凪姉とバジル兄

アジトにツナ達と一緒に戻ったソラは再び私室に籠り、書類を片付けていた。

「あ…キャラメルミルクが切れた……」

ソラは新しく作るために冷蔵庫を開けたが、キャラメルのストックが切れていた。
ついでに牛乳ももう少しで空っぽになりそうだった。

「こっちに帰って来てから忙しくていつの間にか切らしてるのに気付かなかったよ……仕方ない、食堂で作ってこよう。
確かあっちならキャラメルあったはず……食料庫には御飯の後にでも取りに行けばいいし。」

私室を後にし、保温ポットを持って食堂へ向かったソラだった。


ーー食堂ーー

『それですごすごと帰って来たのか?』

(?…リボ兄の声?何の話をしてるんだろう?)
気になり、そのまま気配を消して扉の傍に寄り、耳を澄ました。

『ごめん…やっぱり俺、何の役にも立てなくて…』

『そ…そんな事ありません!!10代目がわざわざ出向いて来られたというのに、話を聞かないあの女が無礼なんです!!』

『でも、飯食わねぇなんて、体が心配だよな。』

リボーンに続いて、ツナ、獄寺、山本の声も聞こえてきた。

(隼人兄が言ったあの女と、タケ兄が言った体が心配……これを繋ぎ合わせると、どうやら凪姉の事みたいだね。
そういえば凪姉、すっと部屋に籠りっきりだったっけ?しかも、この様子だと御飯もまったく食べてないみたい…)
獄寺と山本の言葉を繋ぎ合わせて、クロームの話をしている事が解ったソラ

ソラは予定を変更し、そのままその場から離れた。


食堂に行くのをやめたソラは、一旦自分の私室へ戻り、持っていたポットを机の上に置いてから、
冷蔵庫から作り置きしておいたチョコプリン2つを取り出して、再び私室を出て行った。

実はこのチョコプリン…超直感が働いたのか、なんとなくで作り置きしていた物で、
先程のツナ達の会話を聞いて、このチョコプリンの事を思い出したのだ。

クロームの部屋に着き、ドアをノックすると、クロームが少しドアを開けて顔を出した。

「ソラ…?」

「凪さん、中に入れて?少し話そう?」

「……うん…入って。」
ソラが敬語を外しているのに驚いたが、すぐに頷き、クロームはソラを中へ入れた。

「電気、付けないの?」

「うん…明るいの、慣れてなくて……」

「そういえば、黒曜ランドって廃墟だから電気がないんだったっけ。」

「うん。」

「とりあえず、コレ食べながら話そっか?」
そう言いながら、クロームに持ってきたチョコプリンを見せた。

「それは?」

「チョコプリンだよ。チョコ、好きでしょ?」

「あ…うん。」

「アジトに戻ってから全然食べてないって聞いて、心配になってね。はい、どうぞ。」

「あ…ありがとう…」

クロームに持ってきたチョコプリンを渡した後、クロームが座っているベッドにソラも座った。

「………美味しい。」
一口目を食べたクロームがそう呟いた。

「良かった。」

「これ、ソラが作ったの?」

「そうだよ、作り置きしておいた物で悪いけど。(また超直感が知らぬ間に働いて作ってしまった物なんだけどね…)」

「ううん、全然気にしてない。」

「…凪さん」

「?」食べるのを止めて、ソラに振り向くクローム

「京子さんとハルさんの事…どう思ってる?」

「えっ……どうって……」

少し沈黙が流れたが、それを破るようにクロームが喋った。

「2人とも、優しい……今まで私にはなかった、温かい気持ちが私の中に流れ込んでくる。
でも、今まで経験した事ない事だから、上手く向き合えなくて……あの2人だけじゃなくて、ソラにもだけど……」

「そっか。2人は、待ってくれてるよ?今も、諦めずに凪さんの友達になろうと奮闘してると思う。
大丈夫、私とちゃんとこうして話出来てるもん。きっと2人ともすぐに上手く向き合えるようになるよ。」

少ししてチョコプリンを完食したクロームとソラ

「さて、そろそろ行くね。やらなきゃいけない事、まだたくさん残ってるし。」
そう言ってベッドから降りたソラ

「ソラ」

「何?」部屋を出ようとしていた足を止めて、クロームに振り返るソラ

「ありがとう。」

「どういたしまして!…ここの凪さんは2人と仲が良かったからきっと良い友達になれるよ、頑張って!」
クロームに声援を送り、そのまま部屋を出て行ったソラだった。


クロームの部屋から出た後、再び自分の私室に戻って、書類整理を再開していた。
その間に時間が過ぎ、ジャンニーニからの連絡が来るまで、晩御飯の時間だという事に
気付かないほど集中してしまっていたソラだった。


