ジンジャー・ブレッド

ーー地下8階ーー

地下8階の天井から梯子を吊るして、順番に下りて来た。
山本、獄寺、了平、ツナ、ラルの順に……

梯子から下りた了平は、その場でしゃがんでソラを降ろした。

「ありがとう、了兄」

「少しは体力回復できたか?」そう言いながら、ソラの頭を撫でる了平

「うん。」

「それは良かった!」

了平は立ち上がって、スーツの上着の内ポケットから携帯端末を取り出し、現在地を確認していた。

「うん、地下8階だ。この奥にある、警備システムサーバーを破壊するんだったな。」

「そうだ。」梯子から飛び降りたラル

「サーバーをダウンさせれば、基地内の感知能力を麻痺させる事が出来る。その機に乗じて、主要施設の破壊と入江正一への奇襲を行う。」
ラルがツナ達にそう言った。

「その前に沢田」

「えっ…?あ…」

ツナの左手を持ち上げた了平

「肘の傷口を治療してやる。」
そう言いながら、ジャケットの袖を捲った了平

ツナの左肘には、ほんの掠り傷が出来ていた。

「バレてました?」

「綱吉さん、さっき“雷猪(エレットロ・チンギャーレ)”に突進された時、山積みされた貨物にぶつかって、その時に貨物の角に肘が当たったんでしょ?その傷…」

「姫ちゃんも気付いてたんだ……」
了平だけでなく、ソラにも気付かれているとは思ってなかったツナ

「では…」左手に匣を持ち、右手に嵌めてる晴系リングに炎を灯そうとしていた了平

「待てっ、芝生頭!!極限バカのおめぇに治せんのか!?」
獄寺が了平にそう聞いた。

「心配は要らん。俺のこの匣で傷口を焼くだけだ。」
晴系リングに炎を灯し、開匣した了平

匣から出て来たのは、晴の炎を纏った、晴コテだった。

「うわあぁ!?スクラッター!!や…焼くって…!!いいです!!そんな大袈裟な!!ほんの!掠り傷ですから!!」
焼くと聞いて、必死に回避しようとしていたツナ

(…そんなに逃げなくても……それに了兄も了兄で言い方が少し悪いよ…)
ため息をつきながら、心の中でそう呟いていたソラだった。

そんなツナの両肩を掴んだラル

「えっ…」

「わがままを言うな。」ツナの両肩を掴んだまま、そう言ったラル

「いっ?」

「よし、行くぞ。」ツナに晴コテを近づける了平

「ええーー!?」

ラルがツナの左手を持ち上げた。

そこに了平が傷口に晴コテを当てた。

「うわあぁ!?」泣き叫ぶツナ

「10代目!!」ツナを心配する獄寺

「ああっ…ああっ…あっ…あれ…?痛くも熱くもない。」
熱いと思っていたツナが不思議そうな顔をしていた。

「ハハハっ…炎といっても、これは晴の属性の死ぬ気の炎だ。そして晴の属性の特徴は活性……この炎は細胞組織の
自然治癒力を活発にし、普段の何百倍もの早さで傷を修復するのだ。」
ツナの肘に晴コテを当てたまま、晴の属性の説明をした了平

