ーー地下ボンゴレアジトーー
アジトに着き、通路を歩いていたツナ、ソラ、京子の3人。
今のソラはアジトに戻ってすぐに変装を解いたので元の姿だった。
変装していた時に使っていたウィックやコンタクトも今は保存用匣の中に仕舞っており、
普段は匣に入れていつでも変装出来るように持ち歩いているのだ。
「買い物に付き合ってくれてありがとう!ツナ君、ソラちゃん」
「これくらい何ともないよ。それより、俺達こそ今回の事で料理や洗濯とかがどんなに大変か良く解ったんだ。
これからは俺達も出来るだけ手伝うから。」
(ボイコット前とは違って凄い変化だ……でも、ママはパパのその気持ちを受け取るだけで修行に専念するように言うだろうね。)
そう思いながら、京子を見上げたソラ
「……ううん、良いの。ツナ君達の方がきっと大変なんだもん。」
「えっ…」立ち止まるツナ
京子とソラも立ち止まる。
「私達は戦う事は出来ないけど…その分、頑張ってるツナ君達が修行以外の時は、ここで快適に過ごせるように出来れば良いなって…」
「京子ちゃん…」
「その為にも、頑張って美味しい料理を作るね!!」
「ありがとう!京子ちゃん」
「綱吉さんには京子さんのその笑顔も元気の源だよ。」
「なっ!?」顔が一気に真っ赤になるツナ
「え…?私の笑顔が?」きょとんとする京子
「うん。」
「ソ、ソラちゃん、いきなり何言い出すの!?」あたふたするツナ
「え?この時代のボスがいつもそう言ってたからそう言っただけだよ?」
なんでそんなに慌ててるの?みたいに言うソラ
「なぁ!?」
「ってのが半分。もう半分は今までの行動見ててそう思ったから言った。」
ツナにだけ聞こえるようにボソっと呟くソラ
「ちょっ…」
「匣を暴走させて部屋を半壊した罰。」
ツナが慌ててるのを面白そうに見ながら、ソラは満面の笑顔でさらっと言い放った。
「う゛…」そう言われてしまえば、返す言葉がなかったツナ
「トレーニングルーム以外の修理って実は結構大変なんだよ?」
「ご…ごめんなさいっ…」
事故とはいえ、自分のせいで部屋を半壊させてしまったので、本当に申し訳なさそうに謝るツナ
「まぁ、それに関してはディーノさんにも言える事だけどね。」
「そういえばソラちゃんって…ディーノさんと仲悪いの?」
「えっ…なんで?仲良いよ?」
「ホントに?」
「うん、ホント。」
「だってディーノさんが抱きしめようとした時…」
ディーノがアジトにやって来た時の2人のやり取りを見て仲が悪いのかと思っていたツナ
「あれは部下の人達が傍に居なかったからだよ。昔、部下が傍に居なかったディーノさんと一緒に居た時に怪我をした事があるからさ。」
「そうなの!?」
「うん。何度か怪我しそうになってね、最初の頃は怪我せずに済んでたからそのままにしていたらしいんだけど、とうとう怪我しちゃって……
それにはさすがのボスも慌ててディーノさんに部下が居ない時は私に触れないように言ったんだって。」
「そ…そうなんだ。(確かに俺もソラちゃんがディーノさんが原因で怪我しちゃったのを見たらさすがに止めるかも…)」
ソラの説明を聞いてすんなりと納得してしまったツナ
「ディーノさんのあの体質はどうにかして欲しいな〜って思う事はあるけど、ディーノさんの事は好きだよ。
部下が居る時はすごく頼りになるし、時々ドジ踏むけどとっても優しい人だから。」
「そっかぁ〜…それを聞いて安心したよ。」なんとなくほっとした気分になるツナ
「あ…その食材、ハルちゃんがもう準備始めてるから持っていかないと…」
2人の会話を黙って聞いてた京子が買ってきた食材の事を思い出しながら呟く。
「………京子ちゃん」少し考え込んでから京子に話し掛けたツナ
「え?」
「ハルの所には、俺1人で行きたいんだ。」
真剣な表情になったツナ
「………うん、わかった。」
ツナの真剣な表情を見て任せる事にした京子
「ありがとう。」
ツナは京子とソラと別れて食堂へ向かった。
ツナを黙って見送る京子を見つめていたソラが少し考えるような素振りをした後……
