ロボットのヴェルデを倒した後、ツナはランボを抱え、コロネロはファルコに頭を掴まれたまま、
みんなの居る浜辺へ飛んで戻って来た。
その間に潜水艦はX BURNERの直撃を受けて大ダメージだったのか、そのまま海の中に沈んでいった。
「10代目!あの潜水艦に居たヴェルデは偽物だなんて言うんですか?」
「ああ、アレはロボットだった。」
「なんだと!?」驚く了平
「じゃあ本物はどこに?」疑問を抱く山本
「もしかしたら、もう並盛には居ないんじゃ…」
ヴェルデの居場所がどこか考えていた獄寺がそう呟く。
「いや、近くに居ると思う。」
超モードが解けたツナがはっきりとした口調で言い切った。
『え!?』驚きの声を上げる獄寺、山本、了平
「あ…あれ?なんでそう思ったんだろ?なんとなくそういう気がするっていうか……」
自分で言ったのに、混乱するツナ
(パパが言った通り、ヴェルデはすぐ近くに居る。………あそこに浮かんでる大きな岩、あそこにヴェルデが居るね。)
海の方に視線を向けながら、そう呟いたソラ
「ソラ」
リボーンの視線に気付き、黙って頷く。
「(ソラも感じたようだな。)…ツナがそう言うなら、そうだな。」
「あっ…」
何かを感じたのか、海の方に視線を向けたツナ
向けた先には、大きな岩が見えた。
「あれは!?昔スイム勝負をした、たんこぶ岩…」
獄寺があの岩を見て思い出したように呟いた。
話し合った結果、雲雀、クローム、ランボ、イーピン以外の全員で泳いでたんこぶ岩に向かう事になった。
ーーたんこぶ岩の地下ーーヴェルデの研究所ーー
ヴェルデが居るであろう部屋に辿り着いた。
「ようこそ、我が研究所へ…っというべきかな?」
モニターの方に向いたままなので、姿が見えないヴェルデ
ヴェルデが座っている椅子の下には、相棒のワニの「ケイマン」が居た。
「てめーがヴェルデか!?今度こそ本物なんだろうな!?」吠える獄寺
「ああ、もちろんだとも。」
椅子をくるりと回転させて、ツナ達に向き合ったヴェルデ
「お前達には感謝しているよ。ボンゴレリングやそこの少女は手に入らなかったが、
貴重なデータが取れた。これで私の研究は飛躍的に前進する。」
山本はヴェルデの言葉を聞いた後、とっさに傍に居たソラを自分の後ろに隠した。
この行動にソラは驚くも、大人しくそのまま後ろに隠れながら、様子を見ていた。
「研究だと!?」怒りを見せるラル
「お前はアルコバレーノの呪いを何とも思ってないのか!?コラ」
「フっ…そもそも私は、呪いなどという非科学的な捉え方をしていない。
むしろ、科学発展のための研究材料として、面白いオモチャを貰ったと思っているよ。」
コロネロの問いかけにそう答えたヴェルデ
「やれやれ…相変わらず困ったお方ですね。」
「もったいないね。その頭脳を呪いを解く事に使って欲しいものだよ。」
風(フォン)、マーモンが呆れていた。
「てめーの御託はどうでもいい。今ここで試練の証を渡すか、俺達ともう一度戦うか…」
今まで黙って聞いていたリボーンが本題を切り出した。
「もう戦う気はない。ボンゴレリングの炎のデータだけでも充分だし、そこの少女のおかげで、素晴らしい炎のデータが手に入ったからね。
それに、私の試練は『直感力』だった……ここを見つけた事でクリアーした事になる。」
「えっ!?」
「ボンゴレ10代目、印をやろう…こちらへ来い。」
「!?…危険です!10代目」
「……印はどうしても必要だから…」
ヴェルデに歩み寄るツナ
「10代目!気をつけて下さい!!」
ツナを心配する獄寺がツナの傍に駆け寄った。
ツナは右手に嵌めていた毛糸の手袋を外し、ボンゴレリングをヴェルデに向けた。
すると、ヴェルデのおしゃぶりから緑色の光が照射され、ツナのリングに射し込み、リングが光り出した。
「やったな!ツナ」
「うむ!」
「10代目!これで印は6つです!!」
ヴェルデの印が手に入って喜ぶ山本、了平、獄寺
「うん。」頷くツナ
「6つ?お前はまだ印を与えていないのか?」
リボーンに視線を向け、問うヴェルデ
「俺には、俺のやり方があるんでな。」
「……フっ…まぁ、私には関係ない事だ。」
ヴェルデは椅子ごと下に開いた穴の中へ消えていった。
傍に居たワニと共に……
ヴェルデがこの部屋か消えた瞬間、地響きが起こった。
