X BURNER超爆発が幻騎士に直撃し、そのまま壁を撃ち抜いた。
すると、今まで幻騎士が張っていた幻覚が少しずつ解けていき、霧の炎を纏った海牛が次々と降ってきていた。
だが、床に落ちるよりも前に次々と海牛は爆発を起こし、跡形もなく消えていっていた。
「あれは確か……霧属性の匣の“幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)”だ。(幻騎士はあの“幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)”で
幻覚を構築してたのか…)」
上から次々落ちてくる海牛を見てそう呟いていたソラ
ソラは瓦礫が落ちてくるのに気付き、太陽に声を掛けた。
「太陽…」
【陽光の盾!!(サンシャインシールド)】
ソラの言いたい事を瞬時に理解した太陽はシールドを張って、ソラ達を守る。
だが、太陽に与えられていた炎が残り少ないせいか、シールドが弱く、すぐにヒビが入り始めていた。
ソラはヒビが入り始めたのに気付き、まだふらつきながらも立ち上がった。
「レオ…」
【ダメだよ!今の君はフラフラだ…そんな状態で盾を持ったら、2人の事は守れても君が怪我をしてしまう!!】
普段温厚なレオだが、ソラが無茶しようとしているのを見て焦っていた。
「………私の事はどうなってもいい…それでスパナさんとミニモスカを守れるならっ…」
どこまでも自分を大事しないソラだった。
【ダメだってば!!】ソラの指示通り姿を変えず、説得し続けていたレオ
【姫!俺がなんとかするから!!】
そう言いながら、シールドをなんとか維持し続けていた太陽
だが、シールドに入るヒビがだんだん大きくなり、ついに砕けてしまった。
【しまった!?】焦る太陽
だが、シールドが破れたにも関わらず、瓦礫が落ちてこなかった。
「太陽、あとは俺に任せてくれ。」
いつの間にか戻って来ていたツナが上に向かって左手を翳し、炎を噴射させてバリアを張っていた。
【助かったっ……】ツナが守りを固めてくれているのを見て安心した太陽
「綱吉さん…」ツナが居るのに気付き、視線を向けたソラ
「…自分はどうなってもいいなんて言うな。もっと自分を大事にしろ。」
【姫、綱吉の言う通りだよ。君はもっと自分を大事にしてよ!】
だが、ツナとレオの言葉を素直に受け入れられないソラだった
しばらくして、瓦礫が落ちてこなくなり、バリアを解いたツナ
『よくやったな、ツナ。もっとも、最後の力を使ってこの場から離脱した幻騎士を見逃したのは気にくわねぇがな。』
瓦礫が落ちてる間、3D映像のリボーンは姿を消していたようだが、
瓦礫が落ちてこなくなくなり、落ち着いた所で、また姿を現した。
「…幻騎士、あれだけの力を使ったのに、最後の力を振り絞ってこの場を逃走してたね。」
幻騎士がこの場から離脱する所を見ていたソラ
『姫、もう立っても平気なのか?』
「平気。」
リボーンにそう答えた後、上を見上げたソラ
釣られてリボーン達も上を見上げた。
見上げた先には、白くて丸い装置が見えた。
「…行こう。目的地はもう目の前だよ。」
「ああ。」
【だが、お前はもう飛ぶな。俺の背中に乗れ。】
【僕も太陽に賛成。】
「えっ…」太陽とレオの言葉を聞いて呆然としたソラ
【嫌とは言わせないぞ?】
【僕達からのお願いだと思って諦めて?】
「う゛…」
そう言われてしまうと、無下に出来ないソラ
【決まりだね。】
「……2人とも酷いよ、私がそれに弱いって知っててやるなんて…」
【【自分はどうなってもいいって言った罰!】】
そう言われてしまえば、もう返す言葉がなかったソラであった。
『姫、2人に何を言われたんだ?』
「もう飛ぶなって言われた。」
リボーンの問いに答えたソラ
『なるほど。太陽の背中に乗れって言われたんだな?』
「うん。」
『俺もそれが良いと思うぞ。大人しく太陽に背負われろ。』
「リボ兄までっ…」
『姫、俺は純粋におめーの事が心配なんだぞ。』
その後、それぞれ飛ぶ準備をしていた。
スパナはさっきと同じように、ツナとロープで繋ぎ、
太陽はソラを背負い、ミニモスカを腕に抱えた。
