シミュレーションの世界から無事戻る事が出来たツナだったが、ジャンニーニ達の制止を振り切って危険を冒し、ソラを泣かせてしまった。
ソラが泣き止んで落ち着くまでツナはずっと宥めていた。
その間、コンタクトレンズをハードタイプからソフトタイプへ変更する作業を続けていたスパナ
「出来た。ボンゴレ、つけてみてくれ。」
「あっ…はい。」
落ち着いてきたソラがスパナの言葉を聞いて、ツナから離れた。
「姫ちゃん、もう大丈夫?」
「うん…もう大丈夫。ありがとう、綱吉さん」
スパナは出来たコンタクトレンズをツナではなく、ソラに差し出した。
「あの、スパナさん…?」
自分ではなく、ソラに差し出すのを見て声を掛けたツナ
「さっきみたいに姫にコンタクトを入れて貰おうかと。」
『確かにそれが良いかもな。さっきみたいに時間が掛かってたらいつまで経っても完成しねぇしな。』
「それに…時間もあまりないって言ったろ?」
そう言って、スパナはミニモスカに合図を送った。
ミニモスカがツナの傍に近寄り、先程やったように、また両肩を掴んで動けないようにした。
「ちょっ…ちょっとっ!?」
「えっと……」
コンタクトレンズとツナを交互に見ながら、どうするべきか考えていたソラ
『構わねぇからやれ。』
「ちょっ…リボーン!?」
『おめーにやらせてたら、永久に終わらねぇからな。』
「リボ兄がそう言うなら…」
「えぇっ!?」叫ぶツナ
ソラは先程やったように、ツナの右目の瞼を押さえ、コンタクトレンズを目に入れた。
「あ、あれ…?」
「どう?痛くない?」
「…痛くない。」
「じゃあもう大丈夫だよね?」
そう言いながら、左目の方のコンタクトレンズをツナに差し出した。
「ミニモスカ」
ソラがそう言っただけで、ミニモスカはツナの両肩から手を離した。
ソラからコンタクトレンズを受け取り、痛くないのが解ったからからなのか、すぐ目に入れられたツナ
「コンタクト、はまったようだな。」
「は…はい、なんとか。ありがとう、姫ちゃん」
「どう致しまして。次はそのコンタクトをはめた状態で、超モードになるんですよね?」
「ああ、そうだ。始めてくれ。」
その場で立ち上がり、毛糸の手袋をはめるツナ
『死ぬ気丸の用意はいいな?』
「うん。」頷いてから、死ぬ気丸を呑んで、超モードになったツナ
『どうだ?ツナ』
「視界が霞む。」
「やはり調整に時間が必要だな。」
そう言いながら、手を組んだスパナ
「どれくらいかかる?」
「う〜ん…20分もあれば。」
「掛かり過ぎだ。」
「そう言われても掛かるもんは掛かる。」
「リボーン、その後連絡は?」
『電波が悪いらしく、誰からもねぇな。』
(みんな……大丈夫だよね……?)
未だに他のメンバーからの連絡が一切入ってこないのを聞いて、無事を祈っていたソラ
『今は無事を祈るしかねぇな。』
その時、ヘッドホンに誰かの叫び声が聞こえて来た。
(!?…この声っ…タケ兄!?)
