新しい修行

ーー地下8階ーー特大トレーニングルームーー

次の日になり、新しい修行を始める為に全員特大トレーニングルームへ集まっていた。
ただし、詳しい事情を知らない京子とハルを除いて……

「よし、揃ったな!!今日から本格的に匣兵器の修行だが……リボーンの1番の教え子である俺が、全体を仕切る家庭教師になった。よろしくな!」
全員集まった所でディーノがそう言った。

「ヘナチョコのあいつになんか、家庭教師が務まるんスかね?」悪態つく獄寺

「でもディーノさん、部下の前だと凄いし…」

「いよいよだな!!」

「おぉっ!!極限楽しみだぞ!!」

「まったく筋肉で考える奴らは気楽で良いぜ。」
元気バリバリな山本と了平を見ながらそう言った獄寺

「獄寺君!」

「ちなみに…」

ディーノの横に天井からワイヤーで吊るされて降りてきたリボーンが現れた。

「今回、俺はその上の役職…家庭教師の精だからな。」

「妖精になっちゃったの!?しかもワイヤーで吊ってるーっ!?その帽子、レオンの変身?」
リボーンにツッコミをいれたツナ

今のリボーンの姿は、ワイヤーで吊るされ、頭はレオンが赤い帽子(?)に変身してそれを被っており、体は本になっていた。

「ディーノがヘボい時は、俺が制裁を下すから安心しろ。」
そう言いながら、ディーノの左頬に連続蹴りをするリボーン

「いででっ…」

(うわっ…痛そう…相変わらず容赦ない蹴り……ん!?この気配はっ…)
ディーノを蹴るリボーンを見てそう思っていたソラだったが、ここには居ないはずの誰かの気配を感じ取った。

ディーノ達に気付かれないように周りを目線だけで見回しながら、気配の元を辿ると……
エアーバイクの後ろの壁から2つの気配を感じ取った。

(この気配、ママとハル姉だ……自分達だけ詳しい事情を知らないもどかしさが嫌になって、自分達の意志でつきとめ始めたんだね……
リボ兄は2人が隠れて聞いているのに気付いているはず。なのに知らない振りをしてるという事は…もうマフィアに関して
隠し通すのが難しくなってきている…という事かな…?)
自分なりに推測を立てていたソラ

「んじゃ、また何かあったら降りてくるからな。ちゃおちゃお〜」
そう言って、ワイヤーで吊るされたまま、上がっていったリボーンだった。

「…ってことで始めるが…その前にクローム…意思確認だ。お前はボンゴレの霧の守護者であると同時に、骸の一味でもある。
俺達はお前の事…ミルフィオーレの戦いでは味方と数えていいのか?」

ディーノの問いに、少し間を置いてから頷いたクローム

「私、もっとちゃんとして…強い人になりたい…それが…過去に帰る事に繋がると思うから……」
覚悟を秘めた瞳でディーノにそう答えたクローム

「よし、頼んだぜ!ソラに言われて、その辺は大丈夫だと解っていたんだが、念の為に確認させて貰った。悪かったな?クローム」

「ううん、気にしてない。」

「そうか。それと、ランボにも本格的な修行をしてもらう。」

「えっ!?」
ランボに視線を向けたツナ

獄寺達も釣られてランボに視線を向けた。

ランボはボールペンでロケット発射ごっこをしていた。

「白蘭を倒すには、守護者全員の力が必要だ。」

「アホ牛!!…これでも守護者ですから仕方ないっスね。」
走り回るランボを怒鳴りながらも、仕方ないと言う獄寺

(本当に、仕方ないのかな…?)思いつめた表情をするツナ

「俺はこの時代のツナに聞いて、お前達のボンゴレ匣を多少は知ってる。そこから考えて、それぞれに違う修行をしてもらうつもりだ。
ちなみに、雲雀恭弥は俺との修行を開始させている。」