「太陽、大丈夫?人を運びながら飛ぶの、あんまり慣れてないのに。」
【心配するな、極限俺に任せろ。】
「………解った、任せるよ。」
【しっかり掴まってろよ?】
「うん。」
『行くぞ。』
リボーンの掛け声で白くて丸い装置の所まで飛び始めたツナ達。
白くて丸い装置のある部屋に着地したツナ達。
『着いたな。』
「ああ。これが…俺達の目的…」
「うん…正一の装置だ。」
リボーン、ツナ、スパナの順に言う。
「太陽、レオ、お疲れ様。2人とも、匣に戻って休んでて?」
そう言いながら、2つの匣を翳すソラ
【もし戦闘になるようなら絶対呼べよ?】
【呼ばなかったら怒るからね?】
太陽とレオがそれぞれソラにそう言ってから、匣へ戻っていった。
「これを破壊すれば、俺達は元の世界に帰れるのか?」
丸い装置を見ながら呟くツナ
『さぁな。少なくとも、俺達が10年後の世界に放り出された事に関係しているのは間違いねぇはずだ。』
ツナの問いにそう答えるリボーン
「それで充分だ。」
「待て。」
この場にツナ達以外の声が聞こえてきた。
声が聞こえた方にツナ達が振り向くと、入江正一と同じ顔をしている女性2人が居た。
今、この部屋に入って来たばかりのようだった。
「まさか、あの幻騎士を倒すとは計算外だった。沢田綱吉」
「正一…」呟くスパナ
「入江正一!!」そう叫びながら、右手に炎を灯すツナ
(正一さん…)フード越しに正一を見つめるソラ
「待ちなさい!沢田綱吉」
2人の女性のうち、片方がツナに呼び掛けた。
「!?…お前はっ…チェルペッロ!?どうして入江正一と…?」
2人の女性を見て驚くツナ
(チェルペッロって確か……10年前のリング争奪戦の時に取り仕切っていたっていう…?)
2人の女性を見ながら、ずっと前に聞いた話を思い出していたソラ
「まずは拳を降ろしてからにしてもらおう…話はそれからだ。」
「…話だと?」
「そうだ。今後の事をゆっくり話し合いたいんでね。」
「何を今さら…」
「聞こえなかったのか?僕は拳を降ろせと言ったんだ。少しでも抵抗する素振りを見せれば、彼らの命は無くなるぞ。」
正一がそう言うと、近くの装置が動き出した。
ツナ達はその動き出した装置に目を向けた。
現れたカプセルの中には、連絡の取れなくなっていた獄寺達が入っていた。
「みんなに何をしたんだ!!」
「眠らせただけだ。」
ツナの問いに答える正一
「眠らせた…?」
「彼らが暴れたおかげで、この基地は深刻なダメージを受けたのでね…耐炎性のナノコンポジットアーマーの壁で追い詰め、
逃げられなくなった所を睡眠ガスで眠らせたのさ。しかし、お前が下手に動けば、今度は別のガスを注入する。」
正一がそう言った後、ツナ達から見て、正一の左側に居たチェルペッロがツナ達にリモコンを見せた。
「このリモコンを押せば、彼らは一巻の終わりだ。…彼らの命を救いたければ、言う通りにしろ。沢田綱吉」
「くっ…」悔しそうな声を出しながらも、拳を降ろしたツナ
「よし、良いだろう。」
正一が右側に居るチェルペッロに合図を送った。
「はっ」正一の合図でリモコンを操作するチェルペッロ
「何をする気だ!?」叫ぶツナ
「慌てるな。睡眠ガスを無効化しただけだ。良く見ていろ…まもなく目覚めるはずだ。」
装置の方に視線を向けると、正一が言った通り目を覚まし始めていた。
獄寺、ラル、雲雀、クローム、草壁が次々と目を覚ましていた。
山本、了平、ランボ、イーピンは目覚めなかったが……
「みんな!」
ツナが声を掛けると、一斉にツナに視線を向ける獄寺達
「あっ……あれは!10代目!!10代…」
窓ガラスに顔をぶつけた獄寺
「何だこりゃあ…」
ぶつかった窓ガラスに手をつきながら、カプセルの中に居る事に気付いた。
「捕まっているのか、我々は…」呟く草壁
「無駄です。そのカプセルは素手で破る事は出来ません。」
窓ガラスを叩いていた獄寺にそう言ったチェルペッロ
「てめぇはチェルペッロ女!!なぜここに!?」驚く獄寺
「お前達の命は我々が握っている。下手な真似はしない方がいい。」
「入江正一!!」叫ぶ草壁
「我々は話し合いが必要だ。今は大人しくしていてくれないか。」
「話し合いだと!?人を閉じ込めて置いて、ざけんじゃねぇ!!」
