第4の試練「指導力」

ーー朝ーー沢田家ーー

今日はちゃんと早起きして奈々と朝ご飯を作る事が出来て満足なソラ
朝ご飯を食べた後はランボとイーピンと遊んで過ごしていたが、
獄寺、山本、了平が次々にやって来た。

「ツーく〜ん!手紙が届いてるわよ〜!!」
奈々がまだ2階で寝ているツナに下から呼びかける声が聞こえてきた。

「手紙…?(もしかして…)」

リビングに居る奈々の元へ向かったソラ

「奈々さん、手紙ってポストに入ってたんですよね?」

「そうよ?」

「住所、書かれてました?」

「あら?そういえば書かれてないわね〜…これがその手紙よ。」
そう言いながら、テーブルの上に置こうと思っていた封筒をそのままソラに渡した奈々

(沢田綱吉殿……としか書かれてない。直接ポストに入れたみたいだね。)
届いた手紙を受け取った後、その封筒を黙って見つめていた。

その時、リビングにツナが現れた。

「母さん、手紙ってどこ?」

「今ソラちゃんが持ってるのがそうよ。」
洗い物しながら、ツナの問いに答えた奈々

「あっ…綱吉さん、おはよう。」

「おはよう、ソラちゃん」

「はい、これがその手紙だよ。」
持っていた封筒をツナに渡すソラ

「ありがとう。誰からだろ…?こ……これはっ…!?」
封筒を裏返すと、アルコバレーノのおしゃふりの絵が描かれたシールが貼られていた。

『アルコバレーノの試練か!?』

「うわぁ!?どうしてここに…?」
獄寺、山本、了平が来ている事に驚いたツナ

「試練の事が気になっちまってな。」
「今度こそ、10代目をお手伝いさせて貰います!!」
「極限に試練クリアだー!!」
「3人とも、試練の事が気になって、さっき来たんだよ。」
山本、獄寺、了平、ソラの順にツナにそう言った。

「何々?試練なの?」

居間に居たランボとイーピンもやって来て、テーブルの上に乗っていた。

「ハァ…朝からこんなに集まって…」思わずため息をついてしまったツナ

「いいから早く封筒を開けんか!」

「あ、はぁ…」
了平に言われた通り、封筒を開けて中身を取り出した。

「私を捕まえてみなさい。」
中に入っていた手紙を読み上げた後、同封されていた写真を見たツナ

その写真には、サングラスをした人物が写っていた。

獄寺、山本、了平は写真を見て驚きの声を上げ、それぞれツナに何かを言うが、一気に3人とも喋るので聞き取れなかった。

「ストップ!!みんないっぺんに喋ったら解らないよ!」

「とにかくこいつを捕まえれば良いのだな!?」

「だったら俺に任せて下さい、10代目!!」

「俺も、親父が何か知ってるか聞いてくるぜ!」

了平、獄寺、山本は嵐のように出て行った。

3人が出ていく際、ツナが持っていた手紙と写真が落ち、写真の方はテーブルの上に落ちた。

「あっ!お師匠様!?」
落ちてきた写真を見て驚きの声を上げるイーピン

「えぇ!?お師匠様!?これがイーピンのお師匠様なの?っていうか、イーピンのお師匠様ってアルコバレーノだったの?」

「そうだ。」

「え…」

驚いてるツナの問いに応えたのはリビングの入り口に居たリボーンだった。

「イーピンの師匠は、赤いおしゃぶりを持つ、武道家の風(フォン)だぞ。」

「で…でも、イーピンからはそんな事1度も…」

「武道家の弟子は師匠に忠誠を誓っていて、ペラペラと情報を漏らすような真似はしないんだよ。」
ツナの疑問にソラが答えた。

「あ…そうか。イーピンはお師匠様の事大好きだもんな。」

「ツナさん…」

「そんな事より、早く風(フォン)を見つけなくて良いのか?お前も心当たりがあるんだろ?」

「あ!…うん。」

リビングを出て行こうとしていたツナの背中に飛びつくランボ

「ランボさん、試練を受けるんだもんね!」

「わ…わかったよ!」

「イーピンも行くぞー。」

「あっ…イーピンは大丈夫だから、気にしないで。(自分のお師匠様を捕まえて貰うなんて、頼めないよ。)」
イーピンが忠誠を誓っている師匠を捕まえる事に躊躇を隠せないでいるのを見てそう言ったツナ

