継承

ーー地下8階ーートレーニングルームーー

「恭さん…」腕時計の時間を見た後、雲雀に声を掛けた草壁

雲雀は球針態を見ながら、微笑んでいた。

ソラとリボーンも黙ったまま、球針態を見つめていた。

(こんな事をして何になる!お前達は沢田の人格を変えてしまうつもりなのか?)
ラルは雲雀達を見ながら、そう心の中で思った。


ーー球針態の中ーー

「やめろ!!やめてくれ!!」
両手で頭を抱えながら泣き叫ぶツナ

<目を逸らすな。これはボンゴレを継ぐ者の宿命……貴様が生を授かった事の意味そのものだ。>

ツナの耳に次々と聞こえてくる悲鳴

「嫌だっ…こんな事は出来ない!!」

<代価を払わずして、力を手に入れる事など叶わぬ。>

<偉大なる力が欲しいならば、偉大なる歴史を継承する覚悟が必要なのだ。>

「偉大なる歴史…こんな、こんな事がっ…』

その時、再び誰かの悲鳴が聞こえてきた。

「俺は…こんな事をするために…力が欲しいんじゃない!!」
そこでツナは皆の事を思い出す。

母親である奈々、ランボ、イーピン、ビアンキ、フゥ太、ハル、山本、獄寺、了平、京子の事を……

「みんな…」

『綱吉さん、カッコつけないで下さい。』

「!!」

『あなたはヒーローになんてなれない人です。』

ツナは自分の意志で初めてリングに炎を灯せた時の事を思い出していた。


『皆さんを過去に帰すとか、敵を倒すために修行に耐えるとか、そんなカッコつけた理屈は、全然、綱吉さんらしくありません。
……あの時の気持ちは、もっとシンプルだったはずです。』

『あの時…?』

『…初めてリングに炎を灯した時、何をしたかったのか、思い出して下さい。』

『え…それは…ただ……京子ちゃんとソラちゃんを守りたかったんだっ』

『…良い答えです。今は…守りたい人は、いないんですか?』

『え…そりゃあ決まってるよ。みんなを……守りたいんだ!!』


「嫌だっ」

<何?>

「みんなを守るためなら、なんだって出来るって思ってた…でも…こんな…こんな力なら、俺は要らない!!」

<何だと!?>

「こんな間違いを引き継がせるなら……俺が…俺がボンゴレをぶっ壊してやる!!」
決意の籠った瞳でそうはっきりと言ったツナ


ツナのこの言葉は球針態外に居るソラ達にも聞こえた。

(同じ事言ってる……リボ兄から聞いたのと…同じ言葉を……)
ソラがツナの覚悟を聞いてそう思った。

超直感が告げている……もう大丈夫だと…
継承は認められたと……


(何言っちゃってんだ…俺…みんな…ごめん…)
そう言って倒れそうになったツナを誰かが受け止めた。

ツナは眼を少しだけ開けて、受け止めてくれた人を見る。

「きゅ…9代目!?」

驚いて、目を見開いたツナの周りには、いつの間にか暗闇の中じゃなくなっていた。

ツナの目の前には、地面にボンゴレマークが浮かび上がっていて、歴代ボス達が並んで揃っていた。

それを呆然と見つめるツナ

歴代ボス達は、それぞれ武器に死ぬ気の炎を灯した。
ボンゴレU世だけは武器ではなく、素手に灯す。

ボンゴレU世から、ボンゴレ\世が全員炎を灯し終わった後、
ツナの正面に見える、大きな椅子に座っていた、自分にそっくりで、額に炎を灯していた男の人が立ち上がり、グローブに死ぬ気の炎を灯した。

ツナは周りに居るのが歴代ボンゴレボス達で、額に炎を灯している男の人が、初代ボスだと気付いた。

<貴様の覚悟、しかと受け取った。>

「何これ……夢…?幻覚…?」

<リングに刻まれし、我らの時間>

「時間……時?」

<栄えるも、滅びるも、好きにせよ。ボンゴレ]世(デーチモ)>

(ボンゴレ]世……10世!)