「かゆいっ…なんかかゆいです!!」

「それにな、沢田は晴コテでの治療は初めてじゃないはずだぞ?」

「えっ…!?」了平の言葉に驚くツナ

「小僧から聞いたぞ?この時代に来て初めてブラックスペルと戦った時の傷を、姫が晴コテを使って半分治療したって……」

「あっ!あの時のっ…(晴コテで治療したのは知らなかったけど…)」

「えっとっ…前に晴匣で治療した事があるのは知ってるから大丈夫かと思って黙ってたんだけど……言った方が良かった?」

「あっ…いや、ごめん。俺、忘れてたよ…前に晴匣で怪我を治して貰った事があるのを…」

「あと、綱吉さんが治療から逃げようとしたのは、了兄がちゃんと説明も入れずに、ただ焼くって言ったのが悪いっ!」

「むっ…確かに……すまんっ!沢田」

「い…いえ!謝らないで下さい!!」

その時、ツナの傷口が完全に消え、晴コテをツナから離して、匣に戻した了平

「よし、終わったぞ。」

ラルは治療が終わったので、ツナの肩から手を離して解放した。

「え?ほ…ホントに治ってる!(ソラちゃんがやった時は、俺…気を失ってたからな〜…)」
本当に傷が治ってる事に驚きながら、左腕を動かしてみていたツナ

「見たか!!極限晴の力!!」

「へっ…」了平を睨む獄寺

「あ?」

「軟弱な炎で調子に乗ってんじゃねぇ、手入れの行き届いてねぇ芝生がっ」
了平に悪態を吐く獄寺

「なんだと!?足の多いタコ頭!!」
獄寺の言葉にカチンときた了平が言い返した。

「まーまーっ…傷も治りゃあまさに無傷の勝利!…絶好調じゃねーか!」
獄寺と了平を宥める山本

「でも、治癒にも限界がある。そう何度も怪我を治したりは出来ないから、油断しないでね。」
「姫の言う通りだ。いくら治療出来るとはいえ、あまり使い過ぎると逆に良くないからな……」
ソラとラルがツナ達にそう言った。

「そうなんですか?」

「ああ。姫も晴匣を使っているからこそ言える事だ。だからあまり治療を当てにするなよ?」

「解りましたっ!」頷いたツナ

「それにしても…ツナの新技、凄まじかったな!!」
デントロ戦の時に最後に見せた、X BURNERの事を思い出して言った山本

「ああ…あれは本当に凄かったっス!!」
「うむ、大した極限技だったな…」
獄寺と了平もその時の事を思い出していた。

「いや…沢田はまだ、半分程度の力でしかあの技を出していない。」

「ホントか!?」
ラルの言葉を聞いて、ツナに確認する了平

「そうだろ?沢田」

「えっ…いや…うーんと…「2割だよね?」えっ…」

ソラの方に視線を向けたツナ達

「さっきのあの技…まだ2割程度しか出してないんだよね?」

「あっ…うん。2割ぐらいしか出してないよ。(ソラちゃん、良く解ったな〜…あのラル・ミルチでも半分って言ったのに…)」
ソラにそう応えながら、ツナは心の中でそう呟いていた。

「なんと!?」

「あれで2割スか!?」

了平、獄寺、山本が驚いていた。

(2割…オレの想像以上だ…それに、ソラには解るみたいだな……どの程度なのか……)
ラルも内心で驚いていた。

(やっぱ驚くよね、ラル姉でも半分だと思ってたみたいだし。………私は何度もパパの“X BURNER(イクスバーナー)”を見てるし、
超直感があるおかげで、どのくらい出してるのか、なんとなく解るようになっちゃったんだよね。)
ツナが自分を見て驚いているのを見て、心の中でそう呟いていたソラ

「凄いっス、10代目!!いったいどんだけすげー技なんスか!!」

「心強いぜ、ツナ!!」

「で…でも、まだまだ不安定で、フルパワーじゃ撃てないんだ…それに、敵も全然全力じゃなかったし…」

「綱吉さん、あのデンドロ・キラムは間違いなく、全力で攻めてきてたよ。」
ツナにはっきりとそう言ったソラ

「え…?」

「だから、綱吉さんがそう思ったのは、その人にとっては全力でも、その程度にしか感じられなかったって事。
つまり、綱吉さんの方が強過ぎたから、そう感じただけだよ。」

「で、でもっ!?」

「ふむ…姫がそう言うなら、間違いなさそうだな……それに、デンドロの炎は派手だったが、純粋な炎には程遠く…武器や炎の力を
常に引き出しているとは言えなかった。」
ソラの言葉に納得しながらも、デンドロと戦った時の事を思い出しながらそう言った了平

