ーーどこかの建物の中ーー
(パパ…どこだろ?この建物で間違いないはずなんだけど…それに、おそらくママもここにいるはず。)
ソラは辺りを見回しながら、ツナと京子を探していた。
歩きながら探し回っていると…
(ん?…パパとママの気配…っ!…敵の気配が1つ!急がないとっ)
ソラは左太股にあるガンホルダーから銃を取り出しながら、2人の元へ全速力で急いだ。
「取りこぼしは無しだ。」
ソラの耳に太猿の声が聞こえてきた。
(近いっ!間に合ってっ!!)
「なぁに、すぐ済む。メインディッシュの雨の守護者を待たせらんねぇからな…」
「…!?」
「下がってっ!」京子を庇うツナ
「ふっ、殺る気か?」
「ツっ君っ!」ツナに触れる京子
京子はツナがガタガタ震えている事に気付いた。
(ツっ君…震えてる?……っ!…もしかして、目の前にいるツっ君はっ)
京子は目の前のツナの様子で何かを悟った。
「させないぞ…させるもんか!」
震えながらも、毛糸の手袋と死ぬ気丸の入った小さなケースを手に持っていた。
その時、晴の炎が太猿の斧にぶつかった。
「だ、誰だっ!?」突然の襲撃に驚く太猿
「あの黄色い炎はっ…」飛んできた炎を見て驚くツナ
「あなたの相手は……私がします。」
太猿の後ろからそう言った。
後ろに振り向く太猿
「てめぇかっ!!俺の斧に炎をぶつけやがったのはっ!」
そこにいたのは、左手の中指につけている晴系リングに死ぬ気の炎を灯したまま、銃を構えるソラが居た。
「ソっ…姫ちゃんっ!」
ツナは最初「ソラ」と言いそうになったが、なんとか言葉を飲み込んで、言い直した。
だが、京子が最初の言葉を聞き取ってしまっていた。
(ツっ君、最初「ソ」って言った…それに今の声はっ…)
「綱吉さん、この人の相手は私がします!だから今のうちに2人で逃げて下さいつ!」
「えっ!?でもっ、君を1人にできないよっ!」
「今の綱吉さんはこの時代の戦い方を熟知していませんっ、はっきり言って足手まといですっ!だからっ…!」
太猿がソラに向かって嵐の炎を放った。
気付いたソラはそれを素早く回避した。
その際に、ソラのマントが捲れた。
(!あれはっ…)京子は捲れた時に見えたウェストポーチを見て、驚いていた。
「でもっ!…それでも君を置いていけないよ!姫ちゃんっ!」
「いいから、はやく行って下さいっ!」
ソラは太猿の攻撃を回避しながら、ツナに言った。
「で、でも…」
「……10年前の、ツっ君…だよね?」
「!!…京子ちゃん…どうして…」
「この時代のツっ君が、10年バズーカの事を教えてくれたから…」
(き、京子ちゃんに何言ってんだよ!?10年後の俺ーー!?)
「あそこにいるの…」と言いながら、ソラと太猿が戦っている所に目を向けた。
ツナも京子の視線を追い、ソラと太猿の戦いに目を向けた。
「…ソラ、だよね?」
「えっ!?京子ちゃん、ソラちゃんの事知ってるのっ!?」
「やっぱり、ソラだったんだね…」
京子は、愛おしそうに、そして悲しそうな表情でソラを見つめていた。
「京子ちゃん?(どうして、そんな悲しそうなの…?)」
「ええいっ!すばしっこい奴めっ!」
突然の太猿の叫びで、ツナは京子から視線を外し、2人の戦いに視線を向けた。
「…遅いです。」そう言い、ソラは太猿の斧に銃を向け、晴の炎を撃った。
攻撃は見事に命中し、斧に僅かなヒビが入ったが、ソラ以外、気付く者はいなかった。
(…僅かにヒビが入ったみたいだね。あと2発くらい当てれば、砕けるかな?)
