ーー地下7階ーー大食堂ーー
ソラとツナが中に入ると、モモはランボとイーピンと遊んでいた。
【あっ!ソラ!!】ソラに気付いたモモが飛びついて来た。
「良い子にしてた?」
【もちろんだよ!!】
「ランボ君とイーピンちゃんと遊んでたの?」
【うん!!楽しかったっ!!】
「そっか。」
「あれ?獄寺君の猫は?」
瓜が見当たらなくて、キョロキョロしたツナ
「今、お風呂に行ってるよ。」
京子がツナにそう答えた。
「えっ!?風呂!?(匣兵器なのに!?)」
(お風呂って事は……もしかして隼人兄が…?)
「瓜ちゃん、お魚食べて、ベッタベタになったんで、獄寺さんにお風呂に入れるの、お願いしたんです。」
「瓜ちゃん、お魚いっぱい食べて、顔とか汚れちゃったもんね。」
「綺麗、良い事!」
ハル、京子、イーピンの順にそう言う。
その時、ランボがツナに飛びついてきた。
突然飛びついて来たランボにビックリしながらも、しっかり受け止めたツナ
「にひひひっ……ランボさんはいつもお風呂に入ってるから、ホラっ、甘〜い香り〜」
そう言いながら、ツナに自分の頭の匂いを嗅がせる。
「それはお前の頭の中のキャンディーの匂いだろ!?」
そう言いながら、ランボを引き剥がしていたツナ
(あの猫、獄寺君に全然懐いてないのに、大丈夫かな?)
獄寺を心配するツナ
「綱吉さん、心配なら行ってきたら?」
「えっ…」
「たぶん今頃、瓜は獄寺さんから逃げ回ってると思うから。」
「そうなの?」
「瓜、獄寺さんがお風呂に入れた時は、いつも逃げ回ってるみたいだから。」
「……俺、ちょっと行ってくる!!」ランボを降ろした後、大食堂を出て行ったツナ
【ああー!?ソラぁ〜、なんでツナパパ行かせちゃうの〜!?】
「別に良いでしょ。それに…今の獄寺さん、瓜の扱いに全然慣れてないから、綱吉さんを行かせないと、永遠に洗い終わらないよ?」
【むぅ〜…】頬を膨らませて不満を訴えるモモ
「……そんな顔しないでよ…」そんなモモに困った顔をするソラ
「ソラちゃん、ご飯食べるよね?」
「モモちゃんから、まだ食べてないと聞きました!」
「ソラさん、食べないの良くない!」
「ソラが食べないなら〜、ランボさんが貰うんだもんね〜!!」
「…モモ?」モモを睨むソラ
【ソラ、そんなに睨まないでよ!?勝手に言ったのは悪かったけどっ……京子ママのご飯、好きでしょ?(…今はハルと一緒に作ったご飯だけどね…)】
「う゛っ…」否定できないソラ
【じゃあいいじゃん!!】
「………頂きます。」少し間を置いてから、京子とハルにそう言ったソラ
「じゃあ、ちょっと座って待ってて?すぐに用意するから!!」
京子にそう言われ、椅子に座ったソラ
京子とハルはすぐに用意し始めた。
「ソラさん」
「何?イーピンちゃん」
「……昼間の…」
その先を言おうとしたイーピンの口に人差し指を添えたソラ
「ごめんね?その事…黙っててくれるかな?」イーピンにだけ聞こえるように小声でそう言ったソラ
「………わかった。イーピン、誰にも言わない。」こちらもソラにだけ聞こえるように小声で答えた。
「ありがとう。」
「なぁ、ソラ〜!」
ランボがソラに話しかけて来た。
「何?」
「ブドウ飴、今持ってな〜い?」
「持ってるよ。」
「ランボさんに頂戴?」
「ランボ!」
「いいよ。」そう言って、ブドウ飴を2個取り出して、ランボとイーピンに差し出した。
「わーい!ありがとだもんね!」ランボは喜んで受け取って、すぐに飴を口の中に放り込み。転がし始めた。