「え!?雲雀さんと!?…っていうか、雲雀さん、見つかったんですね!!」

「ああ、相変わらず可愛くねーじゃじゃ馬だけどな。」

(恭兄はもう既に修行を始めてたのか……この前、屋上に居た時に2人の気配が近くにあるのは気付いてたけど……)
ツナ達が並盛探索に出た日、屋上へ行った時に感じた気配の事を思い出していたソラ

「じゃあ沢田綱吉、お前から修行内容を言っていくぞ。」
真剣な表情になったディーノ

「は、はい!」

「お前はボンゴレ匣が正しく開匣出来るまで…1人だ。」

「え!?…1人って、1人ぼっち!?」

「1人と言っても、匣兵器と一緒だぜ?匣兵器にトラブルが起きた時は、使い手がずっと傍に居てやる事だ。」

「ト…トラブル…?」
呟きながら、自分のボンゴレ匣が暴れた時の事を思い出したツナ

「一緒に居るだけ!?…ってそれだけ…ですか?」

「今のがヒントだ。」

「えっ…」

「次に獄寺隼人…お前は匣初心者である笹川了平とランボの面倒を見てくれ。」
ツナから獄寺に視線を移した後、そう言ったディーノ

「何!?」叫ぶ獄寺

「え!?」ツナも驚く。

(ディーノのやろ〜!!てめーで家庭教師やるっつっといて人任せかよ!?しかも生徒がバカの
極限野郎とアホ牛とはどういう了見だ、ぜってー断る!!)

(うわっ…隼人兄、ブチキレかけてるっ…)
青筋立ててる獄寺を見てそう思ったソラ

「凄いね、獄寺君!もう教える側なんて!!」

「え!?凄い…?いえいえいえ、もったいないお言葉!!自分なんてまだピヨっ子です!!」
ツナに凄いと言われ、態度が変わった獄寺

「ピヨ?」

「ですが、お役に立てるのなら、力の限り、やらせて頂きます!!」
そう言いながら、左胸を叩く獄寺

(は…隼人兄、パパの一言であの変わりよう……単純過ぎるっ…)
獄寺の態度の変化を見て、思わずドン引きしてしまったソラ

「俺は嫌だぞ、タコ頭の指導なんぞ。」
「ランボさん、あの愚か者嫌〜い。」
了平とランボが不満を言う。

「何とでも言え!!芝生頭!アホ牛!俺は10代目に任されたんだ!!引きずり回してでも教え込むからな!!」

(俺、任せてない!!)心の中でそう叫んで否定していたツナ

その時、ツナは服が引っ張られるのを感じ、下に視線を落とした。

「綱吉さん、ここは黙ってた方が良い…せっかく隼人さんがやる気になってるのに、今否定したら…」

「う…うん、そうだね。」
ソラにそう言われ、そのままにしておく事にしたツナ

「次にクローム髑髏」
クロームの前まで行くディーノ

「うん…」頷くクローム

「お前は匣兵器強化の為にも、半分の時間をアルコバレーノ…マーモンの残した幻覚強化プログラムで修行し、
残りの時間を格闘能力アップに使うんだ。あそこの2人に手伝ってもらってな…」

ディーノが向けた視線の先を辿ると、出入り口付近に居るビアンキとイーピンの姿が見えたクローム

ビアンキ、イーピンは手を挙げてクロームに応える。

「そして山本武」

「待ってたぜ!!ディーノさん!へへっ…何やんの?」ワクワクした表情で聞く山本

(幻騎士にコテンパンにやられてヘコンデるかと思ったが…明るいまんまじゃねーか…こいつらしいと言えば、こいつらしいが…)

