ーー地下10階ーー道場ーー
あれから午前中は太陽の相手を交代でずっとしていたソラとツナ
お昼になり、ご飯を食べた後、ソラ、ツナ、リボーンは、トレーニングルームではなく、地下10階にある、道場へ来た。
ソラとツナは道着に着替えたあと、始める前に体を十分にほぐしたソラとツナ
「道着姿、似合ってるぞ。ソラ」
「ありがとう、リボ兄」
「ソラが黒帯なのに、お前は白帯か。ツナ」
鼻で笑いながら言うリボーン
「な、なんだよ!?俺、初心者なんだから仕方ないだろ!?」
「あははっ……リボ兄、苛めちゃダメだよ。」
「あのさ、このままやるの?」
「?」首を傾げたソラ
「超モードにならなくていいの?」
「ならなくていいよ。むしろ、ならない方が良いよ。」
「どうして?」
「超モードの時だと、普段の時よりも、かなり直感が研ぎ澄まされてるでしょ?」
「う、うん。」
「綱吉さんは、いつも超直感で、状況に応じた戦法を直感し、それに従って戦ってる。でも、時にその直感した通りの戦い方をしても、
上手くいかない時もある。なんでだと思う?」
「えっと……」
「ツナがその時、勝つための方法を直感出来ても、そのための技量が達していなければ、上手くいかない……だろ?」
ツナがなかなか答えを出さないのを見て、リボーンがそう言った。
「さすがリボ兄!正解だよ。それともう1つ。午前中の時に言った通り、超直感にばかり頼ってちゃダメだからだよ。直感ばかり頼ってたら、
癖になっちゃうし、自分で状況判断する力が低下してしまうから。だから今回はその超直感に少しでも頼らないようにするためにやるんだから、
超モードになったら意味ないよ。」
「なるほど…で、でも俺、運動全然ダメなんだけど…」
「うん、知ってる。でも大丈夫だよ、ちゃんと綱吉さんがついていけるようにするから。」
「あ、ありがとう…(なんか複雑だな……自分より年下の子に教えてもらうなんて…っていうか情けないかも。)」
「情けない姿だな、ツナ」
心を読んだのか、ツナにはっきりそう言うリボーン
「う゛っ……(人が気にしてる事をっ…)」
「ラル姉は全部叩き込めって言ってたけど……全部教えるのはさすがに無理があるから絞るね?」
「そ、そんなにあるの?」
「うん。今日、明日で叩きこむなんて無茶過ぎる。だから、綱吉さんが戦う時に必要そうな基本技だけを教えるよ。」
「基本技だけでいいのか?ソラ」
「うん。ただ技を教えるだけじゃなくて、それを体に覚えさせないとね。形だけ教えても、技のキレが良くなかったら意味ないから。
それに……綱吉さんには悪いけど、“今”の綱吉さんじゃ、基本だけでも難しそうだから。」
「う゛ぐっ…(どうぜ俺はダメツナだよ……)」ソラに痛いところを突かれて落ち込むツナ
「あぁっ!?落ち込まないでーーっ!?(昔のパパ、メンタル面弱過ぎるよ!!)」
ツナが落ち込んだ事に気付いて慌てるソラ
「こんくらい、いつもの事だろ。ダメツナ」
ツナに追い打ちを容赦なく掛けるリボーン
「リボ兄!追い打ち掛けちゃダメ!!」
「そうだけどさ……解ってるけどさ……」
リボーンの言葉でさらに落ち込んだツナ
「ほらっ!リボ兄が追い打ち掛けるから、余計落ち込んじゃったじゃん!!」
落ち込むツナを指差しながら、リボーンに言うソラ
「いつもの事だぞ。だから気にするな、ソラ」
「気にするよっ!!」すかさずツッコむソラ
「ほんとにいつもの事だから、すぐ立ち直るぞ。」
「そうだとしてもだよ!だいたい、なんで時々ダメツナって呼ぶの!?ここのリボ兄もそうだったけどっ…」
「ツナのあだ名だからだ。学校でみんなにそう呼ばれているんだぞ。」
「そんな事は知ってるよ!なんで、リボ兄がそう呼んでるかって聞いてるの!!」
「だって、だって、みんなそう呼んでるんだもんっ」
頬を膨らませながら、そう言ったリボーン
「キャラ変えてもダメ!!」
「…おめぇには効かねぇのか。」
「効かないよ、そんなの!…リボ兄から、昔の事は聞いてたしね…“いろいろ“と。」
「!……そうか。」
ソラの言葉で何かを察したリボーン
「つ…綱吉さん、そんなに落ち込まないで?えっと…基本だけでも難しいって言ったのは、超モードじゃないっていう事もあるけど、
山本さんみたいに運動部に入って、体を鍛えていないから、慣れない運動をして、すぐに体が悲鳴を上げしまうかもしれないからだよ。」
未だに落ち込んだままのツナにそう言うソラ
「……そうなの?」
「うん。でも大丈夫!運動が全然ダメな人でも、頑張れば出来る!!出来ると思って頑張れば、人間何でも出来るから!!
