ーー突入当日ーー
アジト全体に警報が鳴り響き、ツナ達はすぐに起床し、それぞれ部屋を後にして合流した。
その後、Fハッチに向かって走っていた。
「いったい何なんだ?」
「この警報…ただ事じゃないぜ…」
「それに、いきなり出撃って……予定より早くない!?」
(いったい何が起きてるの!?)
指示通り、Fハッチに向かいながらも、状況が把握し切れていない山本、獄寺、ツナ、ソラだった。
ラルと了平は状況を把握している様子。
『敵の攻撃だぞ。』
ヘッドホンからリボーンの声が聞こえてきた。
「えっ…リボーン!」
『2km離れた倉庫予定地に、ミルフィオーレの大部隊が集結している模様です。……相当な数です。』
『すでに雲雀が向かってるぞ。』
(恭兄が!?…そうか、そういう事だったんだ!昨日了兄が恭兄のアジトに行ったのはっ…)
昨日何かあると思って気になっていた事が解り、了平に視線を向けたソラ
「えっ…雲雀さんが!?…敵は大勢居るんでしょ?1人じゃ無理だよ!!俺達も行かなくちゃ!!」
「「ならん!!/ダメ!!」」
了平とソラがツナを止めた。
「えっ!?」
「それでは雲雀が体を張る意味がなくなる!!」
「そんなっ…」
『ミルフィオーレはかなりの兵力をそこに集中させている。それを雲雀が一手に引き受ける事で地上と敵アジトの戦力が手薄になるんだぞ。』
「だ…だけとっ…」立ち止まったツナ
ツナが立ち止まったので、他のみんなも立ち止まった。
「……恭兄の行動に報いたければ、殴りこみを成功させる事だよ。」
雲雀を心配するツナにそう言ったソラ
「ソラちゃん…」
(あいつ、この事知ってたんじゃ…)
(あの野郎!!カッコつけやがって!!)
山本と獄寺はここには居ない雲雀の事を心の中でそう言っていた。
「…ソラ、雲雀から手紙を預かっている。」
了平がソラに声を掛けた。
「私に?」きょとんとするソラ
「ああ。」そう言いながら、上着の内ポケットから封筒を取り出してソラに渡す。
受け取ったソラはすぐに封筒から手紙を取り出して広げ、黙って読み始めた。
ソラ、この手紙を笹川了平から受け取っているという事は、これから敵のアジトに乗り込む所だろうね。
まずは君を叱らないとね。ソラが今回の作戦に参加したの、自分から行くって決めたんじゃない…君と戦ってなんとなくそう思ったよ。
君に聞いてもどうぜ言わないだろうから、哲を問い詰めて吐かせたよ。君が作戦に参加した本当の理由を……
君の言った通り、僕は今すぐにでも上層部に殴り込みに行きたいね。でも、それは今の君の願いじゃないと思うから今は抑えておくよ。
あと、僕に隠し事した罰は帰って来たら受けて貰うよ?今回は君に拒否権はない。それから、アジトに居る人達は僕が守ってあげる。
…君との約束だしね。だから、君はアジトの事は気にせず、沢田綱吉達とただ作戦を成功させる事だけに集中しなよ。
僕は一緒に行けないけど、無茶はしないで、無事に帰っておいで。行ってらっしゃい、ソラ
「恭兄、知ってたんだ……私が作戦に参加した本当の理由を…」
手紙を読み終えたソラがそう言う。
「ああ。殴りこみに行きたいのを我慢して、ずっとここに留まってくれていたのだ。ソラのためにな……」
「そっか。(ありがとう、恭兄…)」手紙を仕舞うソラ
(あの雲雀さんが……)
(ソラ、やっぱ雲雀に好かれてんのな……)
(あの雲雀が手紙だとっ…!?)
ツナ、山本、獄寺は改めて雲雀がソラには優しい事を知った瞬間だった。
「何をしている!!」
いつまでも立ち止まったままのツナ達に一喝するラル
「あっ…」
「自分が成すべき事を見失うな!!」
『お前は、雲雀の強さを知っているだろう?』
ラルとリボーンがツナにそう言った。
『地上監視ポイントより、信号を確認!!コースクリア……10代目!!今なら、Fハッチより、ルート312で敵アジトへとつっ切れます!!』
『ツナ!!』
「綱吉さん!!」
ジャンニーニの言葉を聞いて、リボーンとソラがツナに声を掛けた。
「……わかった!(雲雀さん、頼みます!!)」
雲雀に任せる事に決めたツナ
「開けてくれ!!ジャンニーニ!!」
そう言って走り出したツナ
ツナに続いて、他のみんなも再び走り出した。
(恭兄、ここの事、頼んだよ?……行ってきます!)