「それに…大切なのは、炎のデカさじゃなくて、純度だからね。」そう付け加えたソラ

「そーいや、あいつの炎はもっと鋭かったよな…」
「ああ、別物だ……」
γ戦の事を思い出した山本と獄寺

「『電光のγ』の事だね?あの人は本当に強いよ?デンドロなんかよりもずっと強い……油断してるとこっちが痛い目に合うよ?」

ソラの言葉を聞いて、息を呑んだツナ、獄寺、山本だった。

「そういえば……姫、もしあの時デンドロと戦っていたのが、獄寺や山本だったらどうなっていた?」
ふと気になったのか、ラルがソラに聞いた。

「………ノーコメントで。」

「おいっ!?」思わずツッコんだ獄寺

「気になるのな〜」山本も気になる様子。

「じゃあ…負けはしない。後は聞かないで…」

「じゃあってなんだ!?じゃあってっ…!?」キレる獄寺

「ご、獄寺君落ち着いて〜っ!」キレた獄寺を必死に止めるツナ

「獄寺、落ち着くのなっ」特に何もせず、ただ声を掛けて止めるだけの山本

「姫、今のは本当か?」ソラに聞いた了平

「もちろんだよ。あの3人は間違いなく強くなってる。」

「そうか。」

「……そろそろ行くぞ。」ラルが騒いでるツナ達にそう言った後、移動し始めた。

了平とソラも後を追う。

ツナ達3人はそれに気付き、すぐに慌てて追いかけていた。


地下8階の通路を慎重に進みながら、少しずつ警備システムサーバーのある部屋を目指していた。

ラルが少し先の通路にブラックスペル隊員が歩いて来ているのに気付き、立ち止まってツナ達に手で止まるように合図した。

ラルのその合図で立ち止まったツナ達。

ブラックスペル隊員が遠のいでいったのを確認した後、ツナ達に振り向いた。

「基地内の敵の数が、想定していたより大幅に少ないな。」
「ああ。ボンゴレアジトの襲撃に戦力の大半を出撃させたのだろう。」
「恭兄が囮なってくれている効果は絶大みたいだね。」
ラル、了平、ソラの順に言う。

「大丈夫かな?雲雀さん…」心配するツナ

「心配は要らん!」そんなツナに声を掛けた了平

「お兄さん」

「未だかつて奴が死んでいる所は見た事がないからな!極限に!!」

「え゛っ」
「アッハハハ…」
「どんな理屈だ!?」
驚くツナ、爽やかに笑う山本、思わずツッコんだ獄寺

そんな賑やかな会話をしているツナ達とは反対にソラは……

(恭兄……大丈夫かな……)
今も多くの敵と戦ってるであろう雲雀の事をソラも心配していた。

その時、ソラの頭を誰かが大丈夫だと言うように、ポンポン叩いた。

ソラは驚いて、見上げた。

「大丈夫だ。雲雀が強いのは、お前も良く知っているだろう?」
ラルがソラを安心させるようにそう言った。

「……うん、そうだね。」

ソラに向けていた視線をツナ達に戻したラル

「お前らっ、どこでも遊ぶんじゃない!!」

「ス…スマン…」
「すみません…」
謝る了平とツナ

「図面を確認しろ!!」

「ああ。」
上着の内ポケットから携帯端末を取り出して、現在地を確認する了平

「この階はやたらと黒い部分が多いのだったな。」
地図を確認しながらそう言った。

「この壁の向こうがまさにそうっスね。」
壁に手をつけながらそう言った山本

ソラは壁に視線を向けた。

(あれ?何だろう……気になる……)
壁を見上げて何かに気付き、了平のスボンを引っ張ったソラ

「ん?なんだ?」
下に視線を落とした了平

「もっと近くで壁見たい。」

「わかった。」
ソラを抱き上げて、そのまま壁に近づいた了平

了平に抱きかかえられたまま、壁に手をついたソラ

(これは……通気孔にカビ…?……何だろう…なんか見落としちゃいけないような気が……ただの空洞じゃないのかな…?)
通気孔についてるカビを見て、あれこれと思考していたソラ

