ショッピングを一通り終えた後、並盛にある大きな公園の方へ来ていた。
湖の近くまで来た時、休憩所を見つけたソラがツナの様子を見兼ねて、
アリア達にここで休憩しようと言い、休憩を取る事になった。
(ハァ〜…助かった…)
持っていた荷物を休憩所にあったテーブルの上に降ろし、
椅子に座って一息ついたツナ
「お疲れ様、綱吉さん」
そう言いながら、ツナの横に座ったソラ
「うん…ありがとう、ソラちゃん(そろそろ限界だったから、ソラちゃんがここを見つけてくれて助かった〜…)」
お礼を言うツナ
「どういたしまして。」
「ボス?」
そこに聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。
「え!?あっ…クローム!!」
後ろに振り向き、声の主を見て驚くツナ
ソラはクロームが近くに居るのに気付いていたからか、驚いた様子がまったくなかった。
「あ!クロームちゃん!!」
「ホントだ!!」
クロームに会えて嬉しそうなハルと京子
「こっちに帰って来た途端に消えちゃって心配してたんですよ?」
「元気だった?」
話しかけながら、クロームを自分達が座っていた所に連れてきて間に座らせたハルと京子
「あの……」2人の行動に戸惑いを隠せないクローム
「あら、また可愛らしい子ね。もしかして、あの子が本命だったりするのかしら?」
最後の方はこっそりツナにだけ聞こえるように言うアリア
「は!?いや、違います!俺はっ…」
少し顔を赤らめて慌て出したツナ
「ツナさん?」
「ツナ君、どうかしたの?」
そんなツナの様子を見て首を傾げたハルと京子
「な…何でもない!クロームはどうしてここに?」
「犬と千種探して…」
「また置いてかれたのか……大変だな。」
「クロームさん」
「何?」
「その2人、もう公園内には居ないみたいですよ?たぶん黒曜に帰ったんじゃないかと思いますが。」
気配の読めるソラだからこそ解るのだ、2人の気配がもうこの近くにはない事が。
「そう…教えてくれてありがとう、ソラ」
それを聞いて少し落ち込むが、すぐにお礼を言うクローム
「いえ。」
「あ、そうだ!知り合った記念にあなたにも何かあげたいんだけど……これなんかどう?」
たくさんの荷物の中から、紫色の服を取り出したアリア
「えっ…」
「でも…色が地味かしら…?そうだ綱吉君、さっきのお店に行って取り替えて貰ってきて?ピンクがいいわ。」
そう言いながら、紫色の服をツナに押しつけるアリア
「は?」突然の事で反応が遅れたツナ
「はい、行っておいで。」そう言いながら、ツナの背中を押した。
「わ…わかりました。」
そう言って走っていったツナだった。
(わざわざこの場からパパを引き離させてどうするつもりなんだろう?)
アリアがツナをこの場からわざと離れさせた事に気付いていたソラが不思議に思っていた。
「あなたもここで待つと良いわ。すぐに綱吉君も戻って来るから。」
クロームにここに残っているように言うアリア
「でも、また会えて良かったです!」
「あれからどうしてたの?」
3人の様子を見ていたアリアは笑った後、問いかけた。
「ねぇ、綱吉君って……あなた達から見てどんな子?」
(!…なるほど、周りからパパがどう思われてるか聞くために引き離したのか。)
引き離させた理由が解って1人納得していたソラ
「はひっ!?どんなって…ツナさんはとっても優しくて、かっこいいんです!!」
「時々、凄くビックリさせられるけど…一緒に居ると、なんかホッとするんです。」
「ボスは私にとって、大切な人との接点…でも、親切にしてくれる。」
アリアの問いに、ハル、京子、クロームはそれぞれ答えた。
「そう…とても好かれているのね。」
「私達だけじゃなくて、みんなツナ君が好きですよ!」
「その通りです!」
ツナの事が好きなのは自分達だけではないと言う京子とハル
「ソラちゃんもツナ君の事、好きだよね?」
「………うん。」
京子からそう言われ、少し顔を赤らめながらもしっかり頷いた。
「あらっ…あなたにそこまで好かれてるのね、彼。…羨ましいわ。」
口ではそう言いながらも、そこまで羨ましそうにしておらず、ソラに優しい眼差しを向けていたアリア
「そこのお嬢さん方〜、俺とお茶でもしな〜い?」
(この声は…)
聞き覚えのある男の声がして後ろに振り返ったソラ
そこには髭を生やし、白スーツを着こなしたDr.シャマルが居た。
マフィア界では「トライデント・シャマル」の異名を持つ、伝説の天才殺し屋だが、
普段は女たらしで、しかも医師なのに、診るのは女性だけという変わった医師だ。
「それは私達の事かしら?」
アリアも声を掛けてきたシャマルに振り向く。
振り向いたアリアを見て、驚いた表情になるシャマル
「あら、あなたは…」
シャマルの事を知っているらしいアリア
「ああ!またですか!?」
「シャマル先生?」
シャマルを見て、ハルは嫌そうな顔をし、京子は不思議そうな顔をした。
(この時代のシャマルさんだ……アリアさんがここに居るのが驚きみたいだね。)
ソラはただ黙ったまま成り行きを見ていた。
「よ…よぉ、買い物かい?お嬢さん達。いいねぇ〜…じゃ、俺はここでっ…」
アリア達から離れていくシャマル
(なんだってリッショネロのアリアがここに…?この間のヴァリアーといい、何かあんの?)
