ーー地下7階ーー小食堂ーー
トレーニングルームから再び小食堂へ戻ってきたソラ達。
ただし、ジャンニーニは地上の監視に戻る為に作戦室へ、
雲雀は群れの中に居る事に限界が来て後の事を草壁に頼み、
雲雀のアジトへと戻っていったのでこの場には居ない。
「そういやぁ…ソラ、上層部は何て言ってたんだ?通信の事、伝えたんだろ?」
ふと思い出したようにソラに聞くスクアーロ
「……別に何も。」
少し間を置いて答えるソラ
「「嘘つけっ!!」」
スクアーロとディーノが同時にツッコむ。
「今の上層部は俺も跳ね馬もあまり信用しちゃいねぇ…何言いやがった?」
「ソラ、隠さず教えてくれ。」
スクアーロとディーノはじりじりとソラに詰め寄る。
「なぁ、何て言ってたんだ?」
「ツナから聞いて知ってるぜ?今の上層部は3派に分かれてるって。1つ目は古きボンゴレ…今までの伝統を守ろうとしている者。
2つ目は新しきボンゴレ…新しい伝統を作る事に賛成している者。そして最後の1つはまだどちらに付くべきか迷っている者のその3派だ。」
「「何を言われた?」」
ソラにドンドン問い詰めるスクアーロとディーノ
「………ハァ〜…解った、話す。でもその前に……」
黙秘を貫こうとしていたソラだったが、ここまで2人に詰め寄られてしまえば、
黙っている訳にもいかず、諦めて話す事にした。
ソラは右手に晴系リングを嵌めてから、2つの匣を取り出して開匣した。
出てきたのは、晴カンガルーの太陽と晴カメレオンのレオだった。
「太陽はスクを拘束、レオは縄になってディーノさんを拘束して。“形態変化(カンビオ・フォルマ)”」
【【了解!!】】
太陽とレオはなぜ自分達が呼び出されたのか解っていたのか、すぐに指示通りに動いた。
太陽はスクアーロをしっかり羽交い締めし、レオも縄になってディーノに巻きついて拘束した。
「う゛お゛ぉぉい!?何しやがる!?」
「ソラ、これはいったい何の真似だよ!?」
いきなり拘束され、身動きが取れなくなってしまったスクアーロとディーノ
「念のための処置。」
「「はぁっ!?」」訳が解らないという表情をする2人
「でね、ボンゴレ上層部だけど、通信の事を報告したら…」
スクアーロとディーノの拘束を解かないまま話し出した。
“協議の結果、6日後のチョイス戦は次期ボンゴレ11代目及び、若きボンゴレ10代目ファミリーに委ねる事とする。
そして参加条件の1つに10年前から来た者は全員参加で、その中には一般人の女性が2名居るそうだが、
それに関しては、誰かを護衛に付け、参加させるしかない。
そしてもう1つの条件だが……君の事を知っている者だけで協議した結果、『陽色の姫君』としてではなく、
『ボンゴレの姫君』として必ず参加する事を命ずる。なお、現地に増援を寄越す事も出来ないので、悪しからず。
次代のボンゴレを担う者として、必ずミルフィオーレファミリーを倒してこい!それこそ全てを焼き尽くすつもりでだ!
ファミリーの存続が掛かっているのだから、決して出し惜しみなどするな!!良いな?…では、健闘を祈る。”
「…って言われたんだよ。」
「おい、待てよ!それって全部ここに居る奴らに丸投げじゃねぇか!?」
「しかも、遠回しにこのチョイス戦に負ければ、その責任は次期11代目であるソラに負わせるって言ってるじゃねーか!!」
ボンゴレ上層部からの指令を聞いてブチキレたディーノとスクアーロ
年端もいかぬ幼い子供に全てを押し付けるかのようなその指令は、
この場に居る誰もがボンゴレ上層部に対して怒りを覚えていた。
「あんの連中めっ……好き勝手言いやがってっ……う゛お゛ぉいっ!太陽!てめぇ、俺を離せぇ!!今すぐ3枚に卸してやるぅー!!」
「レオ、お前も拘束を解いてくれ!キャバッローネファミリーを動かす!!」
【ダメだ!/ダメ!】
スクアーロとディーノを解放する気が全くない太陽とレオ
「やっぱりこうなっちゃったか……ビアンキ姉、フゥ太兄もダメだからね?」
ソラの視線の先には、怒りMAXでポイズンクッキングを両手に持ち、今にも飛び出して行きそうな勢いのビアンキと
怒りMAXなまま、自身のランキング能力を駆使して、何かしでかしそうな勢いのフゥ太の姿があった。
「だから言いたくなかったんだよ……収拾がつかなくなるから。
とにかく……スクアーロ、ディーノ、ビアンキ、フゥ太、怒りを鎮めよ!!