だから……あんまり自分の事……ダメだなんて思わないで?」
「えっ……」
「私は知ってるよ?綱吉さんが誰よりも優しい事、戦いが大嫌いな事、そして……誰よりも仲間を大事にしている事を。勉強がダメ、
運動がダメだからダメな人間だなんておかしいよ。だって、人間誰でも苦手な事は必ずある。それが勉強だったり、運動だったり、
またはその2つ以外の事だったり……人それぞれだよ。綱吉さんは、ダメツナなんかじゃないよ。少なくとも、私はそう思ってる。
だからもっと自分に自信を持ってよ?(私は身近でずっと見てたから知ってるよ?パパは世界中で1番強くて優しい人…)」
目の前に居るツナを励ましながら、この時代のツナの事を思い出すソラ
「ソラちゃん……」
「少しは元気出た?」
「うんっ、ありがとう!!」
「良かった!それじゃ、気を取り直して始めようか!!」
「うん!!よろしくお願いします!ソラちゃん」
「じゃあまず『正拳』だね。」
「正拳?」
「うん。空手ではもっともよく使われている基本の部位なんだ。『正拳』は力強く、なおかつ正確に安定して攻撃する事が出来るんだ。」
そう言いながら、左の手の平をツナに見えるようにしてから、小指から順にゆっくりと折っていき、指先を指の付け根まで食い込ませ、
人指し指と中指を親指の腹で押さえた。
「これが『正拳』…綱吉さんが超モードで良く使っているのはこれだよ。」
「ホントだ…(確か…こうだったよな?)」
今ソラが見せてくれたのを思い出しながら拳を握る。
「これはもう、超モードで体が覚えてるから大丈夫だよね。『正拳』で相手に当てる部分は人差し指と中指のつけ根の関節部…
この部分を拳頭と呼ぶ。そして、手首を曲げずにまっすぐ突き出す。」
そう説明した後、ソラは『自然体』から『三戦立ち』という立ち方をした。
そのあと、『正拳中段突き』をツナに見せた。
『自然体』とは、両足を肩幅と同じ間隔で開き、爪先を軽く外側に開くとともに、肩を落として脇をしめ、両拳は軽く握り、
腰(帯)の高さに置いて立つ事である。
『三戦立ち』とは、基本でもっとも使われる立ち方で、両足は肩幅ほどで、右足を一足分前に出し、
爪先は両方とも内側に向け、右足の踵と左足の爪先は横一線にして立つ事である。
『正拳中段突き』とは、『三戦立ち』の状態で、両拳を前にのばしてそろえ、右拳の甲を下にして、脇の下に引く。
この状態で、腰をひねりながら、右拳を内側からまっすぐに突き出すと同時に、左拳の甲を下にして、引きつける。
同じ要領で左拳も突く……これの繰り返しである。
「すごっ!!」
「ほぉ…技のキレが良いな。」
「今やったように、腕の力だけで突くんじゃなくて、腰の回転を効かせて突くんだよ。そうすれば、パワーのない人でも、
力強い突きを出す事が出来るんだよ。」
「そうなんだ。でもその構えって……」
「これは『三戦立ち』って言うんだよ。この立ち方で教えるのは、突き技は今やった『正拳中段突き』だけで、受け技は一通り教えるよ。
(本当は手刀技も教えてあげたいけど……時間がないしね。)」
「今やった『正拳中段突き』と受け技だけなの?」
「うん。そのあとは蹴り技をやって、それから『組手立ち』での技を教えるから。」
「その『組手立ち』って?」
「これだよ。」
そう言いながら、『組手立ち』になった。
『組手立ち』とは、両拳をそれぞれ顎の前で小指側を正面に向けるようにして、顔面を守るように構え、左足が前で右足が後ろで、
足の幅は肩幅程度にし、爪先を正面に向けるようにし、安定感を保つために、腰を落として構える事である。
また、右足が前で左足が後ろでの構えもある。
「へぇ…これが『組手立ち』の構えなんだ。」
ソラの構えを見てそう言うツナ
「そうだよ。綱吉さんは戦う時、この構えにはならないけど、戦いの中で繰り出す突き技や蹴り技は、この『組手立ち』で使う技を
