白蘭を倒すために…

「………『陽色の姫君』は……ソラちゃん、だったのかい?」
少しの間、呆気に取られていた正一だったが、すぐに正気を取り戻してソラに聞いた。

「うん、そうだよ。驚いた?」

「そりゃ驚くよ!!だって綱吉君からは、『陽色の姫君』はボンゴレの絶対の味方…っとしか聞いてなかったんだから!!
君が『陽色の姫君』だなんて、全然知らなかったよ!!」

「そっか。ボスは何も言ってなかったんだ…」

「ソラちゃん?」正一はツナの事を“ボス”と言っているのを聞いて不思議に思っていた。

「ね…ねぇ、どういう事なの!?ソラちゃん、この人の事…知ってるの!?」
ツナがソラに話しかけてきた。

ツナだけでなく、リボーン達も気になっているようだった。

「うん、知ってるよ。だって私、ずっと前にボスに連れられて正一さんと会ってるから。」
ツナの問いにそう答えたソラ

「お…俺に連れられて…?」

「うん。今思うと、あの時も白蘭の事について話し合う為に会ってたんじゃないか?って思ってるんだけど…どうなのかな?」

「ああ、うん…そうだよ。あの時は本当に驚いたよ。まさか、綱吉君が子供を連れてくるなんて思ってなかったから……」

「アハハハっ…あの時の正一さんの驚いた顔、面白かった!!」
その時の事を思い出したのか、笑い出したソラ

「わ、笑わないでくれよ!?…っていうか、今すぐ忘れて下さい!!お願いだから!!」
あの時の事を思い出して恥ずかしかったのか、すぐに忘れて欲しいとソラに言う正一

「無理。」

「即答!?ん…?ちょっ…ちょっと待って!!ソラちゃん、僕と会った時の事、覚えてるの!?」

「覚えてるよ、全部。」

「………ホ…ホントに?」

「うん、ホント。」

「『本気』と書いて、マジなの?」

「『本気』と書いて、マジです。」

「あの〜…ソラちゃんがあなたと会った時の事を覚えてるの、そんなにおかしいんですか?」

「………綱吉君、僕がソラちゃんと初めて会ったのは3年前だ。」
言おうか、言わないか少し迷った正一だったが、意を決してツナに告げた。

「えっ!?」

「つまり、当時ソラちゃんは3歳だったんだ。しかも、僕と会ったのは、たったの2回だけ。」

「な…なんだってーーっ!?」絶叫するツナ

『ほぉ…3歳の時の事を覚えてるのか。すげーな、ソラ』
ポーカーフェイスをなんとか崩さず保ちながら、冷静にそう言うリボーン

「嘘だろ!?」信じられない表情をする獄寺

この場に居る全員が驚いていた。

「……そんなに覚えてるの、変?」
みんながあんまりにも驚いているので、そう聞いたソラ

「い、いや、そんな事はないよ!でも、3歳の時で、しかもたった2回しか会った事ない人の事を覚えている人は
滅多に居ないから驚いただけだよ!だから別に覚えていても変なんかじゃないからね!?」
ソラの問いに慌てながらも、そう答えていた正一

「……私が覚えていたのは、ボスに言われたからだよ?」

「えっ…綱吉君に?」

「うん。正一さんと初めて会う前に言われたんだ。正一さんの事を覚えていて欲しいって……
でも、会った事は時が来るまで誰にも話しちゃいけないとも言われた。」

「そうだったんだ……綱吉君が…」

「今だから解る。あの時ボスが私を正一さんに会わせた理由が。」

「理由?」

「うん。ボスがあの時言っていた“時”とは今……正一さんが自分達の味方だという証人として、会わせたんだよ。」

「証人…」

「そうだよ。あんなに優しい正一さんがミルフィオーレの幹部だなんて、ずっと信じられなくて……ホントに倒さなきゃいけないのかな?って
何度思ったか……だから正一さんが味方だってはっきり解って安心したよ。」
満面の笑顔を正一に向けながらそう言ったソラ

「ソラちゃん…」

「………また会えて嬉しいよ、正兄!!」
少し間を置いてから、座ったままの正一の首に腕を回して抱きついたソラ

「………大きくなったね…君の成長はいつも綱吉君から聞いてたよ。ずっとまた会えるのを楽しみにしてた。
僕の事、覚えていてくれて…ありがとう…ソラちゃん」
ソラが抱き着いてきたのに驚いていたが、すぐに抱きしめ返した正一