今はその怒りをぶつける時じゃない!」
予想した通りの展開にため息つきながらも、怒りを露わにしている4人を鎮めるソラ
「う゛お゛ぉい!それはいずれ然るべき時が来たら、何らかの処罰を受けさせるつもりなのかぁ?」
「まぁそういう事になるね。でも殺しだけは絶対しないから、刀で斬ったりとかはないよ。スクアーロ」
「ポイズンクッキングも?」
「ないよ、諦めて。ビアンキ」
「ランキング能力は?」
「……場合によっては頼むかもしれないけど、今の所はないからしないでね。フゥ太」
「キャバッローネファミリーの力は?」
「要らない、これはボンゴレの問題だから手出し無用だよ。ディーノ」
4人の質問に次々と答えていくソラだった。
「とにかく今言える事はただ1つだけ。今は何もするな、然るべき時を待て。」
しばらく沈黙が続いていたが、スクアーロ達が互いに目線で合図し合った後…
『姫の望むままに。』
普段親しい人達を呼び捨てにしないソラの姿を見て驚き、しかもソラのその命令に誰も反論などせず、
ソラの指示に従うのを見て驚きを通り越して唖然としていたツナ達だった。
スクアーロやディーノをもう拘束しなくていいだろうと思った太陽とレオはそれぞれ解放した。
「とりあえずこの話はおしまい!それでチョイス戦だけど決戦の日まであと6日しかない。この短期間でどう修行していくかが問題だね。」
「ああ、そうだな。恭弥の方は心配しないでくれ!俺が必ず決戦に間に合うように鍛えるからさ!!」
「刀小僧の事は俺に任せろ!しっかり鍛えて決戦に向かわせるからよ!!」
ディーノが雲雀を、スクアーロが山本をしっかり鍛えると自信満々に言う。
2人の言葉を聞いた後、ソラは目を閉じて少し考え込むような素振りを見せた。
「ソラ、どうかしたのか?」
「何か問題あったか?」
突然考え込み始めたソラを見て首を傾げるディーノとスクアーロ
「……決めた。」
「「何を?」」
「何って…修行のサポートだよ。今までは大空の炎の事を隠してたからサポート出来る範囲が限られてたけど、もうその制限が無くなったし。
だからこれから決戦の日まで全面的にサポートする事に決めたよ。」
「マジで!?」
「やっとその気になりやがったか!」
ソラが本格的にサポートすると聞いて嬉しそうにj顔を綻ばせるディーノとスクアーロ
「ボスである白蘭と新たに解った真六弔花の存在……敵の戦闘能力は解らないけど中途半端な覚悟でどうにかなる相手じゃない事ははっきりしてる。
どこまで強いのかは現段階では知る事は出来ないけど、幻騎士なんかとは比べ物にならないくらい物凄く強いと思った方が良い。」
ソラのその言葉に誰もが息を呑む。
「だからそれを前提とし、それぞれの修行をレベルアップさせる必要がある。」
「なるほど、そこでお前の出番ってわけか。」
「今の修行で問題があるかどうか、そしてさらなるレベルアップに必要な事を助言するんだな?」
「ただ助言するだけじゃなくて、ツナ達の修行相手にもなるつもりだろ?」
ソラがこれからどうサポートしていくかすぐにピンと来たリボーン、スクアーロ、ディーノ
「その通りだよ。じゃあ…まずクロームさんはどう?修行の成果は出てるって聞いたけど。」
「ええ、順調よ。幻覚の強化も格闘の強化もどちらも少しずつ良くなってるわ。」
クロームの修行具合を嬉しそうに報告するビアンキ
「じゃあ…1度試してみない?幻覚がどうレベルアップしてるのか、この目で確かめてみたいし。どう?クロームさん」
「え……ソラが私の相手を?」
「うん。私、かなり強力な幻覚じゃないと本当に掛からないから、何度幻覚掛けられても平気だよ。」
ソラにそう聞いた後、ビアンキの方へ視線を向けたクローム
クロームの視線に気づいたビアンキは微笑みながら頷く。
「せっかくだから相手してもらいなさい?」とでも言うように。
「……なら、お願い…していいかな…?」
少し考えてからソラにお願いするクローム
「喜んでお相手致します。次は……隼人さんに教えてもらってる了平さんとランボ君だけど……
さっき聞いた修行の進み具合を聞く限り、あまり順調とは言えなさそうだね?」
「ああ。芝生頭もアホ牛もちっとも俺の話を聞きやがらなくてな……」愚痴る獄寺
「だからタコ頭の説明の仕方に問題があると言っただろ!俺は頭で考えるのはダメだと初めに言ったぞ!!」
