ーー地下14階ーソラの部屋ーー
ツナ達と別れた後、ソラはまっすぐ自分の私室へ戻って来ていた。
今はベッドに寝転がって、先程の出来事を思い出していた。
「ずっとこういう問題が起きるって、予感はしてたけど……1番、当たって欲しくなかったんだけどな……」
どこか悲しそうに呟くソラ
「どちらかになんて…つけないよ……パパとママ…どちらも見て知ってるからっ……パパ達がママとハル姉を
巻き込みたくないって気持ち……ママとハル姉が力になりたいって気持ち……どっちの気持ちも解るからっ……」
こういう時、自分の持つ超直感を少し恨めしく思ってしまう。
父親であるツナよりも直感力が働き、知りたくない事まで直感してしまうからやっかいだ。
恨めしく思った所で、この超直感が無くなるわけでもないが、時々こうやって1人葛藤してしまうソラだった。
しばらく経ち、落ち着いたソラは体を起こした。
「とりあえず、これからどうするかだよね。どちらの手助けも出来るように中立立場を取ったんだし。ママ達はともかく…問題はパパ達だね。
10年前のパパ達の中で誰か家事出来る人って居たっけ?………様子を見てこよう、なんか心配になってきた。」
ベッドから降りて部屋を出ると、ツナ達の所へ向かったソラだった。
ーー地下7階ーー
(この階にパパ達の気配があるんだけど……)
気配を辿ってツナ達の所へ向かっていたソラ
そして辿り着いたのは小食堂だった。
中に入ってみると……
「申し訳ありません!!」
ツナに向かって土下座している獄寺の姿があった。
「極限に腹ペコだ!もう我慢出来んぞ!!」空腹を訴える了平
「お・な・か・すいたー!!」ランボも泣きながら空腹を訴える。
「………どうしたの?みんな……なんとなく状況は読めたけど…」
「よう、ソラ!いやぁ〜、実はな……」
ソラに気付いて説明しようとした山本
「とりあえず、空腹満たすのが先だね。みんな、食べられれば何でも良い?」
『えっ?』
「その様子だと誰も料理出来なくて、晩御飯が無いんじゃないの?」
「そ…そうだけど…」
「じゃあ、もう少しだけ待ってて?」
ツナにそう言った後、テーブルの上に居たランボに視線を向けるソラ
「ランボ君、ちょっとこっちおいで?」そう言いながらランボを手招きする。
「?…なんだもんね?」テーブルから降りてソラの前まで来たランボ
「ランボ君、あーん…」
ソラに言われた通り、ランボが口を開けると、その口の中に飴玉を放り込んだ。
「その飴玉食べながらもう少しだけ我慢しててくれる?ランボ君」
「……山本やアホ寺みたいにならない?ちゃんとした食べ物出てくる?」
「?…2人が何したか知らないけど、ちゃんとした御飯は出るよ。」
「じゃあ待つ!!」
「ありがとう、すぐに用意するからね?」
そう言いながら、ランボの頭を撫でるソラ
「ソラ、料理出来るのか?」
「うん、出来るよ。了平さんももう少しだけ待ってて?」
そう言いながら、傍に来た了平にも飴を渡すソラ
「……うむ、解ったぞ。」そう言い、飴を受け取る了平
「綱吉さん達もいいかな?」
「う…うん。」頷くツナ
「じゃ、決まり!状況は後で聞くとして、すぐに作るね!!」
そう言ってから、冷蔵庫の中を見に行ったソラ
「え〜っと……あれはあるし、これもあるし…無い物は取りに行くとして……うん、決めた。とりあえず御飯を先に炊かないとね…」
作る料理が決まり、すぐに取りかかり始めたソラ
米を素早く洗って炊飯器に放り込み、すぐに早炊きモードで炊き始めた。
その後、ここには無い材料を食料庫へ取りに行き、それから料理に取りかかっていた。
食料庫に行く際、ツナもついていって持って行くのを手伝った。
少し時間が経ち、良い匂いが漂ってきた。
「ん?この匂いは…鶏の唐揚げだもんね!!」
「おぉ!良い匂いがする!早く食べたいぞ!!」
空腹のランボと了平がそう言う。
