ボンゴレ匣の暴走

バイク運転の訓練3日目はツナが徹夜で練習したおかげで乗れるようになったので、後はただひたずらバイクを乗り回していた。
ツナだけは転ばないで乗りこなせるようになるのに必死になっていたとか。

ソラの方は、その日も午前中はバジルの相手をし、午後からは書類を片付けていた。
もうすぐ夕方になろうとしている頃、リボーンからの呼び出しを受け、書類整理を一旦やめて作戦室へ向かった。

ーー地下5階ーー作戦室ーー

作戦室に着くと、ツナ、獄寺、山本、了平、クロームも居た。

「全員、一応はエアーバイクに乗れるようになったな。」

「一応って…」

「そろそろ次の段階に移って良い頃だ。」

「えっ…それって!」

「いよいよですか?リボーンさん!!」

「次の段階とは何なのだ?」

「全員、アレは持ってるだろうな?」

「ああ、ちゃんと持ってるぜ!!」
リボーンが言うアレとは匣の事だとすぐに解った山本は
机の上に自分のボンゴレ匣を置いた。

「おぉっ!この匣の事だな!?」

山本や了平に続くように、次々とボンゴレ匣を取り出して、机の上に置いていった。

「(ソラの奴、まだアレを使うか迷ってやがるな…)明日から、そのボンゴレ匣を使っての修行を開始する。」
ツナ達がボンゴレ匣を出す中、ソラだけ出していないのを見て、まだ迷っている事を知るリボーン

「明日と言わず、すぐに修行を開始しましょう!!この数日で、気力も体力も十分戻りました!死ぬ気の炎も灯せるようになってますよ!!」
気合い十分な獄寺がリボーンに抗議する。

「待て。匣を開けるのは明日からだ。」

「えっ……どうしてですか!?リボーンさん!?」納得いかない獄寺

「なぜすぐにやってはいかんのだ?」了平も疑問を抱く。

「とにかく、明日まではダメだ。いろいろ準備があるんでな。」

「準備?」首を傾げるツナ

「いいな?」念を押すリボーン

「はぁ…解りました。」

「うむ!では、明日の楽しみにしておこう。」

「お前は匣の開け方も知らねぇじゃねぇか!!芝生頭!」
了平に思いっきりツッコむ獄寺

「極限気合いでなんとかなる!!」
ムキになって獄寺に言い返す了平

「なんとかなるわけねぇだろ!!」

「確かに気合いでなんとかなるかもしれないね、了平さんなら。」
言い合いになってる2人を見ながらそう呟いたソラ

「おぉっ…ソラもそう思うか!!」

「あくまでも、了平さんなら、だよ?普通は気合いでどうにかなるものじゃないから。隼人さんのが正論。」

「なんで芝生頭ならなんとかなるんだよ?」

「だって……常に死ぬ気状態だから、リングの炎はすぐに灯せるだろうし、匣の方も漢我流との相性はバッチリだろうから、
開け方さえ解れば、すぐに使いこなせるようになるだろうなって思って。ボンゴレ匣については少し時間掛かるだろうけど…」

「へぇ〜…先輩、凄いっスね!ソラがそういうなら確かにすぐに出来そうっスね!!そういや、ツナの匣兵器ってどんな動物なんだろうな?」
ソラの説明を聞いて素直に感心しながらも、ツナの匣の事が気になった山本

「え……動物?」

「俺のは燕だろ?獄寺は猫で、笹川先輩はカンガルー…んで、雲雀はハリネズミ…
そしてソラは、カメレオン、カンガルー、モモンガ……だったら、ツナのはどんなのかな?って…」

「そうか…匣兵器は、そのまま武器になるタイプと、動物がモデルになってるのもあるんだっけ…俺はどっちなんだろう…?」
そう言いながら、自分のボンゴレ匣を手に取って見つめるツナ