「ちぇっ、つまんなーい!一緒に試練しようよ、イーピン!」

「ランボ、行くぞ!」

「えぇ〜!?」

文句を言うランボを連れてとりあえず服を着替えに2階へ上がっていったツナだった。

(今度の試練は風(フォン)か……確か『指導力』だったっけ?)
風の試練が何かを思い出していたソラ

「ソラさん」

「ん?」

「イーピン、どうしたら…」

「う〜ん…イーピンちゃんが自分で納得のいく答えを探したら?」

「納得のいく答え?」

「うん。今、イーピンちゃんは忠誠を誓ってる師匠を捕まえる事に躊躇しちゃってるんでしょ?
でも、綱吉さんの力になりたいって気持ちもある。その2つの想いの間で迷ってるんだよね?」

「うん。」頷くイーピン

「だったらさ、こっそり着いてきて、綱吉さん達の様子を見て、どうするか決めると良いよ。」

「え…」

「何もしないでここに居るよりは良いよ?きっと納得のいく答えが得られると思う。」
超直感が告げたからなのか、またはソラ自身がそう思ったからなのか、イーピンにそう助言していた。

「ソラちゃん、行くよ!!」

ツナがソラを呼ぶ声が聞こえてきた。

「今行く!じゃあイーピンちゃん、先に行ってるね。」
イーピンにそう言ってから、玄関に居るツナとランボの所に向かい、そのまま家を出て行ったソラ

ソラの言葉を聞いて、イーピンは言われた通りこっそり着いて行く事にし、後を追うのだった。


ーー並盛中ーー

今日は学校が休みなので校門が閉まった状態だった。

「居ないみたいだな…」
そう呟きながら、屋上を見上げたツナ

「綱吉さんはここで見かけたの?」

「うん。昨日ランボを連れ戻してた時に、屋上に居たのを見たんだ。」

「そうなんだ。(ここが試練の場所か……隼人兄、タケ兄、了兄も見かけたって言ってたけど、
たぶんそれは3人をパパから引き離すためにやったのかもね。)」
ツナの家での3人の証言を思い出し、冷静に分析していたソラ

「ここに試練が待ってるんだな!?」
そう言いながら、ツナのあたまの上からジャンプして校門を飛び越えたランボ

校門を飛び越えたランボを捕まえるため、慌てて校門を開けて中に入っていったツナ

ソラもその後に続こうとした時、こちらに向かって駆けてくるハルに気付いた。

「グッドモーニングです!ソラちゃん!!」
ソラの前で立ち止まったハルがソラに挨拶した。

「おはよう、ハルさん」

「あれ?ハル、どうしてここに?」
捕まえたランボを抱えたツナがハルに気付いて声を掛けた。

「はい!ツナさんに会いたいな〜っと思っていたら、ナイスタイミングで目撃したものですから…これってやっぱり運命なのでしょうか!」

「あ…あのね…!?」

(ハルさん、ホントにパパの事好きだね…いったいこの10年でどうやったら隼人兄の事が好きになるのかホントに謎だよ。
この時代の2人、会うたび喧嘩してばっかだし。)
ツナにデレデレ状態のハルを見上げながら、心の中でそんな事を思っていたソラだった。