「リボーン、今の…」
『山本の声だな。』
『山本様の通信機の電波を確認。どうやら戦闘中のようです。あっ………通信が切れてしまいました。』
ジャンニーニが山本の通信機からだというのを伝える。
『どのあたりに居るかは解んねぇのか?』
『それが…電波が弱くて……それに、時間も短かったので…』
リボーンにそう答えるジャンニーニ
『そうか。』
(タケ兄…)
「スパナさん、早くコンタクトレンズを調整して下さい!」
超モードを解いたツナがそう言い、外したコンタクトレンズをスパナに渡した。
「ああ、わかってる。しかし、急かしたって、時間は変わらない。」
ツナからコンタクトレンズを受け取ると、すぐに作業机の所に移動するスパナ
「20分掛かると言ったら20分だ。早くも遅くもならない。」
そう言いながら、キーボードを打ち始めた。
(早くも、遅くもならない…か。…時間に正確なんだね。)
スパナの作業を見ながら、心の中でそう呟いたソラ
「ん?」口に銜えていた棒を手に取るスパナ
「?」きょとんとするツナ
「ちょっと…」ツナ達の方を振り向くスパナ
「え?」スパナの声に反応するツナ
「違う、違う。」
その時、ミニモスカがスパナに近づいた。
「あっ……そっちか。」ミニモスカを見て納得するツナ
ミニモスカの体から、スパナ型の棒キャンディーが出て来た。
「キャンディーが出て来た!?…あの、何でいつもキャンディー舐めてるんです?」
「糖分は脳の回転を速くしてくれるからだよ。」
スパナが口に銜えていた棒キャンディーをツナ達に見せながら、自分が作った物だと言う。
「変な形のキャンディーだと思ったら、手作りだったんですか。」
「うん、買うと高いから。ボンゴレもこれでも舐めて静かに待ってな。」
ミニモスカから差し出された棒キャンディーを口に銜えたツナ
その後、ソラにも差し出したミニモスカ
「ありがとう。」そう言ってから、ソラも棒キャンディーを口に銜えた。
「苺味だ…」
「私のも。」
「…って(こんなの舐めてる場合じゃないのにっ……みんな…大丈夫…?)」
獄寺達の事を心配するツナ
(………タケ兄、みんな……無事だよね…?)
キャンディーを舐めながら、ソラもみんなの事を心配していた。
約5分後……
「あのっ……あの、スパナさん、まだですか?」
落ち着きのないツナが作業中のスパナに声を掛けた。
「まだ5分しか経ってないよ。」
作業を続けながらツナにそう言うスパナ
『落ち着け、ツナ。そんな事してると、スパナの気が散って、返って遅くなるぞ。』
ツナに落ち着くように言うリボーン
「で…でもっ…」
『姫を見てみろ。』
そう言いながら、ツナの傍に居るソラを指で指したリボーン
フードを被っているのでツナ達には見えてないが目を瞑っており、立ったまま手を組んで静かにしていた。
『少しは姫を見習え。お前より落ち着いてるぞ。』
「う゛っ…」
『10代目、宜しいですか?私がお手伝いします!バックアップならくらいなら、こちらでフォロー出来ます。』
ジャンニーニがツナにそう言った。
「じゃあ頼む。」
『は、はい。お任せ下さい!来た来た来たぁ……来ましたよ〜…ガンガン解析致します。』
「これで少しは完成が早くなりますね!!」
「いや…」
「え?」
「お宅の技術者が手伝ってくれるのは、まっ…最初から計算済みだ。完成の時間は変わらない。」
「ええっ!?そうなの?」
『お任せ下さい、10代目!私が少しでも作業スピードを上げてみせます!』
「う、うん…ありがとう。」
『ともかく、今は待つのがお前の仕事だ。』
「リボーン……うん。」
さらに5分……開始から10分後……
ツナは立ったまま身に着けているヘッドホンに耳を傾けていた。
『無駄だぞ。ツナ』
「えっ…」
『通信は途切れたままだ。』
「うん。(山本、誰かと戦ってるみたいだった。いったいどうなっているんだっ……みんな、無事なのかな……山本…獄寺君…お兄さん…
ラル…雲雀さん…みんな……みんなを守りたい。…なのに、俺はっ…)」
「大丈夫だよ。」
「えっ…」
「綱吉さんなら、きっとみんなを守れる。(パパはいつもみんなを全力で守ってたから…)」
「姫ちゃん…」
「だから大丈夫。“X BURNER(イクスバーナー)”を必ず完成させて、みんなと合流しよう?」
「うん…そうだね。」
