あれから少しの間眠ってしまっていたソラが目を覚ました。
「ん…んん〜……あ…いけない、いつの間にか寝てしまった…」
ベッドから降りながら欠伸するソラ
すっかり目を覚ましたソラの耳に、外から話し声が聞こえてきた。
「?……誰かの話し声が聞こえる……それにこの気配……」
知ってる気配を感じたソラは下に降りていった。
「ホントにこの辺に居るのかな…?」
「そうですね……さっきも言ったように、機械の故障かもしれませんし…」
「けど、油断は出来ないぜ?」
「極限その通りだ。」
ガチャッ
『えっ!?』
誰も居ないはずなのに、玄関が開いた事に驚く。
「やっぱり綱吉さん達だ…なんでここに居るの?」
「ソラちゃん!?」
「ソラ、なんでそこに居るのな?」
「っていうか、なんでてめーが10代目の家から出てくるんだよ!?」
「ソラ、帰って来ないと思ったら、こんな所に居たのだな!」
ツナ、山本、獄寺、了平の順に言う。
「そっちこそ。アジトに帰ったんじゃなかったの?」
「あっ…うん。実は…」
ツナはソラにここに居る理由を話した。
ソラと別れた後、すぐにアジトに戻った事。
京子やハルが用意してくれたご馳走を食べようとしていた所に、
警報が鳴り、ここ…沢田家にリングの反応が現れてここへ駆けつけた事。
「それでここに居るんだ。でもそのリング反応…」
『はい、先程まで確かにそこにリングの反応があったのですが、急に消えてしまいまして……』
『ソラ、ツナ兄の家に居たんでしょ?不審な気配とかしなかったの?』
ソラのヘッドホンからジャンニーニとフゥ太の声が聞こえた。
「ううん、全然。(さっきまで寝てたけど、そんな気配感じなかった。ひょっとすると、敵じゃなくて味方なのかも…?)」
「ねぇ、ソラちゃん」
「何?」
「なんで俺ん家入れたの?鍵掛かってなかったの?」
「ああ、それは私が合い鍵で開けたからだよ。」
そう言いながら、ポケットから合い鍵を取り出し、玄関に鍵を掛けていたソラ
「なっ…なんで10代目の家の合い鍵を持ってんだよ!?」
「なんでって……ボスに貰ったから。」
「俺に?」自分を指差しながら言うツナ
「うん。」頷くソラ
『出ました!!』
『ツナ兄、またリングの反応が出たよ!!』
またリングの反応が出た事を知らせてきたジャンニーニとフゥ太
『ほ〜ら、機械の故障じゃないでしょう?』
先程誰かに機械の故障じゃないかと言われた事を少し気にしていたようだっだ。
「いいから場所はどこだ!?」
ジャンニーニに怒鳴り声で聞く獄寺
『場所は…並盛山だよ。』
獄寺の問いにフゥ太が答えた。
「並盛山!?」
「綱吉さん、行ってみる?」
「あっ、うん。行こう、みんな!!」
ツナ達は沢田家を後にして、並盛山へ向かった。
ーー並盛山ーー
リングの反応があった所まで来たツナ達。
「ジャンニーニの情報だと、この辺りのはずだけど…」
(……さっきまでここにあった気配が遠のいでる…私達に気付いて、この場を離れちゃったみたいだね。
でも…この気配、知ってるような気がするんだけど……)
ジャンニーニが言った通り、確かにここに誰か居たのだろうが、自分達に気付いてもうこの場に居ない事に気付くソラ
「また見失ったとか言ってくるんじゃないっスか?」
『10代目…』
ヘッドホンから申し訳なさそうな声が聞こえてきた。
「ジャンニーニ?」
『すみません、またリングの反応が消えてしまいました。』
「やっぱりかよ!?」
「まぁまぁ、落ち着いて!あっ……(やっぱり誰かここに居たのかな?)」
キレる獄寺を宥めていたツナが、たき火と串刺しされた魚があるのを見つけて、
自分達が来る直前まで誰かが確かにここに居た事に気付いた。
ーーボンゴレアジトーー地下7階ーー食堂ーー
並盛山から戻って来たツナ達は食べ損ねていた御飯を今度こそ食べようとしていた。
『さぁ、召し上がれ!!』
「いただきまーす!」
ヴーっ…ヴーっ…
「また警報?」
「今度はどこだ?」
ソラ、獄寺が呟く。
『今度の反応は、Aハッチのそのすぐ傍です!!』
「なんだって!?」驚きの声を上げるツナ
「ジャンニーニさん!すぐにAハッチを開けて!!」
ジャンニーニに指示を出しながら、食堂を駆け出すように出ていったソラ
『了解です!!』
「あっ!?俺達も行こう!!」
慌ててツナ達もソラの後を追いかけていった。