「待っていましたよ。」

屋上の方から声が聞こえてきた。

ツナ達が屋上を見上げると、そこには写真に写っていた、長身でブカブカした服を着ていて、サングラスをした人とリボーンとラルが居た。

サングラスをした人は正体を現わした。

正体を明かしたその姿は、リボーンやラルと同じ赤ん坊で、赤色のおしゃぶりを持ち、
長髪をお下げの三つ編みにしていて、雲雀に瓜二つの鋭い釣り目と前髪で、カンフー服を着ていた。

「私は風(フォン)……与える試練は『指導力』です。」

「指導力?…ってかあの人っ…」

「あのお姿はっ…」

「雲雀さんにそっくり!かなり小さいけど…」

ツナとハルは風が雲雀に瓜二つなのに、驚きを隠せなかった。

「ん…?」
門の入り口付近の物陰の方に気配を感じ、目線だけをそちらに向けたソラ

視線を向けた先には、イーピンがそこに隠れているのが見えた。

(イー姉、来たんだね。)

「あ…あの!」
風に声を掛けたツナ

「ん?」

「『指導力』の試練っていったいどんな…?」

「ルールは簡単です。私がこの学校内を逃げます。あなた達が私を捕まえる事が出来れば、試練はクリアです。
時間は12時まで…それまでに捕まえられなければ、失格です。」
ツナの問いにそう説明した風(フォン)

「あと1時間…でも、それって鬼ごっこ!?」

「ただの鬼ごっこだと思って甘く見るな!風(フォン)は素早いぞ。」
「『フォン』と言うのは、『風』って意味だからな。」
ツナに向かってそう言うラルとリボーン

「あなたは、今学校内に居るメンバーを使って、私を捕まえるのです。つまり、その時のあなたの『指導力』を見るのです。」

「え!?今学校内に居るメンバーって…ランボと…ソラちゃんとハル!?」

「はひっ…」

「でも、ソラちゃんとハルは守護者じゃないし…」

「今回の試練は特別です。メンバーの能力を見極め、活用出来るかも、『指導力』の大切な要素です。」

「そんなっ…」

「それとな、ツナ」

「な…何?リボーン(なんか嫌な予感がっ…)」

「ソラは不参加だぞ。」

「えぇーっ!?」嫌な予感が的中し、叫んでしまったツナ

「リボーン、あの子を不参加にするのですか?」
リボーンの言葉に驚き、風が問う。

「ああ。あいつがメンバーに加わったらすぐに終わっちまう、試練にならなくなるぞ。」

「……リボーン、冗談だろ?」
信じられないという表情をしながらも、リボーンに確認するラル

「いや、ホントだぞ。ソラ、お前は見学だぞ。」

「わかった。」
ソラは初めから参加しないつもりだったのか、すぐに了承していた。

「そんなぁ〜…ここに居るソラちゃん以外のメンバーだけで風(フォン)を捕まえるったって…(守護者って言ってもランボだけだし、それにハルじゃ…)」
ソラが不参加だと聞き、試練を無事クリアできるか物凄く不安になっていたツナ

「リボーン、あの子はいったい…」

「俺の弟子だぞ。」

「はい!?あなたの弟子ですか!?……これは驚きました、あなたが“生徒”ではなく“弟子”と言うくらいです。
かなりの実力の持ち主なのでしょうね。」
表情には出なかったが、弟子と聞いて、充分衝撃を受けていた風(フォン)

「まぁな。」

「おまけに沢田達よりもかなり賢いぞ、アレで6歳だというから驚きだ。」

「なんとっ…確かにあの子が居たら、すぐに試練が終わってしまいそうですね…それでは試練になりません。」

「だから不参加なんだぞ。」

「そうですか。(しかし、あの子……物影に居るイーピンに気付いていたようですね…沢田綱吉達は気付いていないのに。
リボーンの弟子というのは、本当のようですね……)」
ツナ達と一緒に居るソラを優しい眼差しで見つめながらそう思っていた風(フォン)