ランボが言っていた通り、鶏の唐揚げを作っていたソラ
「揚げ物しながら、野菜切ってる…」
「作るの早っ…」
「切るのも早いのな…」
ツナ、獄寺、山本は鶏の唐揚げを揚げながら、野菜を切っているソラを見ながらそれぞれ呟く。
ソラが料理を作っている所を見る限り、どうやらとても手際が良いらしい。
その時、炊飯器が鳴った。
「あ、御飯炊けたみたいだね。悪いけど、誰でも良いから大きいお皿を2枚出して、
御飯を全部移してくれない?どちらもだいたい同じ量になるように。」
手が離せないので、ツナ達にお願いするソラ
「おっ、じゃあ俺がやるのな!」
ソラのお願いに山本が応じ、すぐに大きい皿2枚を取り出し、炊飯器から御飯を全部皿に移していた。
「ソラちゃん、御飯を全部お皿に移してどうするの?」
「これから炒飯作るんだよ、2回。」ツナの問いに答えるソラ
「ソラー!まだ出来ないのー!?ランボさん、もう我慢の限界だもんね〜!!」
「もうすぐ出来るから待ってて!」
「早くだもんね〜…」
「極限、腹ペコだっ…」
ランボと了平は本当に限界が近いようだ。
お皿に切った野菜を盛りつけ、その上にたった今揚げたばかりの鶏の唐揚げを乗せる。
「よし、唐揚げの方は終わり!!」
鶏の唐揚げを作り終えると今度は炒飯作りに取りかかった。
必要な材料はさっきの野菜と一緒に切っていたので、後は炒めるだけだった。
ただし、1回ではなく、2回炒めなければならないが……
少しして1回目の炒飯が出来、大きな皿に移した。
「はい、出来あがり!武さん、これ持っていって?ランボ君、お待たせ!もう食べられるよ!!」
「わーい!!やっと食べられるんだもんねーー!!」
「極限食うぞーー!!」
「綱吉さん達も食べてて良いよ?すぐに終わるから。」
「俺達だけ先に食べるなんて……」
「ですが10代目…俺達、修行の上、慣れない家事のせいで空腹っスよ?」
「う゛っ…でもっ…」
躊躇っていたツナだったが、その時ツナのお腹が鳴った。
「あっ…」
「お腹鳴ってるよ?気にしなくて良いから、温かい内にどうぞ。」
躊躇ってるツナにそう言ったソラ
「ツナ、ここはソラのお言葉に甘えて食べねぇ?」山本もそろそろ限界のようだった。
「じゃ、じゃあ…お言葉に甘えて…食べよっか?獄寺君、山本」
「はい!」
「おう!」
ツナ、獄寺、山本も席についた。
『いただきまーす!!』
「!…美味しい!!」
「悔しいが、美味いぜ…」
「美味いのな!」
ツナ、獄寺、山本がそれぞれ美味しいと言った。
「それは良かった。次のもすぐ出来るからどんどん食べてね!」
2回目の炒飯もすぐに出来上がり、ツナ達が座ってるテーブルに運んだ。
「はい、お待たせ…って、もうそっちの無くなっちゃったの!?まだそんなに時間経ってないはずだけど…」
さっき作ったばかり炒飯が入っていた皿が綺麗に空っぽになっていた。
「ソラ〜!そっちも早く寄こせー!!」
「あー、はいはい。どうぞ召し上がれ。」
ソラが持ってきた炒飯をテーブルの上に置くと、すぐにランボと了平がそれぞれお皿によそって食べ始めた。
「ランボもお兄さんもそんな急いで食べなくても…」呟くツナ
「それで?結局どうする事にしたの?」
がっついて食べるランボと了平を見ながらも、ツナ達に聞いたソラ
「ああ、その事だけど……」
あの後、結局京子達には真実を告げない方針で行く事に決めた事。
各自分担して慣れない家事をしていた事。
最初は自分が作っていたが、寿司のネタが全然なくて、代わりにピーマンやブロッコリーなどを使って
お寿司を作ったが不評で、次は獄寺が作ろうとしたが、これも失敗に終わった事。
山本は京子達にボイコット宣言されてからソラがやってくるまでの事を話した。
その間、ソラは御飯を食べながら話を聞いていた。
「ってわけで、晩飯がカップめんになっちまう所だったのな。」