「あと10分。」
「え?」
「あと10分で完成させる。ウチは時間に正確だから。」
作業の手を一度止めて、ツナ達の方へ振り向いて頷くスパナ
『そういう事だ。焦っても何にもならないんだぞ。今は山本達を信じて待て。お前の出番が来たら、出来る事をやればいい。』
「リボーン……」
その時、ミニモスカがツナとソラの傍まで近づき、お盆に乗せたオレンジジュースを差し出して頭を2回頷かせた。
どうぞとでも言うように……
「ありがとう。 ミニモスカ」お礼を言いながら受け取ったソラ
「あ…ありがとう。」ソラに続くように、ツナもお礼を言って受け取る。
リボーンのおかげでいくらか落ち着いたのか笑い出していたツナ
ツナとソラがオレンジジュースを飲み終わり、ツナはまたスパナに声を掛けた。
「スパナ…さん?スパナさん、コンタクトの調整、なんとか早く出来ませんか?」
「何を言われても完成時間は変わらない。ウチのポリシー」
「ハァ…」
『ふむ…なぁ、スパナ』
「?」キーボードを打ちながら、リボーンの声に反応した。
『白くて丸い装置の事を知ってるか?…ジャンニーニ。例のやつを出せ。』
『かしこまりました。』
「あっ…」
ツナが着けているヘッドホンから映像が映し出された。
『そいつなんだが、この基地のどこかにあるはずだ。』
スパナはキーボードを打ちながら、映し出された映像に視線を向ける。
「…あ」
「し…知ってるんですか!?」スパナの反応を見て問うツナ
ヘッドホンから映し出されていた映像が消えた。
「正一の研究室にある。」
「え!?入江正一の?」
『何を研究してんだ?』
リボーンの問いにすぐに応えなかったスパナ
「ス…スパナさん?」
「………ずっと前に聞いた時は、亜空間のエネルギーを捕まえるって呟いてたな。」
キーボードを打ちながらそう答えたスパナ
「亜空間…?」
「通常の物理法則が通用しないとされる想像上の空間の事だよ。」
『その通りだ。んで?そんなもん、何に使うんだ?』
「相当ありえない話だよ。確か時空間移動絡みの、いわゆる……タイムトラベル。」
『タイム…』リボーンが呟く。
「トラベル!?」ツナが叫ぶ。
(タイムトラベル……!!…そうか!…本来10年バズーカは5分で戻れるのに、過去へ戻る事が出来ず、この時代に留まっていたのは、
あの白くて丸い装置が原因なんだ!!でも、もしそれが当たりなら、あの装置はっ……)
ソラは白くて丸い装置について思考していた。
「タイムトラベル!?それってっ…」叫ぶツナ
「あ…(言って良かったんだっけ…?)」言った後になってそう思ったスパナ
「リボーン!!」
『やっと点と点が繋がったな。…奴がタイムトラベルの研究をしていたとなると、過去へ戻るために入江を標的にするってのはドンピシャリだ。』
『しかし、本当にタイムマシンを発明したとは……』
『間違いねぇだろ。10年バズーカがあるぐれぇだからな。』
「10年バズーカ?」キーボートを打つ手を止めたスパナ
「俺達は10年バズーカでこの時代に来てしまって、過去へ帰れなくなったんです!その手掛かりが入江正一にあると聞いてここへ来たんだ!!」
スパナにそう説明したツナ
「ああ……だから子供なのか。」
「はい。」
『この感じだと、入江は手掛かりどころか、元凶そのものなのかもな。』
「うん…」リボーンの言葉に頷くツナ
『あの装置に、過去に帰れない事と深く関係していそうだぞ。』
「うん。…やっぱり、この侵入作戦は間違っていなかったんだ……これで入江正一を何のために倒すのかはっきりわかった…
入江正一を捕まえて、俺達が過去へ帰る方法を白状させるんだ!!」
入江正一を何のために倒すかはっきりしたツナがそう言った。
『フっ…だな。』そんなツナに満足そうなリボーン
(違うっ……絶対に違う!!正一さんは敵なんかじゃない!!だってっ…)
超直感が何かを感じたのか、または別の何かを感じてなのか、ソラは入江正一を敵と見なしていなかった。
「何に気づいたって、時すでに遅しだよ。」
突然この場には居ないはずの女性の声が聞こえて来た。
声の聞こえた方に振り向くと、そこにはモジャモジャの髪の女1人と、額に紫の死ぬ気の炎を宿した4人の屈強な男が現れた。
「あんた達はここで永遠におねんねするんだからさ。」
「アイリスと死茎隊!!」