「10代目の匣兵器なんスから、きっと凄い物に違いありません!」

「う…うん。」

「動物だよ。」

「え…?」

「綱吉さんのは武器じゃなくて、動物。」

「そうなの?」

「綱吉さんはグローブで戦うから、それに合わせて手助けしてくれる動物がその中に入ってる。
そう…綱吉さんと共に戦ってくれる心強いパートナーがね。」

「へぇ〜……俺達のも、何が入ってるのか、すげー楽しみだよな!」
自分のは何が入ってるかワクワクする山本

「とにかくエアーバイクの練習はここまでだ。夕食の時間まで少し休んでろ。」

「うん。」頷くツナ


話し合いの後、再びソラは私室へ戻って書類を片付けていたが、
何か嫌な予感がしたので、作戦室に居るジャンニーニ達の所へ向かった。

作戦室に向かう途中で、突然爆発音が起きた。

「爆発音!?いったい何がっ…」
状況を把握するため、急いで作戦室へ駆けて行った。


ーー作戦室ーー

「居住スペースで爆発が起こったようです!」

(居住スペースで爆発!?)
中からジャンニーニの声が聞こえ、爆発が起きた場所を聞いて驚くソラ

「なぜ居住スペースから…?爆発するような物が置いてあるのか?」
危険物が置かれているか聞くスパナ

「居住スペースに爆発が起こるような危険な物は置いてないよ!ジャンニーニさん、監視カメラの映像を出して!!」
スパナの問いに答えた後すぐにジャンニーニに指示を出すソラ

「は、はい!すぐに出します!!」

ジャンニーニがキーボードを打ち始め、壁のモニターに監視カメラの様子が映された。
だが、爆煙でよく見えず、状況を把握出来ない。

「爆煙で何も見えない……ここ、誰の部屋?」

「え〜とですね……!?…10代目の部屋付近です!!」

「え!?パパの部屋!?…・私、様子を見てくる!!」
そう言って、作戦室を出て行き、爆発が起きたツナの部屋へ向かったソラだった。


ーー地下6階ーー

ツナの部屋の前まで駆けてきたソラ

辺りは爆発のせいで壁が崩れたりしていてめちゃくちゃだった。

了平達を見つけ、そこに駆け寄り、中を覗いてみると……大空の炎で出来た何かが
超モードになったツナの手足を拘束しているのが見えた。

(アレはいったいっ……!!…ま、まさかっ…!?)
ツナが拘束されてる姿に驚いていたが、すぐにツナの真下に落ちているボンゴレ匣を見つけ、
ソラはすぐに得体の知れないあの怪物がツナのボンゴレ匣から出てきたのだと解った。