「お寿司にピーマンとかブロッコリーとか使ってたの…?」
「おう!」
「……そりゃ不評に決まってるよね……私もそんなの食べたくない……それにしても…びっくりしたよ。」
「?…何が?」首を傾げるツナ
「まさか隼人さんが10年前は料理がまったく出来なかっただなんて知らなかったからさ……1人暮らしが長いって聞いてたから、
私はてっきり昔から料理は人並みには作れてたのかと思ってたよ。」
「え…じゃあこの時代の獄寺君は料理出来るの!?」
「うん、出来るよ。それも人並みじゃなくてプロ顔負けの腕前。」
「へぇ〜…凄いね!獄寺君!!じゃあこれから頑張れば料理を作るのが上手くなるって事だよね!?」
「そ…そうですね!頑張らせて頂きます!!」
ツナにそう言われてテンションが上がる獄寺
「獄寺の料理、そんな美味いのか?」
「うん、とっても美味しいよ。」
「へぇ〜…そりゃ楽しみだな!!」
「てめーに食わせる飯はねぇ!!」
「そんな事言うなよ〜」
そう言いながらも、爽やかな笑顔な山本
「まぁまぁ…」獄寺を宥めるツナ
「そういや、ソラは誰に料理教わったんだ?」
疑問をぶつける山本
「ん?」食べる手を止めたソラ
「いや、手際が良いし、飯も美味いからさ。誰に教わったのかな〜?って。」
「………ママから教わった。」
少し間を開けてから答えたソラ
「へぇ…って事はソラの母さんって料理上手いのな?」
「うん。それより、これからどうするの?洗濯とか掃除とかも順調じゃなかったんでしょ?」
「あ、そうなんだよね……洗剤の量が多かったのか、泡が溢れ出しちゃったし…」
「掃除の方はアホ牛のせいで良いように進まなかったしな…」
洗濯や掃除をしていた時の事を思い出しながら呟くツナと獄寺
「……どんだけ入れたの…?もしかしてそのまま適当に入れたの?」
「う…うん。」
「計量カップ使おうよ……洗剤の近くに置いてなかった?」呆れるソラ
「……あっ!そういえば置いてあった。」記憶を探って思い出すツナ
「洗濯する量によって、入れる洗剤の量も違うんだよ。」
「そ、そうなんだ…」
「それと掃除の方だけど……掃除をする所にはランボ君を行かせない方が良い。今回ので良く解ったかもしれないけど……」
「ああ、アホ牛動き回って邪魔しまくるからな……」
「とりあえず、掃除の方はなんとかなるとして……問題は料理と洗濯だね。洗濯の方は後で教えようか?」
「お…お願い。また泡が溢れだしたりしても困るし…」お願いするツナ
「問題は料理だな……極限料理は出来んぞ!」
「威張って言う事じゃねぇだろ!?芝生頭!!」
「確かにそうだな……俺、寿司以外は何も作れねぇんだよな…」
「そう言うと思ったよ。だから寿司専門とはいえ、料理経験が有る武さんと私が料理を作るよ。」
『えっ!?』
「で…でも、ソラちゃん、どっちにもつかないって…」
「うん、どっちにもつかないよ?でも中立だから、手助けは出来る。京子さん達側に回ったジャンニーニさん達とは
いろいろ話し合わないといけない事もあるから、全然話さない訳じゃないし。」
「ランボさん、ソラの料理なら食べたいんだもんね!!」
「俺も異存ない!」
「どうします?10代目」
「どうするんだ?ツナ」
「う…うん、じゃあ……頼んで良いかな?ソラちゃん」
少し考えていたが、今の状況ではそれしかないと思ったツナはソラに頼んだ。
「うん、任せて。」笑顔で了承するソラ
「山本も…良いかな?」
「おう!」
「じゃあそれで行こう!京子ちゃんとハルを絶対にあんな壮絶な戦いに巻き込んじゃいけないんだ!!」
「はい!」
「わかってるのな!」
「おう!」
獄寺、山本、了平が応える。
(…その意地、いったいいつまで続くかな?…まったく何も知らないのと、何かあると知ってて
教えて貰えないのとでは…いろいろと違ってくるんだよ?)
