翌日ーーツナの部屋ーー
「う…う〜ん…」
目を覚ましたソラ
目の前には、自分を抱きしめたまま眠るツナの姿があった。
「あ…(そっか、そういえば昨日はパパと寝たんだった……)」
ツナを起こさないように気をつけながら起き上がったソラ
(もう朝か……おばあちゃん、もう起きて朝ご飯の用意、してるよね…?)
そう思い、ベッドから降りて着替え始めた。
着替え終わり、ハンモックの方を見上げたソラ
「リボ兄、起きてるよね?」
「なんだ?」
「ありがとう。」
そう言ってから部屋を出て行ったソラ
「フっ…」笑みを浮かべるリボーン
ソラが何に「ありがとう」と言ったのか、リボーンには解っているようだった。
ーー台所ーー
「奈々さん、おはようございます。」
「あら、ソラちゃん!おはよう、早いのね!」
奈々は朝ご飯の用意をしている所だった。
「あの、何か手伝わせて下さい。」
「あらっ…お料理出来るの?」
「はい、料理は一通り出来ます。」
「火を使った料理も?」
「はい、大丈夫です。」
「じゃあ……ハムエッグをお願いしていいかしら?」
少し考え込んでからそう言った奈々
「解りました!」
その後、自分が届くようにと奈々が椅子を動かしてくれたので、お礼を言ってからその上に乗り、
ハムと卵はもう用意されていたので、そのままハムエッグを作り始めたソラだった。
作ってる間、寝ていた他のみんなが次々と起き、全員分出来あがる頃には、全員席についていた。
「ソラちゃん、居ないと思ったら、もう起きてたんだね。」
自分の前にハムエッグを乗せた皿を置いてくれてるソラにそう言うツナ
「うん。綱吉さん、ぐっすり寝てたから起こさなかった。」
「別に起してくれても良かったのに…っていうか起してくれたらどんなに助かる事かっ…(リボーンに起こされるよりは何倍もマシだよ!)」
(ああ…リボ兄に無茶苦茶な起こし方されたくないんだね……)
読心術が使える訳ではないが、ツナが今心の中で思ってる事が手に取るように解ったソラだった。
「ソラちゃんが朝ご飯を作るのを手伝ってくれて助かったわ〜!!」
そう言いながら、ソラの頭を撫でる奈々
「い…いえ。泊めて貰ってる身なので、これくらいは…」
奈々にそう言われて、少し照れくさそうにするソラ
「ウフフっ…そんな気を使わなくても良かったのに。でも、ありがとう!助かったわ、本当に。またお願いしていいかしら?」
「はい、手伝わせて下さい。」満面の笑みで即答するソラ
「さっ、席について。ソラちゃんはフゥ太君の隣の席よ。」
フゥ太の隣の席に座ったソラ
「はい、みんな!どうぞ召し上がれ。」
『いただきまーす!!』
そう言って、それぞれ食べ始めた。
「いただきだもんね!」
「ああ!ランボ、ダメ!」
「ん?」
ランボとイーピンの事が気になり、食べるのを止めて2人の方を見たソラ
「もう食べちゃったもんねー!」
どうやらランボがイーピンのハムエッグを一口で全部食べてしまったようだ。
「困ったわね〜…もう卵ないのよ。」
右頬に手を当てながら、困った顔で言う奈々
「イーピンちゃん、私のハムエッグを半分あげるよ。」
「イーピン、僕のハムエッグ半分あげるから。」
ソラとフゥ太が同時にイーピンにそう言った。
自分と同じ事を言ったのに驚き、お互い顔を合わせた。
「「……ぷっ…アハハハっ…」」
少しの間見つめ合っていたが、突然笑い出したソラとフゥ太
「じゃあ、僕とソラのを半分ずつイーピンにあげようか?」
「そうですね。それで元の1人分になりますし。」
「決まりだね!イーピン、僕とソラのハムエッグを半分ずつあげるね。」
「わぁ!謝謝!」2人に半分ずつ貰えて嬉しそうにするイーピン
「はい、リボーン」リボーンに食べさせるビアンキ
「あーん」食べさせてもらっているリボーン
「今日は天気が良いみたいよ。後でショッピングにでも行きましょう?」
「ああ、いいぞ。」
(なんか懐かしい、この感じ…)
久しぶりに自分の家で朝を迎えて懐かしい気持ちになるツナ
