囮作戦

ソラ達は警備システムの所まで辿り着いた後、すぐにサーバーを破壊して、
先程、通気孔にカビがあるのを見つけた所まで退避し、爆発が止むのを待っていた。


「警備システムの破壊は成功だな。」了平がそう言った。

「そんじゃ、主要施設の破壊に移っか!!」
そう言い、しゃがんでいた体勢から立とうとした山本

「待てよ!!」そう言って、山本の右肩を掴んで止める獄寺

「?」後ろに居る獄寺に振り向く山本

「アルコバレーノの謎が済んでねーぞ。」

その言葉に反応するツナと了平

「何でおめぇが知ってんだよ?」

黙ってる山本

「おい!」山本の右肩を揺らす。

「約束でさ……」

山本はリボーンとの修行を始める前に交わした約束の事を話した。

「なっ…」
「リボーンが…」
山本の話を聞いて驚く獄寺とツナ

「ああ。そんな訳で、修行が終わった時、教えてくれたんだ。」

「こいつはたまげたな……俺だってコロネロ師匠には聞けずじまいだったのに。」
(リボ兄、タケ兄とそんな約束してたんだ。知らなかった…)
了平やソラもツナや獄寺と同じように驚いていた。

「ただし、今はまだ話せねーんだ。」

「何でだよ!?」

「この作戦が終わるまでは話すなって…これも小僧との約束でな。」

「何!?(なぜ10代目の右腕である俺じゃなく、山本なんだ…)」
(なんで……リボーンが山本に…?)
獄寺は悔しそうに、ツナは不思議そうにしてた。

「ぐっ……リボーンさんがそうおっしゃるならしょうがねぇか…」

「武さん、よくリボ兄が教えてくれたね?」

「アハハハっ…あっ!そういやぁ、姫も知ってるんだよな?小僧が言ってたぜ?」

「なっ!?てめーも知ってんのかよ!?」驚く獄寺

「えっと…まぁ…」

「姫ちゃんは誰に?」気になるツナ

「小僧だ。」

「えっ!?リボーンなんですが!?」
了平の言葉に驚くツナ

「ああ。先に言っておくが、姫に教えたのはこの時代の小僧の方だ。」

「そうなんスか。姫はどうやって小僧から教えて貰ったんだ?」

「ん?どうって?」首を傾げるソラ

「いや、俺みたいに何かの修行が終わった時に教えて貰ったのかな〜?って思って。」

「………(どうしよう?…言ってもいいのかな?それとも、言わない方がいいのかな?)」
言うか、言わないか悩んでいたソラ

「山本」
そんなソラの様子を見て、了平が山本に声を掛けた。

「なんスか?」

「姫は無条件だ。」

『なっ!?』
その言葉に山本だけでなく、ツナや獄寺も驚く。

「む…無条件って……マジか?芝生頭」

「ああ。嘘ではない。姫は…小僧だけでなく、他のアルコバレーノ達からも聞かされて知っているはずだ。おそらく山本よりも詳しいはずだぞ?」

「マジかよ!?(なんで山本やガキのこいつも知ってんのに、俺には教えて下さらなかったんですか!?リボーンさんっ!!)」
悔しそうな顔をし、心の中でリボーンに向かって叫んでいた獄寺

