決断の時…

『ソラっ……ソラっ……』

『………骸兄…?』
ぼんやりした頭のまま、聞こえてきた声に気付いたソラ

『ええ、僕ですよ。』
そう言いながら、ソラの前に現れる。

しかし、現われた骸は右目を右手で押さえており、そこから血が流れていた。

『っ!!…骸兄、その怪我っ…』

『すみません、驚かせてしまって……大きなダメージを受け、力も使い果たしてしまっているため、今の自分しか映し出せないんです。』

『骸兄、いったい誰とっ……!……ま…まさかっ、白蘭と!?』

『クフフフっ…やはり君には解ってしまいますか。ええ、その通りです。今、白蘭と対峙しています。』

『どうしてそんな無茶な事をっ…!?今の骸兄にはボンゴレリングが無いんだよ!?』

『ええ、解っています。しかし、謎に包まれた白蘭の戦闘データを得るためには、戦うしか方法がなかったのです。』

『だからってっ……』
骸を心配そうに見つめるソラ

『そんな顔をしないで下さい。』

『骸兄…』

『ソラ、良く聞いて下さい。白蘭との戦いで、僕の力はほとんど使い果たしてしまい、凪の内臓を作る幻覚も作れなくなってきています。』

『なっ!?…それじゃ凪姉が生きられない!!』
骸の言葉に驚くソラ

『その通りです。ソラ、今すぐ目を覚まして凪の所へ行き、霧のボンゴレリングを使うように言って下さい。
そして、自分の幻覚で内臓を作り出させるのです。』

『…それしか、方法が無さそうだね……』

『………ソラ、あなたの炎で…凪の手助けを…して頂けませんか?』
骸は少し言いにくそうにしながらも、ソラにそう言った。

『もちろん、手助けするよ。凪姉を死なせはしないっ…!!』
骸にはっきりとそう言ったソラ

『ありがとうございます。』

『だから骸兄、絶対帰って来てよ?待ってるからっ……』

『ええ、少し時間は掛かりますが、必ず帰ります。だから……それまで、凪を頼みましたよ。ソラ』

『うん、任せて!』


ーー地下14階ーーソラの私室ーー

ベットで寝ていたソラは目を覚ました。

「……集中治療室へ、行かないとっ…」
そう言いながら、ベッドから降りて、靴を履いた。

机の上に置いてある、ウェストポーチからは、サブリング2つを……
椅子に掛けてあるマントからは、晴匣を1つだけ取った。
それを持って私室を後にし、集中治療室へ急いで向かった。