「ママン!おかわり!!」おかわりするランボ
「はい、はい。」
(俺…元の世界に戻ってきたんだな。)
10年前に戻って来た事を実感していたツナ
「おい、ツナ」
そんなツナに声を掛けたリボーン
「あっ……な、何?」
「ボーっとしてないで早く食べろ。遅れるぞ。」
「え?遅れるって…どこかに行くの?」
「決まってるだろ、学校だ。」
その後、急いでご飯を食べ始めたツナ
ーーツナの部屋ーー
ご飯を食べ終えた後、急いで2階に上がり、部屋で学校へ行く準備をしていたツナ
「何?リボ兄」
ご飯が終わった後、2階に来るように言われていたソラがリボーンに話しかけた。
「ああ、これを渡しとこうと思ってな。」
そう言いながら、オレンジ色の携帯をソラに差し出したリボーン
「携帯?」
「ああ、使い方は知ってるだろ?」
「そりゃあ知ってるけど…」
「もし俺やツナの傍に居ない時にアルコバレーノの試練が起きた時、連絡出来なかったら困るだろ?」
「えっ!?アルコバレーノの試練見るの!?」
ツナが“アルコバレーノの試練”と聞いて驚きの声を上げた。
「ああ、そうだぞ。」
「リボーン、お前ソラちゃんに何言っちゃってんの!?」
リボーンが見るように言ったと思ったツナ
「俺は何も言ってねぇぞ。ソラが自分から見たいって言ったんだ。」
「えっ…そうなの?」リボーンからソラに視線を移すツナ
「うん。アルコバレーノの試練をちゃんと見届けたいんだ。」
「そ…そっか。でも…大丈夫?」
この時代のアルコバレーノ達に会ってつらくないか心配するツナ
「大丈夫だよ。確かに全然つらくない訳じゃないけど……綱吉さんやリボ兄もついてるから…」
「フっ…あいつらには俺から上手く言っておくぞ。お前はそれに合わせてくれ。」
「解った。」そう言い、携帯を受け取ったソラ
「携帯、その色にしたが…気に入ったか?」
「うん、私が一番好きな色だから嬉しい!ありがとう、リボ兄!!」
リボーンから受け取ったオレンジ色の携帯を大事そうに持ちながら、お礼を言うソラ
「どういたしましてだぞ。」
ソラに喜んでもらえて満足なリボーン
「あ……時間、大丈夫?」
「えっ…あ!やべっ!!遅れちゃう!!」
ソラに言われて時間を見たツナが慌てだし、鞄を素早く取って下へと急いで降りていった。
「リボ兄」
「ん?」
「たぶん気付いてるだろうけど……ラル姉、昨日から並盛にもう来てるよ。今も近くに居る。」
「よく解ったな。ラルの奴、かなり気配消してるぞ?俺でも気付くかどうか解らないくらいな。」
「嫌でも解っちゃうから……僅かに気配があれば、どんな気配でも感じ取っちゃう。」
困ったような、悲しそうな表情で言ったソラ
「すまねぇ、嫌な事思い出させちまったか?」
「ううん、平気。リボ兄、早く降りないと、パパ行っちゃうよ?」
「ああ。おめーはどうすんだ?」
「ランボ兄達と遊んでるよ。」
「そうか。もし学校に居る間に誰か来たら知らせるぞ。」
「うん。」
「それと、俺の番号入れておいたから、いつでも電話していいぞ。」
「うんっ、ありがとう!」
満面の笑顔でお礼を言うソラ
「フっ…んじゃ行ってくるぞ。」
ソラのその笑顔を見れて満足そうな笑みを浮かべたリボーン
「いってらっしゃい!」
リボーンも部屋を出て降りていった。
「……ありがとう、リボ兄」
物心ついた頃にはもうリボ兄は傍に居た…
パパやママがどちらも傍に居ない時、任務がない時はほとんどの時間を一緒に過ごしてくれた。
いっぱい遊んでくれて……たくさん優しくしてくれて……いろんな事を教えてくれた……
私にとってリボ兄はもう家族も同然……本当のお兄ちゃんのように思ってた。
「だから、優しくされ過ぎると、別れがつらくなっちゃうよ。リボ兄も…パパも…優し過ぎるよっ…」
未来の2人はもう死んでいて会えない……だからこそつらいのだ。
優しくされるたび、2人が死んだのは夢なんじゃないのか?……っと何度も、何度も思った。
だが、死んだのは紛れもない現実……夢なら覚めて欲しいと何度願っただろう…?