「京子さん、ちょっとついてきて?」
「?…うん、いいけど…」
ソラは京子の返事を聞いてからその場を移動し始めた。
ーー地下14階ーー
「ソラちゃん、ここは?」
周りをキョロキョロ見回しながら聞く京子
「この時代の綱吉さん達と私の部屋がある階。」
「えっ…」
ソラは自分の私室の前まで着いた後、3つの本人認証をしてから扉を開けた。
「中に入って。」
「う、うん。」
ソラに言われた通り、部屋の中へ入った京子
「ここが…ソラちゃんのお部屋?」
そう言いながら部屋を見回す京子
「うん、そうだよ。」
ソラは京子と向かい合って顔を見上げ、静かに語りかけた。
「今、この階には私と京子さんだけ……だから、抑え込んでた気持ち……思いっきり吐き出してもいいよ?」
「!?」両肩が僅かに揺れた京子
「綱吉さんから、マフィアの事…今の詳しい状況を…全部、聞いたんだよね?」
「………うん。」頷く京子
「でも、綱吉さんを困らせたくなかったから、溢れ出そうとしてた気持ちを無理やり押し込んで笑顔で受け止めたかのように振舞った…」
「どうして…解ったの?」
「なんとなく。」満面の笑顔で即答する。
「な、なんとなくって…」呆気に取られる京子
(解るよ…だってこの時代のママもたまに無理して笑顔を作ってたからね……)
呆然としてる京子を見上げながら、心の中で呟く。
ソラには解るのだ、今の笑顔が本当の笑顔かそうでないのかが…
今は離れて暮らしているけれど、まだ日本で京子と暮らしてた時に見て知っていたから……
イタリアに居るツナとのテレビ電話でいつも楽しそうに話していた京子が極希に、本当にたまにだけれど、
無理して笑顔を作っている時がある事をソラはずっと傍で見ていていつの間にか解るようになってしまっていた。
そしてそんな時は決まって後になって、抑え込んでいた気持ちを溢れ出させて泣いていた事を……
当時は幼かったのに、その時の事が頭に焼きついてしまっていて、ぼんやりとだけれどソラは今でも覚えているのだ。
自分がその事を覚えている事は誰にも話しておらず、母親である京子でさえも知らない。
「もし、本当に1人になりたいなら、私もこの部屋を出るよ?」
「ううん、居て。」
京子は体に入れていた力を抜き、その場に座り込んでしまった。
「私……何も知らなかったっ……ツナ君がマフィアだって事も……ツナ君やお兄ちゃん達がこんな壮絶な戦いをしているって事もっ…何も、知らなくてっ…」
次から次へと溢れる涙を拭う事もせず、抑え込んでいた気持ちを吐き出し始めた京子
「知らなかったのが悔しいってのもあるけど……何より、怖かった?」
「うん…マフィアって悪いイメージしか湧いてこないから……ディーノさんみたいに良いマフィアも居るんだって事も聞いて解ったけど、それでもっ…」
「マフィアの世界には…良いマフィア、悪いマフィアが居る。初めからマフィアの世界で育つ者、マフィアと一般人の間で育つ者、生まれた時から
一般人として育ち、後からマフィアになる者……育ちはそれぞれ人によって違うけれど、マフィアの世界にはいろんな人が居る。
生まれた時からこれまで一般人として過ごしてきた京子さんにとってみれば、マフィアの世界が怖いと思うのは必然……それはハルさんにも言える事。」
「ソラ…ちゃんは…?」
「う〜ん…私はマフィアと一般人の間で育つ者……かな?マフィアの世界はちょっとだけ怖いけど…
でも、私が居るボンゴレファミリーは大好きだから……(上層部は別だけどね。)
ボスが優しい人だからなのか、ファミリーのみんなもとても優しくしてくれる。
私はそんな優しい人達を守りたいって思ってる。」
「そっか……ねぇ、教えて?この時代の私は……マフィアの事、知ってるの?」
「………うん、良く知ってるよ。知っている上で、綱吉さん達の事を今も変わらず接してる。」
言うか少し迷ったが、すぐに迷いを消し、京子の問いに答える。
「そっか。なら、私もしっかり受け止めなきゃっ!!…ツナ君はマフィアだけど、とっても優しい人だもん。だから……」