<お前を…待っていたっ…>
そう言いながら、ツナに向かって右手を差し出し、グローブに灯っている炎が大きくなった。

次々に歴代ボスたちの炎が大きくなり、いつの間にか、ツナの真下にボンゴレマークがあり、それが光り出した。

<ボンゴレの証、ここに継承する!>
初代ボスがそう言い、ツナの継承を認めた。

ツナの周りが光り出した。

<ボンゴレ]世……姫を……我らの大切なボンゴレの姫君を、守ってくれっ…>

初代ボスは継承を終えた直後にツナにそう言い残していった。
ツナにその言葉が聞こえたかどうかは解らない。
なぜなら、初代ボスは聞きとれるか、聞きとれないかというくらい小さな声で祈るように呟いたからだ。
願わくばその言葉がツナに届いている事を信じて……


ーー球針態の外ーー

球針態が壊れ始め、そこから光が溢れだした。

「何だ!?何が起きてるんだ!?」
球針態が壊れ始めているのを見て驚いているラル

「恭さんっ!これはっ…」

「球針態が……壊れる。」
雲雀が次々と壊れていく球針態を見てそう言った。

しばらくすると、球針態が完全に壊れ、大きな音がし、爆風を起こした。

球針態が砕け散った所に視線を向けると……
今まで着けていたグローブが少し変わっていたツナが立っていた。

(Ver.V.R.(バージョンボンゴレリング)……この時代のパパと同じ]グローブ…)
ソラはツナが着けているグローブがVer.V.Rに変わったのを見て、そう心の中で呟く。

「あ、あれは!?」
ラルがツナのグローブが少し変わっているのを見て驚く。

「越えたなっ」

(そう、これだ……これを待っていたんだ!!この時代の沢田は、指に装着したリングを手の甲に宿し、力を引き出したという…)
ラルはツナのグローブを見ながらそう心の中で言う。

「まさか、ソラの言った通り、試練の末の形態だとはな…」

「ああ、俺もビックリだぞ。」

「今のパパを短期間で飛躍的にパワーアップさせるなら、やっぱりこの伝説の試練しか思いつかなくて………危険なのは解ってたけど、
ラル姉が求める沢田綱吉になるには…これしか、なかったっ……」
ソラは両拳を握り、苦痛の表情を浮かべながら、ツナを見ていた。

「ソラ……(オレは馬鹿だっ……ソラが沢田の事を見殺すような事をするわけがないのにっ…)」
先程ソラを責めるような言動をした事を悔やむラル

「ソラ、あまり自分を責めるな。」
ソラに向かってそう言うリボーン

「でもっ…」

「お前は何も間違っちゃいねぇ……ツナがミルフィオーレファミリーを倒すために必要な力を得る方法が、たまたまこれしかなかっただけだ。」

「リボ兄…」

「しかし……あんな答えで試練を乗り越えたのは、歴代のボンゴレの中でツナだけだろうな。」
そう言いながら、ツナに視線を向けたリボーン

「……この時代のパパも、同じ事を言ってたらしいよ。」
ソラもツナに視線を向けながらそう言う。

「この時代のツナが?」

「うん。この時代のリボ兄から、ずっと前に聞いたんだよ。パパがボンゴレの試練を受けた時の事を……」

「そうか。(この時代の俺は、いろんな事をソラに教えてるみてぇだな……アルコバレーノの秘密まで話してるみてぇだし。)」

ツナが右手のグローブに炎を灯した。

今まで灯していた炎よりも凄く澄んだオレンジ色の大きな炎が灯っていた。

(凄く澄みきっていて、綺麗……この時代のパパと同じ、混じり気の少ない、純度の高い炎……
そして、純粋な炎ほど、属性の持つ特徴をより強く引き出してくれる。)
ツナの右手に灯っている炎を見ながら、そう心の中でつぶやく。