心の中でそう言いながら、フードを被ったソラ
『了解!!Fハッチ開口!!』
Fハッチが開き、そこから地上へと出て行ったツナ達。
ーー倉庫予定地ーー
そこで襲撃してきてきたミルフィオーレを次々と咬み殺していた雲雀
(そろそろ、出発した頃かな…?)
心の中でそう呟きながらも、敵の攻撃を余裕で交わして、咬み殺していく。
(…馬鹿な上層部の事がなければ、あの子には綱吉達とじゃなくて、僕と行動して貰おうと思ってたのに……予定が少し狂った。
……悪いけど、君達には大人しく僕に咬み殺されて貰うよ?)
殺気が思いっきり溢れ出し、八つ当たりしていた雲雀
雲雀のその八つ当たりという名の咬み殺しを受けて、悲鳴を上げるミルフィオーレの連中。
(…了平から手紙をちゃんと受け取ったかな…?僕は君との約束を、入れ替わるその時まで守るよ。…だから、安心して行っておいで。ソラ)
戦いながらも、ここには居ないソラに向けて、心の中でそう言っていた雲雀だった。
ーー並盛商店街ーー
Fハッチから地上に出た後、敵が居ないか、確認しながら、慎重に地下ショッピングモールの地下駐車場へ向かっていたツナ達。
「よし、こっちだ!」ラルの誘導に従って、走って移動していたツナ達。
「人が居ないぜ!助かったっ…」
「あたりめーだ!いつもならまだ寝てる時間だっつーの!」了平にそうツッコんだ獄寺
「朝はだいたいこんな感じだぜっ」
「何で知ってんだよ?」疑問をぶつける獄寺
「ああ…俺、朝練あったからな!」獄寺にそう答えた山本
「たくっ…野球バカが…」
(タケ兄…ほんっとに野球が大好きだね……この時代のタケ兄も、時々隼人兄に「野球バカ」って呼ばれてたよ。)
走りながら、獄寺と山本のやり取りを見ながら、この時代の2人の事を思い出していたソラ
「無駄口を叩くな!急げ!!」ラルが喋る獄寺達にそう怒鳴った。
並盛町駅の隣の地下駐車場に辿り着き、そのまま中に入っていったツナ達。
ーー地下駐車場2階ーー
地下2階に着いて、少し進んだ先の交差点の所で立ち止まったラル達。
「発電室って…」どっちに行けばいいか解らず、キョロキョロするツナ
「俺の勘からすると……こっちだ!」左を指差した了平
「何が勘だ!?地図見ろ、地図!!」了平にツッコミながら、アジトの図面をインプットした携帯端末を取り出した獄寺
「了兄、そっちじゃなくて、こっちだよ。」そう言いながら、右を指差したソラ
「むっ…」
「お前もかよ!?」獄寺が思わずツッコんだ。
「右か……一応確認する。姫の勘を疑う訳じゃないが、念のためだ。」
「そうして。」
(なっ…!?こいつの勘を信じてんのか!?)
声には出さなかったが、心の中でラルにツッコんだ獄寺
ラルが地図を確認しようとした時……
「こっちよ。」
ここには居ないはずのビアンキの声が聞こえて来た。
ラル達はその声が聞こえた右の方へ視線を向けた。
その先には、ビアンキが居た。
「ビアンキ!?」驚くツナ
その後、獄寺、了平以外のみんながビアンキの所へ駆けて行った。
「どんな勘だ!?」
未だに左を指したままの了平に聞く獄寺
獄寺に何も言い返せない了平だった。
(だが、芝生頭は外れたが、あいつの勘は当たりやがった……偶然か?)
