京子の発案で開かれたソラの誕生日パーティー
みんなわいわいと楽しそうにお喋りしながら食事をしていた。
そんな中、ソラはみんなの輪からランボとイーピンを他のみんなに気づかれないように
素早く連れ出して少し離れた所へ移動していた。
「ソラさん?」
「ソラ、いきなり何するんだもんね!?ビックリしたじゃんかぁ~!!」
困惑気味なイーピンと怒るランボ
「いきなりごめんね?2人とも。」
「イーピン、気にしてない。」
「なんでオレっち達を連れ出しただもんね?」
「大した事じゃないんだけど……2人に確認したい事があってね。」
「「確認したい事?」」
「うん。ママや他のみんなは呼び方を変えてって言ってたけど、
2人だけは何も言わなかったからさ。2人は呼び方このままで良いの?」
ソラのその言葉を聞いて、ランボとイーピンはお互いに顔を向き合わせる。
少し間を置いてから向き直った2人はソラに答えた。
「今のイーピン、ソラさんより年下。だからこのままで良い!」
「ランボさんもだもんね!」
「……そっか。」
「「でも」」
「でも?」
「いつかそう呼ばれるように、イーピン達もっともっと強くなる!」
「ランボさんは絶対ぜ~ったい強くなるんだもんね!」
「えっ…」
「イーピンが大きくなった時、ソラさんにお姉さんと思ってもらえるように頑張る!」
「ランボさんだってイーピンよりもも~っと頑張るんだもんね!!」
今はこのままだけど、いつか呼んでもらえるように強くなると言う2人
「いつかって……まだ会えるかどうかも解らないのに……」
そう、10年前のツナ達が来た時から、既に歴史は変わり始めているはずなのだ。
だから自分が生まれてこれない未来になってしまう可能性もある。
本当にこの先の未来で出会えるかどうかは現地点では解らない。
もしかしたら会えないかもしれないというのに、2人は将来に取っておくと言う。
ソラは2人が言ってくれた言葉はとても嬉しかったが、出会えない可能性が頭の中に過ぎって
悲しい顔する所が浮かび上がり、とても心から素直に喜べなかったのだが…
「イーピン達、待つ!いつかソラさんに出会えるまでずっと修行しながら待ってる!!ね?ランボ」
「あったり前だもんね!ランボさんも待つもんね!ソラが待つなって言ったって待つもんねー!!」
2人は幼いながらも、ソラが言っていることをなんとなく理解し、2人は出会えるまで待つと
ソラに自分達の想いを伝えた後、そのまま再び輪の中へと戻っていった。
「ランボ兄……イー姉……ありがとう。少しだけ…信じてみるよ、その未来を…」
輪の中へ戻っていく2人を見つめながら小さな声で呟くソラ
2人が本当に将来自分と出会えるかどうかは今の段階では解らないが、自分が兄と姉と慕っている10年前の幼き2人の想いが心に響き、
2人のこれからの未来で巡り会える日が来る事を少しだけ信じてみようと思ったソラであった。
時間が随分と経ち、そろそろお開きにしようとしたその時……
「ソラちゃん!」
突然ハルが大声でソラを呼ぶ。
「な、何?ハル姉」
「ハル、ソラちゃんにお願いがあります!!」
「お願い?(なんか少しだけ嫌な予感がするんだけど…)」
「今度こそ、ハル達と一緒にお風呂に入りましょう!!」
「ごめんなさい!」
熱意の篭ったハルのお願いをソラは前回同様、考える間もなく、あっさり断ってしまった。
だがしかし、今回は前回とは違い、ハルは落ち込むどころか、まだまだ引きません!とでも言うように
瞳をキラキラさせたまま、さらにソラに詰め寄ってきた。
「今回は簡単には引きませんよ~!ツナさんと京子ちゃんの子供だと解っちゃったら尚更です!!」
「私も…ソラと一緒に入りたい…」
「イーピンも!!」
ハルだけではなく、クロームとイーピンまで一緒にお風呂に入りたいと言い始めた。
「う゛ぐっ…(なんで2人まで加わっちゃうの!?)」
ソラは前回と違う流れにまだ表情に出てしまう程ではないが、少し戸惑い始めた。
「ソラ、ハル達と入ってらっしゃい。」
「ちょ…ビアンキ姉!?」
ビアンキの行動に驚くソラ
「もう良いのよ、隠さなくて…」
「へ…?」
「もうハル達は知ってるのよ。昨日、あなたの服を着替えさせた時にね。」
「なっ…そ、それって…!?」