「ランボさんもアホ寺に教えてもらいたくないって初めに言っただもんね!アホ寺、怒ってばっかりだもん!!」
「んだとっ!?芝生頭にアホ牛!!」
了平とランボが不満を言い、ブチキレる獄寺
「獄寺さん!何ランボちゃんを虐めてるんですか!!」
「んだと!?アホ女は黙ってろ!!」
「ハルはアホじゃありません!!」
ハルも加わって小さな喧嘩が始まった。
「ちょっ…4人とも、落ち着いて!!」
その様子を見て慌てて止めに掛かったツナ
「ちょっ…今は喧嘩してる場合じゃないよ!?」
「おい、獄寺!先輩もランボも落ち着くのな!!」
「おい、お前ら…今大事な話中だぞ!喧嘩なら後でいくらでもしていいからとりあえず落ち着け!!」
ツナに続くように、フゥ太、山本、ディーノが止めに掛かったが、喧嘩をしている彼らの耳には聞こえていないようだった。
しばらくの間は喧嘩を止めずに収まるのを待っていたが、
一向に収まる様子がなくて痺れを切らせたソラが行動を起こす。
「レオ、ゴムボールになって。”形態変化(カンビオ・フォルマ)”」
【了解。】
ソラの指示通り、すぐゴム製の野球ボールに姿を変えたレオ
ソラはそのゴムボールを喧嘩している4人の方へ軽く投げると、喧嘩していた獄寺、ハル、了平、ランボの頭を順番にぶつかっていった。
ソラが最初獄寺に命中させた後は、レオが自力で動いてそれぞれの頭にぶつけていったのだ。
ぶつけた頭はゴム製の為、痛くはなかったものの、騒がしかった喧嘩を止める事に成功した。
そこで喧嘩していた4人は誰が投げたのか視線を追うと、目が笑っていないソラと視線が合い、背筋を凍らせた。
それは喧嘩していた4人だけでなく、喧嘩を止めようとしていたツナ達も同じだった。
「ねぇ、喧嘩なら後にしてくれる?今、とっても大事なお話中なんだけど。あと、自分達の騒動を止めようとしてくれてる人達の声を無視するな。
喧嘩するのは別に構わないよ?でもその喧嘩を止めようとしてくれてる人の苦労も少し考えた方が良いよ?
特にボスの右腕を目指そうとしている隼人さんはね。」
少し怒ったような声で喧嘩していた4人に向かって一気に捲し立てるソラ
「はっ……す、すみません!10代目ぇ〜!!」
「すみません!!ハル、頭に血が上ってしまっていました!」
「う、うむ…すまん!」
「ごめんなざいだもんね〜!!だからソラ、ランボさんを怒らないで〜!!」
獄寺、ハル、了平、ランボはそれぞれ反省している様子だった。
「……すごっ…」
「ツナ、おめーもこれくらい出来ねぇとダメだぞ。」
「う゛っ…」
「ボスは時に守護者の間で起こる揉め事も止めないといけねぇんだからな。」
「なっ…!?結局そこに結びつけんのかよ!?何度も言うけど、俺はボスにはならないって言ってんだろ!?」
「はい、そこまで!リボ兄もわざと綱吉さんを困らせない。次それしたら、今アジトに置いてあるエスプレッソの在庫……全部燃やすよ?
(今のこの状況でパパが嫌がってる事をあんまり言わないであげて。せめて…本当の意味で元の時代に戻れるまでは。)」
「ま、待てっ!それだけはやめてくれ!?(わかった、言わない!だから燃やさないでくれ!!)」
外へ買いに行く事も出来ない今の状況で自分の好物であるエスプレッソが飲めなくなるのはさすがに困るのか、
リボーンはいつものポーカーフェイスも忘れて、慌ててソラに止めてもらえるようにお願いしていた。
【ソラ、元の姿に戻っていい?】
「うん、いいよ。ありがとう、レオ」
【どういたしまして。】
元の姿に戻りながらが返事を返す。
「えっと…話を戻すね?了平さんとランボ君の修行の事だけど……まず、了平さんとランボ君、
一応教えてもらってる身なんだから、話はしっかり聞かないとダメだよ。」
「す、すまん!だが、俺は頭で考えるのはどうしても極限にダメなのだ!!難しくて眠ってしまうのだぁ〜!!」
どうすればいいのか解らず叫び出す了平
「だってアホ寺の話、難しくて解らないんだもんね〜!!」
ランボも少し涙目になりながら叫んでいた。
「う〜ん…2人のその気持ち、解らなくもないけど……んで、隼人さん」
「な…なんだ?」
「前から言いたかったんだけどさ、ボスの右腕って要するに守護者のリーダーだよね?ボスが1番信頼する部下の事だよね?
それなのに守護者をまとめる側の人が冷静さを失って喧嘩してたらいったい誰が止めるの?