現れた人達を見てそう叫んだ後、ノートパソコンを死守するスパナ
「下がっていろ!」スパナにそう言ったツナ
ツナはいつの間にか超モードになっていた。
(確か、第12カメリア隊だっけ…隊長は『妖花アイリス』と呼ばれていて、4人の死茎隊が居るっていう…)
スパナが言った名前を聞いて驚き、敵の情報を思い出していたソラ
「フフっ…少しは楽しめそうだね。」
不敵な笑みを浮かべるアイリス
『あいつらも額から死ぬ気の炎を出すのか。』
リボーンが死茎隊の4人の額の炎を見ながらそう呟いた。
「紫って事は、雲属性…」死茎隊の額に灯ってる炎を見ながら呟くソラ
「準備はいいかい?ボンゴレボーイ」
戦闘態勢に入るツナ
「やめとけ、ボンゴレ。死茎隊は今のあんたが敵う相手じゃない。」
『そうか?ツナはお前のキング・モスカと相打ちに出来るほどの強さだぞ。』
「だからだ。前に死茎隊の戦闘シミュレーションをやった事があるが………ボロ負けだった。」
「!!」スパナの言葉に反応するツナ
(あの死茎隊、そんなに強いんだ。情報としては知ってたけど、目の前で見るのは初めてだから、どのくらい強いのかは知らないんだよね……でも、決して勝てない相手じゃない。)
アイリスと死茎隊を見ながら心の中でそう呟いていたソラ
「ふーん。死の忠告をしてやるなんてお利口じゃないか、スパナ。まっ、どっちみち、裏切り者のあんたもここでお仕置きされるんだけどね。」
「え…」
「さぁ、いくよ。僕ども!」
アイリスの声に反応する死茎隊達。
「燃えてきな!!」そう言いながら、雲の炎を纏ったバラ鞭を死茎隊の4人の体に一回ずつ打つアイリス
すると、死茎隊の様子に変化が……
『こいつはっ…』
「増強…?」
「その通りさ。『陽色の姫君』」
「で…出たっ…死茎隊、雲の肉体増強だ。」
(肉体増強……筋力や関節を増殖して強化を施す……いったい、死茎隊は何なのっ…!?)」
肉体増強する死茎隊を見ながらそう思ったソラ
「ボスの許可が出たよ。スパナ」
死茎隊の肉体増強中に連絡を取っていたらしいアイリスがスパナに言っていた。
(ボスって……正一さん…だよね?)
「それと『陽色の姫君』」
「何ですか?」
「あんたは生け捕りにしろって、白蘭様に言われてるんだよね。出来れば無傷で差し出したい……大人しくこっちに来な!!」
「お断りします。」即答するソラ
「(…そんな上手く行ってれば、もっと早く生け捕りに出来てるか。)どうしてもかい?いくら強いあんたでも、あたいの死茎隊と戦って
勝ち目があるとは思えないんだけどね。」
「相手が子供だからと侮ってると、痛い目見ますよ?死茎隊相手に手こずるほど弱くないつもりです。」
「なんだって!?あたいの死茎隊に勝てるとでも言うのかい!?」
「ええ。機械が相手じゃない分、随分と戦いやすいですよ?感情がありますから。(超直感も働くしね。)」
(確かに姫はウチのモスカ達相手に余裕で戦っていた気がする……)
ストゥラオ・モスカと戦ってた時のソラの事を思い出すスパナ
データは確かに残ってないが、少しだけ戦いをストゥラオ・モスカに内臓されていたカメラを通して見ていたのだ。
「………あんた、どんだけ強いんだい?」
「さぁ?知りませんね。」
「そうかい。(いったいどれ程の実力を持ってるんだい?『陽色の姫君』は…)とりあえずボンゴレが先だね。
覚悟はいいかい?ボンゴレボーイ……さぁ、ひねっといで、僕ども!」
4人のうち、2人の死茎隊がツナに向かって突っ込んできた。
「!…やばいっ…」ツナの傍から離れるスパナ
ソラもスパナに続くようにツナの傍から離れた。
突っ込んできた2人の死茎隊に攻撃を仕掛けたツナ
ツナの攻撃で2人の死茎隊は壁に衝突した。
だが、すぐ動き出した2人の死茎隊
どうやらその程度では痛みを感じないようだった。
「やっちまいな!」
再びアイリスの掛け声でツナに襲いかかった死茎隊
今度は4人全員で四方を固め、ツナに襲いかかっていた。
「いいか、ボンゴレ!奴らを甘く見るな!」
ツナは上に逃げる事で突っ込んでくる4人の死茎隊の攻撃を回避し、空中で一回転して降りて来た。
死茎隊はすぐに次の攻撃を繰り出した。
4人のうち、2人の片腕が伸びて、ツナに襲いかかった。
(筋肉どころか、関節まで増殖してるのか?)