「へぇ〜…」呑気な山本

(アルコバレーノ全員から!?)心の中で思いっきり叫ぶツナ

(あ〜…やっぱこうなるよね……隼人兄、とっても悔しそうな顔してる。タケ兄は普通に反応してるけど、パパは物凄く驚いてるし…)
3人の反応を見ていたソラ

「ん?警備システムが沈黙したようだな。」

「そうみたいだね。そろそろ移動しようか?」
了平の言葉を聞いてそう言ったソラ

「そんじゃ行くか!」山本が立ち上がってそう言った。

山本に続くように、次々立ち上がった。

「?…ラル姉?」真後ろに居るラルの方へ振り向いたソラ

ソラの声に反応し、ツナ達も後ろを振り向く。

ラルは未だ座ったままだった。

「お前達だけで行け。」

「ラル姉…(きっと、おしゃぶりの力を使ったから、ノン・トゥリニセッテの影響が今までより大きいんだ。)」

「ラル…」ラルの傍まで来てしゃがんだツナ

「心配するな…あとから行く。」

「まさか、体調が!?」ラルの様子を見てそう言ったツナ

「ジンジャーとの戦いで、少しハシャギ過ぎたようだ…」

「!!」ラルがおしゃぶりの力で死ぬ気の炎を纏った時の事を思い出すツナ

「体…つらいんだね?」ラルを心配するツナ

「いいから先に行け!足手まといになるのはゴメンだ…」

『駄目だよ!!/駄目だ!!』
ソラ、ツナ、獄寺、山本、了平がラルに向かってきっぱりそう言った。

「ふざけてんじゃねぇぞっ…これくらいの事は想定内なんだよ。」ぶっきらぼうに言う獄寺

「俺達は作戦を成功させて、誰も欠ける事なく帰るんだ!!」
ラルにはっきりそう断言するツナ

獄寺とツナの言葉を聞いて唖然とするラル

「ラル姉、後から行くなんて嘘だよね?」

「っ…」ソラから視線を逸らしたラル

「ラル姉、おしゃぶりの力を使ったから、今までよりも体への負担が一気に増えてるんでしょ?そのせいで、立っているのも、歩くのも、つらいんでしょ?」

図星を指されて、何も言い返せなかったラル

その時、何かの音がした。

「10代目!通路がっ…」

次々と通路が封鎖されていた。

「どうやらメインルートの封鎖が始まったようだな。」
次々と封鎖されるのを見てそう言った了平

「通れなくなっちまうぜ!」
「どうしよう…」
焦る山本とツナ

「焦る事ないっスよ!10代目!!敵がこう出るかもしれないってのは予想してたじゃないですか!!」

「そういえば…」獄寺にそう言われて落ち着いたツナ

「んじゃ、予定通りに…」

「無理だよ。」
「そうはいかん。」
ソラと了平が同時にそう言った。

「何でだよ!?シミュレーション通りなら、この後……!!」

「そうだ。俺達が次の攻撃目標へ向かう間、ラル・ミルチが囮になって、敵を引きつけて置く作戦のはずだった…」

「そういやぁ…」

ツナ、獄寺、山本がその事に気づき、沈黙した。

「私がやる。」

その声が聞こえた方に視線を向けたツナ達。

「私がラル姉の代わりに囮役になる。」

「「姫!!」」叫ぶラルと了平

「…その囮役は、素早く動ける機動力がなければ出来ない。私にはその機動力がある……ラル姉も了兄もそれは良く知ってるよね?」

「だ、だがっ…」ソラを心配するラル

「ならん!!それだけはっ……お前に…お前に何かあったら俺はっ…(俺は京子に何て言えばいいのだ!?京子が悲しむ所など、見たくないぞ!!)」

「了兄…」

「考え直してくれ!!なっ!?」そう言いながらしゃがんで、ソラの両肩を掴む了平

「お兄さん…」
「先輩……」
「芝生頭…」
ツナ、山本、獄寺は、ソラが行く事を頑なに拒む了平を見て驚いていた。

「………ごめん、聞けない。」

「っ!?」

「…ずっと考えてた、もしもの場合を………ラル姉、アジトに居た時から、もう体がボロボロだったから。…もし、ラル姉の体調が悪化して
決行出来ない時は…誰かが代わりをしないといけないって思ってた。だから…」

「駄目だ!!それでお前に何かあったらどうするのだ!!」

「了兄!!」

ソラの一喝を聞いて落ち着きを取り戻す了平

「了兄、今はそんな事言ってられる状況じゃない……誰が行くのが1番良いのかを考えたら、了兄だって間違いなく私だって解ってるはずだよ!?」

「!!」

「…今、了兄がする事は…ファミリーの守護者として、最善の方法を取る事。」

「ぐっ…」

「姫、本気…なのか?」

「うん、本気だよ。ラル姉の代わりに囮になる。」
ラルにはっきりとそう答えるソラ

「すまないっ…」

「了兄、手を離して?」

了平は未だソラの両肩を掴んだままだった。

「了兄」

「ならん!!…何度言われようが、これだけはっ…」
頑なに拒み続ける了平

「(お兄さん………)俺が…俺が姫ちゃんと一緒に行きます!!」
了平が必死に止めるのを見て、ソラと一緒に行く事に決めたツナ

ツナの言葉に反応して、ソラの両肩を掴んだまま、ソラの隣に居るツナに視線を向けた了平

「沢田…」

「俺も機動力は充分にあると思うんです!だから、俺も囮になります!!」

「危険過ぎますよ!10代目!!」ツナを心配する獄寺

「それでも…俺は行くよ!!姫ちゃんを1人でなんて行かせられない!!」

その言葉を聞いて、息を呑みこんで黙ってしまった獄寺

ツナがこういう行動に出る事が予想外だったのか、驚いていたソラ

ツナは視線を感じ、横に居るソラに顔を向けると、フードを被ってるせいで表情が解らないはずなのに、なんとなくソラが驚いているような気がしていた。

「俺も一緒に行く。姫ちゃんは俺が絶対に守るって…ビアンキと約束したしね。」
ツナはソラに笑顔を見せながらそう言った。

(パパ…)

