第2の試練「魅力」

ーー沢田家ーーリビングーー

『いただきまーす!!』

ツナ達は今、夕飯を食べていた。

「リボーン、あの後どこに行ってたんだよ?」

「残念だが、教えてやる訳にはいかねーな。」
ツナの問いに答える気がないリボーン

「なんだよそれ……あっ!もしかして、試練に関係ある事なの?」
リボーンの答えに不満そうにしていたが、試練に関係あるのかと思い、
小声でリボーンにだけ聞こえるように言ったツナ

「ノーコメントだ。せっかくのママンの飯がまずくなる。」

「たくっ…わかったよ。」
まったく答えてくれないリボーンを見て、これ以上聞くのを諦めたツナ

(そういえば凪姉、元気にしてるかな…?それに……向こうに居る時、ご飯を全然食べてないって聞いた……心配だな…)
ご飯を食べながら、ふとクロームの事を思い出し、心配していたソラ

少し考えてから何か思いついたような顔をし、洗い物をしている奈々に視線を向けたソラ

「奈々さん」

「なぁに?」

「あの、後でおにぎりを作ってもいいですか?」

「え…?いいけど……もしかして足りない?」

「い、いえ、ご飯は足りてますよ。その…おにぎりをたくさん作って持っていってあげたい所があって……」

「おにぎりを作った後にまた出掛けるの?1人じゃ危ないわよ。」

「ママン、1人じゃねぇぞ。俺とツナも一緒だ。」
奈々が心配している所をすかさずフォローを入れたリボーン

「あら、そうなの?ツー君」

「え!?……あ、うん!俺も一緒だよ!!」
リボーンが話を合わせろと睨みつけてきていたので、とりあえず話を合わせるツナ

「そう。…ソラちゃん、おにぎり好きなだけたくさん作ってくれていいわよ!具もたくさんあるし。」

「ありがとうございます!」満面の笑顔でお礼を言うソラ

「おにぎり作るの、手伝ってあげようか?」

「いえ、そこまではいいです。たくさんおにぎり作るの、慣れてますから。」

「そう?」
ソラにそう言われても、まだ何か言いたそうな奈々

「か…母さん!俺も一緒に作るから!!」
奈々の様子を見て、今度はツナがフォローを入れた。

「あら、そうなの。じゃあ、お米は焚いておくわね?」

「はい、ありがとうございます。奈々さん」

「これくらいなら別にいいわよ。」
そう言って、お米を研ぐ準備を始めた奈々


夕ご飯を食べて少し経った頃にご飯が炊きあがり、具は奈々があらかじめ何種類か用意してくれていたので、
すぐにおにぎりを作り始めれる状態だった。

「ねぇ、ソラちゃん」

「何?」

「ソラちゃんがおにぎりを持っていきたい所って…」

「クロームさんの所。」

「クロームの所って事は…黒曜ランドに行くの?」

「うん、いけなかった?」

「いや、そんな事ないよ!俺もクロームの事心配してたから…ソラちゃんも俺と同じ事考えてたんだね!
もしソラちゃんが言ってなかったら、俺…母さんにお願いしてたからさ。」

「そっか、なら良かった。いっぱい作って、クロームさん達の所へ持っていってあげよう?」

「達って……黒曜の2人の事、知ってるの?」

「うん、知ってる。遊んでもらった事もあるよ。」

「ええ!?あの2人に!?」

「うん。」

とても信じられなくて、しばらくの間動けず、呆然としていたツナだった。

「さっ、おにぎり作ろう!」

ソラがそう言った後、おにぎりを作り始めた2人

「あちっ…あちちっ…」
両手で握るご飯がまだ熱くて、握るのに苦戦していたツナ

一応少しだけ熱を冷ましてから作り始めていたが、それでもまだまだ熱いようだった。

「………綱吉さん、大丈夫?」
ツナの様子を心配そうに見るソラ

ソラも熱いご飯を両手で握っているが、全然熱がる様子はなく、次々と具を詰めて作っていく。

「ソ…ソラちゃん、熱くないの!?」

「熱いの、慣れちゃった。」

「慣れた…?」

「うん。ボスやリボ兄や守護者のみんなとお花見とかピクニックに行く時、必ずおにぎりが要るから、どうしてもたくさん作らなくちゃいけなくてね…
だから、たくさん作ってるうちに熱いの慣れちゃった。慣れって怖いね。」
さらっと笑顔で言うソラ