ツナは2本の腕を両方の手で1本ずつ受け止めながら、心の中で呟いていた。
「あたいの僕と力比べとはね……笑えるね!!」
その時、別の死茎隊がツナに近づき、腹に思いっきり蹴りを喰らわしていた。
そのまま壁に衝突し、壁の向こう側までまで突き飛ばされてしまったツナ
「……だから無理だって…」
『何なんだ?ありゃ……姫、知ってるか?』
「死茎隊の存在は知ってたけど、私も実際に見るのは初めてだから……」
申し訳なさそうに言うソラ
「死茎隊……ミルフィオーレの研究者が生み出したモンスター…」
そう言いながら、説明し始めたスパナ
死茎隊がどうやって生まれたのか。
アイリスの持っているバラ鞭に雲の炎を灯し、それを打つ事で死茎隊は
肉体増強を起こし、何倍ものパワーを発揮する事。
『命を弄んだか…ひでぇ事をしやがる。』
「すべてはアイリスの仕業さ。ミルフィオーレの研究所では組織に役立ちそうな医学や遺伝子工学の実験を行っていた。
アイリスはそこに努める博士たちの助手だった。」
スパナの話によると、死茎隊はアイリスが色仕掛けなどで言葉巧みに博士達の研究成果を横取りし、自分の手で作り上げたらしい。
(死茎隊はあの人によって生み出されたモンスターだったんだ。それであの姿……不気味な姿だとは思ってたけど、まさかそんな経緯で
生み出されてたとはっ……リボ兄の言う通り、あの人…命を弄んでるっ…命を、いったい何だと思ってるの!!)
両拳を強く握り締める事で、怒りを必死に抑え込んでいたソラ
「本当に可愛い奴だ、お前達は。」
死茎隊の4人を撫でるアイリス
『歪だな。』
「歪んでるからな、アイリスは。」
リボーンとスパナはアイリスと死茎隊を見てそう呟いていた。
「さぁ、ボンゴレは壁の向こうだよ。掻っ攫っといで。」
そう言いながら、壁を開けるレバーを動かした。
レバーを動かした事で壁が開き、壁の向こう側にはツナが立っていた。
「へぇっ…なかなかしぶといじゃないか。簡単にくたばられちゃ、こっちとしてもつまらないからね。」
「ボンゴレ…」
「スパナ、何をしている。」
「え…」
「早くコンタクトを完成させてくれ。」
『フっ…(そうか…)…完成時間が変わらねぇのがポリシーなんだろ?早く作れ、スパナ』
「でも……死茎隊はキング・モスカより強いって言ったろ?無駄な足掻きだ。」
「綱吉さんはそうは感じてないみたいですよ。」
両手のグローブに炎を灯したツナは、炎の推進力で死茎隊に向かって飛んだ。
「やっちまいな!」
アイリスの命令を聞き、再びツナに攻撃を仕掛けた死茎隊。
だが、4人のうち2人がすぐにツナの攻撃でやられていた。
「なんだい?どうなってるんだい!?僕どもが…」
「ウチの知るボンゴレとは……まるで動きが違う…死茎隊の動きにありえない速度で反応してる。」
ツナと死茎隊の戦いを見て驚くスパナ
『キング・モスカ戦とでは違う所が2つあるからな。』
「え…」
『1つはキング・モスカを倒した経験…それがあの時のツナとは比べものにならない程に戦闘能力を引き上げてる。』
「でも、そんな短時間でそんな事がありえるのか?レベルがいくら跳ね上がっても…」
『フっ…現に今までも戦う度にあいつは信じられないような成長を遂げてきたんだ。…傷だらけになりながら、それでも逃げ出さねぇで、
