ツナ達がソラの正体を知った次の日の昼頃…
ーー地下14階ーーソラの私室ーー
「怪しい…みんな、何か隠してる。」
ソラは、朝からアジトに居るみんながこそこそと何かをしているのを見てそう思っていた。
「う~ん…今日、誰か来る日だったっけ?それとも…ただ単にパーティーがしたいだけかな?」
ソラはみんなの様子を見て、またパーティーをするのでは?…っとすぐに予想ついたが、
肝心の何の為にするパーティーなのかが全く解らずに首を傾げていた。
「私に隠し事したって大抵見破られると知っているはずのビアンキ姉やフゥ太兄までもが隠れて何かしているみたいだし。
う~ん……まぁ、いっか。そんな事は今は忘れてさっさと書類済ませてしまおう。でないと修行が思いっきり出来ないし。
あ、でも修行を始める前に、まず死ぬ気の炎のコントロール調整をして置かないとね、またすぐに暴走を起こしてしまわないように…」
何のパーティーなのかは気になるが、そんな事よりも書類や修行の方を優先させるソラであった。
しかし、なぜ修行を始める前に死ぬ気の炎のコントロール調整が必要なのだろうか…?
ーー地下7階ーー食堂ーー
そこには、修行中のはずのクロームも含めた女性陣+ランボが集まって何かをしていた。
「京子ちゃん、こっちはこれでいいのでしょうか?」
「うん、それで良いよ。あ…ハルちゃん、クロームちゃんが苦戦してるみたいだから、そっちを手伝ってあげて?」
「了解です!!」
「ありがとう。」
「イーピン、お手伝い頑張る!!」
「ランボさんも頑張るんだもんね~!!」
「京子、頼まれてた食材を持ってきたわ。確認してくれる?」
「あ…ビアンキさん、ありがとうございます!」
どうやら京子の指示に従いながら、みんなで協力していろんな料理を作っているようだ。
「そういえば…京子、大丈夫?」
ふと何か思い出したのか、京子に話し掛けるビアンキ
「え?何がです?」
「何がって…寝不足でしょ?倒れないか心配なのだけれど…」
京子が少し疲れているように見えて心配なビアンキ
「ああ…それでしたら大丈夫ですよ。」
確かに少し疲れているが、大した事ないと言う京子
「京子ちゃん、本当に大丈夫なんですか?ハル、とっても心配です!!」
「私も…」
「イーピンも!」
「ランボさんもだもんね!」
大丈夫だと言う京子に、ハルとクローム…それから幼いイーピンとランボまでもが心配する。
「ホントに大丈夫だよ。だって1番大変なのは……私じゃなくて、ソラちゃんだから…」
「確かにあの子もそうだけれど…」
「ビアンキさん、昨日みたいな事……普段から良くあるんですか?」
「……いいえ。最近は全く無かったわ。確かにアレがまだ治る前は良く昨日みたいな事が起きていたらしいわ。
傷口が塞がっても、しばらくの間はずっと痛みを訴えていてね、少しずつ薬で改善させていったのよ。」
「でも、その薬は…」
「ええ…効きにくくなっているみたいね。」
ビアンキ、京子、ハル、クロームは昨日の夜中に起きた出来事を思い出す。
ーー回想ーー
夜中の2時頃、京子達が寝泊まりしている部屋である異変が起きた。
それに1番早く気付いたのは、ソラと一緒に寝ていた京子だった。
眠っていた京子は物音を聞いて目が覚め、自分の腕の中で寝ていたはずのソラが居なくなっている事に気づき、
体を起こして周りを見回そうとしたが、すぐに出入り口の方へ向かって静かに歩くソラを見つけた。
『ソラちゃん?』
『あ……ごめんなさい、起こしちゃった?』
きっとさっきの物音で起こしてしまったのだろうと思い、謝るソラ
『ううん、気にしないで。それより…どこへ行くの?こんな夜中に…』
そう言いながら、京子はベッドから降りて、ソラの傍まで行ってしゃがむ。
しゃがんだ後で、ソラの顔を見た京子はすぐにソラの異変に気づく。