ソラと正一の会話を黙って聞いていたツナ達

(この時代の俺が、ソラちゃんと入江さんを…会わせた…?)
心の中で呟くツナ

『なるほどな。それで入江の事を知っていたのか。』
ソラが正一の事を知っていた理由が解ったリボーン

少しして正一から離れたソラ

「正兄、話の続きを…」

「うん。…君達がここに辿り着く事が、白蘭さんを倒すための1つ目の賭けなんだ。それを第1段階だとすると、クリアすべき第2段階があるんだ!!」
ソラに頷いて見せた後、本題に戻った正一

「え!?まだ戦うの?」

「いや、違うよ。君達にはしばらく傷を癒してもらうつもりだ。この第2段階次第だけど…」
ツナの問いにそう答える正一

『何なんだ?その第2段階って。』

「聞いてるだろ?今日、全世界のミルフィオーレに総攻撃を仕掛ける作戦に出るって。」

「あっ…そういえば…」

『それに合わせて、ツナ達もここへ突入したんだからな。』
ツナの後に続けてそう言ったリボーン

「その総攻撃が失敗すると、全ては一気に難しくなる…1番の鍵となるのは、イタリアでの主力戦だ!!」

「イタリアの主力戦?それってボンゴレ連合ファミリーと、ボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーが戦ってる所だね。」

「なぁ!?あのヴァリアーが!?」叫ぶツナ

「ソラちゃん…君、どこまで今回の作戦の事知ってるの?」

「全部。」正一の問いにそう答えたソラ

「ぜ…全部って……どうやって?」

「特権行使。」

「あっ…そっか。でも、あんまり行使し過ぎて欲しくないって、いつも綱吉君が言ってたよ?」

「うん、知ってる。でも、今はそうも言ってられないよ。」

「何か…あったのかい?」

「あったって言えば、あったかな?」

「おい!?いつまで俺達を閉じ込めてるつもりだよ!?こっから出せ!!」
獄寺が正一に向かって、そう叫んだ。

「あっ…ご、ごめん!!今すぐ解放するよ!!」
そう言って立ち上がった正一

「ちょっと待った!」

「えっ?」

「チェルペッロの2人が先。」
そう言って、チェルペッロの2人を指すソラ

「あっ…それもそうだね。」
チェルペッロの2人の事をソラに言われるまですっかり忘れていた正一だった。

「あっ、俺も手伝います。」

「ありがとう、綱吉君」

「ウチとミニモスカも手伝う。」

正一、ツナ、スパナ、ミニモスカは麻酔銃で眠ってるチェルペッロの2人をこの部屋から移動させた。
その後、緊急用のベットを用意してから、みんなが入ってるカプセルを開けて、解放した。

「み…みんな!みんな、大丈夫!?」
装置の中に入っていたみんなに声を掛けたツナ

「10代目、お怪我は!?」
装置から出てきた獄寺はすぐにツナの所へやってきた。

「う…うん。獄寺君は?」

「さぁ、怪我人は緊急用のベッドへ…」
正一は怪我人をベットに寝かすように言う。

負傷している了平と山本は草壁が運んで緊急用のベッドへ…
寝ているチビっ子の2人をクロームがランボを…ラルがイーピンを抱いていた。

(……未だ目を覚ましてないのは、了兄、タケ兄、ランボ兄、イー姉の4人……了兄とタケ兄は負傷していて、
ランボ兄とイー姉は寝てるだけみたいだね。)
未だ目を覚ましてない4人を見てそう心の中で呟いていたソラ