アリア達から離れながら、そんな事を思っていたシャマルだった。
その時、ツナが走って戻って来た。
「あ…綱吉さん、おかえりなさい。」
ツナに気付いて声を掛けたソラ
「お待たせ!あっ…どうかしたの?」
「ああ、ツナさん!」ツナが帰って来て喜ぶハル
「おかえりなさい!」笑顔で迎える京子
「何でもないわ。ご苦労様、綱吉君。ああ…でも、喉が渇いたわね…ジュース買ってきてくれる?」
帰って来たばかりのツナに今度はジュースをお願いするアリア
「え!?」帰って来たばかりなのに、すぐに次のお願いを言われ、驚いてしまうツナ
そんなアリアの行動に少し驚くも、何も言わず、様子を見ていたソラ
「あ!ハルが行きます!」
「今度は私達が行ってくるよ。ツナ君」
「ああ、でも…」せっかくハルと京子からの申し出にどうして良いか解らず、アリアを見るツナ
「それじゃあ頼もうかしら?」
ツナの視線に気付いてか、アリアがハル達にそう言う。
「はい!すぐに買ってきます。」
「良かったら、一緒に行かない?」
クロームに声を掛けた京子
「ねぇ、行きましょ!」
「あぁっ……」
戸惑いながらも、京子とハルに連れられて行くクローム
「さっ、行こ、行こ!」
「すっごく美味しい果物のジュースのお店、知ってるんですよ!」
話をしながら、ジュースを買いに出かけていった京子達だった。
(ちょっと強引な気もするけど……あれなら大丈夫かな…?)
3人の様子を見て、そう思ったソラ
3人がこの場から遠のいだ後、ツナに話し掛けたアリア
「私に…聞きたい事があるんじゃないの?」
「あ、あの…いったい何者なんですか?リボーン達みたいに赤ん坊じゃないし。それに、大空のアルコバレーノは欠番だって…」
ツナはずっと疑問に思っていた事を聞いた。
「私が偽物だって思う?」
「…いいえ。あなたは、嘘をついてる感じがしないから。」
アリアの問いに即差に否定したツナ
「わがままで、あなたを振り回しているのに?」
「アリアさんは、悪い人じゃないと思います。」
「さすがは大空の属性を持つ者ね…とてもまっすぐな眼をしている。」
ツナを微笑ましそうに見つめるアリア
「えっ…」呆気に取られるツナ
「あなたがそうだから…(この子もまっすぐな眼をしているのね…さすが大空の子だわ。)」
ツナに気付かれない程度にソラに視線を向けてそう思っていたアリア
「?」アリアが何に納得しているのか解らず、首を傾げていたツナ
アリアからの視線には気付いていたが、何を言うでもなく、ただじっとしていたソラ
「あなたなら…」
視線をツナに戻し、何か言おうとした所で何かに気付いて立ち上がったアリア
(!?…動き出した!)