ソラがこの怪物の正体を見破ったその時、バジルの声が聞こえてきた。

「行くぞ、アルフィン……開匣!!」
雨系リングに炎を灯し、匣に差し込んだバジル

すると、雨の炎を纏った雨イルカが出てきた。
「アルフィン」とは、この雨イルカの名前のようだ。

「イルカ!?」驚きの声を上げる山本

獄寺達が驚いている間に、バジルはアルフィンに指示を出していた。

ツナを襲っている怪物に向かってヒレから刃をいくつも放ったアルフィン

「ギャアァ!!」
アルフィンが放った雨の炎を纏った刃が命中し、苦しむ声を上げた怪物。

(!…ナッツ!!)苦しむ声を聞いて、苦痛の表情を浮かべたソラ

「怪物が苦しんでる!?」

「“ドルフィンエッジ”は体内を抉る雨の鎮静の炎の刃…いわば、対匣兵器用の麻酔戦です。これで大人しくなるはず…」
獄寺達に説明しながら、様子を見るバジル

刃を放し続けるアルフィンに対し、怪物は刃を打ち落とし始めた。

「あっ…!?効いていないのか!?」

雨の鎮静の効果が弱かったようだ。

「しまった!予想した力をはるかに上回っている!?」

その時、アルフィンに向かって襲いかかりそうになった怪物の攻撃を雨燕が助けた。

「あっ…」
「何っ…」
「あれはっ…」
「武さんの…」
誰の雨燕かすぐに解ったバジル、獄寺、了平、ソラ

「お前だけが雨属性じゃないぜ。」

「山本殿!!」

山本とバジルの匣が強力して怪物に雨の炎をぶつけるが、怪物の方がわずかに上回っていて、苦戦していた。
だが、少しずつ雨の鎮静が効き始めたのか、悲鳴を上げていた。

【く、苦しいっ…!!怖いよっ…!!】

苦しみや恐怖を訴える声がソラの耳に聞こえてきた。
その声を聞いた途端、ソラは駆け出した。

「おいで!アルフィン!」

「キュイ!!」了解と言わんばかりに、攻撃をやめ、ソラの傍まで降下したアルフィン

「アルフィン!?」ソラの指示を聞いたアルフィンに驚くバジル

ソラは降下してきたアルフィンに跳び乗った。

「下がってて!!」雨燕に下がるよう言うソラ

ソラにそう言われ、雨燕も攻撃をやめ、後ろに下がった。

「アルフィン、あの子の近くまで寄ってくれる?私が跳び移ったら、すぐにバジル兄の所へ戻るんだよ?いいね?」

「キュイ!!」

「行くよ!!」

ソラの掛け声に応えるように、アルフィンは怪物に接近し、ソラはアルフィンからその怪物の上に跳び移った。
役目を終えたアルフィンは後ろにそのまま下がった。

「ソラ殿!?」
「何をするつもりなんだ!?」
ソラの行動が理解出来ず、焦るバジルと山本

「ソ…ソラっ…」怪物からの攻撃を抑え込んだ状態でソラの名を呼ぶツナ

「綱吉さん、もう少しそのまま頑張ってて!」

ソラはその場でしゃがんで、怪物の頭と思われる所に手を添えた。

「ナッツ、怖がらないで…」
そう言いながら、頭を撫で始めた。

「ギャアァ!!」雄叫び続ける怪物

「ナッツ!!この声が聞こえるなら、暴れてるこの力を抑え込みなさい!!」

「何をやっておるのだ?」
「あの怪物に呼び掛けてる…?」
了平と獄寺が呟く。

ソラがさっきから呼んでいる「ナッツ」とは、この怪物…ツナのボンゴレ匣の名前のようだ。

「!!…ギャ…ギャアァッ…」
ソラの声に気付くナッツ

「大丈夫、ナッツは強い子だよ…自分を信じて?頑張って抑え込んでみてよ、きっと出来るから…」
優しい声で話し掛け続けながら頭を撫で続けるソラ

「ギャアァ…」

ソラが頭を撫で続けていると、徐々に静かな鳴き声になっていく。

「そう…その調子だよ。さぁ、もう大丈夫だよね?そのまま匣の中へ戻って?」

ソラの声に応えるように、そのまま匣へと戻っていった。

暴れていたナッツが大人しく匣へ戻っていくのを見届け、見守っていた2匹もそれぞれ匣へと戻っていった。

ナッツの上に居たソラは足場を無くして落ちていくが、難なく着地し、ツナから離れて近くに落ちているボンゴレ匣を拾いに行く。

「沢田殿!!」

「10代目!!」

「大丈夫か!?ツナ!」

バジル、獄寺、山本、了平がツナの元へ駆け寄った。

「良く頑張ったね、ゆっくり休んでて?ナッツ」
拾い上げたボンゴレ匣に向かってそう呟いたソラ

「お怪我はありませんか!?」ツナに怪我がないか心配する獄寺

「うん…大丈夫。みんな、ゴメン……」

「やはり、今のは沢田殿の匣兵器…」呟くバジル

「うん。」頷くツナ

「いったい何したんだ?ツナ」疑問をぶつける山本

「普通に炎を注入したつもりだったんだけど……いきなりあんなのが飛び出してきて…」

「あんな物が出るとは聞いておらんぞ!!俺達の味方になる物ではなかったのか!?」
困惑の表情を浮かべる了平

「そのはずなんスけど…」

「それにおかしいです。匣は全て、地球上の生物を模しているはず。今のような怪物は存在しません。」
今現れた怪物は地球上に存在しないと言うバジル

「それじゃいったいっ…」

「!!…まさか、入江の奴が不良品を渡したんじゃっ…!?」

「ええ、そんな!?」

「いいえ、きっとそうです!!こんな怪物が大空のボンゴレ匣のはずがありません!すぐに入江の奴を締め上げて…」

「うわぁ!?待って待って、獄寺君!」慌てて獄寺を止めるツナ

「これは不良品なんかじゃないよ、今のは綱吉さんが悪い。」

「え!?」

「なっ…10代目が悪いだとっ!?」

「確かに今現れた怪物は地球上には存在しないよ。でも、この匣の中に居る子の本来の姿は違う。
さっきのは、綱吉さんが間違った開匣の仕方をしてしまったせいで匣が暴走してしまっただけ。」

