白くて四角いロボット

先程の揺れで倒れたドラム缶などを元に戻すミニモスカの姿があった。

スパナの提案を受け入れる事に決めたツナは、コンタクトレンズを手に持って見つめていた。

ソラはツナの隣に座って、リボーンとその様子を見ていた。

『何やってんだ、ツナ。早くコンタクトレンズをつけてみろ。』
痺れを切らしたリボーンがそう言う。

「う…うん…」渋るツナ

「もしかして…あんたもウチを信じられない?」

「えっ…」

「ウチはあんた達と敵であるミルフィオーレの人間だから信じられないのも無理はない。」

「い…いえ、俺…あなたを疑ってるとかじゃなくてっ…」

「そうなのか?」

「えっと、なんていうか…スパナさんは敵っていう感じがしないっていうか、姫ちゃんが居たからとはいえ、気を失ってるのを助けてくれたし。」

『ツナは底抜けにお人よしだからな。敵だった奴にも情けをかけやがるし。』

「なっ…」

『だが、そこがツナの良い所でもある。』

「!…リボーン…」

『フっ…それに、こいつの人を見る目はわりと当てになるんだ。』

「えっ…そ、そうかな?アハハっ…アハハハっ…」
滅多に褒める事のないリボーンの言葉を聞いて嬉しそうにするツナ

『調子に乗んな。それでも騙されやすいダメツナに変わりねぇんだからな。』
そう言って、銃に姿を変えたレオンをツナに向ける。

すぐに反応して、立体映像にも関わらず怖がるツナ

(…立体映像(ホログラム)なんだから、そこまで怖がらなくても…)
リボーンとツナのやり取りを黙って見ていたソラ

「フっ…面白いな、ボンゴレは…」

「綱吉さんの事、個人的に気に入りました?」

「うん。気に入った。」


少しして、またコンタクトレンズを見つめていたツナ

『早くそのコンタクトをつけろって言ってるだろ。ツナ』

「いや、わかってるんだけど…その……」

「?」首を傾げるソラ

「これっ…目に入れるの、痛くないかな?」

(パパ、そんな事でコンタクトつけるの渋ってたの!?)
声にこそは出さなかったものの、心の中で盛大にツッコミを入れていたソラ

『ツナ、お前そんな事でビビってたのか。』
呆れた声でツナに言うリボーン

「だって俺、コンタクトなんて使った事ないし。それにいろいろ機能がついてるって事は、普通のコンタクトとかと違うんでしょ?」

「大丈夫だ。普通のコンタクトレンズより薄型で違和感もない。戦闘用でもあるから、激しく動いてもズレない。」

「そ…そうですか。」

『とにかく、それをつけないと始まらねぇんだ。とっととつけろ。』

「わ…わかったよ。」
そう言って、コンタクトを目に入れようとしたが、目を閉じてしまうツナ

『目を閉じてどうする。』

「だって俺、目薬差すのも下手なんだよ。どうしても目を閉じちゃって…」

『ハァ…ほんっとーにダメツナだな。』

「でも急いだ方がいいよ。」

「え?」

「あまり時間がないかもしれない。」

「そうですね。今、綱吉さんは行方不明って事になってるみたいだけど、その嘘の報告がバレるのも時間の問題だし。」

『ん?ちょっと待て。お前は?』

「あっ………私はどうなってるんですか?」
自分の事はすっかり忘れていたのか、少し間を開けてから、スパナに聞いたソラ

「あんたは3体のモスカ達を修復不可能なまでに壊したし、その時の戦闘データも完全に破壊されてて残っていないからどうなったのか
知る事が出来ない。だから、3体のモスカを倒した後、戦闘離脱したって報告してある。」

『そうなのか。』

(…見た目からは物凄くダメージがあるのは解ってたけど…耐炎性だから、まさか内側までそんなにダメージを受けてるとは思わなかったよ。
データも残らなかったみたいだし。…太陽やレオも驚いていたけど……やっぱり、また強くなってる…?)
悲しい眼で自分の左手を見つめていたソラ