ーー地下13階ーー集中治療室ーー

この部屋のベッドで寝かされているのはクローム髑髏だった。
傍には、ビアンキ、ジャンニーニ、ツナ、リボーンの4人も居た。

だが、今のクロームは、内臓が失われて、苦しんでいた。

ツナはそのクロームの傍で声を掛けていた。

「クローム!クローム!!」
容態がだんだん酷くなってきているクロームを見て、必死に声を掛け続けるツナ

「邪魔だよ。」

「えっ!?」
後ろから声が聞こえ、振り向くと、すぐにそこを退かされ、床にお尻をぶつけたツナ

ツナが見上げるとそこには……
「雲雀さんっ!」

雲雀は左手ででクロームの頭を持ち上げて支え…

「死んでもらっては困る。…ん?」
雲雀は知ってる気配が近づいてきているのに気付き、そのまま入口の方へ視線を向けた。

立ち上がったツナや、リボーン、ビアンキ、ジャンニーニも視線を入口へ向けた。

するとその時、誰かが入って来た。

「ソラ!?」
入って来たソラを見て驚くビアンキ

「ハァ…ハァ…ハァ…」
急いできたからか、少し息切れしていたソラ

「ソラちゃん、どうしてここに!?」

ソラはツナの質問には答えず、黙ったまま、ベッドまで近寄った。

「ソラ…君、どうしてここに来たの?」
雲雀が気になってソラに聞く。

「骸兄に頼まれた。クロームさんを手助けして欲しいって…」

「!……なるほど、君の炎か…」

黙って頷くソラ

「じゃあ、手伝ってくれるかい?」

「言われるまでもないよ、クロームさんを死なせはしない!!」
声を張り上げて言うソラ

「…ソラ以外は邪魔だから出てって。」

「沢田さん、我々は外で待ちましょう。」
草壁がツナにそう声を掛けた。

その後、ビアンキ、ジャンニーニ、リボーン、ツナが病室を出て行った。

「ソラさん、これを使って下さい。」
そう言いながら、元々この部屋に置いてあった、踏み台をベッドの傍まで運んできてくれた草壁

「ありがとう、哲兄」

「いえ。」草壁は踏み台を置いた後、病室を出て行った。

「さて、綱吉たちは居なくなった。2つのサブリングを嵌めなよ。」

雲雀に言われた通り、今まで両方の手の中指に嵌めていた晴系リングを外し、
右の中指には、ツナ達ももう知っている晴属性のサブボンゴレリングを……
左の中指には……絵柄の周りがオレンジ色になっているサブボンゴレリングを嵌めた。
そして、左ポケットから晴匣を取り出し、右手のリングに晴の炎を灯し、左手に持った匣に差し込んで開匣し、
ベッドの上の方へ翳した。中から出てきたのは、両耳に晴の炎を灯した、モモンガだった。

「モモ、力を貸してくれる?」

【うん!いいよ!!】

「恭兄、モモが晴の炎でクロームさんの霧の炎を活性化させて内臓を作る速さを促し、私が大空の炎で他の内臓との調和をする。
だから、その間にクロームさんに霧のボンゴレリングを灯させて、幻覚で内臓を作るように言って?」

「わかったよ、ソラ」

雲雀の返事を聞いた後、匣を左ポケットにしまい、今度は左手のリングにオレンジ色の炎を灯した。
そう、もう1つのサブボンゴレリングは、大空属性のリングなのだ。
そして、リングに炎を灯したまま、踏み台に乗って、クロームの左手を握る。

その時、クロームは自分の左手を誰かが握ったのに気付き、視線を左に向けた。

(知らない女の子だ……でも、なんだが、ボスと感じが似てる……)
ツナの事を思い出しながらそう感じたクローム

雲雀はソラの準備が整ったのを見た後、クロームに視線を戻した。
クロームの頭を右手で支えたまま、左手で霧のボンゴレリングを嵌めている、クロームの右手を持ち上げる。

「君にはボンゴレリングがある。六道骸が何のためにこのリングを託したか、考えるんだ。」

雲雀の話に耳を傾けるクローム

「この力を引き出す事が出来れば、君は生き続けられる。まだ、死にたくはないんだろ?」

(骸様、犬、千種…)3人の事を思っていたその時、霧のボンゴレリングに炎が灯った。

「モモ、今だよ!」

【うん!任せて!!】
そう言って、クロームの左手の傍まで行き、自分の両手に晴の炎を灯して左手に触れた。

すると、霧の炎が活性化し始めた。

「クロームさん、私とモモが手助けしますので、あなたの幻覚の力で内臓を作って下さい。焦らず、ゆっくりと…」

(…初めて会ったばかりのはずなのに……なぜか、この子の言う通りにすれば大丈夫な気がする…)
クロームはソラに言われた通り、幻覚で内臓を作り始めながら、そう思っていた。

しばらくそのまま、晴と大空の炎を流し続けていた。
途中で炎を一気にたくさん使っていたからか、モモの死ぬ気の炎が小さくなってきたので、
その時はまた右手に嵌めてるリングに炎を灯して、モモに与えた。