「え…暴走!?」

「ソラの言う通りだせ、ツナ。大空の匣は特にデリケートなんだ…こんな開匣を繰り返していたら、使い物にならなくなるぞ。」

突然男の声が聞こえてきた。

ツナ達は驚き、振り向いてみると……
そこには、オレンジの炎を纏った白い馬に乗った、
金髪の青年…この時代のディーノの姿があった。

「ディーノ…さん…?」

「元気にしてたか?弟分」

「ディーノさん!!」ディーノに会えて嬉しそうなツナ

「すげー…馬に乗ってるぜ。」

「オレンジの炎…大空の匣兵器だな。」

「しっかし、ハハハっ…10年前のお前ら、本っ当にガキだな。」

「な…何!?」キレる獄寺

「おめ―だってガキだろ。今頃来やがって、迷子になってたんじゃねぇだろーな?」

崩れた壁の向こう側にリボーンとジャンニーニの姿が見えた。

「フっ…また会えるとな…我が師リボーン…」

「フっ…なんだ、その面は。10年経ってもヘナチョコが抜けねーな。」

「ちぇっ…何年経っても子供扱いかよ。」
そう言いながらも、リボーンとの再会を嬉しそうにしていたディーノ

「リボ兄の言いぶりだと、今着いたばかりみたいだね?遅過ぎるよ、また迷子になってたの?ディーノさん」

「う゛っ…ソラ、お前もかよ…」

「降りる時、“気をつけてね?”」
ディーノが馬から降りようとしているのに気付き、そう声を掛けたソラ

だが、ソラがせっかく気をつけるように言ったのに、見事に馬から転け落ちたディーノ

それを見て驚くツナ達。

「だから言ったのに…」ため息をつくソラ

「いっつつ…」起き上がって頭を摩るディーノ

「おい、もしかしてよぉ…」呟く獄寺

「おっかしーな−…今日はやけに転ぶっつーか、ドジるっつーか…」

「ま…まさかっ…」ツナも今のディーノの言葉を聞いて悟った。

「1kmも離れてねー所ここに来るのに、3時間も掛かっちまったし…」

「ふむ…やっぱり迷子になってたんじゃねぇか。」

「ディーノさん、ロマーリオさんは?」

「ん?3時間前にロマーリオは草壁と飲みに行かせたぜ。」
ソラの問いにそう答えたディーノ

(やっぱりっ…10年経っても、部下の前じゃないと力が出せない体質なんだー!?)
心の中で盛大に叫んでいたツナ

獄寺達も今のディーノを見て、それぞれ同じような事を思っていた。

「ん?どうかしたか?」

「あ…いえ。」

「スクーデリア、久しぶり。」
そう言いながら、「スクーデリア」と呼ばれる白い馬に触れるソラ

【お久しぶりです、ソラ嬢】
ソラが触れやすいように、頭を下げて話し掛けるスクーデリア

「ここまでご苦労様。大変だったでしょ?」

【はい、大変でした。あのままディーノに任せていたら、おそらく今も彷徨い続けていたでしょう。】

「確かに。」

ソラとスクーデリアはディーノを見てため息をついた。

「おい、お前ら…なんで俺を見てため息つく!?…っていうか…スクーデリア、お前だけズルイぞ!!」
そう言いながら、ソラを抱きしめようとしたディーノ

だが、ソラはディーノに触れさせなかった。

「なっ…!?」

