第5の試練「包容力」 前編

ーー沢田家ーーツナの部屋ーー

学校が終わって放課後になった後、ツナの家に来ていた獄寺、山本、了平

「アルコバレーノの印はなんとか4つ集まったけど、まだあと3つも残ってるのか…」呟くツナ

「見た目は何も変わらねぇし、もうこれで匣が開けばいいのにな。」
雨のボンゴレリングを見つめながらそう呟く山本

「試してみたらどうだ?沢田…何事も当たって砕けろだ!」

「何言ってんだ、芝生頭!本当に砕けたらどうする!?」
了平にそうツッコむ獄寺

「ああ、爆発するかもしれねぇぞ。」
獄寺の後にリボーンがそう言った。

「えぇ!?」叫ぶツナ

「リボ兄、爆発なんかしないよ。綱吉さんが持ってるボンゴレ匣は、とても強い炎が必要……
だから足りてない今の状態で開匣しようとしても絶対に開かないよ。」

「ふむ…ならやっぱり試練をやり遂げる必要がある、これからの戦いのためにもな。」

「リボーン…」

「この試練を乗り越えられないんじゃ、10年後の世界に戻っても、白蘭を倒すなんて無理だからな。」

「しかし…10年後の世界に戻るまで、今日入れてあと3日しか……アルコバレーノがいつ来るかも解りませんし。」

「あっ…そうか。タイムリミットがあるんだよね。あと3人か……リボーン以外の2人って…」
獄寺の言葉を聞いて、残り3日で試練をクリアしなければいけない事を思い出したツナ

「その内の1人、ヴェルデって奴は以前10代目を狙って刺客を送り込んできた奴じゃないですか。………あの時は酷い目に遭いました。」
ヴェルデが刺客を送り込んできた時の事を思い出していた獄寺

「ヴェルデって人は緑のおしゃぶりだから……っという事は、あと残ってるのは…」

「10代目と同じ、大空のアルコバレーノですね。」

「大空か…どんな人なんだろう?リボーン、その人知ってるんでしょ!?」

「…ああ、まぁな。だが、大空のアルコバレーノは随分前から欠番になっている。」

「ええ!?」

「?…欠番とはどういう意味なのだ?」

「リボーン!!」

ツナ、獄寺、了平の3人はなぜ大空のアルコバレーノが欠番なのか気になっていた。

「俺の口からは言えねぇ…アルコバレーノの機密に関する事だからな。」

「そんなっ…ちょっとくらい教えてくれたってっ……そうだ!山本!!」

「え?俺?」きょとんとする山本

「リボーンからアルコバレーノの事、聞いたって言ってたじゃん。」

「そうだ!おめーは知ってんじゃねぇか、野球バカ!」

ツナと獄寺にそう詰め寄られ、ちらりとリボーンを伺う山本

「……わりぃ、ツナ…何も言えねぇんだ、小僧との約束だからな。」
まだその時じゃないと悟った山本は申し訳なさそうにツナに謝る。

「何!?」山本に掴み掛かる獄寺

「ご…獄寺君!?ごめん、山本!無理に聞きたい訳じゃないんだ。」
そう言いながら、両手を合わせて謝るツナ

「しかし、10代目!」納得いかない獄寺

「でも、話さないって事は何か理由があるんだろうし。」

「チッ…10代目がそうおっしゃるなら……」渋々しながらも大人しくなった獄寺

「ごめんな。いつか、小僧が話してもいいって言ったら、教えるからさ。」

「しかし、どういう事になるのだ?欠番ということは、試練が1つ減るという事か?」
腕を組んだ了平が的を射た事を言う。

「あ!?そ…そうだよ!印は7つ集めなきゃダメなんだろ?どうするんだよ!?」慌てるツナ

「それは大丈夫だ。試練はちゃんとやる。」

(そう…大空のアルコバレーノの試練は代行者が務める……ん?この気配は……)
ソラはすぐ近くに知ってる気配を感じ取った。

「え…どうやって…」

ツナがどうやるのか聞こうとしたその時、インターホンが鳴った。

「おっ…お客さんか?」山本が呟く。

再びインターホンが鳴った。

「綱吉さん、早く下に降りないと……奈々さんは今、ランボ君達を連れて買い物に出かけてて居ないよ。」

「あ!?そうだった!!」ソラにそう言われて思い出し、慌てて下へ降りていったツナ

誰が来たのか気になるのか、獄寺、山本、了平も下へ降りて行く。

「ソラ」

「うん…3つの気配を感じとったよ。そのうちの2人はママとハル姉……
そして最後の1人は……この時代のアリアさんだよ。」
リボーンの言いたい事が解り、そう答えたソラ