「ほら、イーピンちゃんも。」
「でもっ…」
「イーピンが食べないなら、ランボさんが貰っちゃうぞ?」
「ランボ君、この飴はイーピンちゃんのだから、あげないよ。」
そう言いながら、イーピンの手に飴玉を持たせたソラ
「ソラさん…」
「食べていいよ。」
「……謝謝!」そう言って、イーピンもランボと同じように飴を転がし始めた。
【ソラ、何のお話だったの?】
「敵のアジトの情報が恭兄のアジトのサーバーに流れ込んで来たんだって。」
【そうなんだ。じゃあ5日後の作戦に役に立つ情報がその中にあったんだね?】
「うん、そうだよ。」
その時、京子の声が聞こえてきた。
「ソラちゃん、お待たせ!」
京子とハルが、ソラのご飯を運んできた。
「あれ?ランボちゃん、イーピンちゃん、何を食べてるんです?」
「ブドウ飴!」
「ソラに貰ったんだもんね!!」
「そうなんですか!美味しいですか?」
「「美味しい!!」」ランボとイーピンが同時にそう言った。
「その飴って確か、ソラちゃんの手作りなんだよね?」
「そうだよ。」
「ブドウ飴以外は何が作れるんですか?」
「基本はブドウ味のしか作らないんだけど……一応果物系なら何でも作れるよ。」
「そうなんですか〜!凄いですね!!」
「2人とも、美味しそうに食べてるね。」
「なんだかハルも食べてみたくなってしまいました!」
「じゃあ、食べる?まだ持ってるから。」そう言って、またポケットから、ブドウ飴を2個取り出した。
「いいんですか!?」
「どうぞ。」
「ありがとうございます!!」ハルは嬉しそうに受け取り、すぐに飴を口の中に放り込んだ。
「ありがとう!!」京子も嬉しそうに受け取り、ハルと同じように、すぐに飴を口の中に放り込んだ。
「これはっ…!美味しいですぅ〜!!」
「美味しい…!!」
「良かった。」2人の言葉に嬉しそうにするソラ
「あっ…ご飯、召し上がってください!」
ハルがソラにそう言った。
「いただきます。」
手を合わせてそう言ってから、食べ始めた。
「この飴……誰に作り方を教わったんですか?」
「ん?誰にも教えて貰ってないよ?自分で調べて作った。」
ハルの質問にそう答えたソラ
「はひっ!?自分でっ…!?」
「うん。」
「…凄いね、ソラちゃん」
「そう?」
「なんで自分で作ろうと思ったの?お店に行けばあるのに…」
京子が気になってソラに聞く。
「……自分が作ったのを、食べて欲しい人が居たから。」
そう言って、2人に気付かれない程度にランボへ視線を向けたソラ
ランボは飴を転がしながら、イーピンと話をしていた。
(…ランボ兄がブドウ飴大好きだったから、自分の作った飴を食べて欲しくて作り始めたんだよね……
おかげで今じゃ、それ以外の飴玉も作れるようになっちゃったけど。)
「食べて欲しい人ですか!?それってソラちゃんの好きな男の子ですか!?」
誰かに恋をしてるのかな?っと思ったハル
「違うよ、私のお兄ちゃんみたいな人。」
「お兄ちゃん……ですか?」
「うん、そうだよ。本当の兄妹じゃないけど、ずっと私の事を本当の妹のように接してくれる優しい人。その人の好物がブドウ飴なんだよ。」
「そうなんですか〜」
「ソラちゃん、その人の事、大好きなんだね!!」
「うん!(大好きだよ……とっても泣き虫だけど、いつも私に優しくしてくれるランボ兄……)」
(あれ?)
京子はそこで気付いた。
良く見ると、ソラが僅かにランボに視線を向けているのを……
(………もしかして、そのお兄ちゃんって……この時代のランボ君?)