ビアンキの言葉を聞いて、ソラは今まで自分が隠し通していた背中の傷痕をハル達がもう見て知っている事を初めて知る。
「どうしてっ…どうして見せたの!?ビアンキ姉!!」
「見せるつもりはなかったわ。でも…京子がその時既に知っていたのよ、あなたの背中に傷痕がある事を…」
「えっ!?」
「10年前の世界に戻っていた時、大空のアルコバレーノ…アリアと話していた時にツナがボロっと言ってしまったのを聞いたんですって。」
その言葉を聞いて、ソラは思わずビアンキから視線をツナに移した。
「ご…ごめん!ソラちゃん!!」
両手を合わせてソラに謝るツナ
ソラはそれに対して返事を返さないまま、再びビアンキに視線を戻した。
「京子は自分から着替えさせるのを手伝うって言ってきたの。もちろん、知っていても最初は見ないように言ったわ。
でも京子は自分がソラの母親だからと言って引かなかったの。あなたの事をもっと良く知る為にも必要な事だと思ったんでしょうね。
ハル達も京子に感化されてなのか、ソラの事をもっと良く知りたいと思って背中の傷痕の事を知ろうとしたの。」
そこまで言われてしまえば、もうソラには返す言葉がなかった。
ほんの少しだげ時間を巻き戻し、ソラとビアンキが背中の傷の事で話している間に
10年前のメンバーの男性陣の間では……
「なぁ、ツナ」
山本がこっそりとツナに声を掛けてきた。
「な、何?」
「今の話…ソラの背中に傷痕があるってマジか?」
「えっ…あ~…うん。」
「10代目、それって…いつ頃の傷なんですか?」
「京子達に見せられない程酷い傷なのか?」
「沢田殿、拙者も今初めて傷痕の事を知りました。知っている事、教えて頂けませんか?」
山本がツナに傷痕の事を聞いてるのが聞こえてか、今初めて傷痕の事を知った獄寺、了平、バジルが話に加わってきた。
雲雀も傷痕の事は知らなかったのか、話には加わりこそしないものの、ツナ達の話に耳を傾けていた。
「知っている事って言われても…俺も良く知らないんだ。見た所、最近出来た傷じゃなくて、右肩から左腰まで斜め一直線に
切り傷?が入ってて……傷は塞がってるけど、今もたまに痛めるみたいで痛み止めの薬を使ってるって事ぐらいしか…」
背中にある傷の事はツナも詳しくは知らないが、知っている事を教えた。
「結構前の傷…なんですか。」
「右肩から左腰まで斜め一直線か……それはとてもではないが、極限に京子達には見せられないな…」
「傷が塞がった今も薬をっ…」
「そうか…だからソラの奴、今まで笹川達と一緒に風呂入ってなかったのか。」
獄寺達はツナの話を聞いてソラが今まで京子達とお風呂に入っていなかった理由が解った。
「俺もあの傷の事はずっと気になってたんだ。どうしてまだ小さいソラちゃんにあんな大きな傷があるのか?って……」
「なぜ聞かなかったのだ?」疑問を抱く了平
「リボーンにあの傷の事は聞かない方が良いと言われたんです。ソラちゃんにとって1番触れて欲しくない事だろうからって…」
「小僧がそう言っていたって事は…その傷はソラにとって1番思い出したくない記憶があるってなのな?」
「もしかしたら…その傷はマフィア絡みで傷つけられたものなのかもしれませんね?」
「確かに……拙者もその可能性が1番高いと思います。普通に暮らしてたなら、そんな酷い傷は出来ないでしょうし。」
「もしそうなのだとして、なぜそんな酷い傷が出来ているのだ!?10年後の俺達は極限にソラを守りきれていなかったというのか!?」
「お、落ち着いて下さいよ!お兄さん!!(でも確かにそうだ。獄寺君やバジル君が言った通り、もしあの傷がマフィア絡みが原因なんだとしたら、
どうしてソラちゃんの背中にあんな酷い傷があるんだろう?10年後の…大人の俺達はいったい何をしていたんだよ!?)」
そんな会話をしている間に、いつのまにか話が止まって、ソラが黙り込んでしまっている事に気付いたツナ達。
(話を纏めると、あの子の背中には消えない傷があって、今でも時々痛むから痛み止めを使用。そしてその傷が酷い為に
今まで隠していた…っという事か。10年後の僕からの手紙ではそんな事一言も書かれていなかった。
つまり、過去から来た僕が知る必要のない事、なんだろうけど……本当にこの時代の僕はいったい何やっていたのさ?