「そうか。」

その後すぐにソラとリボーンも下へ降りて行った。


ーー玄関ーー

「おい!何者かって聞いてんだよ!」

ソラが下に降りると、ツナを守るようにして前に居た獄寺が目の前に居る女性に向かって声を荒げていた。

オレンジ色のおしゃぶりを持ち、左目の下には五弁花のマークがあり、リボーン達と違って大人の姿の女性だった。
その傍には、制服姿の京子とハルの姿もあった。

獄寺は痺れを切らせ、ダイナマイトを取り出した。

「うわ!?待って、待って!獄寺君!!この人っ…」

慌てて獄寺を止めるツナの後頭部を蹴ったリボーン

蹴られたツナは倒れた。

「10代目!?」
「綱吉さん大丈夫!?」
倒れたツナを心配した獄寺とソラ

「落ちつけお前ら。」

「落ち着けの前に綱吉さんから退けようよ!?リボ兄!!」
ツナの傍まで駆け寄ったソラがリボーンにそう言った。

「リボーン、この人…」
未だに自分の頭の上に居るリボーンに聞くツナ

「……やっぱり似てんな。」

「リボーン?」

「すまねぇな。わざわざ来てもらって。」

「いいえ。これが私の役目だから。」

(やっぱりこの時代のアリアさんが試練の代行者なんだね。)
目の前に居るアリアを見上げて心の中で呟いていたソラ

その時、アリアがソラの前でしゃがんで、耳元に口を近づけて囁いた。

「はじめまして、ボンゴレのお姫様?」

「!?」目を見開くソラ

「あなたの事は少しだけ視て知っているわ。……私や私の娘を知っている事もね。」
そう言ってから立ち上がったアリア

ソラは未だに驚き固まっていた。

今の会話はソラ以外には聞こえていなかったので、なんで固まっているか解らないツナ達だった。
リボーンだけはなんとなくだが、アリアがソラに何を言ったのかが予想出来たようだ。

「ソラちゃん、大丈夫?」
起き上がったツナがソラに声を掛ける。

「あっ……大丈夫。(びっくりしたっ……私の事、視て知っているかもしれないとは思ってたけど、
まさか知ってる事を自らバラしてくるとは思わなかったよ…)」

「フフっ…どうやらドッキリは成功のようね?」
悪戯が成功した時のような表情を浮かべるアリア

「………思いっきりドッキリ成功ですよ。アリアさん」

「それは良かったわ!あなたの驚く顔が見てみたかったのよね。」

「………」
悪びれもなく言い放ったアリアに笑顔で無言の威圧を掛けるソラ

「冗談よ、そんなに怒らないで頂戴。」
そんなソラに少しも怯む様子を見せないアリア

「ハァ〜…アリアさん、本題から脱線してます。」

「あら、いけない。そうだったわ。」
ソラに言われてここにやってきた目的を思い出したアリア

ツナ達に背を向け、傍らに居た京子とハルを抱き寄せた。

「あっ…!?」
「はひっ!?」
突然のアリアの行動に驚く京子とハル

「じゃあ行きましょうか。」
そう言いながら2人の肩を抱きながら歩き出したアリア

「あの、ツナさんに用があるんじゃ?」

「いいのよ。」

「おい!京子をどこへ連れて行く!?」

「ここへ来る途中で、私が日本は初めてだと言ったら、この子達が街を案内してくれるって。ねっ?」
了平の問いに答えるアリア

「はい!確かにそう言いました!!」
アリアの問いかけに応えるハル

「ホントに助かるわ〜…ありがと。」
さらに2人を抱き寄せてお礼を言うアリア

「いいえ。ハルでお役に立てるなら嬉しいです!!」
「私も!楽しんでもらえるか解らないけど。」
嬉しそうなハルと京子

(アリアさん、今回の試練にママとハル姉を巻き込んじゃうのか。まぁ、アリアさんの試練はまったく危険性のないものだから別に良いけど。
たぶんショッピングを楽しみながら、パパの『包容力』を見極めるんだろうね。)
アリアのこの行動に驚く事なく、冷静だったソラ