ソラとランボを交互に見てからそう思った京子だった。
「ご馳走様でした。」
「「お粗末様でした!!」」
その時、ツナが入って来た。
「あっ!ツナさん!!」ハルが気付いて声を掛けた。
「どうだった?綱吉さん」
「ソラちゃんの言う通りになってたよ。さっきやっと終わった所……」
どこかぐったりしている様子のツナ
【時代は違っても同じみたいだね。】
「そうみたいだね。」モモに同意するソラ
「ソラちゃんは今食べ終わった所?」
「そうだよ。モモ、部屋に戻るよ?」
ツナにそう答えた後、モモにそう言うソラ
【ええ〜!?まだツナパパが帰って来たばっかりじゃん!!】
頬を膨らませてそう言ったモモ
「……京子さんとたくさん居たんだから充分でしょ。」
【京子ママは京子ママ!ツナパパはツナパパ!】そう言い、机の上から飛んで、ツナに飛びついた。
「うわっ!?」飛びついて来たモモに驚くツナ
「モ〜モ〜?」
ツナの服を掴んでくっついた状態なので、見上げる形でモモを睨むソラ
【ソラ、もっと2人に甘えていいと思う!!】
「!!」痛い所を突かれたソラ
【モモ、匣の中からずっと見てたよ?ソラ、2人に甘えなさ過ぎるよ……】
モモに何も言い返せないソラ
「あの、ソラちゃん。モモちゃんは何て?」
「あっ…えっと……綱吉さんと居たいって。」
「そっか……じゃあ、モモちゃん」
【呼び捨てで良いよ!!】
「呼び捨てで良いって。」
「あっ、そう?じゃあモモ、今夜は俺の部屋で寝る?ソラちゃんも一緒に。」
【寝る!!】
「えっ…!?」
モモは嬉しそうに頷き、ソラは驚いていた。
「じゃあ決定だね!」モモが何て言ったかは解らなかったが、嬉しそうに頷いていたので、そう言ったツナ
「ちょっ…モモ!!」
【ツナパパと寝たいもん!】
「寝たいもんって……」
【もちろん、京子ママとも寝たい!京子ママなら、笑顔で了承してくれそう!!】
「……確かに…」
京子に視線を向けたソラ
「えっと……何?」
「モモが京子さんとも寝たいって。」
「そうなんだ。じゃあ、明日私達の部屋で一緒に寝る?モモちゃん」
【わーい!!】京子の言葉を聞いて、大喜びするモモ
(ホントに了承しちゃったよっ…)
心の中でツッコんだソラ
「ソラちゃん、モモちゃん連れて来てね?」
「えっ…!?」
「明日は私と寝ようよ?ねっ?」
満面の笑顔でソラにそう言った京子
「……わかった。」
京子のその満面の笑顔に負けたソラ
「じゃあソラちゃん、お風呂に入ったら、俺の部屋においで?」
「…解った。モモ、行くよ?」
【はぁ〜い!!】ツナから離れて、ソラの方へ飛んだモモ
ソラの右肩に飛び乗ったモモ
「じゃあ、おやすみなさい。」
京子達に向かってそう言った。
「「おやすみなさい、ソラちゃん」」
「ソラ、おやすみだもんね!」
「ソラさん、おやすみなさい!」
京子、ハル、ランボ、イーピンがそれぞれ返事を返した。
「綱吉さん、また後で。」
「うん。また後でね。」
ソラはモモを肩に乗せたまま、大食堂を出て行った。
ーー地下14階ーーソラの私室ーー
部屋に戻ったソラはモモをベッドの上に降ろした。
「モモ、なんで急にあんな事言い出したの?」
【だって……ソラ、昨日泣いてた…】
「!!」
【ソラの泣いてる声、匣の中にまで聞こえてきた。たぶん、他のみんなにも聞こえてたと思うよ?】
「そっか……」
少しの間沈黙が流れた。
【ソラ、お風呂入っておいでよ!モモ、ここで待ってるから!】
「あっ…うん。でもその前に…」
上の服を脱いで、モモに背中を見せた。
【ソラ!怪我したの!?】
「昼間に火傷をね……モモ、ガーゼを剥がして、晴の炎を背中に当ててくれる?」
【もちろんだよ!】
ソラがベッドにうつ伏せになった後、モモがガーゼを剥がし、背中の火傷している所に晴の炎を当てて治療し始めた。
【どうして背中に火傷を?】
モモは気になるのか、治療しながらソラに聞く。
「実は…」
ソラは昼間、システム異常が起きた時、第2発電動力室で起きた事を全て話した。
「…というわけで、ランボ兄を庇った代わりに、自分が火傷しちゃった。」
【そうだったんだ。ソラ、自分の体の事、もっと大事にしてよ!】治療しながら、ソラに怒るモモ
「ごめん。」