Aハッチから地上に出て、リングの反応があった所まで行くと……
「この辺り…かな…?」
「ええ、間違いありません!」
その時、木の上を移動する人影に気付いたツナ達。
その人影が次に飛び移ろうとしていた木に向かって、刀で切りつけた山本
飛び移るはずだった木が倒され、落ちてきたその人影はまっすぐツナに向かって落ちて来て、
ツナは避ける事も出来ず、激突してしまった。
「綱吉さん!」
「10代目!」
「沢田!」
「大丈夫か!?ツナ!」
ソラ、獄寺、了平、山本が心配してツナに呼び掛ける。
「いっ…たた…」ぶつけた頭を撫でながら起き上がるツナ
「沢田…殿…」
「あ、ああ!?君はっ…バジル君!?」
ツナがぶつかった相手の顔を見て驚きの声を上げた。
亜麻色の髪に、青い瞳をした少年が居た。
「えっ…(バジル兄…?でも、目の前に居るバジル兄、若い……もしかして10年前の?)」
ソラも目の前に居る少年を見て、驚きを隠せなかった。
「助太刀に参りました。」
「でも、どうして!?」疑問を抱くツナ
「う゛っ…」
ツナ達の目の前で突然倒れたバジル
「こいつ、俺達が知ってる10年前のバジルっスよ!!」
「おい、大丈夫か!?」
自分達が知る10年前の姿だと言う獄寺と、バジルを心配する了平
(バジル兄、気が小さい…もしかして…)
バジルの様子を見て何かに気付いたソラ
「体に…力が入りません…」
「何が欲しいの!?水!?」慌てて声を掛けるツナ
「出来れば…おむすびを…」
「えっ…」
「やっぱり。バジルさん、たぶん御飯を何食か抜いてるよ。」
「ええっ!?山本、急いでバジル君を食堂へ運んで!!」
「お…おう!!」
ツナ達は慌てて、バジルをアジトの食堂へ連れて行った。
「…どうして、10年前のバジル兄が…?ボンゴレの守護者じゃないのに……」
ソラも10年前のバジルが居る事に疑問を抱いていたが、とりあえずアジトへ戻っていった。
食堂に戻ると、バジルは凄い勢いでツナ達がこれから食べるはずだった御飯を平らげていく。
「バジル君、良く食べるね…」
「あいつ、ちっこいくせに大食いだったんスね。」
「俺達が食べるはずだった、京子の手料理がっ…」
「まぁまぁ、先輩!仕方ないっスよ!」
その様子を見て呆気に取られながらもそれぞれ呟くツナ達。
「聞けば3日も食べてないそうじゃねぇか。譲ってやれ。」
「ツナ君達の分、これからすぐに作るね!」
「材料が足りません!食料庫に取りに行ってきます!!」
京子とハルがそう言って、食料庫へ足りない材料を取りに駆けていった。
ちょうどその時、食べ終わったバジル
「フゥー……ご馳走様でした。京子殿とハル殿にとても美味しかったとお伝え下さい。」
「良かった、きっと喜ぶよ。」
「それにしても驚きました。本当に並盛の地下にこんな立派なアジトが出来てるなんて…」
「!?…お前、10年前からやって来たのに、このアジトの事知ってんのか?」
バジルの言葉を聞いて気になった獄寺
「はい。全ては、ボンゴレの勅命である死炎印のついた、この『助太刀の書』に記してありましたから。」
そう言いながら、死炎印のついた書物をツナ達に見せたバジル
「す…助太刀の書!?」
「はい。このアジトの事と、この時代の戦い方が記されており、いざという時は、燃えて無くなる極秘文書です。」
「そ…その死炎印はっ…!?(パパの死炎印…)」
バジルが持ってる書物を凝視するソラ
「(ソラの様子を見る限り、本物みてぇだな…)その死炎印、本物のようだな。」
ソラの様子をちらっと見てから呟くリボーン
「はい。拙者、この時代に来たのは10日前で場所はスペインだったのですが…その時、パスボートと匣兵器と共に置いてありました。」
テーブルの上に、青色の匣を置いた。
「CEDEF(チェデフ)……門外顧問組織の事です。」
バジルが置いた匣を手に取り、呟く獄寺
「父さんやラルと同じ組織の!」
「残念ながら、ここに来るまで仲間達には誰にも会う事が出来ませんでした。が、しかしこの書と匣兵器のおかげで
途中で出くわした、ミルフィオーレファミリーをなんとか撃退出来たんです。ただ、アジトへの入口が書いてなくて、
並盛町の知っている場所を探し歩いていました。」
「俺達は、それを追いかけてたって訳だな。」
先程のリング反応の原因が解って納得する山本