京子は目の前に居るソラをそっと抱き寄せた。
「しばらく、このままで居させて…?ツナ君やお兄ちゃん…他のみんなには、私がここで泣いていた事は言わないで…?」
そう言いながら、ソラをさらに抱きしめる京子
「………わかった、誰にも言わない。」
その後、京子は抑え込んでた気持ちを全て吐き出すように泣き始めた。
ソラはその間、ずっと黙って抱きしめらていた。
ーー地下5階ーー作戦室
あの後、しばらくして落ち着いた京子と部屋を出て地下7階で別れ、ソラは作戦室へ向かっていた。
作戦室に着くと、ジャンニーニ、ディーノ、リボーン、ツナ、獄寺、山本、了平の姿があり、ちょうど修行の進み具合を話している所だった。
「人の事より、お前はどうなんだ?ツナ」
「う…うん。さっき京子ちゃんと話してる時にヒントを貰ってね…」
リボーンの問いに、ボンゴレ匣を取り出しながら話し出したツナ
ツナは先程京子と話してた時の事をボンゴレ匣を見つめながら思い出していた。
「少しだけ、匣の事が解ってきたんだ。たぶん、もう暴れたりしないと思う。」
「お?」
「ついに!」
「すげっ!!」
「さすが10代目っス!」
「フっ…」
ディーノ、了平、山本、獄寺、リボーンはそれぞれ反応は違うが、ツナが匣を開匣出来るようになった事を喜ぶ。
「でも、まだやってみないと解らないけど…」
「そうか。ソラ、おめーの方はどうなんだ?」
「えっ!?」
リボーンの言葉を聞いて後ろを振り向いたツナ
振り向いた先にはソラが居た。
「ソラちゃん!いつの間にっ!?」
いつの間にか来ていたソラに驚くツナ
「みんなが修行の進み具合を話してる最中に。」
「声掛けてくれれば良かったのに…」
「ごめんね?」
「んで?おめーの修行の進み具合はどうなんだ?あと、ボンゴレ匣の事はどうするか決めたか?」
「………言わないとダメ?」ちょっと困ったような顔をしながらリボーンに聞く。
「その様子だと、修行はともかく…ボンゴレ匣を使うかどうか、まだ迷ってんな?」
「えっと……」目線を泳がすソラ
「いい加減決めろ!ボンゴレ匣を使うなら、それに合った修行も少しはやっとかねぇとダメだろ!?」
リボーンにしては珍しくソラに厳しく言い放った。
「そんな事言われても…」
リボーンにそう言われても、どうするかはっきり決まらず、本当に困った表情を浮かべていた。
(ソラがここまで躊躇する理由は何なんだ……?それにあのボンゴレ匣……いったいどういう匣なんだ??
ディーノも知らねぇって言うし……この時代のツナ…おめぇはいったい自分の娘にどんな匣を託したんだ?
どんな匣か解らないと、何も助言してやれねぇじゃねーか!!)
なかなか決断しないソラを見つめながら、あれこれと考えていたリボーン
『ランッ…』
「何の音だ!?」困惑した声を出すディーノ
『ラン、ランッ…』
「モニターにっ…」
ツナが言った通り、モニターに何かが映し出されていた。
「ラン」を連呼し続けながら、白くて小さい球がいくつも出て来て、1つの固まりが出来始める。
「何の放送だ?子供向けの歌番組か?」
「んな訳あるか!テレビじゃねぇんだぞ!!」
おかしな事を言う了平に思いっきりツッコむ獄寺
「ジャンニーニ、何これ?」
「それが解りません!何者かに回線をジャックされてます!!」
ツナの問いにジャンニーニも解らないと言う。
「回線をジャック!?セキュリティを潜り抜けてきたの!?」驚きの声を上げるソラ
「ダメです!止められません!!」
ジャンニーニがなんとかして止めてみるが、まったく効果がなかった。
『ランランランランラーン、ビャクラン!』
1つの固まりの中からミニ白蘭が画面に現れた。
「なぁ!?」現れたミニ白蘭を見て叫んだツナ
「やはりテレビ番組のようだな。」
「バカか!?今白蘭って言っただろ!!」
またまた了平にツッコむ獄寺
(白蘭!?どうして回線をジャックなんてっ……あっ、そういえば今日で10日目だ!…って事は、チョイスについての連絡…?)