「おい、入江!」

獄寺の大きな声を聞き、視線を聞こえた方に向けたソラ

正一に今にも殴りかかりそうな獄寺と雲雀の姿があった。

「一発殴らせろ。訳ありだったとしても、腹の虫が治まらねぇ!」
「僕が先だよ。」
獄寺は右拳を、雲雀は右手に持ったトンファーで殴ろうとしていた。

「ちょっ…ちょっ君達、ちょっと待ってよ!?暴力反対…」

「知らないね。」
「俺が先だ。」
殴る気満々な雲雀と獄寺

「うあぁぁっ…そ、そんな〜!!……また、膝が…」
叫んだ後、その場に座り込んでしまった正一

「正兄を殴らないで!!」
そう叫びながら、正一と雲雀、獄寺の間に割って入って来たソラ

「なっ!?てめっ…」

「いくら腹の虫が治まらないからって、正兄を殴ったりしたら私が許さない!」

「んだとっ!?」

『まぁ、お前ら』

「リボーンさん!」
「ん?」
それぞれ反応する雲雀と獄寺

『入江にはまだ聞かなきゃなんねぇ事があるだろ。…白蘭の能力ってのはいったい何なんだ?』

「あっ…そうだよ、白蘭の能力って何なの?」
リボーンの言葉を聞いて思い出したソラも正一に聞く。

「説明しろよ。」

「う…うん。」獄寺にそう言われ、返事を返しながら立ち上がった正一

「一言で説明するのは難しいが、能力自体は極めて限定的な状況でしか使えないものなんだ。」

「限定的…?」呟くツナ

「だが、この時代に起きているあり得ない事の多くが、白蘭さんのその能力に起因している。」

「ありえない…事…?」呟くソラ

その時、イーピンが目を覚ました。

「ここ、どこ?」

「あっ、イーピン!目を覚ましたんだね!」

「あっ!ツナさん!!」

「イーピン、どこも怪我ない?」

「イーピン、どこも怪我してない!」

「良かった!」

ラルがイーピンを降ろした。

「あっ…謝謝!!」

「気にするな。」
イーピンにそう答えてから、ベッドの傍に移動して座り込んだラル

「それで…そのありえない事って何?」
イーピンの無事な様子を見た後、正一に視線を戻したソラ

「その前に確認させてくれ。ソラちゃん、君は六弔花のメンバーを全員知ってる?」

「ううん、嵐と雲のマーレリングの持ち主だけは知らない。」

「そうか……実は、ミルフィオーレの六弔花の1人で、嵐のマーレリングを持つのは、ボンゴレ暗殺部隊ヴァリアー所属、ベルフェコールの兄なんだ。」

「何!?」
驚きの声を上げたせいか、ノン・トゥリニセッテの影響で弱ってる体に痛みが走ったラル

「ラ、ラル!?無理しないでっ…」
ラルに駆け寄ってしゃがんだツナ

「それがそんなにありえない事?」

「我々の資料によると、ベルフェコールの兄は、十数年前に死亡しているはずです。」
ツナの問いにそう答える草壁

「そ、そうだ。しかも、ベルフェコールの手に掛かってな…」
草壁の後にラルが続けてそう答えた。

「なっ!?」

「自分には双子の兄が居たけど、生まれた時から超絶仲が悪くて、顔を合わせるたびに殺し合いしてたって。
その過程で、自分が双子の兄を殺ったって本人が言ってた。」

「んなぁっ!?(まだ子供のソラちゃんに何物騒な過去を話しちゃってんのーー!?)」
ベルの過去の事にも驚きだが、それよりもそんな事をソラに言ったベルが信じられなくて叫んでいたツナ

