ツナ達が帰るべき場所

ーー地下14階ーーソラの私室ーー

ソラは地上の並盛散策に行くツナ達からの誘いを断り、部屋で新たに送られてきた大量の書類を片付けていた。
中にはイタリア主力戦の時の報告書もあり、イタリアでのサンザス達の行動を知る事が出来た。

「うわっ…ザンザス達、派手に暴れたな〜……建物の損害も半端ない。
他の所も結構被害が出てるみたいだし、早急で対処しないとっ……」
そう呟きながら、せっせと仕事を片付けていくソラだった。

一方、ソラがアジトで書類を片付けている頃、ツナ達はまず商店街を見て回り、
その後、ハルの家にはツナとビアンキが付き添い、了平と京子は自分達の家へ行き、
獄寺は適当にふらつき、山本はランボとイーピンの遊び相手にと、それぞれ別行動を取っていた。


ーー笹川家ーー京子の部屋ーー

京子は兄の了平と共に自宅に足を踏み入れ、それぞれ自分の部屋へ入った。

部屋の中を見回し、最初は編みかけの物を見つけ、誰に編んでたのかと思いながら頬を赤らめていたが、
他にも何かないか見回してみると、写真立てを見つけた。

「これはっ…!?」驚きの声を上げた京子

京子は写真立ての前まで行き、手に取って目を凝らして良く見てみた。

その写真には、男女1組と子供1人が写っていた。
女性は優しい笑顔を浮かべながら、幼い子供を抱き、
隣に居る男性は女性の肩に腕を回して優しく微笑んでおり、
子供の方は、片方の手は女性の服を握り、もう片方の手は
Vサインしながら笑顔を見せている姿が写っていた。

「これは…10年後の私…?それに抱いてるのは今より少し小さいけど、間違なくソラちゃんだ……
じゃあ、その傍に写っている男の人は…?」
京子は女性と子供が誰なのかはすぐに解ったが、もう1人居る男性が誰か解らず、
男性の姿をこれでもかってくらい見つめていた。

「……このツンツン頭…それにこの優しげな瞳……私、知ってるっ!もしかして、10年後の…ツナ君…?」

写真立てに写る男性が解った途端、なぜか頬が熱くなっていくのを感じた。

少しして、落ち着いてきた京子は改めて写真立てを見つめた。

「ソラちゃんが私やツナ君と仲が良いってのは聞いてたけど……これじゃまるで……(親子みたい…)」
京子は出掛かった言葉を呑み込み、心の中で呟く。

コンッ…コンッ…

「あっ…何?お兄ちゃん」
ドアの向こうに居る了平に返事をした。

「京子、入るぞ?」
そう言いながら、入って来た了平

「お兄ちゃん、もう良いの?」

「うむ!京子はどうだ?」

「あ…うん!私ももう良いよ!」

「そうか。では行くぞ!」
そう言って部屋をを出て行く了平

京子は持っていた写真立てを元の場所に戻した。
戻した時、その写真立ての横にある物が視界に入って来た。

“Happy Birthday ソラ”っと書かれたメッセージカードと一緒に
可愛くラッピングされたプレゼントらしき小さな箱が置かれていた。

「あれ…?(確かソラちゃんの誕生日って…もう過ぎたはずじゃ…?もしかして今年の誕生日のお祝い、まだしてない…のかな…?)」
京子は前にフゥ太が言っていた事を思い出し、そんな疑問を抱いた。

