傷痕

ーー地下14階ーーソラの私室ーー

部屋に戻ったソラは、備え付けの食器棚からマグカップを出して、ポットに入っている作り置きしたキャラメルミルクを淹れた。
淹れたあと、マグカップを持って移動し、机の上に置いてから椅子に座った。

「ハァ……」
ソラはキャラメルミルクを飲みながら、今日新たに入った情報を整理していた。

骸がミルフィオーレファミリーで何かをしている事と、今までフクロウに憑依していたらしい事。
クローム髑髏が黒曜ランドで誰かと戦った事。
了平が持ち帰った伝言……5日後に大規模な作戦を実行する事。

「5日後までに太陽の修行の仕上げと、サブリングでの修行をしっかりやらないとね。……パパがどう答えを出すかはまだ解らないけど……
きっと決行するはず……だから、私は自分の身は自分でしっかり守れるようにしないとっ…」

超直感でツナが必ず決行するだろうと思ったソラは決意を新たに固めていた。

その時、警報が鳴った。

「!?…警報?」
ソラはマグカップを机に置き、椅子から降りて部屋を出て行き、通路に出た。

天井を見上げると、緑色のランプが光っていて警告していた。

「警戒レベルB……爆発が起こったの?……トラブル…だよね?」

「地下6階…かな?」
ソラは超直感で感じた通り、地下6階へ急いで向かった。


ーー地下6階通路ーー

地下6階に着いて、エレベーターを降りたソラ

「こっち…かな。」
何人かの気配を感じ、そこに向かっていた。

少し歩くと、ツナ達を見つけた。

「フゥ太兄、何があったの?」
ソラは何があったのかをフゥ太に聞いた。

「あっ、ソラ…ランボが本物の手榴弾を使っちゃって……」

「じゃあこの警報はその手榴弾が爆発したからなの?」

「うん、そう。」

「このアホ牛!本物の手榴弾持ち歩くなって言ったろ!!」

その時、ソラの耳に怒鳴り声が聞こえ、そこに視線を向けると、獄寺がランボに怒鳴っていた。

「だってっ…」

「だってじゃねぇ!まだ隠してるだろ!?」
そう言いながら、ランボの両足を持って逆さまにし、ランボの体を上下に振った。

すると、頭の中から何かが次々と出てきた。
手榴弾3つ、飴玉4つ、板チョコ1枚が床に落ちていた。

(手榴弾、まだ隠し持ってたんだ……危ないな〜…)
ソラは床に落ちた物を見てそう思った。

「もうねぇな!?」

「ないよぉ!」逆さに吊るされたまま、眼に涙を浮かべたまま、獄寺にそう答えたランボ

「ほんとだな?」

「あはははっ…もうそのくらいで許してやれ!タコ頭」
獄寺の左肩に右手を置いてそう言った了平

獄寺はそんな了平を睨みつける。

「獄寺さん!ランボちゃんを離してあげて下さい!!」
ハルが獄寺にそう言う。

「そうだ!離せ、アホ寺ぁ〜!」

「てんめぇー!」ランボの言葉を聞いてキレた獄寺がまたランボを上下に振った。

「…もう許してあげて!?」
京子が獄寺にそう言った。

「う、うん…もう勘弁してやってよ。」
京子の言葉に同意したツナが、獄寺に声を掛けて止める。

「10代目がそうおっしゃるなら……」
獄寺はランボを手放す。

獄寺がランボの両足から手を離した事で、床に落ちて、顔をぶつけたランボ

「が・ま・んっ…」
体を起こし、涙を眼に浮かべたままそう言ったランボ

「ちったぁ、反省しろよ!」
ランボにそう言った獄寺

(隼人兄……せめてしゃがんで、落ちる高さを低くしてから離して欲しかったよ……)
獄寺が立った状態のまま、ランボを手放し、床に顔を打ちつけたランボを見ながらそう思ったソラ

ハルと京子がランボの傍に来てしゃがんだ。

「泣かないで下さい。」そう言いながら、ランボの涙を拭うハル

「良い子にしてたら、ランボ君の好きな物、作ってあげるから。」
そう言いながら、ランボの頭を撫でる京子

「…オレっち、たこ焼き食いたいっ」

「はひっ…たこ焼きですか。」

「でも、たこ焼き機がないと、上手に丸く出来ないね。」

「そーんな事もあろうかと、不肖この私、自動たこ焼きマシーンを作りましたー!」
そこにジャンニーニが咳払いをしてから、京子達にそう言った。

「ほんとですか!?」
驚くハル)