なかなか指示を出さすに黙ってるディーノを不思議そうに見る山本

「フフっ…お前はパスだ、待機。」

「へっ?」呆気に取られる山本

「パ…パス!?」思ってもみなかった答えを聞いて思わず叫んでしまったツナ

(そう…タケ兄の家庭教師はディーノさんじゃないんだよね……)
呆気に取られてる山本を見上げながら、心の中でそう呟いていたソラ

「つーか、お前には手ぇ出せねぇんだ。お前に下手な事教えれば、あいつにぶっ飛ばされるからな。」

「あいつ?」誰の事か解らない山本

「お前の才能の1番の理解者は本気(マジ)だぜ。今回の修行で山本武…お前はすげー事になるかもな。」

(そう…今回タケ兄の家庭教師になってくれる人は、剣士としての才能を誰よりも認めてるからね…きっと凄い剣士になると思う。)
ソラは山本の家庭教師が誰なのか知っているようだった。

「修行の説明は以上!!各自修行場所は自分で選べ。」

「ちょっと待て!ソラの修行内容言ってねぇぞ!?」
獄寺がディーノにツッコむ。

「ご、獄寺君!?」そんな獄寺を慌てて止めるツナ

「俺、ソラのボンゴレ匣については何も聞かされてねぇから、何も指示が出せないんだ。
それに聞いた所、ツナ達程修行をする必要も無いみたいだしな。」

「何だど?」

「私に託されたボンゴレ匣は、隼人さん達に与えられたのとはまた少し違う匣なの。みんなのボンゴレ匣の方が扱いが難しいんだよ。」
ツナ達に自分のボンゴレ匣の事を簡単に説明したソラ

「へぇ…そうなのか。」呑気な山本

「あと、ソラはどっちかっていうとツナ達を鍛える側だぞ?」

ディーノのその言葉を聞いて、ツナ達はそれぞれ驚きの声を上げた。

「ディーノさん、そんな話…聞いてない。」
事前に聞かされていなかったソラも驚き、どこか不満げな声を出す。

「ああ、今言ったからな!リボーンが修行開始まで黙っとけって言ったんだ。」

「リボ兄までっ…」ガクッと項垂れるソラ

「リボーンが言ってたんだけどさ、事前に知ってたらお前絶対断るだろ?ツナ達のサポートをするの…」

「う゛……だって…」

「だってじゃないぜ…こういう時こそ、お前の指導力を発揮する時だろ!」
渋るソラにそう言い放つディーノ

「ないよ、そんなの!?」即座に否定するソラ

「……ツナ」

「あ…はい、何ですか?ディーノさん」

「以前、ソラに格闘技を教えて貰ったんだよな?」

「はい、教えて貰いました。」

「教えて貰ってた時、どう思った?」

「どうって…」

「ソラの指導、難しかったか?」

「いえ、全然!解りやすく教えてくれてましたし、俺のペースでゆっくりと、でも確実に1つずつ技を教えてくれてたので、
少し時間は掛かりましたけど、すぐに覚えられました。」

「ツナは運動がダメだ。けど、そんなツナでもちゃんとついてこれるようにペース配分をしっかり考え、さらに教える技を初めに自分が
見本を見せながら解りやすく解説し、ツナが理解出来たと判断するまで何回か見本を見せて覚えさせてたらしいじゃねぇか。
相手の事をしっかり考えてなきゃ絶対出来ないぜ?そんなの。リボーンがさ、自分とはまた違った指導法だけど確実に
身につけているのを見て感心したらしいぞ?『俺にはぜってー真似出来ねぇ指導法だ』ってな!」

「jへぇ〜…ソラ、凄いのな!」素直に褒める山本

「べ…別に凄くない、普通。」

「おいおいっ…これを凄くねぇなんて言うの、お前だけだぜ?なぁ?ロマーリオ」

「ああ、ボスの言う通りだぜ。ソラ嬢ちゃん」

「ディーノさんもロマーリオさんも大袈裟に褒め過ぎだよ。」

「いや、だからな…お前、マジで認めろよ……前にこの時代のリボーンに聞いたぜ?何人かの部下の指導を無理やり押しつけられた時の事。
お前の指導を受けた部下達…指導を受ける前よりも動きとか全然良くなったって褒めてたぜ?」

