1回で理解した了平を信じられないような目で見る獄寺
「ソラ、この際だから答えろ。いったいどこまでの勉強を教わった?」
「えっとぉ…その…」
「いいから、答えろ。」
リボーンが銃に姿を変えたレオンをソラに向ける。
「……高校までの勉強はもう終わってて、今は大学の勉強をしながらいろんな分野を勉強中……でした。」
『え…えぇーーっ!?』
ソラのとんでもない衝撃発言を聞いて驚くツナ達
「こ、高校の勉強、もう終わってるの!?」
「しかも、大学の勉強をしてらっしゃるんですか!?」
ツナとハルが驚きながら叫ぶ。
「おめー、俺の予想以上に凄く頭が良いんだな。」
「あは…あはははっ……」
もうどうにでもなれと思いながら、ツナ達から目線を逸らすソラ
「ついでだ。ツナの問題も解いてみろ。」
「えっ!?」
リボーンはツナがしていたプリントをスバっと奪い、ソラに見せながらツナが悩んでいた問題を指す。
「その問題は……」
リボーンに言われるまま、ツナが苦戦していた問題もツナに合わせて解き方を教える。
「あれ…?もしかしてソラちゃん、教える人によって説明の仕方を少し変えてる?」
「その通りだぞ。良く気づいたな、京子」
「リボーン君」
「まぁ…俺も今気づいたばかりなんだがな。」
「…して、こうなるから、答えはこうだよ。」
「な…なるほど。(この問題、獄寺君に教えてもらっても全然解らなかった問題なのに、ソラちゃんの説明が
解りやすかったからなのか、1回で理解出来ちゃった……っていうか、ソラちゃん…本当に物凄く頭良いな…
俺、こんなにダメダメなのにホントに幻滅してないのかな?俺みたいなのが自分の父親で嫌じゃないのかな?)」
自分がダメダメなのになぜか理解出来てしまった事にビックリしていたが、
同時にソラがとても頭が良い事を知ってしまって、つい自分とソラを比べてしまい、
自分が父親でソラは本当に幻滅していないのか本気で思ってしまうツナであった。
(あっ…パパ、また自分の事ダメダメだと思ってる。そんな事ないのに……)
今、ツナが何を思っているのか手に取るように解ってしまったソラ
「おい、お前ら全員手が止まってるぞ。残りの問題が終わるまで解放してやらねぇからな?
急いで終わらせねぇと、せっかく出来た自由時間が全部勉強で潰れてしまうぞ?」
「あ!そうだった!!」
リボーンの言葉で今していた事を思い出し、慌てて残りの問題に取り掛かるツナ
他のみんなも気持ちを切り替えて再び勉強に戻った。
ソラは再び勉強に取り掛かったツナ達の様子を見る。
(ん?パパ、また苦戦してる。う~ん…私がこのまま教えに行っても良いけど、なんか止めといた方がいい気がする。となると…)
ツナがまた苦戦しているのに気づいたソラだったが、自分が行くのは良くない気がして他の方法で手助けしようとしていた。
「う~ん……ここはどうすれば良いんだろう?」
ああでもない、こうでもないと考えながら必死に問題を解こうと奮闘していたツナ
「どこの問題が解らないの?」
「えっ!?(こ、この声は…!?)」
自分の横から聞こえた声に驚き、振り向くツナ
ツナが隣を見ると、いつの間にかそこに京子が座っていた。
「きょ…京子ちゃん!?い、いつの間に!?」
「さっきだよ。それで…どこの問題が解らないの?あっ、私の方はもう終わったから気にしなくて良いからね。」
「う、うん…ありがとう。じゃあ…ここなんだけど……」
「ああ、ここはね…」
京子が身を乗り出した事で、ただでさえ近かった距離がさらに近づき、もう少しで密着状態になりそうな程の距離になった。
(えっ!?きょ…京子ちゃんの顔がすぐ傍に!?俺の心臓の音、聞こえてないよな!?)