「死んだはずの奴が生きてたってのか…おい、別人とかじゃねぇのかよ?」
信じられなくて、正一にそう聞いた獄寺

「いや、正一がそう言うんだ…間違いないだろ。」
獄寺の問いに、正一ではなく、スパナが答えた。

「そーいえば、何なんだおめーは!?」

「ご…獄寺君!」

「さっきから10代目の横に居座りやがって!!10代目の右腕は俺なんだからな!!」

「?…何の事?」獄寺の言ってる事が解らなかったスパナ

「え…えーと…この人はスパナさん。キング・モスカにやられた俺を助けてくれたり、いろいろ世話になったんだ。」
獄寺にスパナの事を説明したツナ

「あっ…そうなんですか。」

『まっ…キング・モスカでツナを襲ったのも、スパナだったんだがな。』

「なんだと、てめぇ!?」

「ちょっと待って、獄寺君」
リボーンの言葉を聞いて、スパナに殴りかかろうとしていた獄寺を止めるツナ

「止めないで下さい、10代目!!」

『しかも、入江とは昔からの知り合いだそうだ。』

「何!?てめーら、グルなんだな!?そうなんだな!?」

「獄寺君!…リボーンもなんでそん事言うんだよ。」

『事実だからな。別に隠す事もないだろ。んで?死んだはずの人間が生きている…その事に、白蘭の能力が絡んでるって言うんだな?』

リボーンの言葉に黙って頷いた正一

「白蘭がそんな能力を……」

少しの間黙り込んでいたソラだったが、ふと何かを思い出したのか、正一に話しかけた。

「あっ…そういえば正兄」

「何だい?」

「計画では私はどうなるはずだったの?」

「ああ…雲雀君と行動を共にしてもらうつもりだった、『陽色の姫君』としての君がね。そして、雲雀君がこっそりソラちゃんに
今回の計画の全貌を明かしてくれるはずだったんだよ。」

「えっ…そうなの?」

「君の事に関しては本当に予想外の事ばかりだよ。計画では、『陽色の姫君』は雲雀君と行動を共にすると聞いてたのに、実際は違った。
綱吉君と行動を共にしてるのを見て驚いたよ。しかも、アイリスの死茎隊やあの幻騎士ともまともに戦えてたし。」

「ホントに何も聞いてなかったんだね。『陽色の姫君』の事…」

「うん。君がリボーンさんに修行をつけてもらっている事は知ってたけど、もう実戦に出ている事は聞いてなかったからね。
それに、どれくらいの実力があるのかもある程度しか聞いてなかったから…」

「そっか。」

「あっ!?そういえばソラちゃん、腕とか足はもう痛くない!?」
幻騎士戦の時の事を思い出し、正一の傍に居るソラに駆け寄り、両肩に手を置きながら言うツナ

「う…うん、大丈夫。だいぶ痛みは引いたから……」

「ホントに?」ソラの顔を覗き込むツナ

「ホントだよ。怪我の方はしめつけられたせいでまだ痛いままだけど…」

「………そっか。」ソラの両肩から手を離したツナ

「心配掛けてごめんなさい。」

「あ、謝らなくてもいいんだよ!?無事ならそれでいいんだ!!俺こそごめんね?もっと早く助けられなくてっ…」

「ううん、そんな事ないよ。綱吉さん、助けてくれてありがとう!」
満面の笑顔をツナに向けるソラ

「あ…いや……俺の方こそ、幻騎士の時に助けられてるからお互い様だよ。だから…ありがとう、ソラちゃん」
ツナもソラに満面の笑顔を向けた。

『とりあえず、イタリア主力戦の結果が解るまで、ここで待機だな。ソラ、その間にツナにその包帯を新しいのに替えてもらえ。
幻騎士と戦って、包帯ボロボロになっただろ?』