「えっと………ああ、あの時ね。リボ兄の好物であるエスプレッソの在庫を思わず全て焼き尽くそうかと思っちゃったアレね。」
昔の記憶を探り、その時の事を思い出しながら、さらっととんでもない事を呟いたソラ

「なっ…!?お前、そんな事考えてたのかよ!?」ぎょっとするディーノ

「自分の仕事を押しつけたんだもん、いくら私でも少しムカっとしちゃったよ?あの時引き受けた部下の人達、相手が子供だからって
訓練を平気で怠けてたし、動きを見る限り全然良くなかったから、このままじゃボンゴレ危ないんじゃないかって本気で心配しちゃってね…
仕方ないから実力行使でその人達に自分の事を認めさせてから、基礎体力とそれぞれの武器に合わせた戦闘訓練を徹底的に叩き込んだんだよ。
そしたら、あらビックリ!すぐにバテないから次の行動に移るのが速くなったし、戦闘力もかなり上がっちゃったんだよね、いつの間にか。」

「あらビックリじゃねぇぜ!!あの時、リボーンだけじゃなくてツナもそれを知って卒倒したって聞いてるぞ!?」
事もなげに言うソラに思いっきりツッコむディーノ

「……いや、あれはまぁ……うん、あの後大変だったかな〜…」
ディーノから視線と逸らしながら呟くソラ

ソラも一応自覚はあるらしい…ただその事を素直に認めたくないだけなのだ。
ただでさえ異常な力を持っているからこそ余計に……

ディーノとソラの会話を黙って聞いてた10年前のメンバー全員が驚きを通り越して唖然としていた。

「とにかく…ホントに時間の空いた時で良いから、ツナ達のサポートをしてくれよ?」

「ハァ〜…解ったよ。」ディーノに何を言って聞いてくれそうな気がしなかったからか、すぐに抗議するのを諦めたソラ

「バジルも自分の修行をしながらみんなをサポートしてくれるからな!」

その言葉で唖然としていたツナ達は正気を取り戻す。

「よろしくお願いします!!」

「うん、よろしく!!」ツナがバジルに応える。

「あの、ソラ殿…」

「時間が空いた時にね。」

「!…はい!よろしくお願いします!!」

「?…バジル君、ソラちゃんと何を…?」

「はい!拙者、ソラ殿に時間の空いてる時にだけ、修行をつけてもらってるんです!!」

「え…ええーっ!?いつの間に!?」叫ぶツナ

「リボーンから聞いた話だと、お前らが休暇を過ごしてる間にらしいぞ?」
ツナの問いにバジルではなくディーノが応える。

「休暇って…2人とも、もうその時から修行を開始してたの?」

「はい、空いた時間にだけですが。」

「し…知らなかったっ…」なんとなくショックを受けたツナ

「よーし!芝生頭、アホ牛!!ノートと鉛筆を持って図書室へ来い!!シャープペン、ボールペンは不可だ!まずは理論を頭に叩き込む!!」

気合いの入った獄寺の声がツナ達の耳に聞こえてきた。

「うーん…俺は図書室に行くと、頭がグルグルする体質なのだが…」
「ランボさん、めんどーい。」
乗り気でない了平とランボ

2人の言葉を聞いてブチキレる獄寺

(あの3人…初日からこんなので大丈夫かな…?)3人の事が心配なソラ

(獄寺君の理論指導来たー!!)心の中で盛大にツッコミをいれたツナ

「アハハっ…ありゃ大変そーだな。」

「だね。」山本の意見に同意するツナ

「クローム…来なさい、鍛えてあげるわ。」

「一緒頑張る!」

「はい。」
移動するビアンキとイーピンについていくクローム

他のみんなもそれぞれ出て行き始めた。

「ところで、山本は修行どうするの?待機って…」

「まっ、良く解らねーから、修行が始まるまで自主練だな。」