「京子ー!!」

「あっ…はーい!!今行く!」
了平に返事を返した京子

部屋を出る時、振り返って戻した写真立てをもう1度見つめていたが、了平が自分を呼ぶ声が聞こえたので、
写真立てを見つめるのをやめ、部屋を出て行く京子だった。

ソラが昨日感じたのは、きっとこの事だろう……
だが、その事に気付くのはもう少し後になってから知る事になる。


ーー地下5階ーー作戦室ーー

もう夕方になるという所で、一旦切り上げ、出来た書類を太陽と2人で
作戦室へ運んできたソラの耳にリボーンの声が聞こえてきた。

「京子やハルの様子を見れば、ツナも何かを掴めると思ったんだ。」

「どういう事です?」

「ここから先は後戻りの出来ねぇ戦いになる。だからこそ、スタートラインの確認が必要なんだぞ。」

「スタートライン…」

「自分が何の為に戦うのか、この時代を見る事で、そいつが掴めりゃいいがな。」

京子達の外出を許可した理由をジャンニーニとフゥ太にそう話していたリボーン

「だから…だからママ達が外出するのを許可したんだね?ママやハル姉がこの時代の家を見てつらい思いをするかもしれないと解ってて…」

「ソラ!?いつからそこに居たの!?」
驚きながらも、椅子から立って傍に駆け寄り、ソラが持っていた山の書類を持ち上げたフゥ太

「ありがとう、フゥ太兄」

「…その通りだぞ。ツナ達が何の為に白蘭を倒すのか、その戦う理由に気付かせる為にな。」

「そっか……ん?スタートライン…?」

「?…どうかしたのか?ソラ」
突然ぶつぶつと呟き始めたソラを心配して声を掛けたリボーン

「そうか……パパ達の原点ってっ……太陽、匣に戻って!!ちょっと出掛けてくる!!」

太陽をすぐに匣に戻した後、作戦室を嵐のように去っていったソラ

「ちょっ…ちょっとソラ!?……行っちゃった。」
書類を持ったまま、呆然と立ち尽くしていたフゥ太

「いったい、急にどうされたのでしょう?」

「さぁな…まっ、ソラなら大丈夫だろ。」

ソラが急に去っていった理由は解らなかったが、ソラなら1人でも大丈夫だと言ったリボーンだった。


ーー並盛中学校ーー

「パパ達の原点……たぶんココだ。この学校内のどこかに隠されてる。」
そう呟いた後、ソラは学校内に入っていった。

超直感の感じたまま、ソラは2ーAに向かって歩いていた。

「あれ…?話し声が聞こえる……今、放課後のはずだけど…」
そう思いながらも、教室のドアを開けたソラ

教室の中にはツナ達の姿があった。

「えっ…ソ、ソラちゃん!?」驚くツナ

「つ、綱吉さん!?それにみんなもっ…!?」
ソラもツナ達がここに居ると思っていなかったので驚いていた。

「どうしてここに!?」

「綱吉さん達こそ、どうしてここに?」

「えっと…俺達はここに来る前、それぞれ別々に行動してたんだけど…みんな、なんとなくで自然に学校に集まっちゃってね…」

「それで教室に?」

「うん、ソラちゃんはどうしてここに?」

「私は…ん?(自然に学校に集まった…?あれ?確かパパってあんまり学校が好きじゃなかったような気がするんだけど……)」

「ソラちゃん?」突然考え込んでしまったソラを心配した京子

「ソラ、どうかしたのか?」山本も声を掛けた。

(パパ達の原点……そっか!そういう事か!!隠し場所、どこか解った!!)

考え込んでいたソラがツナの前まで来て詰め寄った。

「綱吉さん!この席、10年前に座ってた席と同じ!?」

「えっ…あ、うん…そうだけど…?」
突然詰め寄って来たソラに驚きながらも、ソラの問いに答えたツナ

「ちょっとごめん!」
ツナの返事を待たず、机の中に手を突っ込み、何かを探し始めたソラ

「うわっ…ソラちゃん?」ソラの行動を不思議がっていたツナ

「……!…あったっ…!!」
探していた物が見つかり、それを机の中から取り出したソラ

「?…何なの、それ…」

ソラが取り出したのは四角形の封筒で、サイズはCDのケースと同じ大きさだった。

(これが、パパが隠したディスク……間違いない。)
封筒の端っこに小さくボンゴレマークがあるのを見つけて確信したソラ

「その机の中に隠されていたって事は……この時代のツナが隠した物か?」

「何!?ソラ、その中身は何だ!?この時代の10代目が残した物なのか!?」

「中身はディスクだよ、何が記憶されてるかは知らないけど。このディスクの事は、正兄がこの時代の綱吉さんから預かった
私への手紙に書いてあったんだよ。ヒントしか書かれていなかったから、すぐに探し当てれなかったけど…」
獄寺にそう答えながら、ディスクを仕舞うソラ