「くそっ…なぜ避けれなかったんだっ!!…それにしても、この晴属性の炎といい、命中率といい、弾の速さといい……
ま、まさかっ!貴様っ、今マフィア間で騒がれている、『陽色(ひいろ)の姫君』なのかっ!?」
「……だったら?」
「陽色の…姫君?」首を傾げるツナ
(ソラ…)ソラを心配そうに見つめる京子
「そうとわかりゃあ、話は早いっ!貴様、俺と一緒に来て貰うぞ!!」
その言葉に驚いて、声が出ないツナと京子
「なぜですか?」
「白蘭の奴がてめぇを欲してんだよ。何でかは知らねぇけどな…」
「お断りします。」
「なら力づくでも連れていくぜっ!!」
そう言って、ソラに近づく太猿
「姫ちゃん!!」
「ソラ!!」
ソラは回避行動を取りながら、太猿の斧を狙って2発撃った。
太猿はそれに気付き、回避しようとしたが、弾が速くて回避できなかった。
斧に2発当たった瞬間、砕けた。
「んなっ!?斧が…砕けやがったっ」
「んなぁー!?」
「まだ、やりますか?」
「ふっ、これで終わりだと思うなよ!!」
そう言い、不敵な笑みを浮かべながら、新たに匣に嵐系リングを差し込み、開匣した。
「…スペアを持っていたんですね。」
「今度はこうは行かねぇぞ…」
「あぁっ…」
「っ……ツっ君っ!お願いっ!ソラを助けてっ!」
京子は真っ青な表情になりながらも、必死にツナに助けを求めた。
「きょ、京子ちゃん?(顔が真っ青だ…)」
「…ソラは…「ボフンッ」」
突然煙が出てきた。
煙がなくなると…そこには10年前の京子ちゃんが瞬きしていた。
「…ツナ君?」
「えー!?京子ちゃん!?」
突然聞こえたツナの大声でソラと太猿は2人の方を見る。
「やっぱりツナ君だっ!良かったー」
「な、なんで10年前の京子ちゃんがっ!?いったいどうなってんのー!?」
「みんなで探してたの、ツナ君と獄寺君の事。ん?…10年前って?」
「そ、それは、その…えっと…」
(10年前の…ママ?…ママまで10年バズーカに当たったの?)
ソラはフード越しに京子を見ていた。
「おい!!」
その声で、ソラ、ツナ、京子の3人は太猿に視線を向ける。
「なんかよく知らねぇが…とりあえず、ターゲットを変更させてもらうぜっ!」
そう言いながら、太猿はターゲットをツナと京子に切り替え、斧を振り翳し、嵐の炎を放った。
「危ないっ!!」
それに気付いたソラは、全速力で2人の元へ行き、2人をその場から突き飛ばした。
太猿が放った攻撃がソラに直撃した。
「姫ちゃんっ!!」
ソラが突き飛ばしたおかげで直撃を免れた2人は、すぐにソラに駆け寄った。
「くっ…(まともに直撃を受けちゃった…)」ソラは直撃した左腕の前腕部を右手で支えていた。
ソラの左腕の前腕部には、傷は浅いが傷口から血が出ていた。
「…ひ、姫ゃんっ……どうしてっ…」
「大丈夫っ!?」
「大丈夫…です。」
「チッ…2人には直撃しなかったが…てめぇが負傷したんなら、好都合だ。連れて行きやすくなったからな…」
「それは…どうかな?」
「何…?」
「左手が使えなくても…右手がまだあります。」
「…撃てるのか?」
「撃てます。」
「即答かよっ」
(ソラちゃんどうして…そこまで、俺達の事をっ…)
『…ツっ君っ!お願いっ!ソラを助けてっ!』
先程10年後の京子が言った言葉がツナの頭の中でフラッシュバックする。
「…やるしか…ないっ」そう言い、ケースから死ぬ気丸を取り出して、呑み込んだ。
「じゃあ本当に撃てるのか、試して貰おうか!」
「待てっ!」
ソラ、京子、太猿の3人が振り向いた。
そこにいたのは、超モードのツナだった。
「綱吉さん…」
「姫、あとは俺がやる。だから…下がってろ。」
「…了解しました。」そう言って、ソラは銃をガンホルダーにしまい、リングの炎も消した。
「その炎の色は…大空属性…なかなかのレアだぞ、小僧。だが、タラタラと相手してやるつもりはない。
てめぇを速攻で倒して、『陽色の姫君』を連れていかねぇといけねぇからな…」
「2人とも、下がってろっ」
「は…はい。」
ソラは黙ったまま、京子と後ろに下がった。
Xグローブの死ぬ気の炎を噴射させて飛び出すツナ
そこに太猿が斧に灯っている嵐の炎をツナに放った。
「ツナ君!?」
煙が消えると、ツナは無事だった。
(“零地点突破・改”…相手の炎を吸収し、自分の炎に変換する技…)
ソラはツナと太猿の戦いを冷静に分析していた。
「っ…(思っていたより、酷いかもしれない。)」
そう思いながら、ソラは痛みを堪えていた。
「ツ…ツナ君…ツナ君っ!!」
そこでソラははっとし、ツナを見た。
「綱吉さんっ!」
ツナは太猿の背中から出た針に刺さっていた。
その針は、太猿がまた別の匣にリングを差し込んで出した物だった。
「ぐあっ」地面に落ちたツナ
「そういやぁ、ボンゴレ10代目もグローブに炎を灯したそうだな。まっ、今となってはどうでもいいことだがな!!」
「ツナ君っ!!」
「綱吉さんっ!!」
京子とソラはツナに駆け寄ろうとしていた。
「来るなっ!」
ツナのその言葉に足を止める2人
「…大丈夫っ…」っと言いながら、よろめきながらも、立ちあがった。
(パパ…)心配そうにツナを見るソラ
「君達は…守って見せるっ…俺の…命にかえてもっ!」
その時、ツナの大空のボンゴレリングに死ぬ気の炎が灯った。
「この感じ…」
(…リングに…死ぬ気の炎が、灯っちゃった……そっか、パパのあの覚悟は、10年前からだったんだね…)
ツナがボンゴレリングに炎を灯した事に驚きながらも、ソラはこの時代のツナの事を思い出して、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「怖じ気ついたか?」
「ふざけるなっ、女と子供は使いようだ!!てめぇのようなうるせーハエには……殺虫剤をまくまでだ!!」
太猿は別の匣にリングを差し込み、手裏剣に嵐の炎をまとった、黒手裏剣(ダークスライザ―)を放った。
ツナはそれを飛びながら、回避していた。
(あれは…パパのように大きな炎のみを追尾し、炎を吸収するたびに加速するため、絶対に回避は不可能。)
ツナは回避がダメなら、今度は太猿に向かって飛んだ。
もう少しで太猿に当たるかと思いきや、太猿に当たる事はなかった。
「使用者には絶対に当たらんように出来ている!!」
(なら、止めればいい…パパにはそれが出来る。そうだよね?)