「ディーノさん、忘れたの?部下の人達が居ない時は私に抱きついたりとかしちゃダメって。」

「あ……ツナ、別に良いよな!?」ソラに言われてその事を思い出し、ツナに聞くディーノ

「えっ…!?なんで俺に聞くんですか!?」

「俺にそう言ったの、この時代のお前なんだよ!」

「え…えぇーっ!?」

「ふむ…なら、部下が居ない時は触れるなよ?ディーノ」
ツナでなく、リボーンがディーノにそう言った。

「なっ…リボーン、そりゃないぜっ…!?」

「お前…以前、ソラに怪我させたか、またはさせかけたんだろ?」

「う゛っ…」図星だからか、返す言葉がないディーノ

「図星だな。」

「ソっ…ソラ、お願いだ!1度だけでいいから、ハグさせてくれ!!お前の癒しが欲しい!!」

「やだ。」間をおかずに即答したソラ

(ガーンっ…)思いっきり落ち込んだディーノ

「本当に何したんだ…お前は…」
ディーノの落胆ぶりを見ながら呟くリボーン

(ディーノさん、ソラちゃんに拒否されてすげー落ち込んでる…)
落胆してるディーノを見てツナはちょっと可哀想な気がしてしまった。

「つーか、何しに来たんだよ?」
今まで黙っていた獄寺がディーノに聞く。

「ご…獄寺君!!」

「おめーのファミリーも、ミルフィオーレとの戦いで大変なんだろーが!?」

「向こうは片付いた。だが、白蘭を倒さなければ、イタリアでの勝利に意味はない。全てはお前達次第って事だ。」
そう言いながら、立ち上がったディーノ

ディーノの真剣な表情を見て、気を引き締めるツナ達。

「フっ…心配すんなって。そのためにわざわざ俺が出向いてきたんだからな。」

「えっ…それって…」

「募る話は後だ。まずは、ディーノの歓迎会をやるぞ。」

「はぁ?」
「また歓迎会っスか?」
呆気に取られるツナと獄寺だった。


ソラは歓迎会の準備が出来るまで、また私室に籠って書類を片付けていた。
その間、ツナ達は飾り付けの準備をしていた時に、あるひと騒動が起きていたが、
ソラはその騒動に気付く事なく、黙々と書類を片付けていたのだった。


そろそろ時間だろうと思い、地下7階の小食堂へ向かったソラ

「あれ…中に入らないの?」

出入口で立ち止まってた京子達を見つけ、声を掛けたソラ

「あ、ソラちゃん!見て!!」
中を指差す京子

「?」

中を覗いてみると、出入口前にいくつもの卵があり、殻が割れて出てきたらしいディーノ達の姿が……
そして、その目の前には、エンツィオそっくりの亀の姿を見つけた。

(この卵の数といい、あの亀といい……これってもしかしてリフレッシュさせた?)
ソラにはあの亀が何なのか解っているようだった。

ふと上を見上げたソラは、天井に穴が開いてるのを見つけた。

(……なんで崩れてるの……)


あの卵の殻を全て片付け、歓迎会が開始された。

ソラはリボ―ンとビアンキの間に座って御飯を食べていた。

「リフレッシュ用の匣兵器?」

「この亀の腹ん中には、大空の炎と晴の炎が溜め込まれてるんだ。体調を整える調和の炎と体を活性化させる炎っていうわけだ。」
ツナと獄寺に自分の肩に乗っているエンツィオそっくりの亀について説明していたディーノ