「あっ!もしかして昨日俺の家に居たのも…」
昨日、自分の家に行った時の事を思い出すツナ

「うん、このディスクを探してた、ハズレだったけどね。」

「ならどうして教えてくれなかったの?言ってくれたら一緒に探したのに…」

「ごめんさない。でも、これは1人で探したかったんだ。それに……正兄にこの事を話さず、
手紙に記していたのは、きっと私1人で探すようにって意図だと思ったから。」

「そっか…」

(ソラちゃんが今見つけたディスク……いったい何だろう?なんか気になるな……さっき家で見つけた写真の事もあるし…)
京子は自分の家で見つけた写真立ての事を思い出しながら、ツナと話すソラを見つめていた。

「おい!なんでお前宛の手紙はあって、右腕である俺には無いんだ!?」

「えっ…なんでと言われても……そんなの知らないよ、書いたのはボスなんだし…」

「ぐっ…なぜですか!?10代目!!」
ツナに詰め寄る獄寺

「ちょっ…待って、獄寺君!!書いたの、この時代の俺だから!!」
涙目で訴えてくる獄寺をなんとか宥めようとしていたツナ

ツナが困ってるのを見兼ねて、山本がツナ達に近寄り、獄寺を宥めていた。

ソラはなんとなくその場から離れたくて、京子の傍に寄った。

傍に来たソラを抱き上げ、自分の膝の上に降ろした京子

突然の行動に驚き固まるソラだったが、そんなソラに構わず、そのまま後ろから抱きしめた京子だった。

「……お…降ろす気は?」

「ないよ。」即答する京子

「だよね…(ママ、1度こうなるとなかなか放してくれないんだよね……まぁ…いっか。)」
顔を少し赤らめながらも、大人しくされるがままになっていたソラ

(ソラちゃん、なんか嬉しそうだな…)
獄寺を宥めていたツナがふと京子とソラの2人を見ると、
ソラがなんとなく嬉しそうな顔をしてるような気がした。

「…みんな、そろそろ帰らないといけないし、帰る前に屋上へ寄って行かない?」

「おっ…屋上か〜!」

「いいっスね!行きましょう、10代目!」

「おぉっ!極限に行くぞー!!」

「屋上か〜!久しぶりだな〜!!」

ツナの提案に、並中の生徒のみんなは屋上へ行く事に賛成していた。

「あ…ソラちゃんも一緒に来ない?」

「そうだね!行こうよ、ソラちゃん!」

「えっ…」

京子がソラを降ろした後、ソラの返事を待たずにツナと京子はそれぞれの手を握り、ソラがどこかへ行ってしまわないようにした。

「ちょっ…ちょっと!?」慌てた声を出すソラ

「さっ、行こうか!みんな!!」

ツナの掛け声で、みんな教室を出ていく。

ソラは行く途中で落ち着きを取り戻し、そのまま大人しく2人と手を繋いだまま屋上へ向かっていた。


ーー屋上ーー

「気持ちいいですね!」

「随分高い建物が増えたね。」

「ハルの家は……あぁ…あそこのビックなマンションが邪魔です〜!」

それぞれランボとイーピンを抱えたまま、屋上から見える街並みを眺めていた京子とハル

(…俺達が守らなきゃいけないのは、その原点がこの学校にあるんだって解った気がする。)
学校に来て、今まで空っぽだった気力が回復していくのを感じたツナ

(リボ兄が言っていた通り、パパはちゃんと掴めたみたいだね……自分達が何の為に戦うのかを……)
どこかすっきりした表情をしていたツナを見てそう思ったソラ

「10代目」

「あ…みんな。」
獄寺、山本、了平の方へ振り向くツナ

「絶対勝ちますよ、10代目」

「俺達も頑張るからさ。」

「極限任せておけ!!」