(不思議な炎だ……頼りなさげだけど…どこか、体の底からあふれてくるような…)
ツナは自分の右手に灯した炎を見ながら、そう思った。

「少しだけ、僕の知ってる君に似てきたかな。赤ん坊と同じで、僕をワクワクさせる君にね…ここから先は、僕の好きにしていいんだろ?ソラ」

「うん、いいよ。そういう約束だったしね……」

「じゃあ」そう言いながら、素早く右手の中指にリングを嵌めて炎を灯し、匣を開匣した。

「始めよう。」
匣から出てきたトンファーを両手に構え、雲の炎を纏わせた。
その瞬間、雲雀が今まで抑えていた殺気が溢れだした。

(なんて炎!!……いや、殺気!今まで抑えていたのか…!!これが、雲雀恭弥!!)
ラルが雲雀の殺気に驚いていた。

(うわっ……恭兄の殺気、凄過ぎっ……パパを殺す気満々だよ……お願いだから、ほんとに殺さないでね……?)
ソラは雲雀の殺気を感じながら、ツナが無事でいる事を祈った。

「この闘いにルールはない。君が選べるのは、僕に勝つか……死ぬだけだ。」
ツナに向かってそう言い放った雲雀

「勝つさ」
雲雀に向かって、はっきりとそう言ったツナ

「来なよ。」不敵な笑みを浮かべながら、ツナにそう言う。

(奴は沢田を……本当に殺す気だ!)
ラルは雲雀を見てそう思った。

ツナは右手のグローブに炎を灯し、噴射させて、雲雀に向かって突進した。

ツナは物凄い速さで突進していたが、雲雀はタイミングを見計らって、軽やかに交わしていた。

ソラ達は2人の戦いを静かに見ていた。

ツナは戦っている間、どこか動きがぎごちなかった。

少しそのまま戦っていたが、ツナが雲雀の攻撃を回避しようとして、噴射させた炎で自爆してしまった。

「何の真似だい?君、本気で戦う気はないの?」
雲雀は倒れたツナを、つまらなそうに見下していた。

(パパ、新しくなったグローブの扱いに戸惑ってるね……)

「どうやらVer.V.R.ってのは、随分ピーキーな特性らしいな…」

「ピーキー?」
リボーンに視線を向けたラル

「ああ。ツナの顔を見ると、あいつの思い通りに炎が出せてねぇみてーだ。」

「……確かに沢田の動きはぎごちないが…それは、炎のパワーに圧倒されているからではないのか?」
そう言いながら、ツナに視線を戻したラル

「だったら、自分のコントロール出来るパワー内で戦えばいいだろ。今はそれすらも出来てねぇ。」

「リボ兄の言う通りだよ。」
今まで黙ってリボーンとラルの会話を聞いていたソラがそう言う。

「どうなっているんだ?ソラ」
ソラが何か知っていると思ったラルが聞く。

「…ノーマルの]グローブは、パパの意志の強さに比例して、なめらかに出力を上げていたけど、Ver.V.R.は違う。
ある地点から、急にパワーが跳ね上がるんだよ。だから、扱いきれず吹かし過ぎたり、つんのめったりしちゃうんだよ。」
ソラはリボーンとラルにそう説明した。

「……なるほどな。」

「先代達がツナに授けた新兵器ってのは、とんだじゃじゃ馬ってわけか。」
嬉しそうな声で言ったリボーン

「そういう事。」

「何を嬉しそうに言っている!まだとても実践で使える代物ではないという事だぞ!」
ラルはリボーンが嬉しそうに言っているのを聞いて、そう言った。

「ああ。このままじゃ、距離感もタイミングも掴めねぇだろうしな。だが、それをどうにか出来る奴がここに居るじゃねぇか。」
リボーンはそう言いながら、ソラに視線を向けた。