隠れていた連中が動き出した事に気付き、警戒体勢に入るソラ
「どうしたんですか!?アリアさん!それにソラちゃんも!?」
周りを警戒し始めたアリアとソラを見て困惑気味のツナ
「綱吉さん、周りを見て!」
ソラにそう言われ、周囲を見回すと、黒ずくめの男達が何人か居るのにやっと気付いたツナ
「もしかして、これが試練ですか?」
「いいえ、違うわ。こんな男達は知らない。」
「ええ!?そんなっ…」
「この人達、並盛商店街に居た時から、私達を尾行していました。」
「え!?」
「あら、そんな前から尾行してたの?全然気付かなかったわ。良く気付いたわね…さすがというべきかしら?」
「こんな時に茶化さないで下さい、アリアさん」
「あら、ごめんなさい。そんなつもりはなかったのだけれど…」
周囲に現れた男の人達は、それぞれリングに炎を灯し、匣を開匣していた。
「匣兵器!?」驚くツナ
「ということは…(ヴェルデの差し金…?)」
この人達はヴェルデが送り込んできた者達ではないかと思ったソラ
「どうやら敵のようね。」
「みたいですね。」
そう言いながら、左太股にあるガンホルダーから銃を取り出すソラ
匣からそれぞれ武器を出した後、一斉に襲いかかって来た。
「下がっていろ。」
いつの間にか超モードになっていたツナが
アリアにそう言いながら、襲いかかって来た敵を殴る。
「アリアさん、下がっていて下さいね?」
ソラも迎撃態勢に入り、近づいてきた敵の武器を素早く狙い撃ちして壊し、体術で倒していく。
「10代目!」
「俺に任せろ!」
「加勢してもいいんだろ!?小僧!!」
近くに隠れていた獄寺、了平、山本も駆けつけ、戦闘態勢に入った。
「果てろ!“赤炎の矢!!(フレイムアロー)”」
左腕に装着した赤炎の矢を敵に向かって撃っていく獄寺
「攻式八の型…“篠突く雨!!”」
時雨金時を真剣に変形させて、敵を倒していく山本
「極限太陽!!(マキシマム・キャノン)」
己の拳で敵を倒していく了平
それぞれあっさりと敵を倒していった。
「これが…ボンゴレ10代目ファミリー……そして…(それがあなたの戦い方なのね、ボンゴレの姫君…いえ、ボンゴレ11代目。)」
ツナ達の戦いを見守っていたアリア
リボーンとラルは戦闘に参加せず、休憩所の屋根の上でツナ達の戦いを見ていた。
戦闘が終わり、超モードを解いたツナ
「10代目!ご無事でしたか!?」
真っ先にツナに駆け寄った獄寺
山本、了平もツナに駆け寄って来た。
「みんな!」
ツナが無事なのを見て安心する獄寺、山本、了平
左手に持っていた銃を仕舞った後、ツナ達の方へは行かず、アリアの元へ駆け寄ってきたソラ
「アリアさん、どこも怪我してませんか?」
「ええ、大丈夫よ。守って貰っちゃったわね、ありがとう。」
「いえ、気にしないで下さい。」
「綱吉君達には……まだ、何も言っていないのね?」
「!……はい、言ってませんし、言う気もありません。」
「どうして?」
「必要ない…ただ、それだけです。」
「本当に?」
「………」アリアのまっすぐな眼を見て心が揺らぎ、すぐに即答出来ず、視線を逸らすように顔を俯かせてしまったソラ
そんなソラを見て、アリアはしゃがんでソラの両肩に手を置いた。
「今のあなたを見てると、このままじゃいけないような気がしたわ。あなたはとても賢くて、頑張りやで、甘える事を知らなさ過ぎる……」
アリアの言葉をただ黙って耳を傾けて聞くソラ
「どんなに賢くてもあなたはまだ子供……親に甘えたい盛りの子。もう少し、頼っても良いと思うわよ?例え正体を隠していてもね……」
「アリアさん…」
俯いていた顔を上げて、アリアを見たソラ
アリアは見つめてきたソラに微笑んだ。
「それにしても奴らは……あ!?どこに消えやがった!?」
倒れていたはずの敵がいつの間にか消えている事に気付いた獄寺
「もういいよ、獄寺君」
「あれ?お兄ちゃん」
「あっ…」京子達が戻って来た事に気付いたツナ
京子、ハル、クロームはそれぞれ買ってきたジュースが入っているであろう袋を抱えていた。
「どうしたの?こんな所で…」
「お…おお、京子!偶然だな!俺はロードワークの途中なのだ。」
いつものように誤魔化す了平
「そうなんだ!みんなも?」
「ああ、まぁな。」
「アハハっ…そうなんだ。偶然だよね!」
山本やツナも口実を合わせた。
「あっ!困りました…ジュース全然足りません。もうひとっ走り、買ってきましょ!」
人数が増えたので、また買いに行こうとしたハル
「良いって。自分で買いに行くから……」
そんなハルを止めるツナ
「ボス」
ツナを呼びながら、ジュースを差し出すクローム
「クローム?」
「おにぎりのお礼。」
「良いのにそんなの。」
「でも…」
「ホントに気にしなくても良いのに。それに……お礼ならソラちゃんにしてあげて?
