地下ボンゴレアジト

ーー地下ボンゴレアジト入口付近ーー

「やっと着きましたね……山本」

「ああ、わかってるぜ。」
山本は雨系リングに炎を灯して雨属性の匣に差し込み、雨燕を出した。

雨燕は周囲を飛び回り、やがて強い雨を降らせた。

雨粒は、ソラが被っているフードの上にも容赦なく降り注き、目の前も雨のカーテンのように見えなくなるほどの豪雨だった。

(っ…痛いっ……それに前が良く見えないよっ……)
ソラは山本と獄寺を見失わないように、必死で視界を凝らしながら着いていっていた。

通常の雨の倍はあるだろう大きさの雨粒は、荒れくる風に乗ってソラたちを襲っていた……まるで槍のように。

(くっ……)
降ってくる雨粒がソラの体へ次々と降り注き、そのたびに痛みを感じていた。
ソラは視界を遮り、痛みも感じるこの雨が、まるで今の自分の心のを現わしているようだと思った。
必死に山本や獄寺を追う中、ソラは2人に気付かれないよう、そっと自分の左胸の方に右手を当てていた。

パパが死んで、9代目…ノンノは現在行方不明。
それに守護者の皆の居場所も正確には把握出来ていない。
ボンゴレ内はボスを失った事で混乱状態……この状況をなんとかしないといけない。
でも、私に……私に上手く出来るかな…?
パパが守ってきたボンゴレを…ファミリーのみんなを、私は…ちゃんと守れるかな…?

ソラのその問いに答える者はいない。
ただ、今降っている豪雨がソラに降り注ぐだけだった。

ううん、弱気になっちゃダメっ!しっかりしろ、私っ!
私はパパの娘で、次期ボンゴレ11代目で……ボンゴレの姫君なんだからっ!!
だから絶対に私が守ってみせるっ!
ファミリーのみんなを……ボンゴレをっ!
その為に、今自分に出来る事をする!
私にしか出来ない事を、全力でっ……

改めて覚悟を決めたソラは、この刺すような痛みのある雨を快感へと変えていた。

ソラ達は強い雨に打たれながら、ボンゴレアジトの入口へと向かい、中に入って行く。

地下5階の応接室前に着くと、そこにはジャンニー二の姿があった。

「ソラさん!山本様!獄寺様!よ、よくぞご無事で…わ、私、心配しておりましたっ!!」

「ジャンニー二さん…」

「ソラさん、こんな状況ですが…おかえりなさいませ。」

「うん、ただいま。」

「では、私は作戦室へ戻りますので、何かありましたら、お呼び下さい。では…」
ジャンニー二は、3人に一礼をしたあと、作戦室へと戻っていった。


ーー応接室ーー

「ふぅ…やっと落ち着けるな。」

「防犯対策のカモフラなのは解るけど…あの雨、凄く痛いよ、視界も遮られるし。なんとかならないの?タケ兄」
そう言いながら、ソラは頭に被せていたフードを外し、山本に不満顔を向けた。

「ん〜、確かにそれは俺も思うけど、どうにもならないな〜」と爽やかな笑顔でソラにはっきり言った。

「…山本、はっきり言い過ぎだぞ。」

「そうか?」

「俺達は大人だから、痛みは感じても、そこまでじゃねぇが、ソラさんはまだ子供だ。俺達なんかよりも凄く痛い雨なんだよっ!!」

「そ、そうなのか?ソラ」

「うん、とっても痛い。それに凄く視界が良くなかったから、タケ兄達に着いていくのに必死だったもん。」
頬を膨らませながら、山本と獄寺に言うソラ

「す、すみませんっ!ソラさん」

「わ、悪かったっ!そう怒るなよ?ソラ」

「怒ってない。」ぷいっとそっぽ向くソラ

「だから悪かったってっ……許してくれよ、ソラ」

「…ソラさん、疲れてますよね?もう夜遅いですし、これからの事は明日決めましょう。」

「イタリアから、ここまでずっと休まずに移動してたもんね。うん、そうする。」

「んじゃ、地下14階へ行こうぜ。」
ソラ達は応接室を後にし、エレベーターで地下14階へ行った。


ーー地下14階ーー

「それじゃあ…隼人兄、タケ兄、おやすみ。」

「おう、おやすみ。ソラ」

「はい、おやすみなさい。ソラさん」
そう言って、3人はそれぞれ自分の私室へ行き、眠りについた。

次の日になり、今の並盛の状況や、敵のミルフィオーレファミリー対策などの話し合いをしていた。
現状況では、ミルフィオーレの情報を掴むため、フゥ太とビアンキが情報収集に出ていて、今は情報待ちだという事。
各守護者の居所は今捜索中だという事。
これからどうやってミルフィオーレに対抗していくかという事。
そうしている内に、2日が過ぎた…


