10年前のリボ兄

ーー地下5階通路ーー

地下5階に着いたソラはまっすぐに応接室へ向かった。
もう少しでドアの前という所で話し声が聞こえてきた。

(?…タケ兄とジャンニーニさんが話してるのかな?)
ソラは疑問に思いながらも、ドアを開けた。

ソラは部屋の中に居る人物を見た瞬間、目を大きく見開いて驚いた。
部屋に居たのは、山本と…そして、今はもうここには居ないはずの全身白タイツの姿のリボーンが居た。

中に居たリボーンはソラに気付き、
「ん?お前誰だ?」
そう言いながら、レオンで姿を変えた銃をソラに向ける。

(リボ兄?……違う、私が知ってるリボ兄じゃない…)
ソラは心の中でそう思い、一瞬だけ暗い表情を浮かべた。

「ん?どうしたんだ?」
リボーンはソラが一瞬だけ見せた表情を見て、銃を下ろした。

「ソラ…」

「タケ兄、ここにいるリボにっ…リボーンさんはもしかして…」

「10年前の小僧だ。」

「10年バズーカ…だね?」

「ああ。」

「ちゃおッス(こいつ…さっき俺の事、言い直してたな。)」

「でも、5分のはずじゃ?それに…リボーンさんなら、回避出来たはずです。」

「ああ、確かに回避しようとしたんだが…動けなかった。」

「動けなかった?」

「ああ。あの時、ここの地上に充満してる物質…」

「ノン・トゥリニセッテの事ですね?」

「ああ、それと同じ感じだったからおそらくは…」

「過去でノン・トゥリニセッテが!?(そんな…どうして…)」

「それより、もう一度聞くぞ?お前は誰なんだ?」

ソラはリボーンの傍に近づいた。
「紹介が遅れて申し訳ありませんでした。はじめまして、リボーンさん。私の名前はソラです。」

「マフィアなのか?」

「はい。ボンゴレ所属、10代目ファミリーの一員です。」

「…ほんとか?」

「こ、小僧、こいつは…」

「タケ兄っ」

山本はソラに呼ばれ、振り向いた。
ソラは山本に視線で「言うな」と訴えた。
それを見て、山本は苦痛の表情を浮かべた。

リボーンは山本の表情を見て、何かを悟った。

「本当の事を言え。」
威厳のある声で言いながらリボーンは再びソラに銃を向けた。

「………」
ソラは黙ったまま、リボーンを見ていた。

「言えねぇのか?」

「未来の事を簡単に話す事は出来ません。それに……私、10年前はまだ生まれていませんから。」

「なるほどな…だが、それで引き下がるわけにはいかねぇな。」

「小僧…」

「山本、こいつは何者なんだ?」

「そ、それはっ…」

沈黙が続いた……

リボーンはため息をつき、銃を下ろした後、レオンを元の姿に戻した。
そして、もう一度ソラを見た。

少し見つめた後、リボーンは優しい表情を浮かべ、優しい声でソラに話しかけた。
「誰にも言わねぇから、話せ。ソラ」

「リボーン…さん」

「この時代の俺と同じ呼び方でいいぞ?」

「えっ…」

「さっき言い直してたろ?」

「でも……知らない人に急に親しい呼び方されたら、嫌じゃないですか?」

「確かにな。けど、お前は俺の事、知ってんだろ?」

「はい、よく知ってます。」

「じゃあ良いじゃねぇか。俺はまだソラの事知らねぇけど、これから知ればいい。だから好きに呼べ。
あと、敬語じゃなくて、タメ口でいいぞ。」

そこでソラは目に涙を浮かべた。
「……リボ兄」

「なんだ?」

「抱きしめても…いい?」

「いいぞ。」

リボーンの許可が出たので、思いっきり抱きしめた。

「リボ兄っ……ひっくっ……リボにぃ~」
またリボーンに触れる事が出来たからか、ソラは泣きだした。

リボーンはされるがまま、おとなしくしていた。

山本はそんなソラとリボーンを見守っていた。
(ソラ…良かったな……ありがとな、小僧…)