「……もう大丈夫そうだね。モモ、もういいよ、お疲れ様。」

モモは晴の炎を流し込むのをやめた。

「恭兄も、もうクロームさんを降ろしていいよ。」

ソラにそう言われたので、今まで支えていたクロームの頭を枕の上に戻し、リングを嵌めてる右手をお腹に添えさせた。

【ソラ、クロームは大丈夫?】

「うん、大丈夫だよ。あとはこのまま生命維持してれば問題ない。ただ…5日後の作戦に参加して戦うのは無理そうだけど…」
そう言いながら、今まで灯らせていた大空のリングの炎を消し、手を離したソラ

踏み台を降りた後、一気に力が抜けたのか、床に手と膝をついたソラ

【ソラ!大丈夫!?】そう言いながら、飛んでソラの左肩に乗ったモモ

「だ、大丈夫っ……ちょっと、疲れただけだよ…」
少し疲れた顔をしていたソラ

「大空と晴……2つの炎を同時にたくさん使ったのは初めてだったからね。それに君はまだ小さいから、負担が大きかったんだろう。」
そう言いながら、ソラの傍まで移動してしゃがんだ。

「恭兄……」

「ソラ、良く頑張ったね。」
雲雀は優しい笑みを見せながら、ソラの頭を撫でた。

ソラの頭を撫でた後、立ち上がった雲雀

「哲」

「へいっ、恭さん!!」
そう言いながら、呼ばれた草壁がドアを開けて病室へ入って来た。
ずっと外で雲雀に呼ばれるまで待機していたようだ。

「哲、クローム髑髏の容態が安定した事を綱吉達に知らせてきて。そのついでにソラも連れて行ってあげて。」

「解りました!!」
そう言いながら、ソラの傍まで来て、ソラを抱き上げた草壁
抱き上げられた時、モモはソラの左肩からお腹へ移動し、ソラの服を掴んでくっついた。

「えっ…!?ちょっ…ちょっとっ…自分で歩けるから降ろしてよ!哲兄っ」

「ダメだよ、哲。綱吉達の所へ着くまではそのままでね。」

「だそうですよ?」

「う゛ぅ〜…」

「クローム髑髏の方は僕がもう少しだけ様子を見といてあげるから、哲と一緒に先に行って、綱吉達に伝えてきなよ。」

「……わかった。モモ、どうする?匣に戻る?」

【しばらくこのままがいいな〜?】

「いいよ。」

【ほんと!?】てっきり大人しく戻るように言われると思っていたからか、とっても喜んでいるモモ

「うん。」そう言いながら、ソラは自分にくっついているモモの頭を撫でる。

「では、恭さん、沢田さん達に伝えてきます。」
そう言って、病室を出て行き、ツナ達の所へ向かった。

移動している間に、両手に嵌めていたサブリングを外し、元々着けていた晴系リングをまた嵌めたソラ


ーー地下5階ーー作戦室ーー

ツナ達はクロームの容態が安定するのを待っていた。

その時、ソラを抱いた草壁が現れた。

「あっ!草壁さん!それにソラちゃんも!!」
ツナが気付いて声を掛けた。

他のみんなも草壁とソラに視線を向けた。

「草壁さん!クロームは!?」

「クローム髑髏は一命を取り留めました。」

「よ…良かったっ……」それを聞いてほっとしたツナ

それはここに待機していたメンバー全員も同じだ。

その間、草壁はソラを降ろした。

「ありがとう。哲兄」

「いえ、お気になさらず…」

「どうやってあの状態から持ち直したんだ?」
リボーンが気になって草壁に聞いた。

「ボンゴレリングとソラさんの炎のおかげですよ。」

「えっ!?」

「雲雀がクロームに促したのは、ボンゴレリングそのものの力を引き出し、己の力で生きる事。そして、ソラさんはサブリングの力を借りて、
晴の炎で霧の炎を活性化させ、内臓を速く作り出せるように手助けしたんですよ。」
大空の炎の事は伏せて、ツナ達にそう言った草壁