「なら、逃げるのはやめだ。」
そう言った後、逃げるのをやめ、目を瞑り、迫ってくる裏手裏剣を受け止める構えを取った。
裏手裏剣に触れたツナは零地点突破・初代エディションで凍らせた。
「なにぃ!?バ…バカな…!!“裏手裏剣(ダークスライザ―)”を凍らせただと!?」
(“零地点突破・初代エディション”…相手や物を凍らせるだけでなく、死ぬ気の炎をも封じる事ができる技…)
「不思議だ…体が軽い…」
ツナと太猿が激突した。
ツナは、太猿の足を凍らせた。
すると、足に灯っていた死ぬ気の炎が消えた事で飛ぶ事ができなくなり、、地面に落ちた。
「バカなっ!!炎を凍らせるなどっ……これではまるで噂に聞くボンゴレ10代目!!きさま…貴様何者だっ!?」
ツナに向かって斧を振り翳そうとしたが、ツナは左手で斧を受け止めた。
その際、斧を零地点突破・初代エディションで凍らせた。
そのあと、右手のXグローブに炎を灯し、太猿の顔面を殴って、ふっ飛ばした。
(あっ…ふっ飛ばしちゃった。)
立ち崩れるツナ
「ツナ君!!」
「綱吉さん!!」
ツナに駆け寄る2人
「京子ちゃん…ソラちゃん…よかった…守る、ことができて…」
そう言い、気絶したツナ
倒れそうになった所を京子が受け止めた。
「大丈夫!?ツナ君っ!しっかりしてっ!ツナ君っ」
泣きながら、ツナに呼び掛ける京子
「(パパを治癒しないと…とりあえずママを落ち着かせよう。)京子さん、落ち着いて下さいっ!」
「っ!!…でも…ツナ君がっ」
「大丈夫ですからっ!とりあえず綱吉さんを地面に寝かせて下さい。」
京子は少し落ち着きを取り戻し、ソラの言う通りにツナを地面に寝かせた。
「とりあえず、先にリングにマモンチェーンを通さないとっ…」
ソラはウェストポーチから予備のマモンチェーンを取り出して、大空のボンゴレリングに巻き付けた。左腕の痛みを無視して…
そのあと、ツナのジャケットのファスナーを開けて、Tシャツを捲った。
(思ったより傷は酷くないみたいだね…この程度の傷口なら、なんとかなるっ…晴れコテを使おう。)
ソラはそう思い、マントの内側にある匣のうちの1つに死ぬ気の炎を灯した晴系リングを差し込んだ。
匣から出した晴れコテをツナの左肩の傷口に当てた。
「…それは?」
「少しだけ、怪我の治りを速くするものです。…応急手当と考えて下さい。」
「ツナ君は大丈夫、なの?」
「大丈夫です。(パパを二度も死なせはしないっ…!!)」
少しの間、傷口に晴れコテを当てていると…
「10代目ーー!!」
遠くから獄寺の声が聞こえてきた。
「あれ?この声は…」
「獄寺さんですよ。」
そう言いながら、ソラは晴れコテをツナの傷口から離して、匣にしまい、左手の晴系リングにマモンチェーンを取り付けた。
(タケ兄達の方も、なんとかなったみたいだね。……くっ!…)
獄寺の声を聞いて安心したソラは、今まで堪えていた左腕の痛みが急激に襲う。
その様子に気付いた京子
「だ、大丈夫っ!?」
「ハァ…ハァ…くっ…すみ、ませんが、あとは…お願い…します…」
倒れそうになったソラを受け止めた京子
「姫ちゃんっ!しっかりしてっ!姫ちゃ…」
京子の声を聞きながら、意識を失ったソラ
今回のお話は、前回に引き続き、工場跡での戦いです。
アニメでは、10年後の京子はすぐに過去の自分と入れ替わっちゃいましたが、
ここでは、10年前のツナと話す所を書いてみたいなと思い、10年後の京子の出番を少し出しちゃいましたっ!!
そして、太猿と最初に戦うのは、ツナではなく、ソラにしました。
戦闘シーン、上手く書けてるかは自信がありませんが、もし下手でも勘弁して下さい。
それでは標的8へお進みください。