ーー地下5階ーー応接室前ーー
「さあ、ついたぜ。」
「中に入って下さい。ここに綱吉さん達が探していた人が居ますから。」
ソラがドアを開け、ツナと獄寺に中に入るように言った。
言われた通り、二人は中に入った。すると……
「おせーぞ」
その声にツナが反応し、声のした方を向いた。
「ちゃおッス」
「リ…リボーンっ…」
ツナはリボーンに近づいた。
「ん?(…リボ兄じゃない、気配ないし、着てる服も違う。ということは…)
ソラはツナの前に居るリボーンが本物じゃない事にすぐに気付き、室内を見回そうとしたが…
「抱きしめてー」
「えっ?」
「こっちよ!!」
そう言いながら、ツナの後頭部に向かって蹴っているリボーンが居た。
「あでででで!!」
「大丈夫っスか!?10代目!?」
「後頭部に土ふまずがフィットしたぞ。」
(…何やってるの…リボ兄…)ソラは呆れた顔をしていた。
「な、何なんだよっ、このふざけた再会は!!こっちは死ぬ思いでお前を探していたんだぞ!!
また変なカッコして!!(…でも……無事でよかったっ…!!)」
ツナは無事なリボーンを見て、安心していた。
「しょーがねぇだろ?この特殊スーツを着てねぇと体調最悪なんだ。あのバリアも、俺のために作らせたんだしな。」
「どういうことだよ!?」
「俺にはきびしい世の中ってことだ。」
リボーンはツナにそう言った後、ソラの方へ飛びついた。
突然飛びついて来たリボーンに驚きながらも、しっかりと受け止めた。
「ソラ、待ってたぞ。」
「うん、ただいま。リボ兄」
「よくあれが偽物だって解ったな?」
「うん。だってリボ兄の気配がまったくなかったし…服が違ってたから。」
「そうか、上出来だぞ。」
「ありがとうっ!」
(リボ兄!?あの子、あのリボーンをお兄ちゃんって呼んでるー!?)
ツナは二人の会話を聞いて驚き、心の中でツッコんでいた。
(あのガキっ、10代目だけでなく、あ、あのリボーンさんの事まで気安く呼んでやがる!!)
獄寺はまた先ほどと同じようにソラを睨み、心の中で怒りをぶつけていた。
これにもソラは気付いていたが、無視して耐えていた。
(ん?ほんの僅かだが、ソラの腕が震えてやがる…獄寺が自分を睨んでいる事に、怒りをぶつけてきている事に……気付いてるのか?
…なぜ、気付かない振りをして耐えているんだ?ソラ)
リボーンはそんなソラの様子に気付き、疑問に思っていた。
「そ…そうだ!おかしいんだよ、過去に戻れないんだ!」
ツナが今の状況を思い出して、リボーンに言った。
「それぐらい解ってるぞ。おかしいのはそれだけじゃないねぇしな。」
「まだ何かあるの!?」
「時間がズレてんだ。10年バズーカで撃たれたはずなのに、この時代は9年と10ヶ月ちょっとしか経ってねぇんだ。」
(9年と10ヶ月?知らなかった…)ソラは自分が知らなかった情報を知って驚いていた。
「それって、2ヶ月ぐらいズレてるってこと!?」
「ああ、なんでこんな事になっちまってのか、俺にもさっぱりだ。」
「そんな…リボーンにも解らないなんて…」
「まあ、わけのわかんねぇ土地に飛ばされなかっただけでも良かったけどな。」
「土地?…そーだ!!ここって…どこなんだよ!?」
「ん?そんな事もわかってねーのか?」
「だからいろいろ大変だったのっ!!」
「まあ、解らなくても無理ないですね…この周辺は森しかありませんから。タケ兄、モニターを映してあげて?」
「ああ。」
山本はポケットからリモコンを取り出して操作し、モニターを点けた。
モニターには夜の街が映っていた。
「これが地上だ。」
「…?」
「暗くてよく見えねぇ…」
ツナと獄寺はよく見えず、ここがどこだか解っていなかった。
「こいつには見覚えがあるはずだぜ。」
山本がそう言いながら、画面を切り替えた。
そこには並盛中学校が映っていた。
「なっ、並盛中ー!?ってことは、ここ並盛なのー!?」
「日本だったんスかー!?」
ツナと獄寺は、自分達が良く知っている並盛中が映って驚いていた。
「そーだぞ。そして過去に戻れない以上…ここで起こっている事は、お前達自身の問題だ。」
ソラはリボーンを降ろした後、ツナ達に今の状況を話し始めた。