「なんか、ヤバい植物でも栽培してんのか?」
「もしくはゴミタメかだな。」
詮索する山本と了平

「詮索は後回しだ。今は警備システムの破壊が先だ。」

「姫、そろそろ降ろすぞ?」

了平の声が聞こえなかったのか、未だ壁に視線を向けたままのソラ

「姫?」

「あっ…ごめん。何?」

「降ろすが良いか?」

「う…うん。」

ソラを降ろした了平

「姫、この壁の向こうが気になるのか?」

「別に大した事じゃないから気にしないで。」
聞いてきたラルにそう答えたソラ

「だが…」

「今は警備システムの破壊が先でしょ?」
そう言って、移動し始めたソラ

「……笹川」

「ああ、解ってる。」

了平とラルは眼で合図しあっていた。

「オレ達も行くぞ!」

ラルの掛け声でツナ達も移動し始めた。

(ソラちゃん、何で話してくれないの…?気になる事があるなら、言ってくれれば良いのに…)
走りながら、ソラを見つめてそう思っていたツナだった。


ーー警備システムのある部屋ーー

ドアの前で右左に待機したラル達
左側には、ソラ、ツナ、獄寺が…右側には、ラル、了平、山本が待機していた。
部屋の中を覗くと、電気が点いてなくて、真っ暗だった。

(このまま何事もなく、無事に奥まで進めれたら良いけど…)
ソラは超直感で何かを感じとったからか、周囲への警戒を強めていた。

「この奥に警備システムがあるんスね。」呟く山本

「どうする?」ラルに聞く了平

「オレが先行する…合図をしたら来い。」
そう言って、中に入っていったラル

中を少し進み、問題がないか周囲を確認したラル

「よし、いいぞ。特に問題は…(!…熱反応!!)…待て!!」
OKサインを出そうとしていたラルだったが、ゴーグルに突然熱反応が現われ、入って来るのを止めたラル

「どうした!?何が起きている!?」
ラルが入って来るのを止めたのが気になって聞いた了平

(何かが…起きてる!?)ソラは入口から中を覗きこんでいた。

(増えている!!)ラルが装着しているゴーグルに次々と熱反応が増えていた。

「ラル!?」心配になったツナが呼びかけた。

「(くっ…これは…)…そこか!!」
天井を見上げたラル

上から晴の炎を纏った何かが、いくつもラルに向かって襲いかかって来ていた。
ラルは左腕に装着している霧ガントレットで、6本の霧の炎を射出させて相殺していた。
だが、すぐに2回目の攻撃が襲いかかって来た。

「「ラル姉!?/ラル!?」」
ソラとツナがラルを呼びながら、部屋の中へ駆けて行く。

「大丈夫か!?」
ラルにそう声を掛ける了平

了平、獄寺山本も部屋の中へ入って行った。

「大丈夫だ…掠っただけだ。」左腕を押さえながら言ったラル

「見せてみろ!すぐに治療を…」

その時、誰かが笑う声が聞こえて来た。

「ランダムに増え続ける標的の規則性を見破り、間一髪カウンターを合わせるとは、さっすがアルコバレーノのなりそこない。」
そう言って、「パチンッ」と指を鳴らす音が聞こえて来た。

すると、今まで真っ暗だった部屋に電気がついて明るくなり、周りが良く見えるようになった。

上を見上げると、魔法使いの格好をして、死ぬ気の炎も使わずに飛んでいる人が居た。

「ま…魔法使い!?」驚くツナ

「その出立ちは、『魔導師の人形(マジシャンズドール)』…ジンジャー・ブレッドか。」
ラルが現れた人物を見上げながらそう言った。

「ジンジャー・ブレッド…」
「マジシャンズドール……魔導師の人形だって…」
呟くツナと獄寺

「その通り名はもう古いよ。」
そう言いながら、降りて来たジンジャー

「今はミルフィオーレ第8部隊副隊長さ。」

(第8部隊…確か、グリチネ隊だったっけ…?)
ミルフィオーレの情報を思い出していたソラ

「フフフっ…しかし驚いたな〜…まさかこんな所まで敵の侵入を許すとはね。…僕には、君達がここに来てるって上に知らせる義務がある。

それを聞いて、張り詰めた表情を浮かべたツナ達。

「まぁ、消しちゃうのも悪くないけどね。フフフっ…君のコロネロみたいにさ!」

「コ…コロネロだって!?」叫ぶツナ

(この人、コロ兄の最後を…知ってる…?)
ジンジャーの言葉を聞いて、心の中で呟いていたソラ

「貴様、師匠に何をした!?返答次第ではただではおかんぞ!!」
今にも殴りかかりそうな勢いでジンジャーに言う了平

「フフフっ…何か勘違いしているようだね。最強と謳われた7人の呪われた赤ん坊…アルコバレーノも、ノン・トゥリニセッテの
放射される中じゃ、死にかけた虫みたいなもんだろ?そんな退屈なもんにわざわざ自分の手を汚すかよ。僕はただ、残酷で
笑える最後の方法を提案して眺めてただけ。」

(残酷で、笑える最後の方法を…提案して眺めてた…?あのコロ兄が、ラル姉を置いて死ぬはずがないっ…なら、きっとジンジャーが
今言った通り、その時何かがあったはずっ……)
ジンジャーの言葉を聞いて、冷静を保ちながらもそう思ったソラ