ソラはしばらくの間、ツナの部屋で1人静かに泣いていた。
ーー昼前ーー庭ーー
ソラは今、ランボ、イーピン、フゥ太と一緒にボールで遊んでいた。
「はい、ランボ!」
そう言いながら、ボールをランボの方に投げたイーピン
「よし、こーいっ!!」
だが受け止める事が出来ず、顔面に直撃したランボ
『ランボ!?/ランボ君!?』
イーピン、フゥ太、ソラが心配してランボに駆け寄った。
「が・ま・んっ」
泣くのを我慢しようとしていたランボ
「大丈夫?ランボ君」
「だ…大丈夫だもんねっ」
「ホントに?」
「ランボさんは我慢の子だもんね!だからへっちゃらなんだもんね!」
「そっか。ランボ君、我慢出来てえらいね!」
そう言いながら、ランボの頭を優しく撫で始めたソラ
「…オレっち、えらい?」
「うん。」
「へへっ……もっと撫でて?」
「いいよ。」
「……ランボが……泣いてない…っていうか、素直っ!?」
ランボがこんなに素直に甘えてる所を見た事がないので驚くフゥ太
イーピンはソラに撫でて貰ってるランボを無意識に羨ましそうに見ていた。
「ん?……イーピンちゃん、こっちにおいで?」
イーピンの視線に気付いて手招きしたソラ
イーピンは大人しく言う通りに傍まで来た。
すると、ランボを撫でたまま、もう片方の手でイーピンを撫で始めた。
最初はびっくりするも、すぐに大人しく撫でられて嬉しそうにしていたイーピンだった。
「イーピンまで……凄く懐いてる……」
「あらっ、凄いわね〜」
「あっ、ママン!どうしたの?もうお昼ご飯?」
奈々が来た事に気付いたフゥ太
「ええ、そうよ。みんな、お昼ご飯が出来たから手を洗ってらっしゃい。」
『はーい!』
ランボ、イーピン、フゥ太は元気良く返事をして手を洗いに向かった。
(みんな早っ…)嵐のように去って行った3人を見て呆気に取られていたソラ
「ソラちゃん、どうかした?」固まってるソラに気付いて声を掛けた奈々
「あっ…いえ、何でもないです!」そう言ってから、ソラも手を洗いに向かった。
「う〜ん…あの子、誰かに似てるような気がするんだけど……誰だったかしらね〜?」
ソラが誰かに似てるような気がしていたが、それが誰かまでは解らなかった奈々だった。
手を洗い、奈々が用意してくれたお昼ご飯を食べた後、ソラは超直感で何かを感じ取り、奈々に一言声を掛けてから出掛けて行った。
出掛け際に、「オレっちも連れてけー!!」と言い、着いて行こうとしていたランボをフゥ太やイーピンに止められている姿があったとか。
ーー並盛中ーー校門前ーー
「さて、着いたはいいけど……部外者だから、恭兄に許可取らないと……じゃないと風紀委員の皆さんを相手にしないといけなくなる。
それだけは避けたい…なるだけ戦いたくないし。とりあえずリボ兄に電話しよ。」
ポケットから携帯を取り出し、リボーンに電話を掛けたソラ
呼び出し音が2回鳴った後、リボーンに繋がった。
『どうした?ソラ』
「リボ兄、恭兄の携帯番号知ってる?」
『ああ、知ってるぞ。』
「今すぐ教えて?」
『雲雀の番号は……』
リボーンに雲雀の携帯番号を教えて貰い、お礼を言って切った後、続けて雲雀に掛けた。
呼び出し音が2回鳴った後、雲雀に繋がった。
『誰?』不機嫌な声の雲雀
「ごめん、もしかして恭兄…今寝てた?」
雲雀の不機嫌そうな声を聞き、昼寝中だったのかな?と思ったソラ
『ん?この声…もしかしてソラ?』
「うん。リボ兄に聞いて恭兄の番号を教えて貰ったんだ。もし今寝てたなら起こしちゃってごめんね?」
『君なら別に構わないよ。それで…僕に何か用?』
先程の不機嫌な声ではなく、優しい声で問う雲雀
「うん。あのね、屋上に行きたいんだけど、並盛中は部外者立ち入り禁止じゃない?