ソラもツナ達と移動し始めながら、山本を見上げて何か考え込んでいた。


ーー地下10階ーー道場ーー

山本は私服ではなく袴姿で、これまで覚えた時雨蒼燕流の技を復習するように、1つ1つ技を出していた。

「……こんなもんかな。まっ、今はこんな感じでやっていくしかねぇだろ。」
全ての時雨蒼燕流の技を一通りした後、そう呟いた山本

その時、入口の方から突然気配を感じ、何かが自分を狙って攻撃を繰り出してきたのに気付き、すぐ回避して直撃を免れた。

「今見えた黄色いのって…晴属性の炎…?」

「さすがリボ兄の修行を受けてただけあるね。」
右手に銃を持っていたソラが山本の前に姿を現す。

そう、今山本に向かって放った攻撃は、ソラが銃で一発撃った晴の炎だった。

「ソ…ラ…?」てっきりリボーンだと思っていたのか、ポカンっとして固まっていた山本

「リボ兄かと思ってた?」

「あ…ああ。気配、自由に出したり消したり出来るんだな。」

「出来なきゃ、マフィア界では生きていけないよ?」

「あ……ハハっ…そっか、そうだよな。お前は…ソラはこっち側の人間だもんな、出来て当たり前か。」

「……マフィアの世界に踏み込んでしまった事……後悔、してない?」

「えっ…」

「あの時、こうしてればマフィアの世界に踏み込まなくて済んだのに…とか、自分がマフィアの世界に踏み込んでしまったせいで、
父親を死なせてしまった…とか、何か後悔したり…してない?」

「ああ、してねぇぜ!」考える素振りも見せず、すぐに応えた山本

「ホントに?」

「ああ!だって、あの時ツナとダチになれて良かったってホントに思ってるから!!ツナと一緒に過ごすようになってから、毎日が楽しいしな!!
そりゃ、楽しい事ばかりじゃねぇけどよ、後悔はしてないぜしてるとすれば…それは誰かに負けた時だ。あの時こうしてれば
勝てたんじゃねぇかな?って何度も思っちまってよ…野球と同じで負ければ悔しいし、次こそ勝たないとっ…てな!!」

「……大好きな野球が思いっきり出来ないのに?」

「おう!確かに思いっきり野球出来ないのは寂しいけどよ、今は野球よりダチの方が大事だからな!!」

「……同じ事言ってるね。」

「ん?」

「この時代の武さんも同じ事言ってたんだよ。」

「そっか!んじゃ、ここの俺もツナとダチになった事、後悔してねぇんだな?」

「うん、してないよ。」

「それを聞いて安心したぜ!」

その時、飛び回っていた雨燕がソラの右肩の上に降りてきた。

ソラは肩の上に降りてきた雨燕の頭を指で撫でる。

「おっ…懐いてんな。そういや、俺に何か用か?」

「ただそうやって技を復習してるだけじゃ物足りないんじゃないかな?って思ってね……」

雨燕を撫でるのをやめると、雨燕は再び飛び上がった。

「武器変化(カンビオ・アルマ)」
そう呟くと、ソラが右手に持っていた銃が刀に姿を変えた。

そう…ソラが握っていたのは、アニマル匣のレオンで姿を変えた武器だったのだ。

「武さんの家庭教師が来るまで、私が修行相手になるよ。」

「へっ!?」驚いて間抜けな声が出てしまった山本

「あ…もちろん、ずっとは無理だけどね。他にもいろいろやらなきゃいけない事があるから、
本当に時間が空いてる時にしか相手になれないんだけど……」

「ソラが俺の修行相手を…?」

「そう。まぁ、いきなり言われても困るよね?だから……相手として不足ないか、ちょっと戦ってみよっか?」
そう言った後、刀に晴の炎を纏わせてから構え、険しい表情になり、殺気を溢れ出させた。