しばらくソラは泣いていた。


少し時間が経ったあと、ソラは落ち着きを取り戻したので、リボーンから離れた。

「落ち着いたか?」

「うん…ありがとう、リボ兄」

「気にすんな。マフィアは女に優しくするもんだぞ。」

『俺は女には優しいんだぞ。』
頭の中でフラッシュバックした。

「どうした?ソラ」

「この時代のリボ兄と…同じ事言ってる。」

「そうか。」

「そういえば、なんでそんな変なカッコしてるの?」

「ん?ああ、これはノン・トゥリニセッテを遮る特殊スーツなんだ。」

「そうなんだ……あとでジャンニーニさんに黒スーツを作ってもらうように手配しとくよ。」

「ん?ほんとか?」

「うん。リボ兄には、いつもの黒スーツの方が似合うからね。」

そこでリボーンのお腹の音が鳴った。
「…腹減ったぞ。」

「そういや、もう昼過ぎてんな。」

「そうだね、小食堂に行こうよ?」

「お前が作るのか?」

「そうだよ。」

「ははっ、俺は寿司を握る以外は何も作れねーからな。」

「隼人兄は今出かけてていないし。」

「それじゃ、小食堂に行こうせ?ソラ、小僧」
3人は応接室を出て、小食堂のある、地下7階へ向かった。


ーー地下7階ーー小食堂

小食堂に着くと、ソラはすぐに料理に取り掛かった。
山本とリボーンは料理が出来るまで、椅子に座って待っていた。

「…山本、あいつの事を教えてくれねぇか?」

「それはソラから聞いてくれよ、俺からは言えない。」

「わかったぞ。」

少し待った後、ソラが出来た料理を運んできた。

「お待たせ、二人とも。」
そう言って、焼きそばを乗せたお盆を机の上に置いた。

「おっ、うまそーだな!なっ?小僧」

「ああ。」

「私はジャンニーニさんに焼きそばを届けてくるから、先に食べてていいよ。」
ソラはそう言った後、ジャンニーニの分の焼きそばを持って、地下5階の作戦室に向かった。

「…小僧、どうする?」

「待つか。」

「賛成っ!」

「あいつ…見た目は元気そうだが、心が不安定だな…」

「っ!…やっぱり…そうなのか?」

「ああ…それに俺の読心術が上手く効かねぇっ」

「それ、この時代の小僧も同じ事言ってたな。読心術が上手く効かなくなったのは、確か、2年前からだったな……」

「2年前?……何かあったのか?」

「ああ…けど、言えねぇ。わりぃな、小僧っ」

「そうか……んで?ソラの心が今不安定なのは、やっぱり、ツナが死んだからか?」

「いや、それだけじゃねぇ……小僧、コロネロ、風、スカル、マーモン、ヴェルデ、アリアさん、俺の親父、
知ってる奴が次々と死んじまったからだ…」

「あいつはコロネロ達を知ってるのか?しかも、アリアまで…」

「ああ、ソラはアルコバレーノ全員と面識がある。特に、小僧とコロネロが一番親しかったぜ。
親父とは、俺が実家に戻る時に、たまに連れてってたから知ってるんだ。」

「そうか…だが、それでもあの歳でまだ自分を見失っていないのは、心が強い証拠だぞ。」

「確かにな。けど、どんなにしっかりしてても…あいつはまだ子供なんだ。いつ、心がぶっ壊れるかわからねぇ……
これ以上、誰かが死んじまったら…今度こそ、やべぇだろうな……」
山本は弱音を吐いていた。