リボーンにそう言われ、包帯が巻かれてる左腕を見たソラ
確かに包帯がボロボロになっていた。

「ソラちゃん、包帯替えようか?そのままだと傷に良くないし。」

「じゅ…10代目、それでしたら俺が…」

「いや、いいよ。ソラちゃんの包帯は俺がやる。獄寺君は山本やお兄さんの方をお願い。」
獄寺の申し出をキッパリ断り、山本と了平の治療をお願いするツナ

「わ…解りました。」拒否されて落ち込む獄寺

「……良いの?なんか落ち込んでるけど…」

「良いんだ。獄寺君には悪いけど…俺がやりたいんだからさ。ソラちゃん、包帯替えよう?」

ソラは大人しくツナに新しい包帯に取り替えてもらう事にした。

結果を待つ間、しばらくその場で待機する事になったツナ達。

ソラは待ってる間、リボーンにヘルリングの説明をしていた。
リボーンはそれをエスプレッソを飲みながら黙って聞いていた。


時間が経ち、ノン・トゥリニセッテの影響で体調を崩してしまっていたラルも今はベッドに横になって眠っていた。

『たった今、イタリアの主力戦の情報が入ったぞ。』

「えっ!?」
「ホントっスか?リボーンさん」
リボーンの言葉に反応するツナと獄寺

『ああ。』

『間違いありません!ヴァリアーからの暗号通信です。』
ヘッドホンからジャンニーニの声が聞こえてきた。

「それじゃあ…」

『ザンザスが敵の大将を倒したらしい。』

「マジッスか!?」
「さすがです!!」
獄寺と草壁が嬉しそうな声を出す。

(ザンザス…あのザンザスが…)嬉しそうな表情を浮かべていたツナ

「……せっかくのニュースに水を差すようだが、喜ぶのはまだ早いな。」

「なんだと!?」正一の言葉に反応する獄寺

「大将を討っても、兵力には圧倒的な差がある。ミルフィオーレが新しい大将をたてて、長期戦になれば…」

『その心配もねーぞ。敵は、撤退をし始めたそうだ。』

「ってことは、勝利じゃないか!」
リボーンの言葉を聞き、嬉しそうな顔になる正一

『まぁな。』

「これならいける!!ボンゴレの戦力は想像以上だ!!主力部隊を追い込むなんてっ!」

「急に興奮しやがって…」呟く獄寺

「これで、一応こちらの作戦は成功ですね。」
草壁がそう言った。

(さすがザンザスが率いるヴァリアーだね。)
心の中でそう呟きながらも、嬉しそうなソラ

「ボンゴレ」スパナがツナに話しかけた。

「スパナ?」

「良かったな、ボンゴレ。あっちも心配だったんだろ?」

「う…うん。あっ…イタリアの作戦は成功したけど……俺達はこれからどうするんだ?」

「さぁ?」スパナにもどうすれば良いのか解らないようだった。

「ああ、それなんだけど…ちょっと待ってくれ。そろそろ時間なんだ。」

「時間?…まさかっ!?」正一の言った“時間”が何なのか解ったソラ

「あぁん?何の時間だよ?」

正一に何の時間か聞こうとしていた獄寺だったが、その時…「ボフンッ」という音が聞こえ、聞こえた方に視線を向けた。

視線の先は、了平が寝かされていたベッドだった。

「極限にここはどこだぁー!!」
そう言いながら、体を起こした10年前の了平

(この時代の了兄より熱いっ…)
昔の事は聞いて知っていたが、あまりにも熱い男なので驚いてしまったソラ

「あれはっ…」

「10年前のお兄さん!!」

「ん?……生きておったか、沢田!!お前達も京子も行方不明で心配しとったんだぞ!!」
ツナの姿を視界に捉え、ベッドから降りた了平

「しぃ……」騒がしい了平に静かにするように人差し指を自分の唇の前に立てて合図していた獄寺

「お?…おぉっ…タコ頭!!お前も居たのかー!!」

「後で説明してやっから、静かにしてろ!芝生頭!!」
自分の合図を無視して、未だ大きな声を出す了平ブチ切れた獄寺

「なんだと!?タコ頭ー!!」

睨みあう獄寺と了平

「お兄さん…獄寺君も…」なんとか2人を宥めようとするツナ

(隼人兄と了兄、昔は今よりも仲悪かったんだね……)
2人を見て心の中で呟いていたソラ

その時、獄寺と了平の声が聞こえてきたからか、体を起こした山本

「ふぅ……なんだか、賑やかだな…」

「お?」了平が山本も居るのに気付いた。

「や…山本!目が覚めたの!?大丈夫?」

「おぉ…なんとかな。」ツナの問いにそう答えた山本

「たくっ…心配させやがって…」

「アハハハっ……笹川先輩も来たんスね。」

「おぉ…良く解らんが…」

「だから、後で説明してやるっつってんだろ!!」

「後じゃ解らん!!今しろ!!」

「馬鹿に今言っても解るわけねぇだろ!!」

「馬鹿とは何だ!?馬鹿とは!?」

「まぁ、まぁ…2人とも落ち着いて。」

また口喧嘩が始まった獄寺と了平を山本が宥めていた。

「これがタイムトラベル…確かに凄いな…」呟くスパナ

(タケ兄も目が覚めたみたいだね……)
山本が無事目を覚ましたのを見て安心していたソラ

「笹川氏が来たということは…」

「ボンゴレリングが全て揃ったって事だね。」
草壁の後に続いてソラがそう言う。

「そうだ。そのために彼をここへ呼んだんだ。白蘭さんを倒すためには、守護者とボンゴレリングを全て揃え、
それぞれに合った匣兵器を使いこなせるようになる必要があった。」