「綱吉くーん、エスコート宜しくね!!」

「ええ!?俺が!?」突然の事に戸惑うツナ

「あっ!」
アリアが何か思い出したかのように突然立ち止まり、ツナ達の方に振り向いてソラに駆け寄ってきた。

「ソラちゃん、あなたもいらっしゃい!」

「へっ!?」
アリアのその言葉には、さすがのソラも予想出来ず驚いてしまった。

「拒否権はないわよ?」
驚いてるソラの右手を引っ張って連れ出すアリア

「ちょっ…アリアさん!?拒否権ないって何ですか!?」

「だってこう言わないとあなた絶対付いてこないでしょ?だから拒否権無しよ。さっ、一緒にショッピングを楽しみましょ!!」

「ちょっ…私試練に関係ないですよね!?」
引きずられながらも、アリアに反論するソラ

「無いわよ、私が個人的に連れて行きたいだけだから。」

「こ…個人的にってっ……私情を入れちゃダメでしょ!!」

「そんな固い事言わないで頂戴…息抜きも兼ねて日本に来たんだから。あなたなら…解るわよね?」

アリアにそう言われ、口を噤んでしまったソラ

アリアは確かに試練のために来日したが、それと同時に日ごろのボス業務での疲れを癒すための息抜きも兼ねていたのだ。

ソラにはボスの仕事がどれだけ大変か身を持って知っていたので、それ以上反論する事が出来なかった。

「「ソラちゃん!!」」

「2人とも、この子も連れて行くけど…構わないわよね?」

「もちろん大歓迎ですよ!!ハル、ソラちゃんとお出掛けした事ないので嬉しいです!!」
「私も!!」
嬉しそうなハルと京子

「ってわけだから、もう逃げられないわよ?」

「……もう勝手にして下さい。本来の目的を忘れない程度に…」
ため息をつきながら、この事態の回避を完全に諦めたソラ

「解ったわ。それじゃ行きましょ!」

「その前に手を離して下さい、ちゃんと着いて行きますから。」

「あら残念…」
本当に残念そうにしながらも手を離したアリア

アリア達のやり取りを呆然と見ていたツナ達。

「お前もとっとと行け!」
そう言いながら、ツナの右頬を蹴るリボーン

「何なんだよ〜」
蹴られた右頬を撫でながらも、リボーンに言われた通り、アリア達の所に行くツナ

「ん?綱吉さん、その右頬…」
ツナに気付いたソラが声を掛けた。

「聞かないで…」

「…ごめん。(リボ兄、容赦ないな…)」

「それじゃあ綱吉君も来たし、行きましょうか!」

「「はい!!」」元気な声で返事する京子とハル

アリア、京子、ハルは歩き出した。

「綱吉さん、行こう?」

「あ、うん。行こうか?ソラちゃん」
そう言いながら、ソラに右手を差し伸べた。

「?」差し出された右手を見て、首を傾げたソラ

「手、繋ご?」なかなか手を握ってこないソラにそう言いながら、ソラの左手を握った。

ツナが握ってきた事に驚いたが、すぐに笑顔を浮かべ、その手を握り返したソラ

ソラが握り返してくれたのが嬉しかったツナはそのまましっかり握って歩き出した。

「あ!10代目、俺も!!」
「面白そうだな!!」
「京子が行くなら俺も行くぞ!!」
ツナ達が出発したのを見て、獄寺、山本、了平がそれぞれ言う。

「お前らはダメだ。」
着いて行こうとした3人の守護者を止めるリボーン

「リボーンさん、どうしてですか!?」

「今回お前達の出番はない。」

『えっ…』

「試練は既に始まった。手出しする事は許さん。」

獄寺の問いにリボーンではなく、いつの間にか来ていたラルが答えた。

「ラル・ミルチ!」

「でも、誰もツナと一緒に行かなくて良いのか?」