「沢田…」

「お兄さん、姫ちゃんの事……俺が必ず守ります!!」
了平に向き直って、真剣な目つきではっきりとそう言ったツナ

「!…頼む!……絶対に守ってくれっ…!!」
ソラの両肩から手を離し、ツナに向かってそう言った了平

「はい!!」

ツナはその場から立ち上がった。

「大丈夫、後で落ち合おう。」獄寺に向かってそう言ったツナ

「10代目…」

「獄寺君、ラルを頼むね?」

「くっ……10代目!!何かあったら無線で呼んで下さい!!テレパシーでもおっけっスから!!」
ツナの両肩に手を置いて揺らしながらそう言う獄寺

「テレパシー……」呆れた声を出すツナ

(隼人兄、頭は物凄く良いのに、なぜかこういう事を時々言うんだよね……)
ソラも獄寺の言葉に呆れていた。

「絶対ですからね!?連絡があれば、すぐに右腕がはじ参じますから!!」
肩を掴む指の力が強まる。

「イテテっ…あ…ありがとう!!」痛がりながらも、笑顔で獄寺にお礼を言うツナ

「ボスを危険な目にっ…」ツナの両肩から手を離してからそう言う獄寺

「………やっぱり綱吉さんは残った方がいいんじゃ…」
獄寺の様子を見てそう言ったソラ

「「駄目だ!!」」ラルと了平が同時にそう言った。

「姫、オレの代わりに囮に行くのはもう止めはしない。だが、1人で行かせるわけにはいかない!!」

「ラルの言う通りだ!!極限に俺もそれは許さん!!」

「でも……」フード越しではあるが、獄寺をチラッと見たソラ

「…獄寺、いつまでそうしている?」

「んだとっ!?」

「お前があんまりにも沢田の事を心配するから、姫がこう言ってるんだぞ?」

「う゛ぐっ…」

「ラルのその通りだぞ。タコ頭」そう言いながら立ち上がり、獄寺の方に視線を向けた了平

ラルと了平にそう言われ、黙ってしまう獄寺

「ハハっ…2人とも、姫の事が大好きなのな!!」

「うむ!」
「…まぁな。」
了平とラルはそれぞれ山本に返事を返していた。

山本はソラの目の前まで来てしゃがんだ。

「姫、俺もお前1人を行かせる訳にはいかないのな。」
爽やかな笑顔でそう言う山本

「武さん…」

「俺、小僧から聞いたんだ。」

「?」首を傾げるソラ

「この時代の俺の事…「タケ兄」って呼んでたってな。」

「!!」目を見開いたソラ

「あっ!そういえばっ……この時代の山本の事、そう呼んでたね!」
ツナはこの時代の山本が居た時の事を思い出す。

「お前がそう呼ぶって事は、俺らはそれだけ親しかったんだろ?なら、お前を1人でなんて行かせられないのな!!」

(リボ兄、いつの間にタケ兄に話したの!?そんな事っ…)

「…この時代のツナや獄寺も、もしこの場に居たなら、全力でお前が1人で行くのを止めてたと思うだ。そうですよね?先輩」

「ああ。特に沢田がそれを絶対に許さんだろうな。」

「お…俺ですか?」

「ああ。」

「そうなんですか………なら、なおさら1人でなんて行かせられないよ。俺は絶対に一緒に行く!!」
ソラに視線を向けて、断言していたツナ

「………解った。一緒に行こう!綱吉さん(ありがとう…パパ)」
ツナの言葉が嬉しかったソラ

「うん!!(俺が絶対に君を守るよ。この時代の俺も、きっと君の事を守っていたと思うから…)」

「端末は持っているな?そいつの指示通りに進め。ルートはインプットしてある。」

「はい!」ツナはジャケットのポケットから携帯端末を取り出していた。

ソラは左手首に着けてある、腕時計を見ていた。

ソラはツナ達が持っている携帯端末ではなく、腕時計型の端末を持っていた。
ジャンニーニが携帯端末では大き過ぎるだろうと考え、ソラ専用にツナ達とは別の端末を作って用意してくれたのだ。
そのため、画面は小さくなってしまうが、拡大・縮小が出来るようになっていた。
まぁ、ソラは目が良いので、画面が小さくてもあまり問題はない。