「えっ…」正一に視線を向けたツナ

「だけど、君はまだ自分の匣を持っていない。」
ツナに向かってそう言った正一

「あっ…」

「おい、何を…」何か言おうとしていた獄寺

丸い装置に近づき、両手をその装置に当てると、起動し始めた。

「装置の中心が!?」
「いったい、何が!?」
丸い装置が光ってるのを見て、ツナと獄寺が呟く。

「この時代のボンゴレのボスから、君へと預かった力だ。心して受け取ってくれ。」

丸い装置の中心から、大空の炎を纏った何かが飛び出し、そのままツナの両手の上に収まった。

ツナの手に収まったのは、大空の炎を纏った匣兵器だった。

(これが…俺の匣…)

「この時代のボンゴレ10代目から、君に託されたボンゴレ匣だ。」

(大空の炎と同じ……オレンジ色の匣だ…俺の…俺の初めての匣兵器…)
左手に持っている匣を見つめていたツナ

「だが、今はまだ、それを使う事は出来ない。」

「え?」

「どういう事だ、てめー!!」

「君の大空のボンゴレリングでは、まだその匣は開けられない。」

「なっ!!」

「君のリングでその匣を開匣するためには、アルコバレーノの7つの印が必要なんだ。」

「!?(アルコバレーノの印!?それって試練を受けろって事…?でも、この時代のアルコバレーノはもう…)」
表情にこそ出さなかったが、内心で思いっきり驚いていたソラ

『そうか。ザンザスとのリング争奪戦に勝利したツナは、正式にボンゴレの次期後継者に認められた。』
正一の言葉を聞いてそう呟いていたリボーン

「…って何なの?ねぇ、はっきり言ってよ!リボーン!」

ツナの問いに答えず、黙っていたリボーン

「ねぇってばっ……リボーン!!」

まったく喋らないリボーンを見て、聞くのを諦めたツナ

「……それで、アルコバレーノの7つの印が必要ってどういう事ですか?」

「君達が持つ、7つのボンゴレリング…そして、アルコバレーノの7つのおしゃぶり、7つのマーレリング…トゥリニセッテを形成するそれら7つは、
切っても切れない深い関係があるんだ。そして、アルコバレーノはトゥリニセッテを守る事を使命とし、身を捧げたも同じ。だからこそ、
ボンゴレリングの真の力を引き出すためには、アルコバレーノの7つの印を貰わないといけないんだ。」