「はい!地下の15階の私の研究室に置いてあります。」

「よかったね。」フゥ太がランボにそう言った。

「わぁい!たこ焼きー!」ジャンニーニの肩に飛び乗りながら、大喜びするランボ

「あはははっ…あとで案内してあげますよ!」

それを聞いてから降りたランボ

(ん?ランボ兄、今何かをジャンニー二さんから奪った…?)
はっきりと見えたわけじゃないので、確信はあまり持てないが、気になったソラ

「たこ焼き〜!たこ焼き〜!」
そう言いながら、走っていくランボ

そんなランボを追いかけて行ったイーピン

「まだまだ無邪気なものですね。」
走って行ったランボとイーピンを見てそう言ったジャンニーニ

「そういえば…トレーニングルームとか、めちゃくちゃ頑丈に出来てるけど、ここのセキュリティーはどうなってるの?
……いや、ほらっ!もし、ミルフィオーレに潜入されたりしたらさ…」

「問題ありません。他も全て万全でございます。」
ジャンニーニがツナにそう答えた。

「いい機会だから、ここのセキュリティーの事、綱吉さん達に教えてあげたら?」
ジャンニーニにそう言ったソラ

「そうですね……では、皆さん、作戦室でお話しますよ。」

「あっ、うん。」ツナがジャンニーニにそう答える。

「じゃ、任せたよ。」そう言って、みんなに背を向けて歩き出したソラ

「えっ!?ソラさん、来ないんですか!?」
てっきりソラも来ると思っていたのか、驚くジャンニーニ

「うん、行かない、私は知ってるし。それに…(今はランボ兄の方が気になるしね…)」
ランボがジャンニーニから何かを奪って持って行ったんじゃないかと気になって仕方がないソラ

「それに…何ですか?」

「何でもない。」そう言ってからその場を去ったソラ


ランボとイーピンを探し回っていたソラ

(ランボ兄、イー姉…いったいどこに居るの?)

なかなか見つからないランボとイーピン

その時、再び警報が鳴った。

『警戒レベルD、システムに異常が発生しました。警戒レベルD、システムに異常が発生しました。』
そう言いながら、天井に黄色のランプが出て光り、警告していた。

「警戒レベルD!?敵がシステムに異常を?……ううん、たぶん違う。別の何か……」
ソラは一旦探すのをやめて、作戦室に行こうとした。

「ん?」超直感が何かを伝えている事を感じたソラ

ソラは超直感に任せて移動し始めた。


ーー地下16階通路ーー

エレベーターから降りたソラ

「ここ、地下16階……確か第二発電動力室とストームルームがある階だったよね?」
この階に何があったかを思い出しながら、通路を歩くソラ

『皆さん、落ち着いて行動して下さい。これは、自然現象による、システムの異常です。外部は大混乱しているようですが、この施設は、
地熱発電による、独立した動力源を使用していますので、危険はありません。』
その時、ジャンニーニの放送が聞こえた。

「自然現象による、システム異常か。なら、しばらくすれば回復するね。」
放送を聞いて、システムの異常の原因が解り、ほっとしたソラ

「あれ?誰かがこの階に居る…?」
気配を感じ取ったソラ

「……2人……それに小さい気……まさかっ…」
ソラは誰がこの階に居るのか解り、嫌な予感がして、第二発電動力室に急いで向かった。


ーー第二発電動力室ーー

ソラは自分が持っていたICカードを使って、扉を開けた。

「ランボ!勝手に弄っちゃダメ!!」

そこには、ランボが装置を弄り、イーピンがそんなランボを止めていた。

「ランボ君っ!イーピンちゃん!」
そう言いながら、中に入って来たソラ

「あっ、ソラさん!」イーピンが気付いて、ソラに視線を向けた。

「こんな所で何してるの?っていうか、どうして入れたの?」

「たこ焼きマシーン探してこの階まで来た。ランボが持ってたカードを使って、この部屋に入った。」
イーピンがソラにそう答えた。

(たこ焼きマシーンを探して?それにランボ兄が持ってたカードって事は…やっぱりあの時、ジャンニーニさんが持っていた
ICカードを奪ったんだね…)
ここに居る理由が解って納得したソラ