「ツナさん」

ハルに呼ばれて振り向くツナ

「よく解りませんが、ハルはツナさんのために頑張ります!」

「ハル…」

「ランボさんだって、試練クリアでキラキラのピカピカだもんね!」

「ランボ…」
ハルとランボの言葉を聞いて不安が消えていくツナ

「では始めましょう。」

「アルコバレーノ、風(フォン)の試練開始!!」
ラルが試練開始の合図を出す。

「よし!とにかく行こう!」

ツナ、ハル、ランボは校舎内に駆けていった。

「(屋上に居る風(フォン)の所に向かったみたいだね。)…この試練、守護者じゃなくても参加出来るみたいだよ?
そして、試練開始時に校舎内に居たから、参加資格もある…どうする?」
物影の方には振り向かず、そのままイーピンに問いかけるソラ

(ソラさん……でも、お師匠様を捕まえるなんて、イーピンにはっ…)
まだ師匠である風(フォン)を捕まえる事に躊躇していたイーピン

(まだ迷ってるみたいだね……)
イーピンの心境を察したソラ

屋上の方へ視線を向けるとちょうどハルとランボが風(フォン)を捕まえようとしていたが、
軽くかわされてしまい、そのまま逃げていった。

目で追っていると、風(フォン)は体育館の方へ向かったようだった。

少ししてツナ達が校舎の中から出てきて、そのまま体育館の方へ走っていった。

「体育館の方に向かったみたいだよ。」
そう言ってからソラも体育館の方へ向かった。

イーピンは少しの間その場に留まっていたが、すぐにソラを追いかけて体育館の方へ向かった。


ーー体育館ーー

体育館に着いたツナ達は、ハルは右側から、ランボは左側から奥のステージの所へ進むように言ってから、自分も真ん中から中へ入っていった。

ステージの前に辿り着いたハルとランボの前に風(フォン)が現れ、捕まえようとしたが失敗し、風(フォン)はそのままツナの方に駆けて行き、
今度はツナが捕まえようとしたが、それも失敗に終わった。

「あぁっ…やっぱり。」
体育館の2階からツナ達の様子を見ていたイーピンが呟く。

ソラもイーピンと一緒に2階からツナ達を黙って見ていた。

「風に逆らってはダメ。」

その言葉を聞いて、ソラは以前イーピンにその事を教えられた時の事を思い出していた。

ーー回想ーー

幼いソラは木から落ちてくる葉っぱを捕まえようと必死になっていた。

『ソラ、落ちてくる葉っぱを捕まえるにはどうしたらいいか教えてあげようか?』
そんなソラの様子を見て、助け舟を出すイーピン

『どうすればいいの?イーねぇ』
葉っぱを捕まえるのを一旦止めて、傍に居たイーピンを見上げるソラ

イーピンはソラの視線に合わせるためにしゃがんでから話しだした。

『流れに逆らって力を加えると、風は向きを変えてしまう。逆に流れを読めば、風は自ら手の上に降りてきてくれる。』

『??』首を傾げるソラ

『フフっ…これは私が昔、お師匠様に教えて貰った時に言われた言葉なんだ。簡単に言うと、葉っぱを無理やり捕まえるんじゃなくて、
自然に自分の手の平に降りて来てくれるのを待ってればいいんだよ。』

イーピンに言われた通り、手の平を広げてじっと待ってみたソラ

少しすると、落ちてくる葉っぱがソラの手の平に収まった。

『わぁっ…』
自分の手の平にホントに落ちてきたのを見て嬉しそうな顔をするソラ

『そうそう!ソラ上手!!まだ風の流れは読めてないみたいだけど……それはこれから出来るようになればいいしね。
風の流れがまだ読めてないのに、1回言われただけで、葉っぱを捕まえられるなんて凄い事なんだよ?』
ソラの頭を撫でながら褒めていたイーピン