「でも!でも…この時代じゃあ、リボーン以外のアルコバレーノはもう……」

「ああ…だから、それを得るために…」

「得るために…?」呟くツナ

「君達には一旦10年前に戻ってもらう。」

正一のその言葉に衝撃を受けたツナ達。

「10年前に…10年前に戻れるの!?」叫ぶツナ

「マ…マジかよ!?」

「そこでアルコバレーノの試練に打ち勝ち、7つの印を手に入れなければならないんだ。」

「アルコバレーノの試練…?」
「どういう事?」
獄寺とツナにはさっぱり解らない様子だった。

「まずは君達を10年前に帰す事が最優先だ。詳しくは、その準備が全部整ってから話すよ。その間、君達は一度アジトに戻って来ると良い。」

「アジトに?」

「あくまでも一時的にって事だ。そして、タイムトラベルをしてきたメンバーを連れて、まだここに戻って来てくれ。」

「タイムトラベルしたメンバーって……京子ちゃんやハル達も?」

「もちろん、彼女達も一緒だ。君達と行動を共にしてもらわないといけない。」

「じゃあ、京子ちゃん達を過去に帰す事が出来るんだね!?」

「あくまでも、一旦なんだ。」

「えっ!?」

「一旦過去に帰って、試練をクリアしたら、また全員でここに…未来に戻って来てもらわないといけない。もちろん、彼女達も。」

「え!?…な…なんで!?」

「彼女達がこの時代に戻って来なければ、白蘭さんはいずれ必ず気がつく。そうなったら、僕らの計画も全てパアだ。」

「そ…そんなっ……せっかく過去に帰してあげられるのに…」
京子とハルを過去に帰せると聞いて喜んでいたツナだったが、今は苦痛の表情を浮かべていた。

(パパ…)そんなツナを心配そうに見つめていたソラ

「解ってくれ。これは…白蘭さんを倒すために、絶対必要なプロセスなんだ。」

「でも…いきなりそんな事言われても…京子ちゃんやハルに何て言ったらっ…」

『ツナ、今はぐだぐだ言っても仕方ねぇぞ。』

「リ…リボーン…」

「あ…あのっ…骸様は…六道骸は今、どうなっているんですか!?」
今までずっと黙っていたクロームが正一に聞いた。

クロームが抱いていたランボは目を覚ましたからか、今は抱いていなかった。

「!……白蘭さんの話では、骸はミルフィオーレの兵士に憑依していた。それに気付いた白蘭さん自身の手で…」

「そ…そんな…」ツナが信じられないという表情を浮かべていた。

「だが、僕はそう思っていない。…なぜなら、復讐者(ヴィンディチェ)の牢獄の死亡リストに、彼の名前が挙がってこなかったからね。」

「ってことは……」呟くツナ

「生きてるよ。それは間違いない。それに…骸君の事なら、僕よりソラちゃんに聞いた方が良いよ。」

「「えっ?」」きょとんとするツナとクローム

「正兄、ここで私に振らないで欲しい。」

「ごめん、ごめん。でも…実際、骸君の事は君の方が詳しいはずだ。彼は君には何でも話してくれてるって綱吉君から聞いてるよ?」

「別に全部じゃないよ。」
そう言った後、クロームに近寄ったソラ

「ソラ…」

「…骸兄は絶対に生きてます。今すぐには無理だけど、必ずクロームさんの所に戻って来るって言ってましたから。」
クロームに向かってそう言ったソラ

正一やソラの言葉を聞いて安心したクローム

安心して力が抜け、倒れそうになったクロームをなんとか受け止め、床に座らせたソラ

「大丈夫ですか?クロームさん」

「……良かった……」

「骸兄は必ずクロームさんの所に戻ってきます。だから、今は体をゆっくり休める事だけ考えて下さい。」

「うん…」

「私も1つ良いですか?入江さん」
草壁が正一に話しかけた。

「はい?」

「気になっていたのですが、あの装置の中に居る、この時代のボンゴレファミリーを出す事は出来ないのですか?
彼らが加われば、凄い戦力になるはずです。」

「ああ…残念だけど、それは絶対にあってはならないんだ。過去から来た綱吉君達と、この時代の綱吉君達が同時に出現すれば、
時空が壊れて、世界が消えてしまう可能性がある。」

「えっ…!?」
「な…なんと!?」
それを聞いてツナと草壁が驚く。

「だからこそ、僕らは君達に賭けたんだ。ボンゴレリングの正式な保持者(ホルダー)である、君達に頑張ってもらうしかないよ。」

(俺達に…賭けた…)匣を見つめながら、心の中で呟いていたツナ

「では、10年前に戻れるのであれば、そこで白蘭を倒してしまえば良いのでは?」

「それは不可能なんだ。前にも言ったが、この時代に倒すしか、白蘭さんの能力を封じる事は出来ない。」

(同時に出現させる事も出来ず、過去で白蘭を倒すのも不可能って……白蘭の能力って本当にこの時代でなければ封じられないのかな…?)
正一の話を聞いて、心の中で呟いていたソラ