「今回は守護者は誰も参加出来ないって事だ。」
山本の疑問にリボーンが答える。

「そんなっ…10代目をお1人でなんて…」
10代目命の獄寺は当然参加出来なくて悔しそうにしていた。

「京子達に危険はないのだろうな!?」
アリアと一緒に行った京子達を心配する了平

「そいつは大丈夫だ。あいつは、乱暴な真似はしねぇ。」
「そういう試練ではないしな。」
了平の心配している事には問題ないと言うリボーンとラルだった。


ーー並盛町内の道端ーー

ツナの家から出発したアリア達は道端を歩いていた。

「どこから案内したら良いかな?」
「そうですね…アリアさんはどんな所を見たいですか?」
アリアをどこに案内してあげようか悩む京子とハル

「リクエストして良いのかしら?」

「ええ!ぜひどうぞ!!」

アリア、京子、ハルは行き先を話しあっていた。
後ろから着いてきているツナとソラは……

(アリアさんっていったい何者なんだろう…?リボーンやソラちゃんは知ってるみたいだし。それに試練を与えるって言ってたけど……)
前を歩いているアリアの正体が気になるツナ

(……たぶんパパは、おしゃぶりを持っているのに、アリアさんがリボ兄達と同じ赤ん坊じゃなくて大人だから困惑してるんだろうな…)
困惑した表情をしているツナを見上げてそう思ったソラ


ーー並盛中学校−ー

アリアのリクエストで、「綱吉君達が通っている中学校へ行きたい」と言ったので、並盛中へ来ていた。

「ここがツナさん達が通ってる並盛中学校です!」

「あいにく放課後で誰も居ないけど。」

「そう、ここが…」

「あの…なんで学校なんかに?」
ここに来た理由が気になってアリアに聞くツナ

「興味があったから。綱吉君が普段どんな生活してるかな?って。」

「ええ!?(もしかして試練と何か関係が…?)」

(興味本位って……試練と関係ない所に来てるけど良いのかな…?)
そう思いつつも、何も口出ししないソラ

「学校は楽しい?綱吉君」

「あっ…ええ、まぁ。」

「うん、学生時代は大いに楽しみなさい!勉強にスポーツに恋!やる事はたくさんあるわよ!!」

「あ、はぁ…」

「何してるの?」

その声が聞こえた方に振り向くツナ達

「雲雀さん!?」雲雀に怯えるツナ

「放課後は立ち入り禁止だよ。」

「は…はい!」

「綱吉君のお友達?」
ツナに尋ねるアリア

「誰?」

「友達だなんてそんな滅相な!?とにかく、行きましょう!京子ちゃん達も!!」
そう言いながら、アリアの背中を押してこの場から移動し始めたツナ

「「はーい!」」
京子とハルも移動し始めた。

「君達が何をするつもりか知らないけど……これ以上学校で騒ぎを起こしたら……咬み殺す!!」
ツナにそう忠告しながら、トンファーをチラつかせた雲雀

「す…すみません!!」

「恭兄、あんまり綱吉さんを怒らないであげて?」

ツナ達の後に続かず、その場に残っていたソラが雲雀に話し掛けた。

「……仕方ないね。」

チラつかせていたトンファーを仕舞い、ソラの視線に合わせるためにしゃがんだ雲雀

「ねぇ、さっきの…誰?」

「アリアさんだよ。」

「アルコバレーノ?」

「大空のアルコバレーノの代行者。」

「……赤ん坊じゃないんだね。」

「大空に掛けられた呪いは、リボ兄達とは違うからね。」

「へぇ…」

「何かは聞かないでね?これ以上は話せないから。」

「わかった。」
あまり興味がなかったからなのか、あっさりした返事が返ってきた。

(あんまり興味がないみたいだね……助かったけど。)