「出来るだけ遠く……地下10階の用水路で敵をくい止められればベストだ。」

「解りました!」そう言いながら、携帯端末を元の場所に仕舞っていたツナ

「姫」

「何?ラル姉」

「気をつけて行けよ?」

「うん。」

「姫、無茶だけはするなよ?」
そう言いながら、ソラの頭を撫でる了平

「うん。」

「じゃあ行こうか?姫ちゃん」

「うん!行こう?綱吉さん」

「沢田、姫を頼んだぞ!!」

「はい!!じゃあ…行ってくる!」

ツナとソラはその場から駆け出した。

「頼んだぜ、ツナ!姫!」
「お気をつけて!!」
山本と獄寺がツナとソラに声援を送った。

(ソラ、ホントに気をつけて行けよ?………沢田、ソラを頼んだぞ?あいつは……お前と京子の大事な1人娘なんだからな…)
ツナとソラを見送りながら、心の中でそう呟いていた了平だった。


地下10階の用水路へと向かいながら走っていたツナとソラ

「…ねぇ、姫ちゃん」

「何?」

「どうして山本の事、この時代の山本と同じように呼ばないの?」

何も答えずに黙っていたソラ

「あっ…言いたくないなら良いよ!今の忘れて?」

「…怖いからだよ。」

「えっ…?」

「私が、ただ臆病なだけ…」

(ソラちゃん…)

「京子さんが言ってた。私がまだみんなに完全には心を開いていない事は解ってるって……綱吉さんも…気付いてるんだよね?」

「うん…なんとなくだけどね。フゥ太やビアンキ、それに雲雀さんやお兄さんとかと話してるのを聞いてると、ホントになんとなくだけど、
俺達にまだ壁があるって思っちゃうんだ。」

「ごめんなさい…」

「あ、謝る事ないよ!!」

「………私はきっと、みんなに怯えてるんだと思う。10年前から来たみんなは、私の事を知らない人達だから……ランボ君とイーピンちゃんは、
10年バズーカで何度も会ってるから、そこまで怖くはないんだけどね。」

「そっか。………この時代の俺は、君に優しかった?」

「うん、とっても優しかったよ。…ボスは誰にでも優しくて、とっても強い人だった。」

「べ、別に強くなんかっ…」

「強いっていうのは、何も力だけじゃないよ?」

「えっ…」

「ボスは心の強い人だったから。守るべき者が居るから、強くいられるんだっていつも言ってたよ。」

「そうなんだ…(なんか、信じられないな……俺は勉強も運動もダメなはずなのに…)」

「信じられないよね?勉強も運動もダメだったはずの自分が、10年後ではこうなってるだなんて…」

「えっと……うん。」

「でも、ホントの事だよ?私はずっと身近で見てたから。それに…今でもたまに、リボ兄の言う「ダメツナ」に戻っちゃう時はあるよ?」

「そうなの?」

「うん。初めてそれを見た時は、驚いたのを今でも良く覚えてるよ。その時のボス、それを見られて凄く落ち込んでたよ。」

「そうなんだ…(未来の俺…ソラちゃんに自分のダメな所、見られたくなかったんだね。何でだろ…?)」

(そう…あの時、カッコ悪い所を私に見られちゃって凄く落ち込んじゃってたのを今でも良く覚えてるよ。リボ兄が原因なんだけどね………
あの後、落ち込んだパパを元気づけるの、大変だった気がする…)

「ねぇ、姫ちゃん」

「?」

「どうして……この時代の俺は…君を戦わせてるの?」

「!…それはっ…」

「あっ…ごめん!忘れてっ!!」

「………ボスは何も悪くないよ?」
ツナがなぜ今になって急にそんな事聞いてきたのかなんとなく解ったソラがそう言った。

「えっ?」

「私が…押し切ったから。」

「お…押し切った?」

「うん…反対し続けるボスを、私が無理やり押し切った。リボ兄、恭兄、骸兄に協力して貰ってね…」

それを聞いて唖然としていたツナ

「だから、ボスは何も悪くないんだよ。」

「そっか…(でも、どうして反対を押し切ったんだろう…?………きっと今聞いても、君は答えてくれないんだろうな…)」
走りながら、ソラを黙って見つめていたツナ

「ちょっと話し込み過ぎたね…少しペース上げるよ?」

「あっ、うん!俺は大丈夫だけど…姫ちゃんは大丈夫なの?」

「うん、平気。体にあまり負担の掛からない走り方のコツをリボ兄にずっと前に教えて貰ったから。」

話を中断し、地下10階の用水路へ急いで向かったツナとソラだった。


標的40へ進む。


今回のお話は、システムを破壊した後、囮作戦を実行する所です。
ツナ1人が囮役な所をソラと一緒に囮作戦を実行させました!!
了平は大事な妹の娘だし、自分にとっても可愛い姪っ子なので、絶対必死になって
止めるだろうな〜っと思い、あんな感じになりました。(笑)
それでは標的40へお進み下さい。

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