ーー2日後の朝ーーソラの私室ーー

朝になって、目が覚めたソラは、ベッドから降りて、地下5階の応接室へ向かった。
応接室に着いて中に入ると、そこには獄寺と山本の姿あった。
2人はソラが入って来たのに気付き、ソラの方へ顔を振り向いた。

「おはようございます!ソラさん」

「おはよう!ソラ」

「おはよう!隼人兄、タケ兄」

「ソラさん、昨日はちゃんと休めましたか?」
心配そうな表情でソラに聞く獄寺。

「あんまり無理すんなよ?」
山本も同じ表情でソラに言った。

「大丈夫だよ!ちゃんと休める時には休ませて貰うからっ!」
ソラは笑顔で2人にそう言った。

「そうですか…」

「隼人兄、どこか出掛けるの?」
ソラは獄寺が鞄を持っているのを見て言う。

「え、ええ……その、10代目の棺桶のある森の中へ…」

「そう…」

「あ、あのっ」

「隼人兄、気をつけてね。」

「えっ」

「そこで何かが…起こるような気がする。」

その言葉で獄寺と山本が険しい表情を浮かべた。

「超直感…ですね?」

「うん。」

「何が起こるんだ?まさか、敵に見つかる…とかじゃねぇよな?」

「……違うと思う。別の何か…」

「解りました、気をつけて行ってきます。」

「獄寺、さっきの話だけど、本当に今日来るのか?」

「ああ。」

「何の話?」

「今日、このアジトに門外顧問の使者が来るんですよ。」

「さっきジャンニーニがそう言っていたらしい。」

「門外顧問?それって、おじいちゃんが所属してる所だったよね?」

「ええ、そうです。」

「誰が来るの?」

「ラル・ミルチだそうです。」

「えっ…」

「どうかしました?」

「だって…ラル姉もアルコバレーノの1人だよ?ノン・トゥリニセッテが充満している地上を出歩いて大丈夫なの?」

「確かに…」

「でも、今はこんな状況だからな…」

「おじいちゃんの居場所はわかった?」

「それが……タイミング悪く、奈々さんと一緒にイタリア旅行に出かけられていて、状況が掴めないそうです。」

「おばあちゃんも一緒なの?」

「はい。」

「相変わらず仲がいいね。」

「仲がいいのは良い事じゃないですか。」

「えっ…?」
そこでソラは獄寺と山本以外の声が聞こえ、ドアの方に顔を向けた。

そこには、ランボとイーピンが居た。
「久しぶり、ソラ」
「元気にしてた?ソラ」

「ランボ兄!イー姉!」そう言って、ソラは二人に駆け寄った。

「2人とも、無事だったんだね!」

「昨夜遅くに、このアジトへ帰還してきたんですよ。」
獄寺がソラに報告する。

2人はソラの視線に合わせるためにしゃがんだ。

「心配掛けてごめん。ソラ」

「でも、私とランボはこの通り、無事だよ。」

ソラはその言葉を聞いた後、二人に抱きついた。
「良かったっ…ほんとに……よかったっ!!」

「な、泣かないで、ソラ」
「そうだよ、ソラが泣いてると困っちゃうな〜」
2人はちょっと困った顔をしながらも、そのまま泣かせていた。


少し時間が経って、ソラが落ち着いた頃…

「ごめん、いきなり泣いたりして…」

「いえ、お気になさらず。獄寺氏と山本氏からイタリアでの状況を聞きましたので。」

「こんな状況で私達の無事も確認出来ない状態なんだから、仕方ないよ。だから気にしないで。」

「ありがとう…」

「ソラさん、今現状況で解っている事を報告したいのですが、よろしいでしょうか?」

「うん、いいよ。教えて、隼人兄」

「はい。まず、先程申し上げたように、家光さんと奈々さんは5日前からイタリア旅行に出かけられていて、状況が掴めません。
笹川とハルですが、こちらも同じく…」

「確か、ママ達はゼミの合宿中だったはず…」

「そうです。ですが、今は行方が掴めないんです。」

「そんなっ……」

「現在、地上ではミルフィオーレの連中がたくさん出歩いていて、ボンゴレ狩りも進行中です。」

「被害は?」

「……この2日間で、並盛に居た、俺達の顔見知りはほんんど消されてしまいました。」

それを聞いて悲痛の表情を浮かべるソラ