「貴様ぁ!!」
ジンジャーの言葉に怒りを覚え、右手に嵌めてる晴系リングに炎を灯し、戦う気満々な了平

そんな了平を左手で制して止めるラル

「下がっていろ、笹川…こいつはオレが倒す。」

「待て、ラル・ミルチ!!お前の体では無理だ!俺が行く!!」

「冷静さを失った奴は、戦う前から負けていると、コロネロは教えなかったか?」

「くっ」痛い所を突かれた了平

「あの女、大したもんだぜ…まったく動じてない…」
獄寺がラルを見て、そう呟いた。

「それはどうかな?僕には怒りを抑えるのに精一杯って風にしか見えないけど。」

(ラル…)ラルを心配そうに見つめるツナ

「君もそう思うだろ?…『陽色の姫君』」

「!!」話を振られ、フード越しにジンジャーへ視線を向けたソラ

「フフっ…君が噂に聞く『陽色の姫君』か〜…本当に子供なんだね。」

(ソラちゃん、噂されるほど有名なんだ…)

「聞く所によると、君はボンゴレファミリー所属らしいね?それに……ドン・ボンゴレのお気に入りなんじゃないかって噂も聞くよ?」

「10代目の…お気に入り…?」呟く獄寺

「…それ、ただの噂ですよ。」

「そうなのかい?でも、君の傍には必ず誰かがついてるらしいじゃない?それが守護者だったり、アルコバレーノだったり……
とにかく実力のある人と一緒に行動して任務を遂行している。……ドン・ボンゴレは1度も君1人での任務を与えていない。
君程の実力があれば、大抵の任務は1人で出来るはずなのに、どうしてそうしないんだろうね?」

(!…この時代の俺、どうしてソラちゃんを戦わせてるんだろ…?)
ジンジャーの話を聞いてそう思っていたツナ

「フフフっ…どうやら君達は『陽色の姫君』の実力をまだ良く知らないみたいだね?…僕が知る限りでは…戦う時、必ずと言っていい程、
真っ先に相手の武器を壊している事。基本的に銃以外の武器をあまり使わない事。あとは…そうそう、晴の匣兵器…晴カンガルーが
居ただろ?あれとコンビで攻め込まれたらお終いだって噂も聞く。誰もこのコンビを崩す事が出来ずに敗北しているらしいからね。」
ツナ達に向かってそう言うジンジャー

「へぇ〜、姫ってやっぱ強いのな〜」呑気な山本

「こんな時に何呑気な事言ってんだ!?」山本にツッコむ獄寺

「どこから仕入れたんです?随分と詳しい情報を持っていますね?」

「フフフっ…教えな〜いって言う所だけど……噂の君に会えたから、特別に教えてあげるよ。僕を含め、ミルフィオーレの隊長、副隊長陣は、
ボスである白蘭から聞かされて知ってるんだ。」

「白蘭に……ですか?」

「そうだよ。君の情報を与えた後、こう言っていたよ。…『陽色の姫君』を殺さず、生け捕りにしろってね。」

『なっ!?』ジンジャーの言葉を聞いて、ソラ以外驚いた表情を浮かべた。

「貴様!!なぜ白蘭は『陽色の姫君』を欲しているのだっ!!」

「それについては何も知らないよ。なぜ『陽色の姫君』を欲しているのか……それだけは教えて貰えなかったからね。」

(白蘭が『陽色の姫君』を欲しているのは…やはり、並外れた戦闘力を持っているからなのか?それとも……
ソラの正体がもうバレているからなのか…?)
ラルは白蘭が『陽色の姫君』を欲している理由を考えていた。

「あっ、そうそう。僕がもっとも気になってるのが、君がどこで生まれたのか、誰と誰の子供なのか、どこで育ってたのか、
それに関する情報が一切出てこない事なんだよね。」