だが、フードを被っているため、誰もその事に気付く事はなかった。

「へぇ〜…(やっぱソラちゃん、強いな…いったいどれだけの修行を積んだんだろう?)」

『モスカを3体も倒すなんてさすが姫だな。』

「太陽が居たから出来ただけだよ。」
左手を見つめるのをやめて、リボーンに視線を向けたソラ

『そう謙遜すんな。おめぇの実力は解ってんだからな。』

「ありがとう。とにかく…綱吉さん、早くそのコンタクトつけて。」
リボーンからツナに視線を移してそう言ったソラ

「う…うん…」

そう返事はしたものの、未だレンズをつける勇気がないツナだった。


「ハァ〜…」右手の人差指に乗せたコンタクトレンズを見てため息をつくツナ

『早くしろよ。ツナ』

「だってっ…」

『だってもクソもねぇっ…さっさと覚悟を決めて入れやがれ。』

その時、ツナの人差指にあったコンタクトレンズを奪い取ったソラ

「姫ちゃん?」

「綱吉さん、いい加減覚悟決めましょうよ。…ミニモスカ、綱吉さんが逃げないように捕まえててくれない?」
リボーンと同じく、痺れを切らせたソラがツナにそう言ってから、ミニモスカにお願いする。

ミニモスカはソラに言われた通り、ツナの傍まで移動して、逃げないようにしっかり両肩を掴んで動けないようにした。

「えっ!?ちょっとっ…!?」

「じっとしててね?」

「うわっ!?ま…待ってーっ!?」

ツナの右目の瞼が開け閉めしないように押さえ、左手の人差指に乗せていたコンタクトレンズを近づけ、ツナの目に入れたが…

「いたっ…いたたたっ…」

ツナがあまりにも痛がり、押さえていた瞼が動いて、その拍子にコンタクトレンズが外れてしまった。

『何やってんだ?』

「何って痛いんだもん。」
涙目になりながらも右目を擦るツナ

「…ミニモスカ、手を離していいよ。手伝ってくれてありがとう。」

ソラの合図でツナの両肩から手を離したミニモスカ

落ちたコンタクトレンズを手に取るスパナ

「普通より薄型だし、痛いはずないんだけど…」
そう言いながら、コンタクトレンズを見るスパナ

(う〜ん…パパには今のレンズは合わないのかな…?)
涙目になってるツナを見ながらそう思ったソラ

『ちっとは我慢しろよ。』

「ダメなんだよ、こういうの。」

「だからって、いつまでもつけるのを怖がったり、痛いって言ってたら、”X BURNER(イクスバーナー)”を完成させる事が出来ないよ。
さっき言ってたでしょ?時間があまりないかもしれないって……」

「う゛っ…ごめん。」しょんぼりするツナ

「このレンズってどっちのタイプですか?」

「ハードタイプだ。」

「(ハードタイプか。なら…)レンズの素材、変えられますか?」

「それしか…なさそうだな。」

「えっ?」きょとんとするツナ

「コンタクトレンズには2つのタイプがあってね、ハードタイプとソフトタイプがあるんだ。今綱吉さんがつけたのはハードタイプのレンズで、
さっき痛かったのは、目に合わなかったからだよ。だからソフトタイプに変えられないかな?って。そっちなら、目に入れた時の違和感が
なくなるはずだから、痛かったりする事はないと思うよ?」
ツナに解りやすいように説明したソラ

「へぇ…そうなんだ。」

『感心してる場合か。そんくらい知っとけ、ダメツナ』

「仕方ないだろ?使った事ないんだから。」

『それを言ったら、姫だって使った事ねぇだろ。』

「う゛っ…」言い返せないツナ

「それで…出来ますか?」

「耐久性にやや心配が残るが、たぶん大丈夫だろう。」

『ツナがつけられなきゃ、どうしようもねぇしな。』

リボーンの言葉を聞いて落ち込むツナ

『どのくらい掛かる?』

「ディスプレイに情報を表示する基本的なシステムは同じだからな……もう1時間もあれば、なんとかなるだろう。」

「すみません、スパナさん」

『しかし、その時間をただ待つのだけなのはもったいねぇな。』

「確かに……そうだ、あれを使ってもらおう。」
何か閃き、ある物に目を向けたスパナ

スパナに釣られて、ツナ達もそこに視線を向ける。

そこには、椅子型の何かの機械があった。

「何なんですか?」ツナがスパナに聞く。

「キング・モスカの戦闘プログラムを作る時に使ったシミュレーター…イメージを直接頭に流し込んで、
実際に戦闘してるかのように体験出来る。」

『バーチャルリアリティーってやつか。』

「へぇ〜…面白そうですね。」

(…ただやらせるだけ、じゃないよね…?)