「なっ!?サブリングを使ったの!?」

「サブリングじゃなきゃ、クロームさんを助けれそうになかったからね……」

「現在、クロームは自分の幻覚で内臓を補っています。」

「そ、そんなこと、可能なのかよ!?」
信じられなくて、驚く獄寺

「霧の特徴は構築……霧のボンゴレリングだからこそ、それが可能なんですよ。それに…この子が頑張って
クロームさんに晴の炎を流し込んでくれてたからね。」
そう言いながら、自分の右肩に乗っているモモの頭を撫でるソラ

モモはソラに撫でられて嬉しそうだった。

そこでソラの肩に居るモモンガに気付いたツナ達

「ソラちゃん、そのハムスターはいったい……」
モモを見て驚いているツナ

「ツナ、そいつはモモンガだぞ。」
ツナの間違いを指摘するリボーン

「えっ!?そうなの!?」

「おっ、可愛いのな!!」
モモを見てそう言った山本

「こいつも……匣兵器なのか?」
モモを見ながら、ソラに聞いた獄寺

「っ!……はい、そうです。」獄寺に話しかけられると思っていなかったのか、一瞬驚いた後、獄寺から視線を逸らしながら答えたソラ

(あっ……そういや、まだ謝ってなかったぜ……)
ソラの態度を見てそう心の中で呟いた獄寺

そんなソラの様子を見て、悲しそうな表情を浮かべていたツナ

「この子も太陽と同じアニマル匣で、名前はモモ……私のお友達です。」

「アニマル…匣?」首を傾げるツナ

山本や獄寺も声には出さなかったが、首を傾げていた。

「ソラさんは、動物の入ってる匣を『匣兵器』と呼ぶのを嫌っているんです。ですから、『アニマル匣』と呼んでいるんですよ。」
草壁がツナ達の疑問に答えた。

「そうなんですか。」草壁の説明に納得するツナ

【ソラ、もしかしてツナパパ?】
ツナを指差してソラに聞いたモモ

「そうだよ。」

【ツナパパ、若いっ!!】

「中学生だからね。」

「俺の顔に何かついてる?」モモが自分を指差しているのが気になってソラに聞いた。

「違うよ。綱吉さんが若くて驚いてるだけだよ。」

「そ…そうなんだ……」

「それで、話は戻るんですけど……今のクロームさんの力では、幻覚は不完全……生命維持がやっとの状態です。」

「じゃあ、骸はどうなっちゃったの!?」
ソラから隣に居る草壁に視線を移したツナ

黙ったまま、首を横に振った草壁

「六道骸の行動については、我々よりも、ヴァリアーに居た、笹川氏の方が詳しいはずです。」
そう言いながら、了平に視線を移した草壁

「そうだ!骸から、何か連絡があって、お兄さん…黒曜ランドに行ったんでしょ!?」
椅子から立ち上がって、了平に向かってそう言ったツナ

「骸から届いたヴァリアーへの指示は、かなり一方的なものだったと聞いている。俺は、その指示を信じて行動したが、
骸がどこで何をしているかは、解らんのだ。」

「そんな……」
椅子にまた座ってから、そうつぶやくツナ

「10代目!あのしぶとい骸です!そう簡単にはくたばったりしませんってっ…」
「そーだぜ、ツナ!心配すんなって!」
獄寺と山本がツナを励ます。

「………骸兄は、今までミルフィオーレに潜入してたんですよ。」
今まで黙っていたソラがツナ達にそう告げた。

その言葉を聞いて、驚き、一斉にソラへ視線を向けたツナ達。

「ソラ、それは本当なのか?」了平がソラに確認する。

「本当だよ…骸兄が私の夢の中に入って来て教えてくれた。クロームさんがここに来る事も、今居る場所も、そして……
ミルフィオーレのボス、白蘭の戦闘データを得るために戦っていた事も……」