「ねぇ、今はその人が試練を与えてるの?」

「うん、そうだよ。第5の試練中…」

「戦わないの?それと笹川京子達は良いの?一緒に居るみたいだけど…」

「戦わないよ、今回の試練はそういうのじゃないし。京子さん達の事だったら大丈夫。アリアさんが連れ出して、一緒に楽しんでるだけだから。」

「……ねぇ、これって試練なんだよね?」

「そうだよ?」

「アレが試練なのかい?」

「だ〜か〜ら〜!今回は戦闘無しの試練なの!危険性ゼロなの!!こういう試練も時にはあるの!!」
一気に捲し立てたソラ

「……つまらない。」
戦闘のない試練と聞いて本当につまらなさそうな雲雀

「別に良いじゃん、恭兄は今回の参加者じゃないんだから…いくら試練だからって、何もすべてが戦闘じゃないの。
昨日の試練だって戦ってなかったでしょ?(ほんの少し、風(フォン)とイー姉が戦ってたけど…)」

「昨日学校に居たの、やっぱり試練だったんだ?」

「そうだよ。赤いおしゃぶりを持った人が居たでしょ?」

「ああ…そう言えば居たね、中国服の赤ん坊が。」

「昨日はその人の試練を受けてたんだよ。」

「ふーん…」どうでも良さげな顔をしていた雲雀

「………恭兄」

「何だい?」

「明日、空けといて?」

「なんで?」

「今は言えない…でも、夜になれば解る。」

「……わかった、空けておくよ。」
なぜなのか気にはなるが、ソラが意味のないお願いをする訳がないと思った雲雀は了承した。

「ありがとう!それじゃそろそろ行くね。」

「うん、またね。」ソラの頭を撫でてから立ち上がった雲雀

雲雀と別れ、先に移動していったツナ達の所へ急いで駆けて行ったソラだった。

ソラの姿が見えなくなるまで見送った後、雲雀は校舎内に入っていった。


ーー並盛商店街ーー

「ここがハル達の行きつけのケーキ屋さんです!」

「とってもおいしいんですよ!あれ…?人がいっぱい……」

「はひ?ああ!アレを見て下さい!」
人がいっぱいな理由に気付いたハル

店の前の看板に、「開店3周年記念特製チョコレート半額」と書かれていた。

「今日は特製チョコレートが半額です!」

「ええ!?」

「ハル感謝デーではなくても、これは見逃せません!」

「そうだね!でも…」

ケーキ好きの2人はこの特製チョコレートを見逃したくないが、人がたくさん居て、
物凄い争奪戦になっているのを見てどうしようか迷っていた。

(ママもハル姉も、ホントにケーキ好きだね……)
そんな2人を黙って見ていたソラ

「綱吉君」

アリアがツナを呼ぶ声が聞こえ、視線を2人に向けたソラ

「2人の可愛いガールフレンド達の為に…」
そう言いながら、ツナの背中を店の前の人集りの中に押したアリア

まさに争奪戦真っ最中な人集りの中へ押されたツナは次々と他の客達に押されてしまい、すぐに見えなくなってしまった。

「助けてーー!!」突然この人集りの中へ入れられたせいか、悲鳴を上げていたツナ

「ちょっとアリアさん!何してるんですか!?」

「何って、半額の特製チョコレートを買いに行って貰ったのよ。」
ソラに何か言われるだろうと思っていたのか、冷静に受け答えしていたアリア

「だからっていきなり人集りに押したら混乱するでしょ!!」

「綱吉君なら大丈夫よ。さっ、ここは綱吉君に任せて。」
そう言いながら、京子とハルを抱き寄せるアリア

「はひ!?」
「でも…」

「ツナさんを待たなくて良いんですか?」

「大丈夫、大丈夫。」

「じゃあツナ君、後でね。」
「ツナさん、ファイトです!」
アリアに押されながらツナにそれぞれ声を掛けた京子とハル

「あなたはどうする?」

「私はここに居ます。」

「あら残念…じゃあ綱吉君の事お願いね!」
そう言いながら移動していったアリア

視線をを追ってみると、アリア達が近くの服屋さんに入っていくのが見えた。