自分が想いを寄せている京子の顔が近くに寄ってきた事で、もう心臓バクバクな状態のツナ
京子がそのまま問題の説明に入ろうとしていたので、ツナはストップを掛けた。
「ちょ…ちょっと待って!」
「え?何?」
「きょ、京子ちゃん!そ、その…近い、です。」
「あっ…!?ご、ごめんね!?ツナ君!」
ツナに言われてとても近い距離になっている事に気づいて離れる京子
ツナは耳まで真っ赤になっており、対する京子も近かった事を自覚したからか、少し顔を赤らめていた。
「え、えっと…問題、教えてくれる?」
「う…うん。」
2人はお互いまだ顔が赤いままだったが、プリントを終わらせるために問題に取り掛かり始めた。
「…でこうなるから…答えはこうなるんだよ。」
「え、えっと…ここがこうなって、こうなるから……ご、ごめん!もう1回教えてくれる!?」
なんとか途中までは理解出来たが、残りが理解出来なかったツナはもう一度説明して欲しいと頼む。
「うん、わかったよ。じゃあもう一度初めから言うね?(やっぱり私じゃツナ君やお兄ちゃんに
1回説明しただけで理解させるなんて出来ないな……ソラちゃん、教え方上手いな~。)」
申し訳なさそうにするツナに嫌な顔することなく、もう一度初めから問題を教える京子であった。
さっきまで赤かった顔は、問題を解き始めると経過とともに消え、今はどちらも自然な状態だった。
「私が行くのは良くないと思って代わりにママに行って貰ったけど……何、あの雰囲気。
ホントにアレでパパの片思い中なの?両想いの間違いじゃないの?」
2人の様子を離れた所から見ていたソラは、ツナと京子がとても良い雰囲気なのを見て思った事を口にした。
「残念ながら、まだツナの片思い中だぞ。告白は…まぁ1度死ぬ気弾でしたが、
その時京子はツナの告白を冗談と受け止めちまったんだ。」
「えっ……死ぬ気弾で?…ってことは下着姿で!?」
「ああ、そうだぞ。」
「ああ、そうだぞ…じゃないでしょ!?リボ兄、死ぬ気弾で告白はさすがにやり過ぎだよ!?パパが可哀想!」
「今更過ぎた事言っても仕方ないぞ。」
「……エスプレッソ、燃やすよ?」
無表情でボソッと呟くソラ
「……お前、ツナが絡むとホントに少し変わるよな?(父親大好きなのがビシバシ伝わるぞ。)」
普段優しいソラが今は少しだけ冷酷に見えたリボーン
「そうかな?とにかくあんまりパパが嫌がりそうな事はホントにしないでよ?本気で燃やすからね?」
リボーンに向けて威嚇するように言い放った。
「!……わ、解ったぞ。」
ちょっとだけ背筋が凍るのを感じたリボーンは素直に従うのであった。
京子がツナに教えているように、了平にはソラが教えていた為、2人はなんとか全ての問題をクリアする事が出来、
残りの自由時間を獲得する事が出来たのであった。
あれからまた時間が立ち、リボーンから与えられた課題を終わらせる事が出来たツナ達は残りの時間をそれぞれ自由に過ごしていた。
そして夜になり、小食堂では明日のチョイス戦の為に京子達が張り切ってたくさん作った料理を食べていた。
「あ!?こら、アホ牛!それは俺のだ!勝手に食うんじゃねぇよ!!」
「へへ~んだ!取られる方が悪いんだもんね~!!」
怒鳴る獄寺に反省の色無しでさらに怒らせるランボ
「うむ!極限美味いぞ!!な?沢田!バジル!」
「はい!ホントにどれも美味しいですね!!お兄さん!」
「はい!本当に美味しいですね!!笹川殿!」
仲良く話しながら食べる了平、ツナ、バジル
「みんな喜んでくれてるね?ハルちゃん」
「はいです!頑張って作った甲斐があります!」
みんなが美味しそうに食べているのを見て喜ぶ京子とハル
「クロームさん!これも美味しい!」
「ホントだ…美味しいね。」
食べ物を分け合いながら食べるイーピンとクローム
「ジャンニーニ、あまりお酒飲んじゃダメだからね?」
「はい、解っていますとも!明日は大事な日ですからね!!」
お酒を控えるように言うフゥ太にお酒を飲む量を少なくするジャンニーニ
「はい、リボーン」
「あーん。」
リボーンラブなビアンキがご飯を食べさせ、リボーンはビアンキの好きにさせていた。
みんなはワイワイと楽しそうにそれぞれ食事を楽しでいた。
そんな中でソラはというと……
どこにも混ざらず、ただ黙々と何か考え込みながら食べていた。
明日はいよいよチョイス決戦の日……
みんなこの短期間でさらに腕を上げた。
でも……明日のチョイス戦、なぜか勝てる気がしない。
あんまり当たって欲しくないんだけど……超直感がずっとそう訴えてる。
明日のチョイス戦、何か…良くない事が起きる気がする。
それでも、明日の戦いは絶対負けるわけにはいかない!!