その時、扉にシャッターが降りて来て、閉じ込められてしまった。

「なっ!?扉がっ…!?」入口の方へ駆け寄るソラ

ランボが装置を弄りまくっている内に装置が作動した。

「へへへっ!やったもんねー!!」

「ちょっと待って、ランボ!!」

(どうしてシャッターが?……とりあえずジャンニーニさんの放送を待とう……)
ジャンニーニの放送を待っていたソラ

少し待った後、ジャンニーニから再び放送があった。

『システムが回復するまで、そのまま待機していて下さい。危険はありません。』

(システム回復まで?……!…そうか、今リボ兄とラル姉が無防備なんだっ…)
シャッターを閉めた理由が解ったソラ

「とりあえず、システムが回復するまで、ここで待つしかないか………ん?」
そこでソラはこの部屋がだんだん熱くなってきているのに気付いた。

後ろを振り返ると………発電機が稼働していた。

「なんで発電機が稼働してるの!?」
そう言いながら、装置の前に居るランボとイーピンに駆け寄った。

「熱い〜っ」

「ソラさん、これ、たこ焼きマシーンじゃないの?」

「違うよ!ここは地下16階の第二発電動力室で、これは発電機っていう機械でね、電気を作る機械だよ。たこ焼きマシーンがある所は、
地下15階にある、ジャンニーニさんの研究室だよ。」

「…イーピン達、間違えた?」

「地下15階と、16階を間違えちゃったみたいだね。」

それを黙って聞いていたランボが突然装置に飛び乗った。

「あっ…ランボ君!ダメっ!!」
ランボがしようとしている事に気付いたソラが声を掛けて止める。

「止まれ!止まれ!止まるんだもんねーー!!」
そう言いながら、装置の上にあるパネルを乱暴に押していくランボ

押している内に装置が爆発し、ランボが吹っ飛ぶ。

「「ランボ君!!/ランボ!!」」

ソラはランボが飛ばされる先に発電機の前にある、熱を浴びた網戸があるのに気付いて、神速の速さでランボの背後の方へ回り、飛んだ。
そして、ランボをしっかり受け止めた後、そのまま網戸に背中がぶつかった。

「う゛あ゛っ…」

ぶつかった後、そのまま網戸に背中が当たったまま、床までズルズルと落ちたソラ

「ソラさん、大丈夫!?」
「ソラ、大丈夫か!?」
イーピンとランボが心配になってソラに声を掛けた。

ランボを火傷から守って、代わりに火傷を負ったソラ

「だ、大丈夫だよっ…」
痛いのを必死に隠そうとしながらも、ランボ達に笑顔を向けるソラ

ランボとイーピンは、表情にはあまり出てないけど、声だけでソラが痛そうにしているのを感じとった。

イーピンはソラの火傷の具合を見ようと、背後に移動し始めた。

「!…ダメ!イーピンちゃん!!」
イーピンが背後に回ろうとしたのに気付いて止めようとしたソラ

「っ!!」背後に回ったイーピンが背中を見て息を呑んだ。

止めるのが遅かったのか、イーピンに背中を見られてしまったソラ

ソラの背中は、熱を浴びた網戸に当たった事で、服が破けていて、そこに火傷の跡があったが、イーピンが驚いていたのは、
火傷の方ではなく、背中に刻まれていた傷痕の方だった。

右肩から左腰まで、斜め一直線に切られた、痛々しいほどの傷痕がソラの身体に刻まれていた。

「ソラさん、この傷っ…」

「ごめん……驚かせちゃった…よね…?」
そう言いながら、背後に居るイーピンに体ごと振り向いた。

「イーピン、火傷の方はどうだったんだもんね?」

「あっ…大丈夫、少し赤かったけど、そこまで酷くなかった。」
ランボに言われて、イーピンはそう答えた。

その時、ランボのお腹が鳴った。

「ランボさん、お腹減ったぞ〜」

「イーピンも。でもが・ま・んっ…する、ランボ」

「真似すんなよっ!!熱いし、お腹減った〜!」

ソラの腕の中から抜け出したランボ

ランボとイーピンは扉の方へ駆け寄った。

「お腹減ったー!おーい!ツナ!フゥ太!京子!ハル!誰か居ないのー!?熱いよー!お腹減ったー!ツナー!!」
扉を叩きながら叫ぶランボ

ソラは扉を叩き続けているランボの方へ近寄った。

「ランボ君」

「何だもんね?」

「今はシステムの異常が発生していて、この部屋から出る事が出来ないの。ここで今起きてる事も、誰も気付いていない。あと…」
一旦言葉を切って、装置の方へ視線を向けたソラ