あのおにぎり、ほとんどソラちゃんが握ったやつだからさ!」
「でも…」
ツナ達の様子を少し離れた所から見ていたアリアとソラ
ソラの両肩から手を離して立ち上がったアリア
「みんな楽しそうね、本当に。……綱吉君のあの優しさが周りを惹きつけているからこそ成せる事ね。」
「……いつも誰にでも優しくて、滅多な事じゃ、本気で怒らない。」
「フフっ…彼の子は、きっととても愛されるわね。」
敢えて未来形で呟いたアリア
その言葉を聞いて、顔を少し赤らめていたソラだった。
「あら…もうこんな時間…」
ふと自分が着けている腕時計に目を向けたアリアが呟く。
「みんなー!私、そろそろ帰るわね!」
「ええ!?もう帰っちゃうんですか!?」
残念そうな声を出すハル
「人と待ち合わせしてるの。遅れると煩いし…今日はとても楽しかったわ!ありがとう!!」
「私達も楽しかったです!」
「また、いつでも遊びに来て下さいね!!」
京子とハルがそれぞれアリアにそう言った。
「ええ、また来るわ!」
そう言ってから、ツナ達に背を向けたアリア
「ちょっ…アリアさん!!目的忘れてません!?」
この場から去ろうとしていたアリアを慌てて止めたソラ
「あら、いけないっ…忘れる所だったわ。…綱吉君!」
ソラに言われて立ち止まり、ツナを呼ぶ。
「はい!」
「ちょっとこっちに来て?」
「はぁ…」首を傾げながらも、言われた通り、アリアの元に駆け寄って来たツナ
「ごめんね?大事な用事を忘れる所だったわ。」
「大事な用事?」
「『包容力』の試練はクリアーよ。」
「包容力?」
「どんな我儘にも付き合ってくれて、敵であるかもしれない私まで守ってくれた。
その心の大らかさが『包容力』…さすがすべてを包み込む大空ね。」
「俺、そんな大げさな事は…」
アリアに褒められてるにも関わらず、謙虚な態度を取るツナ
「その心をいつまでも忘れないでね?」
首に掛けていたおしゃぶりをツナに向けて翳したアリア
ツナのリングにオレンジ色の光が差し込むと、リングが光り出した。
(これで第5の試練…『包容力』は合格だね。)
オレンジ色に光るツナのリングを見つめながら、心の中でそう呟いていたソラ
「あ…京子ちゃん、ちょっとこっちへ来てくれるかしら?」
ツナに印を与えた後、京子を呼んだアリア
何だろう?と思いながらも、アリアの元に駆け寄って来た京子
「ソラちゃん、ここに居てね?絶対聞き耳立てちゃダメよ?」
「?…解りました。」首を傾げながらも、頷いたソラ
駆けよって来た京子とツナを引き連れて、ソラや他のみんなから距離を離したアリア
「あの、アリアさん?」
アリアの行動を不思議がる京子
それは京子だけでなく、ツナも同じだった。
アリアはみんなから距離を離したのを確認すると、ツナと京子の2人だけに聞こえるように話しかけた。
「ソラちゃんの事なんだけれど……ちょっとした変化も見落としちゃダメよ?」
「「えっ!?」」
「あの子のSOSを絶対に見落とさないで?」
「アリアさん、それはいったい…」
「どういう…事、ですか?」
アリアの言葉に困惑するツナと京子
「……あの子の中には決して消えない心の傷があるわ。」
「「!?」」
「アリアさん!どうしてまだ会ったばかりのソラちゃんの事、そんなに解るんですか!?」
「綱吉君、今はその問いには答えられないわ。そう、今はね……いつか、その謎が解ける時が来るわ。だからそれまで待ってて?」
「……解りました。」気にはなるが、渋々頷いたツナ
「ありがとう。話が逸れたわね…2人とも、今から言う事を良く聞いて頂戴?」
ツナにお礼を言った後、真剣な表情になったアリア
ツナと京子はお互い顔を合わせ、頷いた。