白蘭が回線にジャックしてきた事が解って驚いていたが、すぐに冷静になって白蘭が通信してきた理由を考え始めたその時、
メローネ基地での白蘭とのやり取りが頭の中でフラッシュバックし、その訳がすぐに解ったソラだった。
『フフフっ…』
映像が切り替わり、本物の白蘭が姿を現わす。
「どう?面白かったかい?」
「白蘭!!」
「退屈だから、遊びに来ちゃった。……食べるかい?」
白蘭と共に映し出されていたパフェを食べながら話す白蘭
「やろうっ…おちょくってんのか!?」怒鳴り声を上げる獄寺
「白蘭、からかってないでさっさと本題に移して下さい。」
静かに、けれどどこか少し怒ったような声で言うソラ
『おや?ソラチャン怒っちゃった?怒るとせっかくの可愛い顔が台無しだよ?』
「“本題に”入って下さい。」白蘭の言葉を軽く受け流しながら、本題を話すように促すソラ
『アハハっ…流されちゃった!まぁいいや、本当はチョイスについての業務連絡さ。』
「えっ…業務連絡?」白蘭の言葉に思わず拍子抜けしてしまうツナ
『ほら、詳しい事はまた後で知らせるって言ったよね。6日後のお昼の12時、並盛神社に集合。』
「6日後…」
「並盛神社…」
山本、獄寺が呟く。
「並盛で戦うの!?」
『う〜ん、どうだろうね?とりあえず必要な準備して、仲間は全員連れて来てね。少なくとも過去から来たお友達は全員だよ。』
ツナの問いにはっきりとは答えず、過去から来た者は全員来るように言う白蘭
「何!?」
「全員ってっ…」
「京子ちゃんやハルも!?」
「なんだと!?」
獄寺、山本、ツナ、了平がそれぞれ驚く。
(そんなっ…ママやハル姉も連れて行かないと行けないの!?)
表面上は平然を装っていたが、内心動揺しまくっていったソラ
『そこに意味があるんじゃないか…みんなで来ないと君達は失格だからね。』
今までニコニコしていた白蘭が突然真顔になってツナ達に言った。
「なっ!?」
「ちょっと待て!!」
『それともう1つ。』
「もう1つ…?まだ何か条件があるの!?」
白蘭の言葉を聞いて、ツナが悲鳴を上げる。
『ソラチャン、チョイスには君もボンゴレファミリーとして当然参加してもらう訳だけど……
『陽色の姫君』じゃなくて、『ボンゴレの姫君』として参加して貰うよ?』
「なっ!?」
『フフっ…『陽色の姫君』としての戦いはもう十分見たから、今度は『ボンゴレの姫君』として戦う君の姿を見たいんだ。』
「………もし、チョイスでも『陽色の姫君』として戦っていたら?」
『そりゃもちろん!その地点で君達の失格と見なすよ!!』
「おい!何なんだよそれ!?『陽色の姫君』と『ボンゴレの姫君』とでどう違うんだよ!?」
モニターに映る白蘭を睨みつけながら怒鳴る獄寺
『おや?ま〜だ知らなかったのかい?フフっ…』
「何がおかしい!?」プチキレる獄寺
『そっか……そういう事か。』
1人何かに納得する白蘭
そんな白蘭に首を傾げるツナ達。
『ソラチャン、君は綱吉クン達に自分の事を明かしていないから、今まで『陽色の姫君』として戦ってたんだね?』
「………」何も答えないソラ
『黙ってるって事は当たりかな?』
「どういう事だよ…?何が違うって言うんだよ!?」
『そうだね〜…戦い方がまったく違う…かな?』
獄寺の問いに答える白蘭
「戦い方…?」
「ソラは銃と体術を使って戦うんだろ?たまに違う武器で戦ったりもするみてぇだけど…」
「あとは俺と同じ晴の炎で戦うって事くらいしか知らぬぞ?」
ツナ、山本。了平の順に呟く。
『う〜ん、君達が知ってるのは、『陽色の姫君』としてのソラチャンであって、『ボンゴレの姫君』としてのソラチャンの事は何も知らないんだよ。