圧倒的に強い相手と戦い、戦う度何かを掴んで強くなる。それが、まだ未完成のツナとあいつらの最大の強みなんだ。』
(私にもなんとなく解るよ。修行の時、パパは戦いの中で何かを必ず掴んでた…)
ツナのこれまでの修行の時の事を思い出しながらそう思っていたソラ
『そしてもう1つ、ツナには強みがある。それは相手が機械ではなく、感情ある生物だという事だ。』
そう言いながら、ツナと死茎隊の方に視線を向けるリボーン
釣られて、スパナも視線を向ける。
死茎隊の1人から伸びた両腕を難なくかわして攻撃していた。
『生物だからこそ行動に移る時の些細な筋肉の動きや考える予兆というものがある。ツナはそれを感じとってんだ。
これこそが、ブラット・オブ・ボンゴレに継承される“見透かす力”…またの名を……超直感。』
「“見透かす力”……超直感…」
ノートパソコンを開き、作業を再開していたスパナがリボーンの説明を聞いて呟いた。
「死茎隊の攻撃に移る前の些細な筋肉の動きを感じ取って、綱吉さんは瞬時に反応してるんです。」
ツナと死茎隊の戦いを見ながら、スパナにそう言ったソラ
「………ホントにボンゴレは、死茎隊のわずかな筋肉の動きや感情を読み取って動いてる。こんな事が出来るなんてっ……」
信じられない表情をしていたスパナ
「またボンゴレはウチの想像を上回ってきた……ますますそんな男が編み出した“X BURNER(イクスバーナー)”の完成形を見てみたい!
待ってろ、ボンゴレ」
(……この後に及んでもまだ完成させる気なんだ……裏切り者って言われたのに……!?…)スパナさん、危ないっ!!」
スパナの様子を見て心の中でそう呟いていたソラが何かに気付いた。
ソラは作業しているスパナの腕を引いて少し後ろに回避させた。
回避した直後、スパナが今居た場所に死茎隊の手が振り下ろされた。
「『陽色の姫君』に助けられたようだね、スパナ」
「アイリス…」
「何をするつもりか知らないけど、そう簡単に思い通りにさせると思うかい?」
スパナがツナの方に視線を向けると、死茎隊3人と対峙していた。
ツナがこっちに来れない事が解った後、視線をアイリスに戻したスパナ
「フフフっ…ボンゴレボーイから先に片付けようと思ってたけど……意外に手強いようだからね。それに、あんたは何をやらかすか解らない…
野放しにすると面倒な事になりそうだ。」
一旦そこで言葉を切り、監視カメラの方に視線を向けたアイリス
「その才能を大将はとても買っていたのにさ。」
監視カメラに向けてそう言うアイリス
「正一……」
監視カメラに視線を向けて呟くスパナ
「フンっ…これだから、ブラックスペルの奴は信用出来ないんだ!」
視線をスパナに戻してからそう言い放ったアイリス
「正一には悪いと思ってる。でも、ウチはっ…」
そう言いながら、顔を俯かせるスパナ
「スパナさん、今はとにかく逃げて下さい。この死茎隊の相手は…私がします!」
そう言いながら、右手の中指のサブリングに炎を灯し、左手に持った匣に差し込んだ。
その匣から出てきたのは、晴カメレオンのレオだった。
匣から出てきたレオはソラの左肩に乗った。
「『陽色の姫君』が戦うのかい?そんな小さなカメレオンに何が出来るんだい。」
「レオ、“武器変化!!(カンビオ・アルマ)”」
ソラは右手にレオを乗せた後、そう叫んだ。
レオはソラのその掛け声で銃に姿を変えた。