ラルもソラに視線を向けた。

「……何?」

「ソラ、お前ならどうにか出来るんじゃねぇか?」

「……解らない。私はまだ継承してないから、あのグローブを使った事がない。」

「この時代のツナがVer.V.R.になった時、どうやって使いこなせるようになったか知らねぇのか?」

「その時は、今よりもうんと小さかったから、あんまり覚えてないけど…少しだけ見た事があるのは覚えてるし、リボ兄にその時の話を
聞かされてたから、どうやって使いこなせるようになったかは知ってるよ。」

「それだけ解れば充分だぞ。」

リボーン、ラル、ソラの間でそんな会話が繰り広げられていた。


(このグローブ……思ったより、気力の消耗が激しい……しかも、炎をコントロール出来ずにどうにか出来る相手じゃない…)
ツナは雲雀を見ながらそう思っていた。

「ねぇ…君、僕が言った事覚えてる?」

「勝つしかないんだろ?」

ツナの答えに不敵の笑みを浮かべた雲雀

(気に入らないやり方だが……生き残る方法は、あれしかない……イチかバチか……)」
両手に炎を灯し、雲雀に向かって、正面から突っ込んだ。

両手の炎の推進力で一気に雲雀に突っ込むツナ

それに対し、雲雀はそこから動かず、カウンターの餌食した。

ツナにトンファーで一撃を喰らわして、後方に飛ばした雲雀

(ん?……パパ、恭兄から何か奪った…?)
雲雀からの攻撃を喰らうその一瞬の隙に何かを奪っているツナに気付いたソラ

「君にはガッカリだ。弱い草食動物には興味ないよ。直接手をくだす気にもなれない、匣で……」
そう言いながら、いつの間にかトンファーを仕舞っていた雲雀が上着の内ポケットから匣を取りだそうとしたが、それが無い事に気付く。

気付いた雲雀がツナに視線を向けると……

倒れているツナの左手に雲雀の匣が握られていた。

「あれって、雲雀さんの匣!」フゥ太がツナの持っている匣を見てそう言った。

「ヒットした時に!!」

「恭兄の匣を奪ったんだね…」

「……頼む」
悲鳴を上げている体を起こして、大空のボンゴレリングに炎をを灯して、その雲雀の匣を開匣した。
中から、大空の炎を纏った大空ハリネズミが雲雀に向かって飛び出した。

「速い!」
飛び出した大空ハリネズミが雲雀に向かう速度が速くて驚くラル

(これだよ、沢田綱吉……やはり君は面白い…)
そう言いながら、素早く右手にリングを嵌め、別の匣を開匣した。

匣から飛び出してきたのは、雲の炎を纏った、雲ハリネズミだった。

その雲ハリネズミは、雲雀に向かってきた大空ハリネズミと激突した。

「同じハリネズミ!?」
「もう1匣持っていたのか!!」
フゥ太とラルが同じハリネズミを出してきた事に驚く。

「作戦は良かったんですがね…」
草壁はそう言った。

(恭兄、ハリネズミの匣をなぜか3つ持ってるからね……)
激突してる2匹のハリネズミを見ながらそう心の中で言うソラ

「気が変わったよ。もっと強い君と戦いたいな…それまでもう少し付き合おう。」

(あっ……恭兄が獲物見つけた時の目つきになってる……)
雲雀の目を見て、そう思ったソラ

「君たちは、匣がどうやって出来たか、知ってるの?」

「それはオレが話そう。」

ラルが知っている匣の情報を全て話していた。

「その後、1人生き残っているケーニッヒは地下に潜り、今でも匣の研究を続け、出来た物を、闇の武器商人に流しているという…」

(良く調べている……大したものだ……)
草壁はラルの話を聞いて、感心していた。

「これがオレの知る、最も有力と思われる匣の情報の全てだ。」

「ああ、間違ってはいない。だが、どうして匣が出来たかという問いに対する、本質的な答えとは言えないな。」

「!…もしかして、匣を現在に成り立たせた本当の立役者は、ジュペットでも、優秀な科学者でもない……って事?」
ソラは何かに気付いて、はっとした表情をした後、雲雀に問いかけた。