「へぇ…どおりで手際が良いわけだ。それに比べて俺のおにぎり……」
歪な形をした自分のおにぎりを見つめてため息をつくツナ

「初めは誰だってそうだよ。私も最初はそうだったし。(そういえば初めて三角形のおにぎりに挑戦した時、上手く三角形にならなくて
歪な形のおにぎりが出来ちゃって作り直そうかと思ってた時、たまたまなのか、それとも私が厨房に居ると知っていたからなのか、
パパがやって来て、そのおにぎりを手に取って、本当に美味しそうに食べてくれてたっけ…)」
おにぎりを握る手を止めて、その時の事を思い出していたソラ

ーー回想ーー

『ソラ、何作ってるの?』

黒いスーツ姿のツナが、厨房に居たソラに声を掛けた。

『あっ、パパ…えっと、三角形のおにぎり作ろうと思って作ってみたんだけど……』
そう言いながら、テーブルの上に置かれている、出来あがったおにぎりに視線を向けたソラ

作ったおにぎりは全部三角形にはとても見えず、歪な形をしていた。

『………これ、ソラが作ったの?』
少しの間、そのおにぎりを見ていたツナがソラに聞く。

『う…うん、そうだけど…』

『誰に作ってたの?自分に作ってたら、そこまで悩まないよね?』

『えっと〜…』
ツナから目を逸らすソラ

『あ!もしかして、リボーンに作ってたの?』

『違うよ!!』即座に否定するソラ

『え?違うの?じゃあ誰に??』
きょとんとした顔をし、本当に解らないといった様子のツナ

その問いにすぐ答える事が出来ず、少し顔を赤らめたソラ

『?…ソラ?』

『………パパ』
少し間を置いてから、恥ずかしそうに言ったソラ

『へ…?俺?』自分を指差すツナ

『うん。』頷くソラ

まさか自分のために作ってくれていたとはまったく思っていなかったのか、意表を突かれたツナ

『パパ、ここ最近、お仕事とっても忙しそうでしょ?ご飯をゆっくり取る暇もないくらい。だからおにぎり作っていこうかな?って思って作ったんだけど…
出来たのが、三角形のおにぎりじゃなくて、形の悪いおにぎりで……何度か挑戦したけど、ちっとも三角形にならなかったから、今から作り直して、
いつもの丸いおにぎりにしようかな?って思ってた所。』

少しの間、固まっていたツナが、黙ってその歪な形のおにぎりに手を伸ばした。

『あ!?パパ、それ失敗作だからダメっ!!』
おにぎりに手を伸ばしたツナに気付き、慌てて止めるソラ

だが、そんなソラの制止の言葉を聞きながらも、いくつかあるおにぎりの中から1つ摘み、食べ始めたツナ

その様子を見て、呆気に取られたソラ

『……うん、美味しい!!』
持っていたおにぎりを食べ終えたツナが満面の笑顔をソラに向けてそう言った。

『……パパ、それは失敗作だって言ったじゃん。』
ツナのその言葉に素直に喜べず、どこか不満そうな顔をするソラ

『失敗作ね……でも、見た目が悪いだけで味の方はとっても美味しいよ?それにね、見た目や味なんかよりも、
ソラが俺の為に一生懸命作ってくれた……その気持ちが一番大事だと思うんだ。食べて欲しい人の事を思って
作ってくれた物なら、どんな物でも美味しくなるんだよ。』

『どんな物でも美味しく?』

『うん。あっ…これは京子…ママからの受け売りだけどね。』

『ママの?』

『昔……ソラが生まれる前、ママのためにおにぎりを作った事があるんだ。パパはママみたいに普段料理してるわけじゃなかったから、
それはもう今ここにあるおにぎり……いや、それよりも形が酷かったような気もするな〜…』
その時の事を思い出して懐かしそうな顔をするツナ

『それで?』
続きを急かすソラ

『うん…でね、ママはそのおにぎりを食べて、美味しいって言ってくれたんだ。でも、俺が食べてみると、塩が多かったのが解って、慌ててママから
おにぎりを取り下げようとしたんだけど、ママが取り上げられないようにおにぎりを死守してたから、取り下げれなかったんだ。』

『どうして?』

『俺がママのために一生懸命作った物だったからだよ。』

“ツっ君が私の為に一生懸命作ってくれたんだもん、美味しくない訳がないよ!食べて欲しい人の事を思って作ってくれた物なら
どんな物でも美味しくなるんだよ?だから…ありがとう!ツっ君!!”