そう…ソラチャンが本当に得意とする1番の武器は銃じゃないし、死ぬ気の炎だって晴の炎だけじゃない。』
その言葉を聞いて、それぞれ驚くツナ、獄寺、山本、了平
『ねぇ、そうだろ?ソラチャン』
「白蘭…どうやってその情報をっ…!?例え、ボンゴレにハッキングしていたとしても、
その情報だけは絶対に出てこないはずですよ!?どうやってその情報を掴んだんですか!?」
白蘭の言った事を否定せず、その情報をどこで手に入れたか問う。
『さぁ…どこかな〜?』答える気がない白蘭
「白蘭!答えて下さい!!どうしてあなたがそれを知っているんですか!?」
動揺しているせいか、いつもの冷静さを欠いてしまっているソラ
『フフっ…思ったよりかなり取り乱しているね?さすがのソラチャンでもこればかりは動揺を隠せない…か。』
「白蘭…」白蘭とソラのやり取りを見て困惑するツナ
『あ…でね、『ボンゴレの姫君』っていうのはね…』
「!?…ジャンニーニさん!急いで回線をなんとかして切って!!」
白蘭にこれ以上話される前に回線を切るようジャンニーニに指示を出す。
「は、はいぃっ!!」ソラに言われ、急いで回線を切ろうとし始めたジャンニーニ
「白蘭!それ以上言わないで下さい!!」
『そうはいかないよ。だってコレを言わなかったら、君…チョイスで『ボンゴレの姫君』として
戦うとしても本当の“本気”を出してくれないでしょ?』
「っ…」何も言い返せないソラ
『さて、話を戻すよ?『ボンゴレの姫君』はね…』
「おい、ジャンニーニ!まだ回線は切れないのか!?」
「今やってますが、回線を切る事が出来ません!!」
キーボードを打ちながら、ディーノに返事を返すジャンニーニ
『ボンゴレ直系の女性の事を…『ボンゴレの姫君』と呼ばれているんだ。』
「な…なんだって!?」
「じゃ…じゃあソラも10代目と同じ、ボンゴレの血を…!?」
「どういう…事、なのな?」
「むぅ〜…極限に解らーん!?」
ツナ、獄寺、山本、了平は困惑の表情を浮かべる。
『あ、そうそう。回線を切ろうとしたって無理だから!』
未だ回線を切ろうと奮闘してるジャンニーニに言い放った白蘭
「くっ…悔しいですが、白蘭の言う通り、ダメでしたっ……」
悔しそうな声を出しながら項垂れるジャンニーニ
「くそっ…」悔しそうな表情を浮かべるディーノ。
『フフっ…それだけじゃないよ、綱吉クン。』
「えっ…」
「!?…白蘭!それ以上言うな!!」何を言おうとしているのか、超直感を使わずともすぐに解り、阻止しようとしたソラ
『いいや、言わせて貰う。これで君が本気を出してくれるならね……
君達は今まで気にならなかったのかい?ソラチャンが誰の子供なのかを…』
「え…?」
「言われてみりゃ…」
「確かに…」
「誰なのだ?」
ツナ、獄寺、山本、了平が今気付いたかのように呟く。
「白蘭!!」
『ソラちゃんはね…この時代のボンゴレ10代目、沢田綱吉クンの1人娘なんだよ!』
ソラが止めるのを軽く受け流しながらツナ達に爆弾発言をした白蘭
「え……え゛ぇーーっ!?お、俺の娘ーーっ!?」
「じゅ…10代目の…娘だと!?」
「ツ…ツナの娘!?」
「何ぃーっ!?沢田の娘だったのか!?」
白蘭から衝撃の事実を聞かされ、ツナ、獄寺、山本、了平はそれぞれ驚く。
『フフっ…ビックリした?…当日、『ボンゴレの姫君』として参加してなかったら失格だからね?ソラチャン』
「白蘭っ…」モニターに映る白蘭を睨みつけるソラ
『だから可愛い顔が台無しだって言ってるじゃん。あっ…そうだ!あれも言った方が本気を出してくれる気になるかな?』
「?」何の事か解らず、首を傾げるソラ
『フフっ…以前、僕がこの時代の綱吉クンに交渉の席を設けた事があったよね?