そう叫び、腰に着けているであろう匣を開匣しようとした獄寺
だが、腰に着いていたはずの匣がそこにはなかった。
「匣がっ……リングも…」
匣もリングも無い事に気付いた獄寺
「抵抗しようとしても無駄だ。お前達のリングと匣は……全て没収した。」
そう言いながら、握っていた右手を解いて、持っているものを見せた。
正一の右手には、獄寺達が持っていた全てのリングがあった。
「なっ!?」
「何!?」
驚きの声を上げるツナと獄寺
「な…なんて事だ……これでは…!!」呟く草壁
「ぐっ…沢田…構わん!!やれ!!」叫ぶラル
「ラル」ラルに視線を向けたツナ
「貴様の手で装置を破壊しろ!!」
「…そうです、10代目!! 丸い装置を……そいつをぶっ壊せば、過去へ帰れるかもしれません!!俺達に構わずっ…」
「ダメ!!」今まで黙っていたクロームが叫んだ。
「何!?てめー!この状況で命が惜しくなったか!?」
クロームにそう言う獄寺
「違う…でも…」
「クロームさんの言った通り、この装置は破壊しちゃダメ。」
「何だとっ!?」ソラの言葉に反応する獄寺
獄寺だけでなく、ツナ達もソラの言葉に反応していた。
「この装置……壊されて困るのは私達……そうですよね?入江正一さん?」
入江正一に向かってそう言ったソラ
「………フっ…どうやら『陽色の姫君』は無知ではないようだな…その通りだ。この装置を破壊すれば、困るのはお前達だぞ。」
ソラがそう言ったのが予想外で驚いていたようだが、すぐに正気を取り戻していた正一
「どーゆう事だ!?」
「見せてやる…その目で確かめるがいい。」
正一がそう言うと、丸い装置が起動し始めた。
「この装置に入っているのは、10年バズーカでお前達と入れ替わりで消えた…この時代のお前達だ!!」
装置の中にこの時代のみんなの姿が見え、驚いていたツナ達。
(やっぱり……あの装置の中から、僅かにみんなの気配がすると思ったら、こういう事だったんだ…)
ソラだけはツナ達程驚いておらず、冷静だった。
「10年後の…俺達…」呟くツナ
「そうだ。もっとも今見えているのは、立体映像(ホログラム)のイメージであり、実際には、10年後のお前達の体は、
分解された分子の状態で、機械の中に保存されている。その機械を壊せばどうなるか、説明しなくても解るだろう。」
「ど…どうなってやがる?だって、この時代の俺達は…」
「10年バス―かの効力で…10年前に行ったはず!!」
獄寺の後に草壁はそう言った。
「その通りだ。本来、10年バズーカに入ってしまった者は、10年後の自分と現代の自分が入れ替わる…だが、この装置により、
10年後のお前達は過去に行かせず、ここに留まらせているんだ。」
この装置の仕組みを説明する正一
(…あれ、立体映像(ホログラム)なんだ……)
装置の中のみんなを見つめていたソラ
「この時代のお前達に過去に戻られ、余計な事をされると、トゥリニセッテポリシーに乱れが生じるからな。」
「トゥリニセッテ…ポリシー…?」
何の事か解らないツナ
「…つか、10年バズーカを知ってるって…まさか!?」
正一の説明を聞いて、何かに気付いた様子の獄寺
『10年バズーカを使って、俺達をこの時代に送り込んだのは…お前か。』
リボーンも気付いたようで、正一にそう言った。
「その通りだ。10年前の僕が、この時代の科学技術を駆使して、お前達に10年バズーカを使ったんだ。
例えば、アルコバレーノであるなら、ノン・トゥリニセッテを照射して、身動きを取れなくした。」
『なるほど…それで、あの時金縛りみてぇになったんだな。』
この時代に来る直前の事を思い出しながら、そう呟いたリボーン
(それで過去なのに、ノン・トゥリニセッテを浴びちゃったんだ。)
リボーンがこの時代にやって来た日に交わした会話を思い出しながら、心の中で呟くソラ
「でも…どうして!?なんでそんな事までして、俺達をこの時代に連れてきたんだ!!答えてくれ!!」
いつの間にか超モードが解けていたツナが正一に向かってそう叫んでいた。
「知りたいか…そうだな…」
「入江様、これ以上は…」
「いや…答えよう。簡単な話だ。白蘭さんがこの世界を手中におさめ、もう1つの世界を創造するためにボンゴレリングが必要だからだ。」