『…って言ってくれたんだ。』
京子に言われた言葉を思い出しながら言うツナ

『へぇ…』

『だからね…』
台の上に立っていたソラをそっと抱き上げたツナ

いきなり抱きあげられて驚くソラ

『どんなに見た目が悪かろうが、俺の為に一生懸命作った物ならどんな物でも美味しい!だから…また作ってくれる?』

『へ?』

『パパの為に、またおにぎり作ってくれないかな?』

『………おにぎり以外の物も……作っちゃダメ?』
満面の笑顔を向けてくる父親を少しの間黙って見つめていたソラがツナに聞いた。

『へ?おにぎり以外の物?作れるの?』

『うん。ママやおばあちゃんに教わったから、簡単な物は作れるよ。』

『そうなんだ。じゃあ…楽しみにしてるね!!』

『うん!!楽しみにしてて!!頑張って作るから!!』
満面の笑顔でツナにそう言っていたソラ

ーー回想終了ーー

「…ちゃんっ…ソラちゃん!!」

「あ…」ツナが呼んでる事に気付いたソラ

「ソラちゃん、どうしたの?手が止まってたから、声掛けたのに、なかなか返事してくれないから心配したよ。」

「アハハっ…ごめん。ちょっと……そのおにぎりを見て思い出しちゃって……」
そう言いながら、再びおにぎりを握る手を動かし始めたソラ

「え?」きょとんとするツナ

「私が初めて三角形のおにぎりに挑戦した時の事をね。」

「…ソラちゃん、おにぎり初めて作ったのっていつ?」

「ん〜…いつかな〜?3歳の時、かな…?」

「3歳!?」驚くツナ

「あ、さすがにその頃はまだ三角形のおにぎりじゃなくて、丸いおにぎりだったけど。ママと一緒におにぎり作ったのが初めてだったと思う。
三角形のおにぎりに初めて挑戦したのは去年だよ。」

「そうなんだ。ソラちゃんのお母さん、お料理上手なの?」

「うん、とっても上手だよ!とっても美味しくて、私が嫌いな物があっても、頑張って食べれちゃうくらいね。」

「え……ソラちゃん、嫌いな物あったの!?」
未来のアジトに居た時のソラは何でも食べていたような気がしていたので、嫌いな物がある事を聞いて驚いたツナ

「そりゃあるよ。誰だって苦手な物や嫌いな物はあるんだし。」

「それもそうだね。ねぇ、何が嫌いなの?」

「教えない。」

「ええ〜…誰にも言わないから教えてよ?」

「やだ、絶対教えない!」

「そこをなんとか〜」

ソラとツナは会話をしながら、次々とおにぎりを作っていたのだった。

(フっ…ソラの奴、楽しそうだな。ここに居る間は、未来での戦いの事なんか忘れて、そうやって笑ってろよな。)
廊下の方から気配を消したまま、こっそり2人の様子を見ていたリボーン

リボーンが2人に向ける眼差しはとても優しいものだった。


ーー黒曜ランドーー

「10年前でも廃墟化は結構進んだ後だったんだね。」
10年後の黒曜ランドと見比べていたソラ

「俺がちっちゃい頃はまだやってたけどね。」

「ツナ、ソラ、クロームの事が気になるのか?」

「うん。クローム、未来で何も食べなかったって言うし、黒曜に戻っても、ちゃんと食べてるのか心配で…」

「ずっと前に聞いた事があるんだ。昔の自分はあまりちゃんとしたご飯を食べてなかったって。(それに、凪姉だけじゃなくて、
犬兄や千種兄もちゃんとしたご飯じゃなくて、お菓子ばっかり食べてたって聞いたしね。これじゃ栄養が偏っちゃうよ。)」
以前黒曜ランドに住んでた時の事をクローム達から聞いて知っていたソラ

「それでおにぎりをたくさん作ったのか。」

「うん。」

「あとは黒曜の2人に見つからないで、これを渡せればいいんだけど…」
そう言いながら、自分が抱えてる何重にも重なった包みに目を向けた後、また歩き出したツナ

「?…あの2人に蜂合わせちゃまずいの?」
ツナが犬や千種を避けたい理由が解らず首を傾げるソラ

「いや、別にまずくはないんだけど…」

その時、ツナの目の前に、ここには来るはずのない雲雀が現れた。

「雲雀さん!?(どうしてこんな所に!?)」

「恭兄…(なんかパパに物凄い殺気を向けているような…?)