「弱気になるなっ!」

「小僧…」

「お前も親父が死んでつらいだろうが…今はあいつを支えてやれ。俺もここに居る間はしっかりソラを支えてやる。」

「…サンキューな…小僧っ」

その時、ソラが戻ってきた。
「あれ?タケ兄、リボ兄、まだ食べてなかったの?」

「おう。ソラを待ってたんだぜ?」

「おせーぞ、ソラ」

「ありがとう!ちょっとジャンニーニさんと話してたんだよ。」
そう言いながら、椅子に座るソラ

「それじゃあ…」

「「「いただきます。」」」っと3人一斉に言って食べ始めた。


そして、食べ終わった頃……
「ごちそうさま!やっぱソラの料理はいつ食べても美味しいぜ!!」

「なかなか美味かったぞ。」

「ありがとう、2人とも。」

「ソラ、そろそろ教えてくれねぇか?」

「あっ、そうだったね…ごめん。」

「いや、いいぞ。」

深呼吸を1回してから、リボーンに向き合った。

「…私の名前は沢田ソラ」

「沢田?……まさかっ」

「リボ兄が思っている通りだよ。ボンゴレ10代目、沢田綱吉の娘であり、次期ボンゴレ11代目です。」

「…マジか?」

「はい。」

リボーンはそこで山本に視線で「本当か?」っと訴えていた。

「マジだぜ。」

「あのダメツナに娘が出来てたのか……いくつだ?」

「6歳だよ。」

「ツナの奴、18歳で父親になるのか…あのダメツナが十代で子持ちとはな。」

「俺も当時は驚いたぜ。」

「母親は誰なんだ?マフィアなのか?」

「違うよ。」

「一般人なのか?」

「うん。」

「……京子、か?」

「当たり。晴の守護者の妹、沢田京子、旧姓笹川」

「ツナと京子の娘なのか。そういや、良く見ると、京子によく似てんな。」

「確かに良く似てるってみんな言ってる。」

「そのアホ毛と瞳はツナ譲りだな?」

「あははっ、それもよく言われるよ。」

「…質問していいか?」

「うん、私で答えられる質問なら。」

「さっき、お前は10代目ファミリーの一員だって俺に言ったな?もしかして戦えるのか?」

「うん、戦えるよ。リボ兄が教えてくれてたから。」

「俺が?」

「うん、リボ兄は私の家庭教師だったんだよ。」

「ソラがよく使っている武器は銃だが、銃以外にもいろんな武器が扱えるんだぜ。」

「そうなのか?」

「銃以外に刀、トンファー、槍とかも使えるよ。」

「器用だな。」

「守護者のみんながいろいろ教えてくれたからね。」

「山本も教えたのか?」

「おうっ、俺は刀での戦い方を教えた。」

「そうか。トンファーは雲雀だな?」

「当たりだぜ。」

「よく雲雀が教えてくれたな。」

「恭兄、優しいよ?私がお願いしたら、教えてくれた。」

「雲雀はソラのお願いには弱いからな…っていうか、俺ら全員ソラのお願いには弱いのなっ」

「あの雲雀がな……それで、槍は誰なんだ?」

「骸だ。」

「何?あの骸が教えたのか?」

「おう、そうだぜ。」

「リボ兄も“カオスショット”を私に教えてくれたよ。」

「俺の技まで…お前、そんなに強いのか?」

「ああ、あの雲雀が認めるほどだぜ。」

「雲雀が?」

「うん。」

「ソラが超死ぬ気モードになれば、その雲雀よりも強い。小僧とも1度本気で戦ったが、ソラの方が強かったぜ。」

「何だど…俺よりも強いのか…ん?……ちょっと待て。」

「なんだ?」

「今、超死ぬ気モードって言ったか?」

「ああ、言った。」

「ソラ、お前はもう超死ぬ気モードになれるのか?」

「うん。自力でも自由になれるけど…死ぬ気丸で死ぬ気・超モードになってるよ。」

「いや、自力って…」

「自力で死ぬ気モードになってるとこ、一度見た事あるけど、ビックリしたぜ。超モードは死ぬ気丸使用の時しか見た事ないけどな。」

「……マジなのか。」

「ああ。」

「私の死ぬ気の炎…純度が高過ぎて、自力で死ぬ気・超モードになった時は、上手く炎をコントロール出来ないんだ。」

「それに、ソラはまだ幼いから、負担が大き過ぎて、体が悲鳴を上げてしまうんだ。」

「だから、その負担を減らすために死ぬ気丸を使ってるんだよ、もっとも、死ぬ気には滅多になる事がないけど…」