だから恭兄に許可を貰おうと思って電話したんだよ。入っていい?」
『いいよ。今どこに居るの?』
「校門前。」
『なら、少しだけそこで待ってなよ。今からそっちに副委員長を行かせるから。そうすれば他の風紀委員に絡まれる事はない。』
「解った。ありがとう、恭兄」
『どういたしまして。…ねぇ、ソラ』
「何?」
『屋上での用事が済んだら、応接室に来なよ。』
「いいの?」
『うん、良いよ。』
「じゃあ用事が終わったら行くね。」
『うん、待ってるよ。』
電話を切り、その場で少し待ってると、この時代の草壁がやって来た。
リーゼントの髪型に口に草を咥え、学ラン姿の草壁がこちらに向かってきていた。
(哲兄……昔もあまり変わらないような気が……)
若い草壁のはずなのに、あまり変わりがないような気がしたソラ
「あなたが委員長が言っていたソラさんですね?」
そう言いながら、ソラの前まで来た草壁がしゃがんで視線を合わせた。
「はい、そうです。」
「屋上へ案内するように言われています。こちらへ…」
「ありがとうございます。」
ソラはそのまま草壁に着いて行った。
ーー屋上へ続く階段前−−
「この階段を登れば屋上です。」
「ここまで案内してくれてありがとうございます。」
頭をぺこりと下げたソラ
「いえ。他の風紀委員には今からあなたの事を伝えておきますので、安心して下さい。」
「ありがとうございます。」
「では…」
草壁を見送ってから、階段を上がったソラ
ーー屋上ーー
ツナ、獄寺、山本、了平が揃って話し合いをしていた。
「もうお昼休みになっちまいましたね。」呟く獄寺
「極限に何も起きぬのか…アルコバレーノの試練とやらはどうなったのだ!?」
腕を組みながら呟く了平
「小僧は何て言ってんだ?」
「あ…うん。リボーンにも、いつ、誰が来るか解らないらしいんだ。」
山本の疑問に答えるツナ
「アルコバレーノの試練は日々過ごす日常の中で、突然試練に突入する……だから、この1週間は気を抜かない方が良いよ?」
この場に居ないはずの声が聞こえてきた。
「え!?ソラちゃん!?」
「なんで学校に居るんだよ!?」
「っていうか、良く入れたのな…」
「おお!ソラではないか!」
ソラの登場にツナ、獄寺、山本、了平は驚いていた。
「そんなに驚かなくても……いや、驚かない方が無理だよね、ここ中学校だし。」
そう呟きながらツナの傍まで来たソラ
「ソラちゃん、風紀委員には見つからなかったの!?」
「ああ、それは大丈夫。ちゃんと恭兄に連絡して許可貰って入ってるから。」
心配してるツナの問いにそう答えたソラ
「へぇ…あの雲雀が許したのか。良かったな!入れて。」
「おお!あの雲雀が良く許可したな!極限に驚きだぞ!!」
入れた理由が解って納得していた山本と了平
「うっせぇぞ!芝生頭!!」怒鳴る獄寺
「んで、ソラの言うように、試練の期間は1週間なんだよな?」
本題に戻した山本
「ん〜…昨日1日経っちまってるって事は……1日に1つの試練とは限らないって事っスね。」
「うん…(獄寺君の言う通りだ。でも、アルコバレーノ達はいつ現れるんだろう…?)」俯くツナ
その時、ツナを襲う何者が居るのに気付き、ツナをその場から退かし、武器を構えた3人の守護者。
もちろん、ソラも気付いており、左太股のガンホルダーから銃を取り出して、構えていた。
守護者3人に押されて後ろに倒れたツナが起き上がった時、自分がまさに今居た場所に、銃痕があるのに気付き驚くツナだった。
「合格だな。」
ツナ達は突然上から聞こえた声に視線を向けた。
そこには濁った灰白色のおしゃぶりを持ち、ゴーグルとマントを身に付け、ショットガンを手に持った赤ん坊が居た。
「アルコバレーノ!?」叫ぶツナ
(あれが、10年前のラル姉……リボ兄達と同じだ…)
ソラはラルが赤ん坊の姿なのを見るのは初めてだったが、気配でラルだと初めから気付いていた。
ツナの上に飛び降りてきたラル
「しかし、お前だけは失格だ。」
「え?」きょとんするツナ