その時、建物の方から誰かがやってきた。

(!?…10年前の…骸兄…?…骸兄もパパに向かって殺気を放ってる…?)
雲雀だけでなく、骸もツナに向かって殺気を向けているのに気付き、困惑した表情を浮かべたソラ

「あいつら、すげー殺気だな。」

「そんなーー!?」

しばらくツナを睨みつけていた2人だったが、突然戦い始めた雲雀と骸だった。

「雲雀さんと骸が戦ってる…!?」

2人の戦いを呆然と見ていたツナとソラ

「な…何やってるんですか!?雲雀さん!骸!」

「無駄だ。」

「え?」

「今のあいつらを止める事は、誰にも出来ねぇ。」

「そんなっ…」

「恭兄は、過去の屈辱を忘れてない。骸兄はそれを解ってて、受けて立ったんだよ。」

「これは、どっちかが倒れねぇ限り、収まらねぇな。」

ソラとリボーンが今の2人の状況を説明した。

「ええ!?」それを聞いて叫ぶツナ

(でも、どうして恭兄がここに……!?…この気配はっ…)
雲雀がなぜここに居るのか解らず混乱していたが、何かの気配に気付き、後ろにある看板の上を見上げたソラ

そこには紫色のおしゃぶりを持ち、頭にはフルフェイスのヘルメットを被り、黒いライダースーツを着たスカルと、
藍色のおしゃぶりを持ち、黒いフードを被り、ヴァリアーの隊服を着たマーモンの2人が話をしていた。

(スカルとバイパーだ……ってことは、もしかして2人が蜂合わせちゃったのって……バイパーの幻術?)
2人を見つけたソラは、雲雀と骸が蜂合わせになってしまっているのはマーモンの幻術でここに呼び寄せたのだろうと推測していたソラ

そのまま見上げていたソラは、スカルが上から落ちてくるのに気付いた。

看板の上から落ちて地面に衝突したスカル

リボーンはスカルがこの場に居るのを初めから気付いていたのか、驚く事なく、いつもの様に見下していた。

「あぁ!?いつかのマフィアランドで襲ってきた奴!!」

「スカルだ。俺のパシリだな。」

「誰がパシリだー!!」
”パシリ”という言葉を聞いて反応したスカル

「えっ…それじゃあ、これって試練なの!?」
そう言いながら、再び2人の戦いに視線を向けたツナ

互いの武器である、トンファーと三又槍がぶつかり合う音が鳴り響いていた。

「なのに、どーして2人が戦っちゃってるの!?」今の状況に混乱しているツナ

「大方、あいつらを使って、自分の手は汚さず、お前を潰すつもりだったんだろう。」

「ええ!?」リボーンの言葉を聞いて叫ぶツナ

「(なるほど、確かにスカルがしそうな作戦だね。パイパーにお願いして2人を呼び寄せたまでは良かったけど…)
あの2人の因縁を調べておかなかったのは失敗でしたね。」
リボーンの言葉を聞いて納得し、スカルのミスを指摘したソラ

「なっ!?」ソラの言葉に反応するスカル

「2人を会わせちまった以上、この先何が起こるか解らねぇ…」

「あの雲雀さんと骸だよ!?」あたふたするツナ

「ん?」知ってる気配に気付き、上を見上げたソラ

ファルコに連れられてやってきたコロネロとラルの姿があった。

(ラル姉がここに居るって事は、これを試練と見なすの?)