「ハァ〜…(アリアさんが与える試練は『包容力』……だからこれも試練の内なのは解ってる。でも……)」

他の客に押されながらも、なんとかゲットしようと奮闘しているであろうツナの事を思うと、少し可哀想な気がしたソラだった。

少しして、人集りの中から、ツナが箱が入った紙バックを抱えて出てきた。

「やっと買えた…」

「お疲れ様、綱吉さん」

「あ、うん。あれ?京子ちゃん達は?」

「あそこの服屋さん。」
そう言いながら、近くの洋服屋を指差したソラ

「服屋さんに?じゃあ俺達も行こうか。」

ツナとソラはその場を移動し、洋服屋に居るであろうアリア達と合流しに行った。


ーー洋服屋ーー

「あっ…ツナさん!ソラちゃん!」
ハルが2人に気付いて声を掛けてきた。

「ツナ君、お疲れ様!」笑顔でツナを迎える京子

「綱吉君、チョコレート…無事買えたかしら?」
チョコレートをちゃんと買えたか聞くアリア

「あ、はい!なんとか。」
アリアの問いに、両手で抱えていた物を見せた。

紙バックの中の箱の中にケーキが入っているようだ。

「そう、御苦労さま!」

「洋服、もう見終わりました?」

「いいえ、まだよ!」
ソラの問いにそう答えるアリア

「…まだ見るんですか。」

「ええ、だってまだまだ全然見てないもの。そうだわ!ソラちゃん、あなたに似合いそうな服を見つけたの!着てみない!?」

「着ません。」躊躇う事なく拒否するソラ

「そんな遠慮しないで!!」

「別に遠慮なんかしてません。」

アリアの押しに少しもタジタジになる事なく、かつ冷静に試着を断っていたソラの姿を呆然と見ていたツナ達。

(アリアさんとソラちゃん……なんか親しそうな気がするんだけど……今日初めて会ったばかり…のはずだよね??)
アリアがソラと会うのは初めてなはずなのに、親しそうな雰囲気になっているのを見て不思議がっていたツナ

「ソラちゃん、試着が嫌なのかな?」
「残念です…ハルもソラちゃんに似合いそうなお洋服を見つけたので、ぜひ試着してみて欲しかったのですが…」
自分達もソラに試着してみて欲しいのがあったので、本当に残念そうにしていた京子とハル

「アアリアさん、諦めて下さい。」

「いいえ!諦めないわ!!何が何でも着てもらうわよ!!」

「何度言われようと、着ません。」
頑なに試着を拒否するソラ

「強情ね…あの子達も着せてみたい服があるみたいだけど……」
そう言いながら、京子とハルを見るアリア

釣られてソラも2人に視線を向けた。

視線の先に居た2人は、どこかしょんぼりしていた。

そんな2人を見つめながら黙っていたソラにアリアが声を掛けた。

「これでもダメかしら?」
初めからこうなる事を予想していたかのように問いかけるアリア

「………2着。」

「「え…?」」ソラの呟きが聞こえ、反応する京子とハル

「1人2着だけなら……着てもいい。でも、それ以上は着ない。」
仕方ないと言わんばかりの表情でボソボソと呟いたソラ

その呟きを聞いたアリア、京子、ハルは目をキラキラと輝かせていた。

「2着ね!解ったわ、ちょっと待ってて頂戴!!」
「2着、選んでくるね!!」
「はひっ…2着だけなら、どれにするかよく考えて厳選しなくてはっ!!」
そう言いながら、それぞれハイテンションでどれを着せるか選んでいたのだった。

「………ソラちゃん、良かったの?あんまり好きじゃないんだよね?着せ替えさせられるの…」
しばらく3人の事を呆然と見ていたツナがソラに近づいてしゃがみ、小声で話しかけた。

「……着せ替えさせられるのは確かにあまり好きじゃないけど……あんな2人の顔を見たら、ね……
(ママのあんな顔を見るくらいなら、少しだけなら別に構わない。)」
ツナの問いに小声で応えながらも、服を選んでる京子の姿を見つめていたソラだった。