『あれ…?ソラちゃん、なんか…顔が赤くない?』
明かりが消えていて良く見えなかったが、近くに来て初めてソラの顔が赤くなっている事に気づく。
それだけではなく、息遣いも少し荒いような気がした京子であった。
『あ…っ…えっとっ…』
息苦しいのか、上手く喋れない様子。
京子はソラの両頬にそっと手を添え、額と額をくっつけた。
『やっぱりっ…熱がある…』
『えっとっ…これはっ…』
この熱の事を説明しようとしているみたいだったが、思ったより息苦しいのか、上手く伝えられないようだった。
『えっと…怖い夢でも見ちゃったかな?』
ソラが何か言おうとしているのは解るのだが、上手く喋れないのを見て、ソラの様子から、
こんな夜中に起きてしまったのは熱のせいで悪い夢を見たからなのかと思った京子
京子のその言葉を聞いて夢の事を思い出してしまったのか、少しだけ肩がビクついたソラ
『そっか、見ちゃったんだね。』
ソラのその僅かな変化を見逃さなかった京子
ソラをそっと抱き寄せようとした京子だったが…
『いたっ…』
京子の手がソラの背中に触れた途端、ソラは悲痛な表情を浮かべ、前のめりに倒れかけた。
『ソラちゃん!?』
倒れかけたソラを受け止める京子
腕の中に収まったソラは痛みに耐えるように苦しんでいた。
『ソラちゃん、どうしたの!?背中が痛むの!?』
自分がソラの背中に触れた途端、苦しみ始めたのは分かったのだが、その原因が解らず戸惑う。
『京子ちゃん、どうしたんですか!?』
京子の声で目が覚めたハルが、何かあったんだと思い、ベッドから降りて京子に駆け寄る。
『あ…ハルちゃん、お願いっ!ビアンキさんを今すぐ呼んできて!!』
ハルは京子の腕の中に居るソラが何かに苦しんでいるのを見て状況を察した。
『解りました!すぐに呼んできます!!』
ハルは急いでビアンキを呼びに部屋を出ていった。
『ソラちゃんっ……(背中に触れてから苦しみ出したって事は、もしかして…ツナ君が言っていた古傷は、背中に…あるのかな…?)』
少しだけ落ち着きを取り戻した京子は急に痛みを訴えだした原因を考えていた。
京子が考えている間に、ハルはビアンキと物音で目が覚めてしまったらしいクロームを連れて戻ってきた。
『京子ちゃん、連れてきましたよ!』
『ソラが苦しんでるそうね!?』
『ソラ、大丈夫!?』
『ビアンキさん、ソラちゃん…熱があるみたいで、さっき背中に触れた途端、急に凄く苦しみだして…』
『そう、背中が……ハル、悪いけれど…食堂に行ってコップに水を注いで持ってきてくれるかしら?』
京子からソラの状態を聞き、そしてソラが手に持っているウエストポーチを見て状況を把握したビアンキ
『了解です!!』
ハルはすぐに食堂へ駆けていった。
『京子はそのままソラをベッドへ……いえ、私の部屋へ運びましょう。あの子達が起きてしまうといけないから…』
『あ、はい!』
『なるべく背中に触れないように運んでね?』
『はい!』
ビアンキに言われた通り、なるべく背中に触れないように気をつけながら、
部屋を出て、ビアンキの寝室へ運び始めた京子
『クロームは戻ってきたハルを私の部屋へ連れてきてくれるかしら?』
『はい!』
ビアンキの寝室へ移動した京子とビアンキ
京子がソラをベッドへ寝かせると、ビアンキはソラが持っているウエストポーチを手に取り、中身を探り始めた。
『あの、ビアンキさん?』
『痛み止めの薬を探しているのよ、たぶんこの中にあるはず…』
そう言いながら、痛み止めの薬を探していた。
少ししてハルがコップに水を注いで戻ってきた。
『ビアンキさん、持ってきましたよ!』
『あったわ!!』
ウエストポーチから2種類のカプセルを取り出したビアンキ
『カプセル…ですか?』
ビアンキが持っているものを見て呟くハル
『ええ、そうよ。1つは今探していた痛み止めの薬よ。』