あの子の背中に大きな傷を残させるなんてっ…)
雲雀はツナ達の話を纏めながら、1人であれこれと頭の中で考えを巡らせていたのだった。
ソラが何も言い返さずに黙ってしまった後、少しの間沈黙が続いていたが……
「ソラちゃん、私も一緒にお風呂に入りたいな。」
沈黙を破るように、京子がソラに話し掛けてきた。
「ママ…」
「背中の傷が酷いから、私達に見せないようにする為に今まで隠してたんだよね?ありがとう。
でももう隠さなくて良いんだよ?だから…一緒に入ろうよ?」
「でも…」
もう隠す必要が無いのは解ったが、それでもすぐに頷く事は出来なかったソラ
なぜなら、背中の傷痕は自分でもかなり酷いと思ってしまう程の傷。
そんな傷を例えもう知っているとしても、見せてしまう事を躊躇っていた。
「……この時代の私とは…その傷が出来てからは一緒にお風呂に入ってない?」
京子のその問いかけにソラは黙ったまま首を横に振る。
「じゃあ、今みたいにソラちゃんが一緒に入るのを遠慮してたらどうしてた?」
「そ、それは……」
ソラは京子のその言葉である出来事を思い出す。
2年前、まだ背中の傷が塞がったばかりの頃の事を……
ーー回想ーー
傷が塞がってもまだまだ本調子ではなかったソラは、少しでも自身への負担を減らし、早く回復するようにする為と言われて
お風呂は必ず誰かと一緒に入っていた。そして今日も……
『ソラ、そろそろお風呂に入ろうか?』
京子のその言葉にソラは首を横に振る。
『まだ入りたくない?』
その問いかけにまた首を横に振り、メモに伝えたい事を簡単に書いて京子へ渡した。
それを読んだ京子は……
『1人で入るって……ソラ?』
様子の可笑しいソラを心配する京子
ソラは一緒に入らない理由は伝えず、そのまま京子から目を逸した。
『……ソラ、ごめんね?』
目を逸らしてしまったソラを少しの間見つめた後、そっと抱きしめながら呟く。
『傷を見るたびにママが自分を責めていたから、突然1人で入るって言い出したんだよね?』
ソラは言わなかったが、突然1人で入ると言った理由が自分にある事に気づいて謝る。
『ママが苦しい思いをしないようにっていう、その優しい気持ち…嬉しいよ。ありがとう。』
さらに優しく、けれど包み込むように抱きしめる京子
少ししてからソラを離し、目と目を合わせる。
『でもね、一緒に居られる時は一緒にお風呂に入るって約束したでしょ?だから1人で入るのはダメだよ。』
少し怒ったような顔をしながらも、優しい声で諭す京子
ーー回想終了ーー
「1人で入るのはダメって…言われた。」
「うん、やっぱりね。私も1人じゃなくて一緒に入って欲しいな?せっかく一緒に居るんだから…」
「京子ちゃんの言う通りです!!」
「イーピン、一緒に入りたい!!」
「ソラ、一緒に入ろう?」
「私も久しぶりにソラと一緒に入りたくなったわ。」
京子の後に続くように、他の女性陣がソラに声を掛けていく。
「ソラちゃん、一緒に入ろう?」
京子からの誘いに、今度はすぐに断る事はなく、少し考えてから首をゆっくりと縦に振るソラであった。
「ソラちゃんがやっとOKしてくれました!!ハル、嬉しいです!!」
ソラがやっと自分達とお風呂に入る事をOKしてくれたのが嬉しくてテンションが上がるハル
ハルだけではなく、クロームとイーピンも嬉しそうだった。
「京子ちゃん、ハル」
今まで黙って成り行きを見守っていたツナが声を掛けてきた。
「何?ツナ君」
「何ですか?ツナさん」
「後片付け…洗うのも俺達が全部するから、今からお風呂に入っておいでよ!ソラちゃんの気が変わらない内にさ。」
「え?でも…」
「修行で疲れていますよね?」
ツナ達の心配をする京子とハル
「片付けぐらいなら大丈夫なのな!」
「うむ!極限任せろ!!」
「10代目のご好意を無駄にすんじゃねぇよ。」
「拙者達にお任せ下さい!」
心配する2人に片付けは自分達に任せろと言う山本、了平、獄寺、バジル
「みんなもこう言ってるし。だから…行って?」
「解ったよ、ツナ君。じゃあ…お言葉に甘えちゃおうか?」
「はいです!ツナさん、みなさん、ありがとうございます!!」
「それじゃ、さっそく入りに行こうか?」
ツナ達に後片付けを任せる事にした京子がソラに声を掛ける。
「うん、部屋に服を取りにいってから行くね。」
「わかった。じゃあまた後でね!」
ソラは服を取りに行く為、小食堂を後にし、地下14階へ移動し始めたのだった。
服を取りに行った後、地下7階の大浴場へ向かい、京子達と合流して風呂に入ったソラ
背中の傷の事でなかなか服を脱ごうとしないソラを見兼ねて、京子が服を脱がせたり、
お風呂に入れば、ハル達が今までの分とばかりにソラにスキンシップを取ってきたり、
自分で頭や体を洗おうとしたら、それを見つけた京子によって洗われる姿があったりと…
ここまで賑やかな入浴はとても久しぶりだったのか、いつの間にかとても楽しそうにしているソラの姿があったとか。
10年前はまだ幼いランボとイーピン
前回のお話で呼び方が変わらなかった2人と触れ合わせてみました。
話から解るように、ちょっと5歳にしては賢過ぎるかな~?とか、
イーピンはともかくランボはとにかくアホなはずなのに?とか、
いろいろ突っ込む所があるかもしれませんが、そこはスルーでお願いします。
それでは標的80へお進み下さい。