ーー地下7階ーー小食堂ーー

今日はバジルの歓迎会をするため、食堂ではなく小食堂で晩御飯だった。
そのため、出ている料理はたくさんあり、ご馳走だった。

『かんぱーい!』

「拙者のためにわざわざこのような場を用意して頂き、恐縮です。」
頭をべコリと下げながら、みんなに向かってそう言ったバジル

「気にする事ねぇぞ、バジル。こいつらはただご馳走が食える原因が欲しいだけだからな。」

「そ…そんな事ないよ!バジル君が来てくれてホントに嬉しいんだから!」

(パパ、図星なんだね……まぁ、ご馳走を食べたいって気持ちは解らなくもないけど……)
そう思いながらも、黙々と御飯を食べていたソラ

ソラが座っている場所は、リボーン、ビアンキ、フゥ太、ジャンニーニと同じテーブルだった。
残り2組は、1組目は今日の主役のバジルとツナ、獄寺、了平、山本で、
2組目は、ランボ、イーピン、京子、ハルだった。
全部で3組のテーブルに分かれていた。

「ランボさん、毎日パーティが良いんだもんね!ご馳走いっぱい!」
ご馳走が食べれて上機嫌なランボ

「ランボ君、毎日パーティはさすがに無理だよ。」

「なんでだもんね?」

「なんでって…食費がかさむから。だから毎日するのは無理!」
はっきり無理だとランボに言ったソラ

「ガーンっ…」落ち込んだランボ

(ソラちゃん、食費がかさむってっ…それにランボにはっきり無理って言っちゃったー!?)
ランボとソラのやり取りを呆然と見ていたツナ

「アハハっ…ソラ、ちょっとはっきり言い過ぎじゃね?ところでツナ、あの2人は呼んでねぇのか?」

「ああ、入江さんとスパナの事か。呼んだんだけど、まだ手が離せないみたいで…」

「あいつらの事なんて、気にする事ないですよ。10代目」

「でも、みんなの為に寝る間も惜しんで頑張ってくれてるのに…」
獄寺にそう言われても、自分達の為に頑張ってくれてる正一とスパナの事を気にするツナ

この場に居ない人は、部屋に未だ籠りきりのクローム、集中治療中のラル、
そしてメローネ基地にある丸い装置の事で、まだ手が離せない正一とスパナの4人だった。

「ジャンニーニは手伝わなくていいの?」
フゥ太が自分の隣で食事をしているジャンニーニに聞いた。

フゥ太にそう聞かれ、食べていた物が喉に詰まり、噎せてしまったジャンニーニ

「私も出来る事は手伝っておりますとも!今は休憩というか……」

「ふーん、そうなんだ。あんまり根を詰めてもミスが起きたりするもんね。」

「そ、そうなんですよ!良くお解りでっ…」

「あれ?じゃあどうして根を詰めていない時でも、ミスが起きてるのかな〜?」
笑顔でさらっとジャンニーニの心臓がグサッといく様な言葉を言い放ったソラ

「う゛ぐっ……そ、それは〜…」
言い返す言葉が無く、視線を泳がせていたジャンニーニ

「何でかな?ねぇ、何でミスが多いのかな?」
ニコニコと笑顔でジャンニーニを容赦なく問い詰めていたソラ

ソラがここまでジャンニーニに容赦がないのは、おそらくジャンニーニの発明品によるミスで
何度か巻き込まれ、さらに後始末をしていたからなのだろう。

(ソ…ソラちゃん、ジャンニーニに容赦ないね…)
ソラとジャンニーニのやり取りを見て苦笑いを浮かべていたツナ

「いいか、お前ら!」突然了平が叫んだ。

「え?」了平に振り向くツナ