白蘭を倒して、パパ達を平和な過去へ帰さないといけないんだから!!
ソラは明日の決戦への想いを強く抱いていた。
「「ソラちゃん」」
ソラは後ろから聞こえてきた2つの声に気づき、振り向いた。
振り向いた先には、自分と視線を合わせるようにしゃがみ、なぜか心配そうに覗き込んでくるツナと京子の姿が…
(いつの間に……全然気付かなかったよ…)
2人が近づいてきていた事にまったく気付かなかったソラ
「ソラちゃん、どうかしたの?眉間にシワが寄ってるよ?」
「何か考え込んでるみたいだったけど……」
未だ心配そうに見つめるツナと京子
「え…あははっ……大した事じゃないから気にしないで?ただ、本部に送る報告書に
どう書こうかなー?って思ってただけだから。心配させてごめんね?」
「あ…いや、それなら良いんだけど……(今の、絶対嘘な気がする。)」
「そう?(う~ん……なんとなくだけど…今の、嘘…だよね?)」
ツナは超直感で、京子は母親の感(?)でソラが嘘をついてる事を見抜いた。
だが、ソラが話したがらなそうにしていたので敢えて気づかない振りをし、
別の話題を振って、話を続けながらもソラを気にかける2人であった。
ツナ達の様子を見ていたリボーンは何かを考え込んでいたかと思ったら、
何か思いついたのか、企むような笑みを浮かべていた。
料理が全部空っぽになり、今日は全員で片付けを済ませると、
それぞれ小食堂を出ていこうとしたその時、リボーンが待ったを掛けた。
「な、なんだよ?リボーン」
「ツナか京子、おめーらのどちらかソラと2人で風呂に入ってこい。ソラの部屋のバスルームでな。」
「「えっ!?」」驚いた声を出すツナと京子
「ちょっ…リボ兄、何企んでるの!?」
「ソラ、おめーは少し黙ってろ。」
リボーンは黙るように言いながら、ビアンキに目配せする。
ビアンキは事前に何か言われていたのか、リボーンのその合図でソラの口を塞いだ。
「でな、風呂に入った後は2人ともソラの部屋で3人一緒に寝ろ。ソラの部屋のベッド、大きいから3人でも寝られるぞ。」
「えっ……えぇーーっ!?」
ツナはリボーンの提案に驚き叫び、京子は叫びこそはしなかったが。驚いた表情を見せる。
その後2人はお互い向き合い、そしてどちらも顔を真っ赤にさせ、すぐに恥ずかしくなったのか、
慌てて視線を逸らすようにそっぽ向いてしまった。
「リ、リボーン!お前、急に何言い出すんだよ!?(ソラちゃんだけじやなくて、京子ちゃんも一緒に寝るだなんてっ…
さすがに無理だよ!?絶対気になって眠れないよ!?)」
京子の事は好きだが、さすがにいきなり一緒に寝るのは抵抗があるツナ
「……リボーン君、どうして急にそんな事を?」
「なんとなくだぞ…っと言いてぇが、ソラの為だと言えば納得するか?」
「ソラちゃんの為?」
「ああ。京子、おめぇもなんとなく気づいてんだろ?ソラが不安を抱えている事をな…」
リボーンのその言葉に「ああ、なるほど。」っと納得してしまったツナと京子
「まぁそういう事だぞ。」
「何がそういう事なのさ!?」
ビアンキに口を塞がれていたソラが自力で脱出し、リボーンにツッコむ。
「チッ……もう脱出しやがったのか。」
ソラが思っていたより早くビアンキから逃れた事を残念がるリボーン
「舌打ちしないでよ!?っていうか、残念がるなぁっ!!とにかく!私は全然何とも無いんだから今の話は無し!!