「!?」ソラの殺気が全身に浴びせられ、無意識に時雨金時を構えた山本

「行くよ?」
山本が構えたのを見て、駆け出した。

山本はソラの殺気を浴びたせいでか、動き出すのが少し遅れてしまったが、すぐに応戦態勢に入った。

刀がぶつかり合う音だけが道場内で鳴り響く。

(なんだ!?ソラの一撃、一撃が…簡単に弾き返せねぇっ…それに斬撃が速いっ…!?)
ソラの一撃、一撃を受け止めるのに苦戦を強いられている山本

しばらくの間、刀がぶつかり合っていたが、山本の隙を突いて、ソラが自分の刀で時雨金時を弾き飛ばした。

「勝負あり…だね。」
刀を降ろし、殺気を消したソラが山本にそう言った。

「……ああ、そうだな。完敗だぜ…」刀を降ろしながら、負けを認めた山本

「今の、油断してたでしょ?」

「ハハっ…わりっ…まさか、ここまで出来るとは思ってなくてよ…だってお前、いつも銃で戦ってたからさ、
刀でもこんなに強いなんて思ってなかったんだよ。」

「私が刀使えるの…この時代の武さんが教えてくれたからだよ?」

「この時代の俺が?」

「うん。」

「そっか……修行の相手、お願いして、いいか?」
少し考える素振りを見せた後、ソラに問いかける山本

「私で良ければ、いくらでも。」

「んじゃ、お願いするのな!」

「じゃあ、このまま続ける?それとも…少し休む?」

「いや、ソラが大丈夫なら、このまま続けてくれていいぜ?」

「じゃあ、続けよっか。初めに言っておくね?私が子供だからって手加減なんかしてたら……すぐにやられるよ?覚悟しててね?」
そう言いながら、再び刀を構えるソラ

「ああ!解ったぜ!!」山本も時雨金時を再び構えた。

戦闘再開し、道場内に刀がぶつかり合う音がまた鳴り響き始めた。
ソラも山本もお互い手を抜かずに相手をしていた。


夕方ーー地下7階ーー通路ーー

「今日は助かったのな、おかげで良い修行になったぜ!」

「それは良かった、また時間が空いた時には相手するから。」

「おうっ、頼むぜ!!…しっかし、ホントすげーのな!まだちっちゃいのに、あそこまで強いなんて……
この時代のツナ、止めてなかったか?お前が修行すんの。」

「良く解ったね。うん、最初の頃はいっつも止めてたよ。そのたびにリボ兄に蹴られてたけど…」

「アハハハっ…ツナらしいのな!きっとまだ子供のお前を戦わせたくなかったんだろうな。」

「そうだね……マフィアの世界に踏み入れずに、普通に育って欲しかったみたいだから…」
どこか遠い目になりながらそう呟いたソラ

(ん?なんかこの言い方……ツナに育てられてるみたいな言い方に聞こえんだけど……気のせいか??)