「あーもう!!めちゃくちゃだよ!!これじゃ試練どころじゃないよ!?」
その場に座り込んで頭を抱えたツナ

「いーや」

「え?」

スカルの上に降りてきたラル

当然スカルは下敷きになってしまったが、ラルはその場から動く様子がなく、話を続けた。

「試練は始まっている。」

「ラル!?どこから!?」突然のラルの登場に驚きを隠せないツナ

「綱吉さん、上を見て。」驚いてるツナに教えるソラ

ソラにそう言われ、上を見上げた。

「頼まれた通り、急いでラルを連れてきてやったぜ!コラ」

「コロネロ!!」座っていたツナが立ち上がる。

「立会人のラルが居なくちゃ、始まらねーだろ。」

「リボーン!もしかしてこうなる事を知ってたのか!?」

「まぁな。スカルとも長い付き合いだ。こいつのしそうな事なんて簡単に予想出来るからな。」

「なんだと!?」

「そういう事だ。俺が来たからには、これを正式な試練とする。」

「マジッすか!?」
「こんな状況で!?」
ラルの言葉に反応するスカルとツナ

「甘えるな!どんな状況であろうと、確実に目的を達成する。それでこそ……それでこそ、ボンゴレ10代目だ!!」
ツナに向かってそう言い放ったラル

「そ…そんな事言ったって…」

「グズグズ言ってる暇はねぇぞ。ツナ」

「綱吉さん、落ち着いて?大丈夫、綱吉さんなら絶対に大丈夫だから!(スカルの試練は『魅力』…
今のパパなら絶対に大丈夫だよ。だから…)頑張って!!」
満面の笑顔をツナに向けて声援を送るソラ

「ソラちゃん…」
ソラの言葉を聞いて、少し落ち着きを取り戻していたツナ

スカルの上から飛び降りたラル

「第2の試練開始!!参加者は、大空のリングの所持者と、雲の守護者と霧の守護者とする!!」

ラルがそう宣言した後、次々と黒いヘルメットと黒いライダースーツを着た、カルカッサファミリーの人達が雲雀と骸の前に現れた。

「こうなったら、全員まとめてやっつけてやる!!」
いつのまにかまた看板の上に戻っていたスカル

雲雀と骸に一斉に襲いかかったが、すぐにやられていたカルカッサファミリーの人達。

「何群れてるの?それに…僕の邪魔は許さない。」

「その意見には同感しますね。ボンゴレやアルコバレーノが何をしているか知りませんが、今は邪魔しないでもらいたい。」

戦いを楽しんでいた所を邪魔されて不機嫌な雲雀と骸だった。

(うわっ…恭兄と骸兄、めちゃくちゃ不機嫌だ…)

「ああ!?なんか騒がしいと思って、誰が暴れてんのかと思ったら、骸さんだびょん!!」

「骸様…」

建物の中から現れたのは、黒曜の制服を着た少年2人だった。
1人は顔の鼻の所に一直線の傷があり、舌足らずな口調と語尾に「びょん」が付く犬
もう1人は頭にニット帽を被り、眼鏡をしていて、左頬にはバーコードがある千種

(10年前の犬兄と千種兄だ…)