すぐにキレるその短期な所は少し直した方が良いと思うよ?」
ソラは獄寺に対して最もきっつ〜い言葉をさらっと言い放った。
ソラの容赦ない言葉に大ダメージを受ける獄寺
「それで…教え方だけど、確かに2人が言った通り、隼人さんのは理論的指導だから教え方が良くないというのは解らなくもないよ?」
「お、教え方が良くない…だと?」
「うん。隼人さんは頭から入って体に覚えさせるタイプだけど、了平さんは頭から入るより体から覚えるタイプだよ。コロ兄だって了平さんには口で言うより、
体に覚えさせた方がすぐに身につくから体に直接特殊弾撃ったって言ってたし。ランボ君はまだ小学校に上がる年でもないから勉強なんて無縁だし、
口で言うより、実際に傍で見本を見せて覚えさせた方がよっぽど効率的だよ。」
「おおっ!ソラは解ってくれるか!!」
「ランボさんもただ聞くだけよりそっちの方が良いんだもんね!」
「人に物を教える時は、自分を基本に考えるんじゃなくて、教える相手の事を考えて、その相手によって教え方を変えないと。
隼人さんの理論的指導、了平さんやランボ君には理解出来ないよ。もっと簡単に解るように教えないと2人だって聞く耳持たない。」
「お…俺の説明の仕方、そんなに良くないのか!?」
「うん、良くない。」キッパリ言うソラ
ソラのそのはっきりとした言葉を聞いて先ほどのダメージと合わせてさらに特大ダメージを受けて落ち込んだ獄寺
「ソ…ソラちゃん、さっきから獄寺君に容赦ないね……っていうかはっきり言い過ぎなんじゃ…?」
獄寺の落ち込みようを見てさすがに言い過ぎでは?と思ったツナ
「ダメだよ。相手の事を本当に思ってるなら、時にははっきり言わないとその人の為にならない。」
「ツナと違っておめーははっきり言うんだな?」
意外だという表情を浮かべるリボーン
「まぁね。私は相手の為になると思った時にははっきり言うよ?とにかく……このままじゃいつまで経っても次に進めないし、隼人さんも自分の修行を
本格的に始めないと間に合わないだろうから、ここからは私が交代して教えようかと思ってるんだけど…2人とも構わない?」
「おう!いいぞ!!」
「ランボさんもアホ寺よりソラの方が良いんだもんね!!」
2人とも、獄寺との仲があまり良くないせいか、とっても喜んでいた。
「す…凄い喜びようだね。…っというわけだから、隼人さんはこれから決戦の日まで自分の修行に専念してて?」
喜ぶ了平やランボに苦笑いするソラ
「け…けど、お前……書類とかあんだろ?大丈夫なのか?」
ショックからまだ立ち直り切れてない獄寺がソラの心配をする。
「ああ、それは問題ない。今から手を打つから。」
「手を打つって…何する気だ?」気になる獄寺
「スク、通信を許可するからイタリアに居るザンザスに“目を光らせといて”って言っておいてくれる?それで伝わるから。」
「目を光らせる?……っておい、それってまさかっ!?」
何の事か解った途端、顔を真っ青にするスクアーロ
「たぶん今スクが思ってる事で合ってるよ。」
「りょ…了解だ!(上層部の奴ら、とうとうこいつを怒らせやがった!?ソラがソレを言うって事はそれだけ怒ってるって事だぞぉっ!?)」
思い当たった事が確信に変わり、さらに背筋が凍るのを感じたスクアーロ
「ス、スクアーロ…今の指示ってもしかして……」
スクアーロ同様、ソラの出した指示が何なのかディーノにも心当たりがあるようだ。
「ああ、“あの”指示だ。」
「やっぱりかよ!?(うわ〜…ソラの奴を本気で怒らせちゃったのかよ!?)」
ツナ達はスクアーロとディーノがなぜ顔を真っ青にさせているのか気にはなったが、なぜか聞く勇気が湧かなかった。
「…ってわけでザンザスにちょ〜っとお願いしておくから大丈夫だよ。」