身につける事が出来れば、もっと良くなるよ。だからこの構えで使う技を重点的に教えるよ。」
(ちゃんと考えているんだな。)
ソラの話を聞きながら感心していたリボーン
「私が綱吉さんに出来るようになって欲しいのは、腰の回転を効かせた突きと、より力強い蹴りが出来るようになる事。理由は、午前中に
太陽と戦っていた綱吉さんは、突きを出す時はほとんど腰の回転を効かせずに、腕の力だけで突き、蹴る時もそのまま力任せに蹴るだけで、
あまり力強い蹴りじゃなかった。それでは技のキレなんかまったくない。だから、超モードになる前の状態で、少しでもそれが出来るようになれば、
超モードで凄くキレのある技が出せるようになるはずだよ。」
「ほぉ……随分と本格的だな。」
「私がずっと前にコロ兄から教えて貰った事をそのまま教えるだけだよ。」
「コロ兄?」
「コロネロの事だぞ。」
「あっ、そっか。でもなんでコロ兄?」
「あははっ……えっと、まだ言葉が上手く喋れなかった時にね、「コロネロ」って続けて言おうとしたら、「ネロ」の部分が上手く言えなくて……
それを見兼ねたコロ兄が、「コロ兄」って呼んでいいって言ってくれたんだ。」
「そうなんだ。」
「さて、お話はこれくらいにして始めようよ。」
ソラがそう言ったあと、ツナにいろんな技を叩きこんでいった。
ソラが技の見本を見せながら、ツナのペースに合わせて教えているからか、
ソラに教えられた技を少しずつ確実に吸収していくツナ
途中で休憩も入れながら……
(ソラの奴、教える相手の事をちゃんと考えているからなのか、指導が上手いな……あの運動がダメなはずのツナが
次々とゆっくりではあるが、確実に技を吸収してやがる。)
リボーンはその様子を静かに見守っていた。
ーー夜ーー食堂ーー
今日の修行を終え、今はみんなで晩ご飯を食べていた。
「ツ…ツナさん、大丈夫ですか?」
ぐったりして疲れているツナを見てそう言うハル
「ツナ君、大丈夫?」
京子もツナの様子を見て心配していた。
「だ、大丈夫っ……(ソラちゃん、全然疲れた顔してない気がするのは、俺の気のせいかな?)」
「えっと……ほんとに、大丈夫?」ソラもツナを心配そうに見ていた。
「ソラちゃん、なんで普通に体が動かせるの?」
「えっと、それは……鍛えてるから、かな……?」
言いづらそうにしながらも、ツナにそう答えたソラ
「おめぇは普段体を動かさな過ぎるんだ。」
「う゛っ…」リボ―ンに痛い所を突かれたツナ
「あははっ……ソラはいつも鍛えてるからね。」
フゥ太がツナにそう言う。
「ガハハッ!ツナ、カッコ悪いぞ!」
「ランボ!そんな事言っちゃダメ!」
「ツナ、あなたもう少し体鍛えておいた方がいいわよ?」
ビアンキは、リボーンと同じように、ツナに痛い所を突いた。
「あ、あはははっ……」
乾いた笑いをするツナ
「ごめんなさい。綱吉さんに合わせてやったつもりだったんだけど…少しレベル高過ぎた?」
ツナの様子を心配そうにしながら聞いたソラ
「いや、むしろ低すぎるぞ。ソラ」
ソラの質問に即答するリボーン
「んなぁ!?」叫ぶツナ
「リボ兄のはスパルタ過ぎるよね。」
「そうか?」
「ツナ君、今日はソラちゃんに修行つけてもらってたの?」
「う、うん……」
「ツナの足りない部分を補うためにな。」
「ツナさんに足りない部分ですか?」
「そうだぞ。どうだ?なんとかなりそうか?」
「う〜ん……まだ何とも言えない…かな?明日もう一度やってみれば解るよ。」
「そうか。」
「ハル達にはよく解らない話ですね、京子ちゃん」
「そうだね。ハルちゃん」
『ご馳走様でした!』
「それじゃ、私は部屋に戻るよ。明日も道場の方に来てね?綱吉さん」
「あっ、待って!」ソラを呼び止めたツナ
「?」首を傾げるソラ
「あのさ、少し……話があるんだけど。」
そう言いながら、ツナは真剣な表情になった。
ツナのその表情を汲み取ったフゥ太、ビアンキ、ハルは……