「そいつであんたの戦闘データを取らせてもらいたい。」

「えっ…」

(やっぱりね。……たぶん、パパの“X BURNER(イクスバーナー)”の最大出力が知りたいからだろうけど。)

「キング・モスカとの戦いでも集めたけど、まだまだ代物だ。あんたが限界まで力を出しきった時に
どれくらいのレベルになるのか確認しておきたい。」

ミニモスカが端っこにあった装置をツナ達の傍まで移動させた後、スパナが近づいて、その機械をいじり始めた。

「ええっ!?ス…スパナさん、そんな急に言われてもっ…」

『いいじゃねぇか。戦闘経験にもなるからやってこい。』

「で…でもっ…」立ち上がってスパナの傍に行くツナ

(確かに10年前から来たパパは、戦闘経験が浅過ぎる。……あの装置で少しでも経験値を積めれば、少しは良くなるかも…)
スパナの所に移動するツナを見つめながら、そう思ったソラ

「シミュレーターの世界なら、多少は無茶が出来る。より覚悟の上限があんたの力を最大へと引き出してくれるはずだ。」

「あの…より覚悟の上限って、凄く気になるんですけど。」

『良いから座ってみろ。』

「え!?俺が!?」

『お前がやらねぇで誰がやるんだ?』

リボーンの言う通り、大人しく椅子に座ったツナ

「座り心地は?」

「はぁ…悪くはないです。」

「それは良かった。」

その時、座っているツナが拘束され、身動きが取れなくなった。

「なっ…何すんのーー!?」叫ぶツナ

「戦闘データの収集…」

「ちょっとっ…俺、まだやるなんてっ…」

『お待ち下さい!』

ツナのヘッドホンからジャンニーニの声が聞こえてきた。

「ジャンニーニ?」

『危険です!バーチャルリアリティーは、体験者にとって現実そのもの。もし死ぬような事があれば、
実在する10代目の命を落としかねませんよ。』

「ほんとなんですか!?」

「ああ。けど、心配要らない。」

ミニモスカがツナの右肩を1回叩いて頷く。
大丈夫だと言うように……

「心配するって!」

『おやめ下さい!万が一の事があったらっ…』

『構わねぇからやってくれ。』

抵抗するツナにヘルメットを被せようとするミニモスカ

「ミニモスカ、ちょっと待って!」

ソラの声を聞いて、動きを止めたミニモスカ

「ひ…姫ちゃんっ」

『姫、なぜ止める?』

『姫さんも反対ですよね!?』

「ううん、全然。リボ兄と同じ賛成派。」

「なぁっ!?」ショックを受けるツナ

『な…なぜですか!?』
ソラがそう言うと思ってなかったのか、驚いた声を出すジャンニーニ

『じゃあなんで止めたんだ?』不思議がるリボーン

「ちゃんと本人が了承してからにして。望んでもない事を無理やりするのは……嫌いだよ。」
マントで隠れているが、両拳を強く握っていたソラ

ソラのその言葉に何か思う事があったのか、ボルサリーノを目深に被る素振りをしたリボーン

ソラはツナの傍まで近寄った。

「シミュレーターの世界で綱吉さんがする事は、炎の最大出力のデータを取得する事。“X BURNER(イクスバーナー)”を撃つ時の
最大出力が解っていないと、コンタクトディスプレイにどのくらいの出力まで設定すればいいか解らないからね。そしてリボ兄と私が
この装置を使う事に賛成な理由は、戦闘経験が積めるから。今の綱吉さんは戦闘経験が浅過ぎる。だから、それを少しでも
埋めるためにもこれはいい機会なんだよ。」