「その通りだよ。本当の立役者は……偶然だ。」

それを聞いて驚くソラ達

「偶然…それって、何となく出来ちゃったって…ことですか?」
フゥ太がそう言う。

「つまり、こういうことです。世界的な大発見や大発明には、発明家の身近に起きた偶然が閃きを誘発して出来た物が少なくありません。」
草壁が説明し始めた。

「閃きを誘発……」
フゥ太がつぶやく。

「ニュートンが万有引力を発見した時の、リンゴしかり…ノーベルがダイナマイトを発明した時の、珪藻土に染み込んだ、
ニトログリセンしかり…もちろん、それらのミラクルには、偶然を必然とする受け手の準備と力も当然必要ですが。」

「偶然を必然とする力……」
草壁の話を聞いていたフゥ太がまたつぶやく。

「しかし、それらを含めて、そのような偶然はそう簡単に起こる事ではありません。」

「だが、こと匣開発においては、それが尋常ではなく、頻繁に起きている。」
草壁の言葉の後に、雲雀が続けて言う。

「どういうことだ?」
ラルが2人に聞く。

「我々はそれを調査しているのです。」

「知るほどに謎は深まるばかりでね。」

「ねぇ、恭兄」

「何だい?」

「新たに解った匣の情報、見せて欲しいな?」

((なっ!?))
フゥ太とラルがソラの言葉を聞いて驚く。

(ソラの奴、良く雲雀に頼めるな……)
内心で少し驚きながら、そう思ったリボーン

「いいよ。君はたぶんそう言うだろうと思ってたから…」
あっさり了承し、草壁に視線を送った雲雀

「ソラさん、後でそちらにお届けします!」
雲雀の視線に気付いた草壁がソラに言う。

「ありがとう!!恭兄!哲兄!」
満面の笑顔で2人にお礼を言うソラ

(マジかっ……あの雲雀だぞ?ソラ、かなり雲雀に気に入られているみてぇだな……)
リボーンは雲雀とソラを見てそう思っていた。

雲雀はツナに視線を向けた後、話しかけた。

「沢田綱吉、明日も楽しませてくれよ。……覚えておくといい。大空の炎は、全ての属性の匣を開ける事が出来るが、
他の属性の匣の力を全て引き出す事は出来ない。」

「キイィィ!!」

ハリネズミの鳴き声が聞こえたので、ここの居る全員、上に視線を向けた。

ツナが出した大空ハリネズミが、雲雀の出した雲ハリネズミに取り込まれ始めた。

「ツナ兄のハリネズミが取り込まれてる!?」
フゥ太が、上を見上げたままそう言う。

(雲属性の特徴は増殖……それが、恭兄のハリネズミの方が上回っているからだ……)
ソラは上を見上げながら、そう思った。

雲ハリネズミが、大空ハリネズミを完全に取り込んだ後、匣へ戻っていった。

「悲願する事はない。大空専用の匣も存在するらしい。」
ツナにそう言いながら、移動し始めた。

「哲」

「へい!」

雲雀と草壁はエレベーターへ向かって歩き出した。

その時、エレベーターの扉が開いた。
エレベーターの中から山本が出て来た。

「あっ…あのー、小僧、見なかったっスか?」
山本が雲雀に気付いて聞いた。

「山本武……さーね。」
雲雀は山本の横切りながら、そう言った。

「こっちだぞ。」
リボーンが山本に声を掛けた。

「おっ!」リボーンが居るのに気付き、傍まで駆け寄る山本

その間に雲雀と草壁がエレベーターに乗っていってしまった。

「ようっ、小僧!!」

「待たせて悪かったな。」

「ツナも出られたんだな!いや〜良かった!!」
ツナが無事なのを見て安心した山本

その時、リボーンが山本の左肩に飛び乗った。

「んじゃ、お前の修行再開すっぞ、山本」

「ああ!!」

その時、額に灯っていた死ぬ気の炎が消え、倒れたツナ

「沢田、お前も休んでいる暇はないぜ。」