『イーねぇ!かぜのながれはどうやったらよめるようになるの??』

『それはね…』

ーー回想終了ーー

「流れに逆らって力を加えると、風は向きを変えてしまう。逆に流れを読めば、風は自ら手の上に降りてきてくれる。」

「!!…ソラさん、その言葉っ…」

「ずっと前に、大人のイーピンちゃんから教えて貰ったんだよ。」

「えっ……イーピンが?」

「うん。今の綱吉さん達は、風の流れに逆らってる……どうすれば風(フォン)を捕まえられるかが解ってない。
今、この地点で風(フォン)を捕まえる事が出来るのは……イーピンちゃんだけだよ?」

ツナ達に視線を戻すと、体育館から出ていくのが見えた。

「あっ…綱吉さん達、また校舎の方へ行っちゃったみたいだね。」

それを聞いてすぐに校舎の方へ駆けていったイーピン

「……私が助言出来るのはここまでだよ。あとはイー姉次第で、この試練がクリア出来るかどうかが決まる。
(お願い、イー姉…パパの力になってっ…!!)」

ソラはイーピンの後を追わず、少しの間その場で両手を祈るように握っていた。


体育館を出た後、ソラはもうツナ達を追いかけるのをやめ、下駄箱の所で時間が経つのをひたずら待っていた。

そして12時まであと残り15分頃になった時……

「そろそろ終わる頃かな?」
腕に装着している腕時計で時間を確認し、ツナ達の気配を探って移動し始めたソラだった。


ーー美術室ーー

ソラが美術室を覗くと、、そこには風(フォン)と戦っているイーピンの姿があった。

「ランボごめん!餃子拳!!」
そう言って、ランボに餃子エキスを吸わせて操り、風(フォン)の方へ投げつけた。

投げつけられたランボを後ろに飛ぶ事でかわした風(フォン)は自分の後ろを見て逃げるのを止め、そのまま流れに任せた。

(そのまま風の流れに乗って風(フォン)はそのままパパの手の中に収まる。)
黙って見守っていたソラが心の中でそう呟いた。

風(フォン)がツナの手の中に収まった時、ちょうど12時になった。

「そこまで!!風(フォン)は沢田綱吉に捕まった。この試練、合格だ!」
ラルが現れ、ツナ達に合格を告げた。

「やったもんねー!キラキラのピカピカだもんねー!!」喜ぶランボ

「やりましたね、ツナさん!…はひっ…ツナさん!?」
ハルも試練が無事合格して喜んでいたが、ツナの顔を見て驚いた表情になった。

ハルの驚いた表情が気になって、ソラはツナに視線を向けた。

(なっ…何その顔っ!?)ツナの顔を見て驚くソラ

ツナの顔は誰かに殴られたのか、痣が出来たり、頬が腫れたりしていた。

「俺、何もしてなかったのに…」呟くツナ

「それが良かったんだぞ。お前が動いたら、風(フォン)はまたするりと逃げる所だった。」
試練に合格出来た事を不思議がっているツナにそう言ったリボーン

「風、もっと逃げる。」
リボーンの後にイーピンがそう付け加えた。

「え…でも、イーピンはメンバーに居なかったから、ルール違反じゃ…」

「いいえ。最初から居ました。」
そう言いながら、ツナの手の中から降りた風(フォン)

「物影に隠れていたから、お前達は気付かなかったようだがな。俺達はずっと解っていた。」
風(フォン)の後にラルがイーピンが物影に隠れていた事を教えた。

「そ…そうなんだ。(イーピン、お師匠様相手なのに、最初から来てくれてたんだ…)」

「イーピンちゃん、試練が始まってからずっと綱吉さん達の後をつけて様子を見てたんだよ。」

「え……ソラちゃん、もしかしてイーピンが来てたの、気付いてたの!?」

「うん。」

「忘れたのか?ソラは気配に敏感なんだぞ。」

「あっ!そういえばそうだったっ…」
リボーンに言われてその事を思い出したツナ

「まぁとにかく……イーピンに感謝しろよ?おかげで風(フォン)は捕まってくれたんだからな。」

「え…」

「そうではありませんよ。イーピンがあなたを助けたいと思った事こそが、あなたの『指導力』が優れていた証なのです。
イーピンから届く便りには、いつもあなた方と過ごす毎日が書かれていました。恥ずかしがり屋のイーピンがここまで心を開き、
生き生きとした日々を過ごしている……沢田綱吉、あなたの『指導力』があってこその事でしょう。」
大人しく捕まった理由を述べる風(フォン)