不思議に思った山本はソラに聞こうとしたが、その時、ツナ、獄寺、了平の話し声が聞こえてきた。

「今日はもう続行不可能だ。」

「大丈夫なんですか?」

「なんとかな…沢田はどうなのだ?開けたか?ボンゴレ匣…」

「いいえ…たぶん今開けたら、前の繰り返しです。」
了平の問いにそう答えたツナ

「お前ら、ボンゴレ匣で修行出来るだけ、良いじゃねーか。」

「え…?」山本が来たのに気付いたツナ

「俺なんか、待機だぜ。」

「山本…」

「しっかし、締まらなかったっスね〜…今日は。」

「う、うん。」獄寺に同意するツナ

「そうなのか?俺の方は結構良い修行が出来たけどな。」

「てめーは自主練してただけだろーが!?」ツッコむ獄寺

「アハハっ…最初はな。けど、ソラが修行相手になってくれてよ、自主練じゃ無くなっちまったのな。」

『えっ!?』驚きの声を上げるツナ、獄寺、了平

「や…山本、今…なんて…?」

「ん?“ソラが修行の相手になってくれた”って言ったのな。」
ツナが確認するように聞いてきたので、もう1度言った山本

「聞き間違いじゃなかったっ…」がっくりと項垂れるツナ

「ソラが修行の相手をしてくれたのか、どうだったのだ?」
気になって聞く了平

「めっちゃ強かったっスよ!こっちが手を抜いたら、すぐにやられてしまいそうなくらいな!!」
そう言いながら、隣に居たソラの頭を撫でる山本

「おおっ!極限にそれは本当なのか!?」

「ええ、ホントっスよ!」

(山本の相手をな……しかし、ソラの実力を俺達はまだ全部は知らねぇ…いったいどのくらい強いんだ…?)
ソラを静かに見つめながら、心の中で呟いていた獄寺

「ソラちゃん!どこも怪我とかしてない!?」
ソラの傍に寄って怪我が無いか聞くツナ

「う…うん、してないよ。」

「アハハっ…ツナ、心配性だな!どっちかっていうと俺の方がヤバかったんだぜ?もし、これが実戦なら、俺がやられてるぜ、絶対。」

「え…でも山本、怪我…」山本が怪我してるように見えなくて、不思議そうな顔をするツナ

「ん?ああ、ソラの匣のモモが全部綺麗に治してくれたんだ。だからさっきついた傷は一つも残ってないぜ。けど、痛かったのな〜…」

「刀で戦ってたんだから、痛いに決まってるじゃん。」

「そうだけどよ〜…俺の時雨蒼燕流が上手く決まらなかったのが悔しいぜ……
決まったとしても掠り傷程度だし。おまけにソラも時雨蒼燕流を使ってくるし。」
悔しそうな声でさらっととんでもない事を言い放った山本

「えっ!?ソラちゃん、時雨蒼燕流使えるの!?」驚くツナ

「うん、使えるよ。」

「教えたの…山本だよね?この時代の…」

「うん、そうだよ?最初は渋ってなかなか教えてくれなかったけどね。」

「そ…そうなんだ…アハ、アハハっ…(ソラちゃん、今でも十分強いのに、どんだけ強いの!?)」

その時、ツナ達の所にハル、京子、ビアンキが現れ、ツナ達に声を掛けたハルと京子

「あの…突然ですが…」

「話があるんだけど…」

「京子ちゃん!?ハルにビアンキも!」
後ろを振り向いたツナ

「おぉ!京子!」

「よっ、お疲れ!」

(この展開は、もしかして…)
ハルと京子の様子がおかしい事にすぐに気付き、
これから起こるであろう事を簡単に予想出来てしまったソラ

「ど…どうしたの?何かあったの?…え…えーと、俺達何かしたかな?」

「俺は別に何もしとらんぞ!!」
「誓って、俺も何もしてません!10代目!」
「俺だってっ…」
了平、獄寺、山本がツナに向かってそれぞれ言う。

「誤魔化しても仕方ないので、単刀直入に言います。」

『えっ?』ハルの言葉に反応するツナ達。

「う…うん。」頷くツナ

「ハル達にも、ミルフィオーレやビャクランやボックスの事…今起きてる事をもっと詳しく教えてください!!」

『!?』動揺するツナ達。

(パパ達、動揺してる……)
ツナ達を見上げながら、黙って行方を見るソラ

「急に…どーして…?あっ!ビアンキ!!」

「私は何も話してないわよ。この子達が自分達の意志と力でつきとめたのよ。」

「えっ…」

「ツナ君」

「!…京子ちゃん…」

「ツナ君、私…私達も一緒に戦いたいの!!」

「京子!?」戸惑う了平

(京子ちゃんがそんな事…でも…でもダメだ!!京子ちゃん達を危険な世界に巻き込んじゃ…俺達の戦いの事なんて、知らなくて良いんだ!!)