装置のパネルは、さっきランボが乱暴に弄りまくって爆発を起こしたせいで、大破損していた。
もちろん、そこには発電機のスイッチもあったが、それも壊されていた。

「さっきの爆発でパネルが大破損しちゃって、ここの発電機のスイッチも壊れちゃったから、この熱いの、どうにもならないの。」

「じゃあどうするんだもんね!?」

「大丈夫。システムが回復すれば、ここの事にもきっと気付いてくれるはず。だから…」
ソラは右ポケットからブドウ飴を2個取り出した。

「オレっちにくれるんだもんね?」

「うん、そうだよ。ランボ君とイーピンちゃんに1個ずつだよ。」
そう言いながら、ランボとイーピンにそれぞれ1個ずつ、2人の手に乗せた。

「でも、ソラさんの分は?」

「私は今は要らないから。それを舐めて、すこしの間だけ熱いの我慢しててくれるかな?ランボ君、イーピンちゃん」

「わかっただもんね。」そう言いながら、飴を口に入れたランボ

「イーピンちゃんも。」

「…わかった。謝謝、ソラさん」そう言って、イーピンも飴を口の中に入れた。

(システムが回復するまで、なんとか持ってくれるといいけど……)
2人が飴を転がし始めたのを見た後、発電機の方へ視線を向けてそう思っていたソラ


しばらくの間、3人は扉の前で待っていた。
少し経った後、シャッターが上がったが、装置が故障しているせいか、
扉を開ける事が出来ず、助けを待っていた。

(そろそろ、限界かな……?)
熱さに参っているランボとイーピンを見てそう思っていたソラ

「っ…(背中が、痛いっ…)」
汗が背中の火傷を刺激しているせいで痛いのを必死に耐えていたソラ

その時、外から声が聞こえてきた。

『ランボ!イーピン!居るのっ!?』

(!…この声は、フゥ太兄……)
外から声が聞こえたソラ

『ランボ!イーピン!』

熱さに参っていた2人が、声に気付いて、扉の向こう側に居るフゥ太に声を掛けたイーピンとランボ

「ここに居るー!!」

「助けてー!フゥ太っ…あちーよ、死ぬー!!」

外でフゥ太がジャンニーニに扉を開けるように言っているのを聞いていたソラ

ランボとイーピンが、床が熱くてジャンプしているのに気付いて、2人に近寄り、2人を抱き上げた。
ソラが履いているシューズは、熱に耐えられるように作られた物なのか、床が熱くても平気なようだった。

その時、外からまたフゥ太の声が……

『ランボ、イーピン、よく聞いて。発電機のスイッチを切るんだ!装置のパネルがそこにあるでしょ?』

「ダメ!ランボが壊した!!パネルが大破損してて、発電機のスイッチが壊されてるってソラさんがっ…」

『えっ…!?そこにソラも居るの!?』

「居る!ソラさん、ランボ庇って背中火傷してるっ!」

外で驚く声が聞こえてきた。

そのあと、獄寺がダイナマイトで扉を破壊しようとしていたようだが、了平に止められていた。

「フゥ太兄…」

『ソラ!』

「何でもいいっ…この扉を抉じ開けるか、ぶっ壊してっ!今、武器も匣も手持ちにないから、こっちから壊す事が出来ないの!
発電機も限界寸前……このままだと、発電機が爆発を起こしかねないっ!だからっ…っ…」
背中にまた痛みが走って、苦痛の表情を浮かべたソラ

「ソラさん!」

「ソラ、大丈夫だもんね!?」

「だ…大丈夫っ……」

『ソラ!極限に大丈夫かーーっ!?』
扉の向こうから、大声でソラに呼びかける了平

『ソラ!ランボ!イーピン!』
扉を叩きながら、叫ぶフゥ太

だんだん熱くなってきて、もうやばい…っと思って、ソラにしがみついて泣きだしたランボとイーピン

「大丈夫……大丈夫だからっ……」
そんな2人を少しでも安心させるように声を掛けるソラ

その時、扉が少しずつ開き出し、光が差し込んできた。

ソラは光が差し込んできたのに気付いて扉に視線を向けた。

ランボとイーピンも光が差し込んできたのに気付き、泣くのをやめて、ソラと同じように扉へ視線を向けた。

扉が開いたその先に居たのは……

(パパっ…)