他のみんなも了平に振り向く。

「これからが本番だ!」そう叫びながら、椅子から立ち上がった了平

「お、お兄さん!?」

「打倒白蘭!打倒ミルフィ…」

了平がその先を言うのを防いだ獄寺

「何をする!?」

「バカ!女子供には、白蘭とマフィア絡みの事は言わねぇようにしてんだろうが!!」
了平にだけ聞こえるように怒鳴った獄寺

「あっ!?……お、おぉっと、しまった!10年前の相撲大会の話をしてしまった!!」
獄寺に言われて、はっと思い出し、すぐに誤魔化した了平

「アハハっ…笹川先輩、いつも気合い入ってんな!」
爽やかに笑いながら言う山本

((また強引に誤魔化したっ…))
ツナとソラはそんな了平を見て、同じ事を思った。

ツナは京子とハルに視線を向けた。

京子とハルは無邪気に笑っていた。

(良かった…気付かれてない。)
2人の様子を見てホッとしたツナ

だが、今まさに無邪気に笑っていたはずの京子とハルは、ツナが自分達を見なくなった後、
笑顔を引っ込め、悲しそうな表情を浮かべていた。

(パパ、鈍感。ママもハル姉も、何か気付いてる感じだよ…)
こっそり目線だけを京子とハルに向けながら、心の中で呟いていたソラ

ソラは少し考えた後、ビアンキに視線を移した。

「ビアンキ姉」

「何かしら?」

「2人を紛らわせてきて?ちょっと暗い顔してるから…」

「…わかったわ、任せて頂戴。」

ビアンキは席を離れ、京子とハルの元へ行き、話題を振って、心を他に移させていた。

(今はなんとかなってるけど……そろそろ何かが起こってもおかしくない。その前に穏便に問題が解決出来れば良いけど……
今のパパ達、絶対に言わないつもりみたいだし、ママとハル姉は話して貰えなくてもどかしそうだし、
何事も無く解決するのは……無理かもしれないな…)
黙々と食べながら、ツナ達の事を考えていたソラだった。


翌朝、食堂の方へ行くと……

「あれ?ビアンキ姉、綱吉さん、中に入らないの?」

ビアンキは何も言わず、黙って中を指差した。

「?」不思議に思いながらも、中を覗いた。

「あっ…(凪姉だ…)」

ソラの視線の先には、台所で京子、ハル、イーピンと共に、大量の食器を片付けているクロームの姿があった。

「良かった……もう心配は要らないみたいだね…クロームさん、楽しそうだし。」

「ああ、そうだな。」
「うん、そうだね。」
「ええ、そうね。」
リボーン、ツナ、ビアンキがそれぞれ応えていた。


朝食の後、ソラは個人トレーニングルームに行き、
日課である銃の狙い撃ちの訓練を始めようとしていた。

「………今日は久しぶりに大空の方で撃とうかな…」

ソラは今嵌めようとしていた晴のサブリングを仕舞い、
代わりに別のリングを取り出した。

そのリングは、ソラが持っているもう1つのサブリングで、絵柄の周りがオレンジ色の大空属性のサブリングだった。

「このリングを使うの、久しぶりだな…メローネ基地に突入する前の時は、大空系リングを使ってたし。
でも、白蘭との戦いにはこのリングも必要になる。」
そこで一旦言葉を切り、マントの内側から、メローネ基地で受け取ったボンゴレ匣を取り出した。

「この匣が開くのはおそらくこのサブリング……もしこの匣を使えば、太陽がずっと望んでいた事が叶う……だけどっ……」
ソラはそのボンゴレ匣を見つめながら、悩んでいた。