実はその時の交渉条件には、ボンゴレリング以外にもう1つあったのさ。』
「!?…ボンゴレリング以外に、もう1つ?(何だろう?この先を聞いちゃいけないような気がしてきた…)」
白蘭の言葉は気になるが、なぜかこの先を聞いてはいけないと超直感が訴えているような気がした。
『その条件はね……“『ボンゴレの姫君』か『陽色の姫君』を僕のファミリーに頂戴!“だよ。』
「!?…なん…だって…!?そんな話、一言もっ…」
『やっぱりね〜…綱吉クン、その事をソラちゃんに伝えてなかったんだ。でもこれ本当、あの時綱吉クンは僕にこう言ったんだ…』
“どちらもボンゴレにとって……いや、俺にとって大切な子だ!お前なんかには絶対に渡さない!!”
『…って言って、その条件を呑まなかったんだよね。ボンゴレリングが失われて渡す事が出来ないなら、そのもう1つの交渉条件の方を
果たして貰えれば交渉成立にしてあげるって言ったのに、彼はそれをしなかった。1人の犠牲で多くの者が救えたかもしれなかったのに、
彼は多くの者より、その大切なお姫様を守るために……“死んだ”…そう、君を守る為に死んだんだよ?ソラチャン』
顔を俯かせ、怒りを抑えきれないのか、体を震わせていたソラ
その話を聞いたツナ達もかなりの衝撃を受けていた。
『さっきも言ったけど、ソラチャンに出した条件だけじゃなくて、過去から来たお友達も全員連れて来ないと失格だから。じゃ、修行頑張ってね〜!』
白蘭がそう言った後、あれだけ何やっても回線が切れなかったのに、いとも簡単に切れてしまった。
「そんなっ…京子ちゃん達を戦闘の真っ只中へ!?」
「そんな事は、この俺が許さん!!」
「許すとか、許さねーの問題じゃねー!!行かなきゃ、戦う前に失格なんだよ!!」
「随分一方的だな…」
「ダメだ!ダメだー!!」
「どうする、リボーン?」
騒ぐツナ達を見ていたディーノはリボーンに相談する。
「ここは、白蘭の言う通りにするしかねぇな…ソラもそれでいいな?」
ソラは黙って頷く。
「そ…そんなっ…だってっ…」混乱するツナ
「こっちには選択権ねぇんだ、だったらやるしかねぇだろ。」
「あいつらに話すしかねぇのか…」
「秘密にしたまま、連れて行く訳にはいかねぇよな…」
「何!?それはダメだー!!」
獄寺と山本の言葉を聞いて、今の状況を京子達に話す事を固く拒む了平
「こうなると、ツナが今の状況を全て説明したのは正解だったかもな。」
『え!?』
「ご…ごめん、俺…話したんだ!やっぱり京子ちゃん達にも事実を知ってもらうべきだと思って…」
「沢田!」
ツナの名を呼びながら傍にある壁を殴る了平
「京子は…どうなった!?」
壁を殴った後、ツナに聞く。
「お…お兄さんっ…あの…」
「京子は…どうなったっ…」
「てめー、何暴れてやがる!?」
「落ち着こーぜ、先輩!!」
「京子はどうなったー!京子は〜!!」叫ぶ了平
「ちゃ…ちゃんと聞いてくれました。」
了平の問いにしっかり答えるツナ
「ツナの判断は間違ってなかったと思う。了平…この状況では、遅かれ早かれ、真実を話さざるを得なかっただろう…」
ディーノにそう言われ、少し落ち着きを取り戻すが、険しい表情は崩さないままだった。
「お兄さん…」
「ソラ、ボンゴレにハッキングして知られる場合、どこまでのはずだったんだ?」
リボーンはさっきの通信で気になった事をソラに聞く。
「……『陽色の姫君』としての戦闘能力は解っても、『ボンゴレの姫君』としての戦闘能力に関してはまったく解らないはずだよっ…