「犬…千種…ちょうどいい。僕は彼との戦いを楽しみたい。邪魔者を排除してくれますか?」

良いタイミングで現れた犬と千種にカルカッサファミリーの人達の相手を頼んでいた骸

骸の頼みを断るわけがなく、了承する2人

「頼みましたよ。」

骸と雲雀が別の場所で戦う為にその場から移動していった。

「あ!?ちょっと、2人とも!!」

「お前の相手はそこだ、ツナ」

「え?」

何かに突き飛ばされ、後ろの看板の方に叩きつけられて地面に落ちてきたツナ

「気を抜くな。もう試練は始まってるって言っただろ。」

「!…あー!あれは!!」

ツナが顔を前に向けると、そこには鎧を纏った巨大なタコが居た。
その巨大なタコはスカルの相棒「タコ」だった。

「相変わらず趣味の悪いペットだな、スカル」

「な…なんだと!?」

「本当の事だろーが!」
そう言って、スカルを看板の上から蹴り落としたコロネロ

(……この2人、ほんっとにスカルへの扱いが酷いね……いつもの事だけど。)
落ちてきたスカルを少し心配しながらも、心の中でそう呟いていたソラ

「あいつらっ……いつも、いつも、馬鹿にしやがって!!いつも、いつも、いつも、いつもー!!だが、今はボンゴレ10代目が先だ!!行けー!!」

スカルの命令でツナに攻撃を仕掛けるタコ

「おい!避けろ!コラ」
倒れたままのツナに向かってそう叫んだコロネロ

だが、ツナに直撃する寸前の所で超モードになったツナがその場から飛び上がって回避し、そのままタコの上に乗った。

「な…なんだ、こいつ!?以前会った時と、あまりにも、あまりにも違う!!」
以前会ったツナとは全然違うのを見て驚きを隠せないスカル

「来い。」挑発するツナ

タコに命令を出して、次々と攻撃を繰り出すが、ツナは難なく回避したり、防いだりして、隙を見て反撃していた。

「どういう事だ!?ボンゴレがこれ程の戦闘力を身につけているなんてー!?」

「当たり前だ、コラ!この俺の試練をこいつは既にクリアしてるんだせ?」

「あぁ!?そういえば!!」コロネロに言われ、その事をすっかり忘れていたスカル

(え!?スカル、コロ兄の試練の事、すっかり忘れてたの!?あ〜…だからなのか…スカルには悪いけど、リボ兄の言った通り、
ホントにお粗末な作戦だね……恭兄や骸兄の間の因縁だけじゃなく、パパの事を充分に調べてなかったみたいだし。)
思わずため息をついてしまったソラだった。

「オペレーションX」

ツナはタコに向かってX BURNERAIRを撃とうとしていた。

そんなツナを妨害しようとしていたタコだったが、犬に身動きを封じられ、上手く妨害出来ないでいた。

タコを掴んでる犬を引き離そうとするが、カルカッサファミリーの人達を相手にしながら、
犬へ向かって攻撃しようとしていたタコから守る千種

「ええい!だったら!!」
完全に頭に血が上っていて、やけになっていたスカルはある所に視線を向け、タコに命令を出していた。

タコの足がソラに向かって放たれた。

「!?」タコの足に気付き、軽くその場を回避したソラ

「ああ!?コラ!逃げるな〜!?」

ムキになったスカルがタコに命令し、ソラに向かって次々と足が襲いかかる。

(私、参加者じゃないんだけど……)
襲ってくるタコの足を回避しながらそう思っていたソラ

「あいつ、試練に関係ない奴を巻き込んでどうする気だ…しかもソラに手を出しやがってっ……」
ポーカーフェースを保ちながらも、怒りを露わにし、殺気を溢れ出させていたリボ―ン

「お、おい!リボーン!?」珍しく本気で怒ってるリボーンを見て驚くラル

「あいつ、リボーンにそんなに気に入られてるのかよ!?」コロネロも驚きを隠せない。

その時、急に動きが鈍ったソラ

その隙をついて、ソラを捕まえたタコ

「よし!!ボンゴレ!今撃てばこいつが巻き添えになるぞ!!」

「くっ!?」
悔しそうな顔をしていたツナ

今やろうとしていたX BURNERAIRをやめようとしていたツナだったが…

「つ…綱吉さん!そのまま構えてて!!」

「!?」

「今から脱出するから、その後すぐに撃って!!」

そう言った後、自分に巻きついていたタコの足をいとも簡単に解く事に成功し、その場を離れたソラ

「何ー!?」自力で脱出出来たソラに驚くスカル

「“X BURNERAIR!!(イクスバーナーエアー)”」
ソラが脱出したタイミングを見計らって、X BURNERAIRを放ったツナ

タコに直撃ではないものの、森の方へ飛ばしたツナ

その時、飛ばされたタコの傍に雲雀と骸が居るのに気付き、そこへ向かったツナ

「ん?ツナの奴、森の方へ行ったな……」

「あっちに恭兄達の気配もあるよ。たぶん止めに行ったんじゃないかな?」
リボーンの呟きにそう答えたソラ

「そうか。なら俺達も行くぞ。」

「私はここで待ってるね。」

「ん?行かねぇのか?」

「うん。」

「………わかった。コロネロ、ラル、行くぞ。」

コロネロとラルを連れてツナの所へ向かったリボーンだった。

「………う゛っ…」
リボーン達が見えなくなった後、その場で片膝をついたソラ

「こんな…時に…古傷が痛むなんてっ……」

そう、先程スカルのタコから回避している時に動きが急に鈍ったのは、背中に痛みが走ったからである。
ソラの背中に刻まれた古傷は、普段は痛みがないが、たまに突然痛む事があるのだ。