「ボンゴレリングが…」
「この世には力を秘めたリングが数多く存在するが、中でも、ボンゴレリングもマーレリングも特別だ。…7つのボンゴレリング…
7つのマーレリング…それにアルコバレーノのおしゃぶりが7つ…その各7つ、計21個のリングをトゥリニセッテという。
……そして、トゥリニセッテの原石こそが、この世界を創造した礎だ。」
「そんな…話…」信じられないというう表情をしていたツナ
「信じる信じないは自由だが、少なくとも、トゥリニセッテを守る事を使命とし、トゥリニセッテと同化したアルコバレーノは
この話を否定しないはずだな。」
(やっぱり狙いはボンゴレリングか……過去からパパ達を連れてきたのは、ボンゴレリングを手に入れるため……
でも、それだと、なぜボンゴレの守護者ではないママたちもここに連れてこられたのかが解らない……)
ツナ達が入れ替わった理由は解ったが、守護者ではない京子達がなぜ巻き込まれたのか考えてたソラ
「な…え…ど…どういう事?リボーン達、関係してるの?」
立体映像のリボーンに視線を向けたツナ
それに答えないリボーン
「…ちょっと、何が何だかさっぱり解らないよ!?ちゃんと説明して!!」
混乱状態のツナがリボーンから正一に視線を戻してそう言った。
「話は以上だ。あとは任せた。」
そう言って、ツナ達に背を向けた正一
「「はっ」」2人のチェルペッロが応える。
ツナ達に背を向けた正一はここから去る為に歩き出した。
「そ…そんな!?」困惑の表情を浮かべるツナ
「沢田綱吉、大空のボンゴレリングを渡しなさい。さもなくば、守護者達の最後の別れを見る事になります。
今度のガスは、一息でも吸えば、1秒と持ちません。」
リモコンを見せながらそう言ったチェルペッロ
『待て、入江』
リボーンの声に反応して歩みを止めた正一
『まだ終わってねぇ…お前の話には、納得出来ねぇ所があるぞ。』
リボーンの問いに応じる気がないのか、また歩き出した正一
「無駄な時間稼ぎはやめなさい。あなた達に選択権はない。」
「これは交渉ではない、命令だ。」
「3つ数える間に、大空のボンゴレリングを渡しなさい。さもなくば、守護者達は全滅する。」
2人のチェルペッロがツナに向かってそう言い放った。
「ちょ…待ってよ!!君達チェルペッロでしょ!?なんでミルフィオーレに味方してんのさ!?ねぇ!!」
「3」
チェルペッロが自分の問いに答えず、カウントダウンし始めたので、慌てて毛糸の手袋を外していたツナ
「…このクソ女が!!俺達を人質に取ったつもりかよ!?だが、大間違いだぜ!!10代目!!俺らに構わず、そいつらをやって下さい!!」
「でっ…でもっ…そんな事出来る訳…」
獄寺は自分たちに構うなと言うが、ツナにはそんな事出来る訳がなかった。
「2」
「やれ、沢田!!どーぜそいつらは大空のリングを受け取った後、俺達を全滅させる気だぞ!!」
獄寺に続いて、ラルもツナにそう言う。
「でもっ…」
「10代目ー!!」
「俺達に構うな!!」
叫ぶ獄寺とラル
「1」
チェルペッロがリモコンを押そうとしたその瞬間、2発の銃声が鳴り響いた。
「入江…様…」
チェルペッロの2人が入江に撃たれて倒れた。
「悪く思わないでくれ。少し眠ってもらうだけだ。」
入江がチェルペッロの2人に撃ったのは、麻酔銃だったようだ。
その様子を呆然と見ていたツナ達。
正一はチェルペッロに向けていた銃を落とした後、上着を脱ぎ始めた。
「はぁ…暑い…もうくたくた…一時はどうなるかと思ったよ。沢田綱吉君とファミリーの皆さん。」
そう言って、上着を脱ぎ捨てた正一
(正一…さん…?)態度の変わった正一を呆然と見ていたソラ
「はぁ…緊張が解けて、膝が笑ってる。」
膝がガタガタして立っていられなくなったのか、その場に座り込んだ正一
「ふぅ……良くここまで来たね。君達を待ってたんだ。……僕は君達の味方だよ。」
「俺達の味方だって!?」正一の言葉に驚くツナ
「う…うん、そうなんだ。ハァ……こういうのは本当は苦手なんだよ。堅苦しくて……」
「味方ってどういう事!?だってあなたはミルフィオーレの幹部で、俺達の敵で…」