(……パパ、ママ達に教える気ないみたいだね。)
ツナの表情を見て悟ったソラ

「気持ちは嬉しいけど…本当にもうすぐなんだ!もうすぐ、何もかも終わって、元の世界に帰れるから……だから、俺達を信じて、
もう少し我慢して…くれないかな?」
視線を泳がせながらも、ハルと京子にそう言ったツナ

その言葉を聞いて、一瞬悲しそうな表情を浮かべたハルと京子

「………解りました。では、私達もそれなりの措置を取らせて頂きます!!」

「え?」

「ツナさん達が真実を話してくれるまで…」

ハルがそう言った所で、後ろに隠していた看板をツナ達に見せるハルと京子

ハルは「情報開示を」と書かれた看板を、京子は「秘密反対!!」と書かれた看板を持っていた。

「ハル達は家事をしませんし…」
「共同生活をボイコットします!!」
看板を見せながらそう宣言したハルと京子

「え!?」
「な…なんと!?」
「こいつは一大事だな…」
ツナと了平は驚き、山本は困ったように呟く。

(思ってたより問題が大きくなってる……まさか家事と共同生活までボイコットするとはっ…)
これにはさすがのソラも内心少し驚いていた。

「家事と共同生活をボイコット?ビ…ビアンキ!」ビアンキに助けを求めるツナ

「悪いわね、ツナ…私はこの子達につくわ。」
ハルと京子を抱き寄せながらそう言ったビアンキ

「私も…」イーピンを抱いたクロームが現れ、京子達の味方になると言った。

『え!?』

「クローム…!!」

「ボス、ごめん…」

「イーピンも!」

「え…えぇー!?そんなっ…みんな、どうしちゃったの!?」困惑するツナ

「か…考え直さんか?京子…」

「いくらお兄ちゃんの頼みでも、これだけはダメ!!」

「私達の結束は固いです!」

「そうよ!私達も京子につくわ!」

(!?…こ、この声はっ…!?)
ゆっくりと後ろを振り向いたソラ

そこには、女装したリボーンとジャンニーニ、そして頭にリボンをつけただけのフゥ太の姿があった。

(リボ兄とジャンニーニさんが女装してるー!?フゥ太兄も女装はさすがにしてないけどリボンを着けてるし。
……って事は、3人はママ達の味方につくんだ…)
心の中で盛大にツッコミながら、リボーン達がどちらの味方につくか解った。

「「女は女同士よねー!!」」女性になりきってるリボーンとジャンニーニ

「ごめんね、ツナ兄…」恥ずかしそうにしているフゥ太

「3人とも…なぜに女装…」呆然としながらも3人に問うソラ

「あら、だって京子達の味方をするなら、男のままじゃダメでしょ。」
女装したリボーンがソラの問いに答える。

「そんな理由なの…?わざわざ女装する必要はない気がするんだけど……」

「ところでソラはどっちにつくのかしら?」
呆れてるソラに聞くリボーン

ツナ達は一斉にソラに視線を向けた。

「どっちにもつかないよ。」間を置かずにきっぱりと答えたソラ

まさかどっちにもつかないとは思わず、全員驚いていた。

「どっちの言い分も解るから……だからどっちかなんて選べない。私は中立立場を取らせてもらうよ。」
そう言って、ソラはその場から去っていった。

ツナ達はそんなソラに声を掛けられず、その場を動けなかった。


標的73へ進む。


今回は新しい修行を開始した所から、ハルと京子がボイコット宣言する所までです。
今回はアニメ沿いに進めながら、所々オリジナルを入れました。
ディーノから新しい修行の説明が終わった後、各自修行に移りますが、
この時山本が自主練になるので、ソラを山本の元に向かわせ、修行相手をさせました。
その後のボイコット宣言の時も、ソラはどちらにも付かず、中立立場を取らせました。
これには随分悩みましたよ。
ツナ側にするか、京子側にするか、それとも中立立場にするか。
悩みに悩んだ結果、中立立場を取らせました。
それでは標的73へお進み下さい。

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