ソラが右を迷わず差した事に疑問を抱いた獄寺
(やはり、ソラの直感は100%当たるな…)
左手を降ろしながらそう思っていた了平
獄寺と了平もツナ達の後に続いて、ビアンキの方へ駆けて行った。
「見送りに来たわ。」
「えっ……こんな危険な所まで……」ビアンキの言葉が嬉しかったツナ
「さあ、こっちよ。」
ビアンキの誘導で発電室へ向かったツナ達。
発電室前に着き、ビアンキがドアを開けた。
「この中にあるダクトから行けるわ。」
「よし、行くぞ!」
ラルの掛け声で次々と発電室内へ入って行く。
「ツナ!」
「えっ…」
ツナも入って行こうとした時、ビアンキに呼び止められ、立ち止まって振り返った。
「京子やハルや子ども達は任せなさい。安心して暴れてくるのよ。」
「うん!」ビアンキの言葉に嬉しそうに頷くツナ
「それから……」
「?」首を傾げるツナ
「姫の事、しっかり守ってあげてね?」そう言いながら、まだ中に入っていなかったソラの頭を撫でるビアンキ
「ちょっ…ビアンキ姉!?自分の身は自分で守れるから!!」撫でられてる手を払いのけはしないが、ビアンキにそう言ったソラ
「ダメよ。確かに姫は強いわ。でも、あなたはどんなに強くてもまだ子供なのよ?」
そう言って、しゃがんでソラを抱きしめるビアンキ
「ビアンキ姉……」
「私は純粋にあなたの事を心配しているの。本当は今回の作戦にだって、出来る事なら、行かせたくないわっ……
でも…上層部からの命令ってのもあるんだろうけど、あなたは1度決めたら、頑として譲らないでしょ?」
そう言いながら、さらに強く抱きしめるビアンキ
「………ごめん。」ソラは心配してくれているビアンキに申し訳なく思っていた。
(ビアンキ……)ビアンキとソラを静かに見守るツナ
ビアンキは抱きしめていたソラを離した。
「無茶はしちゃダメよ?そして、あなたが居なくなったら悲しむ人が居るって事を決して忘れないで?………姫、行ってらっしゃい。」
ソラに優しい笑みを向けながらそう言ったビアンキ
「…うん、必ず帰るよ。…行ってきます!!」
ビアンキの言葉が嬉しかったソラがそう言った。
「ツナ」立ち上がってツナに声を掛けたビアンキ
「わかってるよ。姫ちゃんは俺が絶対守るよ!だから、ビアンキは京子ちゃん達の事を頼むよ。」
「任せなさい。(頼んだわよ、ツナ……あなたはソラの父親なのだから…)」
「…行ってきます!!…姫ちゃん、行こう?」
ソラに視線を向けたツナ
「うん。」
ツナとソラはそのまま奥のダクトへ向かった。
ソラはダクトに向かいながら、後ろに振り向くと、獄寺とビアンキが会話を交わしているのが見えた。
(…2人の間の壁、少しは薄くなったのかな…?)2人の様子を見てそう思っていた。
順番にダクトに入り、敵のアジトに侵入していった。
ーーダクトの中ーー
ラル、ツナ、ソラ、山本、獄寺、了平の順に並んでダクトの中を移動していた。
「いてっ…」天井に頭をぶつけたツナ
「大丈夫?」
「だ…大丈夫だよ。」自分を心配して声を掛けてくれたソラにそう言う。
「音を立てるな!」ラルがツナにそう言う。
「ご…ごめんっ」謝るツナ
「ここはもう敵のアジトの中だ。ちょっとしたミスも命取りだぞ。慌てず、焦らず、急ぐんだ。」
前へ進みながら、ツナ達にそう言ったラル
「まさか、こんな映画みたいな事をするとはな…」爽やかな笑顔を浮かべながらそう言った山本
「けっ…気楽な野郎だ…」こんな状況でも気楽でいる山本を見てそう言った獄寺
「でも、本当にこうなってるんだね。」
ダクトの中を進みながら、そう言うツナ
そこで分かれ道前に着き、立ち止まり、ラルが自分の着けているゴーグルにインプットした、このアジトの地図を確認していた。
「左だ。」地図を確認したラルがそう言い、再び移動し始めた。
そうしてまたしばらく進んだ先に、網戸があって立ち止まった。
「行き止まり?」網戸を見てそう言ったツナ
「大丈夫だよ。ラル姉がすぐに網戸を外してくれるから。」
「えっ…?」
ラルはマントの内側からスクリュードライバーを取り出して、ネジを外し始めたラル
「凄いっ…ほとんど音がしない…」驚くツナ
「当たり前だ。こんな事でいちいち驚くな。」そう言いながらも、作業を続けるラル
「いや…やっぱ凄いっスよ、ほんと…」山本もツナと同感なのか、そう言った。
「確かにラル姉にとっては当たり前の事なんだろうけど、綱吉さん達からしたら、凄いと思うよね。」
ラル達の話を聞いていたソラがそう言った。
「フっ……オレよりお前の方がよっぽど凄いだろ。たった5歳で、俺が今やってる作業を平然とやってしまったのだろう?」
作業の手を止めずに、ソラにそう言い返したラル