「今のソラちゃんは、今まで心の奥底に封じ込めていた、その心の傷の元になった過去の出来事が、
おそらく最近になって夢に出てくるようになってきてるはずよ?」
「それってっ!?」
ツナには心当りがあった……2日前の夜、ソラが魘されていた事を思い出す。
「どうやら綱吉君には心当たりがあるようね?」
「あ…はい。2日前の夜中、ソラちゃん…魘されてました。原因は古傷が痛んだせいだと…言っていました。」
「古傷…?ツナ君、ソラちゃんには古傷があるの!?」
初めて知る情報に驚く京子
「あっ…(しまった!京子ちゃんはまだ知らないんだった!!)」
失念したと言わんばかりの顔をしたツナ
「そう、古傷が…」
「普段は薬を1回飲めば大丈夫らしいんですけど、その日は2回飲みました。」
「……綱吉君、たぶんだけれど、その古傷はまた痛み出すと思うわ、薬が効かないくらいに…」
「「なっ!?/えっ!?」」
「眠っていた心の傷が、ソラちゃん本人にも気付けないほどゆっくりと…けれど確実に蘇っているわ。それはなぜだか解るかしら?」
アリアのその問いに答える事が出来ず、2人とも首を傾げた。
「今のソラちゃんは……支えを無くしてしまってるのよ。目の前にあなた達が居るのに、あなた達に縋ろうとしない。
決して誰にも縋らず、1人で……ソラちゃんが心の底から誰かに縋らない限り、このままよ?」
「そんなっ…」切羽詰まったような声を出す京子
「どうして……どうしてそんな大事な事、俺達2人だけに…?」
「ごめんなさい…私からは答えられないわ。でも、ソラちゃんの支えには、あなた達2人が1番だから……他の子達よりも…
リボーンよりも…他の誰でもない、あなた達2人じゃないとダメなの。それがあなた達2人にだけ話した理由よ。」
そう言った後、2人から少し離れたアリア
「……ツナ君」
「何?京子ちゃん」
「私ね、なんとなく気付いていたんだ。最近、ソラちゃんの不安が大きくなってる事に…」
「えっ!?」
「今の話を聞いて解った。不安が大きくなってたのは、眠っていた心の傷が蘇ってるからだって…」
「2日前よりも前から!?そんなっ…俺っ…俺、全然気付けなかった!ソラちゃんが夜中に魘されてるのを見るまで、全然気付けなかった!!」
京子よりもずっと傍に居たのに気付けなかった事が悔しかったツナ
「綱吉君が気付けなくても仕方ないと思うわ。あの子……自分を隠すのが上手いようだし。
実際、私も注意深く見てなかったら、気付けなかったもの。京子ちゃん、良く気付けたわね?」
「あ、はい…なんとなくですけど。」
「そう…なんとなくでも凄いわ。…さて、本当に時間がヤバそうだから、そろそろ失礼するわね。
良い?今言った事、絶対に忘れちゃダメよ?」
ツナと京子に念を押すように言ったアリア
「あ、はい!」
「あの、アリアさん!」
「何かしら?京子ちゃん」
「教えて下さってありがとうございます!!」
「いいえ、どう致しまして。あの子の事……放っておけなかったから…」
そう言った後、ソラの元に戻って来たアリア
「アリアさん、2人に何を言ったんです?余計な事、喋ってませんよね?」
「さぁ、何かしらね?」
「…答える気はないんですね。」
「ええ、ないわ。」
アリアはソラ達に背を向けて今度こそ去っていった。
アリアが去った後、ツナと京子は獄寺達の元に戻るが、ソラはまだ何か聞きたい事があったのか、
アリアが去っていった道を駆けて行った。
ーー公園の出入口ーー
アリアの後を追って走っていたソラは出入口の方に、リボーンとアリアの姿を見つけた。
(リボ兄がここに居るって事は、ラル姉は帰っちゃったのかな?)