「僕、ジャンニーニの所へ行くね?」
「ハル、私達はお風呂に入りに行きましょう?」
「はいです。ランボちゃん、イーピンちゃん、お風呂に行きましょう。」
フゥ太、ビアンキ、ハル、ランボ、イーピンが食堂を出て行った。
残ったのは、ツナ、京子、リボーン、ソラの4人だった。
「何?話って…」
「ソラちゃん、熱が下がったあの日に俺の部屋で寝て以来、ずっと自分の部屋で寝てるって本当?」
「!!…そ、それはっ」動揺しながらも、必死に平常心を装うソラ
「それは?」
「………あの時は、熱があって弱ってたから……」
そう言いながら、視線を泳がすソラ
「だから何?」
「綱吉さんと京子さんと寝たいって言ったのは……熱で弱っていたからそう言ってしまっただけで……」
「違うよね?(あの時、確かに弱ってたけど、あれは絶対ソラちゃんの本心……)」
黙って聞いていた京子が、昨日の夜見たソラの寝顔を思い出しながらはっきりそう言った。
京子にそう言われ、ソラは何も言えず、顔を俯かせた。
「ソラちゃんはどっちかっていうと、甘えなさ過ぎるんだ。」
「私達は迷惑だなんて思ってない。」
「だから、もっと俺達を頼ってよ?」
「一緒に寝たい時は来てくれてもいいんだよ?甘えてもいいんだよ?」
「だっていくらしっかり者でも、ソラちゃんはまだ6歳なんだから。」
「お前の知る、ツナと京子はどうだったんだ?ここに居る2人とは違うのか?」
「!……違わないっ……何も違わないっ!!優しい所も、安心出来る場所なのも、こんな風に私の心を見透かしちゃう所もっ…
あの日、綱吉さんと京子さんが言った事はちゃんと覚えてる!でも、それでもっ…」
この時代の2人の事を思い出しながらそう言うソラ
「なら、なんで頼らない?」
「………この時代の2人と重ねてしまうからだよ……」
少し間を置いてからそう答えたソラ
「「「!!」」」
「2人は、ほんとに良く似てるから……この時代の2人と……だから、時々忘れてしまいそうになる、
ここに居る2人が10年前の2人だって事にっ…」
苦痛の表情を浮かべながら言うソラ
「だから、迷ってんのか?このまま甘えてしまってもいいのかを……」
俯いたまま、頷くソラ
「ハァ……お前、ほんっとに賢過ぎるぞ。子供は子供らしく、素直に甘えりゃいいって……前にも言っただろ?子供の特権だってな。」
「リボーン君の言う通りだよ。」
「確かに俺達はこの時代の俺達じゃないから、ソラちゃんにどんな風に接してたかは知らない。でも、君が苦しんだりするのは見たくない。」
「綱吉さん……」
俯いていた顔を上げて、ツナ達を見るソラ
顔を上げたソラが見たのは……優しい笑顔を浮かべているツナ達だった。
「っというわけで、今日は俺と一緒に寝よ?」
「え゛!?」
「昨日京子ちゃんと寝たでしょ?だから今日は俺。」
「あっ、じゃあ明日は私だね!」
呆然としたまま聞くソラ
「あっ…ねぇ、ソラちゃん、私とお風呂に入るのは……ダメ、かな?」
「!……ごめんなさい…それは無理っ……」
京子に言われた言葉に、一瞬眼を見開いた後、申し訳なさそうに言うソラ
「そっか、残念だな。」そう答えると解っていたのか、本当に残念そうにしてた京子
そのあとは、それぞれお風呂に入りに行った。
ソラはお風呂から出たら私室を後にして、ツナの部屋へ行き、そこで眠りについた。
今回も完全オリジナルです。
ソラが直接ツナに修行をつける所を書いてみたくて書いちゃいました!
死ぬ気の炎についてはラルが指導しているので、それ以外で何かないかな〜って思ったら、
格闘技を教える……しか思いつきませんでした。
ツナは超直感で、グローブでの戦い方を直感しているようですが、それは超死ぬ気モード状態の時に
研ぎ澄まされた直感のおかげであって、ちゃんとした格闘技の経験は無いだろうと思い、
格闘技をツナに指導する…っという話が出来上がってしまいました。
それでは標的24へお進みください。