だいたい3人で寝るとか無理に決まってんじゃん!!(結婚どころか、付き合ってもいないのにっ!)」
(寝たい気持ちはあるみてぇだな…相変わらず素直じゃねぇぞ。)
中学生である2人の事を気遣ってもいるが、本心では3人で寝たいという想いがなんとなく伝わってきたリボーン
素直に一緒に寝たいと言わないソラに呆れてため息ついた後……
「3人で寝たいって言ったのはおめぇだろ?ソラ」
「……へ?」
「なんだ?もしかして覚えてねぇのか?高熱を出してツナと京子に看病してもらってた日に自分が言った事を…」
「私が…言った事?」
ソラは首を傾げながらも、その時の自分の言葉を思い出そうとする。
10年前のツナと京子に対して、心を開き始めたあの日の事を……
「俺はあの時お前にこう言ったぞ。“おめぇ自身はどうしたいんだ?ツナと京子に何を望む?”ってな…」
「あっ!?」
リボーンのその言葉を聞いてその時の自分の言葉が頭の中でフラッシュバックした。
『私はっ……私は、パパとママはいつでも一緒じゃないから、一緒に居られる時間を大事にしてきた。一緒に食事が出来た時も…
一緒にお出かけした時も…お風呂に一緒に入れた時も…一緒のベッドで寝た時も……他からしたら、小さな事かもしれないけど、
私はその時間をいつも楽しみにしてた。その時だけは甘えていいんだって思ってたから……』
『……パパやママと……一緒に寝たい。2人の傍だと、今みたいに安心出来るから……
今まで、ずっとそうだったっ……2人のどちらかでもいい、そうすれば、悪い夢を見なくて済むから……』
「言ったっ……確かに言ったね。リボ兄に言われるまですっかり忘れてたよ。」
「あの時はおめぇ、自分が2人の子供だって事を隠してたから無理だったが、今なら大丈夫だろ?」
「いや、大丈夫じゃないから!?正体解ってもそれだけは無理だからね!?」
今のツナと京子はまだ付き合っていないから無理だと言うソラ
「…ってソラはこう言っているが、どうする?おめーら。」
「お…お、俺は京子ちゃんが大丈夫なら…」
「わ…私も、ツナ君が大丈夫なら…」
一緒に寝る事には確かに抵抗があるが、それよりもソラが心の底から自分達と一緒に
寝たいと願っているのなら叶えてあげたいという想いの方が勝った2人であった。
「だそうだ。2人は良いって言ってるぞ。」
「良いわけないでしょっ!?」
「おめー、頑固だな…」
なかなか素直にならないソラに呆れたようにため息をつくリボーン
「……京子ちゃん」
ソラとリボーンのやり取りを見ていたツナが京子に小さな声でこっそりと呼び掛ける。
「な、何?ツナ君」
「京子ちゃんがソラちゃんとお風呂に入ってきて?」
「えっ?」
「俺じゃなくて、京子ちゃんが行った方が良いような気がするんだ。なんとなくなんだけどさ…」
ツナは「なんとなく」と言っていたが、それはおそらく「超直感」がそうした方が良いと直感していたのだろうと思う。
「ツナ君…」
「それにこういう時はさ、父親なんかより、母親と一緒に居た方が凄く安心出来ると思うんだ。」
「……解った、任せて!」
「うん、任せるね。それで…その後の事なんだけど……」
「う、うん…」
「本当に、大丈夫?一緒で。」
「ツナ君の方こそ。」
「お、俺は大丈夫だよ。た、確かにこんな事初めてだからすぐには眠れないかもしれないけど…」
「そっか。ツナ君も同じなんだ?」
「えっ!?」
「私も大丈夫だけど、一緒に寝るのは初めてだからすぐには寝れないかも?」
「そっか…京子ちゃんもだったんだ。」
「「でも」」
「「それでも俺は…/それでも私は…」」
「「ソラちゃんが望むなら、その願いを叶えてあげたい!」」
「「俺はソラちゃんの父親だから…/私はソラちゃんの母親だから…」」
今の自分達はまだ中学生だし、付き合ってもいない。だけどソラにとって自分達は親。
初めて会った時からなぜか気になって放っておけなかったけれど、正体を知った事でその理由が解った。
未来の娘だと解って、親として何かしてあげたいという気持ちが芽生え始めていた2人は、
ソラの望みを心の底から叶えてあげたいと思ったのであった。
「決まりだね?」
「うん!」
「じゃあ俺は風呂に入ったら、6階のエレベーター前で2人が来るのを待ってるから!