どうしてソラがそんなにボンゴレ匣を使うのを拒むのか、今は誰も知る事が出来ない。
また、その理由を知る日が来るかどうかも謎である。

しばらく訓練を続けた後、喉が渇いてきたので、一旦訓練をやめて休憩する事にした。


水を貰いに食堂に着くと、入口にジャンニーニ、フゥ太、ビアンキの姿があった。

「そうだよ、ツナ兄!草壁さんなら詳しいはずだよ?」

「何が詳しいの?フゥ太兄」

「うわぁっ!?あ…なんだ、ソラか…脅かさないでよ。」
背後から聞こえた声に驚いたフゥ太

「ごめん、脅かすつもりはなかったんだけど……それで、何の話?哲兄が詳しいって…」

「今の並盛中の野球部の状況ですよ。」
「明日、並盛中が予選1回戦らしくて、山本武が今の野球部はどうなのか気になってるのよ。」
ジャンニーニとビアンキが説明した。

「並盛中の野球部?…っていうか、明日予選1回戦の日なんだ?」

「うん、新聞にそう書かれてるみたいだよ。」
フゥ太が机の上にある新聞を指差しながら言った。

「新聞?」
呟きながら、テーブルに近寄り、椅子の上に乗って新聞を見た。

「……これが新聞?随分と分厚いね。」
物珍しそうな目で新聞を見つめるソラ

「はひっ、新聞を知らないんですか!?」

「ああ、そういえばソラが物心つく頃にはもう新聞じゃなくて、モバイルやネットでニュース見てたもんね。」

「そうなの!?」フゥ太の言葉を聞いて驚くツナ

「何々…明日、並盛中予選1回戦……相手は丘割三中か。」
新聞を読んでため息をついたソラ

「ソラちゃん、なんで新聞読んでため息つくの?」
ため息ついた理由が気になってソラに聞いたツナ

「そりゃあ、今年も予選1回戦突破できず、しかも大差でボロ負けすると解ってるからだよ。」

「なんで解るの?」

「実は…今の並盛中の野球部、武さんが卒業して数年してから一気に弱体化し、ここ5、6年は予選1回戦負けなんだよ。」

「俺は、後輩たちに何も残してやれなかったのか…」
ソラの話を聞いて、そう呟いた山本

「それに、今は問題児が多くて相当荒れてるみたいで、しかもほとんどの部員が練習をしてないらしくてね。
最近じゃ、廃部になるという噂もあるらしいよ。」

「なんでそこまで詳しいの?」

「哲兄から聞いた。」

「そ…そうなんだ。」

「ところでソラ、何か用があってここに来たんじゃ?」

「あ…水貰おうと思って来たんだよ。」
フゥ太に言われて、ここに来た目的を思い出したソラ

「じゃあちょっと待ってて?すぐ用意するから。」
そう言って、京子が水を用意しに行った。

少しして京子から水を貰った後、ソラは食堂を出て行き、
再び個人トレーニングルームに籠り、今度は銃以外の修行をやっていた。


あっという間に次の日になり、なぜか今日は並盛中の野球部を応援しに行く事になり、アジトに居たほとんどの者が出掛けていた。
ボンゴレアジトに残っているのは、ソラの他に、リボーン、バジル、クローム、ラルだけだった。

今日もソラは個人トレーニングルームで修行をしていた。
お昼が近づき、一旦やめて食堂へ向かったソラ


ーー地下7階ーー食堂ーー

食堂に着くと、リボーンとなぜかテーブルの上で座禅をしていたバジル

「バジルさん、テーブルの上でなんで座禅してるんですか…」呆れた声を出すソラ

「あっ…ソラ殿!」

「とりあえず…テーブルから降りて下さい。」

「あ…すみませんっ…」テーブルから降りて椅子に座ったバジル

「それで?リボ兄は解るけど、どうしてバジルさんは居るんですか?綱吉さんに誘われませんでした?」

「あ、はい!お誘いは頂きました!ですが、拙者は断ってここに残りました。」

「まっ、そういう事だ。そういやバジル、その『助太刀の書』に記されていた事だが……
この間話した事以外にも何か記されていたか?ソラの事…」

「!」少しだけ肩がビクついたソラ

「いえ、何も…」

「『ボンゴレの姫君』と呼ばれている理由とかも記されてなかったのか?」

「え、ええ…気にはなってはいますが、これにはその事は記されておらず…」

「そうか。」

「それが…何か?」

「………ソラ、そろそろ返事を出してやったらどうだ?修行をするかしないか…」
少し考え込む素振りを見せたが、すぐにソラに視線を向けたリボーン

「!」バジルはソラに視線を向けた。

「……解った。とりあえずお昼食べよう?今から作るから。」
少し考えてから、返事を出す事に決めたソラ

「えっ…作れるのですか?」

「はい。パスタ料理で良いですか?」

「はい、大丈夫です。」

「俺もだぞ。」

「じゃあすぐに作るね。」
バジルとリボーンの返事を聞いた後作り始めていた。


ーー地下8階ーー個人トレーニングルームーー

昼食を食べた後、ソラはバジルとリボーンを連れて、
トレーニングルームへ戻って来た。

「あの、ソラ殿…」

「バジルさん」
バジルと向かい合うソラ

「はい、何でしょう?」

「『ボンゴレの姫君』って呼ばれてる理由……知りたいですか?」

「え…それは…出来る事なら知りたいですが…」

「今から話す事、見る事……全てを今の綱吉さん達には絶対に秘密にしていて貰えますか?」

「!……はい!拙者、これでもCEDEF(チェデフ)の一員です!絶対誰にも他言しないと約束致します!」
真剣な顔つきでソラにそう宣言したバジル

「……解りました。じゃあ、まず『ボンゴレの姫君』についてですけど…ボンゴレT世の血を受け継ぐ直系の女性の事をいう…」

「!?…では、ソラ殿はっ…」
ソラの言葉を聞いてすぐにピンと来たバジル

「私はボンゴレ10代目、沢田綱吉の1人娘…沢田ソラ。そして、次期ボンゴレ11代目です。」

「さ…沢田殿の…娘…!?」驚きを隠せないバジル

「私がボンゴレ直系の子孫だから……マフィア界では『ボンゴレの姫君』と呼ばれています。そして『ボンゴレの姫君』には、
ボスと同等の権力が与えられています。ただし、ただそう呼ばれるだけでその特権が行使出来るわけではありません。」