そう、超モードになったツナが扉を抉じ開けたのだ。

ソラは、ランボとイーピンを抱いたまま、第2発電動力室から通路に出て、2人を降ろした。

「ランボ!イーピン!」そう言いながら、フゥ太が駆け寄って来た2人を抱きしめた。

「ソラ、大丈夫か!?」了平が駆け寄ってしゃがみ、ソラの顔を心配そうに覗きこんできた。

「ソラちゃん、大丈夫!?」超モードを解いたツナも駆け寄った。

「大丈夫っ……」

ツナはソラが背中を火傷したとイーピンが言っていたので、背中に視線を向けた。

「!!……この傷はっ…!?」背中を見て息を呑んだツナ

「っ!!…了兄!上着貸してっ…」ツナに背中を見られたのに気付き、すぐに了平にそう言った。

ソラがそう言った意味を理解し、了平はすぐにスーツの上着を脱いで、ソラに羽織らせた。背中を隠すように……

「ありがとう。」
了平が掛けてくれた上着を握りながら、そう言った。

「うむ。」

「ソラちゃん、背中のっ…」

ツナは、ソラが唇の前に人差し指を立てているのを見て、口を噤んだ。

「ごめん。みんなには黙ってて?」

「っ……わかった。」

「ありがとう。」

幸い、獄寺や山本はランボやイーピンの方に居たので、聞こえていない。
リボーンは山本の肩の上から、こちらの様子を見ていたが…

その時、フゥ太がランボとイーピンを降ろして、こちらに来た。

「ところでソラ、なんでランボとイーピンとここに居たの?」
フゥ太が気になって聞いた。

「地下6階に居た時、ジャンニーニさんに飛びついたランボ君が、何かを奪ったような気がして……確信が持てなかったから、2人を探して、
聞き出そうとしたんだよ。でも、なかなか見つからなくてね……その時、もしかして、地下15階にあるジャンニーニさんの研修室に行ったんじゃないかと思って、
地下15階に行ったけど、居なくて……念のため、その下の階の地下16階に来てみたら、第二発電動力室の方から人の気配がして、
扉を開けたんだ。そしたら…」

「そこにランボとイーピンが居た……と?」

「うん。(ごめん。本当は超直感のおかげなんだけど、それ言ったらバレるから、少し誤魔化させてもらうよ。)」
フゥ太の言葉に頷きながら、心の中で謝罪していたソラ

「けど、よく入れたな?ここ、特別ICカードがないと入れないって言ってたぜ?」
さっき作戦室でジャンニーニがそう言っていたのを思い出して言った山本

「持ってますよ。」
そう言いながら、ソラはズボンの後ろの右ポケットからICカードを取り出して、ツナ達に見せた。

「んなぁ!?なんでソラちゃん持ってるのー!?」

「なんで10代目も持ってねぇ物をてめーが持ってんだよ!?」

「なんでって言われても……ボスから渡されたからですよ。」

「この時代の俺から?」

「うん。」

「…そういえばツナ兄から渡されて持ってるの、すっかり忘れてたよ…」
ソラがICカードを持っていた事をすっかり忘れていたフゥ太

「ソラ、手当しに行くぞ。」そう言いながら、ソラを抱き上げた了平

「うん。」ソラはそれを拒む事なく、両手で上着を握ったまま、了平に体を預けた。

「ソラの手当ては俺がしておくから、お前らは修行に行け。」

「えっ!?でもっ…」

「すまんな、沢田…」
申し訳なさそうな顔で、ツナにそう言ってから、ソラを連れてその場を去った。

ツナはさっき見た傷痕の事を思い出していた。

たった6歳の小さな女の子にはあまりにも不釣り合いな傷痕が、ソラの背中に刻まれていた。
自分を心配させないようにと、傷痕を隠しながらも、なんでもないような態度を取っていたのを見て、
確かにその傷の持ち主に相応しいと、思わずツナは考えてしまった。
まるで、その傷はソラの心の傷だとでも言うように……