「ミルフィオーレのボスとっ!?」ツナが驚く。

「まさか、潜入していたのが、白蘭と戦って戦闘データを手に入れる為でもあっただなんて、知らなかったんだけどね。」

「その事はいつ知ったのだ?」

「さっきだよ。クロームさんへの力が一切途絶える前に、骸兄が私に知らせてくれた。」
了平の質問に答えたソラ

「なるほどな…だから、集中治療室に来たのか。そして、あの時言っていた言葉も、夢の中で骸に言われたんだな?」
ソラの言葉を聞いて、疑問が解けたリボーン

「うん。今のクロームさんは栄養失調でとても弱ってる、そこに内臓を失い始めれば、元々少ない体力がすぐに無くなってしまう。
そこで私の晴の炎で活性化させて、内臓を速く作れるように手助けしたんだよ。」

「でも、晴って確か……お兄さんも晴属性じゃ?」
ツナはまだ了平の炎を見ていないので解らないが、なんとなくそう思った。

「うむ。確かに俺も晴属性だ。だが、おそらく今の俺では無理だ。」

「なぜですか?」

「ボンゴレリングを持っていないからだ。」

「あっ…」

「ソラにはサブボンゴレリングがある。だから、ソラでなければ無理なのだ。(それに、おそらく大空も使っていただろうしな…)」
ツナの疑問に答えながらも、心の中でそうつぶやいた了平

「そして、クロームさんへの力が一切途絶えたという事は、それだけ最悪の事態になっているという事……私も骸兄が白蘭と戦って
どうなったのか、そこまでは知りません。でも、怪我をしていたから、無傷という訳でもありません。」

「そっか……」骸の事を心配するツナ

(パパ………骸兄、大丈夫だよね…?)
そんなツナの事を心配しながらも、生存の安否が解らない骸の事も心配していたソラ

「だが、どっちみち、5日後の作戦では、クロームは戦えそうにないな。」
リボーンが、今のクロームの容態からそう判断した。

「痛いなっ…」リボーンの言葉を聞いて、そう言った了平

「心配するな。クロームの不足分は俺が補う。」
椅子から立ってそう言ったラル

「あっ…(ラルっ…)」ラルを心配そうに見つめるツナ

「そんな事、任せられるわけないっ」
「そんな事、任せられるわけねぇだろっ」
ソラとリボーンが同時にラルに向かってそう言う。

ラルはソラの方ではなく、すぐ横に居る、ビアンキに抱かれたリボーンの方へ視線を向けた。

「お前、今座ってんのもしんどそうじゃねぇか。」

「!」眼を見開くラル

「リボーン!」叫ぶツナ

「何を言っている?」

「ラル姉、無理しないで?顔を見れば、体調が良くない事くらい、解るよ。」
ソラがラルを心配してそう言った。

「その通りだ。お前、ノン・トゥリニセッテを浴び過ぎてボロボロなんだろ?」
ソラの後に続けてそう言ったリボーン

ラルは机を叩いた。

「黙れ!過去から来たお前に何が解る!」
リボーンにそう怒鳴ったラル

「俺だって、この時代に来た時、地上に充満しているノン・トゥリニセッテを肌で感じたんだ。お前のやろうとしてる事の無謀さくらい解るぞ。
ソラもそう思うだろ?」

「…私はアルコバレーノじゃないから、どのくらいきついのかは解らないけど……この時代のリボ兄をずっと見てたから解るよ。
ラル姉のやろうとしてる事が、どれだけ無謀なのかは……」
ソラはこの時代のリボーンの事を思い出しながら、ラルにそう言った。

「ぐっ…」

(ラル姉……)

「だが、ノン・トゥリニセッテを放出しているのはミルフィオーレだ!!奴らを倒さなければ、この世界は正常には戻らない!!」

「えーと、それについてなのですが…どうして地上にノン・トゥリニセッテが漂っているのか、まだ原因は特定出来ていません。」
言いにくそうにしながらも、ラルにそう告げたジャンニーニ