「それがどうしてこんな騒ぎに…」疑問をぶつける獄寺

「修行に備えて、ツナ達を元気にしてやろうと思ってな。土産として持ってきてやったんだが…
開けた途端、自分が喰われちまった、大失敗だぜ。」

それを聞いて呆気に取られたツナと獄寺とソラ

「…一時はどうなる事かと…」

「でもよ、リボーンはこの事知ってたはずだぜ?」

「えぇっ!?リボーン!!」

「教えねぇ方がおもしれぇからな。みんなもリフレッシュした事だし、明日から修行開始だぞ。」

「んなぁ!?あ、あの…俺はヘトヘトなんだけど…」
そう言って、ガクッと項垂れるツナ

「じゅ…10代目!!」

「ディーノさん」

「ん?」

「このアジトに居る間は、部下が居ない時に匣を開けるのは一切禁止!!」

「なっ…」

「あと、あそこの天井とディーノさんが居た部屋……その子が壊しちゃったみたいだから、それの修理費はキャバッローネが負担ね。」

「お、おい!?」

「拒否権はないよ…いいよね?ディーノさん」
笑顔なのに目が笑ってないソラがディーノにそう言った。

「は…はいっ!わ…解りました!!(今のソラ、怒らせたらダメだっ…)」冷汗かきながらも、了承したディーノ

(ディーノさんがソラちゃんに言い負かされてる!?)2人の様子を見て内心驚くツナ

その後も他愛ない話をしながら、歓迎会は続いていた。

時間が過ぎ、御飯を食べ終え、お茶を飲んでいる時に、リボーンがツナに話し掛けた。

「そういえば…ツナ、おめぇどうする気だ?」

「えっ?どうするって?」

「おめぇの部屋、めちゃくちゃになっただろ?」

「あっ!?」リボーンに言われてその事を思い出したツナ

「どこで寝る気だ?」

「ジャ…ジャンニーニ!空いてる部屋ある!?」

「え…ええ、あることにはあるのですが…」

「?」

「残ってる部屋は全て、最近お掃除していないので、埃が溜まってるんですよ。
ですから、明日から使えるようにお掃除致しますが、今夜寝れる部屋は…」

「無いんだね…」

「じゅ…10代目!でしたら自分の部屋をお使い下さい!!」

「えっ!?それじゃ獄寺君の寝る場所がないよ!?」

「山本のベッドで寝ます!」

「おいおい、俺はどうなるんだよ?」
自分の名前が出てきたのが聞こえ、獄寺に抗議する山本

「おめーは床にでも布団敷いて寝ればいいだろ!」

「うわぁっ!?待って、獄寺君!俺が別の所で寝るから!!」

「どこにですか?」

「そうだなぁ…応接室のソファーとか?」

「10代目がソファーで寝るだなんてっ……でしたら、俺がそこで寝ますから、10代目はベッドで寝て下さい!!」

「良いってば!?」
獄寺の申し出を必死になって断っているツナ

「いつまで揉めてる気だ?」
呆れた声でそう言いながら、お茶を啜るリボーン

「そんな事言ったってっ…(獄寺君が引き下がってくれないんだもん!)」

「そんな譲り合いしているより、手っ取り早い方法があるじゃねぇか。」

「手っ取り早い方法?何?」

「おめぇがソラの部屋で寝ればいい。」

「ぶっ!?」飲んでいたお茶を思わず吹き出してしまいそうになったソラ

「大丈夫?ソラ」
咳き込み始めたソラを心配するビアンキ

「う…うん、大丈夫。」

「別に驚く事ねぇだろ。」
何をそんなに驚く必要がある?っというような表情のリボーン

「いや、驚くって!?なんで手っ取り早い方法が私の部屋なの!?」
隣に座ってるリボーンに詰め寄るソラ

「だっておめぇと一緒に寝るなら、ベッドで寝れるだろ。」

「確かにそうだな〜…ツナ、ソラと寝れば?」
リボーンの言葉に同意した山本がツナにそう言った。

「ついでに、お風呂も一緒に入ってこい、ソラの部屋にはバスルームも付いてるからな。」

「ちょっ…リボ兄!?」

「いいじゃねぇか。10年前に居る間、ずっとツナと入ってたろ?」

「はひっ!?それ本当ですか!?リボーンちゃん!!」

「ああ、本当だぞ。」

「ツナさん、ズルイです!!」

「えぇ!?」

「ハルだってソラちゃんと一緒に入りたいです!京子ちゃんもそうですよね!?」

「う…うん。」ハルの剣幕にたじろぎながらも頷く京子

「私も…」クロームも一緒に入りたいと言う。

「ほら!ツナさんだけズルイですよーー!!」

「ハ…ハル…」暴走気味なハルにたじろぐツナ

「ハルさん、興奮し過ぎ…」ソラも珍しくたじろいていた。

「そういやぁ…ソラって今まで笹川達と一緒にお風呂に入りに行ってる所、見た事ないのな?」
「そういやそうだな…なんで一緒に入らねぇんだ?」
山本と獄寺が疑問を抱く。