無色のカプセルの方を京子達に見せるビアンキ
『あの…ビアンキさん、もう1つの青色のカプセルは何なんですか?』
『ああ…これはね…』
『鎮静』
『『『えっ?』』』
京子、ハル、クロームは声の聞こえたベッドの方へ振り向く。
そう、今声を発したのはソラだった。
『……青いカプセルのっ…中身はね、雨の炎を…使って作られた物、なんだ。』
息苦しそうにしながらも、京子達にカプセルの説明をするソラ
『雨の炎……!?…ソラ、それってっ…』
雨の炎の性質を思い出すクローム
『そう……雨の炎のっ…性質は、鎮静……雨の鎮静だよ…』
『いったい、どういう時に使う薬なのですか?』
その薬がどういった物なのかさっぱり解らなくて首を傾げるハル
それは京子も同じだった。
2人は死ぬ気の炎の事を教えて貰ってはいたが、死ぬ気の炎の相性や性質といった、
詳しい事は教えられなかったので、解らなくても無理はないだろう。
『ソラ、後は私が引き継ぐから、お薬を飲みなさい。』
いよいよ本格的に症状が悪くなってきているのか、話すのもつらそうなソラを見て、ビアンキが残りの説明を引き継ぐと言う。
ソラはビアンキの言う通り、その言葉を素直に受け入れ、体を起こす。
体を起こしたソラをすかさず京子が背中ではなく、肩を抱いて支える。
『ソラ、今回は両方とも要るのよね?』
『うん…』頷くソラ
ビアンキはソラに確認した後、2種類のカプセルをそれぞれ1粒ずつ取り出して、ソラに手渡す。
ソラは手渡された薬をすぐに口の中に入れ、ハルが持ってきてくれた水を流し込みながら薬を飲み込んだ。
飲み込んだのを確認した京子は、ソラを再びそっと寝かせた。
『話の続きに戻るわね?青色のカプセルは死ぬ気の炎の暴走を止める薬よ。』
『死ぬ気の炎の暴走?』
『ええ、そうよ。』
ビアンキは、以前この時代の了平がツナ達に教えた時と同じ事を京子達に全て教えた。
サブリングの事も含めた、死ぬ気の炎の暴走に関する全ての事を…
『じゃあ…今のこの高熱は、その死ぬ気の炎の暴走なんですか!?』
ビアンキの話を聞いて、やっと理解した京子がソラの熱の正体を知る。
『ええ。昔よりはかなり頻度が減ってきてはいるけれど、極たまに今みたいに突然高熱を出してしまうのよ。
あ、今は薬を飲んでしばらくの間ぐっすり眠ればすっかり良くなるから大丈夫よ。』
『そうですか。……あの、ビアンキさん』
しばらくの間大人しく寝ていれば熱は下がると聞いてほっとするが、
他にも気になる事があるのか、ビアンキに聞く京子
『何かしら?』
『あの、痛み止めの事なんですけど……それって背中なんですよね?』
『ええ、そうよ。』
『じゃあ、その背中に…古傷があるんですか?』
『!?…きょ、京子、あなたどうしてそれをっ!?』
教えていないはずの傷の事を知っていて驚くビアンキ
『10年前に1度戻ってきていた時に、アリアさんとの話の中でツナ君がボロっと言ってしまったのを聞いて…』
『そうなの…ツナの方は、10年前の世界でずっと一緒にお風呂に入っていたと聞いて
古傷の事を知っているのだろうとは思っていたけれど…』
『京子ちゃん、ソラちゃんの背中に古傷があるんですか!?』
今まで黙って聞いていたハルが京子に聞く。
『うん、そうみたいだよ?私はまだ見た事ないけど…』
『でも、それで納得がいく…』
『はひ?何がですか?クロームちゃん』
『ソラが私達と今までずっと一緒にお風呂に入ってなかった理由。』
『あっ…』
クロームに言われて、まだ一緒に入った事がない事を思い出すハル
『私も、見た事はないけど…きっと酷い傷があるんだと思う。だから、京子ちゃん達にそれを見せないように、
今まで一緒にお風呂に入るのを…避けてたんだと思う。』
『クロームの言う通りよ。あの子…京子達にその傷痕を見せないようにする為に今まで一緒にお風呂に入るのだけは避けてきてたのよ。