『落ち着け、ツナ』
落ち着きのないツナに声を掛けたリボーン
「だって…」
「油断しないで下さい!!10代目、また罠かもしれません!!」
「そうだ!!奴を拘束しろ、沢田!!」
獄寺とラルがツナにそう言った。
「急に信じろって言っても無理なのは解るよ。だけど話を聞いて欲しいんだ!」
「ダメです、10代目!!」
「普段、僕の行動はいつも部下と監視カメラによって、24時間白蘭さんに筒抜けになっていたんだ。だけど、君達がすべてを
めちゃくちゃにしてくれたおかげで、やっとこうして話が出来るようになった……ずっとこの時を待ってたんだよ。」
『今は何も解らなくていいよ。時が来れば、ソラの超直感が教えてくれるから。でも、覚えていて?これから会う人の事を…』
幼い頃にツナに言われた言葉が頭の中でフラッシュバックしたソラ
(そっか…そういう事だったんだね。あの時パパが言ってた“時”が…今なんだ。)
正一の言葉を聞き、幼い頃に言われた言葉を思い出して、その“時”が今だと直感したソラ
「え?待ってた?」
「な…何言ってやがる!?」
呟くツナと獄寺
「うん…この基地での…この状況での出会い方こそが、僕らが設定したゴールだったんだから。」
「僕ら…?ゴール…?」正一の言っている事が良く解らないツナ
「ミルフィオーレが、ボンゴレリングを奪う為に君達をこの時代に連れてきたのは事実だ。
思惑通り、君達はボンゴレリングを持って、ここに居る。」
そう言いながら、立ち上がった正一
「やっぱりボンゴレリングが狙いなんじゃねーか!!」
「ボンゴレリングを奪うだけなら、君達をこのメローネ基地に呼び寄せる必要はなかった。」
「呼び寄せるって…」
『あの手紙、まさかっ…』
「あっ!あの時の手紙…」
リボーンの呟きを聞き、手紙の事を思い出すツナ
「君達が僕を標的にして、ここへ乗り込むようにさせたのは、僕がミルフィオーレに秘密で仕組んだ計画だったんだ。」
「えっ!?」驚きの声を上げるツナ
「君達を…君達を鍛えて強くなってもらうためにね。」
それを聞いて、驚いた表情を浮かべるツナ達。
「たくさん酷い事をして…ホントにごめん……でも、これから来る戦いに備え、
短期間に飛躍的な成長をしてもらうには、この方法しかなかったんだ!!」
「えっ……これから来る戦い?」
「そうだ!!君達の本当の敵は僕じゃない!!」
「ふざけんな!作り話に決まってるぜ!!てめぇがやばくなってきたんで、俺達を丸め込もうってんだろ!?」
「獄寺の言う通りだ!!そんな話信じられるか!!」
獄寺とラルが正一に向かってそう言い放った。
「待って!考えてみてくれよ!!君達を消そうと思えば、もっと早くにそう出来たさ!!…いくらミルフィオーレが油断していたとしても、
天と地ほどの戦力差だ。本当は、勝ち目なんかまったくない!!」
『その通りだな。』
「リボーン…」
『まともに戦っても勝てないのは、お前達も最初から解ってただろ。だから一か八かの賭けで、このミルフィオーレの基地に潜入した……
そして、結果的にお前達はいろんな戦いを経て、成長し、この最終地点に辿り着いてる。こいつの言う通りにな。』
「君達をいっぺんにじゃなく、何人かずつ入れ替えたのも、この時代の君達に、過去の君達を導いてもらうためだ。ここに来てからは、僕がもっと早くに
基地を動かして、君達を捕らえる事も出来た。…だか、それでは君達が経験を積む事が出来ないよ。だから、わざとモタついて遅らせたんだ。
それだけじゃない……守護者でないイーピン、笹川京子、三浦ハルまで、過去から連れてきたのはなぜだか解るかい?」
「人は、守るものがあると強くなれる……ですよね?」
正一の問いにそう答えるソラ
「ああ、その通りだ。そのために…必要だと判断したんだ。現に…」
ツナが正一に掴みかかった。
「そんな…そんな理由で!!もし京子ちゃん達に何かあったらどうするんだ!!京子ちゃん達だけじゃない!!鍛えられる前に、
山本や獄寺君やラル…みんな、この戦いで…この戦いで死んでたかもしれないんだぞ!!」
(パパ…)正一に掴みかかってるツナを黙って見ていたソラ
「……その場合は…それで仕方ないんだよ…」
「んだと!」