「奴はこの研究所ごと破壊する気だ!!」
「最初からこうするつもりだったのか!!」
ヴェルデがやろうとしている事が解り、悔しそうな声を出すラルとコロネロ
みんなが突然の地響きにパニックを起こしている中、
山本は誰かが自分のズボンを掴んできたの気付き、視線を下に落とした。
そこには、自分のズボンを握りながら、体を震わせてるソラの姿があった。
「ソラ…?」
山本はまだ知らないのだ。
ソラが地震がダメな事を…
「どうするの!?」
「逃げろ!コラ」
パニクるにツナにコロネロが叫んだ。
コロネロの叫びが合図となり、脱出するために全員駆け出し始めた。
「!…山本!ソラを抱えて行け!!」
「お、おう!解ったのな!!」
リボーンに言われた通り、自分のズボンを握ったまま動かないソラを抱き上げて駆け出した山本だった。
「タ…ケ…にぃっ…」
体を震わせたまま山本の首に腕を回しながら、小さく呟いたソラ
山本は走りながら、その小さな呟きをしっかり聞き取っていた。
ーー並盛海岸ーー
たんこぶ岩から無事脱出し、泳いで戻って来たツナ達。
「危なかったな。」ソラをまだ抱えたまま呟く山本
「まったく何て奴だ!?アレがリボーンさん達と同じアルコバレーノだなんてっ…」愚痴る獄寺
「うん…」獄寺の意見に同意なのか、頷くツナ
「ソラ、大丈夫か?」
そう言いながら、ソラを降ろした山本
「うん…大丈夫。ありがとう、武さん」
「おう!(やっぱ、さっきのは無意識だったのか……今回で2度目だな…『タケ兄』って呼ばれたの。
早く俺の事、10年後の俺の時みたいに呼んでくれねぇかな…?)」
表面上は笑顔だが、ソラの呼び方がまだそのままなのに少し残念がっていた山本だった。
「また逃げられてしまったな、コラ」
「だが、このままにはしておけまい!オレは奴が何をするのか調べるつもりだ。」
「その辺はお前達に任せるぞ。俺は他にする事があるんでな。」
ヴェルデの事について話し合っていたコロネロ、ラル、リボーン
「あっ……リボーン、頼む!もう1度リボーンの試練を受けさせてくれ!!」
リボーンの視線に気付き、もう1度試練をして欲しいと頼むツナ
「10代目……お願いします!リボーンさん!!」
「もう一度、戦わせてくれ!!」
「極限頼む!」
「みんな……お願いします!!」
獄寺、山本、了平、ツナが頭を下げて頼みこんだ。
「その必要はねぇ。」
「え!?」
「リボーンさん、でもっ…」
「俺の試練は、合格だ。」
「え!?」
リボーンの言葉が信じられず、驚くツナ
「俺はお前、ボスとしてみんなを守る為に、どんな事でも出来る覚悟があるかと聞いた……
お前はヴェルデとの戦いで、その答えを示した。だから俺の試練は合格だぞ。」
「リボーン…」
「さぁ、リングを差し出せ。」
「う、うん!」
右手に嵌めてるボンゴレリングをリボーンに向かって差し出した。
リボーンのおしゃぶりから黄色の光が照射され、リングが光り出した。
今までとは違い、全ての印が揃ったからなのか、虹色に光っていた。
7つの虹の光が空に向かって照射され、ぶつかり合い、そのまま辺りにその光が拡散した。
その光景は、雪が降っている時のように、キラキラ輝いた光粒がちらほら降っていた。
みんな、その綺麗な景色に目を奪われていた。
「あいつも相変わらず素直じゃないな、コラ」
「リボーンだからな。」
「フフっ…でも、良いわね。あの2人の間には、とても強い絆がある。」
「ええ、そうですね。」
「ケっ…カッコつけやがってっ…」
「やれやれ、やっと面倒な事が終わったよ。」
コロネロ、ラル、アリア、風(フォン)、スカル、マーモンがそれぞれ呟く。
「あっ…(アルコバレーノの印は7つ揃った、これでボンゴレ匣を開ける事が出来る。)」
光が消えたリングを見つめながら、心の中でそう呟いていたツナ
「これで本当に終わりですね、10代目!」
「よかったな!ツナ」
「うん…ありがとう、みんな!」
雲雀は用が終わったと言わんばかりに、静かにこの場を去ろうとした。
「雲雀さん!!」
そんな雲雀に気付き、声を掛けたツナ
「赤ん坊と戦えないなら帰る。」
背を向けて歩きながらそう言った雲雀
「あ…あの!明日必ず並盛神社に来て下さい!お願いします!」
ツナのそのお願いに何の返事を返さず、そのまま去っていった雲雀だった。