『そーいや、ツナ』

「?」リボーンに視線を向けるツナ

『アジトに戻る前に、正一に聞かなきゃならねぇ大事な事があるぞ。』

「え?」

『入江正一、お前が本気で白蘭を倒してぇと思ってるのは解った。だが…』

息を呑んだ正一

『お前、俺達のファミリーになるのか?』

リボーンの言葉に反応するツナ、獄寺、山本

「へ?ダメかい?」

「がっ…あっさり……つーかヌケヌケと!!」呟く獄寺

「ウチもあんたらに着いて行く。雇ってくれ、ボンゴレ」

「ス…スパナ!!」

「うがー!?どいつもこいつもっ…」ブチ切れ寸前の獄寺

『どうするんだ?ツナ』

「こういう時、いつも俺に振るよな!!」

『ボスのお前が決めるに決まってんだろ。』

「心のままに言って下さい。」
獄寺が小声でツナにそう言う。

「えっ…」

「嫌なら嫌と、10代目!!」

「なっ……だから俺、マフィアとかのつもりないし…それに…正直、入江さんにはいろいろされたから…迷うんだよな…」

それを聞いて体を強張らせた正一

(あっ…正兄、固まってる。)
正一を見て、心の中で呟いていたソラ

「でも、大変な事をしてきてくれたと思うんだ。…だから、これからも力を貸して下さい!!」

ツナの言葉を聞いて、ぱぁっと表情を明るくする正一

「スパナも頼むよ。」

「うん。」頷くスパナ

正一がツナの右手を両手で握って来た。

「こちらこそよろしく!!そうと決まれば、僕にはやらなきゃならない事が山程ある!君達を安全に10年前に帰せるよう、この装置をチェックしないと!!」

「正一、技術的な事なら手伝う。」

「ありがとう、スパナ!!」
ツナの右手を離してからスパナにお礼を言っていた。

「さぁ、忙しくなるぞ!!」
気合いの入った声を出していた正一

「あ…あの…俺達も何か手伝いましょうか?」

「一刻も早く、アジトに居る仲間の元に帰りたいだろ?綱吉君」

「そうだ!!京子は!?京子はどこだ!?京子ーー!!」
京子の事を思い出した了平がそう叫んでいた。

「ここには居ねーよ!!」

「何!?」

「けど、無事だから安心しろ!」
了平に京子が無事な事を伝える獄寺

「ホントか!?どこだ!?どこに居る!?」
獄寺から無事だと聞かされても、落ち着きのない了平

「俺達のアジトに居るっスよ。」
山本が了平にそう言う。

「アジト?」

「そっか。ちゃんと説明しなくちゃっ…」

「やめときましょう、10代目。」

「え?」

「芝生頭に理解させるには時間が掛かります。」

「う…うん。…お…お兄さん、後で全部説明しますから。」
獄寺の言葉に頷き、了平に向かってそう言った。

ツナにそう言われたからか、やっと落ち着いた了平だった。

「ねぇねぇ!ランボさん、たこ焼き食べたいぞ!!」
「イーピンも空腹!!」
ランボとイーピンが空腹を訴えた。

「う…うん。」

「ランボ君、イーピンちゃん、もう少しだけ我慢してて?これからアジトに帰れるから、それまで飴玉舐めてると良いよ。…はい、どうぞ。」
ランボとイーピンにポケットに入れていた飴玉を差し出したソラ

「やった!ソラの飴玉だもんね!!」そう言いながら、飴玉を嬉しそうに受け取るランボ

「謝謝!ソラさん!!」お礼を言いながら、イーピンも嬉しそうに受け取っていた。

(相変わらず凄いな…ソラちゃん)そんな3人の様子を見て、そう思ったツナ

「帰りましょう、10代目」
「行こうぜ、ツナ」
ソラ達の様子を見ていたツナに声を掛けた獄寺と山本

「今君がやるべき事は、10年前のあのリング争奪戦の直後に帰って、ボンゴレリングの真の力を引き出し、またここに戻って来る事だ。」

「ボンゴレリングの力…」呟くツナ

「白蘭さんを倒すために…そのための一時帰宅だ。全員が、しっかりと覚悟を決めてきてくれ。ミルフィオーレの残党は、
こっちでなんとかしておく。安心してくれ。」

「じゃあ…みんな、アジトに帰ろう。」
ツナがみんなに向かってそう言った。

「綱吉さん、悪いけど先に帰ってて?まだ正兄に用があるから。」

「えっ!?」ソラの言葉に驚くツナ

『ソラ、それは俺らが居ちゃダメなのか?』
リボーンがソラに問う。

「ダメ。」即答するソラ

『即答か…解った。ツナ、お前らだけで先に帰って来い。』

「で…でもっ…」

『良いから、帰って来い!解ったな?』

「………解ったよ。」
納得してないが、大人しく帰る事にしたツナ

「じゃあソラちゃん、俺達先に帰ってるね?」
しゃがでソラの視線に合わせたツナ

「うん。」

「帰る時、気をつけてね?」

「うん。心配しなくても大丈夫だから。」

「じゃあ、また後でね。」
そう言いながら立ち上がった。

ツナ達はその場を後にし、アジトへ戻っていった。


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今回は正一が白蘭を倒すために必要な事をツナ達に伝える所ですね。
正一とソラの会話、話すタイミングさえなんとかなれば、後はスラスラ書けちゃいました。
あと、やっと10年前の了平も登場させられました!!
これで10年前のメンバー全員、10年後の未来に集結しました!!
それでは標的50へお進み下さい。

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