(ソラちゃんにあんな傷痕があったなんてっ……だから、京子ちゃんの誘いを断ったのか…)
この間、京子からのお風呂の誘いを断った理由が解って納得していたツナ

(あの傷痕……最近のじゃなかった……いったい、ソラちゃんの過去に何が…?)
ツナはソラの傷痕の事が気になって仕方がなかった。

「黙っててやれ。ツナ」

「!…リボーンっ…」

「俺も詳しい事は知らねぇ……けど、あいつにとって、その事は最も触れて欲しくねぇ事だぞ。」

「!!…そうだね……わかった。」リボーンに言われ、少し落ち着きを取り戻したツナだった。

了平とソラが去った後、ツナとリボーンの間でこのような会話が繰り広げられていた。


ーー地下5階ーー第一医療室A−−

了平は病室に入った後、ベッドの上にソラを降ろし、靴を脱がせた。

「ソラ、足は大丈夫だな?」

「うん、大丈夫。」

「じゃあ、背中……見せてくれるか?」

「うん…」

ソラは服を脱いだ。

「そのお守り……今も肌身離さず持っているのだな……」

「うん。だってこれは…ママが作ってくれた大事なお守りだもん。」
お守りを手に取ってそう言ったソラ

「そうか。」
京子の作った物を大事にしているのを見て、嬉しそうにしていた了平

お守りから手を離し、了平に背中を向けた。

「酷いな……火傷、赤くなってるぞ。」

イーピンが見た時より、火傷が少し酷くなっていた。
おそらく、第2発電動力室に居る間に、水道がなくて、すぐに火傷を冷やせなかったのと、背中に伝う汗が火傷を刺激しまくっていたからだろう。