そう言いながら、倒れているツナに近づいたラル

「一刻も早く、Ver.V.R.を扱えるようにしなくては、また雲雀に……」
そこで倒れているツナが眠っている事に気付くラル

「…仕方のない奴だ。まぁ、試練の後だ…無理もないな…っとても言うとっ…」
ツナの服を掴んで持ち上げようとしたラルの腕を掴んで止めたソラ

ソラはラルのこの後の行動をいち早く察し、神速の速さで傍まで来て、ラルの腕を掴んだのだ。

「ソラ、なぜ止める?」

「今の綱吉さんは、肉体的にも、精神的にも、ボロボロになってる……今は休ませて、修行は午後からにしてあげて?」

「だが、こんな事している間にも、時間が惜しいっ…ミルフィオーレに潜入して、入江を消さねばならないのだからな…」

「それでもダメ!お願いだよっ…」
ソラはラルに必死にお願いする。

「っ!!………わかった、午後まで俺は部屋で休む。」
そう言いながら、ツナの服を掴んでいた手を放す。

「ありがとう…」
ラルの腕を放しながら、そう言ったソラ

ラルはソラの頭をポン、ポンした後、トレーニングルームを出て行った。

ラルを見送ったのを見計らってリボーンがソラに聞いた。

「ソラ、もしあのまま止めなかったら、どうなってたんだ?」

「…あのままだったら、ラル姉、綱吉さんを往復ビンタで叩き起こして、修行に入ってたと思うよ?」
リボーンの問いかけに答えたソラ

「お、往復ビンタって……」

「ラル姉、凄いスパルタらしいから。(コロ兄が前にそう言ってたから間違いない。)」

「ラルさん、凄いスパルタなんだね……」
「ってかツナ教えるの、降りたって言ってなかったか?」
ソラの言葉を聞いて、山本とフゥ太の顔が真っ青になっていた。

「ソラ、俺はもう行くぞ。」

「あっ…うん。修行、頑張って下さい。山本さん」

「おうっ!」

リボーンと山本はエレベーターに乗って、地下10階へ戻っていった。

「ソラ、僕達も戻るよ。」

フゥ太がソラにそう言った後、ランボを連れてトレーニングルームを出ていった。

リボーン達を見送った後、ソラは寝ているツナに視線を向けた。

「ごめんね?勝手にボンゴレの試練をして、ボンゴレの証を…継承させてしまってっ……」
ソラは寝ているツナに向けて語りかけ始めた。

「私……昔のパパがボンゴレを継ぎたくないの、聞いて、見て、知ってた……でも、今のパパがミルフィオーレに対抗する力を
手にするには、この試練しかなかったっ…パパが守りたいと思ってる、みんなを守るには、これしか、なかったっ……
あの試練は残酷な映像を見せる……まだ14歳で、しかもマフィアと関係なく、普通に育ったパパには過酷だったと思う。
だから……ごめんなさいっ……」
ソラはツナに謝罪しながら、涙を流していた。

しばらくそのまま静かに泣いていたソラだが、落ち着いてきたのか、涙を拭いた後、
ツナが着けているボンゴレリングに視線を向けた。

「ありがとう、ボンゴレT世(プリーモ)……パパの継承を認めてくれて……」
ボンゴレリングにそう語りかけたソラ

すると、ソラの目の前にオレンジ色をした、大空属性の大きな炎が突然出現し、炎が消えると、
そこに初代ボス……ボンゴレT世が姿を現わした。

ボンゴレT世は、閉じていた眼を開け、ソラに視線を合わせるためにしゃがんだ。

<これで良かったのか?ボンゴレの姫君よ…>

「うん。」頷くソラ

<……すまないと思っている。お前にも、]世にも、ボンゴレの業を引き継がせてしまう事を……お前達親子は…あまりにも、
マフィアには似づかない……だが、私はずっと待ち望んでいた。ボンゴレをあるべき姿に戻してくれる者を……>

