ーー翌日ーー地下7階−−小食堂ーー
そこには山本とラルが居た。
「昨日は気付いてやれなくて悪かったな。」
「いや、気にするな。それに、ソラがせっかく止めてくれようとしていたのに、通ってしまったのだからな…」
その時、リボーンが入って来た。
「やっぱその格好が似合ってるな。」
リボーンは昨日の全身白タイツのではなく、いつもの黒スーツを着ていた。
「ソラがジャンニーニに新しく作らせたスーツだからな。」
「ノン・トゥリニセッテを浴びても平気なのか?」
「まぁな。だが、さすがに外には出られねぇ…自由に動けるのは、この中ぐれぇだ。」
そう言いながら移動し、椅子に飛び乗った。
「そういえば、山本」
「ん?」
「ソラはどうした?」
「まだ寝てるんじゃねぇかな?あいつ…ツナが死んでから、あまりよく眠れてなかったからさ…」
「そうなのか?」
「ああ。それに、ソラ自身もいろいろと忙しかったからな…」
「忙しかった…?」
「ソラが沢田の娘だからだ。」
「…それだと何かあるのか?」
「ソラはマフィア間で『ボンゴレの姫君』と呼ばれている。……そして、『ボンゴレの姫君』にはある特権が与えられているんだ。」
「ある特権?」
「ボス代行権限…ボスの次に権力を持っている事から与えられた特権だ。オレは家光からそう聞いた。」
「ソラはツナが死んじまったその日から、『ボンゴレの姫君』の特権を行使し、本来ツナがするべき仕事を一手に引き受けたんだ。」
「!…それは本当なのか?」
「ああ。現に俺達がこうして、アジトをまだ使用出来ているのは、ソラが上層部と掛け合ってくれたからなんだ。」
「そうなのか…」
「おっと、ツナ達には言わないでくれよ?小僧」
「……わかったぞ。」
リボーンはそう言ったあと、ラルと向き合った。
「ラル・ミルチ、本国のボンゴレがそうとうなダメージを受けた事は聞いた。お前の仕事は、ここの状況を報告する事だったんだろ?
だが、門外顧問との連絡は断ち切られている…これからどうするんだ?」
「白蘭を倒す…単独でな…」
ラルが席を立ちながら言った。
「無茶だぞ。外にはノン・トゥリニセッテが放射されてるんだ。あれは俺たちにとっては有害な物だ。呪いで死ぬぞ?」
「覚悟は出来ている。…さすがに、ノン・トゥリニセッテを浴び過ぎた…もう命は長くない。
俺がアルコバレーノのなりそこないだといってもな…」
「ソラが悲しむぞ?」
その言葉に反応を少し見せたラルだが、
「それでも、オレは行く。あとは好きにさせてもらう。」
そう言い、立ち去ろうとした。
「今のツナ達にはお前の力が必要なんだ。考えなおせねぇのか?」
「お前と山本、それにソラが居れば充分だ。断る。」
「コロネロの仇を討つ気だな?」
リボーンのその言葉に一度立ち止まったが、すぐに動き出して、扉の前に行った。
扉が開くと、その向こうにツナと獄寺が居た。
「あっ…よぉ…」
「あ…別に聞いてた訳じゃ…」
ラルは無言で立ち去った。
ツナと獄寺は呆然としていた。
「いいから入ってこい。」
リボーンのその言葉を聞いて、二人は中に入った。
「お前ら、よく眠れたか?いよいよ守護者を集めるミッションをスタートさせるぞ。」
「えっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!まだ心の準備が…そ、それにっ!」
「いつまでも京子達を心配したって始まんねぇぞ。守護者を集める事が、最終的に京子達を守る事にもなるんだ。」
ツナは困惑した表情のままだった。
「大丈夫っスよ、10代目」
「獄寺君…」
「アホ牛はともかく、イーピンは結構やります。きっと無事に帰ってきますよ。」
「んじゃ、始めっぞ。」
そう言ってリボーンは話しだした。
山本と話し合った結果、最初に探す守護者は即戦力の雲雀だという事。
雲雀の手掛かりがヒバードの写真で、その鳥を探し出すという事。
「俺は行けねぇが、しっかり連れて帰ってこい。」
「行けないってっ…お前、そんなに外だと体調酷いのか?」
「余計な心配すんな。」
(でも…リボーンなしじゃ、俺…)
「情けねぇ顔すんな。かわりに山本がついてるぞ。こいつはこの時代の戦いを熟知しているからな。」
「そうだけど…ってそういえばソラちゃんは?」
「ソラはまだ寝てるぞ。」
「ま、まだ寝てるんスか?」
「ああ。そろそろ起きてくるんじゃねぇか?」
その時、誰かが入って来た。
「あっ…皆さん、おはようございます。」
ソラはそう言いながら、頭をべコリと下げた。
「おう!おはよっ、ソラ」
「ちゃおッス」
「おはよう、ソラちゃん」
「……」獄寺は昨日の事があるからか、声に出すことが出来ないでいた。
「ソラちゃん、昨日はごめんね?獄寺君が殴っちゃって…」
そう言いながら、ソラの前に行ってしゃがみ、ソラの左頬を右手で撫でた。
「っ…」ソラは触れてきたツナに一瞬ビクついた。
「あっ、ごめん!痛かった!?」そう言いながら、右手を離した。
「あっ、いえ、違います。少し驚いただけです。」
「…ほんとに?」
「あれからすぐに冷やしましたから、もう大丈夫ですよ。ご心配をお掛けしました。(パパの手…あったかったな…)」
「それなら良かった。」
「もしかして、これから守護者探しですか?」
「そうだぞ。ソラ、お前も行ってこい。」