「あいつら、こっちの呼びかけに一切応じようとしないんだ!くそっ」
悔しそうに言う山本

ソラは少し考えた後、ランボとイーピンに視線を向けた。
「ランボ兄、イー姉」

「「何?ソラ」」
2人の声がハモッた。

「……相変わらず、息ピッタリだね。」

「だなっ!」

その言葉を聞いて、ランボとイーピンは顔を真っ赤にした。

「あははっ……えっと、いいかな?」

「はっ…ごめん、ソラ」

「ご、ごめん、ソラ」

「気にしないで。帰って来たばかりで悪いんだけど、頼みたい事があるの。」
ソラは真剣な表情で2人に話しだした。

ランボとイーピンもソラの表情を見て、気を引き締めた。
「「何でしょう?」」

「ママとハル姉を探して連れて来て欲しいんだ。」

「「京子さん達を?」」

「うん。2人ともボンゴレ狩りの対象の事は聞いたよね?」

「確かに…」

「京子さんとハルさんも10年前から沢田さんと一緒に居ますもんね。」

「だから、ランボ達に探しに行かせるのか。ランボ、イーピン、頼めるか?」
山本は話を聞いて納得し、2人に言った。

「「はいっ!任せて下さい!!」」

「ソラ、俺達が必ず探し出して、連れて帰ってくるよ。」

「だから安心して。」

「ランボ兄、イー姉……お願いっ!!」

「「お任せをっ」」

「んじゃ、頼むぞ、2人とも。俺は今から10代目の所に行ってくる。」

「おう、行ってらっしゃい。」

「気をつけてね?行ってらっしゃい、隼人兄」

「「行ってらっしゃい、獄寺氏/獄寺さん」」

「行ってきます。」
獄寺はそう言って応接室を退室した。

「それじゃ、俺達も行こうか?イーピン」

「そうだね、ランボ」

「お前らも…気をつけて行けよ?」

「はい、解っていますよ。山本氏」

「京子さん達の事は私達に任せて下さい!山本さん」

「おう、任せるぜっ!」

「ランボ兄、イー姉、気をつけてね?行ってらっしゃい。」

「「行ってきます!!」」
ランボとイーピンの2人も応接室を退室した。

「隼人兄、ランボ兄、イー姉…」
目を瞑り、両手を祈るように握って、無事を祈った。

「大丈夫だぜっ!ソラ」
山本はそう言って、ソラの頭を撫でた。

「うん、そうだね。そういえば…ラル姉、ここの場所知ってるの?」

「ん?ああ、そういや獄寺が門外顧問が知ってるアジトの在処の情報はガセだって言っていたな。」

「えっ!?そうなの!?」

「おう。ジャンニーニが近くまで来たら、知らせてくれるらしいから、その時に迎えに行く。」

「そっか。じゃあ、私は部屋に戻ってもうひと眠りしてくるね?まだ疲れが抜けきってないっぽいから。」

「わかった。ゆっくり休めよ、ソラ」

ソラは自分の私室に戻っていった。


自分の部屋に戻ったソラはすぐにベッドに寝転がり、そのまま瞼を閉じて眠った。



時間が経ち、昼頃になった。

寝ていたソラは目を覚まし、時計を見ると…
「もうお昼だ…ご飯、作らないと。隼人兄、たぶん帰ってきてないだろうし。」
ソラは起きて、マントを羽織り、ウェストポーチとガンホルダーを身につけた。

「ん?……応接室で…何かあるのかな?」
ソラの超直感が何かを伝えていた。

気になったのか、ソラは食堂へ向かう前に応接室に向かった。
そこで何があるのかを知るために……


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今回のお話も未来編突入前のお話です。
このお話でも出番がちょっとしかなかった、10年後ランボとイーピンを出しました。
ソラにとって、この二人は歳の離れた兄と姉のような存在です。
二人にとっても、歳の離れた妹のように可愛がっているため、とても仲が良いという設定です。
地下14階の事ですが、雲以外の守護者とソラの私室がそれぞれある階です。
次のお話は10年前のリボーンが登場です!
それでは、標的2へお進み下さい。

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