「なっ…情報が出てこねぇ…だと?」驚く獄寺

「うん。うちのボスがさ、ボンゴレ10代目が徹底的に『陽色の姫君』に関する情報が漏れないように死守してたんだろうって
言ってたんだけど、どうなのかな?」

「………」

「黙ってるって事は、肯定と受け取るよ?しっかし、ホントにどこにそんな力があるのか不思議だよ…まるで化け物じゃないか。」

その言葉を聞いて、ほんの少しだけ動揺を見せたソラ
しかし、そのわずかな変化に気付けたのは、了平とラルだけだった。

「あれ?動揺しないんだね?残念……」
笑顔を浮かべたまま、残念そうな声を出したジンジャー

「貴様!!姫にそれ以上の事を言うのは極限に俺が許さん!!」
さらに怒りを覚えた了平がそう言った。

「笹川、落ち着け。」

「だがっ…」

「こいつはオレが倒す。お前達は下がっていろ…」

「…『陽色の姫君』がそんなに大事?」

「…だったら何だ。」

「フフっ…イジメ甲斐が出て来たな。通報する前に少し遊んで行こうかな。」

ジンジャーの言葉を聞いて、険しい表情を浮かべるツナ達。

「ただし、サジのワンチャンスだけね。君を片付けたら上に報告するよ。その頃には飽きてるだろうしね。」
ラルに向かってそう言いながら、後ろにステップして少し距離を取ってから再び宙に飛んだジンジャー

パチンッ…

ジンジャーが再び指を鳴らすと、ツナ達の前の床から、いくつかの晴の炎が現れた。
その晴の炎はそのままツナ達の前で壁を作っていた。

「なんだ!?」突然の事に驚く山本

「!…クモ!匣兵器なの!?」
目の前に出来た、晴の炎で作られた壁の所に何匹かクモが張りついている事に気付いたツナ

そう、現われたのは、晴の炎を纏った晴クモで、晴の炎の網でクモの巣のように張って、壁を作っていたのだった。

「だが、匣を出す仕草はなかったぜ。」不思議そうにする山本

(タケ兄の言う通り、一度もそんな仕草をしていない……という事はっ…)
ソラも不思議に思いながらも、冷静に思考を張り巡らせていた。

「チキショー!前もって仕込んであったのか!!」
悔しそうな声を出す獄寺

「いや、奴は手にリングを着けていない。」
宙に浮いているジンジャーの手にリングが嵌められていないのを見てそう言った了平

「どうだい?僕の魔術(ソーサリー)は。」

「ソーサリー……魔術ですか。(違う、これは魔術なんかじゃない。でも…だとしたら、リングも嵌めていないこのジンジャーはいったい…)」

「そのクモは君達がちょっかい出そうとすると知らせてくれる、僕のしもべでね…下手に動かない方が身のためだよ、君達全員消さなきゃならなくなる。」
ツナ達に向かってそう言い放ったジンジャー

その時、走って跳び、宙に浮いているジンジャーの背後に回り込んだラル

「大した自信だな。」そう言いながら、霧ガンドレッドで、4本の霧の炎を撃ったラル

だが、撃たれる直前の所で回避したジンジャー

(速い!……あのラル姉の攻撃を回避出来るなんてっ……でも、なんか回避の反応がやけに速いような気が…?)
ソラはジンジャーの回避を見て不思議に思っていた。

「逃がさんっ…」地面に着地してからそう言ったラル

ラルが撃った4本の霧の炎は未だに消えず、ジンジャーを追尾していた。

(追尾(ホーミング)する霧の炎ねぇ…)追尾してくる霧の炎から逃げ回りながら呟く。

ジンジャーは逃げるのを止めて、宙に浮かんだまま立ち止まった。

「甘い甘い…バァ〜っ」そう言いながら、身につけているマントで追尾してきていた霧の炎を防いだ。

(霧の炎をマントで防いじゃったっ……あれ、ただのマントじゃなかったんだ。)
ラルの攻撃を防いだ事に驚くソラ

「がっかりさせるなよ。それでも“プレジェルティ・セッテ”…選ばれし7人?」
そう言いながら、いつの間にか左手で持っていた帚で攻撃を仕掛けて来たジンジャー

ナイフのように先の尖ったミサイルが、いくつも雨のようにラルに向けて発射されていた。
ラルはその攻撃を次々と後ろへステップする事で回避していたが、回避した方向が良くなかったのか、壁の方へいつの間にか
追い込まれていた。ラルに回避されて当たらなかったミサイルはそのまま地面に突き刺さり、すぐに爆発を起こしていた。