「そうなのか?それは初耳だぞ。」

「リボ兄が知らなくても無理ないよ。『ボンゴレの姫君』と呼ばれた者はこれまでにも何人か居たけど、
その中でもこの特権を行使出来たのは……ボンゴレT世(ブリーモ)の実妹だけだったから。」

「ボンゴレT世に妹が居たのですか!?」驚きの声を上げるバジル

「はい。本に記されてる文献を読んだ所、ボンゴレT世の妹…エスターテさんは幼い頃からとても頭が切れる人だったらしくて、兄が作ったボンゴレの為に、
元々持っていた超直感と自分の知恵を使って、共にボンゴレを支えていたと言われているんです。そしてT世が妹に与えたのが、
自分と同等の権力…ボス代行権限。これが与えられた事で、影のボンゴレボスと呼ばれるようになったらしいです。
これは、初代守護者達とも相談した上で決まった事だそうです。それが…『初代ボンゴレの姫君』の誕生でした。」

「初代以来、その特権を得られた者は?」

「居ないよ。私が2代目だって聞いてる。」
リボーンの問いにそう答えたソラ

「では、ソラ殿は現ボンゴレボスである沢田殿とその守護者の方達に認められたから、その特権が使えると…?」

「表向きはね。実際はボンゴレ9代目と門外顧問トップの沢田家光とリボ兄の3人が相談して特権を与える事を決めたらしいです。
その後でパパや隼人兄達もその事を知り、最初は反対していたらしいけど、最終的には折れて今に至るってわけです。」

「……そんな大事な事……拙者に話してしまって良かったのですか?」

「はい。だってこの時代のバジルさんはこの事知ってますから。」

「えっ…そうなのですか?」

「はい。あっ、でも過去に戻っても『ボンゴレの姫君』の事を尋ねたりしないで下さいね?
この特権については、10年前のボンゴレでも機密情報扱いなので。」

「わ…解りました。」

「そして次に…私には、超直感も死ぬ気の炎も既に目覚めています。」

「えっ…!?」

驚くバジルを余所に、ソラはウェストポーチから大空と晴のサブリングを取り出し、
左手の中指に大空のリングを……右手の中指に晴のリングを嵌め、リングに炎を灯した。

「オレンジ色の炎と……黄色い炎……」

「大空属性と晴属性の炎だぞ。そして、今ソラが着けてるリングは、『サブボンゴレリング』といって、
この時代のツナがソラの為に作った物だぞ。」

「沢田殿が?」

「ああ。だが、あれは元々戦う為に作られた物じゃねぇから、普段は出来るだけ使わねぇようにしてるんだ。」

ソラはリボーンがバジルに説明している間に、またウェストポーチから、死ぬ気丸の入ったケースをを取り出し、死ぬ気丸を一粒呑み込んだ。
すると、額にオレンジ色をした、とても澄んだ綺麗な炎が灯った。