「そうかな?アハハっ…アハハハっ…」照れるツナ

「さぁ、リングを出して下さい。」

「あっ、はい。」
風(フォン)にそう言われ、右手に嵌めてるボンゴレリングを風に向けた。

「合格の証を授けましょう。」

風(フォン)の赤いおしゃぶりから光が照射され、ボンゴレリングに射し込まれた。

照射された後、ボンゴレリングは少しの間赤色の光を放っていた。

「うわぁい!キラキラのピカピカだもんね!」
自分の雷のボンゴレリングが赤色に光ってるのを見て喜ぶランボ

「良かったね!ランボ」
ランボが喜んでいるのを見ながらそう言うイーピン

「ツナさん、ハル…お役に立てたんですね。」

「うん…ありがとう!ハル、ランボ、そしてイーピン」

「ツナさん!…あっ…お師匠様、ごめんなさい。」

「気にする事はありませんよ、イーピン。あなたのその想う気持ちは私にも伝わりました。イーピンはもう1人前ですね。」

「謝謝!お師匠様!!」

(風(フォン)……イー姉の事を見てる時のあの優しい眼……一緒だ。風(フォン)はいつも優しかった…
イー姉を見る時と同じように、私にもその優しい眼を向けてくれてた。)
今も昔も変わらない風(フォン)の姿を見て、小さく微笑んでいたソラだった。

「ねぇ、君達…いつまで群れてるの?」

入口前に雲雀が現れた。

「ひ…雲雀さん!?」ビクつくツナ

「恭兄…?(もしかしてパパのあの顔……恭兄がやったの?)」
ツナの顔がああなったのは雲雀が咬み殺したからだと気付いたソラ

「おぉ…久々だな。」

「うわぁ!?イーピンの筒子時限超爆だ!!」

イーピンの額にが筒子が現れ、カウントダウンが始まっていた。

(あ……そういえば昔、イー姉は恭兄に会う度、筒子時限超爆を起こしてたってパパが言ってたっけ。)
子供の頃のイーピンは雲雀に恋をしていた事を思い出したソラ

ツナは急いでイーピンを掴み、窓を開けた後すぐに上空へ放り投げた。

そしてカウントダウンが終わり、爆発が起こった。

自分達が被害に遭う事と、学校が壊されるのを防ぐ事が出来てほっとしたツナ

「恭兄」

「ん…?やぁ、君も居たんだ。」
自分に近づいてきたソラに気付き、笑みを浮かべた雲雀

「うん。ごめんね?試練の場所に学校を使っちゃって。」
両手を合わせて謝るソラ

「………いいよ、君に免じて今回の件は許してあげる。」

「ホント?」

「うん。幸いな事に、今回は学校が壊れてないしね。」

「ありがとう!!」満面の笑顔でお礼を言うソラ

「どういたしまして。」
そう言いながら、ソラの頭を撫でる雲雀

(やっぱり雲雀さん、ソラちゃんに優しい!?こっちに戻って来る前の時も優しかったけど、まだ会ったばかりのはずなのに、なんで−っ!?)
10年後の雲雀がソラに優しかったのにも驚きだったが、今目の前に居る雲雀もソラに優しいのを見て、
本当に信じられないという表情をしていたツナ