【終わったよ!火傷、綺麗に消えた!!】
「ありがとう。じゃあお風呂に入ってくるね。」
【うん、待ってる。】
お風呂に入りに行ったソラ
【(…ソラ、他人を優先して、自分を犠牲にするの、誰も望んでないんだよ?ツナパパも京子ママも、モモ達だってっ……)】
ソラの事が大好きで大切な友達だからこそ、自分は傷ついても構わないと思ってるソラの事を心配していた。
ーー地下6階ーーツナと獄寺の部屋ーー
風呂上がりのツナと獄寺が話をしていた。
「えっ…?ソラがここに来るんスか?」
「うん。モモと一緒にね。」
「そうですか……あの、俺…居ない方が良いっスよね?」
「ううん、居て。」
「しかしっ…」
「獄寺君、このままじゃいけない。ソラちゃんとちゃんと話し合うんだ。昼間の話、覚えてるでしょ?」
「……はい。」
「それに…ソラちゃん、本当は獄寺君と仲が良いはずなんだ。」
「超直感…っスか?」
「それもあるかもね。でも、それだけじゃない。初めて獄寺君がソラちゃんの名前を呼んだ日、言ってたんだ。」
『獄寺さん、優しい眼で私を見てくれた……この時代の獄寺さんみたいに……』
あの日、ソラが獄寺の事をそう言っていたのを伝えたツナ
「あいつが、そんな事を…?」
「獄寺君、あの子はきっと…自分に優しい獄寺君しか知らないんだよ。」
「………10代目、俺…どうしたら?」
「まずは謝ろうか?誤解させるような言動をしちゃったソラちゃんも悪いとは思うけど、獄寺君はソラちゃんの事を何も考えず、
ただ、俺を危険な目に遭わせたってだけで敵視してたみたいだし。」
「そう…っスね。」
「その後は話し合おうよ?良く考えてみたらさ、獄寺君と山本はまだソラちゃんとそこまでゆっくり話せてないし。」
「解りました!そうします!!」
その時、ノックの音が聞こえてきた。
「あっ、来たみたいだね。」
ツナは扉まで駆け寄って開けた。
ツナが言った通り、モモを連れたソラが居た。
その時、肩に乗ってたモモがツナに向かって飛んだ。
「あっ!モモ!?」
モモが飛んだのを見て、呼び止めようとしたソラ
【ツナパパーー!!】そう言いながら、ツナに飛びついた。
「いらっしゃい、モモ」飛びついて来たモモに驚く事なく、そう言ったツナ
「綱吉さん、ごめんなさい。急にモモが飛びついちゃって…」
「別にいいよ、気にしないで。それより、中に入って?」
「お邪魔します。」そう言って中に入るソラ
「ソラちゃん、ちょっと…話、いいかな?」
「話?」
「そう。獄寺君と……」
その時、扉を開く音がした。
「よっ、ツナ!お待たせっ!!」
「げっ…山本!てめー、何しに来た!?つーか、ノックしやがれっ!!」
「わりぃ、わりぃ!ツナに呼ばれて来たんだよ。ソラが今日ここで寝るからって。」
「私?」自分を指差してきょとんとした顔になるソラ
「うん。でね、獄寺君と山本の話を聞いて欲しいんだ。」
「……何ですか?」
少し渋りながらも、獄寺と山本に聞くソラ
モモがソラの様子を見て、ツナから離れて、再びソラの元へ飛んで戻って来た。
【大丈夫だよ。モモ、傍に居る!】
ソラの不安を感じとったのか、そう言ったモモ
「ありがとう…」
「とりあえず座ろうか?」
ツナがそう言ったので、部屋に元からある椅子は2人分しかないので、獄寺と山本が座り、
ツナとソラが下のベッドの上に座った。
「さっ、獄寺君」
「悪かった!!」いきなりソラに謝る獄寺
「えっ…?」何の事を謝っているのか解らないソラ
「獄寺君、いきなり謝っても何の事か言わないと解らないよ。…あのね、獄寺君が謝ってるのは、俺がボンゴレの試練をした日の事を
謝ってるんだよ。ソラちゃんの事、誤解してごめんって……」
「俺も、一瞬誤解して悪かったのな。」
「……謝る必要なんてないです。誤解するような言い方をしちゃったんだから、誤解して当たり前です。」
「ソラちゃん…」
「なぁ、ソラ……もしかして、今も自分を責めてるのか?ツナを勝手に雲雀と戦わせてボンゴレの試練を受けさせた事……」
何も答えず黙ってるソラ
【ソラ…】そんなソラを右肩に乗ったまま、心配そうに見るモモ
「…俺を危険な目に遭わせた事に責任を感じてるから、俺達にまた壁を作ってるの?もしそうなら、そんなの間違ってるよ!!