「死ぬ気丸は負荷が大きいはずだぞ?バジルが使っていた奴だろ?」

「それの改良版だよ。そうだね…「死ぬ気丸・改」だと思って。死ぬ気度が落ちるのはそのままだけど…」

「どのぐらいなれるんだ?5分か?」

「ううん、どちらも長時間なれるよ。」

「そうなのか。その時の武器はなんだ?」

「レオンが生成してくれたⅪグローブだよ。ただ、パパみたいに毛糸の手袋じゃなくて、普通にⅪグローブだけど。」

「ほぉ…レオンから生成された武器を…親子揃って同じ武器なのか。」

「うん、そうだよ。」

「じゃあ、もう何かの試練を乗り越えた後なのか?」

「ううん。」

「…違うのか?」

「パパはピンチの時にレオンが新アイテムを生成してくれたみたいだけど、私は普通に生成してくれたよ?」

「なんだと……(ツナの時は、骸に勝ちたいっていう覚悟にレオンが応えていた。…覚悟?まさかっ)」

「リボ兄?」

「ソラ、もしかしてお前も山本と同じようにリングに炎を灯せるのか?」

「うん、灯せるよ。」

「そういや、ソラの武器が生成されたのって、初めてリングに死ぬ気の炎を灯した時じゃなかったか?」

「……そういえばそうかも。」

「なるほど、そういう事か。(その時のソラの覚悟にレオンが応えたのかもしれねぇな。)」

「いや~、まさか、一回で灯せるとは思ってなかったぜ。普通は約30時間くらい掛かって、初めて灯せるからな。」

「ほぉ…そりゃすげーな。ところで、ソラはツナと同じ大空の波動なのか?」

「大空だけじゃないぜ。」

「1つじゃないのか?」

「うん。大空と晴…私には、2つの波動が流れているんだ。」

「んで?どっちの炎の方が純度が高いんだ?やっぱ大空か?」

「ううん、両方。」

「は?」

「どっちも高純度の炎を出せるよ。」

「………」リボーンもさすがにこれにはすぐ反応出来なかった。

「リボ兄、大丈夫?」

「あ、ああ…大丈夫だぞ。山本、確か人には複数の波動が流れているが、波動が大きいのは1つだけだって言ってたよな?」

「ああ。ソラはその稀なんだ。この時代の小僧も驚いてたぜ。」

「そうか……ツナよりもかなり優秀だな。(ツナ、お前には出来過ぎた娘だぞ。)」

「もう質問ない?」

「ないぞ。教えてくれてサンキューな、ソラ」

「どういたしまして。あっ、そうだ!ねぇ、リボ兄」

「なんだ?」

「私の戦い方…見たい?」

「…いいのか?」

「あまり戦うのは好きじゃないけど…リボ兄が見たいなら、いいよ。それに…10年前のリボ兄と戦ってみたい。ダメかな?」

「そうか、なら見たいぞ。お前がどんな戦い方するのか…」

「じゃあ、トレーニングルームに行こうよ。タケ兄、良い?」

「ああ、いいぜ。小僧に相手してもらえよ。」

「やった!」

「じゃあ俺が皿を洗っておくから、行ってこいよ。小僧、ソラを頼むな?」

「任せとけ。」

「じゃあ行こうよっ!リボ兄」

「ああ。」
小食堂を後にし、トレーニングルームのある、地下8階へ向かった。


ーー地下8階ーートレーニングルームーー

「リボ兄、あとで私のお友達を紹介するね?」

「ああ。」

「じゃあ行くよ?」
ソラは刀を構えた。

「刀か。だが、死ぬ気の炎が灯ってないぞ?」

「うん、だってこれは普通の刀だもん。リボ兄、私の戦い方はいろいろあるんだ。なら、いろんな戦い方を見たいでしょ?」

「確かにな…とことん付き合ってやるぞ。ソラ」
そう言って、リボーンはレオンで姿を変えた銃を構えた。

ソラとリボーンは夜まで戦い続けていた。


標的3へ進む。


やっと10年前のリボーンが登場!
思ったより、長く書いてしまいました。(笑)
私の中でのリボーンは最初から絶対正体を隠せないと思っているんですよね。
リボーンにはぜひ、ソラの支えになってもらいたかったですし。
なので、リボーンにはすぐ正体をバラしちゃいました。
次はいよいよ、ツナ、獄寺、ラル・ミルチが登場します!
それでは、標的3へお進みください。

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