あっ、別に急いだりしなくて良いからね?むしろゆっくり入っておいでよ!」
「解ったよ!ツナ君」
ソラがリボーンの提案と却下させようとしている間に、ツナと京子の2人はどちらがソラと一緒に入るか決め、
そして一緒に寝る事も了承し合っていたのであった。
「おめー、いい加減素直に認めやがれ。」
「いや、認める認めないとかの前に今の2人にそれは無理だって言ってるの!!」
「無理かどうかは当人達が決める事だぞ。」
「「その通りだよ!」」
「えっ…!?」
「リボーンの提案通り、ソラちゃんはこれから京子ちゃんと2人でお風呂に入ってくる事!」
「そしてその後は、ツナ君を迎えに行って、ソラちゃんの部屋で私達3人一緒に同じベッドで寝る事…だよ!」
ツナと京子は満面の笑顔でソラに決めた事を告げた。
「へっ!?」
「フっ…どうやらおめーが俺を止めている間に2人で決めちまったみてぇだな?」
「ちょ…ちょっと2人とも!なんでそんなあっさり一緒に寝る事を受け入れちゃってるの!?
2人ともまだ付き合ってないんでしょ!?無理してない!?」
「「全然。」」
「(ガクッ)普通は抵抗する所だよ!?付き合ってもいないのに、男女で一緒に寝るって事なんだよ!?」
男女が一緒に寝る事は付き合っていなかったら普通一緒に寝る事を抵抗するはずだと、
それを解ってて言っているのかと2人に聞くソラ
「う~ん、確かにさっきまでは少し抵抗は感じてたけど……」
「うん、それよりもソラちゃんが一緒に寝たいっていうそのお願いを叶えたいって気持ちが強かったんだ。」
「だから今はあまり抵抗を感じなくなっちゃったんだ。(まぁ、京子ちゃんが近くに居て寝られるかって聞かれたら
さすがに絶対大丈夫とはハッキリ言えないんだけどね…)」
「私もツナ君と同じかな。」
「ソラ、もう良いだろ?」
「………本当に、大丈夫なの?」
少しの間黙ってツナと京子を見つめていたが、意地を張るのを止めたのか気を緩めた。
ソラの瞳が本当にそのお願いをして良いのか?っと訴えかけているように見えた2人は……
「「大丈夫だよ!」」
満面の笑顔で応えるツナと京子
「………じゃあ、一緒に寝たい…です。」
2人の笑顔を見て大丈夫だという事が解って嬉しくなり、ソラはもじもじしながらも、
あの時の自分が本当に望んでいた事をはっきりと言葉にして伝えた。
「「良いよ!一緒に寝よう!!」」
お互い目で合図し合い、また同時に応える2人
「決まりだな。(ソラが何に対して不安がっているのか解らねぇが、2人が居れば少しは不安が消えるだろう。)」
やはりリボーンはソラの為にこの提案をしていたようだ。
なんとか上手くいってよかったとホッと胸を撫で下ろしていたのであった。
ーー地下14階ーーソラの私室ーーバスルームーー
ソラは京子と一緒にお風呂に入っていた。
今は頭や体を洗い終え、一緒に湯船に浸かっていた。
「ねぇ、ソラちゃん」
「何?」
「パーティーの時に私とツナ君が話し掛ける直前、本当は何を考えていたの?」
「えっ」
「あの時、ソラちゃんは報告書にどう書くか考えていたって言ってたけど…それ、嘘だよね?」
(バレてる!?)
「あの時のソラちゃん、なんか不安そうな顔をしてた。だからツナ君と一緒に声を掛けに行ったんだよ。
ツナ君、言ってたよ?私達が近づいてるのに、ソラちゃんが全く気付かないなんて可笑しいって。」
(あっちゃー…この様子だと、パパにも嘘がバレてるみたいだね。)
「ねぇ、本当は…何を考えていたの?」
「……別に大した事じゃないから気にしないで。」
京子の顔を直視出来ず、背中を向けながら、嘘がバレても隠すソラ
そんなソラを見て、京子は後ろからそっとソラを自分の方へ抱き寄せた。
「あっ…」
京子は抱き寄せたソラを優しく包むようにしながらも、何も言わずただ沈黙する。
まるで、ソラが自分から言ってくれるのを待つかのように……
京子の暖かい温もりに触れ、優しく包み込まれている事で、
気を張っていたソラはだんだんと気を緩めていく。
「明日のチョイス戦……なぜか勝てる気がしない。」
ボソボソとした声だが、話しだしたソラ
「えっ?」
「超直感が……ずっとそう訴えているんだ…明日のチョイス戦で、何か良くない事が起きるって…」
(超直感って確かツナ君が言ってた直感の事だったよね?)