「姫ちゃん…」

「どうする?綱吉さん」

ツナは目を瞑って、考え込む。

「………やる。“X BURNER(イクスバーナー)”を完成させるって決めたんだ。それに…(今のままじゃ、ソラちゃんを守るどころか、
守られてばかりだからね…君を守れる俺に、少しでもなりたいんだ!!)」
瞑っていた目を開き、ソラに視線を向け、そう心の中で新たな決意をしていたツナ

「?(何を決意したんだろ…?)」
自分の事を見ながら何か決意したのは解るのだが、何を決意したかまでは解らなかったソラ

「スパナさん、俺…やります!」

『よく言ったぞ。ツナ』

「じゃあ始めてもいいか?」

「はい!」

『10代目、お気をつけて!!』

「頑張って!!綱吉さん」

ミニモスカがツナの頭にヘルメットを被せた。

その後、スパナがバーチャルリアリティの世界に居るツナに説明した後、シミュレーションが開始された。

(始まったみたいだね。)
ツナが座っている椅子を背もたれにして座りこんだソラ

(パパ、頑張って……)目を瞑ってそう祈りながら、そのまま眠ってしまったソラ

ツナの傍に居るのと、この基地に突入してからの疲れがあったからか、ずっと張り詰めていた気を抜いてしまい、眠ってしまったようだ。


『ソラ、今日これから会う人の事は、時が来るまで誰にも話しちゃダメだよ?』
今より幼いソラを抱き抱えているツナが優しくそう諭す。

『?…どうして?それにときって??』
幼いソラにはツナの言ってる事がまだよく解らなかった。

『今は何も解らなくていいよ。時が来れば、ソラの超直感が教えてくれるから。でも、覚えていて?これから会う人の事を…』

『……パパのおともだち?』

『うん、そうだよ。今は訳あって、頻繁に会う事が出来ないけど…パパの大切な友達。』

『………わかった!そら、ぜったいわすれない!!だれにもいわない!!』
父親の様子を見て、幼いながらに察したソラはそれ以上問い詰めなかった。

『ありがとう、ソラ』
そう言いながら、満面の笑みをソラに向けながら、頭を優しく撫でるツナ

ソラも満面の笑顔をツナに向けていた。


体が揺れるのを感じ取り、目を覚ましたソラ

(今のは……昔の…夢…?)

(!?…また揺れてるっ……!…)
揺れているのが体中に伝わり、再び震え出したソラ

少しして揺れが治まった。

(……治まった…?リボ兄達の居るアジトには地震なんか起きてないって言ってた…なら、いったい何が起きてるの…?)
肩で息をしていたソラ

『どうなっている?スパナ』

ツナの声がスパナのノートパソコンから聞こえ、そちらに視線を向けたソラ

「すまない、どうやらコンピューターが壊れたらしい。プログラムの一部がおかしな事になっている。とりあえず中止した方が良いだろう。」

「コンピューターが壊れたって…どういう事ですか!?」
スパナの言葉を聞いて動揺するソラ

「起きたのか。…今、また揺れただろ?それでノートパソコンに電気スタンドが直撃して、故障してしまったんだ。」
キーボードを打ちながら、ソラに応えたスパナ

『直らないのか?』

「修正中だけど、ちょっと面倒な事になるかもしれない。」

その時、モニターに何かが映し出された。

「どうやら余計なプログラムが紛れ込んでる。」

(余計なプログラム…?)
気になって、横からスパナのノートパソコンを覗いたソラ

モニターには、白くて四角い正方形の形をした物が映し出されていた。

(この白くて四角いの…何も描かれてない…?これのどこが余計なプログラムなんだろう??)