「俺達が背負うべきアルコバレーノの呪いを受け継がせる事になってすまねぇな。」
アリアに背を向けたまま、申し訳なさそうに言うリボーン
「いいの、これは母さんから受け継いだ、大事な使命だから。これが私の運命なら受け入れるわ。」
(アリアさん…)
「綱吉君は良い子ね……ユニも…私の娘も、あんな風に育ってくれたら良いんだけど。」
娘を思う、一児の母親の顔をするアリア
「育ってますよ。」
「あら…」ソラが現れた事にあまり驚かなかったアリア
「アリアさんの娘…ユニ姉は、いつも笑顔を絶やさず、とても心優しい人です。」
「そう…それは良かったわ。」
「…アリアさん、どうして私に視て知っていると…明かしたんですか?…私に伝えたい事があった……
ただそれだけの為に、私に接触したんですか?」
「さぁ、どうしてかしらね?」
ソラのその問いに答える気がないらしいアリア
「答える気はないんですね。でも…ありがとうございます、アリアさん」
「いいえ、お互い様よ。ボンゴレの姫君」
「……どこまで知ってるんですか?」
「あなたに関しては断片的にしか視えないの。だから、あなたの事を知るのに時間が掛かったわ。」
「それは本当なのか?アリア」
ポーカーフェースを保ちながらも、内心驚くリボーン
「ええ、本当よ。ソラちゃん…あなたの未来だけは…はっきりと視えないわ。いつ、どこで、何があるのか…
どういう経緯で今のあなたがあるのかも、ほとんど視えていないの。」
「ほとんど視えない…か。(なんとなく、そんな気はしてたけどね…ユニ姉もそんな事言ってたし。)
…それで良く私が、あの2人の子供だと解りましたね?」
「ええ。京子ちゃんの子だって事が解るのに時間は掛からなかったわ、良く似てるし。
でも綱吉君の子でもある事には本当にすぐに気付けなかったわ。」
「そうですか。……私とパパ、超モードにならないと…似てないそうです。みんな、そう言ってました。」
「そう。あっ…そうだ。1つ聞いて良いかしら?」
「?…何ですか?」
「さっきの男達を倒してた時のあなた……アレはまだ本気ではないのよね?」
「……はい、本気じゃありません。私は普段、大空の炎を使わず、晴の炎を使って戦っていますから。」
少し間を置いてから、アリアの問いに答えたソラ
「そして、中でも銃を使った戦闘が得意……なのね?」
「はい。」
「銃の使い方を指導したのは…リボーンね?」
「はい。銃だけでなく、他にもいろんな戦い方を教わったり、勉強を教わったりしてました。」
「あなたの世界のリボーンは、家庭教師だったのね。」
「はい。私の家庭教師であり、そして……本当の兄のように慕っていました。」
「あら…リボーン、あなたとても好かれてるようね。」
「俺じゃなくて、未来の俺だろ。」
ちょっと拗ねたような言い方をしたリボーン
「私は…今目の前に居るリボ兄の事も……そう思ってるよ?」
今目の前にリボーンの事も、兄のように慕っていると伝えるソラ
「!!」不意を突かれ、ポーカーフェースも忘れて驚くリボーン
「フフっ…最強のヒットマンも、ソラちゃんには弱いのね?良いものを見せて貰ったわ。
それじゃ、そろそろ行くわね?本当に待ち合わせに遅れそうだわ。」
「今頃、必死に探し回ってるんじゃないですか?あなたの部下が。」
「あら…もうそろそろ見つかりそうね。それじゃあね!!」
アリアが去り、その場にリボーンとソラだけが残った。
「……リボ兄」
「ん?」
「今度は……リボ兄の番、なんだよね?」
「…ああ、そうだぞ。」
「本気で戦うんだよね?」
「ああ。」
「そっか。」
「ソラ、無理に着いてこなくても「行くよ。」」
「リボ兄とパパ達が戦う事になると解っていても、ちゃんと見届けるよ。」
「!……そうか。」
「「あ!居た!!」」
「「ん?」」
2人の声が聞こえた方に視線を向けたリボーンとソラ
そこには、息切れしていたツナと京子の姿が…
「おめーら、どうした?そんなに慌てて?」
「ハァっ…ハァっ…ソラちゃんが…急に居なくなっちゃったから…探してたんだよ。」
乱れた呼吸を整えながら、そう答えたツナ
「へ?」思わず間抜けな声が出てしまったソラ
「「ソラちゃん!黙って居なくならないで!!」」
2人から突然の怒鳴り声を浴びせられ、思わず肩がビクッと震えてしまったソラ