「ちょ、ちょっとリボーン!ソラちゃんを連れていける訳ないだろっ!!」
「何言ってやがる、ソラも10代目ファミリーの一員だぞ。それに俺達の時代のランボやイービンと比べようとするな。
こいつは2人よりも充分強いぞ。」
「えっ!?そうなの!?」
「マジっすか!?リボーンさん」
「ああ、マジだぞ。お前らが来る前にソラと1度戦ったからな…」
「えー!?戦ったーっ!?ソラちゃんっ、リボーンと戦ったの!?」
「え、ええ…」
「な、なんともないの!?」
「はい、なんともありませんよ。」
「楽しかったぞ。」
「っていうか、リボーン!!なんで戦ったんだよっ!?」
「あっ、リボ兄を怒らないで下さい。私がお願いしたんです。」
「そうだぞ。」
「んなっー!?(あのリボーンにお願いしたのー!?)」
「とにかく、ソラも連れて行け。わかったな?ツナ」
「で、でも…」
「なぁに、ビビることはないさ。お前達は、この時代の俺達が失ったすんげー力を持ってんじゃねーか。」
(失った力?……ボンゴレリングの事…だよね?)ソラは声には出さずに心の中でつぶやいた。
「失った…」
「すんげー力?」
ツナと獄寺は何の事かわからないって顔をしていた。
「そう…お前達は希望とともに来てくれたんだ。ボンゴレリングっていうな…」
ーー工場跡ーー
「こ、ここは?」
「5丁目の工場跡です。今は廃墟ですが…」
「つ、つぶれたんだ…」
「6つある入口の1つはここに出るんだ。とりあえず、並中に行くか。」
そう言って山本が歩きだしたので、ツナ達も歩きだした。
「おい、山本!ボンゴレリングが希望ってどういう事だよ!?」
「ん?」
「失ったって言ってたじゃねーか!!なんでボンゴレリングがこの時代にねぇんだよ!?」
「ああ、その話か。だいぶ前にリングを砕いて捨てちまったんだよ。」
「えっ!?」
「なぁっ!?捨てた!?」
「あんなに苦労して手に入れといてっ!?」
「誰がそんな事したんだよっ!?」
「うちのボスですよ。」
「それってもしかして…」
「10代目が!?」
「守護者には、反対するやつもいたんだが、そりゃあもう、ツナの奴、譲らなくてな。」
「俺…なんでそんな事を…」
「はははっ…お前にもわかんねーか。」
『戦いの火種になるくらいなら…ボンゴレリングは…要らないっ…』
頭の中でこの時代のツナの言葉がフラッシュパックした。
「ボスがボンゴレリングの破棄を口にするようになったのは、マフィア間でリングの奪い合いが始まった頃です。」
「リングの…」
「奪い合い…」
「戦いの火種になるぐらいなら、ボンゴレリングはない方がいいって…ボスが言っていました。」
「やっぱりな……お前はそういう男だ。ボンゴレの存在自体にすら、首をかしげていた程だからな。」
「ボスは、リングの奪い合いが始まってから、ずっと心を痛めていました。リングさえなければ、こんな争いは起きなかったのかって…
だから、ボンゴレリングを破棄したんじゃないかと思います。」
その時、突然爆発音が聞こえてきた。
突然の爆発に驚くソラ達。
爆発の起きた所を見てみると、煙が出ていた。
「…誰かいるっ」
ソラのその言葉でツナ達は煙の向こうをよく目を凝らして見た。
「こっちですっ!」
「急いでっ、はやくっ!」
「あ、あれはっ!」
「ランボ兄!!イー姉!!」
「はやくこっちにっ!」
「誰かを連れてるな…」
「えっ!?それって…まさかっ、あそこにいるのはっ!!」
「あっ…京子さん、ハルさん逃げて!ここは私がっ」
「やっぱりっ」
その時、ランボとイーピン目掛けて、嵐の炎がぶつかった。
「あっ!?」
「上か!?」
獄寺のその言葉でソラ達は上を見る。
そこには足のシューズに嵐の死ぬ気の炎を灯して飛んでいる、黒服の二人組がいた。
「トドメを刺してこい。」
「まかしてよ、兄貴」
「あれは…ミルフィオーレのブラックスペルです!」
「ブラック…スペル…あっ…京子ちゃん達はっ…」
「行くぜ!」山本が嵌めている、雨系リングからマモンチェーンを外した。
「ボンゴレリングからマモンチェーンを外して下さい!」
ソラはツナ達にそう言い、自分の左手の中指にある、晴系リング(精製度B)からマモンチェーンを外した。
「へへ…獲物が1匹、2匹…」
「しまったっ…ここは私が!ランボは京子さんとハルさんをお願いっ!」
「そんな体じゃ無理だよ、イーピン」
「いいから、早くっ!」
「じゃあオイラがもらう。手ぇ出すなよ、太猿兄貴」
「しっかりやれよ、野猿」
野猿は炎を灯した嵐系リングを匣に差し込んで開匣し、斧を出した。
「じゃあ行くぜ!オイラの獲物達!!」
そう言ってランボとイーピンに向けて、斧に灯っている嵐の炎を放った。
「弱ったところを狩ってくらあっ!!」
そう言って、突っ込んできた野猿
「そこの影、その首頂きっ!」
そこで山本の刀が野猿の斧を受け止めた。
「兄貴、こいつ誰だ?」
「ターゲットリストに載ってたかもしれねぇが、消えてく人間をいちいち覚えちゃいねぇな。」
「だよな!!」
山本と野猿の攻防が続く。
その間にソラ達はランボ達の所に行った。
「みんなっ、大丈夫!?」
「しっかりしろっ!」
「ボ、ボンゴレ!!獄寺氏も」
ランボとイーピンが安心した表情をした。
「だから言ったじゃないですか。」
「ん?」
「絶対ツナさん達が助けに来てくれるって。」
((10年後の…ハルー!?))