「情けない」と言いながら、ツナのネクタイを左手で掴み、右手でツナの両頬に往復ビンタをしていた。
「てめぇ!何しやがる!?」怒鳴る獄寺
(……ちっちゃくても、スパルタなのは変わらないんだね…)
銃を仕舞いながら、その様子を黙って見ていたソラ
「えっ……この感覚は……もしかしてラル!?」
往復ビンタでやっとラルだと気付いたツナ
「え!?ラル・ミルチ?このちっちゃいのがっスか?」
獄寺が“ちっちゃい”と言ったのに、カチンと来たのか、獄寺の右膝を蹴ったラル
「あいだぁー!?」痛がる獄寺
ツナや獄寺だけでなく、山本や了平も驚きの表情を見せていた。
(なんで気付かないのかな…?向こうのラル姉と同じようにゴーグルと濁ったおしゃぶりを身につけてるのに……
了兄は解らなくても仕方ないけど。)
ラルだと全然気付いていなかった4人を見て呆れていたソラだった。
「ラルがアルコバレーノの試練の相手なの?まさか、今のが第1の試練!?」
「ちげーぞ。」
「え?」
屋上の入り口にリボーンが居た。
「ラルはアルコバレーノの試練の立会人だ。」
そう言って、ツナとラルの傍まで飛んだリボーン
「ラルが立会人!?」驚くツナ
「そうだ。オレはアルコバレーノのなりそこないだからな。お前がボンゴレのボスとして、大空のリングを持つに相応しいかどうかを試すのが
アルコバレーノの試練……それをお前がちゃんとクリアー出来るか見届けに来た。」
ゴーグルを外しながら、ツナ達にそう説明するラル
(やっぱりラル姉が立会人か。)
ソラはラルが立会人だという事に全然驚いていなかった。
それどころか、ラルが立会人だと思っていたようだった。
「しかし、こんな情けない奴が本当にボンゴレの10代目なのか?」
(ラル姉、はっきり言うね……解っちゃいたけど…ん?この気配は……)
誰か知ってる人の気配がこちらに向かってきているのに気付いたソラ
「じゃあ、最初のアルコバレーノの試練は誰だ!?」
「それは俺だぞ!コラ」
獄寺の問いにリボーンやラルではなく、突然上から聞こえてきた声が答えた。
全員が上に視線を向けると、そこには青色のおしゃぶりを持ち、金髪碧眼でつり目で、迷彩柄のバンダナと迷彩服を着たコロネロが、
相棒である鷹の「ファルコ」に頭を掴んでもらった状態で浮いていた。
(コロ兄とファルコだ……)
「コロネロ、貴様っ」
「ラル!」
「どうしたの!?2人とも!」
2人の様子を見て心配したツナ
ファルコから降りたコロネロはライフルを構えた。
コロネロが構えたと同時に、ラルもコロネロに向けてショットガンを構えていた。
「何だ!?」
「仲間割れかよ!?」
山本や獄寺も只事じゃないと思った。
少しの間、睨みあっていたが、お互い持っていた武器を手放した後、そのまま取っ組み合いを始めた2人だった。
(ラル姉とコロ兄…顔を合わせると、必ず初めに取っ組み合いが始まるんだよね……仲はとっても良いのに…)
10年後の2人もそうだった事を思い出し、呆れていたソラだった。
「なんで俺ばっかり……」地面に倒れ、涙を流していたツナ
どうやらツナは、コロネロとラルに踏み台にされてしまったようだ。
「綱吉さん、大丈夫?」
「あ、うん…大丈夫だよ。」そう言いながら起き上がったツナ
しばらくの間、攻防が続き、コロネロが勝つと思われたその時、勝ったと思い、笑みを浮かべたコロネロ
「甘いな!」
「何!?」
油断したコロネロの隙を狙って形勢逆転し、コロネロを拘束したラルが勝った。
「戦場で油断するなと教えたはずだ。」そう言いながら、拘束していたコロネロの腕を離したラル
「へへっ…少しは女らしくなってるかと思ったんだが…相変わらずお転婆だな、コラ」
「貴様、ふざけるな!!」
「試練の立会人か?どんな理由にしろ、また会えて嬉しいせ。」
「!……まさか、お前が最初のアルコバレーノの試練の相手とは思わなかった。」
コロネロの言葉を聞いて少し顔を赤らめ、コロネロから視線を外しながらそう言ったラル
(ラル姉…素直に言えばいいのに……未来でラル姉は、コロ兄の事でいっぱい後悔してた……だから後悔なんてして欲しくないのに……)