頑なに京子達に真実を話そうとしないツナ達を見ながらそう思っていたソラだった。
ーーボイコット2日目ーー
朝・昼・夕の食事はソラと山本が担当し、洗濯はツナと了平、掃除は獄寺が……
その間のランボは、ソラと山本が料理をしながら相手をしていた。
夕食の時間になり、ツナ達は食事を取っていた。
ランボは朝と昼はこっち側に居たが、京子側の方が良くなってこの場には居なかったが…
『ヘックションっ…』くしゃみしたツナ、獄寺、山本、了平
「鼻がムズムズする…」
「誰か噂でもしてんスかねぇ?」
呟くツナと獄寺
(たぶん、ビアンキ姉あたりがパパ達の事で何か言ってるのかもね……)
なんとなくそう思ったソラ
「しかし、こーなって初めて気付くよな……俺達だけじゃ、ロクに修行も出来ねーって…」
「ホントだよ…戦いはもう迫ってるって言うのに…ここは話すべきなのかも…」
山本に同意し、ツナがそう呟く。
「いかん!!京子に何かあったらどーする!?」
「そ…そうですよね!!京子ちゃんやハルを危険に晒す訳にはいかない…絶対に!!」
了平の言葉を聞いて考え直すツナ
「本当にそう思ってる?」
「えっ…?」
「本当に、このまま何も話さない方が良いって…思ってる?」
獄寺、山本、了平に気付かれないように、ツナにこっそり問うソラ
「そ…それは……」
「京子さんやハルさんの気持ち……よく考えてみて?それで答えが見つかるから…」
「京子ちゃんやハルの気持ち…?」
ーー大食堂ーー
ツナ達との食事を終えた後、ビアンキとフゥ太に書類を渡す為に大食堂へ来ていたソラ
「ビアンキ姉、フゥ太兄、コレ全部お願い。」
太陽に持って貰った書類の山を指差しながら2人に言う。
「あ…うん、解った。コレを明日までに済ませておけば良いの?」
「うん。終わったらそのままジャンニーニさんに渡してくれれば良いよ。」
「そう、解ったわ。」
「ソラ、ツナ達の様子はどうかしら?」
「……リボ兄、まだその姿なの?」
「ええ、ボイコットが終わるまではこのままよ!!」
「………あっそ。まぁとにかく…ボイコット中でも書類はいつものように回すから宜しく。」
「うん、それは良いけど……昨日の分は?」
「ここ。」
「え゛っ…」
「まさか、これだけで2日分!?1日分じゃなくて!?」
「そうだよ?なんで驚くの?」
「少ないっ、少な過ぎるわ!?」
「ソラ、もっと回しても良いんだよ!?」
平然としてるソラにそれぞれ心配するビアンキとフゥ太だったが…
「あ、それ無理。」
「「なんで!?」」
「だって他のは全部私が処理しないと意味ないもん。」
「……す、少しくらいあるでしょ?」
「無い。」
「ホントに?」
「無いものは無い。」
ホントに無い事が解り、ガックリと項垂れた2人
「じゃ、そういう事だからお願いね?太陽、そこのテーブルの上に置いていいよ。」
【了解。】
太陽はソラに言われた通り、テーブルの上に置いた。
「運んでくれてありがとう。」
【気にするな。】
「……ボイコット、そろそろお終い…かな?」
洗い物をしてる京子とハルの様子を見てそう思ったソラ
「ええ…一時休戦にするようよ?」
「そっか…それじゃもう行くね。」
ソラは2人に背を向けて太陽と共に食堂を出て行った。
【……ソラ、本当の事を言わなくて良かったのか?】
通路を歩いてる時、突然太陽がソラに問いかけてきた。
「何が?」
【本当はアレ…1日分だろう?それも今日の分。】
「ありゃ…バレてたの?結構バレないようにしてたつもりだったのに。」
【やはりそうだったのかっ……少し自信が無かったのだがな。】
「アハハっ…太陽、誰にも言っちゃいけないよ?」
【はぁ〜…解った。だが、あまり無理はするなよ?本当に…】
「ん」
【(ホントに頼むぞ?ソラ……昔からお前は人を頼る事をしなさ過ぎる…そして時に必要以上に
1人で何でも抱え込んでしまっている。お前の悪い癖だぞ?)】
隣を歩くソラを本当に心から心配していた太陽だった。
ーーボイコット3日目ーー
夕方になる少し前に、ビアンキから京子がアジトを飛び出したと聞き、血相を変え、すぐに探しに行ったツナだったが、
京子を見つけ、話を聞いた所、これから買い物に行く所だと聞き、ビアンキに騙された事を知る。