「でも、マモンシェ―ンあんのに、どうしてリングの反応が…?」
疑問をぶつけた獄寺
「たぶんマモンシェ―ンに傷がついたからじゃない?マモンシェ―ンはリングの反応は消せるけど、
耐久性はまったくないから、敵の攻撃が当たれば簡単に傷つくし。」
獄寺の疑問に推測した答えを言うソラ
「その通りです。この間の戦いの時に、マモンシェ―ンに傷がついてほどけやすくなってしまって…」
ツナ達に傷ついたマモンシェ―ンを見せながらそう言ったバジル
「凄いや、バジル君!もうミルフィオーレと戦ってるなんてっ…」素直に感心するツナ
「ええ、6回ほど戦闘を。」
「つまり、何者かの指示で、バジルはツナ達とは別のルートで鍛えられ、ここに合流したと考えられるな。」
バジルの話を聞いて簡単にまとめたリボーン
「鍛えられるって…メローネ基地での俺達みたいに?でも…何の為に?」首を傾げるツナ
「CEDEF(チェデフ)は、普段は外部の機関だが、いざという時はボンゴレを支える特別機関だぞ。」
「その通りです!『助太刀の書』にはこう締めくくられていました。若きボンゴレ達と共に白蘭を砕けと!!」
「おいっ…」
「…ってことは!!」
「ああ!!」
バジルの言葉を聞いてそれぞれ反応する獄寺、了平、山本
「極限に、打倒白蘭の仲間だな!!」
「バジル君強いし、心強いよ!!」
バジルが白蘭を共に倒す仲間だと解って喜ぶツナ達。
「よろしくお願いします!」
(10年前のバジル兄をこの時代へ呼び寄せたのも、パパ達がした事で間違いなさそうだね。
あの『助太刀の書』に灯ってる死炎印……何度見ても、パパの炎で間違いないし。)
10年前のバジルと助太刀の書を交互に見ながら心の中で呟いていたソラ
「ところで…」
今まで穏やかな表情をしていたバジルが真剣な表情になり、
ツナの横に座っていたソラに視線を向けた。
自分に視線を向けてきた事にすぐに気付いたソラ
「おぬしが……この『助太刀の書』に記されていた、『ボンゴレの姫君』ですね?」
『!?』バジルの言葉を聞いてツナ達は驚いた表情を見せた。
「バ…バジル君、ホントに『助太刀の書』に記されてたの?」
「はい。」
「何て書いてあったんだ?」
バジルに内容を聞くリボーン
「えっと…アジトに着いたら、『ボンゴレの姫君』の元で修行を受けろと……その方は、この時代の拙者の戦い方を見て知っており、
今の拙者をより強くしてくれると……」
「本当にそう書かれていたのか?」確認するリボーン
「はい、間違いありません!拙者、白蘭を倒すためにも、もっと強くなりたいんです!!」意気込むバジル
(『助太刀の書』にそんな事が…?)
自分の事が書かれていた事が未だに信じられないソラ
「拙者、もっと強くなりたりたいのです!沢田殿の力になれるよう……お願いします!拙者を鍛えて下さい!!」
バジルはテーブルに両手をつき、頭を下げてソラに修行をお願いする。
「お断りします。」考える素振りも見せず、きっぱりと言ったソラ
「な、なぜですか!?」1秒もせずに断られると思ってなかったバジル
「バジルさんこそなぜですか?私、バジルさんより年下ですよ?自分より年下の方に、しかもまだ相手の事をまだ良く知らない時に
修行を受けろって言われたら、いくら知ってる人の指示でも、普通は嫌がりますよ?実際、隼人さんは嫌がりましたし。」
冷静にそう言いながら、お茶を啜るソラ
「!…確かにそうです。この『助太刀の書』におぬしの事が記されていなければ、拙者は修行を頼まなかったと思います。
…この書には、おぬしが優れた指導力を持っている事…その身に背負わされた物の事が記されていました。」
「!?」両手でお茶を持っていたソラの肩がわずかに揺れた。
「知ってしまった以上、拙者は決めました!だから……お願いします!!拙者に修行を受けさせて下さい!!」
再びソラに頭を下げたバジル
相手が自分より年下だというのに、それでも誠意を込めてお願いするバジル
「……少し、考えさせて…下さい。」
その誠意の籠ったバジルのお願いにソラは先程とは違い、
すぐには断れず、考える時間が欲しいと言った。
「!…解りました!拙者、いくらでも待ちます!!」
先程とは違う答えが返ってきて嬉しそうなバジルだった。
(ソラちゃんの身に背負わされた物っていったい、何だろう…?)