『これは?』

「そいつはウチが作ったやつじゃない。無視してくれ。」
ツナの問いにそう答えたスパナ

『面白れぇデザインだな。』

『誰が作った?』

ツナの問いにすぐに答えなかったスパナ

『スパナ?』

「……正一だ。」
少し間を置いてそう答えたスパナ

(正一さんが!?)
それを聞いて驚くソラ

『入江正一…』

「そうだ。高校時代、あいつがウチに送ってきたんだ。まったく新しいコンセプトのロボットを考えたってな。」

「ロボット!?…これ、ロボットなんですか?」

「ああ。」

『確かに斬新だぞ。』

「おまけに相当ヤバい。…そいつはウチにはコントロール出来ないんだ。安全の保障は出来ない。とりあえず、強制終了する。」
そう言って、強制終了させようとしたスパナ

「マジ!?」

「どうしたんですか?」

「強制終了出来ない。」

「そんなっ…!?」

『戻れねぇって事か。』

「ラウンドが終了するまで、ボンゴレは戻れない。」

『つまり…倒すか、倒されるか。』

『思いがけねぇ所で、入江正一との勝負になっちまったな。』

「なんとか、プログラムを修正する。それまで逃げるでも何でも良い…時間を稼いでくれ。」

『逃げはしない。』

「えっ!?」
「なに!?」
ソラとスパナはツナの言葉に驚きを隠せない。

『こいつを倒せば戻れるんだろう?』

「そいつの戦闘力は未知数だ…戦うのは危険過ぎる!」

(戦闘力が未知数!?…モスカより、強いって事…?)

「本気なのか?ボンゴレ」

『ああ。』

『おやめ下さい!』

『ジャンニーニ』

『イメージの世界でも、10代目にとっては現実そのものです。最悪の場合、死んでしまいます。』

『だそうだ。』

『あいつを倒さなければ、この世界から戻る事は出来ない。』

『フっ…どっかで聞いたような状況とそっくりだな。』

「待って!綱吉さん」

『姫?』

「今言ってたでしょ!?戦闘力が未知数だから、戦うのは危険だって!!ジャンニーニさんも言うように、そこはイメージの世界……
そこでやられたら、本当に死ぬかもしれないんだよ!?」

『ああ、分かってる。…俺は死なない、必ず戻ってみせる!』
ソラにそう言って、戦闘を開始したツナ

「綱吉さん!?(…こんな事になるなんてっ……こんな事になるなら、止めれば良かったっ……)」

こんな事態になるなんて誰が想像出来ただろう?
突然のアクシデントでこういう事態が起きたのだ。
いくら超直感がツナより優れているソラでも、時には超直感が上手く働かない事もある。
だからソラが責任を感じる必要はどこにもない。
にも関わらず、ソラは自分を責めていた。

スパナとジャンニーニは、プログラムを一刻も早く修復させるために共同作業でデータの修復に取りかかっていた。

ツナと交戦している、あの白くて四角いロボットはとんでもなかった。
ルービックキューブのような形をしたそれは、各列や行を回転させながら、状況に応じて戦い方を変えていたのだ。
攻撃パターンがいくつかあるし、ツナが攻撃すれば防御するし、素早く動く事も出来ていた。

そして、交戦中だったツナがやられて気絶した。

『おい、ツナっ…ツナっ』

「おい、大丈夫か!?」
ヘルメットを被ったままのツナに視線を向け、呼びかけるスパナ

(パパっ…)ソラもスパナと同じように視線を向けた。

「脈拍あり…生きているな…」
ノートパソコンでツナの状態を確認したスパナ

それを聞いてほっとするソラ

『おい、スパナ』
声とともに3D映像のリボーンが現れた。

「戻ってこれたのか。」

『俺は見学人だからな。さすがにツナは戻って来れねぇが。』

「戦闘を継続中という事か。」

『なかなかつえー敵だな。』

「ああ。正一の奴、凄いロボットを考えたもんだ。…こいつは攻撃型なんかじゃない。状況に応じて、機動型にも、防御型にも
変幻自在にタイプを変更できる。」
モニターにその白くて四角いロボットのデータを出しながら、説明するスパナ

『そんなの作れんのか?』

「現実的かどうかは別にして、イメージの世界だからな…でも、理論的には辻が通ってる。」

「現実じゃ無理だよ、こんなロボット…」

「見てくれ。この1つ1つは単なるパーツに過ぎない。しかし、パーツの組み合わせ方、回線の繋ぎ方によって、次々に優れた能力を
発揮出来るようになる。ある時は攻撃型……ある時は防御型……またある時はハイスピードの機動型といった感じだ。」
モニターを見せながら、入江正一が作ったロボットについての説明を続けたスパナ