「なんとっ…ソラ、なぜ京子達と入らないのだ!?」
山本と獄寺の話を聞いて、了平もソラに聞く。

「え、えっと…それは…」困り果てるソラ

「ソラちゃん!」

「は、はい!」
ハルに呼ばれ、思わず返事してまったソラ

「ハル達と一緒にお風呂に入りましょう!!」

「ごめんなさい!!」頭をペコリと下げて即答するソラ

「(ガーンっ…)1秒も掛からず、断られてしまいました〜…」
一気にテンションが下がり、落ち込んでしまったハル

「あ…その、えっとっ…」あまりの落ち込みようを見て、あたふたするソラ

「別に一緒に入れば良いじゃねぇか、何か問題あるのか?」

「そ、それは…」山本の問いに答えられなくて困った表情になるソラ

そのまま何も言えず、黙り込んでしまう。

「あ…えっと…ソラちゃん、部屋に行っても…良いかな?」

「え…あ、うん。寝る所ないみたいだし…」ツナの問いに頷くソラ

「じゃあ行こうか!」

席から立ち上がり、ソラの席まで行くと、すぐに抱き上げたツナ

「うわっ!?」

「一緒にお風呂入ろ?」そう言いながら、そのままソラを抱いたまま、ササっと小食堂を出て行ったツナ

「ああ!?10代目ー!?」

「まぁまぁ…獄寺、落ちつけよ。」
爽やかな笑顔を浮かべたまま、獄寺がツナを追いかけるのをさり気なく止める山本

「こら、山本!放せ!!」

「ダメなのな。」

「放せって言ってんだろーが!?この野球バカ!!」
なんとかして山本の拘束から抜け出そうと踏ん張っていた獄寺

「……ああー!?ツナさんだけズルイですよーー!?」

「ハルちゃん、落ちついて!」

「だって京子ちゃん!ハル達女の子同士なんですから、お風呂に一緒に入るくらい良いじゃないですか!!
ハルは、もっとソラちゃんと仲良くなりたいです!!」

「私も…仲良くなりたい…」

「クロームちゃんもそう思いますよね!?」

「う〜ん…難しいと思うな…(ソラちゃんが私達と入りたがらないの…たぶん古傷のせいなのかもしれないし。
でも……私もソラちゃんと一緒に入りたいな…)」
ハルとクロームの会話に参加こそはしなかったが、京子もソラと一緒に入りたいと思っていたのだった。


ーー地下14階ーー

ツナとソラは、まず地下6階でツナの服を取りに行ってから、この階へ来ていた。

(この階に来るの、初めてだな…地下14階なんてあったんだ…いつもボタンの所に14階が抜けてるな〜とは思ってたけど。)
ツナは心の中でそう呟きながらキョロキョロと見回しながら、ソラの後をついていく。

「あの、ソラちゃん…ここは?」

「守護者達の部屋がある階。」

「へっ…!?なんでここに?」

「ここに私の部屋もあるから。」

「え…ソラちゃんの部屋、この階にあるの?」

「そうだよ。」

「…今さらだけど…ホントに俺、ここに来ちゃって大丈夫?」

「大丈夫だよ。ダメだったら、寝る部屋がなかったとしてもここへは連れて来ないよ。」

「た…確かにっ…」

自分の部屋の前に着き、立ち止まったソラ

「ここが…ソラちゃんの部屋…?」

ソラは部屋に入る為に、IDカード、指紋認証、波動認証(死ぬ気の炎の事)をして、部屋を開けた。

「……ここ、セキュリティー付いてんの!?」

「そうだよ。この階の全ての部屋、セキュリティーが付いてるんだよ。」

「そうなんだ…」

「綱吉さん、悪いけど…少しここで待っててくれる?見られちゃ困る物が少しあるから。」

「あ…うん、わかった。」

ツナの返事を聞いた後、ソラだけ先に中へ入り、ツナに見られちゃ困る物をすぐに隠した。
その後、ツナを呼んで中へ入れた。

「ここがソラちゃんの部屋か……ん?何アレ!?」
ツナは机の上に山積みになっている紙の束を見つけて驚きの声を上げた。

「ああ、アレ?処理しなきゃいけない書類の山。」
あっけらかんとした表情でさらっと答えたソラ

「……アレ、全部?」

「そう。」

「ソラちゃんが?」

「うん。」

「……多くない?」

「そうだね、多いね。でも仕方ない。」事もなげに言うソラ

「し、仕方ないってっ…」

「綱吉さん、さっきは…ありがとう。」

「え…?」

「ハルさんからお風呂に誘われた時だよ。」

「ああ、うん…ソラちゃん、なんか困ってる気がしたから。……ねぇ、ソラちゃん…本当は、京子ちゃん達と……一緒に入りたい?」
そう言いながらしゃがみこんで、ソラに視線を合わせたツナ