痛みに顔をしかめていたソラだったが、ウェストポーチから小さなケースを取り出した。
中には無色の透明カプセルが入っており、それを一粒出して呑み込んだ。

少しすると、薬が効いて落ち着いてきたソラは立ち上がった。

その時、森の方から雲雀が出てきた。

「ん?君、こんな所に居たの。」

「恭兄……骸兄との戦い、楽しかった?」

「うん、楽しかったよ。でも、いつか本物のあいつを噛み殺す!」

「そっか。恭兄、ここに来る時…何に連れてこられたの?」

「草食動物の偽物だよ。」

「最初から偽物って気付いてたの?」

「まぁね。あの草食動物らしくない行動を取っていたからすぐに解ったよ。
でもアレに着いていけば何か面白そうな事があるような気がしてね。」

「それでわざと騙されたふりしてここまで来たの?」

「そうだよ。」

「恭兄らしいね。でも、来てくれてありがとう。」

「どういたしまして。それじゃ僕はそろそろ行くよ。またね、ソラ」
ソラの頭を撫でてからその場を去っていった雲雀

雲雀が去った後、今度はツナ達が森の方から出てきた。

「お疲れ様、綱吉さん」

「あ…うん。」

「あっ…クロームさん、体…大丈夫ですか?」
クロームの姿を見つけ、声を掛けたソラ

「うん…大丈夫…」

「良かった。それで…リボ兄、試練は合格なんだよね?」

「ああ。『魅力』の試練は見事クリアしたぞ。」

「そっか。それじゃ綱吉さん、私達の用事を済ませようよ?」

「へ?」

「これだよ。」
ソラの傍に置かれていた、おにぎりが大量に入ってる包みを指した。

「あ!ごめん、忘れてたよ!!」
そう言いながら、包みを持ちあげ、クローム達に振り向く。

「あのさ、クローム」

「?」きょとんとするクローム

「まだ何か用があるのかびょん!?」
犬が吠える。

千種も無言でツナを睨む。

「(やっぱりこの人達怖い…でもっ)これ。」
犬と千種は怖いが、クロームに持っている包みを見せた。

「なぁに?」

「俺とソラちゃんで作ったおにぎり…って言っても、ほとんどソラちゃんが作ったやつばっかりが入ってるけど。良かったら食べて?」

驚くクローム

「あ…ほら!アジトでもご飯食べなかったって言ってたし、こっちでもちゃんと食べてるのかな?って思って。」

「よけーなお世話だびょん!!ちゃんとこいつにも食い物やってるぞー!!」

「お菓子ばかりだけど。」
犬の後にそう付け加えた千種

「ええ!?それって体に良くないよ!!ちゃんと食べないとっ…たくさん作ったから、みんなで食べて。ね?」
そう言って、包みをクロームに押しつけたツナ

「…ありがとう。」
包みをしっかり持ちながらお礼を言うクローム

「変な物入ってんじゃないだろーな?」
そう言いながら、クロームが持ってる包みを嗅ぐ犬

「え…おにぎりの中身は普通だと思うけど…昆布とか、おかかとか、梅干しとか。」
おにぎりの中身を教えるツナ

「梅干しはいる。」

「柿ピー!なにもう食べる気になってるんだびょん!?」

「それなら、犬は食べなくてもいい。」

「なにをー!?さては1人占めする気だな!?メガネカッパ!!」

「怒るよ?」

「あぁっ…喧嘩しなくてもたくさんあるから!!」
喧嘩する犬と千種を宥めていたツナ

「クロームさん」

「あ…ソラもありがとう。」

「どういたしまして。そのおにぎりなんですけど…」

「?」

「綱吉さんが作ったやつは、形は良くないけど、一生懸命作ってたから食べてあげて?あの2人はたぶん、形の悪い方より、
ちゃんと三角形になってるおにぎりの方ばかり食べちゃうと思いますから。」
ツナ達3人の方を見ながら、クロームにだけに聞こえるよう小声で言うソラ

「わかった。あ、ソラのもちゃんと食べるから。」

「無理して食べなくてもいいですよ?クロームさん、小食ですし。あと、少しだけど、おにぎりだけだと栄養が偏っちゃうから、
おかずをいろいろ入れてあるから、そっちも食べて下さいね?10年後と好みが同じならいいんですけど…」