本当はあなた達と…いえ、母親である京子…あなたと一緒に入りたいのを我慢してね。』
『はひっ…ソラちゃん、健気です~』
涙をボロボロ流すハル
『ソラちゃん…』
苦しんでいるソラを心配そうに見つめながら、頭を優しく撫でる京子
『あら?変ね…』
『はひ?…何が変なんですか?ビアンキさん』
『薬を飲んで少し経ったから、そろそろ薬が効いてきても可笑しくないのだけれど…』
ビアンキは、ソラの額に手を当て、次に背中に軽く触れてみると…
『う゛っ…』
触れられた瞬間、苦痛を訴えるソラ
『こ、これはっ…!?まさか、痛み止めの薬が…効いてない!?』
鎮静の薬は効いているけれど、痛み止めの方はあまり効果を発揮していない事が解ったビアンキ
『薬が、効いてない…?…あっ…そういえばっ…』
『京子、何か心当たりがあるの?』
『10年前に戻った時に古傷を痛めて、普段は1回で大丈夫だったのを1日で2回飲んだってツナ君が言ってました。』
『1日で2回も!?』
『そのお薬って…本当にそんなすぐに効く物なんですか?』
『ええ、そうよ。でも…京子のその話を聞く限り、この薬が効かなくなってきているみたいね…』
『アリアさんの言っていた通りだ…』
『京子、それどういう事かしら?』
『アリアさんが教えてくれたんです。奥底に仕舞い込んでいた心の傷がだんだん開いてきて、
薬が効かなくなるぐらい痛み出す時が来るって…』
『そう…心の傷が…』
『心の傷が開きかけてるのは、支えを無くしてしまってるせいだと…言っていました。』
『……そうね、確かに今のソラは誰の支えも必要としていないわね。おそらく心の傷が開き始めたきっかけは…
この時代のツナの死が原因だと思うわ。ソラを支えていたのは、この時代の京子…あなたとツナだったから。』
『私とツナ君が…』
『で、でもっ…この時代の京子ちゃんはまだ生きてますよ!?』
『ええ、確かに生きているわ。けれど、今はソラの母親となった京子とお話する事も、触れ合う事も出来ない。
そんな状況下では、支えて貰う事なんて出来ない。かといって、子供の頃のあなたやツナには
今まで正体を隠していた事と、まだ自分の親になっていないという事から2人に縋る事が出来なかったのよ。
この子は見ての通り、とてもしっかりしているけれど、まだ6歳の子供……親の庇護がまだまだ必要な子よ。』
ソラを心配そうに見つめながら、ハルの言った事に対して説明するビアンキ
『私やツナ君が…まだ子供だったから…ですか?』
『ええ。自分と同じ、まだ親の庇護が必要な子供で、こんな酷い状況下で自分の事だけでも精一杯だろうから、
自分の事で負担を掛けたくない、迷惑掛けたくないって…言っていたわ。』
『そうですか…』
『さてと…汗かいてるでしょうから、服を着替えさせないとね。』
『あっ!ビアンキさん、私が着替えさせます!』
『えっ…でも京子…』
『解っています。背中の傷痕…酷いんですよね?』
『ええ。』
『でも、私はソラちゃんのお母さんだから、私に出来る事はしてあげたいんです!この時代の私がどうやってソラちゃんを
支えていたかは解らないけれど…私で力になれる事はなってあげたいんです!!』
『……京子、この子の背中の傷痕を見ても、ちゃんと受け止めるのね?』
『はいっ!!』
『わかったわ。とりあえず医務室に取り置きしてあるソラの服を取ってくるわ。』
『えっ…ビアンキさんはソラちゃんのお部屋に行けないんですか?』
『ええ、行けないわ。ソラの部屋がある階はね、限られた人しか行けないのよ。
その限られた誰かに付いていけば行く事は出来るけれどね。』
『そうなんですか。じゃあ私がその階に行けたのも…ソラちゃんが連れてってくれたから…なんですよね?』
『あらっ…京子、いつの間に連れてってもらってたの?この子、滅多に人を連れ込まないのに。