スクアーロとディーノの様子が変わってしまった原因を作った張本人のソラは何事もなかったかのように笑顔を浮かべていた。
「………わ…解った、お前がそう言うならそうさせてもらう。」
獄寺も気になりはしたものの、そこはグっと堪えた。
「で、最後に綱吉さんには、空いた時間に私が相手をしに行くからその時は覚悟しててね?」
「え゛!?か、覚悟って……ま、まさかっ!?」
「実戦訓練だよ。」
「えぇーーっ!?で、でもソラちゃん、俺と戦うのは嫌って前に言ってたよね!?」
「うん、嫌だよ?でもこの状況でそうも言ってられないからやる。別に全然戦った事がない訳じゃないしね。綱吉さんには死ぬ気モードの私と戦いながら、
ボンゴレ匣を使った実戦経験を積んでもらう。たまに超モードの私とも戦ってもらうからね?先に言っておくけど、少しでも手を抜けば
すぐにやられちゃうから最初から本気で来てね?私、例え相手が自分の父親でも戦ってる間は情けを一切掛けないから。」
ソラの言葉に驚き固まってしまったツナ
ソラもツナや京子の血を引いているだけあって、父親と同じくらい戦いを好まない性格をしているが、育った環境のせいか、
マフィアの世界の厳しさを幼いながらに理解しており、時には戦わざるを得ない時もあるという事も解っているので、
ツナと違って状況に応じて気持ちをすぐに切り替える事が出来るのだ。
「大空の匣に入ってる子の事についてはディーノさんより私の方が詳しいし、実戦訓練では超直感、死ぬ気の炎、同じ武器……
持ってる物が同じ者同士でしか経験出来ない事や新しく発見出来る事もあると思うんだ。」
驚き固まってるツナを放っておいたまま話を続ける。
「確かに超モードの時のソラの戦闘スタイルは父親であるツナのを真似たんだから、10年前から来たツナにはない戦い方もきっとあるはず……
よし、決めた!ツナ、たった今からお前の事は全てソラに一任するぜ!!」
「え…えぇーっ!?ディ、ディーノさんが教えてくれるんじゃないんですか!?」
「ははっ…初めはそのつもりだったんだけどよ、ソラがここまで全面的にサポートしてくれるとなっちゃ、
ツナの事はソラに任せた方が修行が上手く行くと思ったんだ。ミルフィオーレファミリーに絶対勝つためにもな。」
「!………解りました!俺は…いや、俺達は過去に帰る為にも絶対に勝たなきゃいけないんだ!!」
ディーノの話を聞いて、ソラとの修行が必要だという事を理解し、覚悟を決めたツナ
「決まったみたいだね?」
「うん、まだソラちゃんと戦う事には抵抗があるけど…」
必要な事だと解ってはいても、ソラが自分の子供だと解った今、出来れば戦いたくないという想いの方が強いツナだった。
「それは私も同じだよ?出来る事なら戦いたくなんかない。」
ツナの心境が手に取るように解るのか、ソラはツナに自分も同じ気持ちだと言う。
「ソラちゃん…」
「あの〜…ソラ殿、拙者との修行は…」
自分との修行はどうなるのか気になって控えめに聞いてきたバジル
「ああ、その事なんだけど…実はもう教える事はほとんど無いんだよね。」
「え…そうなのですか?」
「うん。後は他の人達のサポートをしながらひたすら自主練でも良いと思うよ?もちろん、時間の空いた時限定にはなるけど、
相手になって欲しい時は喜んでやらせてもらうけど。」
「本当ですか?」
「うん、本当だよ。まぁその時はついでに私の修行も兼ねちゃうけど。」
「ああ、アレですね?もちろん構いませんよ!炎のコントロールは本当に難しいみたいですし。」
バジルには何の事か解るようで、それでも構わないと言う。
「アレって何だ?」
「気になるなら見にくれば?」
気になって聞いてきたリボーンの問いには答えず、
知りたければ見に来いと言ったソラ
「……教える気はねぇのか…解ったぞ。んで?お前はどうすんだ?自分の修行…っというかいい加減教えてくれないか?