「そんな…」
それぞれ反応する獄寺とクローム
「うぅ〜ん…僕だって一生懸命やってるよ!!予想外の事とか起きて大変だったんだぞ!!」
「えっ…」
「これは君達が思ってるほど、小さな問題じゃないんだ!!それに…この計画は、この時代の君の意志でもあるんだ、綱吉君!!」
「!?…俺の…意志!?…」
頷いた後、また話し出した正一
「この計画は、絶対にミルフィオーレ側には漏れてはいけなかった。そのために、これは僕と10年後の君と
10年後の雲雀恭弥の3人だけの秘密だったんだ。」
(パパだけじゃなくて、恭兄も関わってたんだ…)
雲雀も関わっていた事に内心で少し驚いていたソラ
「あっ…僕らの設定したゴール……その僕らって…」
「ああ…10年後の雲雀君がこちらの奇襲を予想出来たのもそのためなんだ。」
「なんと…」驚く草壁
「10年後の俺は知らなかった…?そんなはずはねぇ!!10代目の右腕である俺を差し置いて、どうしてこいつが!?」
雲雀を睨みつける獄寺
「10年後の君は、関係ない仲間を巻き込む事には、最後まで躊躇していた。だけど、最終的にそれが過去の君達の成長に
必要だと…了承したんだ。」
「そ…そんなっ…俺がっ…俺が……」
正一の服を掴んでいた手を離したツナ
「ありえん!!沢田の性格は良く知っている!!信じられないくらい甘い奴だ!!」
「そうだ!!どんな事があろうと、10代目は絶対にチビ達を巻き込んだりしない!!」
「ラル…獄寺君…」
「あ〜も〜それぐらいヤバイって事でしょ!?話の流れで察してくれよ!!」逆ギレした正一
「すべてを賭けて、この事態に対処しないと、君達も、君達の仲間も全滅しちゃうんだって!!それどころか、もっと多くの人々の…
下手をすれば、人類の危機なんだぞ!!」
「人類の…危機…?」呟くツナ
『手段を選んでられないほど、やべぇって事か……それと、これから来るって言う戦いが関係してるんだな?』
「リボーン!!」
『俺は、こいつの話を信じてやっても良いと思ってるぞ。』
「リボーンさん!?」
「おい、リボーン!?」
獄寺とラルが驚きの声を上げる。
『俺が感じてた疑問の答えとしては、今んとこ、辻褄が合ってるからな。姫の方はどうだ?』
「私も同じ。これは罠じゃない。もし、これが罠だって言うなら、どうしてチェルペッロの2人は驚いていたんだろうね?あの2人にも
予想外な事が起きて驚いている様子だった……私にはとてもこれが罠だとは思えない。それに…話を聞いて、私もずっと感じてた
いくつかの疑問が解けたし。(正一さんが敵じゃないって事も解ったしね…)」
「あ…ありがとう……そうだ…君達の本当の敵となるのは…白蘭さんだ!!」
「やっぱり…(!?…俺、今やっぱりって…)」
ツナは自分が発した言葉に驚いていた。
ツナのその呟きを聞き、不敵な笑みを浮かべたリボーン
「白蘭さんはトゥリニセッテを集め、この世界を自分の物にするためには手段を選ばない…そういう人だ。…彼はこの意志を
トゥリニセッテポリシーと名付けた…そして、それが達成されれば、今の比じゃない地獄絵図を見る事になる。…あの人は、
自分の思い通りにならない人間、集団、国までも抹殺するだろう…」
「そんな…」
『だとすると、1つ解らねぇな。』
「「え?」」リボーンの言葉に反応するツナと正一
「なぜ今まで白蘭に手を貸してきたんですか?あなたが10年バズーカでボンゴレリングをこの時代に運ばなければ、
彼の目的は達成されなかったはずです。」
リボーンの言いたい事が解ったソラがそう言った。
「あっ…そっか!(この時代のボンゴレリングは、10年後の俺が壊しちゃってるんだ…)」
『ツナ達が過去から来なければ、最終的に、犠牲は少なくて済んだかもしれねぇぞ。』
「でも、それじゃあっ…」
『ツナや俺達アルコバレーノは死んだままだろうが、京子達は巻き込まれずに済んだだろうな。』
「うん…一時的にはね。でも、僕の手など借りなくても、彼はいずれ君達を未来に連れてくる…それに、僕がそのやり方に
こだわった理由は他にある。彼を止められるのは、この時代だけなんだ。」
「えっ!?」
「どういう意味だ!?」
(白蘭を止められるのが、この時代だけ…?)