ソラを見つめながら、そんな事を思っていたツナだった。
「でも、いったい誰がこんな手の込んだ事を…」疑問を抱くツナ
「そりゃ、この時代の10代目なんじゃないっスか!?」
獄寺の言葉が受け入れがたかったツナ
ガシャーンっ…
突然聞こえた音に驚き、その音がした方に視線を向けた。
「寝ちまったか。」呟くリボーン
テーブルの上に顔を乗せて突然寝てしまったバジル
「電池が切れたみてーに…」
「よっぽど疲れていたのだな…」
「ああ…」
寝てしまったバジルを見て呟く獄寺、了平、山本
「凄い熟睡してる……こりゃしばらくは絶対に目覚めないね。」
ソラはマントの内側から匣を取り出し、リングに炎を灯して差し込んだ。
開匣したのは、晴カンガルーの太陽だった。
「太陽、悪いけど…バジルさんを空いてる部屋へ運んで来てくれる?あ…ちゃんと掃除されてる部屋にだよ?」
【ああ、任せろ。】
太陽は寝てるバジルを起こさないように肩に担ぎあげ、寝室へ運んでいった。
「…っておい!?なんでリングに普通に炎が灯ってんだよ!?」
獄寺が驚くのも無理はない。ソラもツナ達と同じように疲れているはずなのに、メローネ基地でツナ達が灯した時のように
炎が小さくなく、いつも通りに炎が灯っていたのだから。
「え、えっと……なんでと言われても……」返答に困るソラ
「そりゃおめーらとは鍛え方が違うからだろ。」
困ってるソラを見兼ねて、フォローするリボーン
「し、しかしリボーンさんっ…」
「しかしも何もねぇ、ソラはこの時代の俺から修行を受けてたんだ。たぶんこの時代の戦い方を教えられた上で、
死ぬ気の炎のコントロールを身につけさせられてたんだろ。」
「えっ…リボーンの修行を受けてたって……じゃあ弟子ってのもホントの事なの!?」
「いや、それは知らねぇ…ただ俺の生徒だったのは確かだぞ。」
ツナの問いにそう答えたリボーン
「そうなの!?」
「そういやぁ、ヴェルデと戦った時に使ってたあの技……小僧の必殺技なんだろ?アレってこの時代の小僧に教えて貰ったのか?」
ヴェルデとの戦いの時に見た、ソラの技を思い出した山本
「そうらしいぞ。ただし、了平の時のように体に特殊弾を受けた訳ではなく、何度か見せただけであとは自力で覚えたらしいがな。」
「すごっ…ソラちゃん、凄いね…あのリボーンの技を使えるなんて…」
「アハっ…アハハハっ……(ありがとう、リボ兄…)」
苦笑いしながらも、心の中でリボーンにお礼を言っていたソラ
その後、材料を抱えて戻って来た京子達が急いでツナ達のご飯を作り直していた。
その間にバジルを寝かせに行った太陽が戻って来て、匣に戻していた。
しばらくして、ツナ達の御飯が出来上がった。
「お待たせしました!!さあ、今度こそ大丈夫です!」
「ハルちゃんと私のスペシャル料理…」
『どうぞ召し上がれ!!』
ハルと京子がツナ達にそう言った。
「やっと食べれるぜ!!」
「京子の作った料理は何でも美味しいのだ!!」
「やっぱり、待った甲斐があったな!」
「うん。」
獄寺、了平、山本、ツナの順に呟く。
「ツナ君」
「えっ…」京子に呼ばれ、振り向くツナ
「お兄ちゃんに聞いたんだけど…」
「ツナさん、自分のお家に行ったんですって?」
「えっ…あ…うん。」
(この展開は…まさかっ…)
2人の言葉を聞いて、動かしていた箸を止めた。
「ハル達も、この世界の自分の家、見てみたいです!!」
「ねぇ、連れてってくれる?」
自分の家を見に行きたいと言うハルと京子
(やっぱりっ…)
「でもっ…」
「良いんじゃねぇか?」
「えっ…」リボーンに視線を向けるツナ
(ちょっ…リボ兄!?何OK出しちゃってるの!?)
(仕方ねぇだろ、遅かれ早かれ、京子とハルはきっとこの時代の街を見たがるだろうと思ってたしな。)
(だからってっ……)
目で会話をしていたソラとリボーンだった。
「今は並盛町にミルフィオーレは居ないみたいだしな。」
「そっか、そうだね!じゃあ、明日行こうか?」
「本当ですか!?ツナさん!!」
「良かったね!!ハルちゃん!!」
外に出られる事が決定して大喜びするハルと京子
(……何も起こらないといいけど……)
なんとなく超直感が何かを告げているような気がしたソラだった。
今回は10年前のバジル登場です!!
白蘭を倒すための仲間が増えた時ですね!!
ツナとバジル、アニメでも漫画でも仲良いですよね!!
あの2人が本気で喧嘩する所なんて想像出来ませんし。
10年後でも、ボンゴレボスとCEDEF(チェデフ)の一員という立場を抜きにしても
変わらない仲であって欲しいですね。
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