おめーのボンゴレ匣がどういった物なのか。」
リボーンはずっと気になっていたソラのボンゴレ匣についての事を聞く。
「………解った。正一さんから聞いた話だと、この匣は私にしか扱えない匣なんだよ。」
少し渋ったが、自分のボンゴレ匣について知っている事を話すソラ
「お前にしか扱えない?」
「うん。綱吉さんと京子さんには先に教えちゃったんだけど、この匣は炎が特殊なんだ。普通、匣は1つの属性の炎を注入するでしょ?」
「ああ、そうだな。」
「この匣は1つじゃなくて、2つの属性の炎を注入しないと開かない仕組みになってるんだよ。」
「2つだと!?」
「うん、この匣に大空属性と晴属性の死ぬ気の炎を注がないといけないんだ。しかもどちらも注入する炎が均等になるように
バランス良く入れる必要がある。片方が入れ過ぎても少な過ぎてもダメ、まったく同じ量の炎の注がないといけないし、
下手をすれば、使い物にならなくなってしまう代物。だからとても炎の扱いが難しい匣だって言われた。」
「………それ、修行必要じゃないのか?」
「なんで?」
「な、なんでって……」
「さっき言ったでしょ?私にしか扱えないって。他の誰にも真似出来ない、私だからこそ扱う事が出来るボンゴレ匣なんだよ。」
「ちょ…ちょっと待て!じゃあお前はバランス良く注入する事が出来るのか!?」
「うん、出来るよ?死ぬ気の炎のコントロールは死ぬほどいっぱいやってるし、今も銃を使う時は結構使ってるしね。」
「あっ……そういえばそうだったな…すっかり忘れてたぞ。」
ソラが銃を使っていた時の事を思い出しながら呟くリボーン
「後はあの匣がまだ未完成で中身が空っぽだって事。」
「匣の中身が空っぽ?」
「うん。正兄に頼めば、仕上げはしてくれるって言ってたけどね。私が知ってるのはこれだけ。
たぶんあのディスクを見れば他にも何か解るかもしれないけど…」
「ディスク…?あっ!あの日学校で見つけたやつ?」
並盛探索に出かけた日の事を思い出すツナ
「うん、そう。」
「確か…この時代の10代目がお前に残していった物だったよな?中身…見てないのか?」
獄寺はあのディスクの中身がずっと気になっていた様子。
「うん、見てない。見る気に…なれなかったから。」
「……よし、だったら今見るぞ。そのディスク、今すぐ持って来い!」
少し考え込んだ後、リボーンはソラに言い放す。
「え?」
「え、じゃねぇぞ。良いから持って来い!それからフゥ太、ノートパソコンを持ってきてくれねぇか?」
「うん、解ったよ。」
「ほら、ソラもさっさとそのディスクとやらを持って来い!」
「……わかったよ。」渋々としながらも了承した。
【ソラ、俺達を匣に戻してくれるか?】
「あ…うん、解った。」
ソラは太陽とレオを匣に戻してから、例のディスクを取りに向かったのだった。
少しして、例のディスクを持ったソラとノートパソコンを持ったフゥ太が小食堂へ戻ってきた。
フゥ太がノートパソコンを起動させ、さっそくソラが持ってきたディスクを挿入した。
「このディスク…どうやら映像データが入ってるみたいだね。」
「映像…?再生してみてくれ。」
リボーンに言われた通り、フゥ太は映像データを再生させた。
すると映像が流れ出し、黒スーツを身に纏い、高級そうなソファーの上に座っているこの時代のツナが映った。
「ツナ兄!?」
「ほぉ…これが10年後のツナか…顔つきがボスらしくなってんな。」
「これ、ホントに未来の俺なの!?」
フゥ太を始めとし、その場にいた全員が10年後のツナに驚いていた。
『やぁ、このディスクを見ているという事は、無事正一君と合流しているんだよね?
10年前の俺や守護者のみんなと一緒なんだよね?まずは……ゴメン!!』
ソファーに座ったまま突然頭を下げたツナ
『俺達大人の戦いに巻き込んでゴメン!!ソラだけじゃなくて、10年前から来た子供の頃の俺と他のみんなにも本っ当にゴメン!!』
パソコンの画面に映し出されているツナは、先程のボスとしての面影はまったくなく、ただ巻き込んでしまった事に謝罪していた。
「10年経ってもここは変わってねぇんだな…ボスが簡単に頭下げてんじゃねぇぞ。」
「でも、そこがツナ兄の良い所だよ。」
嘆くリボーンにそう言うフゥ太
『おい、いつまで謝ってるつもりだよ?あんた一応ボスだろ?ボスが簡単に頭下げて良いのかよ?』
『ちょ、ちょっと兄さん!?』
画面には写っていないが、ツナ以外に新たに2人の男と思わしき声が聞こえてきた。
「え…?未来の俺以外に誰か居るの?」呟くツナ
「この声はっ…!?」聞き覚えのある声に驚くソラ
『それ以上頭下げる気なら遠慮なく蹴飛ばすぞ?』
『ダ、ダメですよ、兄さん!?』
『ちょっ、ちょっと待って!蒼君、それだけはやめて!?』
『だったらさっさと次に進め、データは無限じゃねぇんだ。』