(一時はどうなる事かと思ったけど……無事7つの印が集まった。これでパパが持ってるボンゴレ匣は開けられるようになる。
でも……本当にこれでパパ達は白蘭に勝てるのかな…?正兄は、後は白蘭に勝つだけだって言ってたけど…
そうじゃない気がしてるんだよね。白蘭には…まだ、何かあるような気がしてならない。)
不安になってる心を落ち着かせようと、服越しに首に掛けてるお守りを握りしめていたソラ
試練が終わったので、それぞれの所に帰っていくアルコバレーノ達。
「また会える日を楽しみにしてるぜ?コラ」
「あまり無茶をするなよ?」
「あなたは1人ではないのです。もう少し、周りを頼りなさい。」
「無理しないようにね?また会える日を楽しみにしてるわ!」
帰り際、コロネロ、ラル、風(フォン)、アリアはそれぞれソラに一言声を掛けていた。
(コロ兄…ラル姉…風(フォン)…アリアさん…)
去っていくコロネロ達を見送ったソラ
「おい、ツナ」
「え?」
「俺達も帰るぞ。」
「うん…」
並盛海岸を後にし、帰路についたツナ達。
分かれ道である交差点につくと……
「じゃあ、ツナ…また明日な。」
「沢田、明日必ず並盛神社に行くからな!!」
ツナに声を掛けた山本と了平
「2人とも、また明日。」
「ソラもまた明日な!しっかり体を休ませろよ?」
「山本の言う通りだ!極限しっかり休めよ!ソラ」
「うん、ありがとう、また明日。」
山本、了平と別れ、ツナの家に移動し始めた。
ーーツナの家ーー玄関前ーー
「ランボさん、疲れたもんね〜…」
「イーピンも…」
「10代目、お疲れ様でした!それではまた明日…」
無事にツナを送り届けたので、帰る前にツナに声を掛けた、
ツナがそれに応じようとしたその時…
「あら、帰ってたの。」
ビアンキが玄関前に突然現れた。
「げっ…姉貴っ…」
ビアンキを見て真っ青になり、両膝をついてお腹を抱えた獄寺
「は…隼人さん、大丈夫!?」
その時、ランボとイーピンは良い匂いに誘われ、ツナ達を置いて、先に家の中へ入っていた。
「ちょうど良かった。あなたも食べて行きなさい、隼人。ママンがたくさん料理を作ってくれてるから。」
「母さんが?」
「ほら、隼人」
獄寺の前にしゃがみこんだビアンキ
未だ腹を抱えたまま呻く獄寺
「リボーン…」
「ん?」
「おかえりなさい。」
「ああ。」
ビアンキはリボーンを悲しそうな目で見ていた。
(ビアンキ姉……)
悲しそうな顔をしていたビアンキを心配そうに見ていたソラだった。
その後、ツナ達も家の中に入り、リビングに向かった。
そこでは奈々の手料理がたくさん並んでおり、ランボやイーピンは大喜びしていた。
「あ…あの、ただいま。」
「奈々さん、ただいま。」
「おかえりなさい!遅かったわね〜…庭に壊れていたオモチャがあって、ランボ君達も居ないから、どうしたのかしら?って思ってた所なのよ。」
「あ…うん。」
(壊れたオモチャ…?もしかしてヴェルデのロケットの事かな…?もしそうなら、おばあちゃんから見たら、
アレがオモチャに見えるんだ、ロケットじゃなくて。)
ソラが奈々の事についてそんな事を思っている間、ツナはフゥ太に話し掛けられていた。
「これで出来上がり!!さっ、みんなで食べましょうか!!」
奈々のその一声で、全員席に着き、食べ始めていた。
ーツナの部屋ーー
食事もお風呂も済ませ、ベッドに座ったツナ
「ハァ〜…なんとか7つの印を無事集める事が出来て良かったよ……」
「一時はどうなるかと思ったがな。俺の試練に落ちやがって。」
「そんな事言ったって、本気のお前に勝てるわけないじゃんか!!」
「俺は勝てなんて一言も言ってねぇぞ?覚悟を示せと言っただけだ。」
「確かにそうだけどっ…」
「ツナ、お前…試練の前にソラに何か言われなかったか?」
「え…あっ…」
並盛島にボートに乗って向かっていた時のソラの言葉を思い出すツナ
『これはアルコバレーノの試練なんだよ?こんな大事な試練に隠し芸だなんて、まず立会人のラル姉がそんなの許す訳がないよ。
それに、あのリボ兄が生温い試練をするなんて、例え明日が世界の最後だったとしても、絶対にありえない!!』
『ハァ……あのね、もし本当にガチバトルだったとしても、リボ兄に完全勝利する必要はない。だってリボ兄は最強のヒットマンなんだよ?