あの後もいろんな店に行き、ショッピングをしていたアリア達。

「たくさん買いましたね。」

「日本に来たら、ショッピングをしないとね。」

「そうなんですかー」

楽しそうに話してる京子、アリア、ハルの3人

そんな中、前が見えない程山のような荷物をツナが1人で抱え込んでいた。

「重いっ…」
小さな声でそう呟きながらも、懸命に荷物を持って歩いていたツナ

「綱吉さん、大丈夫?少し持とうか?」
そんなツナを純粋に心配したソラがそう声を掛けた。

「ツナ君、大丈夫?やっぱり手伝おうか?」
ソラの声をきっかけに京子も後ろを振り向き、ツナに声を掛けた。

「だ…大丈夫!」
心配して声を掛けてくれるソラと京子にそう言うツナ

「本当に手伝いますよ?」
ハルも心配して、そう声を掛けるが…

「俺なら大丈夫だから!(京子ちゃん達の前でカッコ悪い所見せられないよ…)
自分は大丈夫だと言いながら、涙目になっていたツナ

(ハァ〜…ママたちにカッコ悪い所を見せたくないっていうのは解るけど……意地張り過ぎだよ。)
そんなツナの心境を察したソラがため息をついていた。

このまま言ってもツナは意地を張り続けるだろうと思ったソラはもうこれ以上言うのを諦めた。

(この状況を見て、きっと隼人兄は居ても立ってられなくなってるだろうな……タケ兄や了兄は大丈夫だろうけど。)
自分たちから少し離れた所に身を隠しているであろう獄寺達の事を思ったソラだった。


ソラが言った通り、ツナ達から少し離れた所で身を隠しながら、ツナ達を見守る獄寺、山本、了平の姿があった。
もちろん、試練を見届けるラルとリボーンの姿もだ。

「お労しい……10代目になんて事させやがるんだ!くそっ…」
悔しそうにしながら、涙目でツナ達を見つめる獄寺

「でも、確かにあれなら危険はないみたいだな。」
「京子達も楽しそうだしな。」
山本と了平はツナ達の様子を見て、安心していた。

「もう我慢できるか!俺が手伝ってっ…」

出て行こうとしていた獄寺のすぐ目の前を通過した銃弾。

「手を出せば、そこで試練を失格と見なすぞ。」
ショットガンを構えながら忠告するラル

その言葉を聞いて悔しそうにしながら、アリアを睨みつけていた獄寺

「まぁ落ちつけよ、獄寺」
そんな獄寺を宥める山本だった。


後ろの方でソラが思った通りの展開になっていた時、ソラは獄寺達以外の気配に気付き、立ち止まった。

(隼人兄達以外にも、この辺りに身を顰めている連中が居る…?マフィア関係者…かな?)

「ソラちゃん、どうしたの?」
立ち止まったソラに気付いて声を掛けたツナ

「あ…何でもないよ。」
ツナに声を掛けられ、何事もなかったかのように言いながら、また歩き出したソラだった。


何者かはまだ解らないけど……きっとマフィア関係者…
そして、狙いは……たぶん私達……
何の目的で追跡しているかは解らないけど、今は様子見だね。

ソラは獄寺達以外に自分達を追跡してきている存在に気付き、ツナ達に悟られないようにしながらも、周囲への警戒を強めていた。


標的60へ進む。


今回はアリアさんの試練です!
アリアさんの試練では戦闘は一切なく、守護者でない京子とハルを連れてショッピングしていた所を、
アリアに強引にソラを連れ出して貰いました!
ソラは初めからこれがアリアの試練だと知っていた事もあって、自分からは加わりそうにないし、
仮に本当にただのショッピングだったとしても、あまり自分から着いて行こうとしないと思ったので、
アリアさんに連れ出して貰う事にしました。
途中で雲雀さんも登場!相変わらずソラには優しい雲雀さんです!
服屋さんですが、アニメではそこに行った事は描かれてますが、中でどんな風に会話して居たのかが
まったく解らなかったので、もう本当にここは管理人の妄想ですね。
話が思ったより長くなってしまったので、アリアさんの試練は2話に分けました。
なので、次回も「包容力」の試練真っ最中です。
それでは標的60へお進み下さい。

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