ジャンニーニに視線を向けたラル

「いえ、ミルフィオーレとの因果関係は恐らくあると思われるのですが、決定打がなく…」

「我々の調査でも同じく……」
草壁がジャンニーニの後にそう言った。

「いや!奴らの仕業だ!!」

ラルの大声に驚くツナ達

「コロネロも、バイパーも、スカルも……奴らに殺られたんだ!!」
そう叫んだ後、床に倒れたラル

「ラル姉!」
「ラル・ミルチ!」
ソラとツナが同時に叫んだ。

ジャンニーニとビアンキが倒れたラルに駆け寄った。

「大丈夫ですか!?」

「すぐに医務室にっ!!」
そう言いながら、ラルに触れようとしたビアンキ

「触るな!!立てるっ…離せ!」
上半身を起こしたラル

「おとなしくしてっ…」

ツナ達もラルに駆け寄る。

「無理しないで、ちゃんと診てもらった方が良いっスよ!」

「フゥ太兄、今すぐ担架持ってきて!」

「うん!」担架を取りに行ったフゥ太

「ジャンニーニさんは医療機器の準備をっ!」

「は、はいぃっ!!」
医務室へ向かったジャンニーニ

ラルの傍まで来たソラがフゥ太とジャンニーニにそれぞれ指示を出していた。

「沢田……」

了平の声が聞こえ、全員了平に視線を向けた。

「5日後だが…これだけ戦力に悪条件が揃っては、お前が何と言うか見当がつく…作戦中止は俺が上に伝えに行こう。」

「ただの貧血だ!何でもないっ…構うな!!」
作戦の中止を必死に防ごうとするラル

「無理するな、ラル…」そんなラルを心配する了平

「……お兄さん」

「ん?」

「やりましょう…」

ツナのその言葉を聞いて、全員ツナに視線を向けた。

「敵のアジトに行けば、過去に戻る事だけじゃなくて………ミルフィオーレのボスと戦った骸がどうなったのか、
その手掛かりも何か掴めると思うです。」

ツナが話し始めたちょうどその時、雲雀が作戦室に現れ、黙ったまま、ツナの話を聞く。

「それに、そのノン・トゥリニセッテの事も解るかもしれないし…どっちもゆっくりしてると、手遅れになっちゃう気がして…」

「うむ。」ツナの言葉に思うと所があったのか、そのまま黙って聞く了平

(確かに、パパの言う通り、このままじゃ手遅れになるけど……)
ツナの言った事に納得しながらも、戦いを嫌うツナの事を心配していた。

「それに、やっぱり俺…こんな所に1秒でも長く居て欲しくないんだ。」

「10代目…」
「ツナ…」
獄寺と山本が心配そうにツナを見ていた。

「並盛の仲間はもちろんだし、クロームやラル・ミルチ、それにソラちゃんだってっ……こんな所、全然似合わないよ!!」

「!(パパっ…)」ツナの言った事に眼を見開くソラ

「あっ…えと…あのっ…」
言い切った後、急に恥ずかしくなったのか、慌て出した。

「俺はそんな感じです……けど…」
顔をほんの少しだけ赤らめたまま、了平に振り向いてそう言ったツナ

「良く言ったぞ!男だ沢田!!俺は極限感動した!!」
そう言いながら、ツナの両肩を掴む了平

(……やっぱりこういう所は、この時代のパパと同じなんだね……前に同じ事言ってたよ…)
この時代のツナも同じような事を言っていた事を思い出したソラ

「とにかくっ…」そう言いながら、ミントの手袋を嵌め、死ぬ気丸を飲み込んで、超モードになった。

入口の方へ移動した後、後ろに振り向いて言う。

「あと5日しか時間がない。一刻も無駄には出来ないぞ。」
獄寺と山本に向かってそう言ったツナ

「はい!!」
「だな!!」
ツナの言葉を聞いて、気合いを入れた獄寺と山本

その後、ツナ、獄寺、山本が出て行く。

そして、担架を持ってきたフゥ太がラルを乗せて、フゥ太とビアンキの2人で医務室に運んで行った。
残ったのは、リボーン、了平、ソラ、モモ、雲雀、草壁だけだった。