まぁ、たぶん京子が自分の母親だからでしょうけど…』
『そ、そうなんですか。(そっか…だからあの時、自分の部屋に連れてってくれたんだね。
私が思いっきり押さえ込んでいた想いを吐き出せるように…)』
『ハル、悪いけれど…もう一度食堂へ行ってお湯を張った桶とタオルを持ってきてくれるかしら?』
『ソラちゃんの体を拭くんですね?解りました!クロームちゃん、一緒に行きましょう!』
ハルはクロームを連れて、再び食堂へ行った。
『それじゃ私もソラの服を取ってくるから待ってて頂戴。』
『はい。』
少し経って、ハルとクロームはビアンキに頼まれた物を、ビアンキは医務室からソラの服を持って戻ってきた。
『じゃあ…ってハル、クローム、あなた達は…』
『ビアンキさん!ハル達は出ていきません!!ソラちゃんのその傷痕の事をしっかり受け止めて、
今度こそソラちゃんと一緒にお風呂に入りたいんです!!ねっ!?クロームちゃん』
黙ったままだったが、クロームはその通りだとしっかり頷く。
『……わかっったわ。でも、これだけは言っておくわよ?あなた達が思っているより傷痕が酷いわ。それでも良いのね?』
『『はい!』』
『それじゃ京子、お願いするわ。』
『はい。』
京子はお湯の張った桶にタオルを濡らしてから服を脱がし始めた。
上を脱がせた後、京子は丁寧に拭いていき、背中側にした時……
京子、ハル、クロームはビアンキが言っていた通り、予想していたより酷い傷を見て思わず息を止めてしまった。
『これが…ソラの消えない傷痕よ。あなた達…大丈夫?』
3人の心配をするビアンキ
『あ…はい。凄く、ビックリしました。』
『この間見た、クロームちゃんの傷よりも凄く酷いです。』
『ソラが私達に見せないようにしてたのが良く解る…』
3人とも、驚きつつも、ソラのその傷痕を少しずつ受け止める。
今のソラは高熱と背中の激痛で苦しんでいる為、京子達に傷痕を見られている事に気づいていない。
京子はそのまま服を脱がせ、体を拭いていき、着替えさせた。
『3人とも、良く受け止めてくれたわね。まぁ、この子が元気になったらなんで見せたって怒りそうだけれど…』
『ビアンキさん、確かこの高熱は冷却シートや氷枕は効果が無いって言ってましたよね?』
『ええ、そうよ。薬を飲ませて、水分補給を合間に取らせるようにしてるの。』
『じゃあ、このままここで看病します。』
『京子……ええ、任せるわ。背中の方は薬があまり効いてないみたいだから、ちょっと看病しにくいかもしれないけれど、
添い寝してあげると良いわ。以前、この時代の京子から聞いた事があるの。まだお薬を改善中だった時によく痛みが落ち着くまで
抱っこしたり、添い寝したりしている内に、痛みが和らいでなのか、いつの間にか眠るようになっていたって言っていたの。』
『そうですか…解りました!!』
『あ、でも今回は傷の痛みのせいもあって、京子が側に居ても悪い夢に魘される可能性大だから大変だと思うけれど…大丈夫かしら?』
『はい!大丈夫です!!あ…ハルちゃんとクロームちゃんはもう戻って休んでて?私1人で大丈夫だから。』
『京子ちゃん……解りました!じゃあハル達はお言葉に甘えて寝ますね?』
『何かあったら呼んで?力になる。』
『ありがとう!』
『じやあ今夜は私、京子のベッドで寝させて貰うわよ。』
『はい。』
ビアンキ、ハル、クロームはソラの看病を京子に任せて、それぞれ部屋へ戻っていった。
それから京子は、汗を拭いたり、合間に水分補給をさせたりしながら、ソラの看病を続けていた。
そしてもうすぐ明け方になろうとしていた頃になり……
『熱が下がってる……それにもう背中が痛まないのか、良く寝てる…』
ソラの顔から苦痛が消え、穏やかな表情で寝ているのを見て安心する京子
もう大丈夫だと安心したその瞬間、力が抜けて意識を手放すように眠りにつくのであった。