『解った!解ったから殺気を込めて睨まないで!!』
『兄さん!落ち着いて下さいよ!?』
『たくっ…』
「やけに親密そうなのな?」
「いったい誰なのだ?」
首を傾げながらも呟く山本、了平
「どこの誰かは知らねぇが、10代目に対してなんという態度だ!?」
誰かも解らないのに、ツナに対する態度を聞いてブチキレる獄寺
「ソラ、この声って…」
「うん…間違いないよ。この映像を撮っているのは……あの2人だよ。」
フゥ太の問いに確信を持つように呟く。
「ソラの知っている奴なのか?」
「うん、良く知ってるよ。写ってはいないけど、私がこの声を聞き間違えるはずがない。ソウ兄とアオ兄……双子の兄弟だよ。」
リボーンの問いに答えながら、画面に釘付けになっているソラ
『えっと…まず蒼君と葵君の事だけど、正一君と合流したばかりなら、まだ連絡が絶たれてる状態でも心配は要らないよ。
その……俺の指示で、全ての連絡手段を絶って、ミルフィオーレファミリーに潜入して貰ってる最中のはずだから。』
「えっ……はぁっ!?潜入!?何それ!?そんなの聞いてない!!」
答えなんか帰ってこないと解っていても言わずにはいられなかったソラ
『うん、今絶対驚いてるよね?怒ってるよね?その様子が頭の中にすぐに浮かんできたよ。』
『ああ、あいつ絶対怒ってるな。』
『怒ってますね。』
『まぁ……話すと長くなるから、俺の指示を聞いた理由を含め、詳しい事は2人と合流出来た時にでも聞いて欲しい。
2人とも、悪いけどその時はお願いね?』
『ああ。』
『はい、解りました。』
それぞれ返事を返す2人
『で、ここからが本題。ソラ、正一君からボンゴレ匣は…受け取ったかな?ソラの匣は元々作られる予定じゃなかったんだけど……以前、太陽から聞いたお願いの事を思い出してね、
それでいろいろ考えた後作る事に決めたんだ。だからあの匣は太陽に合わせて作られた匣なんだよ。この匣が特殊だという事は正一君から聞いて知っていると思うけど、
これはソラの持つ2つの属性…つまり、大空と晴の炎を混合させて初めて使える仕組みで、作る段階から難易度が高かったせいか、扱いが凄く難しい匣になってしまったんだ。
それにそのボンゴレ匣も他のボンゴレ匣と同じように高純度の炎を注入しなくちゃいけないから、必然的に開匣が可能なのがソラしか居なくてね。
だからソラ以外には扱えない特別な匣ってわけ。もちろん、使うも使わないもソラの自由だよ。無理して使おうとしなくて良いからね?』
『おそらくその匣はもしもの時の切り札になるでしょうが、だからと言ってあなたが無理して使う必要はありません。』
『確かにその匣を使えば戦力は間違いなく上がるだろう。だが、その匣を使うのが怖いと思っている内は使うな。』
『ソラはきっとその匣を使う事に恐怖を抱いているだろうなと思ってる。1つの炎だけでも凄いのにそれがもう1つある。2つの凄い炎が混合したらさらに凄い炎になる。
自分の炎が俺…いや、パパやリボーンよりも凄い事を実感してしまう……それが1番怖いんだよね?』
『それが解っているならなぜ作る?って疑問に思いますよね?僕もそれを初めて聞かされた時は思わず綱吉さんを問い詰めてしまいましたしね、兄さんと。』
『あの時はホントに生きた心地がしなかったよ?2人とも。』
『そう思わせるようにしたから当たり前だ。』
『自分の力に恐怖を抱いているのになぜ新たな力を与えるのかと問い詰めたくもなりますよ。』
『あはははっ………おっと、話が脱線しちゃったね。俺があの匣を作る事に決めたのはね、ただ太陽の要望を聞いただけじゃないんだよ?
ソラ、いつも何でも1人で頑張っちゃって人を頼らないでしょ?パパ、いつもそこを心配してたんだ。最近はマフィアとしての活動も始めちゃってより一層ね。
怪我をしてもすぐモモに頼んで治療しないし、単独で戦える太陽が居てもあまり出さないで戦うし、その時の状況で武器を変えられるレオもあまり出さないしで、
せっかく持たせたアニマル匣達を全然頼ってないんだもん。ソラがあの子達を大切に思ってるのは知ってるよ?道具として扱いたくないから使っていない事もね。
でもあの子達はソラを守る為に居るんだ。大切な友達を守りたい、助けたいって…その想いが凄く伝わってくるんだ。だから少しでもあの子達を頼ってくれるようにと思って、
太陽のお願いを叶えたんだよ。まぁ、ソラが了承しない限り、アレは中身が空っぽで未完成のままだから、今の段階ではまだ叶ってないんだけどね。』
『お前、人を頼らなさ過ぎ。』
『蒼君もこう言ってるしね。あの匣……出来れば使われない事を願っている。そう思ってるけど、太陽の願いを叶えてあげて欲しいとも思う。』
『もし、どうしてもその匣が必要だと感じたら…迷わず使え。ただし、無理して使おうとするなよ?』