素直じゃないラルを見て、心配していたソラ
ラルからツナに視線を移したコロネロ
「俺はアルコバレーノとして、お前の戦闘力を試させてもらうぞ!コラ」
「戦闘力!?」
「ここで戦闘するって言うのか!?」
叫ぶツナと獄寺
「いや、いくら何でもここじゃ無理だ。」
「学校がボロボロになるな。」
リボーンとラルがそう答えた。
「え!?それは困るよ!!(そんな事になったら、雲雀さんに噛み殺される!?)」
(こんな所で戦ったら恭兄が怒るもんね。)
学校がボロボロにでもなったら、雲雀が黙ってない事を良く知っているツナとソラ
「放課後、並盛山で待ってるぞ!コラ」
コロネロは再びファルコに頭を掴んでもらって上に飛び上がった。
「コロネロ…」見上げるラル
「お前もそこに来るのか?」
「!…あ…当たり前だろ!?オレは立会人だ!」
「そうか。」
ファルコに運んでもらいながら、その場を去っていったコロネロ
「ラル…ラル!」
未だ上を向いたままのラルに声を掛けたツナ
「あ……という訳だ!放課後、並盛山に来い!そこで第1の試練を行う!!」
ツナの声に気付き、上に向けていた視線をツナに移してそう言った。
「うん。」頷くツナ
ツナが頷いたのを確認すると、ラルもこの場を去っていった。
「おい、ツナ」
「え!」
「コロネロの試練は簡単にクリアー出来ねぇぞ。あいつは戦闘のプロだからな。
イタリアで敵対プロファミリーのヒットマン、1375人を1人で倒した程の男だぞ。」
「えぇ!?1375人!?」驚きのあまり叫ぶツナ
「そんな多人数、本当に数えたんですか!?」
獄寺の問いに、自分とラルが数えたから間違いないと言ったリボーン
「マジで最強なんだな。」驚きを隠せない山本
「さすが師匠!」コロネロの凄さに感激する了平
「でも、絶対にこの試練をクリアしないといけないんだ!」
「安心して下さい、10代目!!戦闘なら俺がついてます!」
「そうだぜ、ツナ!小僧の話じゃ、俺達の試練でもあるみたいだからな!」
「おお!そうなのか!?じゃあみんなで試練突破だーー!!」
獄寺、山本、了平がそれぞれ気合いを入れていた。
「ありがとう、みんな!!」
守護者3人の心強い言葉に嬉しくなるツナだった。
「ソラ、大丈夫か?」心配するリボーン
「うん…大丈夫。」
「やっぱ行くのやめとくか?」
「ううん、絶対行く。」首を横に振るソラ
「そうか。なら、放課後ツナ達と一緒に並盛山に来いよ?俺は先に行ってるからな。」
「うん。」
ツナ達から少し離れた所で話していたリボーンとソラだった。
ーー応接室ーー
あの後、チャイムが鳴り、ツナ達とは放課後校門で待ち合わせする事でその場は解散し、
ソラは雲雀との約束通り、応接室へ来ていた。
今はソファーの上に座って、雲雀が用意してくれた紅茶とケーキををご馳走になっていた。
「へぇ……放課後、並盛山で第1の試練をやるんだ?」
ソラが座っているソファーとは反対側に座って紅茶を飲んでいた雲雀
「うん。」
「言っとくけど、僕は行かないよ。」
「うん、解ってる。でも、試練によっては恭兄も行かないといけない時があるよ。」
「ふぅ〜ん…」アルコバレーノの試練には興味がなく、どうでもいいという顔をしていた雲雀
「恭兄…お願いだから呼ばれた時は行ってね?でないと、アルコバレーノの印が揃わないから。」
「気が向いたらね。」
「いや、ホントに行ってね!?」
本当に気が向かないと行きそうにない雲雀を見て、必死にお願いするソラ
放課後になるまで、応接室で雲雀と過ごしていたソラだった。
今回は10年前のラルとコロネロが登場する所です!
試練開始前の様子を、オリジナルを少々入れて書きました!
屋上でラルが登場する所からにするか、それとも放課後の時間になるまで
他の場所に居て、リボーンに連絡を貰って並盛山に行かせるか。
そして、第1の試練開始までソラにはどこで過ごして貰うか随分悩みましたよ。
次はいよいよ試練開始です!!
それでは標的54へお進み下さい。