俺がいつソラちゃんを責めた!?」
ツナの突然の怒鳴り声にビクつくソラ
「あっ…ごめん!いきなり怒鳴って……でも、リボーンが教えてくれたんだ。ボンゴレの試練をしたのは、俺のためでもあるって……
俺がみんなを守れるようになるための近道だって。」
「!…リボ兄が、そう言ったの?」
「うん。」
(言わないでって言ったのにっ……)ここには居ないリボーンに向けてそう心の中で言ったソラ
「だからね、ソラちゃん…その事は気にしないで?………ありがとう。」
「っ……なんで、お礼を…言うの?私、綱吉さんをっ…」
その先を言おうとしたソラの口に人差し指を添えた。
「ソラちゃんは何も悪くない…何も間違ってない…」
優しい声で諭すツナ
「ツナの言う通りなのな!」
「10代目がそうおっしゃってるんだ。素直に受け取れよ。」
ソラの口から人差し指を離した。
「ソラちゃん、ごめんね?すぐに気付いてあげられなくて……」
「?」首を傾げるソラ
「最近、あまり眠れてないんでしょ?」
「!!」
「ソラ、なんでツナに言わなかったんだ?眠れてねぇって事は、悪い夢見てんだろ?」
山本に図星を指され、顔を俯かせて黙ってるソラ
「ソラ、もしかして……俺が居たからか?もしそうなら…「獄寺さんは何も悪くないです。」」
獄寺の言葉を遮ってそう言ったソラ
「なぁ、ソラ…俺らがまだ中学生だからか?」
「えっ…」俯いていた顔を上げて、山本に視線を向けたソラ
「ソラの事を知らなくて、まだ中学生の子供だから、俺らの事…頼ってくんねぇのか?」
「違う!!」山本の言葉を聞いて、即座に否定したソラ
「じゃあ、何でなんだ?」
「そ…それはっ……」
山本の問いに上手く答えれず、黙っていたソラ
ソラが獄寺や山本に対して、まだ戸惑いを持っているのは確かだ。
けれど、ソラにはまだ、この2人との間の壁を壊す勇気がなかった。
ただ、それだけなのだ。
ソラのその様子を見て、ツナがソラに声を掛けた。
「ねぇ、ソラちゃん」
「何?」
「あのさ、そろそろ獄寺君と山本にも、タメ口で話さない?」
「へっ?」突然そんな事言われると思ってなかったからか、呆然とするソラ
「獄寺君と山本も、タメ口で話して欲しいよね?」
「確かにそうですね……ガキに敬語使われるのは聞き慣れねぇぜ。」
「おう!なんか、他人行儀過ぎてくすぐったいのな。」
獄寺と山本はツナに同意し、それぞれソラに向かって言う。
「だってさ。どうする?ソラちゃん」
「えっ…どうするって……」
「このアジトでまだ敬語なの、獄寺君と山本だけだよ?大丈夫!ハルにもちゃんと敬語無しで話せてるんだから…」
「でもっ…」
【ソラ!】不安になってるソラに気付いて声を掛けたモモ
「モモ?」
【大丈夫だよ!勇気を出して!!きっと、他のみんなもそう言ってると思うよ?】
モモにそう言われ、自分の部屋に置いてきた、残りのアニマル匣達の事を思い出した。
「……確かに、言いそうだね。」
【でしょ?隼人と武、ソラが勇気を出してくれるの、待ってくれてるよ?】
そう言いながら、2人を指差すモモ
モモが指差した方に視線を向けた。
獄寺は睨む事なく、少しだけ表情を和らげていて、山本はいつもと変わらない爽やかな笑顔を浮かべいた。
【ソラ!】
「ソラちゃん」
モモとツナがソラを後押しする。
「………今まで待たせてごめんなさい。これからは、敬語無しで話しても…良い?」
ソラは2人に後押しされ、勇気を出して獄寺と山本との間の壁をぶち壊した。
「ああ!」
「おう!」
獄寺と山本がそれぞれ返事を返した。
「ところでさ、ソラ」
「何?山本さん」
「その呼び方も変えねぇ?」
「えっ…?」
「名字じゃなくて、名前で呼んでくれよ!俺と獄寺だけだぜ?名前で呼んでねぇの。」
「言われてみれば、そうだね……」
「確かに……」
山本の言葉を聞いて、気付いたツナと獄寺
「小僧とランボとイーピンはともかく、ツナや笹川やハルは初めから名字じゃなくて、名前で呼んでんのに、