そして、左手には、左太股のガンホルダーから出した銃を持ち、右手には銃に姿を変えたレオを持った。
「へぇ……姿を変えれるカメレオンだったのかい。でも、いくら強いあんたでも、あたいの死茎隊に勝てるもんか!!やっちまいな!!」
アイリスの命令でソラに襲いかかろうとしていた死茎隊。
「スパナさん、何してるんです?早く逃げないと、死茎隊に襲われますよ?」
スパナにそう言ってから、襲ってこようとしている死茎隊に向かって、晴の炎の推進力で詰め寄り、
死茎隊に思いっきり蹴りを喰らわせ、スパナから少しだけ距離を離し、そのまま戦闘を開始したソラ
その間にスパナはノートパソコンを抱えて駆け出した。
「逃がさないよ!!」
ツナの方に行かせていた死茎隊3人のうち1人をこちらに呼び寄せ、
スパナを襲うように命令を出したアイリス
命令された死茎隊はスパナを追いかける。
走っていたスパナは何かに躓いてこけた。
こけたスパナに向かって、右腕を振り下ろそうとしていた死茎隊だったが、
ミニモスカが体を張って、死茎隊の右足に飛びついた事で、狙いを外させた。
やられると思って目を瞑っていたスパナだったが、来るはずの痛みが来ない事に疑問を抱き、瞑っていた目を開いた。
自分の真横に死茎隊の右手が食い込んでいる状態に驚きながら、死茎隊の方に視線を向けた。
「ミニモスカ!」死茎隊の右足に掴まって押さえつけているミニモスカの姿を見つけたスパナ
少し離れた所で死茎隊と戦っているソラがスパナの叫び声を拾い、宙に浮いたまま視線を向けた。
(ミニモスカが、死茎隊からスパナさんを守ってる…)
【姫、次来るよ。】
レオにそう言われ、死茎隊から伸びる腕を回避しながら、隙を突いて死茎隊に向かって1発撃ったソラ
死茎隊に命中し、ダメージを受けたからか、攻撃を一度止めた。
ソラはそこでもう一度スパナとミニモスカの方に視線を向けた。
死茎隊に向かって両手の銃口からポップコーンを発射していたミニモスカ
(やっぱり、ミニモスカには武器が一切装備されてなかったみたいだね。でも…あのミニモスカは、ストゥラオ・モスカとはまた違う。
自分の意志で行動して、自分を作ってくれたスパナさんを守ろうと奮闘してる。)
【姫、どうかした?】
「ううん。ただ…あのミニモスカ、心があるような気がしただけ。」
【そっか。君がそう言うならきっとそうだよ。それより、そろそろ死茎隊が動くよ?】
「うん。」目の前の死茎隊に視線を戻したソラ
「いい加減にしな!!」
アイリスの怒鳴り声が聞こえ、再びスパナの方に視線を向けたソラ
その視線の先には、振り下ろされた死茎隊の右腕を受け止めてるミニモスカの姿があった。
「!?…マズイっ……このままじゃっ…レオ!」
【うん、解ってるよ!】
ソラのやりたい事を瞬時に理解したレオ
「少しの間動けなくさせてもらうよ!!」
死茎隊に右手の銃を向けながらそう言ったソラ
このままではミニモスカが死茎隊に壊されると知ったソラが取った行動とはいったい…?
今回は白くて丸い装置の事を聞いて知るのと、アイリスと死茎隊がツナ達の前に現れる所ですね。
ここでは本来なら、4人の死茎隊と1人で戦うツナですが、そこにソラを入れて、少し変えてみました。
次回はジンジャーが再び登場します。出番薄そうですが。
それでは標的45へお進み下さい。