「!…10年後の犬と千種の事も…知ってるの?」

「良く知ってますよ。遊んで貰った事もありますし。」

「そっか。」

クロームとの会話を終え、リボーン達の方へ向かったソラ

リボーン達の所に行くと、そこにはなぜかボロボロになったスカルの姿があった。

傍には、ハンマーに姿を変えたレオンを持ったリボーンと拳を鳴らしてるコロネロの姿があり、
その様子から、この2人がスカルをボロボロにした事が解った。

「な…なんでスカルさんボロボロなの!?何したの!?リボ兄!!」

「何って、生意気な口聞いた罰を与えただけだぞ。あと、試練に関係のないおめぇを巻き込んだ罰。」
ソラの問いにそう答えながら、レオンを元の姿に戻していたリボーン

「だからっていくら何でもやり過ぎでしょ!?しかも2人がかりで!!」

「心配すんな、スカルならこれくらいじゃ死なねぇぞ。」

「そういう問題じゃない!!」

「そういやぁソラ、もう大丈夫なのか?」

「!?」その言葉を聞いて固まるソラ

(俺がお前の異変に気付かないとでも?)
目でそう訴えたリボーン

リボーンは気付いていた。先程、スカルのタコから回避していた時、動きが鈍った時のソラの様子を…
ツナ達の所に行かず、ここに留まると言ったソラの意図も解っていたからこそ、何も言わず1人にしたのだ。

「…大丈夫。」

「そうか。だが、あまり頑張り過ぎるな。お前は1人じゃねぇんだぞ?…おい、スカル!」

「な、何ですか!?リボーン先輩!」
ボロボロなのに、リボーンの声に反応して起き上がったスカル

「何じゃねぇ!ソラに謝れ!土下座でな!!」

「な、なんで俺がこいつに土下座しなきゃいけないんですか!?そりゃ、巻き込んだ事については悪いと思ってますので謝りますがっ…」
謝る気はあるが、”土下座”には納得いかないスカル

「いいから土下座しやがれ!」
銃に姿を変えたレオンを向けたリボーン

「あぁ!?リボ兄!私なら平気だから、銃を降ろして!!」

「ダメだぞ。」

「スカル、さっさと土下座して謝ってこい!コラ」
そう言って、スカルをソラの前まで蹴飛ばした。

「ああ!?コロネロさんも何してるんですかー!?スカルさん、大丈夫ですか!?」

「ぐぐっ…だ…大丈夫だ…」
そう言いながら起き上がるスカル

「スカル」痺れを切らせたリボーンが低い声でスカルの名を呼ぶ。

「わ…解りました!解りましたよ、リボーン先輩!!土下座します!!……ごめんなさい!!」
リボーンの声に怯えながらも、土下座して謝ったスカル

「初めからさっさと謝りやがれ。」
そう言いながら、レオンを元の姿に戻していたリボーン

「まったくっ…小さい子供を巻き込むなど、何を考えているんだ!?スカル」

「す、すみません!ラルの姐さん!!」

「しかし……ホントにこいつの事気に入ってんだな?リボーン」

「まぁな。」コロネロの問いに即答するリボーン

「そういえばリボーン先輩、今さらですが、こいつ誰ですか?」

「俺の弟子だぞ。」

「何ですとっ!?」

「だからリボーンは怒ってたんだぜ、コラ」

「知らなかったとはいえ、俺の大事な弟子を巻き込んだんだから当然だ。しかも人質にして。」

それを聞いて真っ青になったスカル

「しかし…よくスカルのタコの攻撃を避けれたな?オレが見る限り、余裕の表情で全ての攻撃を回避していたように見えた。」
「確かにな。なぜ攻撃しなかったんだ?攻撃する隙はあっただろ?」
先程スカルのタコの攻撃を回避していた時のソラの様子を思い出しながら言うラルとコロネロ

「……無暗に相手を傷つけたくなかったからですよ。それが人であろうと、生き物であろうとね…」

「この話はここまでだ。そろそろ帰るぞ。」
ソラの様子を見て、この話を切り上げさせたリボーンだった。

リボーンがそう言った後、コロネロ、ラル、スカルはそれぞれ帰っていった。

「ツナ、俺達もそろそろ帰るぞ。」

「あ…うん。じゃあクローム、俺達はこれで帰るよ。」

「うん…おにぎり、ホントにありがとう。ボス…ソラ…」

(凪姉、嬉しそう……)
分かりにくいが、良く見ると、クロームが本当に嬉しそうな表情をしているのが解ったソラ

黒曜ランドを後にし、ツナ達は家へと帰っていった。


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今回はスカルの試練です!!
アニメではツナが母親の奈々さんに頼んでおにぎりを作って貰ってましたが、
そのおにぎりをツナとソラが2人で作った事にしちゃいました。
その後の黒曜での出来事はほとんど変化なく、少しオリジナルを入れました。
それでは標的56へお進み下さい。

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