「……入りたくないっていえば嘘になるかな……でも、あの傷を見せる訳にはいかないから……」
そう言って困ったような、悲しそうな表情を浮かべたソラ

「ソラちゃん…」そんなソラを心配そうに見つめるツナ

少しの間沈黙が流れたが、先にソラがその沈黙を破った。

「綱吉さん、その…お風呂……一緒に、入って良い?」
おずおずとツナに話し掛けたソラ

「えっ……も、もちろんだよ!俺もソラちゃんと入りたいなって思ってたし!!」
ソラがそう言ってくるのが初めてで少し驚いてしまったが、その言葉が嬉しかったツナ

「…じゃ、入ろう?」
その言葉を聞いてほっとし、ツナの手を取ってお風呂へ向かうソラだった。

ツナはソラに引っ張られながらも、黙ってついていった。


お風呂から出た後、2人はベッドで横になった。

「あっ、そうだ。聞きたい事があるんだけど…いいかな?」

「何?」

「ソラちゃん、俺のボンゴレ匣が暴走してた時…俺に襲いかかって来てた奴に向かって『ナッツ』って呼んでたよね?」

「うん、呼んだよ?」

「それってあの匣の中に居る奴の名前?」

「そうだよ。この時代の綱吉さんが付けた名前。」

「そうなんだ…って事は、ソラちゃん、あの中に居る動物がどんなのか初めから知ってたの?」

「うん、本当はあんな姿なんかじゃないんだよ。」

「どんな奴なの?」

「ナッツはとっても優しい子…ボスが時々ナッツを匣から出してくれてたから、その時はいつも一緒に遊んでたよ。」

「え!?この時代の俺が?」

「うん。」

「そっか……そういえばさ、ソラちゃんに託されたボンゴレ匣……使わないって言ってたけど……どうしてか聞いてもいい?
あ、もちろん、答えたくないなら答えなくても良いんだけど…」

「………私が臆病なだけだよ。」

「えっ…」

「あの匣を使うのが…怖い……ちゃんと使いこなせるかどうかじゃなくて、ただ純粋に怖い。
アレを使うという事は、自分の死ぬ気の炎の凄さを…再認識してしまうから…」

「?…どういう事…?」

それ以上は何も答えず、ただ黙ってツナに擦り寄ってきた。

「ソラちゃん…?」
いつも無意識にしてしまう行動を、今回は自分の意志で擦り寄って来たのを見て驚くツナだったが、
引き離す事はせず、すぐにそのまま優しく抱きしめた。

「……綱吉さん」

「ん…?」

「綱吉さんは…私のボンゴレ匣の事、どう思ってる?」

「え…?」

「あのボンゴレ匣を使えば、正兄の言っていた通り戦力はアップする。だからっ…」

(!…震えてる…?)

「だから、戦いに勝つために…使った方が良いって思う?」
体を震わせたまま、ツナに問うソラ

「……ううん、俺は別に使った方が良いなんて思ってないよ。そりゃ、使えば戦力アップ間違い無しなんだろうけどさ、嫌がっているのを無理やり
使わせるなんて俺には出来ない。この時代の俺もきっとそう言うと思う…だから、ソラちゃんが使いたくないなら、無理に使わなくても良いんだよ?」
頭を撫でながら、ソラに優しい声で話すツナ

(パパ…)優しい言葉を掛けてくれるツナのおかげで少しだけ体の震えが無くなった。

「使うも、使わないも、ソラちゃんの自由だよ?だから大丈夫…大丈夫だから…」
頭を撫でるのをやめ、まだ体を震わせてるソラを安心させるように背中をトントンと優しく叩き始めたツナ

そうしているうちに、いつの間にか体の震えが無くなり、体に入れていた力が抜け、そのまま眠気に誘われて眠ってしまったソラ

「寝ちゃった……(それにしても、死ぬ気の炎の凄さを再認識って……いったいどういう事だろう…?…そういえば、10年前の世界で
ヴェルデと戦っている時にソラちゃんの死ぬ気の炎を使って出てきた匣兵器達、攻撃が効きにくかったり、怪我を治せたりしてて、
強敵だったな……それに、こっちに戻って来たばかりの時も、俺達の炎は小さかったのに、ソラちゃんのは普通に灯ってた。
この事も含めて、ソラちゃんの死ぬ気の炎は、俺達とは違った特別な炎…なのかな…?)」
背中を叩くのをやめて、ソラの寝顔を見つめながらそんな事を考えていたツナ

少しの間、そのまま寝顔を見つめていたが、睡魔に襲われ、そのままツナも眠ってしまったのだった。


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今回は大空のボンゴレ匣の暴走の話です。この回では10年後のディーノ初登場です!!
ボンゴレ匣の暴走は本来バジルと山本の2人のおかげで収まる所をソラに暴走を止めさせました。実力行使ではなく、お話で。
スクーデリアの口調……凄く悩みました。おかしくないですよね??
ディーノの匣の大空天馬ならこんな感じかな?って思ってああなったのですが…
その後に起こったディーノの匣が起こした騒動は飛ばさせて頂きました。
もしソラがあの匣の事を知っていたら、すぐにツナ達に言って、大騒動になるのを防ぐだろうな〜?っと思ったので。
その後は少しオリジナルを入れてみました。
それでは標的72へお進み下さい。

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