だが、京子を探しながら、京子とハルの気持ちを初めて考え、自分の身勝手さを知ったツナは
真実を話す事を決め、並盛川の土手に京子と2人で座り込んで話し始めた。
今の状況……
ミルフィオーレの事、白蘭の事。
奴らがマフィアで自分もボンゴレファミリーの10代目候補だって事。
骸達やザンザス達との戦いの事。
今まで隠してきたマフィアに関する出来事を全て話したツナ
「こんな…感じなんだ…」
「うん…」
「驚いた…?」
「うん…」
(本当にこれで良かったのかな…)
自分から話しておいて、本当にこれで良かったのかと思ってしまうツナ
「腰につけてるのがツナ君の匣?」
「あ…うん、これだよ。」ボンゴレ匣を京子に見せるツナ
「その子が悪さするんだね。」
「そうなんだ…とてもこいつは俺の手には負えそうになくって…」
そう呟きながら、リングに炎を灯したツナ
すると、匣が勝手に動き出し始めた。
「こうやって反抗ばかりして…」
「わぁっ…見せて!」
「え!?ダメだよ、危ないんだ!!京子ちゃんに何かあったら!!」
匣に手を伸ばしてきた京子に慌てて言うツナ
ツナがそう言い切った後、匣が今よりも激しく動き出した。
「ホラッ!隙を狙って襲う気だ!!」
「ご…ごめんなさい!」慌てて謝る京子
少しすると、匣が少しずつ激しくなくなり、ゆっくりと動いていた。
「こいつ…」
「あっ…」
ツナと匣を交互に見て、何かに気付いた京子
「もしかしてその子…本当はツナ君と仲良くしたいのかもね。」
「え?」きょとんとするツナ
「ツナ君の気持ちと同じ気持ちになってるもん。」
「同じ…気持ち?」
「ツナ君が不安でドキドキすると、一緒に不安になってビクビクーって震えてるみたい。」
「でも、こいつは震えるどころか、俺を襲って来たんだ…」
そこまで言って、はっとした表情になったツナ
大空の匣を初めて開匣した時の事を思い出す。
あの時、急に不安になって、何だか怖くなって、心の中で拒絶してしまった事を…
そんな気持ちのまま開匣してしまったから、匣が暴走してしまった事に気付いたツナ
「ねぇ、ツナ君」
「え…あ、何?」
「ソラちゃんも…マフィアなの?」
「あ…うん、そうみたい。でも、ソラちゃんの事は…マフィアだって事と俺達と凄く親しかったって事しか知らない。
どうしてマフィアの世界に居るのかな?っとか…あの古傷はいつ、何があって出来たのかな?っとか…考え出したら、
いろいろ知りたい事が有り過ぎて……俺も気になってはいるんだよね。」
「そっか、ツナ君も何も知らないんだね…」
「?」首を傾げるツナ
「やっと見つけたよ、2人とも!」
「「えっ?」」後ろを振り向くと、見慣れない子供がこちらへ駆け寄って来た。
傍まで駆け寄ると、周りを見回してから2人に話し掛けた。
「私、ソラだよ。」自分を指差してそう言った。
「「ええ!?ソラちゃん!?」」驚き叫ぶツナと京子
2人が驚くのも無理はない。
今のソラは、いつも羽織ってるマントを着けておらず、
しかも姿は、黒色の短髪と瞳をしていた。
「シーっ…あんまり大声でその名前呼ばないで!」
「!?…ご、ごめん。でも…ホントにソラちゃん?」
「黒髪だし、瞳も…」
ツナと京子が本当に本物か疑問を抱いていた。
「ああ…この髪はウィッグで、瞳が黒いのはカラーコンタクトだよ。」
「なんで変装してるの??」
「この街の人達、私の事知ってるからすぐに情報が広まっちゃう。白蘭は手出しをしないって言ってたけど、完全にそれを信用する気はない。
確かに今の並盛には完全にミルフィオーレの人達が居なくなってるみたいだけど、それでも警戒心をゼロにするつもりもない。
だから、素の姿を晒すわけにはいかないんだよ。それに……今はイタリアに居るはずの人が居たらビックリするだろうしね。」
「でも、いつもフードを…」
「確かに今はフードを被って普段の時も外を出歩いているけど、それは人との接触を最低限に避けて、距離を作る時だよ。
普通の一般人として溶け込むなら、こっちの方が良いの。」
ツナの言葉を遮ってそう説明したソラ
それを聞いて納得したツナと京子
「それで…どうしてここに?」ソラがここに居る理由を聞くツナ
「ビアンキ姉とリボ兄が2人がなかなか帰って来ないから探しに行けって。」
“あなたならすぐ見つけられるでしょ?”