ツナ、獄寺、ソラだけでなく、他のみんなも正一の言葉に疑問を抱く。
「今、この時代に倒すしか、白蘭さんの能力を封じる手はない!!」
「能力!?」
(白蘭の能力を封じる…?いったい、どんな能力なんだろう?)
白蘭の能力が気になるソラ
「説明すると長くなるが……ん?あっ…忘れてた!!」
何か大事な事を忘れていたのか、叫んだ正一
「はっ?」呆気に取られるツナ
「ボンゴレ基地に何か連絡は?」
「え?」リボーンに視線を向けたツナ
『ん?無いぞ。』
「まだか…そうか、まだだよな……う…いてててっ…」
正一がお腹を抱えて床に膝をつけた。
「ど…どうかしたんですか…?」
「また…緊張してきた…」
「正一!」
正一に駆け寄り、片膝を床についたスパナ
「心配ない。」
「スパナさん?」
「正一は緊張すると、お腹が痛くなるらしい。」
「ええ!?」叫ぶツナ
「この基地のボスがこんな事で腹イタかよ。」
「軟弱だな。」
正一に悪態を吐く獄寺とラル
「好きでなる訳じゃないんだよ!!だいたい、こういうのは僕の柄じゃないからっ…」
「大丈夫か?正一…」
「スパナ…」
「うん、いつもの正一だ。」
「あの…」
「正一は凄い奴だけど、そういう風に見えない所が凄いんだ。」
声を掛けてきたツナにそう答えるスパナ
「スパナ、それ褒めてないだろ。」
「褒めてるよ。」
「緊張すると、お腹が痛くなるのは相変わらずなんだね。」
「えっ…」
正一が前を向くと、いつのまにかソラが目の前まで移動してきていた。
「君は…『陽色の姫君』の…姫ちゃん、だっけ?」
「そうだよ。でも、それは仮の名…」
そう言って、正一の背後に回り、背中に手を添えたソラ
「な、何をっ!?」
正一が叫ぶのにも構わず、背中を時計と反対回りに摩り始めたソラ
「!?(その摩り方はっ…)」
ソラがそのまま背中を摩り続けていると、お腹の痛みが和らいできた正一
その様子を唖然と見ていたツナ達。
「………少しは…痛みが治まった?」
摩るのをやめて、正一に聞いたソラ
「う、うん。」
正一は背後に居るソラに振り向いた。
「………そういう時は、誰かに背中を時計と反対回りに摩って貰うと、痛みが和らぐんだよ。」
少し間を置いてから、正一にそう言ったソラ
「!?」その言葉を聞いて、目を見開いた正一
『しょうにぃ、おなかいたいの?そういうときはね、だれかにせなかをとけいとはんたいまわりにさすってもらうと、いたみがやわらぐんだよ!』
そう言って自分の背中を摩ってくれた幼い少女の事が頭の中でフラッシュバックした正一
「…その言葉はっ……もしかして、君は……ソラちゃん…なのかい?」
「えっ!?」正一が発した言葉に驚きを隠せないツナ
それはリボーン達も同じだった。
「当たりだよ。覚えててくれたんだね?正一さん」
そう言いながら、フードを外したソラ
フードを外したソラは満面の笑顔を正一に向けていた。
今回はいよいよ、正一と対面する所です!!
やっとここまで来ました!!長かったっ…!!
連載開始したばかりの頃から、ソラと正一は以前あった事がある設定にはしていたのですが、
再会した時の会話をどうするか、なかなか思いつかなかったんですよね。
でもやっとその会話も書けました!!
上手く絡ませるのに苦労しましたよ。
それでは標的49へお進み下さい。