「そ…それはもしや、死ぬ気丸!?しかし、拙者が持っている物と少し大きさが違う…」

「これは私専用に作られた物で、子供の私が呑み込みやすくし、そしてさらに改良された死ぬ気丸……」

「その状態は…死ぬ気モードですか?しかし、沢田殿とは……」

「ツナの死ぬ気モードは荒々しかったが、ソラの死ぬ気モードはどうやら静かになるタイプらしい。俺も初めて見た時驚いたぞ。」

「そうなのですか…しかし、本当に沢田殿の娘なのですね。その炎を見たら、信じない訳にはいきません。」

「パパと同じように超モードにもなれるけど……こっちは見せられません、ごめんなさい。」

「いえ、気にしないで下さい。」

死ぬ気化を解いたソラ

「そしてもう1つ……この身に背負わされた物……どう記されていました?」

「あ、はい。特殊な死ぬ気の炎と人並み外れた身体能力は後天的に得た物で、まったく望んでいなかった力だと…
そして下手をすれば、破壊の力にもなりうると……」

「そう……死ぬ気の炎は元々純度が高い炎だったけど……ある時を境に両親以外の炎を受け付ける事が出来なくなってしまった。」

「えっ…」

ソラは以前リボーンに教えた、2年前の事を話した。
ほとんど空っぽだった炎の補給をするのに、ツナと京子の炎しか受け付けなかった事を……

「そうだったのですか……」

「そして身体能力……こっちは通常状態でもかなり強い。」

ソラはバジルにそのまま高速で駆け寄り、バジルにお腹に手を添えた。

「こんな風に通常状態でも素早く敵の懐に入って攻撃する事が出来るし、殴ったり蹴ったりすればかなりの威力がある。」

「速いっ……それに…拙者、まったく反応できませんでした。」

「死ぬ気化すれば、それはさらに倍になる。これが…今のパパ達に隠してる事。
パパ達には晴の炎を使って戦っている事しか明かしてません。」

「!…では、自分が沢田殿の娘だと言う事をまだ明かしてないのですか?」

「はい、明かしてませんし、言う気もありません。」

「本当に…良いのですか?沢田殿に言わなくて……」

「……今は白蘭との戦いにだけに集中して貰いたいから……それに、きっとパニックを起こすと思う。なら、言わない方が良い。」

「ソラ殿…」

「………ホントの事言うとね…私、怖いんです。」

「怖い?」

「はい。ただ私が臆病になってるだけです。今居るパパとママに自分が娘だと明かした時、受け入れてくれないんじゃないか?って……
もちろん、2人がそんな人じゃないのはもう解っています。多少パニックを起こすかもしれないけれど、
きっと受け入れてくれるかもしれないって。でも……それでも怖いから……」

「………解りました。拙者、誰にも他言しません!沢田殿にも…」

「ありがとうございます。」

「あの、1つ質問良いですか?」

「?…何ですか?」

「あの、先程沢田殿だけでなく、母君の事も言っていましたが、もしかしてソラ殿の母君も……入れ替わってるのですか?」

「ソラの母親は京子だ。」
ソラではなく、リボーンがバジルの疑問に答えた。

「な…なんとっ…きょ、京子殿がソラ殿の母君なのですか!?」

「ああ、そうだぞ。ソラを良く見てみれば、京子と顔がそっくりだろ?」

「た…確かにそっくりです。しかし……沢田殿に似ている所が見つかりません…」

「外見はママ似だからね。中身もパパと似てる所、ほとんど無いらしいよ?」

「そ…そうなのですか。」

「っていうか、似てる所皆無だろ。」きっぱり言い放ったリボーン

「そこまではっきり言わなくても……それで、返事の方ですが……」

息を飲み込むバジル

「私で良ければ、喜んでお受けします。」

「!!…本当ですか!?ソラ殿!」
ぱぁっと明るい表情を見せるバジル

「でも、本当に良いんですか?私で…その、いろいろと…」
今見せた自分の力の事を言っているのであろうソラ

「もちろんです!!」
そんなソラの想いを知ってか知らずか、すぐに返事をしたバジル

「良かったな、バジル」

「はい、リボーン殿!」

「じゃあさっそく始めますか?バジルさん」

「あ…はい!でもその前に…」

「?」首を傾げるソラ

「拙者の修行をつけてもらうのですから、敬語は要りません。」

「えっ…でも…」

「この時代の拙者には敬語なのですか?」

「いえ、違いますけど…」

「じゃあ、敬語は無しでいいですよ。ソラ殿」

「……じゃあ…バジルさん、今から修行始める?」

「はい!よろしくお願いします!!」

バジルの返事を聞いた後、ソラ達は修行を開始した。

リボーンはそんな2人の修行をただ黙って見守っていた。


標的70へ進む。


今回はクロームとバジルと絡む話です!
並盛散策から帰って来た後にクロームの今の状況を知って話をする所と、並盛中野球部の試合の応援に
ツナ達が行っている間にバジルと話をする所を書いてみました!今回はほとんどオリジナルです!
クロームやバジルと打ち解けるの早くない!?って思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、
そこは10年前からきたツナ達と過ごす内に、少しだけ打ち解けやすくなったという事で。
あと、ここではジョットには妹が居たという設定です。
エスターテ……イタリア語で「夏」って意味です。
いくつか候補がありましたが、友人に相談した結果、この名前に決めました。
それでは標的70へお進み下さい。

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