『それと、匣とは別にソラに言っておく事がある。ソラ、今の戦いは力の出し惜しみなんかをしていたらきっと勝てるものも勝てなくなってしまう。
だから…だから今はパパとの約束の事は気にしないで、ソラが使う時だと思ったら力を解放しなさい。
大丈夫、ソラはリボーンにずっと鍛えられて丈夫な体になってる。今なら思いっきり使っても負担はあまり掛からないだろう。』
『ですが、それでも無茶はしないで下さいね?綱吉さんも僕達もそれは望んでいません。本当に解放すべきだと思った時にしか使わないようにして下さい。』
『葵君の言う通りだよ。ソラ、無茶だけはダメだよ?』
『あっ…綱吉さん、そろそろ…』
『うん、解った。……ソラ、昔の俺は何をやってもダメで頼りないかもしれないけど、ソラが心から頼ってくれたら全力でソラの事を守ってくれる。
俺だけじゃない、守護者のみんなだって同じだ。あと……ママもきっとソラの事を暖かく包み込んでくれる。パパとは違ったやり方でソラの事を守ってくれるよ。
だから……10年前から来たみんなに心を開いてあげて?必ずソラの想いに応えてくれるから。パパからのお願い。』
ツナには解っていた、ソラが10年前の自分達にすぐに心を開かないだろうという事を……
『俺と葵は絶対死なない。だから今は信じて待っててくれ。』
『必ずあなたの元に帰ります。それまで…待っていて下さいね。』
『最後に言っておくよ?今までにも何度か言ったけど、ソラの力は破壊の力じゃない、パパと同じ大切な誰かを守れる力だよ。
そしてパパ以上の力を秘めているその力はソラだからこそ使えるとても大きな力…他の誰にも真似出来ない、ソラだからこそ使える力。
だから大丈夫、ソラがその力を怖がらずにちゃんと受け入れていれば何も問題はない。ソラ、どんなに君が強くなろうと、君は俺の大切な娘だよ。
その事を…忘れないで?ソラ、君は俺やママにとって世界で1番大切で大事な宝物…大好きだよ。』
まるで今目の前に愛しい我が子が居るかのように、映像の中のツナは愛おしそうに、優しい眼差しでたった1人の自分の娘に向けて語りかけていた。
「あ…これで再生終了だ……他のデータは…何もないみたい。」呟くフゥ太
「ふむ……知れば知るほど、凄い匣なのは良く解ったぞ。ソラ、どうする?」
リボーンがソラの方へ振り向くと、ソラは涙を流していた。
「ソラ、大丈夫か?」
「あっ……な、何でもないっ…何でもないからっ…」
そう言いながら流してた涙を慌てて拭うが、溢れる涙がなかなか止まらないソラ
ボンゴレ匣の事が何か解るかもしれないとは思っていたが、まさか入っているのがただのデータではなく映像で、
父親であるツナが匣の事を話し、その後にはただ娘である自分への言葉をたくさん残してくれていた事が
ソラにとっては予想外な事でずっと心の奥に仕舞い込んでいた悲しい気持ちが溢れ出しそうになっていた。
悲しくて泣きたいが、父親は自分のせいで死んでしまったと聞かされてしまった今、
ソラの中では悲しくて泣きたい気持ちと自分を責める気持ちの2つがぶつかり合っていたのだ。
父親は自分のせいで死んでしまったのだから泣いちゃダメだと……
そう自分に言い聞かせていたソラだった。
泣いているソラを見ていられなくなって、ソラを抱きしめようと動き出したツナだったが、
そんなツナよりも先にソラを抱きしめた者が居た。
「京子ちゃん?」
京子の行動に驚くツナ
そう、今ソラを抱きしめたのは京子だった。
「ソラちゃん、我慢しなくていいよ?泣いていいよ?」
優しい声を掛けながらソラの頭を撫でる京子
「京子…さん…」
「もう良いよ、隠さなくて。」
「え…?」
「私…なんだよね?私が…ソラちゃんのお母さんなんだよね?」
『え……えぇーーっ!?』
京子の爆弾発言に絶叫してしまうツナ達。
ソラの母親が京子だと聞いたツナ達はとても驚いていた。
だが、誰よりも驚いていたのは、ソラ自身だった。
10年前のツナ達が来てから、父親の事はもちろんの事、
母親の事もリボーンと雲雀とバジル以外には1度も話していない。
父親がどんな人なのか、母親がどんな人なのかも……
それなのに、京子は自分が娘だと気づいた事に……
今回も完全オリジナルです。
6日後に備えて修行をどのようにするか、そして並盛探索の日に見つけたディスクについてをここで明かしました。
前回の話でソラの本当の実力が明かされたので、全面的にサポートする側に回らせました。
なんか、また獄寺に対してだけ辛口になっちゃってますね。(汗)
ホントに獄寺の事、嫌いではないのですが、なぜかこうなってしまいます。
ディスクに入っていた映像では、ツナだけでなく2人の男が登場!!
「蒼」と「葵」と呼ばれた2人の男はいったい誰なのか!?
それは今は明かせませんが、この先の話のどこかで登場させる予定です。
それでは標的77へお進み下さい。