「沢田綱吉」

「は、はい!」

「今回はこの子に免じて許してあげる。」

「あ…ありがとうございます!雲雀さん」

「じゃあ僕はそろそろ行くよ。用が済んだなら、さっさと学校から出なよ。」

「は…はい!解りました!!」

「またね、ソラ」

「うん、またね。恭兄」

雲雀が去った後、ツナ達はすぐに学校から出た。
途中でイーピンを回収して……

校門を出た後、ラル、風(フォン)、ハルとは別れ、ツナ達は帰路についた。


ーー沢田家ーーツナの部屋ーー

家に着くと、ツナの部屋で獄寺、山本、了平の3人が待っていた。

「すいません!10代目!!」
ツナに向かって土下座する獄寺

「やったな!ツナ!!」
「これでまた試練が1つクリアしたな!!」
山本と了平は試練が無事にクリアした事を素直に喜んだ。

「ご…獄寺君、顔上げてよ!?」
未だに土下座状態の獄寺をなんとかしようとしていたツナ

「ソラ!ランボさん、試練クリアでキラキラのピカピカだもんね!!」

「うん、そうだね。ランボ君、すごーく頑張ってたもんね。」
そう言いながら、ランボの頭を撫でるソラ

「えへへっ…」嬉しそうなランボ

「イーピンちゃんも頑張ってたよね。大好きなお師匠様を捕まえないといけなかったのに、綱吉さんのために捕まえるのに協力してくれた。」

「ソラさん…」

「ありがとう!イーピンちゃん(今回の試練、たぶんイー姉が居なかったらどうなっていたか解らなかった……だから、本当にありがとう!)」
ランボを撫でる手をそのままに、もう片方の手でイーピンの頭を撫でたソラ

「イーピンの方こそ!ソラさんのおかげで迷い吹っ切れた、謝謝!!」

「そっか、それは良かった。」

「…ソラさん」

「ん?」

「イーピン、ソラさんと仲良しだった?」

「え?…大人のイーピンちゃんと仲が良かったかって事?」

「うん。」

「あ!それ、ランボさんも知りたいんだもんね!!オレっちとソラ、仲良いんだもんね?」

2人の頭から手を離し、黙ったままランボとイーピンを見つめていたソラ

「ソラさん、教えて!」
「ソラ、教えろだもんね!」
ソラにせがむイーピンとランボ

「わ、わかった!わかったから落ち着いて!……2人とも、耳を貸して?」
2人の押しに折れたソラ

ソラにそう言われ、ソラの方に耳を傾けたランボとイーピン

「ランボ君とイーピンちゃんとはとっても仲良しだよ。私は2人の事…本当のお兄ちゃんとお姉ちゃんのように思ってる。」
ランボとイーピンにだけ聞こえるように囁いた。

「ランボさんが…?」
「イーピンが…?」
それぞれ自分を指しながら確認する。

「うん!2人とも、いつも私の遊び相手になってくれてたよ。」

「イーピン、嬉しい!!」

「ランボさんもだもんね!!」

ランボとイーピンが嬉しそうな顔をしてるのを見て、ソラもなんだか嬉しくて、笑みを浮かべていた。

ランボ、イーピン、ソラの3人はツナが獄寺を宥めている間、そんな会話をしていた。

その様子を見て知っているのは、リボーンだけだった。


標的59へ進む。


今回は風(フォン)の試練です!!
風(フォン)の試練は守護者でない者も参加していましたが、ソラは不参加にしました。
理由は、ツナが参加者の能力を見極めて活用し、捕まえなければ意味がない。
しかし、ソラはきっと自分で考えて、風(フォン)を捕まえてしまうでしょう。
そう考えて、不参加にしました。
そして、アニメでは、イーピンは1人で悩み、最終的にはツナに喜んでもらいたいという気持ちが強く働いて、
風(フォン)を捕まえるのに協力していた所を、ソラに少し助言させてみました。
風(フォン)と話する所を書きたい気持ちはありましたが、会話が思いつかなかった事と、
タイミングが見つからなかった事から、断念致しました。
それでは標的59へお進み下さい。

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