「ラル!!」壁に追い込まれたラルを見て叫ぶツナ

「10代目、退いて下さい!!」

「えっ…」獄寺の声が聞こえ、後ろを振り向いたツナ

獄寺はいつの間にか左腕に赤炎の矢を装着していた。

「行くぜ!“赤炎の矢!!(フレイムアロー)”」
晴の炎で出来た壁に向かって撃った。
すると、撃った所だけ壁が無くなっていた。

「や…やった!」壁に穴を開けれたのを見て、喜ぶツナ

だが、その穴を晴クモがすぐに塞いでしまった。

「マジかよっ」
「なんて早い再生力だ!」
すぐに穴が塞がれたのを見て悔しそうな表情を浮かべた山本と了平

獄寺はもう1度撃とうと赤炎の矢を構えた。

「待ってっ、隼人さん!何度やっても、おそらく結果は同じだよ…なら、無駄に力を消費しない方が良い。」

「フフフっ…さすが『陽色の姫君』……瞬時に状況を把握して判断するというのは本当みたいだね。
……言ったろ?下手に動くなって。そこで大人しくしてな。」

「くっ…」悔しそうな声を出す獄寺

「今度変な事したら、みんなクモの巣でぐるぐる巻きにしちゃうよ?」

「えっ…」思わず声が漏れてしまったツナ

「お前達、手出しは無用だ。こいつはオレが倒すと言ったはずだ!!」

「だってさ。…じゃあ、そこで大人しく見てな。でも、これで終わりだよ!」

攻撃を再開したジンジャー
帚から先の尖ったミサイルがラルに向かって発射された。

ラルはマントの内側から素早く何かの匣を取り出し、開匣していた。

ジンジャーの攻撃がラルに当たり、爆風が起こった。

「ラル!」叫ぶツナ

「大丈夫だよ、綱吉さん」

「えっ…!?」

「ラル姉は攻撃が当たる直前、匣を開匣していたから。」

「姫の言う通り、無事みたいだぜ。」
ソラの言葉を聞いた後、煙でまだ晴れていないが、ラルが立っているのが見えてそう言った山本

煙が晴れ、雲蜈蚣でシールドを作っていたラルが居た。
ジンジャーの攻撃が当たる直前に開匣したのは、雲蜈蚣だったのだ。

「おおっ…蜈蚣がシールドになってる!!」
「まったく引けを取ってないぜ。」
了平と獄寺がそう言い、ツナはラルの無事な姿を見てホッとしていた。

「ガキが」そう呟きながらも、蜈蚣でジンジャーに攻撃を仕掛け始めたラル

「甘い甘い。ここまでお〜いで。」
追いかけてくる雲蜈蚣を回避しながら楽しそうにそう言うジンジャー

その時、背後の方からも雲蜈蚣が襲ってきているのに気付いたジンジャー

逃げ場を失ったジンジャーの両手と両足に雲蜈蚣を巻きつかせて動きを封じた。

「上手い!完全に先読みしてる!!」
「あの女、動きを予知出来んのか!?」
ラルの戦いを見ながら、驚いていた山本と獄寺

「…いや、経験だ。幾千もの実戦を生き抜いてきた事こそがラル・ミルチの強さだ。」

(このしなやかさが…ラルなんだ。)
ラルの戦いを見ながらそう思ったツナ

「コロネロを殺った実行犯を吐け。」
ジンジャーにそう聞くラル

「なんだ、やっぱり気になるんだ。フフっ…誰が言うかよ。」

ジンジャーが答えなかったので、ラルは右手を握った。
すると、ジンジャーに巻き付いている雲蜈蚣の絞めつける力が強まった。

「ぎっ…ぐぅ…くわあぁ!!」悲鳴を上げるジンジャー

「その蜈蚣は万力のように手足を絞めあげるぞ。まだその手で飯を食いたいのなら吐けっ」

「やめろぉ!!折れる〜!!」

(……今のジンジャー、本当に苦しんでるような気がしない。…もしかして、演技…?それに、さっきから感じるこの違和感はいったいっ…)
ソラはジンジャーを見上げながら、超直感で何かを感じていた。

「待って、ラル!!」ジンジャーが苦しんでるのを見て、制止を呼び掛けるツナ

「フフっ…なんてね。」
今まで苦しんでいたはずのジンジャーがそう呟き、指を鳴らした。

すると、ラルの左腕で何かが起きた。

突然ラルに何かあったのか解らなくて動揺するツナ達。
いったい、ラルの身に何が起きたのだろうか!?


標的38へ進む。


今回はジンジャー・ブレッドとラルが戦闘する所です。
このお話では、ソラの台詞を入れた以外はあまりアニメ沿いと変わりないですね。
次の話もジンジャーとの戦いです。
それでは標的38へお進みください。

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