「恭兄、クローム姉の方はどうだった?」

「もう心配要らないよ。幻覚で内臓を完全に作り終え、今は眠ってる。」

「そっか。」

「それより、君は大丈夫なの?」ソラを心配する雲雀

「大丈夫だよ。」そんな雲雀に笑顔で即答するソラ

「……沢田綱吉の修行に行ってくる。哲」
そう言って、作戦室を出て行こうと歩き出した雲雀

「へいっ」雲雀に続く草壁

出て行く前に、何かを思い出したのか、立ち止まった雲雀

「そうそう、哲に聞いたよ。君の相手、喜んで引き受けるよ。いつでも相手になってあげる。」
ソラ達に背を向けたまま、そう言ってから出て行った雲雀

草壁もそれに続いて出ていった。

「ソラ、お前はどうするんだ?」リボーンがソラに聞く。

「私は今から寝るよ。大空と晴……2つの炎を同時にたくさん使ったの、初めてだったから……」

「そうか。ゆっくり休めよ?」

「うん。」

「ソラ、沢田はああ言っていたが……お前もそれでいいのだな?」ソラに確認する了平

「うん…パパの決定通りで良いよ。私も、『陽色の姫君』として、作戦に参加する。」

「すまんな……」

「了兄」

「なんだ?」

「骸兄は大丈夫だよ。約束したから……必ずクローム姉の所へ帰ってくるって…今すぐには無理だけどね。」

「骸の奴、お前には何でも話してくれてるんだな。」

「…そうみたいだね。昔、パパと骸兄が敵同士だったって事は聞いて知ってるけど、今でも少し信じられないよ。」

「そうか。だが、本当の事だぞ。」

「リボ兄」

「ん?」

「タケ兄は……なんとかなりそう?」

「まだ解らねぇ…けど、5日後までには間に合わせるぞ。」

「そっか………少しだけ、この時代のタケ兄に近づいてるよ。」

「そうなのか?」

「うん…気配で解るよ。タケ兄だけじゃない、パパや隼人兄の事もね。」

「ほぉ…」

「あっ、そうだ。了兄」

「なんだ?」

「もしかしたら、修行の相手をお願いするかもしれないんだけど、その時は相手になってくれる?」

「おう!いつでも相手になるぞ!!」

「ありがどう。それじゃ、もう行くね。」
了平にお礼を言ってから、モモを肩に乗せたまま、作戦室を出て行ったソラ


ーー地下14階ーーソラの私室ーー

私室に戻ったソラは、ポケットに入れていたサブリングを机の上に置いてから、
ベッドへ移動し、モモを降ろしてから寝転んだ。

【ソラ、大丈夫?】ソラの事を心配そうに見ているモモ

「!…大丈夫だよ、モモ」

【さっきのツナパパ……昔のツナパパだけど、やっぱりああいう所は同じだったね!!】

「うん、そうだね……」

【ソラ、ツナパパに言わなくて良いの?】

その質問には答えないソラ

【ソラ…】

「言えないよ……」

【ソラ、まだ怖い?ツナパパ、とっても優しいよ?絶対ソラの事を受け入れてくれるよ?】

「うん、わかってる……でも、今は…敵を倒すための修行にだけ専念してて欲しいから……」

【……そっか。】

「モモ、匣に戻る?」

【ううん、ソラと一緒に寝る!!】

「ありがとう……おやすみ、モモ」
ソラはモモにそう言った後、そのまま、眼を閉じ、眠りについた。


標的31へ進む。


今回のお話は、骸がミルフィオーレのボス…白蘭と戦って負傷したのが原因で、
クロームが骸の幻覚で作られた内臓を失う所です。
アニメでは、霧のボンゴレリングだけで持ち直していましたが、ソラの大空と晴の炎で、
クロームが自分の幻覚で内臓を作るのを手助けさせました!
今回登場した、ソラのアニマル匣は晴モモンガの「モモ」です。
詳細は設定の方に書かれてありますので、そちらをお読み下さい。
それでは標的31へお進み下さい。

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