なんで俺と獄寺だけ?ってずっと思ってたのな!」
【あははっ……武らしいね!!ソラ、名前で呼んであげたら?ツナパパみたいに。】
「……じゃあ、隼人さん、武さんで良い?」
「好きに呼べ。」ぶっきらぼうに言う獄寺
「おう!いいぜ!!(やっぱダメか。俺、タケ兄って呼んで欲しかったんだけどな〜)」
ソラにそう返事を返しながらも、心の中で残念がっていた山本だった。
その後は現段階での、それぞれの修行の成果を話していた。
もちろん、ソラも太陽と自分の修行の成果をツナ達に話す。
修行の話の後、他愛のない話をしていたツナ達だったが……
「あっ…」ツナが自分に寄り掛かって来たソラに気付いて、視線を向けた。
「スゥ……スゥ……スゥ……」
ソラはツナに体を預けたまま、眠っていた。
話をしてるうちに、いつのまにか眠ってしまったようだった。
「寝ちゃってる……」
「もう夜も遅いですし、俺らも寝ましょうか?10代目」
「うん、そうだね。」
「じゃあ俺、部屋に戻って寝るぜ。おやすみ!ツナ、獄寺」
「おやすみ、山本」
「ああ…さっさと戻りやがれ!野球バカっ」
山本は自分の部屋へ戻っていった。
「獄寺君」
「はい、何でしょう?」
「あのさ、悪いんだけど……今夜は上で寝て貰っていいかな?ソラちゃん、起こしちゃ悪いし……」
「解りました!」
「ありがとう。」
「電気、消しますね?」
「うん。」
ツナの返事を聞いた後、獄寺が電気を消した。
「では、10代目、おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。獄寺君」
獄寺は上のベッドに上がっていった。
ツナはソラの靴を脱がせた後、横抱きに抱き上げて、少しだけ場所を移動させてから、ベッドに横たわらせた。
「モモはそこでいいの?」
そことは、ツナとソラの間ではなく、ツナ側の枕元だった。
【うん!ここで良いの!!】言葉が解らないツナに頷いて答えるモモ
「そっか。じゃあ、モモもおやすみ。」
【おやすみ!ツナパパ】そう言ってから、すぐに眠ったモモ
「はやっ…」そんなモモを見て、思わずツッコんでしまったツナ
ツナもベッドに横になり、寝ているソラの頭を撫で始めた。
「ソラちゃん…勇気を出してくれて、ありがとう。」
寝ているソラに語りかけ始めたツナ
「獄寺君と山本、嬉しそうにしてたよ?君に名前を呼ばれた時………山本が言っていたように、俺達はまだ中学生だけど、
君が頼ってくれるように、俺達も頑張るから……だから、1人で何でも頑張ろうとしないで、俺達を頼ってよ?」
頭を撫でながら、ツナはソラにそう言っていた。
その時、ソラが身動きして、ツナにしがみついてきた。
「あっ…」
頭を撫でていた手を止めたツナ
「……やっぱり今回もこうなっちゃったか。でも、やっぱり体は嘘をつかないね…ソラちゃんはただ、甘えるのが下手なだけ。」
ツナはまだソラの事をあまり知らないが、これだけははっきりと言える。
ソラは甘えないんじゃなくて、ただ、甘えるのが下手なだけだと……
「ふわぁ〜…俺も寝よ……おやすみ、ソラちゃん」そう言って、ソラを優しく抱きしめて、眠りについた。
【(ツナパパ、やっぱり時代は違っても、ソラのパパだね…)】そう言いながら、2人を見つめていたモモ
モモは寝たふりをしていただけで、まだ起きていたのだ。
【(ソラ、体は正直だよ?ツナパパに甘えたがってる……ツナパパが言うように、もっとみんなを頼って欲しいな…)】
モモはそう思いながら、今度こそ眠りについたモモ
今回のお話は完全オリジナルです。
やっとっ…やっと獄寺と山本とも打ち解けさせれました!!
ついでに2人の呼び方も変えさせました。
あと、ソラを支えるモモが書きたくて書いちゃいました。
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