「今のボンゴレを、昔のような自警団に戻すため?」

<ああ。そして、今のマフィア界を変えてくれる者を…>

「それが、パパ?」

<そうだ。だが、]世だけではない。]T世(ウンディチ)……お前もだ。>

「プリーモ…」

<いつも通り、ジョットで構わないぞ?お前には、そう呼ばれたい。>

「……ジョット、聞いてもいい?」

<何だ?>

「私が……私がパパの跡を継いでいいの?」

<姫…>

「ジョットはボンゴレリングを通して知ってるんでしょ?2年前の事……」

<ああ、知っている。だが、心配するな。>
そう言いながら、右手をソラの頭の上に置き、ソラに笑顔を見せるT世

ソラは黙ってT世の話に耳を傾ける。

<大丈夫だ。お前は私の遠い子孫で…]世の娘だ。それに……お前がボスになる日を、私も、私の守護者達も楽しみしている。>

「ほんと?」

<ああ。私は…]世の跡を継ぐ者は、その娘である、お前だけだと思っている。他の誰でもない、お前だからこそ…>

「私が『ボンゴレの姫君』だから?」

<否定はしない。だが、我らはお前自身をリングを通してずっと見てきた。この者こそ、]T世に相応しいと……>

「ジョット…」

<お前は]世と同じ想いを抱いている。今のボンゴレを変えたいという想いが……>

「それはたぶん、パパが頑張ってるのをずっと見て育ったからだと思うな。パパはいつでも仲間を守る為に拳を振るい、少しずつ、今のマフィア界を
変えようと頑張ってる。ずっと見てるうちにいつの間にか、パパと一緒に今のマフィア界を変えたいって……そう思うようになってた。」

<そうか…>

「……ボンゴレリングは、拒まない?」

<ああ、大丈夫だ。我らがお前を]T世にしたいと思っている限り……ボンゴレリングが拒む事はない。>

「そっか。ありがとう、ジョット」

<ふっ……気にするな。>
そう言いながら、ソラの頭を撫でてから、手を離し、立ち上がったT世

「リングに戻るの?」

<ああ…だが、いつでも呼べ。お前が呼べば、いつでも話し相手になるぞ。私の守護者達にも、また話しかけてやってほしい。>

「うん。」

<では、またな。我らの大切なボンゴレの姫君…>
優しい眼差しをソラに向けながらそう言ったI世

そのあと、再びオレンジの炎が現れて、I世を包み込み、炎とともに消えていった。

I世が消えたのを見届けてから、マントの内側にある匣の中から、4匣だけ取った後、それを左ポケットに仕舞い、
マントを外して、それを寝ているツナに掛けた。

「マント、ちっちゃいけど……無いよりは良いから。風邪、引かないでね?おやすみ、パパ」

ソラはツナをそこに残したまま、トレーニングルームを出て行った。


標的26へ進む。


今回のお話では、ツナが無事に継承を終える所です。
ツナが試練の最中に思い出すのが、リボーンではなく、ソラの言葉になっています。
初めて自分の意志でボンゴレリングに炎を灯せた時に、ツナに言った言葉を……
アニメでは、ラルが眠ってしまったツナを、往復ビンタで叩き起こそうとしていましたが、
ここではソラが叩く前にラルを止め、休ませています。
そして、最後の方には、初代ボスである、ボンゴレT世ごとジョットをソラの前に登場させました!!
ソラはボンゴレリングに宿っている初代ファミリーのみんなとお話する事が出来るのです!!
特に初代ボスとは良く会って話しているので、仲が良いです。
それでは標的26へお進みください。

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