ーー回想終了ーー
「…次に起きた時にはもう既にソラちゃんは居なくなってて…」
「それで食堂に現れるのが別々だったのね。」
「はい。朝ご飯の時にソラちゃんが来てくれるまでは本当に治ってるのか心配だったんですけどね。」
「でも良かったですね!すぐに全快してくれて。」
「うん、そうだね!さ、お料理の続き、進めちゃおう!夜までに作り終わらせないとっ!!」
京子のその一言でまた料理の続きを始めるハル達であった。
ーー午後6時ーー地下7階ーー
「ふぅ…今日の書類は全て終わったし、修行の方もまあ順調に進んだし…なんとか終わったよ。」
【そうだな、お疲れ。】
ソラは今、晴カンガルーの太陽の肩に乗せてもらって移動しながら話をしていた。
「ありがとう。ところで太陽」
【なんだ?】
「みんなが何隠してるか知ってる?」
【……知っているが言えん。】
「そう。口止めされちゃったんだね。パパかママあたりに…」
【うむ。】
「それなら仕方ないか。で?どこに向かってるの?」
【小食堂だ。】
「やっぱりそっち?」
【……ソラ、お前…なぜ気づいてるのに何も言わない?】
「言っていいの?」
【それは…】
「なんとなくだよ。そのままの方が良いかな~?って。それに書類片付けたり、
修行もしなきゃいけなかったから、そのまま放置しちゃった。」
【そうか…着いたぞ。】
小食堂前に着くと、ソラを肩から降ろす。
「太陽?」
【入ってみな。】
「?」
ソラはなぜいつものように中まで運んでくれないのかと不思議に思ったが、言われた通り、小食堂の中へと入っていく。すると…
「な、何なの!?」
いきなりのクラッカー音に驚くソラ
『ハッピーバースデー!!ソラ(ちゃん/さん)!!』
そこには、現在アジトに居るメンバーだけではなく、チョイスで使う基地作りの為に別の場所に居た入江達や、
昨日修行の為に出て行ったはずの山本とスクアーロや、あの群れ嫌いの雲雀までもが揃っていた。
しかも、集中治療中で体が弱りきっているはずのラルまでもが居た。
「へっ?」何が起きてるのかすぐに把握出来ず、きょとんとするソラ
そんなソラを、中に居たみんなが笑顔で迎える。
【どうだ、驚いたか?】
「太陽、これはいっったい…?」
【京子の提案だそうだ。】
「は?提案??」
「このパーテイーはね、京子ちゃんの提案でソラちゃんの誕生日を祝う為に用意したんだよ。」
何の為のパーティーか教えるツナ
「誕生日?でも私の誕生日は…」
「うん、いつかは知らないけれど、もう過ぎちゃってるんだよね?でも…今年の誕生日パーティーは
まだやってないんでしょ?ビアンキさんとフゥ太君がそう教えてくれたの。」
「ちょっ…2人とも!?」
「私達はただ京子の質問に答えただけよ。」
「京子姉、家を見に行った時に自分の部屋で見つけたんだって。ソラの誕生日プレゼント。」
ビアンキとフゥ太の2人は、ただ質問されたから答え、誕生日パーティーをしていないのかもしれないだろう事を
京子は自分で突き止めただけで自分達は聞かれるまで何も教えていなかった事を言う。
「自力で突き止めちゃったの!?」
「うん。誕生日プレゼントが置かれていただけで解っちゃったらしいよ?」
「そ…そう。でもそのパーティーだって今は…」
「うん、事情があって先延ばしにしてるだけで、落ち着いたらちゃんと祝うつもりだって聞いたけれど、
それでも、どうしても祝いたくなっちゃったんだ。だから…祝わせて?」
「う゛…で、でも今はチョイスに備えて…」
「ソラちゃん!」その先を言おうとしていたソラを止めるツナ
「ねぇ、君…ちょっと頑張り過ぎてるんじゃない?今がチョイス前だろうが何だろうがそんな事は今だけ忘れなよ。」
「ちょ…恭兄!?忘れろって…」