(優れた能力を次々に発揮する……確かに素早く次々にタイプを変えて、パパと応戦してた…)

「ハァ…究極のロボットさ、こいつは。まさか、本当に考えるとはな…」

『どういう事だ?』

「ハァ…高校の頃、正一とは国際ロボット大会で一緒だった。」

スパナは話した、高校の時に交わした正一との会話を…

「…その数年後、正一がデータを送って来たのがこいつだ。」

(どんな形もしていない、どんな形にでもなれる……だからなんだ…攻撃型にも、防御型にも、機動型にも変幻自在になれるロボット…
正一さん、凄いロボットを考えたね。…もし、これが実現していたら、きっと今のパパ達では絶対に勝つ事が出来なかっただろう。
でも、そんなロボット、今の時代には絶対に実現する事は出来ないよ。こんな高性能なロボット……)

『奴は完成させたのか?その究極のロボット…』

「理論上ならともかく、現実的かどうかは…しかし…」

その時、電子音がなった。

『プログラムの修復が完了しました!データを転送します。』
修復を終えたジャンニーニがスパナにそう言った。

「よし。ウチの修復分とデータを繋ぎ合わせれば、ボンゴレを呼び戻せる。このままあれと戦っても勝ち目はないだろうし。」
そう言いながら、キーボードを休むことなく打ち続けるスパナ

『ツナは承知しねーかもな。』

「確かに…でも、仕方ないよ。」

「ここで死なれても困る。コンピューターがいつ壊れるか解らない。そうなったらお終いだ。…修復プログラムインストール…
インストールが済み次第、すぐにシミュレーションを強制終了する。」

「待てっ…スパナ…まだ、終わってない。」

ノートパソコンからではなく、すぐ傍のツナから声が聞こえてきた。

『気がついたみてぇだな。』

「まさかっ…意識は向こうの世界にあるはずなのに…」

『ツナはボンゴレの10代目だぞ。』
そう言って、3D映像のリボーンが消えた。

ツナの居る所へまた向かったのだろう。

シミュレーターの世界に居る、ツナとリボーンの会話を聞くソラ

ツナの言う勝算とは、X BRNERだという事。。
スパナやジャンニーニがツナを止めるが、聞く耳を持たなかった事。
そんなツナにリボーンは修復プログラムのインストールが終わるまで好きにやってみろと言った。