だってそっちはこのアジトのトレーニングルームか、イタリアにある屋敷の地下のトレーニングルームでしか使った事ないもん!」
「ツナが…使う場所を制限したのか?」
リボーンのその問いに黙って頷く。
「ソラちゃん…(それにしてもさっき白蘭が言ってた事って……本当の事、なのかな?ソラちゃんが俺の娘だなんて……)」
ソラの心配をしながらも、先程白蘭が言った事が頭が離れず、混乱していたツナ
「…にしても、白蘭の奴、どうやって回線に入り込んできたんだ?」呟くリボーン
「セキュリティがザルなんだぁ…アマチュア共がぁ!」
この場に聞こえた男の声に聞き覚えがあり、全員入口の方へ視線を向ける。
「あ!?」
「て…てめーは!?」
「スクアーロ!!」
ツナと獄寺は驚き、山本は嬉しそうにしていた。
「土産だ!!」そう言いながら、持っていたマグロをディーノに差し出す。
「ああ。」スクアーロからマグロを受け取る。
(なぜにマグロ…?)心の中でツッコミを入れていたツナ
「遅かったな、スクアーロ。生徒がお待ちかねだぜ。」
「えっ…生徒…?」呟くツナ
「!…もしかして、俺の修行の家庭教師って…」
ディーノの言葉でピンと来た山本
スクアーロは黙ったままスタスタと山本の前まで行くと、いきなり山本を殴った。
「山本!」
山本の元へ行こうとしたツナを止めるディーノ
スクアーロが左頬を殴った後、左膝で腹を蹴り、さらに攻撃をしようとしたその時…
標的だった山本をその場から退かし、スクアーロの攻撃を受け流して、
さらにスクアーロの顎にアッパーを喰らわした者が居た。
「山本!大丈夫!?」
山本に駆け寄るツナ
「あ、ああ…大丈夫だ。」
スクアーロにやられた所がまだ痛むからか、
顔をしかめてはいたが、大丈夫そうだった山本
「ぐっ…ソラ、何しやがる!?」
自分を殴って来たソラを怒鳴るスクアーロ
「スク、そこまでだよ。」
「ふざけんな!そこを退け!!」
「断る!武さんが幻騎士に負けた事を聞いて怒りを露わにしているのは解る。
けれど、これ以上は許さない…怒りを鎮めろ、スクアーロ!」
静かに、けれどどこか怒りを抑え切れていない声でスクアーロに言う。
「!!……ちっ…」
ソラに言われて大人しく怒りを鎮めるスクアーロ
「…ごめん、スク」少し落ちついたソラが謝る。
「謝るなぁっ…てめーにそれを使わせた俺がわりぃんだ…気にするなぁっ」
そう言いながら、ソラの頭を撫でるスクアーロ
怒っていたスクアーロが大人しくなったのには訳がある。
スクアーロが言っていた“それを使わせた”とは、「ボンゴレの姫君」の特権の事である。
ソラは普段、親しみを込めて「スク」と呼ぶが、「スクアーロ」と言った時は、特権行使をした時だけなのだ。
スクアーロは、自分のボスであるザンザスからヴァリアーに所属する全隊員に向けて、
「ボンゴレの姫君」の命令には絶対背くなという指示が出されていた事もあり、
「ボンゴレの姫君」として出された命令に従い、怒りを鎮めたのだ。
「ソラ、刀小僧は連れて行くぞ!いいな!?」
「今すぐはダメ。」
「う゛おぉいっ!?」
「白蘭との話で状況が変わった、連れて行くならこれからの話が終わった後にして貰う。」
「……それは姫としての命令と受け取って良いのか?」
「……そう取って貰っても構わない。」
「解った。」
「ありがとう、スク」
「沢田!!」
ソラがスクアーロと話していたその時、了平の大声が聞こえてきた。
聞こえた方に全員が振り向くと、了平がツナの顔面に向かって1発殴った。
「おい、了平!?」驚きの声を上げるディーノ
「大丈夫ですか!?10代目!……10代目に何しやがる!?」
ツナを殴った了平にキレる獄寺