ツナと獄寺はハルを見て驚いていた。
「ランボ兄っ!イー姉っ!」
「「姫っ!?」」
「二人とも大丈夫!?」
「うん、大丈夫だよ。」
「心配かけてごめんね?」
「しゃらくせぇ!よくも兄貴達とお揃いのスーツを破いたな!!」
野猿が繰り出した攻撃を山本が雨匣を開匣して、水のバリアで防いだ。
「んだとぉ!!」
「水のバリア!?」
「お前達、よく覚えとけ。リングには、この匣(ボックス)ってのを開ける力がある。」
「あっ…そうかっ!」
獄寺は上着の内ポケットから匣を取り出す。
「こいつに開いてる穴はそーやって使うんだな。」
「お前…それどこで…?」
(…見た事ない匣だ…)
ソラは獄寺が持っている匣を見て、不思議そうにしていた。
「10年後の俺の鞄の中に入ってた。」
「そういえば、凄い物を手に入れたって言ってましたね。この時代の獄寺さんが。」
「お前ばかりに良いカッコはさせないぜ。」
そう言い、ボンゴレリングを匣の穴に差し込んだ。
「ん……?何も起きねぇぞ。」
「あはははっ…」
「てめー、何がおかしいんだよ!!」
「タケ兄。笑っちゃダメだよ。」
「わりぃっ」
「人間の体っていうのは、血液だけではなく、目には見えない生命エネルギーが波動となって駆け巡っているんです。」
「生命エネルギー?」
「波動は7種類あります。リングは自分の素質と合致した波動が通ると、反応します。」
ツナと獄寺に見えるように、左手を翳す。
「それを高密度エネルギーに変換して生成します。」
そう言いながら、晴系リングに晴の死ぬ気の炎を灯した。
「それってっ…」
「そう…死ぬ気の炎だ」
山本がそう言い、雨系リングに雨の死ぬ気の炎を灯し、匣に差し込んで、雨燕を出した。
雨燕は野猿の周りをグルグルと回り始めた。
「炎が…こいつ、炎を消しやがるっ」
「やはりあいつは…ボンゴレ雨の守護者だ。」
「あっ、あれ!?…ああっ…」
「どうしたの?」
「た…大変!!京子さんがいないっ!!」
『えっ!?』その場の全員が一斉に声を出す。
「そ、そういえば…」
「京子ちゃんが…!?」
(ママっ…どこにいるの!?)辺りを見回すソラ
「もしかしたら、さっきの爆発で…」
「そ…そんな…」
「また決まってません!!」
「えっ!?」
「綱吉さん、探しに行きましょう!タケ兄、ここ任せていい?」
「おうっ、任せろっ!ツナ、敵はこっちで引き受けた!!姫と探しに行けっ!!」
「お願いね!タケ兄」
「うん!わかった!」
2人は京子を探すために走り出した。
その二人に向かって、太猿が斧に灯っている嵐の炎を放った。
それにいち早く気付いたソラは回避したが、ツナは吹っ飛んでしまった。
「綱吉さん!」
「ツナ!」
「10代目!」
「くっ…タケ兄、ここ任せたからねっ!!」
「ああっ!!」
ソラはツナが飛んで行った建物の入り口に向かって全速力で走り去った。
「は、はやっ……」呆然とする獄寺。
「てめぇの相手はおいらだ!」
今回のお話は、守護者の1人、雲の守護者である雲雀恭弥のヒバードを探すために、アジトの外の工場跡へ来て、
そこで初めてツナ達がミルフィオーレと交戦する所です。
アニメでは、山本がリングと匣についての説明をしますが、そこをソラにやらせました!
ここで少し悩んだのが、野猿の方にするか、太猿の方にするかだったのですが…
ツナが戦う、太猿の方にしました!!
次回も工場跡での戦いです。
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