「だってそうじゃないか。沢田綱吉達はチョイスとか關係なく、ただ君の誕生日を祝いたくてこのパーティーの準備をしてたんだからさ。」
「恭弥の言う通りだぜ、ソラ。ここに居るみんな、純粋にお前の誕生日を祝いたくて集まってんだからさ。
ラル・ミルチなんか体を起こすだけでも大変なのに無理してここまで来てるしよ。」
「あっ…そうだよ、何でここに居るの!?ラル姉!寝てなきゃダメじゃん!?」
ディーノに言われてラルの事を思い出し、心配するソラ
「フッ…確かに少し体に無茶をさせてしまったが、どうしてもお前の誕生日を祝ってやりたくてな…」
「ラル姉…」
「ソラ、ツナ達がこうして集まってんだ。大人しく祝われとけ。」
「でも…」リボーンに言われても未だ渋るソラ
「別に罰は当たらねぇぞ。むしろ今すぐこのパーティーを中止してしまう方が罰が当たるぞ。」
「う゛…」
【ソラ、もう諦めて大人しく祝われろ。】
「太陽…そういえば何で太陽は知ってたの?匣に居たはずなのに…」
【昨日、お前が眠っている間に了平の炎を注入されて呼び出されたのだ。そこで京子から聞いた。】
「そうだったんだ…」
【なぁ、ソラ…このパーティーを今まで頑張っていたお前へのご褒美だと思ったらどうだ?】
未だにこのパーティーの事を素直に受け止めれないソラに助言する。
「えっ…」
【京子がさ、このパーティーは誕生日を祝う為だけじゃなく、今まで頑張っていた
お前への褒美でも良いんじゃないかって言っていたのだ。】
太陽のその言葉に驚き、思わず京子に視線を向けてしまったソラ
太陽がソラに何を言ったかは解らなかったけれど、なんとなくソラが驚いている理由を察した京子はソラに微笑みかける。
「ソラちゃん、このパーティーは誕生日を祝うのと、今まで頑張っていたソラちゃんへのご褒美だよ。
この時代の私が居たら、きっと何かしてるんじゃないかと思って、ツナ君達にも手伝ってもらって準備したんだよ。」
「ソラちゃん、初めてこの時代に来たばかりの時からずっと俺達を支えてくれてありがとう。君がいろいろ助けてくれてたから、
俺達は未来へ飛ばされてきてから今まで無事だったんだと思う。。だから…本当にありがとう。」
「ソラ、いつもお仕事お疲れ様。」
「いつもこのアジトを守ってくれてありがとう、ソラ」
ツナを始めとし、フゥ太、ビアンキが続けてソラにお礼を言っていき、他のみんなも次々にソラに声を掛けていく。
「ちょっ…みんな!?私そんなお礼を言われる程の事してないよ!?」
【いや、してるだろ。】ツッコむ太陽
「まだそんな事言ってやがるのか。」呆れたように呟くリボーン
ソラがどれだけ否定しようが、ここに居る者はソラの頑張りを見て知っている為、肯定する。
「う゛ぅっ…だってこのアジトが維持出来てるのだって、ザンザスの協力があって出来た事だし…」
「それだって、てめーの指示がなきゃ、ウチのクソボスは何もしてねぇぞぉ?」
「スクアーロの言う通りだ。あのザンザスが言う事を聞くのはお前だけだぜ?」
「スク、ディーノさんまで…」
「あは、あはははっ…(やっぱりソラちゃん凄いなぁ…)まぁ、とにかく…こっちにおいでよ。」
スクアーロとディーノが言った事に苦笑いしながらも、ツナはソラの手を引く。
ソラは手を引かれるまま、大人しく着いていく。
料理が並べられているテーブル前に着くと、ツナはソラが見えるように抱き上げた。
「ほら、これ…京子ちゃん達が朝からずっと用意してたんだよ。」
テーブルの上にはあまり手間の掛からない物や手間の掛かる物…いろんな料理がどのテーブルにも置かれているのが見えた。
「朝から何かしてるのは知ってたけど……こんなにたくさん…」
自分が予想していたよりもたくさんの料理が並べられていて驚くソラ
「京子ちゃんを中心に、ハル達がた~くさんお料理を作ったんですよ!!」
「ランボさんも手伝ったんだもんね!!」
「イーピンも!!」