「現在、全世界のボンゴレ側の重要拠点が同時に攻撃を受けています。」
「もちろん、この日本でもボンゴレ狩りは進行中だ。」
「ボンゴレ…」
「狩り…?」
「お前達も見たはずだぞ?ボンゴレマークのついた棺桶を。」
「それって、俺が入ってた…」
「てめぇ!!」獄寺は山本を殴った。
「タケ兄っ!」
「ご、獄寺君っ!」
「何してやがった!!なんで10代目があんな事に!!」
「…すまない」
「てめぇ、すまねーですむわけ…「やめて下さいっ!獄寺さんっ!!」」
ソラは獄寺の言葉を遮って叫んだ。
獄寺は怒りの表情のまま、ソラを睨んだ。
(ご、獄寺君、恐っ!?)ツナは獄寺にビクついていた。
「獄寺さん、それ以上、タケ兄を責めないであげて下さい。」
ソラは獄寺に少しも怯む事なく、話しかけた。
「ソラ…」山本はソラの方に顔を向けた。
「てめぇの指図は受けねぇ…ガキは引っ込んでろっ」
「…タケ兄は何も悪くありません。獄寺さんが今、タケ兄にしているのは…ただの八つ当たりです。」
「なっ…なんだとっ!?」
「聞こえなかったんですか?じゃあもう一度言いますね?獄寺さんがしている事は、
ただの八つ当たりだって言ったんです。」
その瞬間、獄寺はソラの左頬を殴った。
殴った拍子に、ソラはぶっ飛んだ。
ソラは回避しようと思えば、出来たはずなのに、あえて回避せずにいた。
「ソラっ!」山本はすぐにソラに駆け寄る。
「ソラちゃんっ!」
「てめぇに…てめぇに何がわかるんだっ!だいたい、お前もガキとはいえ、10代目ファミリーの一員なんだろ!?
10代目を守れなかったのに、自分は何も悪くないって言うのかよっ!?」
ソラはその言葉に胸を痛めながら、一瞬だけ、顔をしかめた。
「ご、獄寺君っ、ちょっと言い過ぎだよっ!?」
「止めないで下さいっ!10代目っ!」
ソラのその一瞬の表情に気付いた山本は獄寺に向かって何か言おうとしたら、ソラに止められた。
山本を止めた後、ソラはポケットからハンカチを取り出して、山本の唇の血が出ている部分に当てた。
「ソラ?」
山本はソラのその行動に驚いていた。
そこで、獄寺を宥めようとしていたツナと怒っていた獄寺はソラと山本の方を見た。
「タケ兄は、何も悪くないよ?責任、感じなくていいよ?…あれは、誰にも…どうしようもなかった事…」
山本は静かにソラの言葉に耳を傾けていた。
「だから…自分で自分を追い込むのは、もうやめてよ?タケ兄」
「っ!!…ソラ…すまねぇっ…ほんとに…すまねぇっ」
山本は静かに涙を流しながら、ソラに謝っていた。
「山本…(どうしてソラちゃんに謝っているんだろう…?)」
「おい、獄寺」
「リボーンさん…」
「10年後の獄寺も、同じ立場だったんだぞ?山本を責めるのは筋違いだ。それに…」
「それに…なんですか?リボーンさん」
「ソラを責めるのも…殴るのも…おめぇにその権利はねぇっ!!」
リボーンは威厳のある声で獄寺を一喝していた。
「リ、リボーン?(あのリボーンがめちゃくちゃ怒ってるー!?)」
「し、しかし、こいつはっ…」
「まだ言うかっ!!ソラはまだ子供だぞっ!?たったの6歳だぞっ!?それにな、ここの状況の事は、獄寺よりも、そしてこの俺よりも、
遥かにソラの方が良く解ってる!知ったような口を聞くんじゃねぇっ…ソラはこの時代を生き抜いているんだぞ!!」
獄寺はリボーンのその言葉で自分がソラにした事が間違った事だという事に気が付いた。
「リボーン…」
「リボ兄、その辺にしてあげて?」っと言いながら、立ちあがった。
「そうはいかねぇぞ。」
「私は大丈夫だから…お願い。」
「……わかったぞ。」
「ありがとう。」
ソラはリボーンにお礼を言ったあと、獄寺の前まで来た。
「…その、悪かった…」
「謝らないで下さい。この時代の獄寺さんも、八つ当たりはさすがにしませんでしたが、
とても悔やんでいました。10代目を守れなかったっと…」
「っ!!…く…そ…」獄寺は両手の拳を強く握りしめていた。
ソラはそれに気付き、その握られた右手の方の拳を両手で包み込んだ。
獄寺は突然触れてきたソラに驚いていた。
「誰も悪くありません。獄寺さんも、タケ兄も…他の守護者のみなさんも…」