まだマフィアとしての経験が浅い綱吉さん達が束になっても勝てる訳がない。でも、全力で戦わないと、あっという間にやられる。』
『隼人さん、そんな事言っても何にもならない。確かにあれこれと心配するよりは良いかもしれない…
でも、リボ兄の試練はあっさり終わってしまう程、簡単なものじゃない。“本気”で相手にならないと…不合格になるよ?』
「言ってた……リボーンには…完全勝利する必要はない、でも、本気で立ち向かわないと、すぐにやられるって……」
「やっぱりな。お前はせっかくソラが忠告してくれたのに、試練に落ちたんだ。あいつは、あの地点でお前達に覚悟が足りてない事が解っていた…
だからお前達に厳しい言葉を浴びせたんだろう。迷いを無くせ、確固たる覚悟を示せって…」
それを聞いてしょんぼりしたツナ
その時、ソラが部屋の中へ入って来た。
「あれ…?綱吉さん、どうしたの?なんか落ち込んでない?」
「あ、ソラちゃん…」
「…リボ兄、何言ったの?」
ツナが落ち込んでるのはリボーンが原因だと思い、
ハンモックの上で寝転がってるリボーンを見上げたソラ
「別に大した事じゃないぞ。お前の忠告を生かす事が出来ずに俺の試練に落ちた事を言っただけだぞ。」
「十分大した事あるじゃん!?」ツッコミを入れたソラ
「そうか?」
「リボ兄、意地悪過ぎるっ……」
「ソラちゃん、ごめんね?せっかく言ってくれたのに…」
「え…あ、別に気にしなくていいよ、私が勝手に言っただけだし。こっちこそ、きつい事言っちゃってごめんなさい。」
「いや、そんなっ…謝るのはこっちだよ!!」
「そうだ、ツナが悪いぞ。」
「リボ兄!!」
「さて、俺はもう眠いから寝るぞ。」
ソラが睨んできてるのを無視して、そのまま眠りに入ってしまったリボーンだった。
「あ…寝ちゃった…」
「リボーン、寝るの早っ……俺達もそろそろ寝ようか?ソラちゃん」
「うん…」ソラは眠くなってきたのか、目がトロンとしており、目を擦っていた。
ツナはそんなソラを抱き上げ、ベッドに寝かせてから、
部屋の電気を消しに行き、自分もベッドで横になった。
「ソラちゃん、今日はお疲れ様。」
「綱吉さんこそ、お疲れ様。」
「…さ、もう寝よう?」
ツナはソラの体をリズム良く叩いてやる。
少しすると、限界が来て、目を閉じ、寝息が聞こえてきた。
「よっぽど疲れてたんだね…」
そう言いながら、そっとソラの頭を撫でるツナ
「今日は本当に大変だったな…」
ツナは並盛海岸でのソラの事を思い出す。
『ボンゴレリングは絶対に渡しませんし、リボ兄達も絶対に助ける!!』
迷いのない、強い覚悟を秘めた眼をしていた事。
『無理だよ!!私の死ぬ気の炎を纏ったこいつは、綱吉さん達が相手していたザリガニ達よりも凄く強い!
簡単には倒せない!だから…私が倒す!!』
『だから言ったでしょ!?今の綱吉さん達じゃ無理なんだよ!!』
『くっ……みんな下がってて!』
自分達の助けを借りず、倒すと言って1人で敵に立ち向かっていった時の事。
(あの時のソラちゃん、俺達の助けを借りようとせず、自分1人で戦ってた……
今の俺達じゃ勝てない…か。10年後の俺達は…強かったのかな…?)
そう思いながら、ソラの寝顔を見つめていたツナ
「そういえば…」
ツナは印がすべて揃った時、ソラが服越しにお守りを握っていた時の事を思い出した。
(あの時のソラちゃん、どこか不安そうだった。何に対しての不安を抱いたのかは解らなかったけど…)
ソラの頭を撫でるのをやめ、ソラを起こさないよう、優しく抱きしめたツナ
ツナに触れたからなのか、ソラはツナの服を掴み、そのまま擦り寄ってきた。
「ソラちゃん、俺達が傍に居る、だから大丈夫…不安にならないで…」
眠ってるソラにそう語りかけた後、ツナも眠くなったのか、そのまま眠りについた。
ソラをしっかりと抱きしめたまま……
アルコバレーノの印は全て揃った。
これで10年後に戻って、白蘭との戦いに備えられる。
果たしてツナ達は無事白蘭に打ち勝つ事が出来るのだろうか…?
今回でやっと7つの印全てが揃いました!!
今回は少しオリジナル入れただけなので、
ほとんど変わりはないです。
次回からは10年後の未来に戻ります。
それでは標的65へお進み下さい。