「ビアンキさんやフゥ太君、それに太陽君にも聞いて、ソラちゃんの好物もたくさん作ったんだよ。
あ、もちろんケーキも作ったから後で食べようね!」
「ソラ、笹川達が朝から準備してた料理…どれも美味そうだよな!早く食べようぜ!!」
「野球バカと同意見なのは気に入らねぇが、俺もそう思う。」
「ソラ、極限に食べるのだーーっ!!」
「ソラ、食べよう?」
「僕は君の誕生日パーティーをするって言うから、わざわざ群れてまで来たんだ。いい加減大人しく祝われなよ。」
ハル達の後に、守護者が次々に食べようと言う。
ツナはソラが大人しいのを良い事に、そのままソラを椅子に座らせた。
「あっ…つ、綱吉さん!?」
気づいた時には椅子に座らされてしまったソラ
ツナはソラの呼び方を聞いて少しムッとした顔になる。
「ねぇ、ソラちゃん」少しだけ低い声で呼ぶツナ
「は、はい!(なんかパパ…ちょっと怒ってる!?なんで!?)」
ツナのその低い声の呼びかけに思わず体が強張ってしまうソラ
「その呼び方やめようよ?」
「へっ?」
「俺の事、『綱吉さん』じゃなくて、この時代の俺の呼び方と同じで良いよ。もう正体隠してないんだからさ。
それに…俺の子供だと解ったら、なんか他人行儀過ぎてやだ。」
「あっ、私もそれ言おうと思ってたの!!私の事もこの時代の私と同じで良いよ。」
ツナや京子がそう言ったのをきっかけに、雲雀、リボーン、ランボ、イーピン以外の10年前から来たメンバーが
次々と呼び方を未来の自分の時と同じで良いと言い出す。
「で…でもっ…」
今のツナと京子は付き合っていないし、まだ中学生な事もあって、2人が良いと言っても躊躇するソラであった。
「俺達の事を気にしてくれるのは嬉しいけど、それよりもソラちゃんが他人行儀な方がもっと嫌だからさ。だから…ね?」
「………パパ」
ツナにそう言われ、未だ躊躇するもこの時代のツナと同じ呼び方に変えてみるソラ
「………なんだか…くすぐったいね。でも…嬉しいよ!!」
最初は固まっていたが、だんだん嬉しい気持ちになってきたツナ
「おっ…良い顔してるぜ?ツナ」
「良かったですね!10代目!!」
ツナの事をきっかけにソラは完全に躊躇する気持ちが少しずつ薄まり、他の人の事も1人ずつ呼び始めた。
ママ、タケ兄、隼人兄、了兄、クローム姉、ハル姉、バジル兄…っと、ソラはゆっくりと、けれどはっきりと1人ずつ呼んだ。
それに対し、みんなはそれぞれ嬉しそうにしながらも返事を返していた。
ソラがみんなの名前を呼び終わった所で、ツナが仕切り直す。
「それじゃみんな、そろそろ始めよう!ソラちゃん、もう一度言うよ?」
『ハッピーバースデー!!ソラ(ちゃん/さん)!!』
「みんな……ありがとう!!」
今度は素直に受け入れ、最高の笑顔をみんなに見せたソラ
その笑顔を見て、ツナ達はこのパーティーをして良かったと思うのであった。
【(そうだ…俺達が守りたいものはその笑顔だ。綱吉に言われたからではなく、俺達がソラを守ると決めたのは…
お前のその笑顔は極限に俺が…いや、友である俺達が全力で守るからな?)】
太陽はツナ達に最高の笑顔を見せているソラをそっと見守り、その笑顔をこれからも守りぬくと心の中で誓うのであった。
今は匣の中に居る、ソラの他のアニマル匣達もおそらく太陽と同じ思いを抱いているだろう。
そしてツナ達ボンゴレの守護者達は、それともう1つ。未来の自分達からも
必ず祝われるように、この時代の平和を取り戻したいと思うのであった。
今回のお話は、京子の提案でソラの誕生日パーティーを開かせました!
それとこのパーティーをきっかけに、ツナ達の呼び方も変えさせました!!
パーティーに参加こそはしていても、1度もセリフを言っていないキャラも居ますが、
そこはスルーでお願い致します。
それでは標的79へお進み下さい。