「えっ!?(5歳って事は、去年だよね…?)」驚くツナ
「ソ…姫も出来るのか?」山本がソラに聞く。
「………一応。なんでラル姉が知ってるの?」
少し間を置いてから答えたソラ
「ずっと前にリボ―ンから聞いたんだ。冗談で言ったつもりが、真に受けて出来るようになっちまいやがった…ってな。」
「う゛っ……」
「まぁ、お前が真に受けるのも無理はないな。リボーンからその時の言葉を聞いたが、姫にとっては、冗談でも言って欲しくない言葉だったしな。
あの言葉はお前を挑発するだけだ。」
「むぅ〜…」図星を指されて返す言葉がないソラ
ネジを全部外し終え、網戸を外し、地図を確認するラル
「地下3階のC4ポイント…このまま進めば、第二格納庫の上だな。」
「どのくらい進むの?」ツナが気になってラルに聞いた。
「まだ先は長い。」ツナにそう答えながら、また進み始めたラル
ーーC5ポイントーー
「C5ポイント…第二格納庫の上だな。よし、図面の通りだ。このまま中央の施設を目指すぞ。」
地図を確認しながらそう言ったラル
そこからまた進み始めたが、ラルが息苦しそうにしているのに気付いて、声を掛けたツナ
「ラル・ミルチ、体調はどう?」
ラルは何も答えず、ただ黙って進み続ける。
「ねぇ…っ…いったたっ…」ラルの靴の裏に鼻をぶつけたツナ
「な…何?」急にラルが止まったのが気にって聞いたツナ
「赤外線センサーだ。」
それを聞いて驚くツナ達。
ラルは前方に向けてスプレーを噴出すると、今まで見えなかった赤外線が見えるようになった。
「5mといったところか…これに感知されると、あれの餌食だ。」
赤外線の向こうに何か装置があるのが見えた。
「あれって…!?」
「自動レーザーだよ。」ツナにそう答えたソラ
「レーザー?」
そう、赤外線の先にはレーザーがあったのだ。
「訓練通り、潜り抜けを実行する。」
ラルにそう言われ、潜り抜けの訓練をしていた時の事を思い出すツナ
「大丈夫っスよ、10代目」
「綱吉さん、ちゃんと訓練通りにやれば、失敗しないよ。」
「ジャンニーニが作った、『擬光フィルター』……」
ツナ達に丸い形の擬光フィルターを見せながら説明し始めたラル
(あの『擬光フィルター』…赤外線を5秒間だけ止める事が出来るって言ってたやつだ…)
ラルが持っている擬光フィルターを見ながら、心の中でそう言うソラ
「っ……わ…わかったっ…」
ラルの説明を聞いた後、息を呑んでからそう答えたツナ
(ん?……嫌な予感がしてきた……潜り抜けると何かが、あるの…?)
ここを潜り抜ける時になって、急に嫌な予感がし出したソラ
「OKだ。」最後尾の了平がそう言った。
「行くぞ!」
最後尾の了平がそう言ったのを聞き、ラルが手に持っていた擬光フィルターを赤外線発生装置の中に放り投げた。
放り投げた擬光フィルターはすぐに動き出し、今まで張られていた赤外線を止めた。
「今だ!!」ラルが合図し、潜り抜けが開始された。
みんなはラルに続くように急いで潜り抜けていた。
「時間だ!!」ラルが5秒間立った事を知らせる。
全員無事潜り抜けたかに思えたが、了平だけが赤外線の餌食になりかけたが、
なんとか赤外線には触れないで済んだのでギリギリセーフだ。
「ふぅ……間一髪だが、寿命が縮むな…ハハ…」
「ハァ〜」了平の言葉を聞いて、全員無事潜り抜け出来た事に安心するツナ
(まだだっ!まだ嫌な予感が消えてない!!)ソラだけはまだ気を抜がず、警戒していた。
「よし」ラルが全員無事潜り抜けれた事を確認した後、再び進もうとしたが……
赤外線に触れなかったはずなのに、自動レーザーが起動していた。
「バカな!?レーザーが起動している!?」
「えっ!?」ラルの言葉を聞いて驚くツナ
(これだっ…!さっきから感じてた嫌な予感はこれだったんだ!!)
超直感で感じていた嫌な予感の原因が解ったソラ
「回避だ!!」ラルが後ろに居るツナ達にそう言うが……
今から後ろに回避した所で、間に合わないと言う獄寺
「(このままじゃっ…!…)武さん!下を切り裂いてっ!!」
このままではレーザーの餌食だと思ったソラが突然閃き、後ろに振り向いて山本にそう言った。
その時、レーザーが発射された。
山本にソラの言葉は無事届いたのだろうか…?
ツナ達は無事なのか…!?
始まりました!!突入編!!
今回のお話は、アジトで警報が鳴ってから、ダクトを通って敵のアジトに侵入する所です。
雲雀がソラへの手紙を了平に託し、それをソラが読む……を書いてみました。
アニメでは、雲雀は警報が鳴った時、アジトにはもう居なくて、さらにツナ達との通信も
出来ない状態だったので、手紙という形しか思いつきませんでした。
それでは、標的36へお進み下さい。