“息抜きも兼ねて探してこい。”
「…って言われた。何回も同じハッチから出るのは良くないから、他のハッチから商店街へ向かったのに
どこにも居ないんだもん。まだ買い物に行ってないみたいだね?」
そう言いながら、京子の横に置かれていたバックを指差す。
バックの中にまだ何も入っていないのを見て、買い物がまだ終わってない事が解った。
「あ、そうだ。リボ兄から聞いたんだけど…綱吉さん、ビアンキ姉の嘘に騙されたらしいね?」
「う゛っ…」
「?…何の話?」
「京子さんが何も教えて貰えなくてアジトを飛び出したってビアンキ姉が綱吉さんに言ったんだよ。」
「えぇっ!?ビアンキさんがツナ君にそんな事言ったの?あ、だからあの時慌ててたんだね?」
「う…うん。」
「でも…今回はその嘘が結果として良い方向に行ってるみたいだね?」
ツナの様子が少し変わってるのを見てそう言ったソラ
「え…?」
「その匣、もう大丈夫なんでしょ?」
「あ…うん、もう暴れないと思う。どうしてあの時暴走したのか、解った気がするから……」
「そっか、ならもう大丈夫だね。帰ったらすぐに出してあげると良いよ、きっと早く出たがってるだろうから…」
「うん…そうだね。」
「この匣に入ってる子、ソラちゃんは知ってるの?」
「うん、良く知ってるよ。」
京子の問いに答えるソラ
「ツナ君に聞いたんだけど、ソラちゃんにもそのボンゴレ匣っていうのを託されてるんだよね?どんな子が入ってるの?」
「……あの匣の中には今、武器も動物も入っていないよ。」
「え!?入ってないの!?」驚くツナ
「うん、今はね。綱吉さん達と違うのは…あの匣は注入する炎が特殊なんだよ。」
「特殊??」
「うん、そう。つまりね、あの匣は私だからこそ使える匣であり、いくら綱吉さんが大空の属性を持っていても、
開匣する事は決して出来ない。どんなに強い炎を注入されようともね…」
「何それ…レアな匣なの?」
「レアねぇ…確かにレアかもしれないね、綱吉さん達からすれば。」
「……そんな匣をどうしてこの時代の俺は作ったんだろ…?」
「さぁね……ただ、太陽の願いを聞いただけでこの匣を作った訳ではない事は確かだね。私が戦う事をボスは今でもあまり良く思ってなかったし。」
「そういえば前にもそんな事言ってたね。いったいこの時代の俺に何て言ったの?」
「確か…“自身に流れるこの血を周りが放って置くはずがない、いずれこっち側になっちゃうなら今が良い!”って言ったような気がする…」
「えっと…つまり、どう転んでも、大きくなればマフィアになる道しかないって事?」
「そう。たとえ身内が自由に選んで良いと言っても、周りがそれを許さない。だからこう言えば、ボスは何も言えなくなると思っちゃったんだろうね。
今でもあれは良心が痛むよ……卑怯な手を使って、反対を押し切ったって言っても良いからね。」
「卑怯…?」
「そう言えば、ボスが何も言い返せない事を解ってて言ったんだから、卑怯だよ。しかも、リボ兄、恭兄、骸兄にも協力して貰ってね。
3人の説得の甲斐もあって戦わせる事を了承させちゃったしね……優しいボスを傷つけた。」
「ソラちゃん…」
「前にも言ったけど、この時代のボス…綱吉さんは10年経っても優しい人だった。
今の綱吉さんと同じように仲間を大事にし、いつも優しい瞳をしていた。」
「……でも、マフィアの世界だから、敵を…そのっ…」
「殺さないよ。」ツナの言いたい事が手に取るようにすぐ解ったソラ
「え…?」
「確かに本当にやむを得ず殺らなければならない時もあるけど……この時代のボンゴレは、出来るだけ話し合いか、
または殺さず敵のアジトを制圧して解決させてるんだよ。この時代のドン・ボンゴレの方針でね。」
「それって…」