「ソラ、おめぇ…誰にも言わずにここへ来たのか?」
「…そういえば誰にも言わないで来たかも…」
「いきなり居なくなってるんだもん、心配したんだよ?」
「ごめんなさい。」
京子にそう言われ、素直に謝るソラ
「まぁその辺にしてといてやれ。こうして無事なのが解ったんだしな。」
「リボーン……」
「うん、そうだね!さっ、みんなの所に戻ろっか?みんな心配してるよ?」
「うん。」
ソラの返事を聞いた後、ツナと京子は目で合図し合った後、
ツナは左側へ……京子は右側へ並び、それぞれソラの手を握った。
2人の突然の行動に呆気に取られていたソラ
「さっ、戻ろう!」
ツナの一言で、未だ固まったままのソラの手を引いて歩き出したツナと京子
「ちょっ…いきなりなんで2人とも手握ってるの!?…はっ……アリアさんにさっき何言われたの!?(アリアさん、何か余計な事言ったね!?)」
状況が呑み込めず慌てていたが、すぐにアリアが原因だと思い当たったソラ
「別に〜?ただ、ソラちゃんと仲良くねって言われただけだよ。ね?京子ちゃん」
「うん!」
「絶対嘘だー!?あのアリアさんがそれだけのためにわざわざみんなから離れて2人とお話するわけがなーい!!絶対何か言った!!」
「ホントにそれだけだよ。(勘が鋭いな〜…なんですぐに嘘だって解ったんだろ…?)」
勘が鋭い事に素直に感心するツナ
ソラが嘘だと言っても、先程アリアに言われた事を言うつもりがないらしいツナと京子
「あいつら……アリアの奴、何か言ったな?」
ツナ達3人の様子を見て、アリアがツナと京子にソラに関する何かを伝えた事が解ったリボーン
ーー夜ーー沢田家ーーツナの部屋
部屋の中は電気も付けず、真っ暗だった。
ソラはベットの上に座って、壁に背中を預け、リボーンは窓際で立ったまま、夜空を見上げていた。
「リボ兄」
「ん?」
「もう行っちゃうだろうから、今言うね?」
「なんだ?」
「明日……リボ兄の試練以外にも、何かが起こる…だから、気をつけて?」
「解ったぞ。」
その時、部屋のドアが開き、光が差し込んできた。
「リボーン、ソラちゃん、晩御飯出来たって。」
そう言いながら、部屋の電気を付けた。
「ツナ、次の試練の相手は俺だぞ。」
「!?…リボーンが…相手…」
「何も驚く事はねぇだろ、俺が次の相手だ。」
「で…でもっ…」
いつもとは違う、突き放すような態度のリボーンを見て戸惑いを隠せないツナ
「守護者は全員連れて来い、ランボもだ。並盛島で待ってるからな。」
ツナにそう伝えた後、開いていた窓から出て行ったリボーン
「あっ…リボーン!!」
リボーンが去っていた窓を見つめたまま、呆然と立ち尽くしていたツナ
(やっぱりこうなるよね。でも……リボ兄の試練を乗り越えないと、印は貰えない……)
突っ立ったまま動かないツナをその場に残して部屋を出た後、ソラはポケットから携帯を取り出し、電話を掛けた。
呼び出し音が2回鳴った後、相手に繋がった。
『やあ、ソラ。僕に何か用かい?』
ソラが電話を掛けた相手は雲雀だった。
「恭兄、明日の早朝、並盛島へ一緒に来て。」
『並盛島?そこで何があるの?』
「……リボ兄の試練」
『!!…赤ん坊のっ…』
「リボ兄は守護者全員参加って言った。……リボ兄VS守護者全員になると思う。」
『ワォっ……ということは、赤ん坊の本気が見られるの?』
「うん、間違いなく見られるよ。」
『解った、行くよ。現地?それとも、ボート乗り場?』
「ボート乗り場に来て。」
『解った。それじゃ、また明日。おやすみ、ソラ』
「うん、おやすみ。恭兄」
携帯を切り、ポケットに仕舞ったソラ
(明日は大変な1日になりそうな予感がする…いろいろとね……)
そう思いながら、まだ突っ立ったままであろうツナの元へ戻っていたソラだった。
今回も前回に続き、アリアさんの試練です!!
アリアさんが登場するこの回、実は随分前から、重要な役割をさせたかったんですよ!
先を視る事が出来るアリアさんだからこそ出来るサポートを。
ただソラと会話するだけじゃつまらないな〜と思ってましたし。
ソラの正体を視て知っている状態のアリアさんにどういう行動を取らせようか随分悩み、
時間が掛かってしまいましたが、こんな感じに出来上がりました!!
それでは標的61へお進み下さい。