獄寺はソラのその優しい声に耳を傾けながら、知らず、知らずのうちに少しずつ、握っていた両手の拳の力を緩めていた。
「この時代のボスは死んでしまったけれど、10年前の綱吉さんはまだ生きています。
だから、まだ大丈夫。ここにいる10代目を守ればいい。今度こそ、死なせないように…後悔しないように…」
そう言いながら、ソラは両手を離した。
「さて、そろそろ本題に戻りましょうか。」
そう言い、ソラはリボーンの方を向いた。
「そうだな。敵のミルフィオーレファミリーは恐ろしいほどの戦闘力を持っている…そして、冷徹で残虐だ…」
「ボンゴレ本部が陥落した時点で、ミルフィオーレはトップ同士での交渉の席を用意して、こちらのボスを呼び出しました。」
「それで?」
「だが、奴らはその席で一切交渉などせず、ボスの命を奪ったんだ…」
その言葉を聞いて驚くツナと獄寺
「それ以降、ミルフィオーレはこちらの呼びかけにも一切応じず、次々とこちら側の人間を消し続けています。」
「奴らの目的はボンゴレ側の人間を1人残らず殲滅することだ。」
「つ…つまり過去から来た俺達も危ないって事?」
「それだけじゃねぇぞ。お前達と関係のあった人間、すべてが標的だ。」
「そ…それって…」
「うろたえるな。まだ希望がなくなったわけじゃねぇ。山本、バラバラに散ったとはいえ、
まだファミリーの守護者の死亡は確認されてねーんだな?」
「ああ…」
「なら、やることはひとつだ。お前はまず、ちりぢりになった6人の守護者を集めるんだ。」
「えっ、守護者を集める!?」
「俺達がこの時代に来た事と、今ここで起こっている戦いは、たぶん無関係じゃねぇはずだ。
奴らに対抗するには、守護者を集めるしかねぇ…」
「だけど、たった7人で何が…」
「情けねぇ事言うな。ボンゴレの長い歴史上、危機的状況は何度もあった。」
「ですが、そのたびに歴代ボス達は、困難をぶち破ってきました。大空を守護する、6人の仲間達とともに…」
困惑の表情を浮かべるツナ
「わかったな?んじゃ、守護者を集める段取りを決めるぞ。まず…」
「待てよっ!!それより、俺達の知り合いもボンゴレ狩りの的になるって言ってたけど、
それって、母さんや京子ちゃん達も入ってんのか!?」
リボーンは口を閉ざしたままだった。
「リボーン!!」
「ミルフィオーレが標的にする対象は、広がり続けている。彼女達もおそらく…」
「そんな…!!大変だっ、どうしよう、リボーン!?」
「手はうってある。そうだろ?ソラ」
「えっ!?」ツナはソラの方を向いた。
「はい。タケ兄はラル姉を迎えに行かないといけなかったので、ランボ兄とイー姉が京子さんとハルさんを探しに行きました。」
「イー姉って…」
「イーピンの事だせ、ツナ」
「あいつらが?」
「そうか!イーピン達、こっちじゃあ子供じゃないんだ。」
「それとママンだがな、タイミング悪く、家光とイタリア旅行に行っていて、状況が掴めねぇ…」
「イタリアって…それじゃ、」
「10代目、たしかボンゴレ本部は壊滅したって…」
「まさか…母さんっ」
「他の仲間達だが、ビアンキとフゥ太は情報収集に出ている。」
「姉貴達は無事なのか!?」
「だが、この2日間で並盛にいる俺達の顔見知りは、ほとんど奴らに消された。」
「山本の親父もな…」
「そ…そんな…」
ツナは絶望的な表情をしていた。
「10代目…」
「…おめーら、今日は疲れただろ。続きは明日にして、もう休め。」
「そうですね…それがいいです。タケ兄」
「ああ、わかった。ツナ、獄寺、来いよ。」
ツナと獄寺は山本に呼ばれ、そのまま応接室を出て行った。
「ふぅ…」
「ソラ、獄寺に殴られた頬を冷やしてこい。」
「あっ…はは、わかったよ、リボ兄。じゃあラル姉の事、お願いね?」
「ああ。」
ソラは応接室をあとにし、殴られた頬を冷やすために地下7階へ向かった。
今回のお話は、ツナと獄寺にこの時代の状況を説明しているお話です。
ここでの獄寺は、最初はソラに心をまったく開いておらず、むしろ敵意剥き出し状態です。
10年前の獄寺は、ツナ以外にはあまり心を開いてないっぽいので、たぶん最初はこうなるんじゃないかな?っと思い、
こんな話が出来ちゃいました。
それでは、標的5へお進みください。