「この時代の綱吉さんが、今のボンゴレを…マフィア界を変えようとずっと奮闘してたんだよ、守護者と共にね。
ボンゴレT世(ブリーモ)が創り上げた、昔の自警団のようにする為にね。」
「え…自警団…?」
「うん。ボンゴレファミリーは元々住民を守る為の自警団として活動していたんだけど……いつの間にかマフィア界最強になっちゃった。
世代が変わっていくにつれて、自警団としての役目をだんだん果たさなくなってきたから、かって自警団だったなんて信じられないだろうけど。
継承の時、ボンゴレT世に何か言われなかった?」
「えっと…確か…“栄えるも、滅びるも好きにせよ”って言ってた。それから“俺を待っていた”って…」
ボンゴレの証を継承した時の事を思い出しながら呟くツナ
「やっぱり言ってたね。」
「え?」
「ボンゴレT世は、昔のような自警団に戻してくれる者を待っていたんだよ。それが、ボンゴレXI(デーチモ)…沢田綱吉。」
「お、俺を待っていたってそういう事なの!?」
「そのはずだよ?ずっとその者が現れる時を待っていたみたいだから。」
「そ、そうなんだ……あっ!」
「?」
「そういえばさ、すっかり忘れてたんだけど……『ボンゴレの姫君』って……ソラちゃんの事…なんだよね?
継承の時、T世が言ってたんだ…」
≪ボンゴレ]世……姫を……我らの大切なボンゴレの姫君を、守ってくれっ…≫
「…って言ってたんだよ。」
(ジョット…10年前のパパに何言ってるの…)
「ねぇ、『ボンゴレの姫君』って……いったい…」
「悪いけど話せない。これはボンゴレでも機密に関する情報だから…」
「白蘭もそんな事言ってた……でもっ…」
「忘れたの?ここは10年後の世界……10年前の綱吉さんは本来知るはずのない事……」
「っ…け、けどっ…」
「……綱吉さん、『ボンゴレの姫君』は貴重な存在。だから敵対ファミリーにその人物の情報が知れ渡れば、すぐにでも襲いかかって来る。
殺すか、人質にするか、実験台にするか……いくらでも利用価値がある。」
「なっ…!?」驚きのあまり絶句してしまうツナ
「私が今言えるのはそれだけだよ。」
「ソラちゃん…」
(ソラちゃん、いろんな物を抱え込んでるんだね……)
黙って聞いていた京子はソラを心配そうに見つめていた。
「さ、そろそろ買い物に行かないと、晩御飯遅くなっちゃうよ?」
少し重くなったこの場の空気を変えるように、話題を変えたソラ
「あ…うん、そうだね!」
ツナと京子は立ち上がった。
「ソラちゃんも行こう?」
そう言いながらソラの右手を握る京子
それを見てツナもソラの左手を握った。
「ね?行こう?」
「……うん!」
満面の笑顔で応えたソラ
「じゃあ、行こっか?」
「あ…2人とも、この姿の時は『ソラ』って呼ばないでね?」
「じゃあ、何て呼べば良いの?」
「『ナツ』って呼んで?この姿の時はその名前だから。」
「解ったよ。じゃあ…行こう、ナツちゃん」
ツナ達は買い物をする為、商店街へと歩き始めた。
街で買い物をしているその3人の姿を見た者は、見た目を気にせず見れば、
どこからどうみても親子のように見えたとか。
今回はボイコット中から京子達に今まで隠していたマフィアの事を明かす所です。
アニメ沿いに進めながらも所々オリジナルを加えたせいか、思ってたより長くなってしまいました。
ボイコット中は中立立場という事もあって、家事に不慣れなツナ達を助けさせました。
和解した後は、久しぶりに3人でお話する所を。
アニメでも漫画でもマフィアの事を明かした後に買い物に行ったのか、
それとも話す前に行ったのか不明だったので、話の後に買い物に行った事にしました。
アニメの方を何度見てもバックが見えなかったので、どうだったのか解らなかったんですよね。
それでは標的74へお進み下さい。