黙ってソラの話に耳を傾けながらも、ツナから超直感の事を聞いた時の事を思い出す京子
「私の超直感は…物凄く良く当たる。パパなんかよりも凄く感が働いて、今まで外れた事がない。だから…」
「だから、不安になってたんだね?明日のチョイス戦に勝てないんじゃないかって…」
「うん…」
「私は相手がどれだけ強いのか全然解らないけど……きっと大丈夫だよ、ツナ君達なら…」
「ママがそう言うと…本当に大丈夫な気がしてきたよ。不思議だな…いつも「大丈夫」って言葉に助けられてる。
ママの声だからなのかな?いつもその言葉で不安な気持ちとか、いつの間にかどこか行っちゃう。」
「そっか。」
「……もう少し、このままで…」
「うん。」
京子はソラが良いと言うまで、ずっと抱きしめていたのだった。
お風呂から出た2人はツナを迎えに行った後、またソラの私室へ戻り、
ソラを真ん中に川の字になってベットへ寝転んだ。
寝転んですぐの頃は3人でお話をしていたが、2人と一緒に寝ている事もあってか、
思っていたよりも早くに寝付いていたソラであった。
「ソラちゃん、寝ちゃったね。」
「うん。」
「ねぇ、京子ちゃん」
「何?ツナ君」
「ソラちゃん…いったい何に不安を抱いていたの?お風呂に入っている間に何話してたの?
今のソラちゃんからは不安が感じられないんだけど?」
「うん、それがね…」
京子は話した、さっきお風呂に入っている時にソラから聞いた事を…
「え?超直感が?」
「うん。ソラちゃんが言うには、ツナ君よりも良く当たるんだって。」
「そっか…でも、それだけ明日戦う相手が強いって事だろうね。」
「うん、そうだね。」
その時、ソラが身動きして京子にしがみついてきた。
「「あっ…」」
「ソラちゃん、3人で寝ててもこうなっちゃうんだね。」
そう言いながら、起こさないようにそっと抱きしめ、頭を撫でる京子
「ん~…なんかちょっとだけ悔しいかも…俺の方に来なかったの。
でも…そうしてると、京子ちゃん…本当にお母さんみたいだよ。」
「えっ…」
「あっ!?えっとっ…」
思わずボロっと言ってしまったが、今の言葉を思い返して恥ずかしくなったツナ
「あ…ありがとう、ツナ君。今はそう言って貰えて嬉しいよ。だって私はソラちゃんのお母さんだから…」
「う、うん…どういたしまして。お、俺達もそろそろ寝ようか?」
「うん、そうだね。あ…」
「何?」
「ツナ君、明日は…頑張って!でも、無理はしないで…」
京子の心配そうな顔と「無理しないで」という言葉を聞いて、メローネ基地突入前にも京子から
同じように言われた時の事が頭の中でフラッシュバックしたツナだったが…
「うん!明日は絶対に勝って、この時代に平和を取り戻して、そして……一緒に過去へ帰ろうね?京子ちゃん」
「うん!」
「じゃあ…おやすみ。京子ちゃん」
「おやすみなさい。ツナ君」
明日はいよいよミルフィオーレファミリーとの決戦……チョイス戦の日だ。
この短期間の間にツナ達はそれぞれに課された修行をこなしてレベルアップさせる事が出来ただろう。
だが、それでも真六弔花がどんな戦いをするのか、どれだけ強いのかを全く知らない。
少なくとも、ツナ達がメローネ基地で戦ったよ人達りも遥かに強いだろうという事は容易に予想がつく。
決して油断してはならない未知の敵……果たしてツナ達は明日のチョイス戦に勝つ事が出来るのであろうか?
今回のお話はツナ、京子、ソラの親子3人を絡ませてみました。
ちょっとツナ京っぽい(?)所も書いてみましたが、どうでしょうか?
ツナ京大好きですが、私自身恋愛経験が全くないので上手く書けてるか本当に自信無いんですよね。
まぁとにかくこれでチョイス前の話は終わりです。
次からはチョイス戦のお話になります。
それでは標的81へお進み下さい。