「ちょっ…リボ兄!?」

『姫、ここはツナの好きにさせてやれ。…ツナ、ここで死んでも意味がねぇ…本当の入江正一と戦うのはこれからだ。』

『わかった。』

「ちょっと待ってよ!?綱吉さんっ!!」

ソラが止めるが、ツナはそのまま、また戦闘を開始していた。

(…さっきと今とでは状況が違うんだよ!?それなのにっ…)
モニターを見つめながら、左手を強く握っていたソラ

その時、また揺れ出した。

「また!?」
床に手と膝をつき、揺れが治まるのを待つ。

その間、ずっと体の震えが止まらなかったソラ

少しして揺れが治まった。

「姫、あんた…地震にトラウマでもあるのか…?」

「ハァっ…ハァっ……ちょっと、ね…」
肩で息をしながら立ち上がり、スパナにそう答えたソラ

ソラの様子を見て、それ以上何も言わなかったスパナ

「あと少しっ…」
ノートパソコンを死守していたスパナがモニターを見て、現在のインストール状況を確認する。

インストールが完了したまさにその時、ノートパソコンが完全に壊れた。

「間に合ったはずだ。修復と同時に、シミュレーションが強制終了する。」
そう言いながら、ヘルメットを被った状態のツナに近寄るスパナ

ソラはその場から動かす、ツナの様子を見る。

だが、ツナに反応が見られない。

「まさか、戻れなったのか?」

「うっ……」ツナから声が漏れた。

ミニモスカがツナに装着されていたヘルメットを外す。

「ハァ…」

「ボンゴレ…」
(パパ…)
ほっとするスパナとソラ

『間一髪だったぞ。』
3D映像のリボーンがそう言った。

「大丈夫か?」

「はい。」そう返事して立ち上がろうとしたツナだったが、立ち暗みをした。

倒れそうになったツナをスパナが支えた。

「ホントに大丈夫か?」

「…だ…大丈夫です。それより、どうなったんですか?俺…最後、良く覚えてなくて…」

「残念だけど、コンピューターがあの有様で…」
そう言いながら、壊れたノートパソコンを見ながらそう言ったスパナ

「そうですか…」

「たぶん倒したと思うけど…」

『そうですよ!10代目が勝ったに決まっています!』

「だと良いけど…」そう言いながら立ったツナ

「勝ちなんかじゃないっ…」

「え!?」

「せいぜい負けなかったくらいだよ。」

『姫の言う通りだぞ。ツナ』

「リボーン…」

『あんな一発しか撃てねぇ代物が実戦で役立つもんか。おめぇはまだ、“X BURNER(イクスパーナー)”を完成させた訳じゃねぇぞ。』

「わかってる。」

「ただし、あんたが撃った瞬間の最大出力はデータとして取れた。目的はちゃんと達成出来てる。」

「スパナさん…」

「収集したデータは全てコンタクトディスプレイに反映させておく。ウチに任せておけ。あんたに完璧な“X BURNER(イクスパーナー)”を撃たせてやる。」

「ありがとう、スパナさん」

『しかし…恐ろしい奴だな、入江正一は…』

「うん。」

『ツナ』

「何?リボーン」

リボーンは無言のまま、顎である所を指す。

首を傾げながらも、リボーンが指した方を見た。

「あっ…」

視線の先にはソラが居た。
リボーンが言わんとしている事を理解した。
すぐにソラの傍まで行き、しゃがんだツナ

「姫ちゃん」

「綱吉さんのっ…馬鹿っ……どうして戦ったの!?下手すれば、本当に死んでたかもしれないんだよ!?」

ソラの言葉を静かに聞くツナ

「私がこの装置を使うのに賛成したのは、この人がっ…スパナさんがちゃんと死なせないようにサポートしてくれるって解ってたからなんだよ!?
でもさっきのは違う!!…そこでやられたらお終いだったんだよ!?さっき綱吉さんが居たのはイメージの世界であって現実じゃない!!
そこで無茶してどうするの!?」

ツナがフードで顔が隠れていたソラの顔を覗きこむと、涙を流しているのが見えた。

「!…ゴメンっ……」
泣いてるソラに気付き、心を痛めたツナ

「お願いだからっ……お願いだからっ……っ……無茶しないで!!……(パパを)二度も失いたくなんかないよ!!
…もう、誰かが死ぬのなんてっ…見たくも、聞きたくもないよ!!」

「ゴメン!!……ホントに、ゴメンっ!!」
そう言いながらソラを抱きしめたツナ

ソラもツナの服を握り、胸に顔を埋めて泣いた。

(怖かったっ……また、パパを失うんじゃないかってっ…ホントに、怖かったっ…)
ツナの服を握る力を強めたソラ

(そうだよっ…、なんで忘れてたんだ!この時代の俺はもう死んでるんだ!!俺の馬鹿っ…なんでこんな大事な事忘れてたんだ!!
ソラちゃんを泣かせたくなんかなかったのにっ……)
泣きじゃくるソラを宥めながら、悔やんでいたツナ

スパナ、リボーン、ジャンニーニはその間、一言も発する事なく、静かに見守っていた。


標的44へ進む。


今回はツナが仮想空間でモスカや入江正一が学生時代に作ったロボットと戦う所ですね。
まぁ、仮想空間の中でモスカとの戦いは飛ばしちゃいましたが。
リボーンと一緒になって、仮想空間での戦闘をする事に賛成していたソラですが、
それはスパナがちゃんと死なないようにサポートしてくれると解っていたからです。
もしそうじゃなければ、ジャンニーニと一緒になって反対していたでしょう。
それでは標的44へお進み下さい。

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