「………うん!(いつかまた、ここでみんなと楽しい時間を過ごす為に、俺達は勝たなきゃいけないんだ!)」

「さすが、ボンゴレ10代目ファミリー……その絆の強さは、この時代のみんなと変わらないね。」
ツナ達には聞こえない程度に、小さな声で呟いていたソラだった。

「ツナぁ!!」
気持ちを新たにしていたツナの顔面に突然飛びついて来たランボ

「どうしたんだよ!?ランボ!」
顔面に張り付いたランボを引き剥がしながら問うツナ

「ランボさん、しっこ出る〜…あっ…出た……」

「んなぁーっ!?」叫ぶツナ

「何やってんだ、アホ牛!」

「ランボ君!?」
「ラ、ランボちゃん!?」
ツナの叫びを聞き、駆け寄って来た京子とハル

その後ランボは大の方も出ると言ったので、慌てるツナ

「ま、待てー!?」ランボに待ったを掛けながら、急いでトイレに駆けて行ったツナだった。

ツナの後を京子やハルも追いかけて行き、
獄寺達ももうそろそろ帰る時間という事で、屋上から中に入り、降りて行った。

残ったのは、ソラとビアンキだけだった。

フェンスの傍に居たソラは、そのまま屋上から見える景色を眺めながら、ビアンキに話し掛けた。

「……ビアンキ姉」

「何かしら?」
ソラの傍に寄りながら返事を返すビアンキ

「ママは…ママとハル姉は、家を見て大丈夫だった?」

「ええ、大丈夫よ。京子もハルも、自分が帰る場所は10年前の自分の家だってちゃんと受け止めていたから。」

「そっか…なら、良かった。」

「……ねぇ、ソラ」

「何?」横に居るビアンキに振り向く。

「本当にこのままでいいの?」

「えっ…」

「だってあなた…もう限界でしょ?隠すの、つらいでしょ?」

「……そうだね。正直言ってつらいよ。でも、あの2人は…まだ、ただの友達関係だから……まだ、パパの片想い中だから……」
そう言いながら、再び景色を眺めていた。

「だから言わないの?」

「うん。私が聞いた話だと、2人が付き合いだしたのって…高校生からでしょ?」

「ええ。正確には少し前…ツナ達の中学の卒業式の日に告白して付き合い始めたのよ。」

「卒業式の日か〜……ロマンチックだね。」

「ええ、そうね。」

「……私の正体を知れば、その出来事も無くなってしまうような気がして…怖いんだ。ママは時間は掛かるけど、
パパを好きな事をこれから気付くって時だし、パパだって時間を掛けて、ママと親睦を深めていく時だもん。
もしこの事が知られれば…未来が変わってしまうかもしれない、私の存在が危うくなるかもしれないって。」

「ソラ……」

「だからいいんだ、このままで。」
心配しているであろうビアンキに振り向いて笑顔を見せたソラ

「さっ、そろそろみんなの所へ行こう?」
そう言って、屋上から中へ入り、下に降りていったソラ

「ソラ……あなたは我慢し過ぎよっ……お願いだから、1人で何でも抱え込もうとしないで、私を…私やフゥ太をもっと頼って頂戴っ…」
ソラが見せた笑顔はどこか無理をしているように見え、そう願わずにはいられなかったビアンキだった。


標的69へ進む。


今回はツナ達が並盛散策に出掛ける所ですね。
ソラは同行せず留守番ですが、少しだけ原作やアニメとは違った展開をさせてみました。
京子は自分の部屋で編みかけの物を見つけますが、それ以外に写真立ても見つけた事にし、
自分とソラの関係が気になっていた京子が写真立てを見つけて感づかせてみました。
それでは標的69へお進みください。

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