「了兄、薬を塗る前に、濡れタオルで背中を拭いてくれる?」

「解った。」

了平は、ソラに言われた通り、棚にあるタオルを取り出し、水道で濡らして戻って来た。

ソラはベットの上でうつ伏せになった。

「じゃ、拭くぞ?」

「うん。」

了平は汗を拭きとるために、濡れタオルで軽く拭き始めた。

「いたっ…」背中に触れたタオルが火傷を刺激したからか、苦痛の声を出したソラ

「す、すまんっ…」

「だ、大丈夫だから、続けてっ…」

「……さっき沢田達には、ああ言っていたが……本当は、超直感が教えてくれたんじゃないのか?ランボ達の居場所…」
背中を拭きながらソラに聞いた。

「うん、そうだよ。」

「やはり、そうだったか。」

了平はソラの背中の汗を拭きとった後、火傷に良く効く薬を塗り、ガーゼを乗せて、テープを貼った。

手当てが終わったのを見て、体を起こしたソラ

「了兄、上着…もう少し貸りるね?」

「ああ、構わん。」

「ありがとう。」
そう言いながら、上着を羽織り、ベッドから降りて、靴を履いた。

「ソラ、部屋に戻るのか?」

「うん。」そう言いながら、まだ少しふらつく足を動かして出て行こうとしたソラ

その時、了平がソラを抱き上げた。

「了兄?」

「部屋まで送る。」

「い、いいよ!歩けるから!!」

「ダメだ!!まだ少しふらついていたではないか!」

「う゛………わかった、じゃあお願い。」
了平に痛い所を突かれ、おとなしく連れてってもらう事にしたソラ

「任せろ!」ソラの答えに満足そうな笑みを浮かべる了平

ソラを抱いたまま、病室を出ていった了平


ーー地下14階ーーソラの私室ーー

中に入った了平はソラを降ろした。

「ありがとう。了兄」

「気にするな!」

ソラは備え付けのタンスから、服を取り出した。
今来ている了平の上着を脱ぎ、その服を着たソラ

「貸してくれてありがとう、助かったよ。了兄」
そう言いながら、借りた上着を返すソラ

「さっきの様子だと、沢田達には背中の傷の事を話していなかったのだな?京子達にも……」
上着を受け取りながらそう言う了平

「うん……一緒にお風呂に入ってないからね。」

「そうか…」
了平は返してもらった上着を着た。

「傷の事を知っているのは、リボ兄だけだったんだけど……さっきの騒動でパパやイー姉にも見られちゃった…」

「……傷の事を言うつもりは?」

「ない。」

「……即答だな。少しは迷わんかっ」

「やだ。」

「…ソラ、聞いていいか?」
そう言いながら、しゃがんでソラに視線を合わせた了平

「何?」

「沢田達に……言ってないのか?お前の事……」

了平は、ソラのツナ達への態度を見て、ずっと気になっていたようだ。

「……うん、言ってない。」

「なぜだ?」

「………」無言になるソラ

「沢田や京子に言うのが……怖いのか?」

黙ったまま頷くソラ

「ソラ、沢田や京子は…「解ってる。」」
了平が言おうとしていた事が解ったソラは、了平の言葉を遮った。

「リボ兄や恭兄にも言われたから……パパとママはちゃんと受け入れてくれるって…」

「そうか……小僧は、知っているのだな?」

「うん。初めてこの時代にやって来た時にすぐに話しちゃった。…最初は隠し通すつもりだったんだけどね。」

「ふむ…小僧が話すように言ったのだろう?」

「うん。タケ兄が言おうとした事を私が止めていたのを見てね…」

「なるほど。遅かれ早かれ、小僧にはすぐにバレていただろうな。」

「私もそう思う。」

「それともう1つ。」

「?」

「ソラ、最近よく眠れていないのではないか?」

「!…そ…それはっ…」

「なぜ沢田や京子に頼らんっ!?たとえ正体を明かしていなくても、2人を頼ればいいだろう!!」
ソラを叱る了平

了平から視線を逸らしたソラ

「ソラ、お前は甘えなさ過ぎるのだ!極限甘えろっ!!」
ソラの両肩を掴みながら言う了平

「そんな事、言われたってっ…無理だよ!!」

「なぜ無理なのだ!?」

「だって今居るのは、10年前の2人なんだよ!?そりゃ、2人の傍は安心出来るけど…時々、10年前の2人だって事を忘れそうになる!!」

黙って聞く了平

「だからっ………パパ、ママって、何度も呼びそうになった!……でもっ、それは自分の事を言わなくちゃいけなくなるっ……」

「……このまま言わないつもりなのか?」

「だって、まだ付き合ってもいないんだもん!!……それなのに、付き合うより前に、私が2人の子供だって言うのは……どうしても怖くてっ……
受け入れて貰えないんじゃないかってっ……」
体を震わし、声も震えていたソラ

そんなソラを見ていられなくなった了平はソラを抱きしめた。

「俺は沢田や京子じゃないから、こんな時、どう言えばいいのかわからん。だが、今言える事は……思いっきり泣け!」

「!!……了兄っ……りょーにぃっ……」了平の服を握り、胸に顔を埋めたソラ

「……お前が今不安に思ってる事……全部俺に教えてくれ。」

了平のその言葉を聞いた後、我慢していた分だけ、大声で泣き出した。
自分が今、不安に思っている事を全て、泣きながら話したソラ

了平は泣いてるソラの頭を撫でたり、背中を優しく叩いたりして、時々言葉を返しながら、聞いていた。

しばらくすると、泣き疲れて眠ってしまったソラ

了平は、眠ってしまったソラをベッドまで運び、靴を脱がせてから寝かせた後、タオルケットを掛けた。

「すまんな…まだ幼いお前を作戦に参加させてしまう事になってしまって……だが、心配するな!お前は必ず守る!!きっと沢田達もお前を守ってくれる!」
眠っているソラに語りかける了平

「………ソラ、もっと周りを頼っていいのだぞ?沢田や京子を頼れないのなら、俺をいつでも頼れ。」
そう言いながら、ソラの頭を撫でていた了平

少しそのまま少しの間撫でた後……

「さて、そろそろ行くか。ゆっくり休め、俺達の大切な姫…」
そう言い、ソラの頭から手を離し、そのままソラの私室を出て行った了平


標的30へ進む。


今回のお話は、アニメでしかやらなかった、システム異常発生と、第2発電動力室の騒ぎです。
アニメでは、ランボとイーピンだけが閉じ込められていた所を、ソラも一緒に閉じ込められ、
本来、ランボが火傷するはずだったのを、ソラが庇っています。
最後の方は、了平と2人だけのお話を書きました。
大人了平は10年前より落ち着いているので、少し書きにくかった気がします。
了平、上手く書けてると思いたいです。
それでは標的30へお進みください。

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