「やはり京子を巻き込んだ事は許せんっ…だが、俺も男だ!この1発で次に進む事にする!!」
「てめー!よくも10代目に!!」
「落ちつけ、獄寺!!」
了平に殴りかかろうとしている獄寺を拘束して止めるディーノ
いつもは山本が止めるが、今はスクアーロからのダメージで動けないので、代わりにディーノが獄寺を止めていた。
「放せ、跳ね馬!」暴れる獄寺
獄寺が未だ暴れる中、了平に殴りかかる者が居た。
殴る音が聞こえ、ツナ達が一斉に了平の方へ視線を向けると、
了平が倒れており、彼の前にはソラが立っていた。
そう、了平を殴ったのはソラだったのだ。
「いきなり何をする!?」
起き上がって殴られた頬を摩りながら怒る了平
「了平さんこそ、さっき綱吉さんをいきなり殴ったでしょ!?」
「ぐっ…」言い返せない了平
「京子さんを巻き込んだ事は許せない?ふざけるな!!綱吉さんがいつ京子さんを巻き込むような真似をした!?今まで了平さんの言葉通り、
マフィアの事に関わらせないようにしてくれてたでしょ!?あらゆる危険から守ろうと全力で戦ってくれてたでしょ!?」
了平が取った行動が許せず、一気に捲し立てるソラ
ソラの言葉にはっとした表情になる了平
「それに…巻き込むのがそんなにいけないなら……私だって了平さんに殴られていても、おかしくないよ…」
「何…?それはどういう…?」聞き返そうとする了平
「ソラ、落ちつけぇっ…」
ソラの意外な行動に驚き唖然としていたが、すぐに我に返り、
ソラの肩に触れながら落ち着かせるスクアーロ
スクアーロに言われてはっとした表情になり、徐々に落ち着きを取り戻したソラ
「いきなり殴ってごめんなさい。……ディーノさん、大事な話をするから恭兄と哲兄をこのアジトに今すぐ連れて来て。もちろん、部下のロマーリオさんを連れてだよ?
ジャンニーニさんは今このアジトに居るメンバー全員を小食堂へ大至急集めてくれる?」
了平に謝罪した後、ディーノとジャンニーニにそれぞれ指示を出すソラ
「お、おう!解ったぜ!!」
「りょ、了解です。」
「ソラ、その話…俺も参加していいか?」
「うん、良いよ。でも殺気を思いっきり抑えてね?一般人も居るから。」
「了解だぁ…」
「私はボンゴレの上層部にこの事を報告してから行く。」
そう言いながら作戦室を出て行くソラ
「あ!ソラちゃん!?待ってっ!!」
後ろでツナが自分を呼ぶ声が聞こえるにも関わらず、立ち止まる事なくその場を去っていくソラだった。
さっき白蘭が言っていた事が本当なら、パパはっ…パパは私のせいでっ……
私のせいで、パパはミルフィオーレに、白蘭に殺されてしまったんだっ……!!
ごめんなさいっ……ごめんなさいっ……パパっ!!
ソラは白蘭からもたらされた衝撃の事実を聞き、動揺を隠せなかった。
知らなかったとはいえ、父親であるツナが自分を守るために死んでしまったと聞かされれば、
誰だって動揺もするだろう。ましてソラはまだたった6歳の子供なのだから……
自分のせいで父親を死なせてしまったと責任を感じたソラは自分をとことん責め続けるのであった。
今回の話は、チョイス開催の業務連絡のために白蘭が連絡を取った所ですね。
この話でソラの正体がとうとうツナ達に明かされました。
いつ、どういう流れでツナ達にソラの正体を明かそうかな〜?っと随分と悩みましたよ。
正一が味方と解った時にするか、アルコバレーノの試練中にするか、
戻ってきて立体映像の白蘭との話の中にするか……
とにかくいくつかのパターンを考えた結果、こうなりました。
それでは標的75へお進み下さい。